文久三年(1863)五文久三年(1863)三

2015年08月07日

文久三年(1863)四

【象・絵画資料・続①】

◇芳豊の錦絵

①≪大判錦絵・芳豊画・遠州屋彦兵衛板≫(神奈川県立歴史博物館蔵:「サーカスがやって来た」32頁)
    

えど 003


  (表題)「中天竺舶来大象之図」。画面上に「中天竺馬爾加(ばるか)国の出生、産(うまれ)てより僅に三歳、高さ一丈二尺、鼻の長さ八尺、目方二千八百貫目、前足の爪鼈甲に似たり」。口上云が象の紋を付けた着物を着ている。改印「亥二月」。

②≪大判錦絵・芳豊画・遠州屋彦兵衛板≫(東京都立中央図書館蔵:「動物の旅」39頁/メトロポリタン美術館蔵)
     

メトロ 象 芳豊3


          (表題)「天竺之像此度両国広小路におゐて看物興行之図」。改印「亥二月」。

③≪大判錦絵・芳豊画・海老屋林之助板≫(東京都立中央図書館蔵:「動物の旅」39頁)
      

えど 019-2


                 (表題)なし。改印「亥二月」。

④≪大判錦絵・芳豊画・山口屋藤兵衛板≫(東京都立中央図書館蔵:「動物の旅」40頁)
    

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(表題)「異国渡り大象の図」。画面上部に「當年三才・高サ壱丈二尺・目かた二千八百貫目・身ノ丈三間半・鼻の長サ八尺/大象のおもさばかりか大かたの貫目のしれた異国□人 梅屋」。改印「亥二月」。

⑤≪大判錦絵・芳豊画・梅丸賛・山口屋藤兵衛板≫(東京都立中央図書館蔵:「動物の旅」39頁/ハーバード美術館
        蔵)
          

ハーバード 象1


 (表題)「欧羅巴人渡来大象の図」。表題左に「異邦の異獣を居ながらに有がたさは大御代の恩徳なりかし わたり来したけきけものも御膝もとなつきて今は猫のやうなる 梅丸」。改印「亥二月」。

⑥≪大判錦絵・芳豊画・梅丸賛・山口屋藤兵衛板≫(江戸東京博物館蔵)
    

えど 004


 (表題)「欧羅巴人舶来大象の図」。表題右に「風によるみとりの髪に柳橋つなきて象も見する両国 梅丸」。
    改印「亥四月」。 

⑦≪大判錦絵・芳豊画・園原屋正助板≫(江戸東京博物館蔵)
    

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    (表題)「新渡大象図」。表題左に「西両国広小路おゐいて興行仕候」。改印「亥四月」。


⑧≪大判錦絵・芳豊画・加賀屋吉右衛門板≫(川添裕コレクション:別冊太陽「見世物はおもしろい」28頁)
         

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                (表題)「天竺渡り大象之図」。改印「亥四月」。

⑨≪大判錦絵・芳豊画・了古賛・海老屋林之助板≫(江戸東京博物館蔵
        

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(表題)「中天竺馬爾加国舶来大象之図」。画面上に「天竺と日本をかけて両国の橋のこなたへわたる大象 了古賛」。改印「亥二月」。

⑩≪大判錦絵・芳豊画・了古賛・遠州屋彦兵衛板≫(豊橋市二川宿本陣資料館:「動物の旅」38頁/ハーバード美術館
    蔵)
       

ハーバード 象4


(表題)「中天竺舶来大象之図」。その横に「両国広小路ニおゐて三月上旬より興行仕候」。画面上に「ゐながらに千里の外のれい獣を見るも動かぬ御代のためしぞ 了古賛」。改印「亥二月」。

⑪≪大判錦絵・芳豊画・了古賛・森本順三郎板≫(東京都立中央図書館蔵:「動物の旅」38頁)
       

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(表題)なし。右上枠に口上文。その左に「ゐながらに千里の外のれい獣を見るも動かぬ御代のためしぞ 了古賛」。改印「亥二月」。

口上文は以下の通り。

   「日本に大象の舶来したるハ享保十四年己酉五月廿五日なり、是ハ交趾国より鄭大威といふ者、広南に産るゝ処の大象を貢(みつぎ)す、今を去ること百三十五年なり、其枯骨は中野の宝泉寺にあり、今度蘭人の横濱に持渡りしを大都会に引来るハ、惣身灰色にして、背の高さ六尺五寸、長さ九尺、鼻の長さ四尺三寸、尾の長さ四尺五寸、足の太さ三尺巡りありて、鼻の穴二ツの中に小さき肉爪ありて、よく針を拾ひ、芥子つまむ、水をのミ酒を啜るにも鼻をもつてし、食する時み鼻をもつて捲入る、一身の力皆悉く鼻にあり、口は頤に隠れて常に見ることなし、飼料ハ青葉、青竹、饅頭、橙、九年母、又好んで藁を食す、湯水を呑こと一度に二斗ほどなり、かゝる珍敷(めずらしき)大象の来れるハ泰平豊年の吉兆とやいふべき」

