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無期懲役囚、美達大和のブックレビュー

教養を深めたい、仕事に生かしたい――。
人として成長するために本を読みたいと思っても、何から読めばいいかわからないビギナーのためのブログ。
服役中の無期懲役囚・美達大和から届く書評を随時公開。
週2回をめどに更新していきます。


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『ゼロ・トゥ・ワン』 ピーター・ティール、ほか3冊。

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『ゼロ・トゥ・ワン』
ピーター・ティール
NHK出版
1600円+税

著者は、シリコンバレーでも著名な投資家の1人です。本書はスタンフォード大学起業講義録とあるように、起業したい人、もしくはプロのビジネスパーソンを目指す人に適した内容となっていました。

「君はゼロから何を生み出せるか」

こんなサブタイトルですが、内容は実践的でした。

「理想は競合者がなく圧倒的な独占が可能というコンセプトを計画し、それに全てをかける」

「創業時がぐちゃぐちゃなスタートは後で直せない」

「スタートは少人数で、似た人間を集めるべき」

「販売は隠れたボトルネック」

著者は次の四点が、真実への探究心をつみ取るものとしていました。
1、漸進主義(進歩は少しずつでいいという思考)
2、リスク回避に逃げる
3、現状への満足(過去の遺産で暮らしていきたい意識)
4、フラット化(グローバリゼーションの進行と共に、人は1人では何もできないと感じる)

そして、起業に際して答えを出すべき7つの問いを挙げています。
1、エンジニアリング(ブレークスルーとなる技術)を開発できるか
2、タイミングは適切か
3、独占、大きなシェアをとれるような小さな市場から始めているか
4、人材・正しいチーム作りはできてるか
5、販売・届ける方法はあるか
6、永続性(10年20年と残れるか)
7、隠れた真実(他社が気づいていない独自のチャンス)はあるか

5つか6つに答えられたらと十分としています。

本書は企業以外に、ここ20年あまりのアメリカのインターネット関連の先進的事業の歴史や、業界の「今」もわかるようになっていて、興味を湧かせてくれました。

関連では、
井上和幸『社長になる人の条件』(日本実業出版社)8000人も見てきた
安藤美冬『僕たちはこうして仕事を面白くする』(NHK出版)
加藤崇『未来を切り拓くための5ステップ』(新潮社)
上坂卓郎『日本の起業家精神』(文眞堂)何が障害なのか



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『自己評価の心理学』
クリストフ・アンドレ、フランソワ・ルロール
紀伊國屋書店
2200円+税

自己評価とは誰もがしていることかもしれませんが、正しいという根拠はあるのでしょうか。本書では自己評価のカラクリ、調和のとれた自己評価を持つためのコツ、改善方法など多岐にわたって解説されています。

自己評価の三本柱は、
・自分を愛する
・自分を肯定的にみる
・自信を持つ
となっていました。

自己評価の低い人は、幼少期の家族の接し方(主に親)に問題があるとか。どれだけの愛情をかけられたかで大きく変わります。私の場合、何万発という父の拳にぎっしりと愛情が詰まっていたのかもしれません。本書には自己診断テストや対処法あれこれも述べられていました。

関連では、
同じ著者の『自己評価メソッド』(紀伊国屋書店)33の処方箋
『なぜ人は他者が気になるのか』『ひとの目に映る自己』(以上2冊共、金子書房)
があります。



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『彫千代』
平山瑞穂
小学館
1700円+税

獄は入浴は刺青(いれずみ)の品評会のごとしです。いたずら程度の筋彫り(すじぼり・輪郭線のみ)から、滅多にいませんが手首から足首まで全身に彫ってある「どんぶり」まで、様々な彫ものが見られます。

本書は明治時代に実在した彫師(ほりし)の物語です。その名は彫千代(ほりちよ)。武家の子でしたが、刺青に魅せられてその世界に入り、外人居留地横浜で、外人を相手に活躍したのです。

