2010年12月21日、「未来の名刺」に名刺を投稿してくださった“名乗りスト”のみなさんから選ばれたプレゼンターが日比谷公会堂で夢を語った「みんなの夢アワード 2010」。
熱いステージプレゼンの末、ワタミグループ会長の渡邉美樹氏からのサポートを受賞特典とする「みんなの夢アワード」とワタミ株式会社からのサポートを受賞特典とする「ワタミ特別賞」のふたつの賞をなんとW受賞したのは、バングラデシュでの教育革命の夢を語った税所篤快さんでした。
税所さんがアジア最貧国と言われるバングラデシュで取り組んでいるのは、農村部に住む高校生の大学進学を支援する「e-Educationプロジェクト」。バングラデシュでは、裕福な家庭の子どもたちが学校を終えた後に予備校に通う一方で、農村部では、地域の学校ですら教師不足を理由にクオリティは決して高いとは言えない授業を行っている状態だそう。特に都市部と農村部の経済格差は激しく、農村部で放課後に予備校に通う学生は少ない。将来のため、夢のため、家族のためにもっと勉強したいという気持ちを生徒が持っていても、家庭の経済状況にとって学力の差は生まれ、その差は進学、就職へと直結し、格差の遺伝は止まらないのです。
そんなバングラデシュの高校生たちが置かれている現実を変えたいと税所さんが考えたのが、DVDに授業を収録することで農村部の学生や裕福ではない学生たちにもレベルの高い教育の機会を作り出す方法でした。
この夢を「アジア最貧国ドラゴン桜」として語り、「みんなの夢アワード」と「ワタミ特別賞」を受賞した税所さん。彼に向けて、さっそく渡邉美樹氏とワタミ株式会社からの応援が始まりました。
渡邉美樹氏とワタミ株式会社からの経営指導がスタート!
受賞後もすぐにバングラデシュに渡って新たな挑戦を続けていた税所さんが日本に戻ってすぐに訪れたのは、大田区大鳥居にあるワタミ株式会社本社。 そこで行われたのは、ワタミグループ会長渡邉美樹氏、そして、ワタミ株式会社代表取締役社長桑原豊氏との面談でした。
昨年2010年は、「e-Educationプロジェクト」誕生の年。周囲の資金協力も得て、国内で活躍する有名な先生に謝礼を支払いしながら授業撮影をし、生徒たちには無料で授業を提供。その結果、ダッカ大学に1名、その他の大学に3名の合格者を出しました。
面談では、その一年のなかで税所さんが見いだした問題点などを共有。そして、今年の計画についてへと話が進みました。
一時間に及んだ面談の一部をお届けします。
渡邉氏:昨年は無料で授業を提供して、合格者を出したんだよね? ひとつ、目標を達成したわけだ。 それじゃ、今年の目標は?
税所さん:今年は、もっと多くの学生にDVD授業を受講してもらって、もっと多くの合格者を出したいと思っています。それに、浪人生となる昨年合格しなかった子たちのリベンジにも一緒に挑みたい。ただ、ビジネスとしてやっていきたいと思っているんです。
税所さんの活動報告資料に目を通す渡邉会長と桑原社長。
渡邉氏:お金払ってでも授業を受けたい、と言ってくれる人がいるという手応えは?
税所さん:従来の予備校より価格を安く設定すれば、出てくると思います。
渡邉氏:そもそも、高校にいけるのは、何割くらい?
税所さん:高校に入れるのは4割ほど、卒業できるのは、2、3割。年間約50万人が高校を卒業すると言われています。国全体の人口が1億5000万人という規模ですから。そのなかの3万7000人だけが国立大学に進学できるんです。今は、富裕層で予備校に通える学生がそのほとんどを占めていますが、予備校の授業料を下げることができれば、経済的に苦しい境遇にいる生徒たちにも進学のチャンスを得られると思うんです。
渡邉氏:そのマーケットの規模を考えなきゃいけない。いくらまで下げれば、どれくらいの生徒たちがやってくるのかをね。
税所さん:3万人……、もっといると思います。
渡邉氏:公立の高校には通えていて、大学にも国立だったら通えるという子たちへのサービスとなるわけだよね。そこがマーケットなわけだ。それがどれくらいいるのかだな。まず、ビジネスはマーケットから入るべきだということを覚えておいてほしい。貧しくて予備校に行けず、大学に行けずに埋もれている高校生がどれくらいいるのか、そういったことを徹底的にマーケティングしていくべきだね。そして、設備が弱いところがあれば、補充していかなければならない。たとえば、PCが足りないなら補充する方法を考えよう。それで、教室になり得る場所はどれくらいあるの?
