お店を出たわたしたちは駅に向かいます。
とは言ってもわたしは無言、大崎さんはタブレットを凝視で他人状態ですが。
またソープランドのサイトでも見ているのでしょうか。
彼がすれ違う人と何度かぶつかりそうになるのを、危ないなぁ…と
距離を取って歩きながら見ていました。

あー、これはちょっとヤバいかも…。
先ほどお店を出る前から、お腹の奥がしくしくと痛かったのですが
耐えられそうだったので、大丈夫大丈夫…と自分に暗示をかけてごまかしていました。
しかし歩数が増えるにつれて、痛みがズキズキとしたものに変化しつつあります。
まだ大丈夫。できるだけお腹のことを忘れようと努力を試みるものの…ダメだ忘れられない。
ズキズキは突如、ごまかしの効かない痛みにジャンプアップしたのでした。

油分の多いパンチが効いたものを、ブランチとして食べたからでしょうか。
それとも大崎さんのあまりの気持ち悪さに、体がショックを起こしたのでしょうか。
予期せぬビッグウェーブ襲来に、わたしはその場から動けなくなってしまったのでした。
内側から突き上げてくる痛み。
それに伴って全身を覆う鳥肌、滲む脂汗、震える手足。
どこかに腰を掛けたいと思っていたわたしに、彼が振り返って首を傾げます。
「どーしたの?」
「お腹…すごく痛い…」小さな声で、そう返すのが精いっぱいでした。

「まあ、そんなんすぐ忘れるっしょ」
ははーん、みたいな顔をして、大崎さんはタブレットに視線を戻します。
え?忘れられない痛みだから、脂汗出てるんですけど。
しかしおもむろに向き直った彼は「すぐ忘れるっしょ〜」再びそう言ったあと
「いえーい!」と満面の笑みでわたしのお腹にチョップを入れてきたのでした。
なんだこのデブ…(゚Д゚) 
「…そういうの今笑えないから…」
と、言い終わる前に再び「いえーいチョップ」が炸裂します。
わたしを心配する様子のかけらもない彼は、まるでいたずらを楽しんでいるかのよう。
この人ホント何なの…。
ものすごい痛みと訳のわからなさのコンボにわたしは、ぶっ倒れそうになったのでした。

それから数分の間で徐々に波は引いていって、丸めていた背も真っ直ぐに。
鳥肌も脂汗も引いていきました。
はー、一時はどうなることかと思ったけど、回復して良かった良かった。
隣にいる大崎さんに「ごめんね。もう大丈夫だから」と、なぜだか謝って歩き出します。
早く駅につかないかな。
もう2度とこの人に会いたくない。
きっと以前交際していた二重人格さんも、こういう所に腹を立てたのでは。
ううう、5月場所どうしよう…。
あれこれ考えながら歩くスピードを速めたわたしに、大崎さんが声を掛けてきました。
「み、みりちゃん、まだ、時間、だ、大丈夫?」
美容室の予約まで余裕がありましたが、早くひとりになりたいので「何で?」とひと言。
「あのっ、五反田に、あるから、い、行かない?」
2つ隣の駅に何の用でしょう。「何があるの?」と、彼を一瞥。
すると、頬肉をだるんだるんと緩ませた大崎さんは言いました。「え〜、ホテル…」
行かねぇーーーーーーーっ‼︎

ああ、さっきからタブレットを見ていたのはそれですか。
「五反田 ホテル 安い」とかで検索していたのでしょうね。
「行かないよ。わたし予定あるし」
「えっ?ええ〜。おれ、せっかく準備してきたのに〜」
準備って?勝負パンツとかそういうの?
それは何かと質問すると、ぶらり〜んと垂れ下がったショルダーバッグから
紙袋を取り出した大崎さんは、照れくさそうにちらりと中身を見せてくれました。
…おまわりさん、この人です('A`)

グッズは2つ。
1つはまあわかるとして、もう1つは…さすが風俗大好き人間といったところでしょうか。
それをずっと持ったまま、アシカを見たり、イルカショーで手を叩いたりしてたんかい…。
わたし、本当にとんでもないヤツと交際してたのね…と、思わずため息が漏れたのでした。


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