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(*写真は、佐藤央『結婚学入門(恋愛篇)』)

本日、ついに初上映となる新作『結婚学入門(新婚篇)』の佐藤央監督。

佐藤監督の映画について、雑誌「nobody」の編集長・結城秀勇さんより、ご寄稿いただきました。

佐藤監督の「結婚学入門」は、3部作を予定しておられるそうで、「恋愛篇」がその第1作目にあたります。

新作「新婚篇」を見る前に、ぜひとも「恋愛篇」を見ておきたいものですねえ。


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佐藤央『結婚学入門(恋愛編)』

「マネキンがなきゃ、どうしようもないじゃない!」……。いったい彼らは、マネキンを用いて「どうしよう」と思っているのか。講習会……? 新作カツラ……? 断片的な情報をつなぎ合わせてもいっこうに見えてこない。だが勘違いしてはいけない。マネキンは不在の中心たるマクガフィンなどでは決してないのだ。ほらあなたも確かに見たでしょう、建物の薄暗い隅っこに置き去りにされたマネキンを。僕も見ました。マネキンはある。だからこそ、いまここにないだけで、あることはあるマネキンのポジションを巡っての交換劇を、笑いもこらえずに見守ることができるのである。

『結婚学入門(恋愛編)』と題されたこの作品には、結婚そのものは週末に控えた友人の結婚式として会話の端に上るだけだ。だがホテルとマネキンという組み合わせはどうも結婚式を連想させる。ホテルの式場で、片隅にウェディングドレスをまとったマネキンが据えられた結婚式に参列したことなどないにもかかわらず。いや気づかなかっただけで、あの時がそうだったのかも。花嫁だったと思っていたアレは実は……。居並ぶ人々をそこにつなぎ止めておく口実にすぎなかったのかもしれない。

この作品のマネキンもまた、放っておけば散り散りになってしまう二組のカップルをつなぎ止め、内に秘めたる交換可能性を発揮して、様々な交差を導き出す。右手に持ったタバコを口の左端にくわえ、次いで左手に持ったタバコを口の右端にくわえる、あの杉山彦々の仕草の素晴らしきなめらかさをもって、混乱を装った秩序が18分を支配する。


結城秀勇(ゆうき・ひでたけ)

1980年生まれ。雑誌「nobody」編集長。

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14時からの三宅唱作品の上映に続き、

佐藤央監督作品は、以下のスケジュールでの上映となります。

15h00 『女たち』『不安』『結婚学入門(恋愛篇)』
16h40 『シャーリーの好色人生』『結婚学入門(新婚篇)』
18h10 トーク 佐藤央×大谷能生(音楽家、批評家)
19h30 この1本 ハワード・ホークス『ヒズ・ガール・フライデー』

http://www.mirai-kyosho.kitanaka-school.net/program/index.html

佐藤 央(さとう・ひさし)

1978 年生れ。法政大学卒業後、映画美学校に入学。修了制作作品『女たち』の他、成瀬巳喜男のキャメラマンとして知られる玉井正夫のドキュメンタリー『キャメラ マン 玉井正夫』も監督。また冨永昌敬監督との共作『シャーリーの好色人生と転落人生』(『好色人生』担当)が劇場公開され注目を集めた。本特集では最新作『結 婚学入門(新婚篇)』を本邦初上映。

http://www.mirai-kyosho.kitanaka-school.net/films/satomiya.html