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無期懲役囚、美達大和のブックレビュー

教養を深めたい、仕事に生かしたい――。
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2021年01月 アーカイブ

読者ブックレビュー 『孫子』 

孫子 (講談社学術文庫)
浅野 裕一
講談社
1997-06-10


★平居さんより★


今から約2500年ほど前に記されたと言われている孫武による兵法書「孫子」ですが、クラウゼヴィッツ「戦争論」と並び称され、多くの解説書もでているため、今更、その有用性を述べるまでもありません。

今回、改めてひも解き、気になったのは孫武が戦力をはかる上で「五事」として重視していた5つの事柄でした。

「一に曰く道、二に曰く天、三に曰く地、四に曰く将、五に曰く法なり」

とありますが、中でも、天の時、地の利、将軍、規律よりも上位に据えている「道」の部分は現代人にはなかなか、理解しにくい概念ではないでしょうか。

「道とは、民をして上と意を同じくし、これと死すべくこれと生くべくして、危きを畏れざるなり」

とは、人民と君主とを一心同体にさせること。これは現代風に変換するならば、経営者と従業員のビジョンの共有とでもいえるでしょう。

しかし、生死をともにするまでの意識までには及びません。

この道の概念は、戦前の日本にも天皇制を中心に辛うじて残っており、危うきを畏れざる精神を見ることができたのだと推測します。

ただ、この道の概念は民主主義と資本主義の浸透によって、多くの国から消えつつあると思うのですが、果たして、この概念が残存する国家はあるのだろうか?

と考えていた所、近隣に一国、思い当たりました。

朝鮮民主主義人民共和国。

実際のところ、その内情は分かりかねますが、幾つかの報道を通し、君民一体という点では北朝鮮、侮りがたしと感じてしまいます。

また、まったくの私見ですが、コロナウイルス感染拡大収束後、世界的な変乱、戦争の勃発を予感しており、改めて孫子より学ぼうと思った次第です。


みちゆかばつわものどもののりおさめてんちをききてくにをまもらん(平居)


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近現代史のツボ 第96回 歪められた日本の民主主義


   民主主義は最高、至上のものか
   多数決で決まる限り、少者は切り捨てなのか
   

2015年夏の安保法制設置、集団的自衛権の限定的行使容認の閣議決定、2018年に入ってからの憲法改正発議の実現などの度に、特定の思想・信条を持つ人々が野党の政治家と共に「民主主義の崩壊」と叫んでいます。

しかし、国政選挙を経た与党が国会で可決すること自体が民主主義の成果であることは言うまでもありません。このような時に限らず、私たちの日常では、何かの魔力でも持っているかのように「民主主義、民主主義」と口にされることが少なくないようです。

本節では、その「民主主義」とは何か、「日本の民主主義」の功罪とは何かについて述べてみます。


〈そもそも民主主義とは?〉

民主主義の起源と仕組みについて簡略に述べれば、その濫觴(らんしょう。起源のこと)は古代ギリシャにありました。市民が民会に集まり、直接、自らの言葉をもって政治に参加していたのです。その際、各議題について投票をし、多数決で決めていました。公務に携わる者はクジ引きで選ばれ、平等主義を基礎とした「集会民主主義」が行なわれていたのです。

皆さんも知っている「デモクラシー」という語は、ここから生まれています。デモスは国民を、クラトスは支配を意味し、国民(民衆)による支配という政治体制が登場したのです。

その後、政治を司る者はクジ引きから、名門貴族や功績のあった軍人へと移行し、その過程で民衆を扇動するデマゴーグ(注1)が登場するなど、現代社会と同じ現象も見られるようになりました。


(注1)「デモス(民衆)」の「アゴーゴス(指導者)」という意味で、扇動政治家のこと。


また、古代ギリシャの民主政治は全員参加ではなく、婦女子や奴隷は除外されていたのです。その後、時を経ると共に皇帝や王が統治する専制政治や、ローマの一時期に見られる共和政治も出現します。

民主主義といえば、条件反射的に政治や議会を想起するでしょうが、この議会が発達したのがイギリスでした。13世紀に入り、当時のジョン王が贅沢を極め、貴族を無視し、放恣な政治を行なったことから、貴族たちは王に迫って1215年に「大憲章(マグナ・カルタ)」(注2)という勅許状を出させたのです。


(注2)イングランド国王の権限を制限した憲法史の草分け。国王の徴税権の制限、法による支配などを明文化し、王権を制限、封建貴族の特権を再確認したもの。

これによって貴族たちは自らの権利と自由を守りましたが、民衆には関係のないものでした。その後、17世紀に入り、チャールズ1世は自らを神と同一視し、王は神の意志に基づいて統治するのだという「王権神授説」を唱えますが、暴政により1642年に「清教徒革命」という反乱が起こり、1649年にチャールズ1世は議会によって処刑されたのです。

イギリスは、これによってクロムウェル率いる共和制(注3)となりましたが、1689年に名誉革命が起こったことで「権利の章典(ビル・オブ・ライツ)」が宣言され、議会・議員・市民の権利が確認されて、これが立憲政治の基礎となります。


(注3)君主を置かず人民の中から政治を執る人を選び、元首も人民から選ばれる。


さらに時代を下れば、1776年にアメリカの独立宣言(注4)があり、1789年にフランス革命(注5)があり、民主主義が欧米に広まる契機となったのです。


(注4)人間はすべて平等であり、造物主によって一定の譲り渡すことのできない権利を与えられていること、自由と幸福を追求する権利があること、政府の権利は国民の同意を基礎とし、政府がそれを破壊するような場合は、国民はその政府を変革または廃止して、新しい政府を樹立する権利があることが述べられている。


