2006年07月19日

病理標本はどうなるか

2000年 10月 3日 火曜日 れのん先生のメール

 最後に、病理標本の話題です。これは人によっては、どぎついような内容に映るかも
しれないと思ったので、別便にしました。
 摘出した組織や腫瘍は、まずホルマリン液につけられます。これは「固定」といって、組織が腐らないようにし、また、形態が変わらないようにするためです。固定された組織は、病理医がナイフなどで必要な部分を切り分けていきます。これを「切り出し」といっています。
 切り出された組織は、特殊なカセットに入れられて、パラフィンという鑞(ワックス)状の物質の中に閉じこめられます。これを包埋といっています。このパラフィンに埋まった組織のことを「ブロック」といいます。ブロックを特殊な器械で薄〜く(3ミクロンくらい)切って(薄切といいます)、その切ったシート(切片といいます)をスライドガラスの上にのせ、染色液で染色します。染色した切片を顕微鏡でみて、腫瘍の良悪性や、タイプを診断するのが病理組織診断になります。
 この組織標本(スライドガラス)自体は、10年以上保存している病院が多いと思います。また、仮に標本を廃棄、あるいは紛失しても、さきほどいったブロックが残っている限り、同じ標本を後から何枚も作ることができます。切り出しと診断は病理医の仕事ですが、それ以外の標本の作製は検査技師さんの仕事です。
 臨床医は、そのようにして診断された病理検査の報告書に基づいて、患者さんに説明をしたり、その後の方針を決めているわけです。ちょっとややこしいようですが、これが実際の病理診断の流れでして、もちろん、いちばん重要なのは、標本をみて診断する行為になります。病理診断は直接患者さんに接するわけではありませんが、広い意味では医療行為ということになります。
 患者さんのあまり知らないところで、病気(特に悪性腫瘍)の診断や治療にとってきわめて重要な検査が進んでいるわけですね。

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