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無期懲役囚、美達大和のブックレビュー

教養を深めたい、仕事に生かしたい――。
人として成長するために本を読みたいと思っても、何から読めばいいかわからないビギナーのためのブログ。
服役中の無期懲役囚・美達大和から届く書評を随時公開。
週2回をめどに更新していきます。


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『目の見えない人は世界をどう見てるのか』 伊藤亜紗

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『目の見えない人は世界をどう見てるのか』
伊藤亜紗
光文社新書
760円+税
2015年4月刊

 目が見えないとは、世界をどう見ているのか、何をどのように働かせているのか、という思いで読んでみました。

 私の実の母は、病気で視力を失い、その生活ぶりを少しは知っているつもりでした。ボタンを押せば、機械の合成音で「〇時〇分です」としゃべる時計など、生活を補助する機器に、いちいち、こういう物があるのかと思ったりもしました。

 著者は「美学(びがく)」を専攻しています。この美学とは言葉で明確に表現できない(捉えられない)ものをはっきりさせる学問です。その著者が6人の視覚障害者の日々の生活についての感覚を聞き、その人たちが世界をどう見ているか(感じているか)を綴っていました。

 初めに、中途から視覚障害になった人は、周囲の友人の自分への気づかいに、互いの関係が疎遠になったことを自覚したと語ります。健常者にすれば、何かしてあげないといけないのでは、と身構えてしまうのが、逆に疎外感を与えてしまうのですね。これ、両方の気持ち、想像できます。

 視覚障害者の情景の捉え方は、健常者の二次元(平面的)でなく、三次元(立体的)なんです。たとえば富士山なら、見える人は横から見た三角形をイメージしますが、視覚障害者は噴火口を中心とした(上から見た)円錐形のイメージでした。

 ファッションでは、着てみて目の見える人が教えてくれた内容で決めていました。私の読者の中には、視覚障害者のために「触手話」と「指点字」を学んでいる人がいますが(がんばって!)、現代はそれらに加えて、電子化された音声読みあげ装置が普及してきたそうです(どんどん便利になってほしいですね)。

 五感の使い方も健常者と違いますが、詳しくは本書で見てください。本書は刊行から1年で10刷と売れています。なるほど、そうかという発見があるからでしょうね。周囲の距離感は、反響する音で判断するようです。ユニークなのは、美術鑑賞で、見える人と行き、言葉で作品について詳しく説明します。これは同時にコミュニケーションにもなるようで、こんな美術鑑賞の機会を増やそうと工夫していました。

 リオ・パラリンピックでもあったのですが、視覚障害者の自転車のロードレース(二人乗りで、見える人が前、見えない人が後に乗ります)の選手、見えない世界でのスピード感に恐怖はないのかと想像してしまいます。走り高跳びも、びっくりです。

 社会にいる時、母とはよく行き来していましたが、我が家に来ると、まず玄関からリビング、リビングからトイレ、浴室、自分の寝室までを歩いて、歩数と家具の配置を確かめます。以後、椅子でさえ移動させないよう注意していました。外を歩く時は、私の肘を握る母に歩道の段差や階段を知らせます。

「あと2歩で15センチの段差、上がるから」

「下りる、20センチくらい」

「階段、段差10センチくらい、普通(階段の奥行き・踏み面のこと)」

 など説明していました。

 家には4頭の猫がいたのですが、母は気配で「あら、1匹足りないのかしら」など、わかります。猫のじゃれ方でも、「これは〇〇ちゃんね」と当てるのです。雪が積もった道では、説明するよりも私が背におんぶしますが母は「大丈夫?」と心配し、私が「何言ってんだ、150キロだって軽いもんだ、俺には」と返すと、「いいや、ひっくり返ったら私が下にならない?」と言うのです。「何だ、そっちの心配かよ、しっかりしてんな。大丈夫、転ぶ時は前のめりに転んでやる」そう言うと、「フフフフ」と笑っていました。

 そんなこともあり、街中で視覚障害者を発見すると放っておけませんでした。みなさんもできる限りで手助けしてください。本書、ご一読を!