(注5)この革命後に出された「人権宣言」でもアメリカの独立宣言と同様のことが謳われている。


これらの出来事が起こった18世紀には、1748年にモンテスキューが『法の精神』を発刊して、立方・行政・司法の三権分立を、1762年にはルソーが『社会契約論』を刊行して、主権は国民にあることを唱えていました。

ここで主権という語が出てきましたが、これには、

1.統治権、国家が有する支配権
2.国家の最高独立性、国家権力の最高独立性
3.国家の最高決定機関

という意味があり、主権とは国政のあり方を最終的に決定する力、国の政治のあり方を最終的に決定する権威であるというのが学説です。


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第97回へ

近現代史のツボ 第95回 世界が認めている日本の「安心・安全」

これでも懐疑的な人もいるでしょうから、日本人ではなく、世界の金融業に携わる人々、投資家の行動からも考えてみます。

皆さんは、世界のなかで政治的不安定や経済危機や紛争が起こりそうな時に、株が売られ(値下がりして)、円が買われることをニュースで見聞きしたことがあるはずです。その時に必ずと言っていいくらい「比較的安全とされる円が買われて、円高になった」と解説されます。

この「比較的」というのは接頭語みたいなもので、ドルやユーロ、もちろん元などには使われません。ヨーロッパでイギリスのEU離脱や、フランスやオランダの選挙で極右政党が勝って政治の不安定が予想される局面では株は売られ(値下がり)、円が買われました。

変だと思いませんか? 日本の財政が危機だというのなら、なぜ安全と言われて円が買われるのでしょうか。世界を舞台に通貨を取引きしている人たちは、経済について、各国の財務について相応の知識がある人たちです。その人たちが、安全な資産・商品として円を買っています。自らの資産、あるいは顧客から預かった大切なお金を円に投資しているという事実を知れば、日本の財政が危機かどうかはわかるはずです。

もう一つ指摘するなら、日本国債の危機、暴落というのも真実とは異なります。本当に危ないのなら、国債の金利はギリシャや、これまでデフォルト(債務不履行)に陥った多くの国々の国債と同じように、高い金利をつけなければ買って(引き受けて)もらえないので急上昇するはずです。

ここで国債について説明しておきましょう。遠く歴史を遡れば、紀元前242年のカルタゴと第1次ポエニ戦争で苦しんでいたローマが、元老院や金持ち相手に戦費を調達したことに始まります。そして国債とは財政赤字を補うために国が負担する借金の証書のことで、それを買った人は国にお金を貸したことになり、国はそれに対して返済期日が来れば元金と利息を払うのです。ただし、利息はクーポンと言って、基本的に年に2回払うようになっています。この払うことを「償還」とも呼んでいるのです。

国の借金の証書を売り買いするとも解釈できますが、日本の国債の金利は世界で最も低い金利で流通しています。利息が安い(金利が低い)というのは、信用があるのか、ないのか考えてみて下さい。

返済の可能性が低い時、信用がない時は金利も高くしなければ国債を買って(お金を貸して)くれません。そのような意味からも日本国債は安全で信頼性が高い(注1)とされています。すると財務省は先進国の自国通貨建ての国債のデフォルト(債務不履行)は考えられないと猛抗議しています。この時の担当は現日銀総裁の黒田財務官でした。


(注1)格付け会社のムーディーズは2002年に日本をA2に格下げ。これはアメリカの思惑があった。


また2015年9月、格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズが、日本国債を中国や韓国より下のAプラスに引き下げましたが、国際的信用は微塵も損われず、逆に金利が下がった(国債自体の価値が上がったこと)くらいです。

この国債は最長60年間で償還するとされているのです。たとえば期間が10年ものの国債なら、5回の借り換えで60年間にできますが、実際は半永久的に借り換えできるのです。


〈国民の不安を煽る財務省の掟〉

このように世界一の優良財務を誇る日本が、なぜ財政危機と叫ばれるのでしょうか。

それは財務省にとって、徴税し続けることが、最大の「存在意義(レーゾンデートル)」となっているからです。より正確に言うのならば、税を徴収するというより、歳出権・予算配分権を拡大することが、財務省では至上の「掟」となっています。予算配分権で他省庁や各業界に睨みをきかせることができるためです。

そしてもうひとつ、徴税については財務省には特権がありました。これは税率を上げると、必ず例外措置が出てきます。その特定の人(業界)に対して、租税特別措置や消費税の軽減などすることで、権益を拡大できるからなのです。つまり、増税をして自らの領域を拡大するのが、財務省の真の使命となっているためです。

そのわかりやすい例としては、消費税を上げる際の軽減税率をどの物品(業界)に適用するかどうかがあり、これは各業界ではとても重要なことなのです。新聞業界が軽減税率を適用してもらうべく、財務省に逆らわず、スポークスマンとなって財政危機を煽りまくっているのはその典型です。

この軽減税率は、自民党のパートナーである公明党を財務省の味方にするための策でもありました。

また新聞をはじめとするメディアにとって何よりも怖いのは、特ダネスクープの逆の「特オチ」です。自分の社だけが出入り禁止などのために、他社で報じるニュースが抜けることは、新聞社・記者としては最大のミスに該当します。

そのような事情の他にも、財務省が記事の書き方まで教えてくれることもあり、財務省が財政危機だ、消費税を上げるべきとレクチャーすれば、そのまま報じるしかないのです。

学者や経済評論家や証券会社・銀行など金融業界、その子会社のようなシンクタンクの人にとっても事情は変わりません。前述した通り、財務省の方針に沿った発言を続けることで「御用学者」や「御用△△」になれて、政府の諮問会議や、審議委員会のメンバーとなり、報酬どころか名誉と箔を与えられるのです。その帰結として講演や出版の依頼が来たり、業界での出世も望めます。

