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無期懲役囚、美達大和のブックレビュー

教養を深めたい、仕事に生かしたい――。
人として成長するために本を読みたいと思っても、何から読めばいいかわからないビギナーのためのブログ。
服役中の無期懲役囚・美達大和から届く書評を随時公開。
週2回をめどに更新していきます。


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「仕事について」 第90話

前回までのあらすじ----------
高いクルマを買う場面では、男は弱いものだ。
「そんなに稼いでたっけ?」と
攻め込まれる人もいて、何とかしてやらねば!と
こちらも奮起するのであった。

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いかに女の人をその気にさせるかです。

そのため、カップル・夫婦の市場では、布石をバンバン打ち、
ネガティブな声を消すようにしていました。
初めに女の人がどんな性格か判断します。
メイクの有無や方法、ファッション、私との受け答えから、
堅実派か、カカア天下(この言葉、古いですね、きっと)かどうか、
男の人との関係を推測していました。

見栄っ張り(お洒落な人は、自分を中心にされるのを好みます)なら、
停車するたびに集まる視線の優越感を
たっぷり感じてもらいます。
同乗して観察していると、この人は見栄っ張りだな、
虚栄心が強い、目立ちたがり屋だというのが、
すぐにわかりました。

その場合、外車を欲しいと自覚させるのは簡単ですが、
支払の予算がネック(ファッションの
関係のローンなど多く)になります。
女子校の近くで信号待ちをする時(下校時刻に)などは、
美人であるほど狙ったシチュエーションが実現できました。

それは、女子高生のグループ(最低3人以上、多いほど良し)が
歩いて来て、外車と乗っている女性客に気付き、
注目してくれることであり、この時、
「あっ、ポルシェだ(他にBMWだとかベンツだとか、
詳しい子はアルファロメオなど口にします)」なんて声がすると、
「なんて素直でかわいい子たちなんだ」と呟きつつ、
心の奥では、「でかした、グッジョブ、ベイビー」と
叫びたくなります。

美人は男に注目されるより、同性の
あこがれのような視線に弱いからです。
すかさず、「この子たち、将来、○○さん(お客さんのこと)みたいな
大人になりたいなあと思ってんだろうなあ」
と言います(そして、自分にもグッジョブと)。

まんざらでもない表情で、口だけは、
「そんなことないですよ」などという女性に、
「やっぱり、ポルシェだなあ(似合うとは言わず)」
すかさず二の矢を放っておくのです。

カップルで試乗していれば、男性に向かって、
「○○さんは幸せもんだあ。こんなきれいな人といて、
しかもこの車だもんな。ここに幸ありってことか」と
ダメ押しを忘れません。
この場面からは、買うことが当然
という口調になります。

車のセールスでは、仕事というより遊びの要素が強く、
言葉も態度もカジュアルです
(年長者は別でしたが)。

お客さんと別れた後や、家でも妻は私の接客のことでは
笑ってばかりいました。
それは、日頃、冗談ばかり言っている私が、
そのまま、セールスしていたからです。

車を売ること言うより、お互いに外車好きという同士が、
自由に話しているという雰囲気でした。
意識したことはありませんが、金融業と違って
自分も楽しめるという自然な思いがあったからです。
そのせいか、質の悪い車は
置かないようになっていました。

趣味の延長のような思いでしたが、意図せず、
それがよかったのです。お客さんへのアプローチは、
いろいろあります。

「外車って買ったら終わりじゃなくて、乗るたびに視線を浴びたり、
満足感が湧いてくるんだよねえ。
生活に張りというか潤いというか、いいよなあ」など。
想像の世界を広げますが、私自身の
空想癖が出ていました。

運転免許証があれば女の人にも運転してもらい、
男2人で盛り上げます(打ち合わせなしでもピタリとあいます)。
ウインドウに移っている車と自分を、
じっと見つめている人、少なくありませんし、
その場合はほぼ売れていました。

それぞれ、予算を考えてきていますが、
人の行動は決して合理的ではなく、情動の働きを得られれば、
欲しいという思いが優先します。
どこで情動を刺激し、その後冷却するかは
経験で自ずと身につくものです。
その点、見栄っ張りな人は
容易に買うお客さんでした。

他方、堅実派の女の人には、控え目にしますが、
勝負は車を降りてからです。
商談に入り、見栄っ張りの女の人が妻で財産も握っていると、
男の人と話すことなくなります。
車は欲しいのですが、女の人のファッションなど、
お金をかけているため、思いのほか、予算ができません。

欲しいという気持ちをしっかり固めてから、
家計状況について分析します。
どことどこを削ればいいか、論理で話、
変えるという方向に誘導するのですが、見栄っ張りな人は、
計画通りにお金を遣うのが難しい人たちでした。
だから、あまり深刻に考えず、いける、大丈夫、
ポルシェのオーナーだあっ、でいいのです。

堅実派の人には、コストの問題を強調します。
この人たちの主張は、車だけにそんなにお金をかけられない
(本当はお金はあるけれど)といのが大半でした。
ならば、もっと安い国産車でもいいのでは、
となりますが、子供の教育費をはじめ、住宅ローンだ何だと、
将来に向けての人生設計と
資金計画が前提となっていました。

「この人が欲しがっているのも知っているし、
できたら買ってあげたいけど、子供がねぇとか、
家のローンもあるし、残念だけど……」

と女の人が口にすると、男の人は大体は下を向き、
黙り込んでしまうのでした。
しかし、天使の美達(いつから?)は、
これ、得意のパターンだったのです。(美)

