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『大往生したけりゃ医療とかかわるな 介護編』
中村 仁一(じんいち)
幻冬舎新書
840円+税
2017年3月刊

人間の死に方

『人間の死に方』
久坂部羊
幻冬舎新書
2014年9月刊

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皆さんは2025年問題を知っていますか?団塊(だんかい)の世代が全員、後期高齢者の75歳以上になる年のことです。

ついでにもう一つ健康寿命とは何か知ってますか?これは元気で動けるまでの寿命で、死までを表わす平均寿命とは違うものです。たとえば寿命が85歳で、健康寿命が75歳なら、10年間は介護が必要ということになります。

著者は老人ホーム同和園(どうわえん)の所長兼医師です。その著者、本書で提唱するのは健康寿命の延長ではありません。健康寿命後の、

いかに要介護状態を生きるか

が大事だと言っています。端的に言えば、

要介護期間の短縮

で、無理に引き延ばすのは本人の幸せになっていないと述べているのです。自力でものが食べられなくなったら、もうそこで寿命、というのが正しいとあります。医療や介護が「余計」な手出しをしなければ、人の身体は自然のしくみが働いて穏やかに、安らかに死ねるようにできている、とも述べていました。そこで重要となるのは「年寄りの意識改革」だそうです。

今の人々は近代医療に対して、幻想を持ち過ぎているとも述べていましたが、なるほどと肯定できます。近代医学の進歩、医療技術は中途半端と言い、その証拠として日本では、高血圧患者が4000万人以上、糖尿病患者が予備軍を入れて2000万人、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)が1400万人と、日本中が病人だらけと語っていました。加えて、昔なら死んでいたのが今は助かるようになったが、その助かり方が不完全で問題だと言うのです。

著者は、病気を治すのは自然治癒力であり、すぐに医者だ、薬だというのは間違いとしています。そして、現在の医療保険制度は薄利多売(はくりたばい)なので、たくさんの患者を診なければ病院の経営がなりたたない点を挙げ、社会全体に医療万能への信仰があることを指摘していました。その医療でも、基準がちょっと変わるだけで、たちまち患者が増えます。

たとえば、2016年11月にアメリカの『国立心肺血液研究所』が最高血圧の値を140未満から120未満に下げると、患者数が大きく増えるのです。その数値によって、たしかに各疾患での死亡率は下がりますが、ほんのわずかでした。最高血圧の120未満というのは低いと思いませんか?私は低血圧の方なので上が100強、下が80前後ですが、周りには上が120以上という同囚、多いです。私が子どもの頃、父は常に上が170から180で高血圧と言われていたので、今の120というのは低いとしか感じません。

著者は、医療は「老い」と「死」には無力、とはっきりと言っています。そこで医療に対する患者としての心得や姿勢を説いていました。たとえば、今はあたりまえになった、

インフォームド・コンセント(説明と同意)

について、医者が自らやりたい治療法に患者を誘導することが少なくないので、患者として、何でも同意する前に、

「先生だったら、この治療法を受けられますか」

などと尋ねよと述べています。さらに第三者の同席や、その会話の録音の許可も尋ねてみよと説いていました。もしそれがダメというならば、医者を換えてみるのも一つの方法としていますが、これ、私たち日本人にはハードルが高いのではないでしょうか。

そうして長寿検診は、老化した体に本当に必要なのかと疑問を呈していました。また、ボケ、認知症についても、基本としてボケを遅らせる薬はないそうです。逆に薬のせいで人格が激変して、周りや家族に迷惑をかけ、本人も不幸になると注意を喚起します。ボケた人の介護というのは、大変なんてものじゃありません。マンガで、介護について詳しく描いた『ヘルプマン』というのがありますが、その内容は壮絶で、介護に絡んで殺人事件となるのもうなずけます。

ところで、ボケは学歴や握力によって、なる人とならない人に明確な差が出るようです。握力が男性で26キロ未満、女性では18キロ未満の人のボケの発症率はそれ以上の人の2.1倍、学校教育の年数が9年以下、つまり中卒の人は、高卒以上の人に比べて2倍となっていました。

本書では他にも、治療方法、がん、看取(みと)り、死を前提に生きる、死に時を素直に受けいれるなど、病気・介護についての注意事項が列挙されています。その介護ですが、どのように乗り越えるかという、一つのモデルケースがありました。それは医療を扱う作家である久坂部羊(くさかべよう)氏の、

『人間の死に方』(幻冬舎新書)

でした。これは87歳の父親の介護から看取りについて綴った書ですが、父も息子も医者のせいか、はたまた、父親のユーモアあふれる性格もあり、それほどの苦労を感じさせません。介護も、このようにできれば、お互いに救いがあるのだと感じさせます。本人たちも述べていたように、介護する方も、される方も医者だからできた部分も少なくありません。

近年は、人生100年時代とも呼ばれるようになりましたが、どの程度の健康状態で老後をすごせるかが鍵です。加えて、これも問題となっていますが、老後が長くなれば、生活資金の多い少ないという問題も出ています。10年もしないで、多くの人が70歳でも働く時代が来るでしょうから、老後というのは、寿命と比べて短くなるのかもしれません。皆さんはまだとして、親などの家族の介護を控えている人には参考になる二冊でした!

『自分自身を裏切らないような戦いを目標にするだけ』
(野村忠宏 柔道 金メダリスト)

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