先日の動物取扱業責任者講習のおまけ。
法律のことやら色々な講義を受けるわけだけど、その中にやんばるの森の生物の多様性の話があった。
で、担当の講師の方は国頭村の役場の方で、実は生物にもペットにもあまり詳しくないと思われ(失礼!)、だったら俺の方が両方に通じた話ができるぞなんて思ってなどいません(笑)

まあザ〜〜〜〜〜っと色々な生物や景色の写真がスライドで映し出されたわけだけど。
その中できっとこれがメインで話さないといけないことなんだろうなと思いつつ、結構あっさり流された話題。
「やんばるの野犬・野猫」
笑い話にならない笑い話でGWには北部の人は犬や猫を南部に捨てに行き、南部の人はやんばるに捨てに行くというのがあるわけです。
そしてその結果野犬化・野猫化した犬や猫が野生動物を襲っているというのは結構ニュースになっているはず。
生物屋としては、そして沖縄で生物学を学んでいた身としてはやはり琉球列島の生物学的多様性というのは大きなテーマであり、興味を持ち続けている事柄ではあるわけです。
その一方今は獣医師として振舞っていることの方がほとんどなのでまた違った話が聞こえてくるわけです。
「世界遺産を口実に犬や猫の殺処分は許さない」といった内容のもの。
それはそれで正しい。
でもやはり子供の頃からの憧れだった琉球列島の生物たちの危機も重大なことなのは間違いない。

問題は殺処分という部分に帰結しようとするところ。
何らかの形でやんばるの森から野犬・野猫をなくすようにするということは必要なことだと個人的には思っています。
だって野犬や野猫とやんばるの野生動物の共存は無理だから。

沖縄本島の生態系ってちょっと変わっていて、昔から肉食(もしくは肉食に準ずる)哺乳類が存在しなかったわけです。
となると生態系のトップって普通は肉食哺乳動物が多いにもかかわらず、爬虫類であるハブだったりしたわけです。
それ以上の大きさの天敵がいなかったところに犬や猫が入り込んでも対応できない動植物の集まりなわけです。
となると生物学的重要性からすればやはり野犬や野猫の存在は脅威であり、言葉は悪いけれど邪魔者となるわけです。
もちろんそうしたのは人間の責任で、彼ら(犬や猫)に本質的な責任は無い。
でもこれも言葉は悪いけれど排除する必要性はやはりあるわけです。
そのためには捕獲という手段は必要になってくる。
TNRなんて言って至れない。
繁殖することが問題ではなく、存在が問題になるわけです。
なのでR=リリースなんてとんでもないことではあるわけで、地域猫なんて言ってはいられないのが現状。
となると捕獲後はどうするのかというのが最重要課題となるわけです。
確かに捕獲、殺処分というのは多くの人が反感を持つはずですし、それは当たり前の感情だとは思う。

行政はわかんないですよ。
でも我々生物学的な立場に立つ人間(私はその間にいるわけですが)が犬や猫の殺処分なんて誰も望んでいないはず。
だって犬や猫だって生物だからね。
行政は数字上殺処分ゼロというのを目指したいと思う節はあるし、その思考であれば確かに世界遺産登録のために「邪魔」な存在はさっさと捕獲して(殺)処分と言う思考回路になるのかもしれない。
でもその根幹には我々生物屋を始めとするやんばるの自然や生態系を守りたいという人間たちがいるはず。
そしてその人間たちはきっと誰も殺処分なんて求めていない。
もちろんその名誉と経済効果のためだけに世界遺産を求めている人も少なからずいるだろうし、その一部の人たちは犬や猫の殺処分なんて小さなことと思っているのかもしれないけれど。

でもね、やっぱり生物屋としては自然、生態系も非常に重要なこと。
確かに犬や猫の命も一度失われてしまえば二度と戻らないのは事実。
そして同じくして失われた生態系も二度とは戻らないもの。
その生態系を脅かしている要因は多岐に渡ることは事実ではあるけれど、その一端は野犬・野猫であることもまた事実なんです。

じゃあどうすればいいのかなんて一つの答えは今の私にはありません。
ただ単に生物屋と獣医師の狭間でオロオロしているに過ぎません。
ただ、どこかでヒステリックになる部分が人間にはあって、やんばるの自然や生態系を守ることがイコール犬や猫の殺処分を推進しているような感じ方をする人たちもいる。
でもそれは違う。

できれば皆さんもそういった狭間に思いを巡らせていただければと思います。

whale3-3-2
沖縄 ザトウクジラ
生き物が好きで、熱帯の生物をやりたくて、沖縄の大学を選んで早ン十年。
いつの間にか生物学者から獣医師へ。
そしてその沖縄での一つの問題。

どちらも大事に思うし、でもそのどちらも救う即効性のある手立ては思いつかない。

獣医師を目指す前は生き物を追いかけてばかりいた。
今は犬や猫と接する日々。


特殊な地域かもしれないけれど、そのどちらも楽しめるようになることを願うばかりです。

病院のHPはこちら
http://www.adachi-vet.com/   
facebook、インスタもよろしくです
   ↓

svg






instagram-1581266_960_720