1931年に施行された医薬分業法は、83年の法改正で投薬特別指導料が、86年の法改正で、薬剤服用歴管理指導料が新設されてから、調剤薬局業界の市場規模は膨らんでいった。

実数で見ると、2005年度に4兆5927億円だった調剤医療費は、2010年度には6兆822億円に膨らんでいる。

調剤大手のアインファーマシーズがジャスダックに上場したのは1994年、日本調剤が東証二部に上場したのが2004年で、日本調剤の三津原会長が2014年に手にした報酬額は6億7700万円と過去最高を記録した。

原資を税金と保険料に頼る業界が、株主配当や経営者報酬に多額の金銭的リソースを投入するのは果たしてアリなのか、という議論は少し前から業界周辺でくすぶっている。

2012年6月のMedifaxという雑誌の記事でも、日本薬剤師会の三浦副会長は「医療、社会保障の中で、上場して株主に配当することへの違和感は多方面からも聞こえてくる。」とし、一人の開設者が何百もの薬局を持てる仕組み、それを上場し、規模拡大と報酬・配当の拡大を可能にする仕組みに対する「違和感」を認めている。

実数で見ると、平成12年から22年の10年間で、薬局勤務薬剤師は7万4000人から12万7000人へと倍近く増えたのに対して、薬局開設者は2万1000人から1万9000人へと減少しているが、三浦氏の説明では、薬局は1店舗ごとに独立して認可され、それぞれに管理薬剤師が常駐しているので問題はないらしい。

(しかし、これもかなり怪しい。というのも、現場では管理薬剤師の住所が登録店舗と何百キロも離れていることもよくある。)

上述した最高報酬の三津原氏は高額報酬の批判にこう答えている。

「完全なやっかみですよ。当社の店舗は500店ほどあります。私の報酬は1店舗当たり120万円にしかならない。一般的な小売店主の方が利益を得ているんじゃないですか。しかも、私は10社の社長を務めていますから、正当な対価だと思います。」
(三津原博の名言ー「高額報酬を批判する人がいることについて語った言葉」)

厚労省も調剤メガチェーンの問題は認識しており、今年度の調剤報酬改定で、処方箋受付枚数が4000回超、集中率70%以上、受付回数2500回超、集中率90%以上の薬局にはペナルティが課されることとなった。

要は、大規模集中型の薬局は利益を吐き出しなさい、ということだが、「資本主義社会では利益が社会の評価です。」とのたまう三津原氏のような(薬剤師ではなく)「経営者」にはさしたるペナルティにもならない。

というのも、厚労省が想定するメガチェーンの業態は大手病院の門前で集中率と枚数を巨大化した店舗だが、既にそういった「規制」の動きは敏感に察知され、先手を打たれている。

日本調剤のようなメガチェーンが今熱心に拡大を急いでいるのは、大手病院の門前ではなく、医療モールの運営で、この業態なら厚労省の「規制」の対象にはならない。

医療モールとは調剤チェーンが同じビルに複数の診療所を集めて運営する業態で、日本調剤は今年度だけで10件以上、総合メディカルは三井不動産と組んで、やはり10件以上の新設を計画している。

健康保険法の保健薬局及び保険薬剤師療養担当規則には「保健医療機関と一体的な構造とし、又は保険医療機関と一体的な経営を行うことはこれを行ってはならない。」と規定されているが、診療所と薬局の出入り口が別々なら一体的構造とはみなされない、というアホウみたいな解釈が成り立っているので、医療モールの業態は法的には認められている。

(じゃあ、医薬分業って何なの?院内調剤と変わらんじゃん、という疑問は措いておくとして・・・)

医療モールの問題点はこういった「規制逃れ」の点だけではなく、診療所と薬局の癒着という側面にもみられる。

表面上、医療モールのテナントは診療所と薬局のそれぞれが賃貸契約しているが、実態は診療所医師、薬局開設者、オーナーとの間で不透明なやり取りが横行している。

薬局が診療所の家賃を支払ったり、薬局自体がオーナーになっているケースも珍しくない。

こういった医療行為以外での金銭的な利害関係は薬品の選定などへの影響から「医療の質」をゆがめるが、市場で勝つのが社会の評価な薬局チェーンでは無視できる程度の誤差なのだろう。