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門前払いの日々


――NPOを立ち上げる過程は、大変ではなかったんですか?

竹野:そのまま学生の時に立ち上げたわけではないんです。実は、私一度就職しました。カタリバをお互いに仕事にしようっていう約束をして、事務所を立ち上げる時期も決めて、一度は違う環境で過ごしました。私が会社勤めをしている間、今村は就職せずにカタリバを立ち上げるための情報収集や準備を進めてくれていました。そして、初めて事務所を構えたのが、2002年の7月。

――それってすごい信頼関係というか結束力ですよね、絶対やるんだっていう。そこから、カタリバの実践に入ったわけですね?

竹野:いえ、その時、仮説と確信ははっきりあったけれど、それを他の人に理解してもらうために必要な言葉を持っていなかったんです。さらには実績も人脈もない。言ってしまえば、気持ちしかない。そんな小娘2人が学校に行って、「将来を語り合うための授業をさせてください」なんて言っても、もちろん理解されないんですよ。先生にとっては授業を託すというのは、責任重大ですよね。

今村:学校の先生方は、やっぱり学校教育の場は自分たちの専門の場所だと思って責任のある教師という立場で授業をしているわけですよね。そこに、土足で赤の他人に踏み込んでこられたくないという方もいれば、いいとは思うけど不安で任せられない、という方がいるのは当然。なによりも私たちには信用が全く無いわけですから。「思いはわかるけど、君たちフリーターでしょ?」みたいな。(笑)

――まあ……、そうですよね。それで、授業での「カタリ場」が実現するにはどれくらいかかったんですか?

竹野:最初のチャンスをもらうまで、3年!! その間、ずっと門前払いです。

――長いですね!(笑) その間、どんなアプローチを?

竹野:まず、学校に電話をするんです。でも、なかなか会ってもらえない。それで、いい先生がいると聞いてはその先生はどこにいるかを調べて、「あの会に参加するらしい」となったら、そこに行く。そして先生に会えたら、「先生、私たちはこういうことが大事だと思うんです!」みたいなのをひたすら伝えまくって、もう、プレゼンにもなってないみたいなね。今思うと、あの3年間が、今までで一番大変だった。

今村:門前払いされて帰る時の気持ちは今でも忘れられない。2人して、ほんとに「ショボン」って感じ。信用がないって、信用ってなんだ、どうやったら自分たちを証明できるんだって、壁にぶつかってた。

竹野:一番最初にチャンスをくださった先生のことはよく覚えています。その方は、一教員としてというより、一個人として、大人として、君たちの気持ちはわかった。やる気もわかった!」という感じで受けとめてくださったんです。ただ、「学校の授業として行うと責任の所在のあり方が難しい。だけど、俺の授業内だったら俺が全部責任をとれば済む話だから、俺の授業でやりたいことを思いっきりやってみろ」って言ってくださったんですよ。40歳ぐらいの千葉の私立高校の先生でした。生徒の目の色が変わるのが楽しみだと言ってくれて、こうしたほうがいいよってアドバイスもくださって。実際に授業はすごくうまくいって、その後は他の先生にも広めてくれて、じゃあ今度は学年でやってみようとかそういう形でいろいろ開拓していってくれたんです。そうしているうちに、同じような先生がぽつぽつといろんなところで現れて、クチコミで聞いてうちもちょっと検討してみようかしら、という先生も増えて。先生たちが応援者というかプロジェクトメンバーみたいになってどんどん関わってくださいました。広報活動までしてくれたり、本当に感謝しています。

――でも、その方法だけで現在の状態まで広まっていったわけではないですよね?

竹野:私たちの活動しているこの時代ですから、「広がる」ということはすごく自然だったんです。自分たちで社会を変えれるんだという実感のある時代じゃないですか? 例えば、一般の人も広く使えるツイッターでさえ立派なメディアになっていて、実際、そこから来た取材依頼もあった。逆に私たちが活動している場から物理的にすごく距離があるはずのどこかの田舎のお父さんから書き込みがくると同時に、有名な政治家さんからも書き込みが来るっていうことが普通に起こる時代なんですよ。

今村:きっと、昔は何か組織の人や違う世界で活動している人とコミュニケーションをとるには、またがなきゃいけない敷居が大きくて、踏んでいかなきゃいけないステップが永遠とあってもっと大変だったはず。でも今は、私たちが発信しようと思えば人に発信できる。つながってない人たちをつなげてくれるメディアが発達していっているというのは、私たちにとっては大きな追い風。そういう追い風にも支えられながら、このまま走り続けようって思える。

――夢をかなえるためには、資金や人脈、チャンスが何より必要って思いがちですが、2人を見ていると、「パートナーに出会う」というのも夢をかなえるひとつの要なんだなって思えますね。

今村:そうですね。ひとりだったら、どこかでやめてたかもしれないですね。お金やチャンスもきっと必要だけど、それ以上に大事な要素がお互いの存在だったんです。

竹野:門前払いの3年のなかで、どちらかが「もうやめよう」と言うことはなかったんですよ、不思議と。大げんかすることはあっても。この出会いがなければ、今のカタリバはなかったですね。



* 竹野さんと今村さんのご紹介の記事は、全国のワタミチェーン店舗で配布中のフリーペーパー[o:kun]05号にも掲載されます!



【プロフィール】

NPOカタリバ2002年7月に今村久美(代表)竹野優花(副代表)が立ち上げた学生、社会人が学校に出向き「進路設計の支援」を実施する教育系NPO。キャストといわれる学生・社会人スタッフが教室で1〜3人程度の生徒と話し、その思いや夢を探す手伝いをする。
未来に向けての夢を持つ動機づけ、夢に向かっての相談、生活の延長線上でできそうなことをみつけて生徒の自発的な行動を促すことを活動の中心としている。


(インタビュー・テキスト:柿原優紀)