以上のような事情で、日本の財政がどれほど盤石であったとしても「日本は財政危機だ、消費税を上げよ!」という主張が呪文のごとく唱えられているのでした。

年金制度への不信という点で、民主党(現立憲民主党)政権が「年金が潰れる」と煽ったことも一因ですが、国家財政への不安は政治とメディアと有識者の合作で作り上げられた虚妄なのです。

私たちの人生にはライフサイクル仮説というのがあって、資産とこれから得られるであろう収入の総和が、生涯においての消費と同じになるよう毎年の消費額が決まると定義されています。その定義で考えると、退職後に年金以外の収入がない高齢者は、退職直後が貯蓄額のピークとなり、それ以降は年金だけで不足する毎月の生活費を貯蓄から取り崩していきます。このことは欧米の退職した高齢者の例では当然とされてきました。

ところが、世界で唯一、日本人だけが死ぬまで貯蓄を増やしているのです。その理由は複数ありますが、将来の病気や介護が必要になった時のために、あるいは年金だけで生活できないのでという、社会保障への不安が並んでいます。

高齢者の資産格差は大きく、過半数以上は年金だけでつつましい暮らしをしている状態であり、その暮らしのなかで、さらに貯蓄している実態が浮かんでくるのです。このあたり、貯蓄なんて何のためにするの? というのが常識の北欧とは別の世界のようです。

以上、述べてきたように、年金や社会保障の破綻はよほどのことがない限りありません。仮にあったとしても、年金の支払いはすぐにストップすることはないのです。

しかしいちばん好ましいのは、年金などあてにしない生き方をすることです。日本はもっとも安定した国ですから、無用な心配などせず、日々己のすべきことに努力してください。そして国のために、同胞のために自分ができることは何か、前向きに考えて実行してください。


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第96回へ

『雑感21』 一般教養4

ちょっと間が空きました一般教養ですが、皆さん、頑張っていますか?今回も一般教養クイズ、楽しんで下さい。興味の湧いた分野は改めて勉強するといいでしょう!

問題

Q1 霞が関のキャリア官僚とはどんな人たち?
Q2 警察官は国家、地方、どっちの公務員?
Q3 歴史上の3大ワーカホリックは誰々?
Q4 ティラノザウルス、ブロントザウルス、恐竜の名に付くザウルスとは何のこと?
Q5 他人の不幸を喜ぶことを何と言う?

回答

A1 国家公務員総合職試験に合格後、各省庁に採用された人たちです。今の前は「国家公務員Ⅰ種試験」、その前は「同上級職試験」と呼ばれました。

もとは明治20(1887)年に定められた「高等文官(ぶんかん)試験」が始まりです。明治維新以後の薩摩、長州出身を優遇したことへの不満と、優秀な人材を得るために制定しました。

最近は以前ほどではないものの、この試験の成績トップから25位くらいまでは優先的に財務省が採(と)りたがります。入省時から、この成績で大体の出世も予測できるのです。

日銀の黒田総裁は2番で当時の大蔵省に入り、事務次官の次席の「財務官」で退官しました。本来なら日銀総裁は事務次官OBのポストでしたが、安倍首相を応援する論文投稿が目にとまって、大逆転の総裁就任となったのです。

公務員試験トップ、東大在学中の司法試験合格、ゼミの主席合格を果たすと「三冠王」と称されます。過去には今はない外交官試験でもトップだった「四冠王」もいました。


A2 警官は警視までは地方、その上の警視正(せい)から国家公務員です。警視は小さな署の署長、警視正は大きな署の署長になれます。


A3 秦(しん)の始皇帝(しこうてい)、宋(そう)の太宗(たいそう)、清(しん)の康熙帝(こうきてい)です。

康熙帝は清朝の四代目で領土を拡大し、『康熙辞典』を作るなど優秀な皇帝でした。この人は、各地の役人から毎日報告される書類を一日2000枚平均で目を通し、全てに自分で朱筆を入れた人としても有名です。


A4 ザウルスはギリシャ語の「サウロス」で「トカゲ」という意味です。言われてみると納得できます。


A5 「シャーデンフロイデ」で、ドイツ語でした。

ゲーテは、「人間は本当に落ちるところまで落ちると、もほや他人の不幸を喜こぶ以外の楽しみはなくなってしまう」と語っています。皆さんはどうですか?


問題

Q6 ナポレオンが創設した勲章の名前は?
Q7 終戦直後、激しいインフレと財政再建のために実施された政策は?
Q8 戦艦大和(やまと)の主砲である46センチ砲の射程距離は?
Q9 あらかじめ決められた将来の権利を行使できる先物オプション、誰がいつ、考えた?
Q10 ゲーテの『ファウスト』のヒロインは?


回答

A6 レジオン・ドヌール勲章です。

ナポレオンが第一統領、あるいは第一執政(しっせい)だった1802年5月19日に制定しています。今も続いていて、日本人の授与者もたくさんいる勲章です。


A7 「財産税」で資産によっては90%も税として取りました。これで一気に戦時中の財政赤字を埋めると思いきや、ハイパーインフレも味方してくれたのです。

ハイパーインフレは借金を消すのに有効です。たとえば月収25万円がハイパーインフレで1万倍の25億円になると1000兆円の借金は1万分の1になるのと同じで、あっというまに返済できます。

さらにこのあと、当時は預金封鎖して、1世帯が月に500円しか銀行から引き出せないようにしてインフレ退治をしました。市中に出回るカネが減ればインフレにはなりません。

インフレというのは物に対してカネがたくさんあるということ、通貨の価値が下がるということです。


A8 なんと4万1千メートル、41キロです。

大和の主砲はダントツ世界一で砲弾は1トンありました。主砲1門の重さも駆逐(くちく)艦1隻と同じでした。駆逐艦というのは主に対潜水艦用で、爆雷を装備した小型の足の速い艦のことです。

大和は他にはなかった冷暖房完備の超強力戦艦でしたが、上手に使いこなせず、最後は沖縄への護衛戦闘機なしの特攻で1945(昭和20)年4月7日に撃沈されました。



は格調高い文語体の名作で、日本人なら読んでおくべき一冊です!!