彫千代のキーワードは「自由」。伝統・しきたりに囚われず、独自の彫りものを創ります。名声を得ましたが、裏腹に私生活は決してバラ色ではありません。本書は構成にひねりがあり、ラスト近くより、「えっ」となります。

さて、刺青の料金ですが、私が社会にいた頃で両肩(ポピュラーなタイプ!)で15~20万円、背中が30~70万円、全身で200~350万円でした。彫師の腕で差がつきますが、今もあまり変わらないようです。

ハガキ1枚分の面積が1回分で1~2万円という計算もあります。ロシアの皇太子や英国の王子まで、日本の刺青を彫りに来た程、評価は高かったのです。本書には、いかにも裏社会で生きる男の悲哀と刹那主義が描かれていました。

関心ある人は、
『日本の刺青と英国王室』(藤原書店)
『日本伝統刺青』(コアマガジン)
『歴史民俗学2000 No16 風俗としての刺青』(批評社)
『刺青』谷崎潤一郎の小説

他の関連では、
『ビジュアル・ワイド明治時代館』(小学館)
『グローブトロッター』(朝日新聞出版)外人旅行家の訪れた明治日本
『横浜チャブ屋』(センチュリー)当時の娼妓屋
『男の民俗学Ⅰ』(小学館文庫)いろいろな職人の仕事をイラストで解説
『おはなさんの恋 横浜弁天通り』(有隣堂)外人と日本女性の恋
があります。



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『けんかえれじい 上・下』
鈴木隆
岩波現代文庫
上下とも1000円+税

著者は童話作家です。大正8年生まれの著者の自伝的小説です。主人公の南部麒六(なんぶきろく)は、直情型で一本木、おまけに「けんか」好きでした。その麒六の子どもの頃から軍隊生活までの青春記で、特に中国戦線に派兵されてからの描写を読んで欲しいです。 当時の社会の世相や、軍隊での生活、中国での戦争の様子が興味をそそるでしょう。麒六の生き方が明解で『坊っちゃん』を読んでるようでもありました。軍隊生活もユーモラスに描かれ、上官とのやりとりは笑えます。

関連では、
『ハルマヘラメモリー』(中公文庫)あの池部良のエッセイ、良書
『日本陸軍兵営の生活』(光人社)
『陸軍めしたき兵奮戦記』
『理想的兵卒』『学徒出陣よもやま物語』(3冊共、光人社NF文庫)
『太平洋戦争最後の証言第2部』(小学館)力作!
などあり、当時を知るためにも一読下さい。(美)

『原爆を盗め!』 スティーブ・シャンキン

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『原爆を盗め!』

スティーブ・シャンキン
紀伊國屋書店
1900円+税

うーん、知的興奮の爆発だあ!という1冊でした。

本書はマンハッタン計画で原爆を作ろうとする科学者たち、その情報を盗もうとするソ連のスパイたち(中には、なんとマンハッタン計画に参加しているイギリスとアメリカの物理学者もいます)、ヒトラーの原爆開発を阻止しようとする男たちの3つの軸から成立していました。

物語は1938年にオットー・ハーンが従来の科学常識ではありえないとされた現象を発見した以降のことから語られます。核分裂でした。放射性元素のそばにウランを置くと、その元素の原子核から中性子(ちゅうせいし)が勢いよく飛び出すことはわかっていましたが、そのあとウランがどうなるか疑問だったのです。実際にはウラン原子は2つに割れました。その時にエネルギーを放出することから、科学者たちは原子爆弾を思いつくのです。

間もなく第2次世界大戦が始まり、ドイツが原爆を開発するという不安を抱いた科学者が、アインシュタインを通じてルーズベルト大統領を動かし、アメリカの原爆開発プロジェクト『マンハッタン計画』がスタートします。中心となった科学者はロバート・オッペンハイマー博士でした。

