Benny Golson
2008年09月27日
スコット・ハミルトン&ベニー・ゴルソン/ライブ・レポ


ライブで体感するステージの華々しさと
そのステージの裏側の姿を
どれだけ想像できるか・・・
なんだか偉ぶって書き始めたけれど
今月の22日と24日の両日のライブで
偶然垣間見たシーンから
私とウチの伸ちゃんは
何ともうまく伝えることができないけれど
衝撃を受けるほどの感動を味わったのだ。
◆22日は東京TUCにてスコット・ハミルトン氏

スコットさんの演奏は今回で3度目の観戦となった。
全て同じ東京TUCでの観戦だが
このライブハウスは程好いスペースで
音的にも視覚的にも最後尾席からも
テナーの息使いまでも聞くことができて
ステージへ手が届くような感覚でライブ観戦ができる!
スコット・ハミルトンさんは
何かで聞き知った情報だけれど
演奏前のサウンド・チェックは妥協がなく念入りに調整をする
・・・と聞いたことがある。
私の観戦した3回のライブでも
演奏中の度々の合間に
自身のサックスの朝顔管とマイクロフォンとの距離や
音量の調整のチェックをする場面を見たし
この度のライブでは
1曲目の演奏開始早々
マウスピースと締金(リガチャー) を付け直したり
中盤ではとうとうリードを外して付け直したり・・・のシーンも見た
だから相当神経質な方だろうと思うかもしれないけれど
スコット・ハミルトンさんのテナーの音色は
丸く深く、そして明るく爽快で、
曲によっては
テナーの音色にとろけてしまうほどセクシーだったりする
楽器に神経を使う時に垣間見る神経質さとは程遠い音色のテナーなのだ。
そして
演奏後、楽器から離れファンの方々に囲まれて歓談している様子は
お茶目な表情も見えたりして
すこぶる大らかな人柄なのだと想像する。
今回も東京TUCの支配人の紳ちゃんのお計らいで
数人の熱烈なるスコット・ハミルトンさんのファンの方々に混じって
楽屋におじゃまして記念撮影とサインをいただいてしまった!
楽屋でのスコットさんは
まるで旧知の友のように接していただき
「スコットさんは本当に好いヒト!」の印象を重ねる
私とウチの伸ちゃんなのであ〜る!
しかし・・・・
演奏中に時折見る
楽器を気使う神経質な様子と楽屋での「好いヒト!」の二面性が
なんだか不思議な印象として記憶に残った。