A9 古代ギリシャのタレスです。紀元前7世紀頃の人で、ミレトス派の祖、哲学者でした。

この賢人は、ある年にオリーブが豊作になると予想し、多数のオリーブ絞り器を「借りる権利」を手付金を払って得たのです。もし凶作で不要なら手付を放棄するだけのことで、予想通りに豊作となり、彼は手数料を加えてオリーブ絞り器を農家に貸し出して利益を得ました。

現在の株取引にもオプションがあります。興味のある人は研究してみて下さい。大当たりなら、ほんの数日もあれば資金は何倍にもなります。外れてもオプション料の放棄だけですむのが基本です。

A10 マルガレーテです。

『ファウスト』は若さと命を悪魔と取り引きします。読んでおきたい書です。


問題

Q11 ルイ14世が薬として一日に大さじ一杯だけ飲んでいたのは?
Q12 ナポレオンの愛飲していたシャンパンの銘柄は?
Q13 東京23区の中で最も人口の多い区は?
Q14 では最も平均年収の高い区とその年収は?
Q15 1200種の原酒をブレンドした「レミー・マルタン」の最高級ブランデーは何?


回答

A11 ロマネ・コンティです。これはフランスのロマネ村でしか作られないワインのロールスロイスです。

今はわかりませんが、社会にいた頃、酒屋でも1本38万円くらい、飲食店で飲むとレストランで60万円前後、高級クラブなら80万円から100万円、銀座のクラブなら120万円でした。ヴィンテージワインならもっと高い物もありますが、通常の市販品ではロマネは高額な一本です。

ロマネ村は土壌に石灰が多く、ぶどうの味も独特なので別格だとか。特に良いぶどうの獲れた当たり年のヴィンテージになると1本100万円、200万円も珍しくありません。

で、うまいかってなると、うまいんだろうな、としか言えないです。

私は通(つう)ではなく、本当に「好きだなあ」と感じるのはイタリアの1本1000円の『リアル・サングリア』という普通の大人は口にしない超甘口の子ども用みたいな低級ワインでしたから。甘いなら『シャトー・ディケム』やハンガリーの『トカイ』も好きでしたが。

ロマネ・コンティについては、妻や部下や知人らは「おいしいーっ!」と飲んでましたが、私は微妙な思いで、「やっぱ、育ちが良くないからな」と納得しました。私はそれを飲んで、

「これがうまいという味なのだ」

と帰納(きのう)的に覚えるような飲み方でした。

私は原則として家では酒一切を飲まず、ビールも口にしません。風呂のあがりや夜に妻から「あー、おいしい。パパも付き合って」と言われ、気が向けば少し飲む、そうでなければ飲まない生活でした。

代わりに外に出たら調子が悪かろうと、しっかり飲みます。加減は一切しない、ゼロか百かの人生でしたから。我がオヤジと違ってアルコール分解能力が低く、強くないですが、どんなに飲んでも酔ったり、乱れたりしたことはありません。

家に帰っても妻がいるので、乱れませんし、手間もかけません。人は最も身近にいる人の前で実像が出ると言いますが、常にきっちりしている、何でも強いというのが夫の私の掟(おきて)でした。

A12 「ジャクソン・アビズ」です。

これ、飲みましたっ!はい。ナポレオン研究家なので、飲みに出ると必ずシャンパン、「ドン・ペリ」の次にはこれです。

他にも「クリュッグ」「テ・タンジェ」「ヴーヴ・クリコ」など一通り飲み、シャンパンに関しては、「通(つう)」と言えそうです。

ナポレオンの栄光と没落を考えながら、約200年前に心をワープさせていましたが、もちろん表面は他の人もいるので場の話題に合わせて楽しくでした。

A13 世田谷区で92万人です。

A14 港区で約1100万円です。

余談ですが、港区は新型コロナウィルスの10万人あたりの感染者数が4月上旬時点で約63人で1位でした。同じ条件の感染者数で2位は新宿区の約50人です。

A15 『ルイ13世』です。

この酒、社会にいた頃、大好きでした。これは本当に「うまいっ!!」です。ボトルがユニークな形でした。あの味と香りが甦ります。


問題

Q16 プロスポーツ選手、生涯収入、世界一は誰で、金額は?
Q17 ニューヨーク、マフィアの五大ファミリー、「ジュノベーゼ」「ルケーゼ」「コロンボ」、あと二つは?
Q18 スペインの闘牛のオープニングなどにかかる行進曲ふうの8分の6拍子の曲は?
Q19 「もしも天、われに許さば蒸(む)したての熱き饅頭(まんとう)を食べて死なん」と獄に入って詠(うた)った人は?
Q20 2017年、日本の世界におけるGDPシェアは6%、では1990年は何%?