⑫≪大判錦絵・芳豊画・魯文賛・藤岡屋慶次郎板≫(「観物画譜」198/東京都立中央図書館蔵:「動物の旅」39頁)
              

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(表題)「中天竺舶来大象之図」。画面上に魯文の賛。改印「亥二月」。

魯文の賛は以下の通り。

「亜細亜洲中天竺馬爾加国出生、生じてより僅に三歳、形象(かたち)ハ泰山のごとく、鼻ハ桟(かけはし)に似たり、総身黒色、骨太く、肉肥(こへ)、前足の爪ハ鼈甲に等しく、後足の爪ハ碁石のごとし、尾ハ剱に似て、耳ハ袋をかけたるごとし、干時(ときに)文久三癸亥弥生上旬西両国広小路において観物場を開き、諸人の目前に一見を新にすることゝハなりぬ/姫氏国の毛綱につなぐ大象はうごかぬ御代のためしとぞなる/假名垣魯文賛」

≪大判錦絵・芳豊画・魯文記・藤岡屋慶次郎板≫(川添裕コレクション:「大道芸と見世物」181頁/森宮古美術・古
    美術もりみや)
       

象 古書

        

(表題)「中天竺馬爾加国出生新渡舶来大象之図」。その横に「来ル三月上旬より西両国廣小路に於て興行仕候」。改印「亥二月」。

魯文の文章は以下の通り。

「夫象ハ獣類の一君子にして行状(おこなひ)さながら人林も及ばず、夜ハ子に臥て寅に起、清浄を食して紅塵をいとへり、支那の大国なるに其地に生ぜず、支那人其象(かたち)を画(え)にて観(みる)のミ、故に漢土には象(ぞう)と号(なず)く、一身の運動鼻にあり、総體の力量(ちから)背(えびら)に止(とどま)る、一度此異獣を見る者ハ、七難を即滅し七福を生ず、看官駕を枉(まげ)て奇々として拍掌すべし/大象の鼻にかけてはほのめかす濁らぬ江戸の水の味ひ 假名垣魯文」

⑭≪大判錦絵・芳豊画・魯文記・藤岡屋慶次郎板≫(長崎歴史文化博物館蔵:「珍獣?霊獣?ゾウが来た!」35頁/
    ハーバード美術館蔵)
      

ハーバード 象2


(表題)「舶来大象図」。画面上に「天竺馬爾加国ヒツーベルゲン山の麓大平原に生ずる処産てより三歳女象なり于時文久三癸亥三月上旬より西両国廣小路ニ於て奉入御覧ニ候 魯文 象潟やむかしを今の朧月」。改印「亥二月」。

⑮≪大判錦絵・芳豊画・魯文記・森屋治兵衛板≫(「観物画譜」199
         

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  (表題)「新渡舶来之大象」。画面左上に「癸亥三月上旬 西両国広小路において一覧に備ふ」。改印「亥二月」。

魯文の賛は以下の通り。

   「堯舜の聖代には麟鳳国に顕るゝの瑞あり。今也(いまや)昌平二百年大象渡来の吉兆あり。抑(そもそも)今般(こたび)舶来の大象は中天竺馬(は)るか国の大原やに生ずる所にして、産(うまれ)てより僅に三歳、古今未曾うの霊獣たり。鼻は長大にして、一度に一斗の水を巻(まき)これを飲(のむ)こと一息に過(すぎ)ず。形ちはさながら小山のごとく、ち量(から)千斤の重(おもき)を負(おう)。一度これを見る者は七福を生じて七難を減ず。実(げ)に奇と称すべき逸物にこそ。/略伝 假名垣魯文記」

⑯≪大判錦絵・芳豊画・魯文記・森屋治兵衛板≫(メトロポリタン美術館蔵)
             

メトロ 象 芳豊


(表題)「中天竺馬爾加国出生大象図」。その横に「来ル三月上旬より西両国に於て興行」。画面左上に「當亥年三才、量(めかた)二千八百貫目、高さ一丈二尺、身の長(たけ)二丈一尺、鼻の長(ながさ)八尺」。その横に「大象の鼻も高天かはらつゝみ ゆたけき国へ貢物とて 魯文賛」。改印「亥二月」。

⑰≪大判錦絵・芳豊画・魯文誌・菊市板≫(東京都立中央図書館蔵:「動物の旅」38頁)
          

えど 020-3


(表題)なし。上枠内に魯文の「舶来大象之弁」。改印「亥二月」。

「舶来大象之弁」は以下の通り。

   「夫世界の廣大無極なる造化の巧工、憶説を以て量るべからず、大あれバ小あり、九万里に翅(つばさ)をひろぐる鵬鳥の對語に、蚊のまつ毛に巣を造(なす)蟭螟を出せり、今般西客我朝に渡来れる大象といつパ、印度馬爾加国の大原野に生ずる物にして、今歳僅か三年に充ず、然りと雖、形象長大力量(ちから)千斤の重を負(おう)、抑象ハ三獣の一位にして宇宙諸獣の司たり、清浄を好んで濁りに染ず、能く人心に通じ、人語を聴分、物に感じて必ず霊あり、中興蘭人一度此獣を本邦に持渡りしも、今を去ること二百年、今年文久三癸亥三月上旬、或人洋人より彼の大象を購ひ得て、東都西両国廣小路に観物場をひらき、諸人をしてこれを見物せしむ、 嗚乎、古来今往奇中の奇を目前になすの倖僥、実に太平の餘德といふべく、世にありがたきことならずや/扶桑稗官 假名垣魯文誌」

