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無期懲役囚、美達大和のブックレビュー

教養を深めたい、仕事に生かしたい――。
人として成長するために本を読みたいと思っても、何から読めばいいかわからないビギナーのためのブログ。
服役中の無期懲役囚・美達大和から届く書評を随時公開。
週2回をめどに更新していきます。


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『100回言ってもできないダメ部下を動かす上司の言葉』 横山信治

『100回言ってもできないダメ部下を動かす上司の言葉』
横山信治
中経出版
1400円+税
*先月届いたレビューです

9784046002457

みなさんの周囲に何度言っても、できない、やる気のない人はいませんか?

私のいる獄では、このような者が多数派を占めています。本書は、そんな人、特に部下を対象として、どう対処したらよいのか、また、できない理由は何だったのか、その理由を解明できるようにという狙いで書かれていました。

著者は、現在、SBIモーゲージ取締役執行役員常務の地位にあります。ダメ部下というのは、ほとんどが上司の責任というのが、著者の見解でした。では、具体的にダメ部下とは、どのような人たちでしょうか。本書では、このように定義しています。

遅刻が直らない。

挨拶ができない。

会議で発言しない。

ミスを繰り返す。

期限を守らない。

情報を正しく伝えられない。

評価されていないと主張する。

イエスマン。

電話を取らない。

自信過剰。

ため息・グチが多い。

整理整頓ができない。

口ごたえする。

成果が出ない。

士気を下げる。

行動しない。

クレームで落ち込む。

融通がきかない。

不公平と主張する。

感情的。

などですが、他に女性の部下への対応に1章を割り当てていました。

遅刻では3つのタイプ(甘え・モチベーション低下・精神的問題)に分けて、それぞれの対応が述べられています。ただ、叱るのではなく、期待感や時には配置転換も含めた指導をしていました。

会議では意見が言い合える雰囲気をつくるために、①批判しない②評論しない③友好的な雰囲気をつくる、とあります。

仕事の期限を守らないのは、重大なミスに入るのですが、これは、①仕事の優先順位がわかっていない②怠慢によるもの
という理由で対応が変わってくると述べていました。

部下のグチには同調せず、理解を示しながら、自分の意見を示すと述べられていますが、基本は相手を思いやる心です。女性の部下に対しては、まず、目の前の小さな目標を設定することから始めます。その上で、相手のことを理解していると気付いてもらえるような話し方をするそうです。女性は共感する能力が高いので、そこに訴えかけます。

感情的になるのが多い人には、相手の言葉を一切否定せずに聞き、一通り話が終われば、相手の辛さ・大変さに共感を示してから事実確認をするとなっていました。万一、泣き出した時には、静かに見守ることが大事だそうです。

本書は、正面から真摯(しんし)に取り組むという書でした。奇を衒(てら)うような手法はありません。一にも二にも、どのように伝えるか、常に忍耐と寛容力、そしてその中にもすべきことはしてもらうという毅然さが基本でした。

自分を振り返ると、仕事ができない部下には寛大で、ヤル気が表面だけで楽をしようとか、うまく立ち回ろうというケースには厳しかったです。本人が真面目に努力していれば、意外でしょうが、私は気が長くなれました。しかし、その能力があるのに、そこそこで報酬だけしっかり貰おうという部下には、静かに深く怒っていたものです。その後、同じであれば、迷わずファイアー(クビ)でした。

自分と働く人は、何としてでも他社や社会で通じる、求められるスキルを付けて貰うのだ、という強い顕示欲がありました。その部下の普段の言動や表情を細かく観察して把握していれば、何が最も喜ぶのか、その気になる要素か、ほぼわかります。人は、給料だけじゃない、というより、他の要素の方が、働くモチベーションとしては作用していました。

たくさん、マネジメントだ、リーダーとは、という本を読んでいたのですが、自分のキャラクターに合わないやり方はしませんでした。相手によっても変わりますし。食事の時や、会社の内外で、一対一で話すのが多かったです。何を考えてんのかな、目標や希望は何だろうとか、仕事についてどう考えてんだろうとか、質問するんですが、その答え方(言葉・表情反応時間)で大体のイメージが摑(つか)めました。

