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『世界を変えた14の密約』
ジャック・ペレッティ
文芸春秋
2200円+税
2018年5月刊

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密約ときくと、なにやら陰謀論めいたものを連想しますが、本書の趣旨は違います。現代の世の中がある意図のもとに作られたことにつき、歴史的事実と取材によって明らかにした書です。では、その作られた世の中とは、どのようなものなのでしょうか?

本書の定義によれば、

ビジネスが政治を駆逐(くちく)し、一握りの人たちが世界の大半の富を握り、砂時計のように中間層がなくなって、砂粒が下方に収斂(しゅうれん)され、ロボットが人の仕事を奪うのではなく、人間がロボットの仕事を奪わなければ生きていけなくなるような未来の社会の姿

と述べられていました。目次を見ると、

現金の消滅
小麦の空売(からう)りとアラブの春
租税回避のカラクリ
貧富の格差で大儲けする
肥満とダイエットは自己責任か
国民全員を薬漬けにする
働き方が改革されない理由
終わりなき買い替え(アップグレード)
権力を持つのは誰か
企業が政府を支配する
フェイクニュースが主役になるまで
ロボットと人間の未来
人類史上最大案件、知性の取引
21世紀のインフラストラクチャー

となっています。

最初から見ていくと、現金の消滅では誰の利益になるのか、そのためにどのような戦略がとられたのか、思わず、「そうか!だよな」と手を打ってしまいました。日本は先進国の中でも現金による決済(支払)の多い国ですが、ゆくゆくは大半が電子決済になっていくのでしょう。

次章では世界の小麦の98%が4大食品会社に押さえられていることから、なぜ、アラブの春が起こったのか、その関係が叙述されていました。もっとも、アラブの春の最大の要因となったのはSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の力でした。

租税回避のカラクリでは、イギリスの仕掛けた、ケイマン諸島が舞台です。ここには世界中から3万社以上の本社が設けられ、法人税の回避に貢献しています。日本も企業と個人合わせて上位にランクされるくらいに使っていました。もともと、衰退する大英帝国(イギリス)が、タックスヘイブン(租税回避地)を作ったのです。当初のお客は麻薬組織でした。

法人税に限って言えば、日本をはじめ、アメリカ、イギリス、ドイツなど、大企業ほど納めていません。日本は現政権になって法人税を下げて30%弱としましたが、こんなのは大嘘で、既に何十年も前から、諸々の「租税特別措置」(いわゆる抜け穴に使われている)で、実効(じっこう)税率は20%台前半で、企業(大企業)によっては10%台後半か、赤字にして払っていません!払っているのは、中小企業です。この件につき、大企業がまともに払うことはなく、そのぶん、政治の世界に資金が流れています。

貧富の格差では、トップクラス(世界1位から8位まで)の金持ち8人の財産が地球上の半分近くを占め、貧しい37億5千万人の財産と同じです!あのロンドン市民の28%が貧困と認定されています。イギリスは国としては7番目に豊かな国なのにですよ。それを言えば世界3位の日本だって、中流層が減って、以前に比べれば格差(所得分配前につき)が拡がっています(ただし再分配後(調整後)は、それほどでもありません)。

以前は、ネットの発展とグローバリズムによって世界各国の所得差は縮まり、世界は平準化(フラット化)され、貧しい人(国)は減少すると喧伝(けんでん)されていました。これ、大嘘でしたね!では誰が何のために、どんな密約があったのか、本書で確めて下さい。

肥満とダイエット、このレビューの読者の皆さんの中にもダイエット中の人がいるかもしれませんね。この肥満で使われる指標として、

BMI(ボディ・マス・インデックス)

というのがありますが((体重÷身長の2乗)×1000)、これも標準体を肥満の域にするための仕掛けでした。他にも食品会社の策略もあります。アメリカに比べたら、日本の肥満など可愛いものです。凄いですよ、アメリカのブーちゃんは。腹、尻の大きさが違います。冗談ではなく、わがオヤジの言う、四斗樽(よんとだる)みたいなケツなのです。日本で言えば力士みたいか、それ以上でした!本当に信じられないものを見てしまったという印象でしたが、それでも脚は長いのです。

ダイエット、これも歴史がありますね。私自身の体験では、高校時代の彼女(昭和51(1976)年の頃)が、アメリカから入ってきた、水をたくさん飲むダイエットをやっていました。全然、太ってなんかいないのに。付き合って間もない頃に彼女の部屋に行ったところ、分厚いそのダイエットの本があってびっくりしました。太ってないのに、なんでダイエット?と尋ねると本人は「痩せたい」と恥ずかしそうに言うのです。スタイルだって悪くないのに、女とはそんなものかと思いました。振り返ると、その時代、既に十代の女子がダイエットしていたんですね。