回答

A16 マイケル・ジョーダン バスケット選手 2035億円です。

2位はタイガー・ウッズ ゴルフ 1870億円です。以下、
アーノルド・パーマー ゴルフ 1540億円
ジャック・ニクラウス ゴルフ 1320億円
シューマッハ レーサー 1100億円
ミケルソン ゴルフ 896億円
コービー・ブライアント バスケット 880億円
ベッカム サッカー 870億円
メイウェザー ボクサー 863億円
オニール バスケット 808億円
タイソン ボクサー 770億円
デラホーヤ ボクサー 572億円
パッキャオ ボクサー 561億円 となっています。


A17 ガンビーノ、ボナンノです。

A18 パソドブレです。

A19 河上肇(はじめ)、マルクス経済学者で『貧乏物語』の著者でもあります。この気持ち、よくわかります。

A20 1990年のシェアは13.7%ありました。この時の1位はアメリカで26%、中国は1.7%でしかありません。

2017年はアメリカ24.3%、中国15%です。それにしてもひどい凋落ぶりでした。しかしこの凋落は、日本の民族特有の、

悪い結果はなるべく見ない
直視しない
先送りする
責任は曖昧(あいまい)に
批判が怖いので思い切った処分をしない

などの結果でした。

バブル崩壊の時、真っ先にすべきは不良債権の処理だったのですが、銀行をはじめ企業は決算に響くというので誤魔化しました。また、不良債権を作った人を厳しく処分せず、みんなでかばい合ったのです。

アメリカやヨーロッパでは、責任者の責任を鋭く追及して明確にして、次に備えていますが、日本にはそれがありませんでした。

ここ、あの戦争の敗因や総括を未(いま)だにしていないのと構造は同じです。この社会的・精神的構造がずっと変わらず、現在に至っています。

不良債権処理をやったのは5年も6年も経ってからで、その時、本来なら潰すべき企業も存続させ、いつまでも傷口を開いたままにしたのが、経済停滞の主因になってしまったのです。

そのうえ、インフレ恐怖症の日銀は金融緩和もせずに、してもわずかで引き締めたままだったので不況は続きます。

ここ、政治も悪いのです。この時代の政治は1993(平成5)年に自民党が負けて連立政権という不安定な時代で、リーダーシップが全く発揮されませんでした。

ただ、メディアも国民も悪いのですが、日本ではリーダーシップを発揮すると反射的に、

強引だ、独裁だ

と批判されます。

政治家のリーダーシップとは、国民と国家のために確固たる信念を懐(いだ)いて断行するので、日本人の感覚からすれば独裁的に見えるのです。

こんなところが、バブル崩壊や今回のコロナでは裏目に出ました。

災害の時の安倍首相は支持率も高く、自信を持って果断に対応して成功していますが、コロナの時は不安定でした。

このような、日本国民と国のために有益な人を殺すも活(い)かすも国民の識見次第でした。

メディアは国民の支持がある人は攻撃しません。

私はファンではないものの、国家観では安倍首相に代わる愛国の政治家はいないのです。今、国際社会の変化する重要な時にこの人を失ったことは日本の未来にとっては大きな損失になりました。

菅さんも頑張るでしょうが、海外の首脳たちへの影響力は大きく低下します!残念ですが。

今回の本は、



※不確実な時代の先を推理する


画商のこぼれ話
ひろみ, 種田
作品社
2019-07-10


※画商というのは、なかなか興味深い人種


絵を見る技術 名画の構造を読み解く
秋田 麻早子
朝日出版社
2019-06-04


※鑑賞にもコツがある


IQが高まる 理系なドリル
東邦出版
2019-08-09


※118問の試練を楽しむ!


金ピカ時代の日本人
須田慎太郎
バジリコ
2019-07-07


※バブルの頃の日本。今や追憶のみか


ワインは毒か、薬か。
岩田健太郎
朝日新聞出版
2019-03-27



です。

今回のクイズ、わかりましたか?マニアックな問題が多かったですね。ちょっと加減してマニア色を薄くしていますが。

皆さんが知りたい分野があったら教えて下さい。なるべく採用したいので!!


『私には特殊な才能はありません。ただ、熱狂的な好奇心があるだけです。』(アインシュタイン)


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『100の科学的メソッドと40の体験的スキルから編み出した最高の体調』鈴木祐(ゆう)

最高の体調 ACTIVE HEALTH
鈴木祐
クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
2018-07-13


(10月31日記)


本書のテーマは「コンディション」です。体だけではなく、精神も含めた体調を最高にするというコンセプトでした。

刊行以来、2020年3月で10刷(7万部)だそうで、ベストセラーに入ります。それだけ今、本は売れず、3万部刊行だけでも出版社は恩の字なのです。

サブタイトルには、進化医学のアプローチで最高のコンディションに導くとあり、怒りや不満、不安をコントロールして生産性を劇的に向上とありました。

目次を眺めてみると、

文明病
炎症と不安
環境
ストレス
価値
遊び

となっています。

本書のテクニックとアイデアはすべて進化論がベースです。

著者自身、以前は体脂肪率35%!の肥満でしたが、ジャンクフード、加工食品、パンや白米の精製食品を削減、野菜と魚を増やし、間食はゆで卵、食物繊維が豊富なサツマイモを主食にしたところ、半年も経たず13キロ減量、体脂肪率12%になりました。

半年で13キロ、男としては大したことでもないでしょう。ホルモンの関係で体重の減りづらい女性なら別ですが。それでも本人いわく、健康になりました。

初めの文明病では、私たちの時代は、かつてないほどの高カロリー食となっているとのことでした。

古代の狩猟採集民の頃、低カロリーの食品しかなく、脳はなるべくカロリーの高い食物を探すように進化しました。しかし今は食物の豊富な「肥満環境」に生きているので、未曾有の体重過多時代になっています。

体だけではなく、現代人は集中力も狩猟採集で生きている人々に比べて劣るとありました。

本書では触れてませんが、日本女性はこの時代なのに戦後の食糧難の時のカロリーと同じくらいに減っています。20代女子の平均摂取カロリーは、1694キロカロリー、あの食料のない1946年の都市部の女子のカロリーはなんと1696キロカロリーなのです!