仕事ができないというのも、習熟に時間がかかるだけで、最後までダメという部下はいませんでした。なんで、私生活と違って仕事では、こんなに気が長く、寛大なんだろうと自分で呆れていましたが、頭にあるのは、「俺だから、ここまでにできたんだ」という矜持(きょうじ)でした。

自分の部下だから、当然、好きだという感情(もともと、すぐ人を好きになる性質です)が湧くので、サービス精神旺盛だったのです。考えてみると、多くの理屈より、こいつ、いい奴だ、何とかしてやるぞ、という思いがあれば伝わりました。今、ほとんどの同囚に、そんな思いが湧きませんが、たまに湧く時は何をどうしたら役に立てるか、自然と考えています。

さて、本書ですが、部下だけではなく、周囲の人全般に応用可能な内容でした。難しいことは述べていません。仕事も含めた人間関係のつくり方に役立つはずです。(美)





このレビューで美達が紹介した本


『コウノトリ』 鈴ノ木ユウ

『コウノトリ』
鈴ノ木ユウ
講談社モーニングKC
562円+税
*先月届いたレビューです

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今日は初めてのマンガです。

えっ、マンガを読むのかって?

読みます、差し入れしてくれた時や、書評を見て面白そうと思えばですが。本書は、ピアニストであり、産科医の鴻鳥サクラ(こうのとり・男です)が主人公でした。テーマは、出産にまつわるネガティブな事情です。

貧困のために、妊婦検診も受けられずに、担当医もいない妊婦を、『ノラ妊婦』と言います。 いざ産気づいて救急車に乗っても、病院をたらい回しにされるのです(支払いのこともあって)。出産した後は経済状況(父親がいないというケースもあって)により、置き去りにする母親もいますが、主人公をはじめ、産科医たちはなにが正しいのか、どうすべきかを共に考えていくのです。

他にも、難産(母体か赤ちゃんのどちらかしか助けられないという。私もこのケースでしたが、父が医者をガーッと脅して帝王切開で産まれました)やダウン症とわかった夫婦の苦悩など、どれも現実味があることでした。へその緒のが首に巻きついたなど、その度に産科医たちと夫婦のドラマがあり、鴻鳥は一定の距離を保ちつつ、少ない言葉で示唆を与えます。

夜はネオンの下でピアニストをやっているのですが、度々、緊急で呼び出されるという設定でした。実は鴻鳥、養護施設で育っています。だから、淋しさを体験しているぶん、素っ気なさの内に優しさがありました。人の何十倍も辛いことがあるかもしれない。でも、人一倍幸せになることはできる、というフレーズなんか、よくできてますね。

私が子どもの頃のマンガより、人間の内面について描こう(描かれているかは別として)という作品が増えているのですが、日本では完全に一つの文化になりましたね。初めてマンガの本を買ったのは、『ぼくら』でした。なつかしい人もいるでしょう。タイガーマスクが載っていたのです。

入荷する日に、必ず、その店に走って行きました。もう少しで、と言われたら店の中(雑貨屋さん)でお菓子を食べながら待っていたものです。中学生になってから友人のは読みますが、自分では買わなくなりました。小説など、本を読む方が楽しかったからです。それでも『少年マガジン』『少年ジャンプ』など、一通りは読めましたが。

ここ、2、3年では『人間仮面中』(卯月妙子)が、印象に残っています。特殊な環境(今もですが)で育ったり、その中にいたこともあり、大概のことでは、インパクトも強く感じないのですが、卯月さんの生き方、ドラマでした。
獄では自由にできる時間が限られているので、読みたいマンガがあっても、なかなか読めません。これ、読みたいなと、メモはしていますが。そんな事情もあり、たまたま、社会の人が送ってくれて、内容があれば、紹介していきたいです。

『ダ・ヴィンチ』なんか読むとマンガの特集多いのにびっくりしますが。マンガ好きの人、どうぞ、ご一読を。(美)