⑱大判錦絵・芳豊画・魯文記・菊市板≫(ハーバード美術館蔵)
             

ハーバード 象3


(表題)「天竺馬爾加国大象」。表題横に「西両国広小路に於て興行」。改印「亥二月」。

画面左上に「君が代のなかきためしを大象の鼻にかけてやほのめかすらん」。

魯文の文章は以下の通り。 

「こたび舶来の大象は歐邏巴洲葡萄呀国人、中天竺に渡来して生捕り、我神州にわたす所にして、古今未曾有の奇獣たり。象常に藁を食すること一度に五十把、水を呑こと一斗に余れり。鼻にて大盤石をもたげ、栄螺がらを捲潰すこと恰も鶏卵を砕(くだく)がごとし。夜は子に臥て寅に起き、清浄(きよき)を好(このん)で塵垢を忌(きら)ふと云へり。魯文」

⑲≪大判錦絵・芳豊画・魯文賛・加賀屋吉右衛門板≫(東京都立中央図書館蔵:「動物の旅」40頁)
                 

えど 021-1


  (表題)「天竺馬爾加国出生新渡舶来大象」。表題横に「来ル弥生上旬より西両国廣小路に於て奉御覧入候」。

魯文の賛は以下の通り。

   「夫象ハ三獣の一にして諸獣の司たり、大国の大原野に生じて、産れながらに牙あり、一身の運動鼻にあり、食物は清きを好ミて紅塵を忌、夜ハ子に臥て寅に起、能(よく)人語を聴分、人心を悟ること、恰も神の如し、今泰平の時に當て此祥瑞を目前に観(みる)の僥倖、将に麒鳳に比すべき而已/大象のはなに狂ふやてふ胡蝶 假名垣魯文賛」

⑳≪大判錦絵・芳豊画・魯文賛・辻岡屋文助板≫(「武江観場画譜」五十四/大阪城天守閣蔵:『大阪の引札・絵びら』
      64頁)
              

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(表題)「新渡舶来之大象」。表題左に「来ル弥生上旬より西両国廣小路におゐて興行」。画面上に「つばくらをなぶるや象の鼻ばしら 假名垣魯文賛」。改印「亥四月」。無声筆で「文久三年」の朱書きの書き込みあり。

㉑≪大判錦絵二枚続・芳豊画・魯文賛・辻金松堂板≫(マスプロ電工美術館蔵:「東京・横浜開化絵」49頁/川添裕コレクション:「大見世物」61頁/メトロポリタン美術館蔵/ボストン美術館蔵)
     

ボストン 象 芳豊


  (表記)「新渡舶来之大象」。表題横に「来ル弥生上旬より西両国廣小路におゐて興行」。改印は「亥二月」。

魯文の「演義」は以下の通り。

「聖代の德沢海外に溢れ、異邦の珎物、奇奇たる鳥獣、時を選バす舶来せり、そが中に、今般新港横濱に舶来せる正眞活物の大象ハ、中天竺馬爾加国ヒツペルゲンといへる大山の麓数千里の大原野に生ずる所の物にして、歐邏巴葡萄呀国の人アルキウルといへる異人、彼地に渡来して生捕(いけどり)きたり、我神州に持渡れり、生じてより僅に三歳、形象ハさながら泰岳のごとく、鼻ハ将に梯を見るに等し、力量(ちから)千斤の鑊(かまへ)を負(おい)、路を行こと三百餘里、夜は子に臥て寅に起(おき)、人語を聴分(ききわけ)、人心を推す、此霊獣や火を消(けし)、水をおさめ、悪病を除き、毒氣を退、一度これを見る人々、七難を滅し七福を生ず、諸君氏薏(きそ)ふて一覧あるべし。文久三癸亥三月上旬/つばくらをなぶるや象の鼻ばしら/假名垣魯文賛」

㉒≪大判錦絵二枚続・芳豊画・糸屋庄兵衛板≫(江戸東京博物館蔵)
      

えど 015

 

(表題)「天ぢくぞう」。左上に「来ル三月朔日より西両国ニ而興行仕候」。改印不鮮明で判読不可。この時のものと推定する。

〈編者註〉上掲の錦絵①は「サーカスがやって来た」、②⑯はメトロポリタン美術館のデータベース、③④⑪⑰⑲は「動物の旅」、⑤⑩⑭⑱はハーバード美術館のデータベース、⑥⑦⑨㉒は江戸東京博物館のデータベース、⑧は「別冊太陽」、⑫⑮は東洋文庫画像データベース、⑬は「大道芸と見世物」、⑳は「大阪の引札と絵びら」、㉑はボストン美術館のデータベースより拝借した。



misemono at 10:28│Comments(0)TrackBack(0) 江戸時代 文久3 

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