私も今、それくらいで暮らしています。規定では、私は工場に出ていないので主食の麦飯はA・B・Cのうちの最低のC食で1200キロカロリー、副菜は概ね1000~1100キロカロリーでトータル2200~2300キロカロリーのところ、主食は半分にしているのでトータル1600~1700キロカロリーです。

既に長くやっていることもあり胃が極小になっています。少し前から作業のない休日の朝食は主食を食べず、ちんまりした副菜と味噌汁のみなので、その日は1400~1500キロカロリーです。腹は夜中から朝以外、すいたという感覚はありません。

本書では文明病として鬱(うつ)病も挙げています。日本では10人に1人!が鬱病で、1996(平成8)年に43.3万人だった患者数は2011(平成23)年に95.8万人になりました。鬱は脳の器質障害という見方も出ていますが、原因は特定されていません。

炎症と不安の章では、細胞レベルで起こる炎症が、さまざまな不調の原因と述べていました。さらに不安が心身を蝕(むしば)みます。

長寿者の共通点は炎症レベルが低いことです。もう一つ挙げれば楽天家です。雑誌で百寿者の言葉や生活ぶりを読むと、この人たちは生き甲斐や目標を持ち、楽天的に生きています。

内臓脂肪も悪いとのことでした。増えると臓器に炎症を引き起こします。慢性炎症は脳にも悪いのです。

この点、現在に生きる狩猟採集民たちは、きわめて健康でした。80代でも認知症はなく、ガンもほぼゼロだそうです。

対策の第一として、「睡眠確保」でした。平均で1日に7~9時間の範囲を逸脱すると、炎症マーカーは激増、夜中に何度も目が覚(さ)目る時も同様です。

他にはトランス脂肪酸を指摘していました。植物油に水素を添加した人工の油で、パンや揚げ物に使われています。悪玉コレステロールが激増するのです。

そして、「孤独」も死亡率を大きく高めます。孤独は脅威に対して抵抗し、免疫システムを過剰に働かせた結果、全身は炎症に包まれてしまうのです。ただ、これは孤独を脅威、ネガティブなものと捉えている人であって、私のように何も感じないどころか歓迎する人はその限りではないでしょう。

不安も心身には猛毒です。詳しくは本書で参照して下さい。

私、不安もありません。不安になって事態が好転するならいいですが、自分の力で変えられないことをはじめ、不安は考えません。その代わり、想定する中で最悪の状況を常に考え、やれる限りの対策はしておきます。

不安とか落ち込む、へこむは全てムダなことなので私にはありません。落ち込んでもへこんでも状況はよくなりませんから。そんなムダなことに費(つい)やす時間、本当に私にはないのです。また、何が起ころうと、その中で最善を尽くすと決まっているので、どうってことはありません。

古代の、狩猟採集民の平均身長、男は180センチ、女は167センチあったんですね。それが農耕民族になると、それぞれ160センチ、152センチに低下しています。

腸の章では、現代人の腸のバリアが破れていることを指摘していました。腸内細菌です。これが悪化しています。腸内細菌の状態が悪いと慢性疲労症候群にもなるそうです。抗生物質を使うと、腸内細菌は、どんと死んでしまいます!

発酵食品を摂りなさいと述べていましたが、特定のばかりでなく、いろいろ食べてということでした。キムチ、納豆、ぬか漬け、味噌、たくさんありますね。

本書では腸内環境を整える数々のサプリ、「プロバイオテクス」も出ていました。慢性的な下痢、便秘にはビフィズス菌、抗生物質で荒れてる時はサッカロミセス・ブラウディとか。

食物繊維も病気予防に効果ありです。野菜、フルーツ、中でもゴボウ、寒天、海藻、キノコ類、オクラ、リンゴなどが有効と述べています。サプリで摂るなら、著者は難消化性デキストリン、オオバコ、イヌリン、レジスタントスターチを薦めていました。

環境の章では友人を作ることも推奨しています。信頼関係が有効だそうです。

観葉植物も効果があるとのことで、スパティフィラム、ポトス、セイヨウキヅタ、キク、ガーベラ、サンセベリア、ツツジなど挙げています。

以降、ストレス対策、死、遊びの章で、参考になる提案が並んでいました。

加齢と共に、常に体調を最高に保持することが難しくなりますが、それに応じて気にしないように心掛けています。こんなもんだ、これでも十分に動くからと解釈することで無用なストレスを抱えないようにしています。

施設の中なので、やれることは限られていて、「なるようにしかならん。どうなろうと、その中で最善を尽くすことだけ考えればいい」の精神です。

皆さんはいろいろやれるので、今から始めて下さい。特に体を動かすことは脳にも良いのです。ストレスの軽減にもなります。健康だけを考えるなら、高強度ではなく、軽く汗ばむ程度がいいでしょう。

あとは自分をいつも機嫌よくさせることです。時として不愉快なこともありますが、引きずるのは自分なので、自分でコントロールするしかありません。

体と精神は切り離すことはできず、深く関連しています。また、思考も健康に深く影響するので、自分で自分をネガティブにすることなく、強い精神を作ろうとして欲しいです。愚痴や泣き言は口にせず、自分の運命を受けいれ、その中で最高最善を尽くせる人であって下さい。強さも弱さも己の心からです。

本書、読みものとしても面白い一冊でした。

関連では、

食と健康の一億年史
スティーブン・レ
亜紀書房
2017-09-29




スタンフォード式 疲れない体
山田知生
サンマーク出版
2018-05-25



老けない体をつくる"発酵食"
中西 雅寛
幻冬舎
2018-09-26



Mindful eating 人生が豊かになる食べ方の習慣
ジャン・チョーズン・ベイズ
日本実業出版社
2019-12-06



疲れない脳をつくる生活習慣
石川 善樹
プレジデント社
2016-01-28



があります。

『運命は我々の行為の半分を支配し、あとの半分を我々自身にゆだねている』(マキャベリ『君主論』より)


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『ラファエロ』深田麻里亜





(10月25日記)


今回は私に相応(ふさわ)しく!?高尚な芸術がテーマです。

皆さんはラファエロという人を知っていますか?