彼を中心に優秀な科学者が、ニューメキシコ州のロスアラモスに集められたのです。同時にソ連もなんとか、その機密情報を得ようとアメリカ国内でのスパイ活動を活発化させます。やはり、時を同じくしてヨーロッパでもドイツの原爆研究を阻止するためのチームが動き出すのですが、命がけの計画でした。

開発に必要な重水(じゅうすい)を作る工場の爆破に加えて、中心人物のハイゼンベルク博士の誘拐計画もありました。これらの国には優秀なインテリジェンス機関が既にあったのですが(日本も真剣に考えないと、情報が盗まれる一方です)、FBIとソ連のKGBの戦いが綴られています。

共産主義を信奉するイギリス人科学者フックスが、マンハッタン計画に参加して、ソ連に情報を流す以外に伏兵がいました。テッド・ホールというアメリカの若い科学者です。彼はこの計画によりアメリカだけが巨大な戦力(核兵器)を持つことに多大な危機感を持ちました。この頃、ソ連は敵ではなく、連合国側だったので、ソ連にも核兵器を持ってもらおうと、自分から情報を流したのです。これは双方が核を所有することこそ、使用に至らない、戦わないという当然の原理でしたが、観念だけの平和主義者(何ら抑止力を考えていない)には理解できないかもしれません。

実験は19455年7月16日に成功しています。

「音もなく太陽が輝いていた。少なくともそう見えた」

「昼間の太陽よりも何倍も明るい強烈な光にあたり一面が照らされた」

「驚いたのは光ではない。砂漠の寒い朝だというのに、晴れた日の昼間のような目を開けていられないほどの熱を顔に感じたことだ。熱いオーブンの扉を開いた時のようだった」

科学者たちの弁ですが、彼らは実験場から10キロ離れた地点にいたのでした。爆発音は240キロ離れた所でも聞こえ、320キロ離れた所でも衝撃波で窓を揺らすほどだったのです。1945年7月末にトルーマン大統領(ルーズベルトはこの4月に死去)は、ソ連のスターリンとポツダムで会うことになっていたので、この結果を告げ、牽制(けんせい)するつもりでした。

しかし、スターリンは、それを聞いても顔色は変えなかったと言います。なぜなら、スパイたちより、とっくに知っていたからです。その後は皆さんも知っているように広島と長崎に使われました。歴史の書には、日本がすぐにポツダム宣言を受託しなかったからとか、本土決戦になればアメリカ軍人の死傷者が100万人(本書では25万人)になるから仕方なく使ったとあり、当時のアメリカ政府要人も公式にはそう語っていますが、嘘です。

初めから日本人だから使う気でいました。また、トルーマンがスターリンと会談する(ポツダムで)以前に原爆投下は決まっています。今になり、アメリカに対して原爆使用(他にも民間人を無差別に虐殺、これが本当の虐殺です)を恨め、怒れではなく、そういうことがあったという歴史は覚えておくべきです。

戦争の歴史は、必ず勝った国によって作られます。戦後も日本が独立するまで、広島・長崎の惨状はGHQの検閲によって公式に報道できませんでした。本書ではオッペンハイマー博士やスパイたちのその後も描かれ、まるで映画のような構成で、一級の読み物となっています。是非是非、一読ください!

関連書は膨大ですが、
『オッペンハイマー』上・下(PHP研究所)その栄光と悲劇
『日本の原爆』(新潮社)日本も陸軍・海軍が別々で研究
『核と日本人』(中公新書)
『核がなくならない7つの理由』(新潮新書)核は絶対になくならない
『エノラ・ゲイ』(TBSブリタニカ)古いが、広島に投下したティベッツ機長らの言葉・

状況がわかる、
『ヒロシマはどう記録されたか』上・下 小河原正己のドキュメント・文庫版
『広島第二県女二年西組』名著
『原子雲の下に生きて』(アルバ文庫)37人の子どもたちの作文
『死の同心円』(長崎文献者)
『暗闘』上・下(中公文庫)トルーマンとスターリンの闘い
『なぜ、ナチスは原爆製造に失敗したか』上・下(福武書店)
『原爆から水爆へ』上・下(紀伊国屋書店)冷戦の内幕
『この子を残して』(平和文庫)落涙必須があります。

