今日からセンター試験ということもあり、みなさんも久しぶりに勉強しましょう(笑)
病院で飼い主さんから聞かれたり、巷に流れる噂として「犬や猫に牛乳を飲ませてはいけない」というのがあります。

本当にそうなの?というところから勉強って入っていく事も多いものです。
そんなの初めて聞いた!なんて人もいるとは思いますが、結構「牛乳はダメ!」と信じられている事もまた事実です。
ではなぜダメと言われているのか、「浸透圧」の観点から見ていきましょう。
もうギブアップ?
頑張りましょう(笑)

牛乳がダメなのかどうかを考える前に浸透圧、拡散という現象を理解しましょう(笑)
高校の生物や化学、物理でやったでしょ?
そう、PV=nRTというやつです(笑)

なんてことを書くと誰も読まなくなるのでもう少し噛み砕いて。

液体というのは違う濃度のものが隣り合うと同じ濃度になろうとする性質があります。
それを難しく言うと浸透圧だったり、拡散だったりとみなさんが高校の時に頭を悩ませたヤツです。
でも「同じ濃度になろうとする」を理解できれば大丈夫!
濃度を決めるのは「水の量」もしくは「物質の量」これだけ理解しましょう。
このどちらかを変える事で濃度を変えることができますよね?
みそ汁の味を水の量で変えたり、味噌等の調味料で変えるのと同じです。
濃度=味付けでもいいですよ。
水か物質か
どちらかを変える事で濃度=味を変えられるわけです。

浸透圧さて、浸透圧ですが・・・
まずは「半透膜」というのは小さい物質(水とか)は通すけど、大きな物質は通さない膜の事。
これを挟んで違う濃度の液体が存在すると「濃度を同じにしようとして濃度が低い(薄い)方から高い(濃い)方へ「水が」移動します。
この時の物質は大きくて膜は通れないので物質はそのまま。
野菜や肉、魚に塩をふっておくと水分が出てきますよね?
あれですあれ。
もしくはナメクジに塩をかけるとナメクジが溶けるってあったでしょ?
あれですよあれ。
でもあれは溶けているんじゃなくてナメクジの中の水分が外に出てきて、本体は水が抜けるので小さくなって溶けたように見えるだけです。
こうやって水分が濃度の低い方から濃度の高い方へ移動して濃度を同じにしようとする訳です。
「水で」濃度を変えようとするわけです。
で、この水が移動しようとする力(圧力)を浸透圧って難しい名前で呼んでいるだけです。

拡散
さて、こんどは物質が小さい場合。
この場合は水が移動してもいいのですが、物質も移動します。
左は物質が4つ。
右は物質が8つ。
右が濃い(濃度が高い)ですよね。
では物質を右から左に2つ移動させます。
すると左右で物質が6つで濃度が同じになりますよね。
これが液体の濃度を同じにしようとする性質です。
この場合は水ではなくて物質が移動する事で濃度を同じにしようとしたわけです。


濃度を同じにしようとするためには水が移動するか、物質が移動するかのどちらかです。
物質が移動できなければ水が、物質が移動できれば物質が移動する事で濃度を同じにしようとするわけです。
計算云々は別にしてこうやって濃度を変えようとする液体の性質はわかって頂けました?
ではこれを牛乳で見ていきましょう。

と、その前に。
みなさんは牛乳って飲めます?
好き嫌いじゃなくて。
中には下痢をするっていう方結構いませんか?
実は日本人の80%くらいは牛乳で下痢をします。
特に成人男性。
これがおそらく犬や猫に牛乳を飲ませてはいけないという理由の一つにされていると思うんです。
でも子供の頃は大丈夫でしたよね?
この子供の頃は大丈夫だったというのもミソなので頭においてまた「水もしくは物質の移動」を見ていきましょう。

乳糖不耐性牛乳の主成分の一つに乳糖というのがあります。
実はこれは大きくて半透膜=細胞膜を通る事ができません。
とすると牛乳を飲んでも乳糖を吸収できない=物質が移動できないわけです。
となると水が移動するしかない。
体内にある水分が乳糖のある腸管内に移動するとどうなります?
腸の水分が多くなりますよね。
これが下痢をする理由です。
腸の中に水分がどんどん出てきて便が緩くなったり下痢をするという現象が起る訳です。
乳糖で下痢が起るのでこれを乳糖不耐性(症)といいます。

「人間に起る事は犬や猫でも起る」というのが前提にあるのだと思います。
ほとんどの場合は当たってますよ。
だから人間と犬と猫は共通の病気もあるし、共通して使える薬もあるわけです。
でも人間に使える薬が必ずしも犬や猫に使えるわけではありません。
人間が食べる事ができるものが犬や猫も食べる事ができるわけではありません。
犬はアセチル化能が欠如しているし、猫はグルクロン酸抱合が欠如しているから人間で大丈夫な物質が犬や猫では中毒を起こすものもあるわけです。
何食った? ~血色素尿と物理的・化学的・生物学的力~参照

牛や羊やヤギは牧草を食べる事ができるけど、人間はできないですよね。
犬や猫はビタミンCを摂取する必要はないけど、人間はビタミンCを食べ物から摂取しないといけないですよね。
だから人間とその他の動物は共通の部分と違った部分があるという当たり前のことを結構すっかり忘れている事もあるわけです。