教養と稚気(ちき)あふれる私の読者の皆さんですから、「ああ、彼ね」というところでしょうか。

ラファエロ・サンツィオ(1483~1520)は、レオナルド・ダ・ヴィンチとミケランジェロと並ぶ、ルネサンス三大巨匠の一人です。

この人の絵は温かさがあります。ただ、それだけではなく、本人の生き方と共にそれに踏み込んだのが本書でした。

著者は一説によれば東大に合格するより難しいとされる東京芸術大学の大学院を出て、現在は同大学で講師をしています。

著者のラファエロ評は、まえがきで示されていますが、

「穏やかでありながら絶妙なバランスを保つ、緊張感ある質」

でした。

うーん、これ、今の私のこと!?ああ、著者に申し訳ないですね、こんな勘違いをしては。

ラファエロ、なんと37歳で急逝したこともあり、自筆の記録は少なく、他の資料からも個人的な考えを窺(うかが)い知ることは容易ではないそうです。

さらに後世において、ラファエロのフェイクなイメージが作られました。

本書ではこうしたことも踏まえ、ラファエロの生涯と作品につき、テーマごとに紹介していきます。

序章では、短い生涯とその仕事を眺めて、関連する芸術家を合わせて紹介します。

続く第1章では、有名な聖母子画を対象に、工夫や作風の変化を具体的に追います。

第2章では、永住の地となるローマでの活動、ヴァティカン宮殿の教皇居室の装飾に焦点をあてます。

第3章では古代美術からの影響を扱い、第4章では彼をとりまく人々を、第5章では彼の墓と遺産を紹介し、終章ではラファエロが西欧世界にもたらした広範な影響と変遷を眺めています。

ラファエロというと今はイタリアの人とされるのが多いですが、この頃のイタリアはまだ統一されてないので、多くの公国、共和国に分立されていました。イタリアというのは国名ではなく、その他の場所を表す言葉として使われていたのです。統一は1861年のことでした。ビットリオ・エマヌエレ2世が国王です。

初めにルネサンスについて、ざっくり説明しましょう。ルネサンスとは14世紀から16世紀にかけて、閉塞感の強い中世のキリスト教会の権威から人々を解放しようという、政治的・文化的運動でした。

核となるのは人文(じんぶん)主義で、これは古代ギリシャやローマの時代を研究し、それをもとに人間性を解放し、教養を深めよ、ヒューマニズム万歳というものでした。

芸術面では建築のブル・ネレスキを魁(さきがけ)とし、前出の3人の他にも彫刻のドナテロ、絵画のティツィアーノなどがいました。

こうした芸術の隆盛には、それを支えたパトロン、富豪の存在もあったのです。有名なところではメディチ家でしょう。ジョバンニ、コシモ、ロレンツォ、ピエロと続きますが、特に「豪華王(イル・マニーフィコ)」のロレンツォは高名です。

メディチ家は東方貿易と金融で財を築きましたが、この当時、商業の中心はフィレンツェをはじめとする、のちにイタリアとなる地域だったのです。東方貿易ですから大航海時代ともリンクしています。

他に大きな点は、労働観が大きく変わって働くことへの価値が大幅に上がりました。

ラファエロは父親も画家ですが、幼少の頃から才能を見込まれ、工房にて修業の道を歩みました。工房のシステムは、親方のもとで下働きを通して身に着けていくという徒弟(とてい)制度です。

ラファエロに関しては、この頃の史料が少ないため、不明な部分が多いとのことでした。最初の記録では17歳の時に親方という肩書で、祭壇画を受注しています。一人前ということです。

ラファエロが親方として活動を始めた1500年に、ダ・ヴィンチがミラノ公国からフィレンツェに移り、もとからフィレンツェで活動していたミケランジェロもいたということもあり、ラファエロはフィレンツェに赴きました。

大先輩のダ・ヴィンチとミケランジェロの作品を学んでもいます。年齢で見ると、1504年ではラファエロ21歳、ダ・ヴィンチ52歳、ミケランジェロ29歳です。ダ・ヴィンチは万能の天才と称されていますが、ミケランジェロは古い様式を打破して、のちのバロック美術への道を開いたとされています。

バロック美術とは1600年頃から1715年頃までの様式で、一言で言えば豪華絢爛というものでした。ベルーニ、カラバッジョ、レンブラント、ベラスケスなどが有名です。バロックとは、ポルトガル語、あるいはスペイン語で「歪んだ真珠」という意味です。

ミケランジェロで思い出すのは、彫刻の大家の彼が、自ら大理石を彫るのではなく、既に作品が埋まっている、自分はそれを掘り出すだけ、という趣旨の言葉を残していることでした。天才というのは、語る言葉も違うなあと刺激になりました。

本書では、ローマに移ったラファエロが、名高い教皇居室(スタンツェ)「署名の間」の装飾に従事した場面も叙述されていますが、これを機に注文が急増しています。

本書中にラファエロの作品が多出していますが、ふくよかで柔らかな温かみを感じるものとなっています。新書版ですが、通常とは違う紙を使い、発色にも配慮されていました。

ラファエロは1520年4月6日に37歳の若さで他界します。当時のローマの人々に衝撃を与えた様子が紹介されていました。

没後のラファエロの評価は、時代の移ろいと共に浮き沈みをしますが、終章ではこの点につき解説がなされています。

皆さんは、日頃、美術館に足を向けたりしますか?絵画というのは三次元の物を二次元に表現しますが、「人間の能力とはなんと凄いものなのか!!」と感嘆すること頻(しき)りです。二次元として平面に描く際、どこをどうしたらあれほどリアルに描けるのか、作者の思いを表わすことができるのか、脳内の働きを見てみたいほどです。

著者の深田さんには申し訳ないですが、そろそろ皆さんお待ちかねの(待ってるでしょ!)、美達さんと絵についてのエピソードです。そこのあなた、かくも盛大な拍手をいつもありがとう!