本書、歴史エンタメでした。(美)

「仕事について」第120話

前回までのあらすじ----------
私は、他の業者があまり付き合いたがらない
ブローカーをうまく利用して、
稼ぎを増やしていた。
そんなある日、父の事務所から電話が入り、
呼び出された。

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の会社にも、さまざまな人たちが出入りしますが、
父が最も喜ぶ話題は私のことでした。
どんなに機嫌の悪い時でも、
「息子さんは、最近どうしてますか」とか、
「社長、ところで息子さん、〇〇なんですってね」となれば、
父は途端に相好を崩し、
「そうだ。あいつはだな」と話し始めます。 

それで、出入りする人たちは、
いろいろと私の動静を探って父に報告するわけです。
だから、私のことはよく知っていたので、
こんなことを尋ねてきます。

「大丈夫だ、オヤジ。1人2人がダメになっても
トータルではプラスだから。心配すんな。
オヤジも土地の手付を貸したらいいのに」

「いやだ。父さんは千三(せんみつ)つ屋、
嫌いだからな。それにこれ以上、儲けても仕方ない。
あの世にまで金は持ってけないんだしな。
お前もしっかり儲けてんだから、
あとはしっかり遊ぶことだ」

「わかってるって。でもな、オヤジ。こんなもんじゃない、
俺はまだまだやらなきゃ。
ま、見てろ。せいぜい自慢させてやるからな」

私は、バカの一つ覚えみたく、こう言っていました。
父にとって、私が自分の思い通りではない時は、
バカだ、カスだ、ガラクタだ、
父さんの子でない、となりますが、
普段は臆面もなく、「俺の息子はだな」と
息子の自慢だらけになります。

およそ、慎みとか憚(はばか)りとは無縁の人なので、
これでもかというくらいに自慢するため、
絶えず、そのネタを提供していなければなりません。
他人が私のことをどう思おうと、
どう評価しようと毛程も気にならないのですが、
父は別でした。父に褒められたい
のとは違います。

父を、「おおっ、こいつはやるな」と驚かせたいのです。
単に知能や弁舌や仕事では、
私の方が上だと思っていますが、
原始的な心身の強靭さ、生命エネルギーの量、
単純明快な生き方では、とても敵いません。
私と父の意志の強さは、別種のものです。

私は自らをモチベーションし、目標を念頭に置くなど、
そこに作為があって貫徹しますが、
父はそんな目標もセルフモチベーションもなく、
ただやろうというので、
逡巡もなく貫徹できました。
それに気づいてからは、ああ、俺はこの人の息子なのに
大したことないのか、という思いがあるので、
頑張って父のやれないことを
少しでもやってやるとなるのでした。

褒められるのは嬉しいですが、それよりも文句を言わせない、
どうだ参ったか(参りはしない人なのですが)
という気概でした。
父に対しても、間違ってることは間違ってると言いますし、
何でも肯定ではなく、是々非々です(父は怒りますが)。
非常識な人だなと思いますが、
多過ぎる欠点も含めて、本当に好きな人でした。

人を丸ごと好きになるとは、こんなことだと思います。
その父の毎日の息子自慢のネタを提供するのが、
私の明日への活力にもなっていました。
「息子、調子はどうなんだ?」
「悪いわけないだろ。 いつも最高だ、オヤジ」すると、
父は当然だとばかりに笑顔になり、
こう言ったものです。(美)

みたつ・やまと●1959年生まれ。2件の殺人を犯し、長期刑務所に服役中。現在でも月100冊以上を読む本の虫で、これまでに8万冊以上を読破。初めて衝撃を受けたのは10代のときに出合ったロマン・ロラン著『ジャン・クリストフ』。塀の中にいながら、郵送によるやりとりで『人を殺すとはどういうことか』(新潮社)、『夢の国』(朝日新聞出版)などを著す。
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