このレビューで美達が紹介した本

「仕事について」 第64話

前回までのあらすじ----------
金融業界にはありとあらゆる
“エセ紳士”が暗躍していた。
ときに、私も見抜けない手法を
繰り出すのであった。


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社員が法務局に閲覧に行き、持参したコピーと原本が
同じことを確認すると、優良案件一件となります。
こういうプロセスがあって、
翌日に融資しようと連絡をし、
現金の手配も済ませて帰宅したのです。

金額は5000 万円と、担保価値の半分でしたから、
もっと貸したいくらいに考えていました。
マチ金なので、担保価値が十分にある
不動産案件は少ないからです。
そうしたところ、夜8時近くにパクリ屋のSの
ブレーンの一人であるYより電話が来ました。

自宅に電話をしてくる人は稀で、私の父から
電話番号を聞いたとのことでした。
そこで、その日に優良案件で来社した人が、
詐欺師の一人で、私のことを
知らずに来たことを告げられたのです。

「だけど、閲覧したら(法務局で)、
間違いないっていう報告だったけど」

私は狐につままれたような気分で言いました。

「いや、あれは天プラで、実際は違うんです。
若社長のことを知らなかったんで、
赦してやって下さい。本人、今、連れて来てるので、
お伺いできますか?」

私は断り、場所を指定して出かけたのです。
私が行くと、本人とYがいて、
何度も頭を下げますが、そんなことより、
どうしてコピーと法務局の原簿が同じなのか、
という疑問で一杯でした。

その場で種明かしをしてもらいましたが、
すぐには信じられず、翌日、
一緒に法務局に行って、
自分の目で確かめたのです。

本来のその物件は、四番まで抵当権が付き、
担保価値などないようなものでした。
しかし、原本は何も付いていない、
きれいな状態だったのです。
詐欺師は鞄から一枚の紙片を取り出して、
閲覧している原本のそのページを、
あっという間に入れ替えました。

「こんなに原始的なことで通用するの?」

そう言った私に、「はい。簡単なもんです」
と涼しい顔で答えたのです。
この方法は、彼らにとってごく初歩的なもので、
これ以外にもさまざまなバリエーションがある
ということでした。

法務局の原本を偽造したり、入れ替えたり、
不動産所有者の住民票や印鑑証明などを
勝手に使う連中を「地面師(じめんし)」と呼びますが、
この男もその一人だったのです。

私の会社に狙いをつけたのは、新聞広告を見たからで、
融資を決めた日に、仲間内で
若い金融業者(私のことを)という話をした時に、
Yが気付いてやめさせたとのことでした。

それにしても、あまりに幼稚で原始的なやり方でしたが、
これが通用するというのは、
逆に稚拙すぎて盲点なのかもしれません。
開業して日が浅い時でしたが、
この教訓はしっかりと脳裏に刻み込まれました。
現在はコンピューターで閲覧するようになり、
この方法は使えないようになったようです。

それにしても、法務局という場所で、
白昼、堂々とニセの書類と入れ替えるとは、
驚きを通り越して呆れました。
こんな事で、何千万円、時によっては
億という大金が詐取されるのです。

実際に騙されたマチ金も多かったようで、
詐欺師仲間が善人の仮面をかぶって、
解決に奔走する振りをして、
重ねてお金を騙し取るという話もありました。

「金のある所から取るぶんには、
悪いという感覚はありませんよ。そう思う奴は、
この世界では生きていけないですから」

そういうものかと、別の世界を覗いたようでした。
他にも宝飾時計(ダイヤモンドなどの宝石で
飾られた時計のことです)を何本か担保で預かり、
定価の15%で融資(金額は400万円と小さいですが)した時、
まんまとニセモノを摑まされました。

これは、私自身、宝飾時計をコレクションしていたので、
「俺は詳しいのだ」という思い上がりから、
鑑定もさっさと済ませた罰でした。
ピアジェやオーデマ・ピゲ(APと呼びますが)という
一流品であり、8本で約6000万円(定価で)
だったので、返済にならなければ、
私が買い取り(きっちりと会社に入金することで)、
残りは父や父の知人にでも
売ろうと考えていたのです。

