saiyouyoukou


企業が採用選考時に重視すること。(日本経団連)

「コミュニケーション能力」

「主体性」

「チャレンジ精神」

「協調性」

「誠実性」

何をしたらええねん、と。

もちろん面接官が短時間で、採用を決めるわけだから、あいまいな部分で採用不採用を決めることには賛成だ。

それでも、就職活動をしている学生が何十社も面接で落とされ、自分では理由がわからず、暗にコミュニケーション能力が低いと言われ続ける。
しんどい人もいるだろうなあ、と思う。
僕はどーせそんなの建前でしょ、学歴だろうーよと思ってしまうタイプだから、何とも思わないですが、気にする人はどんどん追い込まれそうだ。
とにかく、何をしたらいいのかがわからない。

そもそもチャレンジ精神なんて面接でわかりっこないものを基準としてあげるのが間違っている。面接でできるチャレンジなんて、スーツ着ていかないとかの無理やり目立つ系か、面接官に反論するとかの生意気系しかない気がするけど、その時点でそいつに協調性がないと断定できるわけで、矛盾だらけだ。

なんとなくピンとくるか否か、が全てなのだと言ってしまうと何か不都合があるのだろうか。
コミュニケーション講座とか就職セミナーとかで金取ってる人たちの仕事がなくなるくらいしか思いつかないので、その人たちの力なんだろう。どーでもいいが。


働き出してからも変わらないといえば変わらない。
「主体性を持って働け!」とは何度言われたかわからない。
部下が、しかもこのてきとー野郎な俺が、主体性を持って動いたときにお前に舵がとれるんですか?といつも思っていた。
ちょっと考えると何がいいたいのだろう、と思うことは多い。


つーわけで『その言葉だと何も言っていないのと同じです!』を読んだ。
その言葉だと何も言っていないのと同じです!その言葉だと何も言っていないのと同じです!
吉岡 友治

日本実業出版社 2014-01-30
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唱えるだけで何かを「やった」という雰囲気にはなるのだが、実際はうまく問題解決できない言葉、マジック・ワードに騙されないために・・・という本。



本書はマジックワードの紹介→どうしたらいいか?(第1〜3章)と自分の考えを論理的に伝えるには(第4〜5章)で構成されています。
取り上げられているマジックワード全てが多くの人が一度は「?」となったことのある言葉なのではないでしょうか。

主体性を持って取り組め
上司「プロジェクトが思うように進んでいない。それぞれがもっと主体性を持って取り組んでもらいたい」
部下「みな頑張っていると思いますよ」
上司「でも、効果が出ていないのだから、方向が間違っているんだよ」
部下「では、どうすればいいとお考えなのですか?」
上司「それを自分たちで考えるのが主体性だろ?」(P44)
主体性の原義は「それぞれが独立に判断する」だが、多くの現実は「別の人が目標を作る」→「やる気が起きない」→「主体性を持てと叱咤激励」となっており上記の場合、主体性持っているのは命令している上司のはず。

主体性を持って取り組めというのは、自分に都合のよいように現実をねじ曲げる言い方「ポジション・トーク」の1つである。
つまり、この言葉は、
目標は発言者が一方的に決めて、命令されたほうがその実現に取り組むという奴隷的状況を隠蔽する言葉なのである。

ではどうしたらいいか?→言葉の本義に戻る
「主体性を持て」と叱咤激励する人は自分の責任を問われたくないから説教しているだけなので、同意するふりをしつつ、自分の判断で時には上手にサボるべき、
というのが本書のまとめです。ちょっと面白味が伝わらないかもしれませんが、一番普段から接する言葉「主体性を持って」だけ抜き出してみました。


本書でとりあげられているマジックワード

「もっと議論をすべき」「・・・はいかがなものか?」「悩ましい問題である」
「みんながそう言っているよ」「本当に今必要なものでしょうか?」「断固たる決意で臨む」
「常識で考えればわかるだろう」「主体性を持って取り組め」「もっと向き合え」「顧客の立場に立て」
「一人ひとりができることをする」「できることからはじめればいい」「人それぞれ」「相手の身になって」
「コミュニケーション能力」「プロ意識を持て!」「グローバル人材」「ウィン・ウィンの関係」
「リーダーシップが必要」「組織一丸となって立ち向かう」「意識改革をすべき」「自己アピールが足りない」
「研修が必要だ」「それが、やりたいことなのか?」
「可能性はゼロではない」「二度と繰り返されてはならない」
「市場の判断が注目されます」「国民に納得のいく説明を」
「地球にやさしく」「家族の絆」「教育が悪い」「いじめられるほうにも問題がある」
「どんな小さな兆候も見逃さない」「キレる若者」「限られた資源を有効に使う」「機会の平等」

気になるワードがありましたら、ぜひ本書で確認してみて下さい。
毒のある書き方がされている箇所があったりと、全て、読み物としても十二分に面白いです。
実生活に活かすとすれば、上記に上がっている言葉を含め、自分のなかできちんと定義できない言葉は使わないということ、またそれらの言葉を言われたら原義を考え聞き流す、あまり深く考えないというところでしょうか。


自分の考えを論理的に伝える5つの技術

1、まず言葉を定義しよう:言葉を雰囲気だけで使わない。理想や願望ではなく、事実から考え始める。
2、首尾一貫して考えよう:話題はかならず一貫させる。話が散漫になるときは「そして」「また」が連発される。
3、主張の正しさは根拠で示そう:説明をすれば根拠は充実する
4、論理とイメージを対応させよう
5、結論まで同一の内容にしよう


まとめ

本書の柱は

なんとなくに流されず、考えて言葉を選ぼう!

ということ、と読みました。
みんなが使うから、メディアが使うから、なんとなく言った気になるから・・・で言葉を選ばず、きちんと考えて言葉を選ぶ。そうすることによって相手に伝わる論理的な話し方&文章ができるのではないでしょうか。
その言葉だと何も言っていないのと同じです!その言葉だと何も言っていないのと同じです!
吉岡 友治

書き込めば身につく!  小論文メソッド いい文章には型がある (PHP新書) ずるさで勝る水平思考トレーニング (SB新書) だまされない〈議論力〉 (講談社現代新書) 自分のアタマで「深く考える」技術 (PHP文庫)

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本書より

この本では「マジック・ワードにだまされるな!」という視点を強調しているが、むしろ、だます立場に立って、マジック・ワードを楽しく使いこなすというのも選択肢の一つかもしれない。(P2)

強さや信念ばかりを強調するリーダーシップは、根本から間違っているのである。(P93)

「家族の絆」という言葉は聞こえがいいが、それと家族を取り巻く問題の具体的な策とは別の話である。だから、理想を視野に入れつつも、それをやみくもに強行・強要しない。そういう慎重さを持たないで理想ばかりを主張する人は、世の中により大きな害毒をまき散らしかねない。(P139)

逆に言えば「教育が悪い」と言いつのる人間は、手をこまねいて事態を悪化させかねない。(P143)