*次回の「仕事について」は、
3月7日更新予定です 

「仕事について」 第89話

前回までのあらすじ----------
輸入車を買う客は虚栄心の強い人が多かった。
試乗が終わり、店にもどったとき、
かならずしているサービスがあった。

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それはポラロイドカメラ(なつかしいです)で
お客さんと車の写真を2~3枚、撮ってあげることでした。
1枚は運転席に座っているシーン、
1枚は降りて車のフロント部分に立っているシーンが基本です。

カップル・夫婦は必ず2人とも写真の中に入れた後、
それぞれ1人ずつ撮っておくのも忘れません。
ナルシスト、多いんです、外車に乗りたい人は。
外車の場合は、車という商品より、
外車の希少性が持つムードや、ステイタス、
一種の夢を膨らませるようにしていました。

その外車に乗っている自分、所有している自分という
姿・状態が大事なのです。
端的に考えれば、どの車に乗ろうと
人間性が変わるわけではありません。
しかし、それは第三者の
思いであり、本人は違います。

物質に託した自己実現の一つであって、その感情は昂揚して、
満足感や達成感すら覚える人もいるのです。
逆に何台も所有すると、「逓減の法則」ではありませんが、
その昂揚感はなくなっていきます。

ですので、私がするのは、その気分や
昂揚感の演出であり、
それを感じてもらうことでした。

「いい車だよね。○○さんに乗って欲しいって車も言ってるよ」

そう言うとほとんどの人は、
心から嬉しそうな表情になります。
その事がある生活を具体的に想像させるように
努力していました。

出勤や彼女(彼氏)・妻(夫)とのドライブなど、
映像になるように想像してもらうのです。
この段階で価格は別として、欲しいという気持ちを
明確にしておきます。それから商談ですが、
99%は価格・支払いの算段と交渉です。

価格は他店を調べて、ほぼ同じように付けていました。
実際には利益を薄くしても支障がないので、
値引き額は他店を上回ります。
しかし、最初から、一気に値引きしません。
相手の状況を訊き出し、相場より
わずかに下げた価格で交渉します。

独身者ですと初めの予算より、2割、
時には3割以上は払えるのです。
こうして少しだけ下げた価格で交渉していると、
当初に想定しておいた価格に下げた時に
すんなり契約となりますし、
時には上のグレードが、1年新しい車へも換えることができ、
余計に喜んでもらえるのでした。

お客さんが電卓を叩きながら
何度も給料と生活費を計算して、
酒を呑みに行くのやめようとか、外食を減らして
とぶつぶつ言うのを聞いていると、
こちらも情が移るというか、
なんとかしてやろうという気になります。

それと人というのは本当に欲しいとなれば、
与えられた境遇の枠を超えて何とかするんだな
ということが再三ありました。
そういうお客さんに、心の中で、
「ガンバレ!」と励まし、俺もガンバルと、

「よっしゃ、△△円でいいよ。オメデトウ。
○○さんもBMWのオーナーだ」

となります。あいてはドンと値引きするのを見て、
感動モノの笑顔になりました。
ここでしっかり握手などしますが、
中にはちゃっかり妻の手を握る人も少なくありません、
それも両手でいつまでも。
(お、おおい、ちょっと時間、長いだろうとか、
両手かよ、と思いつつもうれしい気分です)

最後の交渉で手強いのは彼女、
または奥さんです。
(住宅販売と同様に、この国が男尊女卑だなんて
悪い冗談だろ、としか思えないくらい、
女の人の権限の強さを見せられました)。

「車にお金を遣うなんて」

「外車に乗るほど稼いでたっけ?」
(これ、グサッと来ます。鬼ですね)

「子供にお金かかるんだよ」

「私の服に使ったほうがいい」

「国産車だって車に変わりはない」

「どうせ、すぐ飽きるのに」

などなど、男は、ボロボロのサンドバッグ状態になります。

「外車なんか買ったら、家族を放っておいて乗り回しているでしょ」

と、日頃からの信用のない人も少なくありません。
それでも、一緒に来てくれるだけ、まし
という見方もできますが、男の旗色は極めて悪く、
見ていても気の毒でした。
男の平均寿命が短いことに大いに納得したものです。

私の義侠心が膨らみ、なんとかこの人を
オーナーにしてやろう、と頑張りました。
攻撃点はただ一つです。
相手の女性、この一点に集中します。(美)

*次回の「仕事について」は
明日更新予定です。 

管理人から、お詫びとお知らせ。

読者のみなさま、

こんばんは。
いつもご購読ありがとうございます。

木曜日の更新をできなくて
申し訳ありません。

管理人の都合により、
次回の更新は、来週土曜日と
させていただきます。

心苦しいですが、
ご了承くださいますよう
お願いいたします。


管理人

みたつ・やまと●1959年生まれ。2件の殺人を犯し、長期刑務所に服役中。現在でも月100冊以上を読む本の虫で、これまでに8万冊以上を読破。初めて衝撃を受けたのは10代のときに出合ったロマン・ロラン著『ジャン・クリストフ』。塀の中にいながら、郵送によるやりとりで『人を殺すとはどういうことか』(新潮社)、『夢の国』(朝日新聞出版)などを著す。
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『私はなぜ刑務所を出ないのか』
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『刑務所で死ぬということ』
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『人を殺すとはどういうことか(文庫)』
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『人を殺すとはどういうことか(単行本)』
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『夢の国』
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