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「夢は語るとかなうもの!」
渡邊智恵子(わたなべ・ちえこ) 株式会社アバンティ代表取締役。北海道斜里郡生まれ。明治大学商学部卒業。1985年株式会社アバンティを設立、代表取締役に就任。原綿の輸入を手がけ、テキサスでオーガニックコットンに出会い、世の中に広めると決意。以来、オーガニックコットンといえばアバンティと言われるまでに全力疾走を続けてきた。企業活動以外に、オーガニックコットンの啓蒙普及と認証機関としてのNPO日本オーガニックコットン協会(JOCA)を設立し、現在は副理事長。グローバルスタンダード(GOTS)の基準作りにも関わる。これまでのJOCAにおける活動、実績が評価され、2005年国際オーガニック繊維品会議でオーガニックコットン繊維賞を受賞。2009年毎日ファッション大賞受賞、2010年日経ビジネスウィメン、リーダー部門受賞。
マルチデザイナ
岡田 ゆうり
「モノを大事に扱ってもらえるようにする!」
夢は、ひとりで悶々と考えるより、周りに話すべきもの
5月中に日本中から集まった新しい名刺は、30枚。そして今月、アドバイザーとして登場してくださったのは、(株)アバンティ代表取締役社長の渡邊智恵子さん。日本のオーガニックコットンのリーディングカンパニーとして多くの人々から支持を集めるブランドを率いる渡邊社長からのアドバイス、注目です!
——こんにちは。渡邊社長、30個の夢、持ってきましたよ!
あらっ。そんなにたくさん? 楽しみね〜。
(さっそくPCにて30枚の名刺をチェック)
気になったものから話していい? この「芸術家の卵・応援会長」(斧田唯志さん)って、素敵。それに、「ガクブチ製作所」(高柳アズヲさん)も素敵! 額縁って、なかなか素敵なのないのよね。私、お気に入りの額縁屋さんがあってね、お店に行く度に額縁って作り手の方の心が豊かじゃないとできないものだって思うのよ。私はね、アートがすごく好き。アートを家庭の空間に取り入れるっていう考え方もすごく好きなの。ポストカードとかそういうちょっとしたものでも、ちょこっと飾ってあるって素敵だと思うの。アートが家の中にあることで、そこに住む人の心には大きな影響があると思うから。
それに斧田さんが若い芸術家を応援するように、私もいろんな芸術家たちが集まる展示会にはよく行くんです。すごくキラキラした目をした子たちがそこにはたくさんいるの。そこで、作品を購入するのが好きなんです。
——どんなものを買われるんですか?
ちょっとしたものよ。5000円くらいの作品とかね。すっごくいろんなことを考えて時間をかけてつくったものが、たった5000円で売られているのよ。でも、そこでだれかがひとつ買うということが、若い子たちにとっては大きな勇気づけになるの。そして、制作の苦労も吹き飛んでしまったかのように喜ぶ表情にね、私も勇気をもらえる。お金の使い道って、そういうことじゃない? 5千円なんて、どう? 無駄遣いしちゃったらあっというまよね。「お金で愛は買えない」ってよく言うけど、私は「愛のあるお金の使い方はできる」って思っているの。お金に愛をたくすことはできるのよ。
それに、日本の国が物をつくるっていうことを忘れたら、国が滅びてしまうと思う。第一次産業、第二次産業をもっとサポートしていなければ、すべてがサービスの第三次産業になってしまう。今の日本は、安いものをどんどん世界中で作って、自分たちは消費するだけ。もっと自給率をやっぱり高めてかなきゃ。こと繊維製品って、90%が輸入品。そのうちの90%が中国製品。日本では10%しかつくってないんですよ。
——食べものよりも繊維のほうが自給率低いんですね。
そう、低いんですよ。それなのに1000円くらいでTシャツとかどんどん消費してるでしょう? しかもそれが、半年、一年後には、捨てられる。物をつくる、生み出していくっていうことを私たちはもっと大切に考えていくべきだと思う。
あ、ここにもいるのね、そんなものづくりをしようとしてる子。「マルチデザイナー」の岡田ゆうりさんなんてそうなんじゃない?
——高校生の女の子ですねー。すてきなものをつくって「モノを大事に扱ってもらえるようにする!」という夢ですね。
素敵じゃない!すごくいいと思う!この子にアドバイスを送りたいわね。
——では、どうぞ!
彼女のずっと使ってもらえるものをつくるっていう気持ちってすっごく大切。大事なのは、そういう芽を自分でつぶしてしまわないことね。あきらめることは、自分で芽をつぶすことだから。それから、 何をしたいのか具体的にイメージして周りに言ってしまうことがすごく大切。夢って語るとかなうのよ。
——かなえた方はみんなそうおっしゃるんですよね(笑)。
でもね、本当に本当のことなのよ。夢は、ひとりで悶々と考えるより、周りに話すべきものだと思う。だれかの手助けをしたいと思うのが人間の本質でしょ? だから「人」という文字は支え合っている形になってる。「ぼくの夢はこれだから、みんな聞いて!」って言うと、それを聞いた人はみんな、聞いたからには何かしてあげようって思ってくれるの、人間ってね。それに、夢をかなえたいと思ってもひとりではできないこともあるから。そうやって周りのサポーターを増やしていくこと。何がきっかけでチャンスが訪れるかわからないものよ。
——社長もずっと語られてたんですか?