ニセモノの精巧さにもランクがあり、
私が預かったのはA級品でした。
それでも、もっと慎重に調べていれば
騙されることはなかったと思い、
社員に対しても大いに恥ずかしい気持ちに
なったものです。
基本の動作(すべきこと)を怠ってはいけないなと
勉強になりました。

「バッカだなあ、おまえは。こったらもんが
見抜けなかったとは。金貸し、
向いてないんじゃないのか。ガハハハハ」

父に見せたところ、会社の外まで響きわたる声で
笑われました。

「おまえ、今後のためにな、
600万の何倍かかってもいいから、そいつを探し出して、
がっちりとやってやれ。いいな」

顔から笑みを消した父が、凄みのある目で言ったのです。

「おお、もちろんだ、オヤジ。金貸しの鉄則だろ」

私が言うと、父は首を横に振り、
「違うっ。父さんの息子が騙されたままというのが
気に入らんのだ。そんなバカな息子を持った覚えはないぞ。
二度とペテンにかける気にならんようにせいっ」

私は、そうかとばかりにうなずきました。
以来、質店や宝飾店でしつこいくらいに、
鑑定方法を教えてもらったものです。
時計以外にも宝石類を担保として預かることがありますが、
いざ、融資となればほとんどの宝石は
二束三文でした。

中でもデザイン物のリングは
評価が付かないくらいに値打ちがなくなります。
特に日本人は、ダイヤモンド以外の宝石でも、
カラット(重さ・大きさ)にはこだわりますが、
質は二の次です。

ダイヤモンドの質は、4Cという基準で評価されます。
カラット(重さ)、カラー(色)、
カット(形状)、クラリティ(透明度)です。
カラットは重さの単位で1カラットが
0.2グラムになります。

カラーは、基準になるマスターストーンと比べて決まり、
カットは反射角度をプロポーション画像に
照らして判断するのです。

クラリティにおいては、特殊な顕微鏡で、
内包物(インクルージョン)がないか、
あればどのくらいあるのか、
割れや空洞、傷はないか、
多岐にわたって調べられます。

こうしてランクが決まりますが、
ルーペで拡大して(10倍に)、内包物がない物を
フローレス、以下、内包物の量により、
インターナリ・フローレス、
VVS1、VVS2、VS1、
VS2、S1……I3と下がるのです。

通常、一般の人が購入する物ではVVS1が
最高のように言われています。
カラーでは最高の無色をDカラーと呼び、
Zまで23の等級に区分され、
完全無色のDカラーが最上級品で、
E、F……と下がり、
K、L、Mまでが流通品です。

カットも理想的なプロポーションがあり、
それぞれの評価も決まっています。
皆さんが知っているブリリアンカットは、58面体で、
1919年にベルギーの数学者トルコウスキーの考案で、
光の屈折と反射が
最も美しくなる角度とされているのです。

カラーでは無色透明以外にも、ブルー、ピンクなど
価値の高い物があり、中にはDカラーより高価です。
他の宝石同様、ダイヤモンドにも
さまざまな仕掛けが施されています。(美)

*次回の「仕事について」は
11月29日更新予定です。 

*明日は祝日のため、
ブックレビューは25日(火)に更新します。 

みたつ・やまと●1959年生まれ。2件の殺人を犯し、長期刑務所に服役中。現在でも月100冊以上を読む本の虫で、これまでに8万冊以上を読破。初めて衝撃を受けたのは10代のときに出合ったロマン・ロラン著『ジャン・クリストフ』。塀の中にいながら、郵送によるやりとりで『人を殺すとはどういうことか』(新潮社)、『夢の国』(朝日新聞出版)などを著す。
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『女子高生サヤカが学んだ「1万人に1人」の勉強法』
プレジデント社
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『牢獄の超人』
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『私はなぜ刑務所を出ないのか』
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『塀の中の運動会』
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『刑務所で死ぬということ』
中央公論新社
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『人を殺すとはどういうことか(文庫)』
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『死刑絶対肯定論』
新潮社
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『ドキュメント長期刑務所』
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『人を殺すとはどういうことか(単行本)』
新潮社
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『夢の国』
朝日新聞出版
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