東京TUCの支配人の紳ちゃんとウチの伸ちゃん

◆24日はBLUE NOTE東京にてベニー・ゴルソン氏
ベニー・ゴルソンさんは
私達夫婦にとっては、つい最近知ったテナー奏者で
ライブ観戦もこれが初となった。
しかし、
ベニー・ゴルソンさんのつくった曲は
いくつもなじみで聞き知っていたし
ごくごく最近トム・ハンクス主演の「ターミナル」で
ベニー・ゴルソンさんにすっかり嵌ってしまった私は
トム・ハンクスが演じる映画の主人公のビクターに負けないくらい
ベニー・ゴルソンさんに会いたくて
この日のライブを渇望していたのだ!
ベニー・ゴルソンさんを知ってから
短い時間ではあったけれど
ゴルソンさんについてあれこれ調べたり動画を見たり
もちろん音も聴いて
バリバリ系ではないどこか人肌を感じる懐の深い
ゴルソンさんのテナーに人柄を重ねて
おおらかで暖かいヒトなんだろうなぁ・・・と
想像していたのだ。
さて当日はベニー・ゴルソンさんを渇望する表れで???
入場1番で当然のようにゴルソンさんの目の前至近距離の席をゲット
そしてここからがなんだか神ががかったラッキーな機会に遭遇したのだった!
開演前の寛いだ時間に今回のライブに参加している
ジョー・ファンズワース(ds)さんがビールをもって客席に出て見えて
その側を偶然私が通りかかって
何故か英語も出来ない私が
「4年前の北海道の岩見沢のJAZZフェスで
ハロルドメイバーントリオ+矢野沙織
(矢野沙織(Sax) / Nat Reeves (B) / Joe Farnsworth (Ds) / Harold Mabern (Pf))で
ジョー・ファンズワース(ds)さんを見ました!」と
声をかけてしまったら
大そう喜んでくれて
その後スグ私を楽屋に連れて行っていってくれて
メンバー皆さんのサインと握手をいただいた・・・・!!
(夢のような出来事だった)
この楽屋で見たシーンはこんなふうだった
わりと広々としたBlue Noteの楽屋で
食事中のバスター・ウイリアムス(bass)さんと
食後のマイク・ルドン(piano)さんは向かい合わせに寛いでいた
ベニー・ゴルソンさんは二人から距離をおいて
鏡の前でサックスのチェックをしていた
その様子から声をかけるのも申し訳ないような
近づきがたい雰囲気で
素人の私にも
「リードの湿度や何らかのコンディションが良くないらしい・・・」と想像できた。
遠慮しつつも握手とサインだけいただいて
早々に楽屋を後にした私だったけれど
ゴルソンさんの悲しい表情やせっぱつまった様子が目に焼きついて
開演まで心配だった。
開演になると私の心配は他所に
満面の笑みとともにゴルソンさんはステージに上がり
1曲目の♪WHISPER NOTが始った。
1コーラス終わるとゴルソンさんはステージを下り一端楽屋に退場した
舞台はピアノ・ベース・ドラムのトリオとなり
演奏が続く・・・・。
開口一番の1曲目から思い切った演出だなぁ・・・とも思えたけれど
さっきの楽屋の様子を知っている私には
たぶんテナーのトラブルがあったのではと動揺し
心臓がドキドキしてしまった。
しかしステージでは
ベース・トリオとなった三人が
なにくわぬ表情で演奏し続ける・・・・。
この時のバスター・ウイリアムスさんのベースが
なんとも云えない普通な演奏で(この様子を巧く伝えられないのだけれど)
大技もださずトツトツと弾くベースで
かえって腹の座った「凄い!」を感じさせるベースだった。
しばらくしてゴルソンさんがステージにもどり
たぶん通常よりたっぷり演奏した♪WHISPER NOTのほんの最後の部分に
もう一度加わってこの曲が終わった。
♪WHISPER NOTのが終わるとゴルソンさんは
バスター・ウイリアムスさんのことを
「Creator Buster Williams 」と客席に紹介し
(英語がわからない私なのでたぶん??そう云ったように思う)
会場から拍手が沸いた!
2曲目のUptown Afterburn からアンコールのBlues March まで
会場の誰もが満足する演奏と
曲間のトークやその時の表情や仕草で
ゴルソンさんはコメディアンのように会場を笑わせたりした。
たっぷり客席は誰もが楽しんだし
さすがと思わせるステージを堪能した。
しかし
ゴルソンさんの様子を一つ残らず観察したいと臨んだ私は
演奏中のサックスを吹いていない短い時間も
マメに朝顔管の中に仕舞っておいたサックスのマウスピースキャップを
取出してはマウスにキャップを被せ
テナーのコンディションを気使うゴルソンさんの姿を見た。
◆芸術は虚実の皮膜にある
これは
「芸術は虚と実との境、
真実と虚構との微妙な境目に 不思議な力がひそむ」
・・・と近松門左衛門の言葉を
何かのテレビ番組で聞き知ったのだけれど
22日のスコット・ハミルトン氏
24日のベニー・ゴルソン氏
二人のテナー・サックス、ビッグネーム奏者の
演奏に向かう(楽器と対峙する)厳しさと真摯な姿
そして
ステージ上では曇りなく晴れ晴れとした姿で客席に向かう
両極の裏と表の境目をほんの一瞬だけ垣間見たライブで
JAZZ界の
海越えてやってくるビッグネームの演奏者へ
深く敬意を表しつつ深い感慨を受けたのでした。