ということで牛乳でしたよね。
なぜ日本人の多くが牛乳を飲むと下痢をするのか。
図にもありますが、乳糖はブドウ糖とガラクトースという物質が1つずつくっ付いてできています。
乳糖をブドウ糖とガラクトースに分解するには乳糖分解酵素が必要なんです。
実は日本人はこの酵素をほとんど持っていないんです。
アルコールを飲めない人はアルコールを分解する酵素がないのと同じです。
そしてこの乳糖分解酵素は子供の頃はたくさんあるのに、日本人は成長と共に少なくなるといわれています。
特に男性で。
なので日本人の成人男性の多くは乳糖を分解できないから牛乳を飲むと下痢をするわけです。
乳糖不耐性(症)なわけです。

え?私?
牛乳大好きです(笑)
下痢も起こしません(笑)

これは民族での遺伝子の偏りで起ることなので、日本人は下痢をするけれど違う民族は全然大丈夫なんてことが起る訳です。
だから牛乳=下痢は日本人の感覚。
別の民族からすれば牛乳=完全食なんて感覚になるわけです。
となるとそういった民族からすれば犬や猫に牛乳あげて何がダメなの?なんてことになる訳です。

私は乳糖分解酵素も「アルコール分解酵素も」持っているわけです(笑)
加水分解
そしてその分解されたブドウ糖とガラクトースは小さいので半透膜(細胞膜)を通過できる=体内に吸収できるので水の移動が起らない(本当は起っているけど相殺されます)ので腸管内の水の量が過剰になることはない=下痢にはならないわけです。
さっきも書きましたが、乳糖を分解できるかどうかは個人差です。
遺伝です。
ということは牛乳が下痢を起こすかどうかは個人差ということになります。
下痢を起こす人にとってはあまりいい飲み物ではありません。
下痢をしない人にとっては優れた栄養食ではあるわけです。
栄養学的には非常に優れた食品、飲み物なわけです。
が、それは下痢をしない事が前提ですが、その下痢をするかどうかは乳糖分解酵素を持っているかどうかによります。
でもそれは飲んでみないとわからない(遺伝子検査してもいいのかもしれませんが、非現実的)。

ということはですよ、犬や猫はどうなんでしょ?
それも個体差です。
下痢をする子は飲ませてはダメです。
下痢をしないのであればいいんじゃないでしょうか?
(アレルギーなんかは今回の話とは違うので割愛)
だって牛は飲めて犬や猫が飲めないってことはないでしょ。
私が飲めて犬や猫がダメってことはないでしょ。
でも下痢もする人もいれば下痢をする犬や猫がいるのも事実。
そういった子達には飲ませない方がいいのはわかりますよね。

中には牛乳は子牛が飲むものであって、牛も大人(成牛)になってからは飲まないなんて言う人がいますが、それはこじつけ、屁理屈です。
というより牛の解剖と成長過程を知らないでしょ?
それにそんなことを言ったらありとあらゆる食べ物がダメとなる。
全人類共通の食べ物なんてないわけですから。
あるとすれば水だけ。
それ以外は必ず口にしない民族がいる食材はあるわけです。

ですから犬や猫に牛乳をあげてはダメというのは基本迷信です。
基本という理由はわかりましたよね
ダメな個体もいるということです。
もちろん乳児期に母乳変わりにというのはダメですよ。
ちゃんと動物毎に必要な栄養素は違いがあるので、牛乳はあくまでも子牛用。
乳児期にはその動物の乳が必要です。
人間には人間の母乳、犬には犬の母乳、猫には猫の母乳、もしくは専用のミルク。
母乳や専用のミルクにはその動物種の乳児に対する必要な物質がちゃんと含まれているわけで、しかもその必要な栄養素は動物種によって違いますから。
でも大人は・・・
個体(個人)によっては問題ないし、個体(個人)によってはダメなわけです。

牛乳で下痢する子に便秘の時に少しだけあげるのは個人的にはありかなと思いますが。
(下剤だと強過ぎる場合)

なので飼い主さんに「牛乳あげても大丈夫ですか?」「牛乳あげたらダメって聞いたんですけど」なんて聞かれたら私は「下痢しないのであれば大丈夫ですよ」と答えています。

試す必要はありませんが、みなさんの家の子達はどちらでしょう?

水分調節おまけ。
さっきの図だと濃度が同じになるとそれ以上は吸収できないということになります・・・
でも生き物の体は効率よく物事を行なうシステムがありますので、もちろんちゃんとほとんど全て吸収されます。
水も必要であれば必要に応じて吸収されます。
一応わかりやすくなるように多少不正確なこともありますので、ご容赦を。
生き物の体は一つの現象だけでなりたっているわけではなくて、色々な調節機構を駆使してなりたっているので全てを書くことができません。
ということで今回は浸透圧と拡散という観点だけから書いたので多少の不正確さはあります。
もっと難しいことを知りたければ、能動輸送や輸送担体などの勉強をしてみてくださいな(笑)

あ~~~~もっと簡単に書こうとしたけど、結構長くなったな・・・・

あまりにもヒマなので図も自己作成(笑)

病院のHPはこちら
http://www.adachi-vet.com/