覚えている人もいるでしょうが、私、何を隠そう美術幼稚園の卒園生です。プロの画家が趣味でやっている幼稚園で、教室には画用紙を貼ったイーゼルがずらりと並び、プラスチックのマグカップに粉とき絵の具と筆が用意されていて、好きなだけ絵を描ける幼稚園でした。

しかし、私、ほとんど描いた記憶もなく、ひたすら園長先生の愛犬のコリー犬を追っかけてばかりの日々だったのです。

若い女の先生が目を離すと、猛ダッシュで教室を脱出し、「大和くーん!!」の先生の声をバックにコリー犬の所に行き、背中に乗ります。私の愛馬のつもりでしたが、気に入らないようで時々、私のことを噛(か)んだりするので、元気いっぱいの大和君は噛み返してました。

園長先生は優しい紳士で、特に怒ることもありませんが、若い女の先生に叱られつつ捕まっては戻される日々でした。

高校生になり、美術の時間に油絵で自画像を描くことになり、他のみんなはそれなりに写実的でバックの色にも濃淡なんかつけているのに、私だけがくすんだ緑一色をベタ塗り、顔も劇画風で、先生も「マンガ風だな」なんて困っていたのを思い出します。

美術幼稚園でしっかり描いていれば上手になったかもと思いつつ、絵の才能のなさは受け入れています。

皆さん、美術、芸術は教養でもある他、心の栄養、休養にも必要です。どうか生活の中に取り入れて下さい。

関連では、

ラファエロ
河出書房新社
2017-12-20



システィーナ礼拝堂を読む
深田 麻里亜
河出書房新社
2013-09-09



イラストで読む ルネサンスの巨匠たち
杉全 美帆子
河出書房新社
2010-04-08





※東京芸大の生態を描いた読み物


があります。

本書、教養としてオススメです!本書を差し入れしてくれたTさん、ありがとうございます!


『有効にすごした一日は楽しい眠りをもたらし、善用された一生は安らかな死をもたらす』(レオナルド・ダ・ヴィンチ)


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読者ブックレビュー 『論語』 金谷治(訳注) 

論語 (岩波文庫)
金谷 治(訳注)
岩波書店
2014-12-18


★平居さんより★


今更いうまでもありませんが、孔子とその弟子たちの言行をまとめたものが『論語』と呼ばれ、今に伝わっております。

我々、日本人だけでなく、東アジアの多くの人々のメンタリティーに影響を与えてきた孔子と儒教の力の凄い所は、別に論語を改めて紐解かなくとも、我々の生活習慣の中に深く浸透し、根付いているところにあると思います。

しかし、往々にして人は易きに流れるものなので、時に孔子の言動を振り返り、我が身を省みることは大切だと思い、あらためて紐解いてみた次第です。

自分が論語の中で、最も好きな言葉に、


「朝に道を聞かば夕べに死すとも可なり」


があります。

10代の頃、学校に行かず、「自分とは何なのか?」「世界とは何なのか?」思索し続け、様々な哲学書を読み漁った時期にこの言葉は最も響き、座右の銘となりました。

また、今回、改めて論語を読み、この「子曰、朝聞レ道、夕死可矣」の言が、論語前四篇の「里仁」に記載されていることを知りました。

「里仁」は仁に関する言説が多く、「仁に里(お)るを美(よ)しと為す。択(えら)んで仁に処(お)らずんば、焉(いずく)んぞ知なることを得ん」とあります。

仁を外さないことが大切で、あれこれ仁を選びながら、結局外れてしまっているようでは知恵が足りねえなあということかと思われますが、道を知る上で仁の重要性、そして仁とは何であるのか、考える良い機会となりました。

なお、仁とは愛や情け、思いやりという言葉で解説されていることが多いのですが、その言葉だけではしっくりこない自分がおります。

なぜ、しっくりこないのか考えてみたところ、愛や情け、思いやり、こういった感情は、道を求める上で重要ではないと、極力、排してきた自分自身に気が付きました。

しかし、最近ではその姿勢も徐々に変化してきているということも分かってきました。

論語に学ぶということは、自分自身を問い直すことでもあるのだなあと今回の読書を通じ、改めて感じ入った次第です。


あさにきくとりのなくこえかなしけれつばさなきみをあいしあじわん(平居)


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みたつ・やまと●1959年生まれ。2件の殺人を犯し、長期刑務所に服役中。現在でも月100冊以上を読む本の虫で、これまでに8万冊以上を読破。初めて衝撃を受けたのは10代のときに出会ったロマン・ロラン著『ジャン・クリストフ』。塀の中にいながら、郵送によるやりとりで『人を殺すとはどういうことか』(新潮社)、『夢の国』(朝日新聞出版)などを著す。

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『獄中の思索者-殺人犯が罪に向き合うとき』
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『塀の中の情報解析学 中国共産党大解体』
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『罪を償うということ』
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『あなたが未来に選択肢を残すための「よりよい」生き方』
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『塀の中の残念なおとな図鑑』
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『日本と韓国・北朝鮮 未解決問題の真実』
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『人生を変える読書 無期懲役囚の心を揺さぶった42冊』
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『人を殺すとはどういうことか(文庫)』
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『私はなぜ刑務所を出ないのか』
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『塀の中の運動会』
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『刑務所で死ぬということ』
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『ドキュメント長期刑務所』
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『人を殺すとはどういうことか(単行本)』
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『夢の国』
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