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『生きる職場』
武藤北斗
イーストプレス
1500円+税
2017年4月刊

自分が働きたいときにだけ働く、嫌いな作業はやらない、欠勤の連絡もしなくてもいい
というような夢みたいな職場があります、というのが本書のテーマでした。

「株式会社パプア・ニューギニア海産」というのが、その会社です。

(社名の由来となっている)パプア・ニューギニアというのは、南太平洋にある、600の小島からなる国の名前で、あの大東亜戦争においての激戦地でもありました。人口は約380万人で、漁業・観光が一大産業です。著者は父の経営しているその会社の工場長で40歳の人でした。

(会社は大阪にあり、)パプア・ニューギニアで採れた天然エビを原料に無添加の冷凍食品や惣菜を作っています。従業員は正社員2名、パート9名の11名です。この会社、2011年3月11日の東日本大震災までは、宮城県にありました。津波で工場が甚大(じんだい)な被害を受け、続く福島第一原発の事故の放射線の影響もあり、大阪へ移転して、新規一転、現在に至っています。著者は、そのときまで管理を厳しくして、生産効率を上げようという思考でしたが、震災後に大阪で求人募集をするにあたり、従業員のことを第一に考えるようになったのです。

そこで、冒頭のように、時間も曜日も指定せず、いつでも好きな時に出社し、好きな時に帰るという「フリースケジュール」というシステムにしました。初めのうちは、それでサボる人が出ないだろうかなどと心配し、やはり、何人かは来なくなることもありましたが、やがて、それも減り、以前より働きやすくなったせいで、生産効率も上がり、何よりも職場の雰囲気が格段に良くなったのでした。

と言ってもフリースケジュールは時間給で働くパートのみ対象なので、各自が自分の都合で働くことができたと言えます。著者は以前の自分の「仕事や従業員への考え方」を徹底的に反省して、まずは従業員が働きやすこと、そして、それが経営のマイナスにならないことを追求していました。

ただし、著者は、「仕事とは最初からそこに楽しみがあるわけではない」とし、従業員にとって仕事の楽しさよりも、居心地の良いことを第一条件と述べています。そのおかげで、離職率も低く、人件費も以前よりも低くなり、ベテランになっていくので作業効率も向上という成果につながっているのです。

フリースケジュールを実施する際に、著者は従業員に3点の協力を頼みました。

1、従業員同士の悪口を言わない

2、挨拶(あいさつ)を大きな声でする

3、時間を守る(休憩から戻る時間など)

この3点でしたが、守った結果、職場の人間関係も良くなったそうです。

実際に著者自身も心に変化が起きています。たとえば、昼すぎから出てくる人に対して、昼からだけでも出勤してくれてありがたいと感じるようになったそうです。また、各自に対する好きな作業と嫌いな作業のアンケートでは、偏ることを心配していましたが、思いのほか、うまくバランスがとれ、パートの人たちが出勤前に嫌いな作業を思って憂鬱(ゆううつ)になるのを防いでいます。

もし、全員が嫌いというのがあれば、それは順番でやるそうです。著者は、随時、どうしたら居心地の良い職場になるのか、それでいて経営にマイナスにならないようにと考え続けています。やってダメなら元に戻すのを厭(いと)わず、始めてみることの大切さが述べられていました。

本書には、コミュニケーションや、職場の改善にまつわるヒントがいっぱいでした。エビや食品についての安全性も語られ、エビフライとは、いかなる食品かもわかります。この会社のエビフライがもっと普及されるといいなと感じました。

実は私も自分の会社(金融ではなく不動産の方で)で、自由出勤をやったことがあります。要は結果を出せばいいから、ということで、固定給プラス歩合(この場合は1億円以上にも及ぶものです)で、結果が出ないと固定給を下げ、それでもダメなら「ファイアー!」です。

それでも、結構、会社に出てくるもので、「何で出てきた、用事ないだろ」と私が言うと「なんとなく」という感じでおかしかった(笑う意味での)のを覚えています。私は、効率も悪いのに、だらだらと長く働く、会社にいるという姿勢が嫌いでしたが、業種によって可能なら、本書のような働き方に賛同できました。

ご一読を!

『感謝は最高の美徳であるのみならず、他のすべての美徳を生み出す』
(キケロ)

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