(*写真は、桝井孝則『夜光』より)
ついにやってまいりました!!
3日目の本日は、桝井孝則、唐津正樹両監督の特集です!
大阪から桝井監督、京都から唐津監督におこしいただき、関東では初上映となる貴重な作品ばかりを上映いたします。
そして、今回も頼もしい援護射撃をご寄稿いただきました。
大阪市立大学で教鞭を執られる海老根剛さんから、大阪の桝井監督に向けてエールが送られてきました。
どうぞお読み下さい。
また、20時40分より、桝井監督、唐津監督をお招きし、トークショーを開催いたします。
司会を務めるのは、「未来の巨匠たち」のひとりである佐藤央監督。
大阪出身で、おふたりと親交のある佐藤監督が、お二人にお話をうかがっていきます。
桝井映画、唐津映画を堪能しに、ぜひご来場ください。
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『夜光』について
ぎりぎりになってしまいましたが、大阪から参戦する桝井監督の『夜光』を応援します。
『夜光』は特権的な個人ではなく、「普通のひと」の映画です。仕事は生活費稼ぎと割り切って、休日に趣味の音楽に没頭しようと思って就職したのに、いつの間にか仕事に追いまくられて気がつけば楽器に触ることもなくなってしまっていたり、研究が続けたくて非常勤講師や塾講師をしていたのに、いつの間にか疲弊して研究へのモチベーションが失われている自分に気がづいたり、マッキンゼー流処世術のカッコ良さに惹かれて勝間本を読んでみたものの、「こりゃ自分には無理だわ」と内心思ってしまったり、長期間の就職活動でへとへとになってしまったりしている、そんなわたしやあなたの現在がこの映画には描かれています。じっさい、この映画に出演しているのは、大阪の中崎町周辺で働き暮らしているひとたちです。
しかしだからといって、『夜光』はわかりきった日常を退屈に反映するだけのリアリズム映画ではありません。むしろその対極にあるといっていいでしょう。厳格なショットのひとつひとつのなかで、登場人物たちはじつに堂々とした存在感をもった立ち姿で現れ、決して日常的ではない言葉遣いで会話を交わします。アクションも発話も、奇妙な感触を強烈に残します。
特にこの映画で話される言葉のありようは、唯一無二と言っていいでしょう。前作では原作の書き言葉から台詞が作られていたのに対して、『夜光』では、桝井監督がインタビューでも語っている通り、現実から採集した言葉をもとに構成された台詞が用いられています。この話し言葉でも書き言葉でもない言葉の魅力をぜひ味わってほしいと思います。映画における言葉のありようにはまだまだ私たちに未知の可能性が潜んでいるのだと知ることになるでしょう。
したがって、『夜光』は私たちの普通の生活を描いていますが、それを強烈に異化してもいるわけです。そして、この映画に登場する普通の人々は、自分の現実を変えようとして、迷い、考え、最初の一歩を踏み出します。それはどんなにささやかなものであろうとも、現実を「いまあるものとは別のもの」として想像=創造しようとする試みです。まさにこの点でこの映画の形式と内容は厳密に一致しているわけです。そのとき、私たちの眼前で、見慣れたものだったはずの世界の相貌が一新されていくことに、私たちは深い感動を覚えることでしょう。夜の闇のなかに光が瞬き出すのです。
海老根 剛(えびね・たけし)
大阪市立大学大学院文学研究科・文学部(表現文化コース)准教授。専門分野は、ドイツ研究・文化学・映画論。大阪都心・船場を拠点に、都市における芸術の可能性を追求する「船場アートカフェ」( ☆ )にディレクターのひとりとしても関わっている。
ウェブサイト「netz-haut」http://www.korpus.org/
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桝井孝則監督の映画は、本日1月25日14時からの上映となります。
唐津正樹監督の映画は、本日1月25日15時40分からの上映となります。
桝井孝則(ますい・たかのり)
1979年大阪生まれ。「思考ノ喇叭社」の一員。2006年、板倉善之『にくめ、ハレルヤ!』に製作助手として参加し、2003年に活動をスタートした「思考の喇叭社」に加入した。同グループは、個々のメンバーが映画、アニメーションに限らず、イラスト、音楽、人形制作とジャンルを超えて協力し合いながら、活動を続けている。
唐津正樹(からつ・まさき)
1979年京都生まれ。大阪電気通信大学に進学し、映画監督・大森一樹に師事する。在学中より、京都国際学生映画祭にスタッフとして参加し、同映画祭のドキュメンタリーを撮影。卒業後、京都の映画制作団体「町屋プロダクション」に加わる。
http://www.mirai-kyosho.kitanaka-school.net/films/masukara.html
本日のスケジュール
14h00 『罠を跳び越える女』『夜光』(桝井孝則)
15h40 『座子寝』『団地』『赤い束縛』『喧騒のあと』『太陽と風に叛いて』(唐津正樹)
17h50 この1本!『放蕩息子の帰還/辱められた人々』+シークレット作品
20h40 トーク 桝井孝則×唐津正樹|司会:佐藤央
http://www.mirai-kyosho.kitanaka-school.net/program/index.html