『われらが運命がどこへ率い、どこへ引き戻そうと、あとに従おう』

(ウェルギリウス『アエネイス』より)

このレビューで美達が紹介した本


『井村コーチの結果を出す力』 井村 雅代

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『井村コーチの結果を出す力』
井村 雅代
PHP研究所
1000円+税
2016年10月刊

 井村コーチとは女子シンクロナイズド・スイミング(シンクロ)の井村コーチのことです。中国チームをメダリストに、そのあとは再び日本チームをメダリストにした、「メダル請け負い人」とも呼ばれています。

 2016年のリオ五輪のチームは、これまでで最もハードにしごかれたとされていましたが、その井村コーチの指導方針・哲学はどんなものか知りたくて読んでみたのです。

「あと1ミリの努力で限界を越える」

「一番大切なのは心で、頑張ったつもりでも努力が足りない、もっと頑張ろう、努力しようと思えるかが心の才能(その通り!)」

「自分のやっていることは一番をとりにいかないといけない(全く同感!)」

「戦いの場に優しさを持ち込むな(これも同感!)」

「頑張りましたは、言いわけでしかない(同感!)」

「できる人が寝ている間に自分は寝ていたらダメ(こんなの、イロハのイ!)」

「失敗は自分が変われて多くのものが得られる経験(その通り!)」

「精一杯と思うのは自分の可能性を閉(と)ざしている(同感!)」

 などなど、私と同じ思考が並んでいました。成功する人は、しつこい・あきらめないのです。指導者としての3点セットは

1、悪いところをハッキリ叱る

2、直す方法を教える

3、それを確認する

 とありました。

「アリのように24時間働き、トンボのように複眼でものをみる」

 これも頭に入れておきたい言葉です。

 ブログのコメントで、度々、「続けるとは?」「どうしたら自分を追い込めるのか」「猛烈な努力をするには?」などと訊(き)かれます。私は、いつも逆にどうしたら自分の思い(こうなるのだ、こうしたいのだ)をあきらめられるのか、没頭できないのか、追求できないのか、不思議です。

 私は小さい頃から、奇矯(ききょう)な父のおかげで、

「やれない(やめる)なら初めからやるな」

「人の5倍10倍やれ」

「一番以外は二番も百番も同じ」

「努力なんか関係ない、一番以外はいらん」という言葉と共に育ってきました。

 そして、それが普通と刷り込まれて、当然のように実行してきたので成長するにつれて、俺はもっとできるはず、どこまでやれるか試したいという思いが強くなり、他のことを犠牲にしても、すべきことに集中するようになりました。自分ができるであろう最大値を知りたい、その積み重ねが「自分にしかなりえないなにものかになること」と信じています。大変だとか、苦しいとかは望むところです。

 どっからでも来なさい、ウェルカムという思いは学生時代から変わりませんし、楽しんでいます。念頭には、父の姿があるので、弱い自分など不要でしかありません。自分の人生なのに、自分が欲しているのに、なんでなまぬるいやり方ができるのか、わかりませんし、自分に甘いことは自ら自分を弱くすることです。言いわけをしたり、くよくよする暇があればやるしかありません。

 本当にそうなりたい目標があるのか、検討し、そうだと思えば他を犠牲にしてもやるべきです。あれもこれもではなく、まず、自分に克(か)つ不動の精神を作ってから、他に目を向けるという行動が大事、そう思いませんか。意志が弱いというのは、甘えです。そういう思い込みで、自分の怠惰(たいだ)を合理化しています。今すぐの効果を求めずに、とにかく続ける・めげない習慣を作ること、それしかありません。自己啓発についての書が数多(あまた)ありますが、結局は自分の人生は自分が「責任」を持って作るしかないのです。

 本書、ご一読を!

『勝利に際して己に勝つものは、二度勝ったことになる』

(ブプリウス『金言集』より)

このレビューで美達が紹介した本


「日本史の教養」第130回

日朝の国交樹立によって、不平士族を中心とする反政府運動は、征韓論をスローガンにすることはできなくなりました。この後、大久保は地租(ちそ)改正に乗り出します。それ以前に1875(明治8)年3月、地租改正事務局が置かれ、翌年の年末までに改正を終えることを決めていたのです。各地で改正事業が急ピッチで進められますが、大久保の存在を「太閤(たいこう)検地の秀吉にあたるもの」とした学者もいました。

 

地租は地価(土地の評価額)の3%と決められていたので、地価が地租を決めることになります。そして、地価の算定には米価(べいか。米の価格)が基準となるので「米価が地租額を左右する」ことになりました。

 

米価が安定していれば問題はありませんが、1876(明治9)年に米価が下落したことから問題となったのです。この年の米価を決めるにあたっては、前年迄の5年間の平均米価か、前年米価を用いることとされていたため、農民らは現状より高い地租を払わなければなりませんでした。

 

そこで農民らは、基準米価の引き下げや当年(その年の)相場の使用や現金ではなく米による納付を願い出たのですが拒否され、一揆となりました。まず、和歌山・茨城・三重の三県で大一揆となり、特に三重では処罰者が5万人に及んだのです。

