0901
(*写真は、加藤直輝『FRAGMENTS Tokyo murder case』より)


槻館南菜子さんより、加藤直輝監督の映画についてご寄稿をいただきました。
 
加藤監督の映画は、1月24 (日)に上映いたしますが、19時20分より、藤井仁子さんと加藤監督との対談もございます。
 
藤井仁子さん主催の「Theatre Oblique」では、藤井さんが加藤作品を論じたテキストが多数掲載されております。
 
こちらもあわせて、お読みください。
 
in a lonely place——加藤直輝 人でなしの契約書(『a perfect pain』と『funeral dinner』について )
http://www16.ocn.ne.jp/~oblique/texts/JinshiFUJII/inalonelyplace1.htm
 
斬る——加藤直輝『FRAGMENTS Tokyo Murder Case』『Nice View』
http://www16.ocn.ne.jp/~oblique/texts/JinshiFUJII/fragments_niceview.htm

犬はいない——加藤直輝『りんごの皮がむけるまで』
http://www16.ocn.ne.jp/~oblique/texts/JinshiFUJII/ringo.htm
 
また、同ウェブサイトでは、加藤監督の書いたテキストや、『A Bao A Qu』に寄せられた中村秀之さんによる「特別寄稿」も掲載されています。
 
巧妙さについて――『エレファント』×『誰も知らない』|加藤直輝
http://www16.ocn.ne.jp/~oblique/texts/NaokiKATO/elephant_nobody1.htm
 
放心する獣たちの遭遇——『A Bao A Qu』の冒険|中村秀之

http://www16.ocn.ne.jp/~oblique/texts/NAKAMURA/ABaoAQu1.htm


* * *
 
加藤直輝『FRAGMENTS Tokyo murder case』
 
AM8:00起床、AM10:40学校、PM2:45、PM4:10、PM8:00……。
 
『FRAGMENTS Tokyo murder case』 は、ある女子大生の過ごすありふれた日常、そしてその先にある悲劇にぴったりと寄り添っていく。この作品において出来事は予期せぬものとして生起するとい うより、その結末に向かう過程の中で私たちがただそれを見届けているという感覚の方が近いのかもしれない。すべては起こるべくして起こる。公園でのあの惨劇すらもそう思わせてしまうような不穏さをこの映画は纏っているのだ。
 
電車に揺られながら変わっていく風景をぼんやりと眺める横顔。改札を抜け、足早に大学へ向かう横顔。携帯電話で話しながら声を躍らせる横顔。まるで何も聞こ えていないかのように広場をすり抜け、彼氏との待ち合わせ場所に向かう横顔。彼女はただひたすら時間という点を結ぶ通過を繰り返す。この16分間、私たちは不安の中、何度も身震いするような感覚を覚えることになる。なぜなら、彼女以上に私たちは多くのものを目撃してしまうからだ。彼女が遭遇しな かった、見落とした瞬間に出会うこと。見えること、聞こえることの恐怖。眼前に広がるスクリーンには、多くの予兆が満ちている。私たちは『a perfect pain』から『A Bao A Qu』に到る加藤直輝の作品に、目を凝らし、耳を澄ませてみる必要がありそうだ。
 
槻館南菜子(つきだて・ななこ)

1982年生まれ。横浜国立大学環境情報学府博士後期課程在籍。

* * * 
 
加藤直輝『FRAGMENTS Tokyo murder case』は、1月24日(日)14時より、上映いたします。
http://www.mirai-kyosho.kitanaka-school.net/program/index.html


加藤直輝
1980 年東京生まれ。立教大学フランス文学科卒業。在学時は映画研究会に所属。2007年、東京藝術大学大学院映像研究科(映画専攻・監督領域1期生) を修了。修了制作作品『A Bao A Qu』が第12回釜山国際映画祭コンペ部門にノミネートされるほか、ドイツやオーストラリアなど世界各国の映画祭で上映。現在、新作『アブラクサスの祭』 を準備中。玄侑宗久原作の初映画化、スネオヘアー初主演でも話題になっている。



『FRAGMENTS Tokyo murder case』
ある女子大生の、いつもと変わらぬ平凡な1日に少しずつ不穏な空気が忍び寄る……。映像と音響のみで際立った緊張度を生み出すサスペンス作品。
監督・脚本・撮影・編集:加藤直輝
撮影:杉原憲明
出演:鈴木智恵、坂ノ下博樹、小津俊之
2005年/DV/16分
 http://www.mirai-kyosho.kitanaka-school.net/films/kato.html