国民全員を薬漬けにするという章の主役は製薬会社でした。製薬会社、知れば知るほど、コマーシャルなどの善良なイメージが薄れます。確かに新薬を開発するというのは、莫大な資金と膨大な時間を要するものです。しかし、従来の診断や各種検査の基準値を改訂し、以前なら病気にならなかったものまで病気にして薬を売りつけるというのはどうですかね。

血圧でも同じことが言えます。従来までは上が140以上の人を高血圧としたのに、最近では130以上となり、高血圧の患者がどーんと増えました。

売れるのは血圧を下げる薬です。

その昔は、上が160以上の人が高血圧とされていました。

他にも、鬱(うつ)は心の風邪、とか言って鬱の患者が大きく増えた事例があります。高齢者(受刑者は高齢でなくても)は、馬に食わせるくらいの量の薬を投薬されることも珍しくありません。昨今、やっと種類と量を減らそうという静かな運動が広がってきました。

終わりなき買い替えでは、1932年の世界の大手電気会社5社の間で極秘に交わされた協定があります。議事録もあるのですが、電球などを製造する大手5社が、6ヵ月以上、長持ちする電球を作った会社を廃業に追い込むというものでした。この5社、アメリカのゼネラル・エレクトリックをはじめ、名だたる企業ばかりで、日本からも東京電力が参加していました。

電球に限らず、モデルチェンジや、人為的に作り出された流行は至るところにあります。車は、その最たるものでしょうが、他にもファッション関連のアパレルや化粧品など、枚挙に遑(いとま)がありません。皆さんは、服など、流行を追いますか?私は間違っても追いません。スーツやシャツの仕立ての型、スタイルは18歳の時からずーっと同じでした。

バブルの頃、全体がゆったりしたソフトスーツやアルマーニやベルサーチが流行(はや)りましたが、最後まで着ませんでした。妻がアルマーニのジーンズやジャケットを私のために買ってきましたが、断じてジーンズは着ないことに合わせ、私は自身について、身の程(ほど)、分(ぶ)を弁(わきま)えていた青年でもあったので、162センチの自分がアルマーニなど着るのは、いくら成金でも、

アラナーニ

になるだろと言って断固拒否したのです。

妻は女で169センチあり、脚フェチの私が選んだだけに脚も長く、スタイルはよかったので似合いました。しかし、私は違います。そりゃ、あと20センチも背が高ければ、アラよっとと気楽にアルマーニだろうとベルサーチだろうと、渋く決めたでしょうが、162センチなので現実を弁えねばなりません。

他にもパンツ(昔はズボンといったやつ)に線が入っていないノープレスのカジュアルなどをすすめられましたが、パジャマのズボンでさえアイロンをびしーっとかける豆紳士(小さい頃から近所の人たち、PTAのママさんたちから、その呼ばれていました)と呼ばれていた私なので、絶対に着ませんでした。ちなみにアイロン掛けは特技であり、達人の域です。小学校2年生の時に、朝、ズボンにびしっとアイロンがかかっていないので、

「学校行かない!」

と言って、わがオヤジに、

「何を寝ぼけたこと言ってんだっ、さっさと行けーっ!」

と鬼の形相で怒鳴られた私は、そのまま床に大の字に寝て、

「いやだーっ、絶対に行かなーいっ!」

と叫んだことがありました。父が怒鳴ると、世の中の誰であろうとその通りにするのに、わが子に反抗された父は、呆れたのか、

「おい、こいつのズボンにさっさとアイロンかけてやれ」

と命じたのです。

アイロンがけでは、もう一つの思い出があります。高校時代の彼女の家はクリーニング店でした。ある日、遊びに行くと彼女がいないので、私はクリーニングの手伝いをしようと(なんと心がけのよい少年でしょうか!)、お店に入ってアイロンを使わせてと頼みました。その家のおじさん(お父さん)、おばさん(お母さん)だけではなく、アイロン担当の職人さんまで、難しいんだよお、とニヤニヤ笑っていましたが、私は任せてくださいと、業務用のごつくて重い(このアイロンは、いいなと)アイロンを手に客のズボンをプレスしたのです。結果は、「おお、こりゃ、うまい!」でしたが、私がプレスすると、何かを斬るくらいに線が鋭く入り、この後の乾燥も含めて、仕上がりが美しいのです!そんなことをなつかしく思い出しました。

さて本書、今の世の中の多くのことが、予定調和的に大企業の思惑で動かされているのがわかります。特にネット世界での動きは必読でしょう。読みものとしてもエピソードが多く面白い一冊です。本書、タメになり、さらに話のタネになります。社会にいる皆さんですから、尚のこと興味深い書になるでしょう。是非、ご一読を!
『汝(なんじ)の最大の敵は汝以外にはいまい』
(ロングフェロー)

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