令和6年2月22日(木)、第一回定例会の一般質問にてブルーカーボンプロジェクトについて質問しました。
大田区では現時点ではブルーカーボンプロジェクトへの取組は行なっておりません。しかしブルーカーボンプロジェクトに取り組む素地は十分にあると考えております。
大田区は比較的波の穏やかな運河が多くあります。ふるさとの浜辺公園の他にも城南島の前浜干潟保護区やつばさ浜、海老取川なども藻場になる可能性があります。大森ふるさとの浜辺公園ではコアマモ移植実験を続けており、素晴らしい研究を重ねております。
私はこれらの取組を大田区発のブルーカーボンプロジェクトに発展させることができるのではないかと考えており、臨海部の他特別区や東京都、企業、大学などとの連携を要望しました。理事者答弁は必ずしも否定的なものでなかったので、今後の展望を期待しています。
次にブルーカーボンプロジェクトについて質問いたします。
地球温暖化対策は全世界の緊急課題です。この地球温暖化をもたらす温室効果ガスの主成分は大気中の二酸化炭素(CO2)です。
そこで現在、世界各国が大気中のCO2削減に真剣に取り組んでいます。ここで、ブルーカーボンというものが、優れたCO2の吸収源として脚光を浴びるようになりました。
ブルーカーボンとは、沿岸・海洋生態系に取り込まれ、そのバイオマスやその下の土壌に蓄積される炭素のことを指します。
2009年に公表された国連環境計画の報告書 Blue Carbonにおいて定義され、CO2吸収源対策の新しい選択肢として世界中から注目されるようになりました。
ブルーカーボンの主な吸収源としては、藻場や干潟などの塩性湿地、マングローブ林があげられ、これらは「ブルーカーボン生態系」と呼ばれています。
この「ブルーカーボン生態系」のCO2吸収能力は極めて高く、単位面積当たりのCO2吸収速度はグリーンカーボン生態系の5倍~10倍に当たると言われています。
また、ブルーカーボンは生態系の死後、最終的に浅海底(せんかいてい)の泥の中に貯留されますが、ここは無酸素状態のため、バクテリアにより分解されてCO2に戻ることはなく、数千年という長期間に渉って貯留されます。
この2つの特徴により、ブルーカーボンは優れたCO2吸収源として、脱炭素を目指す現代社会において注目を集めています。
このブルーカーボンの活用に向けた取り組みは日本全国の地方自治体でも行われています。
横浜市では、2011年度に海洋資源を活用した地球温暖化対策の取り組み「横浜ブルーカーボン事業」を立ち上げました。
具体的な取組としては、市民や企業などによる海岸清掃や藻場の造成・再生という活動があります。
さらに横浜市独自の「横浜ブルーカーボン・オフセット制度」を設け、CO2吸収・削減量をクレジット化して、このクレジットの売買により、活動の活性化を図っています。
クレジットの対象は、地元産ワカメの地産・地消や海水温熱ヒートポンプの導入、横浜市海の公園にある海草藻場のアマモ、などです。
また、アマモ場を対象にして、ブルーカーボンのCO2吸収・削減量の定量化にも取り組んでいます。
大阪府阪南市は大阪湾に面しており、ブルーカーボン生態系の一種であるアマモの自生地であるアマモ場があります。
2018年にはこの地で「全国アマモサミット2018 in 阪南」が開催されました。アマモサミットは「アマモ」を象徴的なキーワードとして、海の自然再生・保全を テーマに議論をする全国的な大会で、2022年には館山さざなみ学校のある館山市でも全国アマモサミットが開催されました。
私どもが住む大田区では現時点ではブルーカーボンプロジェクトへの取組は行なっておりません。しかしブルーカーボンプロジェクトに取り組む素地は十分にあると考えております。
大森海苔のふるさと館では、毎年、大森ふるさとの浜辺公園の人工海浜にて海苔の生育観察をしています。不作の年もありますが、往年を偲ばせる黒々とした立派な海苔を収穫できる年もあると聞いております。また都市基盤整備部では五洋建設とともに同じく大森ふるさとの浜辺公園にてコアマモ移植実験を続けており、素晴らしい研究を重ねております。
私はこれらの取組を大田区発のブルーカーボンプロジェクトに発展させることができるのではないかと考えております。
大田区は比較的波の穏やかな運河が多くあります。ふるさとの浜辺公園の他にも城南島の前浜干潟保護区やつばさ浜、海老取川なども藻場になる可能性があります。
子供達へのSDGs教育という観点からも近場にブルーカーボンプロジェクトがあることはとても有意義です。みらい学園中等部は昨年11月に江ノ島を訪れ、海藻の一種であるカジメがアイゴやウニの食害により磯焼けしている現状を学び、海藻の生い茂る「藻場」は水産動物の生育場や二酸化炭素の吸収源として極めて重要であることを学びました。先生からは大田区内でブルーカーボンプロジェクトの取組が行われるなら是非生徒を連れて見学したい、遠くに行かないで学べるのはありがたい、という言葉をいただきました。
海苔やコアマモの移植実験と合わせて、大森海苔のふるさと館の一区画に海苔やコアマモの移植実験やその意義を伝えるブースを設け学習機会を提供するのも検討の余地があるかもしれません。福岡市東区にある水族館、マリンワールド海の中道では博多湾で採取したアマモやそこにすむおよそ20種類の生き物が特別展示されました。水槽ではアマモに隠れて身を守るアミメハギや、細長いヨウジウオなどの姿を見ることができたそうです。また、水槽の前には高さ2メートルほどのアマモの模型が設置され、幼児達が魚のようにアマモに隠れて楽しむ様子が印象的でした。海苔のふるさと館でも同様な取組ができれば、東京湾は汚いとか、生き物がいないというようなイメージを覆し、実は多様な生き物がいる事を知ってもらえ、コアマモをはじめとするブルーカーボン生態系は大切なんだ、もっと増やしていかなきゃ、という気持ちを醸成する事が期待できます。
大田区はSDGsの達成に向けて優れた取組を提案する都市として、内閣府から2023年度の「SDGs未来都市」に選定されるとともに、その中でも特に優れた先導的な取組を行う「自治体SDGsモデル事業」にもW選定されました。
今後は経済・環境・社会のそれぞれの側面の課題解決につながる取組を進めるとともに、三側面をつなぐ取組を実施することで、各側面における双方向の、より高い相乗効果の創出を目指すとしています。その中の「つなぐ」というキーワードでは大田区公民連携SDGsプラットフォームによるSDGs公民連携、民民連携の促進が謳われています。ぜひブルーカーボンプロジェクトについても臨海部の他特別区や東京都、企業、大学などと連携して推進される事を強く期待いたします。
ここまで縷々申し上げましたが、皆で協力しあって持続可能な社会を実現することを願い、本区の見解をお聞かせ願います。
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