税所さん:1時間20タカ(30円程度)でネット使い放題のインターネットカフェの何台かを借りて授業に使うという方法をとっています。ネットカフェを拠点とすることで、場所を見つけてPCを手に入れ、運び込む、という苦労が省けるので。僕が契約をしているネットカフェは60箇所くらいに展開しています。
桑原氏:では、教室も増やしていく計画?
税所さん:そうですね。昨年はひとつに村での授業でしたが、現地の新聞に取り上げられてから、他の村からもオファーが来ているので、その希望に応えて他の村にも教室を作りたいと思っています。
桑原氏:オファーというと、授業料はどれくらいの希望なのかな? それが高すぎると、結局、授業を受けられないわけだからね。
税所さん:都市部の予備校の数分の1程度にしたいと考えています。そうしないと、農村部の平均的な収入の親が払うのも難しい金額になってしまうと思います。今年は村の小さな空き家に数台のPCを設置しての授業でしたが、それでも合格者は出ました。DVDの授業のクオリティは実際の授業と比べても大きな遜色はありません。この方法で価格をおさえながら、より多くの村に教室をつくることができさえすれば、多くの若者が自分の未来に挑戦することができるんです。
桑原氏:そうなると、今まで高額な予備校に通っていた生徒も流れてくる可能性はあるわけだ。
税所さん:そうですね。来年はより多くの場所で展開し、300〜400人の生徒を集め、10%を難関大学に入学させたいと思っています。去年は無料の授業で合格者輩出の実績を作ったので、今年は有料授業での実績を作りたい。そのために、皆さんにご指導頂きたいと思っています。

ご自身が税所さんと同じ年齢だったころの体験ももとに、アドバイスを送る渡邉氏。
渡邉氏:もちろん我々が応援するよ。お金のことは、バングラデシュの経済成長とともに変化もしていくだろう。今は、この事業はとにかくバングラデシュの若者たちにとって必要なものなのだから、何がなんでも成功させること考えよう。これを君はどういう形でやっていくつもり?
税所さん:ビジネスとしてやっていきたいです。ただ、形として株式会社にするのかNPOにするのかはまだ決めていません。
渡邉氏:僕は、株式会社の体制をとったほうがいいと思うね。自分がちゃんと資本を持ってね。透明性を持って、お金の流れも考えていった方がいい。そのうえで、僕たちは、その会社に出資しよう。300万円。どうだろう?
税所さん:ありがとうございます。
渡邉氏:なぜ300万円かと言うとね、僕がワタミグループをスタートしたのがこの金額なんだ。佐川急便で働いて貯めた資本金が300万円だった。だから、この金額にはとても思い入れがあるんだよ。君もこの金額で、十分なリサーチと次のステップへの準備ができるはずだと思う。
桑原氏:では、ワタミ株式会社からは、ワタミの経営を統括している経営企画部からの経営アドバイスを行いましょう。
渡邉氏:アワードを勝ち抜いた君にはその特権がありますからね。良いコンサルタントが付いたと思って、利用しなさい。それから、大切なのは自分が主体になってやっていくうえで、一年間の業務計画をきっちり立ててみること。それから、この300万円を使ってその業務をどう実現できるかということを裏付けを持って描いてみること。それを四半期ごとに見合わせよう。しっかり絵を描くことで、実現に近づくから。君がそうやって事業を進め、我々も現地を見に行く。僕は、どんなことでも現場は必ず見なければいけないと考えているからね。現地の状況を共有してこそ、協力できることも出て来ると思う。
- ターゲットを想定し、徹底的にマーケティングすること
-
株式会社としてビジネスにチャレンジすること
- 一年間の業務計画をきっちりと立てること
これが、渡邉氏から税所さんに投げかけられた最初のアドバイス。 そして、このアドバイスどおり、税所さんは3月には社名を「DDGソーシャルビジネス」としてバングラデシュにて起業を果たしました。 これから、渡邉美樹氏とワタミ株式会社の支援のもとさらなる前進を続ける税所さん。これからも、「未来の名刺」は、彼の取り組みを追いかけ、応援します。
(インタビュー・テキスト:柿原優紀)