 

政府は、一揆の報を受け、「速やか」に「鎮定」するとして、鎮台兵と東京警視庁の巡査を派遣して武力で鎮圧しています。その後、大久保が地租軽減を建議し、3%から2.5%となったのです。世間ではこれについて「竹槍(たけやり)でドンと突き出す二分(ぶ)五厘(りん)」という狂歌が作られました。

 

この件を一揆に対する譲歩と見るのが一般的ですが、大久保の建議「高額地租が国家隆盛(りゅうせい)の基礎となる民力の向上を阻害(そがい)しているのである」の通り、民力養成の視点から実施されたものとも言えます。これに伴い、大久保は官庁の統合・官員削減・給与削減など、行政改革をしました。

 

内務省では各寮を局に格下げし、警保局と東京警視庁を統合して警視局と改め、教部(きょうぶ)省を廃して内務省内に社寺(しゃじ)局を設置しています。次に大久保は、士族への政策を進めていきました。1876(明治9)年3月28日、陸軍卿山県有朋(やまがたありとも)の建言により廃刀令が出されます。

 

「大政一新して、士は文武(ぶんぶ)の常識を解き、藩は版籍を奉還(ほうかん)し、徴兵令が実施され、鎮台兵(ちんだいへい)・巡査によって人民保護の道がほぼ尽(つ)くされたといえるが、華士族(かしぞく)の者の中にはなお依然として旧習(きゅうしゅう)を固守(こしゅ)し、刀剣を帯(お)びる者が少なくない。これは頑陋(がんろう)であって、時態(じたい)の変遷と兵制の改革をさとらず、身を護るには必ず刀剣が必要であると思っているからである。この状態では国政上の防碍(ぼうがい)が生まれるばかりでなく、また軍人の外(ほか)、兵器を携(たずさ)える者があるのは、陸軍の権威にもかかわることである。そこで速(すみやか)に令を下(くだ)して帯刀を禁止し、国民をして漸次開明の域に進ませることを希望するものである」

 

この山県の建言で「太政官布告(だじょうかんふこく)第三十八号として出されました。

帯刀すれば没収されるのですが、武士の魂であり、維新後は身分を表わす象徴でもあった帯刀を禁じられるのは、士族にとって認め難いものでした。

 

さらに3月29日、大蔵卿の大隈(おおくま)は、秩禄(ちつろく)処分の最終案を出します。華士族に支給されている家禄(かろく)は封建(ほうけん)時代の約束によるもので、その時代が終わった以上、家禄の廃止も当然という理屈でした。

 

ただ、無償で廃止するのではなく、家禄に替えて金禄(きんろく)公債を給付する案となっています。実際の収入となるのは、公債の利子ですが、多くの士族には生活できない額でした。これに反対したのが、木戸でした。秩禄処分は致し方ないが、あまりに過酷であるという理由です。

 

4月26日の閣議では、全国の士族が半信半疑となり、ついには「困迫(こんぱく)(困窮)」におちいり、国家全体に与える損益はどれくらいになると思っているのか。「目前(もくぜん)}に雷同(らいどう)するような案で「慨嘆(がいたん)」に堪(た)えられない」

と述べています。

 

しかし、秩禄処分は当初の予定通りに実施されました。金禄支給を中止し、従前の禄高により、その5年ないし14年分を金禄公債(5%ないし7%の利子、5年間据(す)え置き後の30年償還。30年払いということ)で一括払いする制度が導入されたのです。

 

政府はこれにより、国家歳出の三分の一を占めていた重い負担から解放されました。また、金禄公債は民間での殖産興業の資金として運用されることにもなったのです。しかし、その実情には厳しいものがありました。

 

『天行健(てんこうけん)なり、君子(くんし)以(もっ)て自彊(じきょう)して息(や)まず』

(易経。天は休むことがなく、人もそれにならって、絶え間な努力し続けなければならない)

みたつ・やまと●1959年生まれ。2件の殺人を犯し、長期刑務所に服役中。現在でも月100冊以上を読む本の虫で、これまでに8万冊以上を読破。初めて衝撃を受けたのは10代のときに出合ったロマン・ロラン著『ジャン・クリストフ』。塀の中にいながら、郵送によるやりとりで『人を殺すとはどういうことか』(新潮社)、『夢の国』(朝日新聞出版)などを著す。
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『私はなぜ刑務所を出ないのか』
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『塀の中の運動会』
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『刑務所で死ぬということ』
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『人を殺すとはどういうことか(文庫)』
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『人を殺すとはどういうことか(単行本)』
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