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(写真は、小出豊『綱渡り』より)

小出監督の『綱渡り』に関して、ご投稿をいただきました。
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小出豊『綱渡り』に寄せて

10年前に撮られたこの作品は題名が示す通り、ある地点からある地点へと移動する作品である。しかし、綱渡りの緊張感などは皆無だ。周りと上手くコミュニケーションを取れない葉一君が過ごす日常はどこにでもある日常で、学校で糸電話を作ったり、草むらに行ったり、なぞなぞに答えてみたりとどこにでもいる小学生の日常がそこにあるのだ。劇的な出来事が起きるのではなく、ほんの少し移動することで普段の日常とは異なる風景がそこに広がっていることを子供がわかっていたのかどうかはわからない。しかし、葉一君の視線は地面を見つめるのではなく窓越しに見える外へと向かっていく。

こうしたどこにでもある日常を描いているこの短編の中には様々な線がある。糸電話の糸、バスの路線、そして視線。これらの線を葉一君がいつもと違うつなぎ方をすることで、その線をたどることによって他人の声を確認し、見知らぬ風景が広がっていることを見ることに成功する。こうした日常の小さな接続する道具のつなぎ間違いの連鎖が物語を緩やかに動かし、最終的にとてつもなく大きな広がりを持つところへたどりつく。その瞬間、ある映画作家の処女長編を思い出したと同時に清々しい気分になった。再びこの作品を見て、小出監督のこの10年間の軌跡を追いつつ、前回見た時と同じように清々しい気分に浸ってみようと思う。

(吉岡香織)

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小出豊監督の映画は、1月27日(水)に上映いたします。
また、小出監督の選ぶ「この1本」として、フリッツ・ラング監督『条理ある疑いの彼方に』も上映いたします。
また、19時10より、万田邦敏(映画監督)との対談もございます。
http://www.mirai-kyosho.kitanaka-school.net/program/index.html

小出 豊(こいで・ゆたか)
映 画美学校フィクション科コース修了。万田邦敏監督に師事し、『接吻』ではスクリプターを担当した他、同監督の短編TVドラマ『県境』、『一日限りのデー ト』では脚本も担当。『お城が見える』で第4回CO2オープンコンペ部門優秀賞を受賞し、CO2助成を得て撮り上げた初長編『こんなに暗い夜』が大きな話 題となる。また映画批評紙「シネ砦」の執筆者。


『綱渡り』
外界とのコミュニケーションがうまくとれない少年の成長を描いた短篇ドラマ。高崎映画祭正式出品作品。
監督・脚本:小出豊
撮影:篠原悦子
出演:浅野翔太、松橋かずき、長谷川智也
2000年/16ミリ/33分

http://www.mirai-kyosho.kitanaka-school.net/films/koide.html