うん、すっごく言ってたと思う。おしゃべりだから(笑)。でも私は、思考型行動人間じゃなくて、行動型行動人間。しっかり計画を立てて行動するっていうタイプではなかったわね。それでも、その中で周りの人たちに、ああしたい、こうしたいって伝えて進んできたの。だって、やんなきゃ分かんないじゃない、行かなきゃわかんないじゃない? 私がオーガニックコットンの仕事を始めた頃なんて、だれもオーガニックコットンなんて知らなくてね。けもの道を進むような日々だったわ。そこからここまで来るのに20年かかったの。でもね、オーガニックコットンをやることによって人や環境へのダメージを少しでも軽減することができるっていうのは自分の存在意義をつくれるなんじゃないかって思っていたの。同じやるなら人にもいいことって。同じやるなら、同じ生きてるなら、いいことをしていたいって。アバンティのスローガンは「きれいな地球を子供たちに」なんだけど、7th generation っていうネイティブアメリカンの言葉があるの。今自分たちがやっていることは7世代をも影響するんだよ、という意味が込められた言葉。その言葉を聞いた時、私は「今やることがそれほどまで影響力があるんだったら、いい影響を残すような仕事をしなきゃいけない」って思ったの。どうせやるなら、「渡邊智恵子ここにあったよ」っていう、そういう自分の足跡っていうのを残したいって思ったのよ。自意識過剰かしら?
——いえいえ、それが本当になってるんですね。渡邊社長のことを調べると、「オーガニックコットン第一人者」、アバンティのことを調べると、「日本のオーガニックコットン業界のリーディングカンパニー」って絶対出てきますよね。
絶対そうしたいと思って進んできたのよ。
自分なりの「勉強」を探す
——どんなふうに周りに伝えれば、サポーターを増やすことができるんでしょう?
彼女の場合は、みんなに知ってもらうために、つくっているものを見せることね。デザインフェスタやコンテストみたいな、いろんなチャンスがあるから。どんどん参加して、たくさんの人に作品を見てもらうことね。ちゃんと目標をもって出品するのよ。自分にあったコンテストを選んで、そこには何を出品するかちゃんと考えるの。
それから、来年の目標に「お金を貯める」って書いてるね。これ、すごくいいと思う。このお金は芸術で得るお金ではなくてもいいと思う。まずは大学生になって、「お金を稼ぐってどういうことか」を感じて欲しい。そして、愛のあるお金を貯めて、愛のあるお金の使い方ができる人になって欲しい。これから作品をつくっていくうえできっとお金が必要になってくるから、たくさん貯めておかなきゃね。芸術家は精神的にも金銭的にも豊かでなくっちゃ。貧しくなっちゃだめよ!
気になるのは、月間目標のところがね、全部ひとくくりに「勉強」になっているの。彼女にとっての勉強って何かしら? もちろん、勉強は大切なこと、受験生だしね。でも、自分の夢をしっかり見つめて、これからどんなふうに夢をかなえていくかを考えたら、それとは別に、自分なりの「勉強したいこと」が見つかると思う。例えば海外で活躍するための語学かもしれないし。 勉強をする時にはね、「何のために何を勉強するのか」を考えてみて欲しい。真剣に夢について考えれば、自然に見えてくるはずだから。大学生になったら、計画をもっと具体的にしてみることを忘れないで。
——アドバイスありがとうございました! ところで、渡邊社長の名刺って……、どんなのですか?
これ。私は、名刺ってすっごく大事に思っていて、アバンティは今年で25年になるんだけど、名刺はこれが2代目なんですよ。ロゴは20年前から変えていないの。
——ずっとこのデザインなんですか?
そう。アバンティをつくってしばらくした頃にね、仲條正義さんにロゴをつくっていただいたの。彼は、女性の会社だからちょっと柔らかさがあっていい、でも、芯がなきゃいけないという想いで、このロゴをつくってくださったの。それで、全部書き起こし文字にして、芯を強くという意味を込めてTの文字だけが大文字にしてある。
——素敵ですね。
素敵でしょ? 彼の思いがここにあって、私は「ちゃんと芯がある女性の会社にするんだ」って、「仲條さん、絶対そうするからね」って思って今までやってきた。つくってくれた人の誇りになれるようにって。そう思って使っているうちに、ものすごく愛着がわいて、変えられない大切なものになったの。
だからみなさんにも、ここでつくった名刺にちゃんと思い入れを持って欲しいと思うのよね。ここにある名刺が本物の名刺になるように。
元気であたたかな空気をもった渡邊社長。「お金で愛は買えないけど、愛のあるお金の使い方はできるお金に愛を託すことが出来る」という言葉が心に染みました。夢を公言して、応援してくれる人を元気にする。だれかの夢を応援することで自分自身も元気をもらう。素敵な気持ちのサイクルですね。
さて第三回の「未来へのアドバイス」は、
徳光和夫さんが登場いたします!
6月末までに名刺が公開になった名乗りストのみなさんへのメッセージ、
そして、1枚の名刺をピックアップし、アドバイスを送ります!