猫と食事と西荻窪、ときどき旅する車椅子

ライター・みわよしこの日常つれづれ話



小保方晴子

小保方晴子さんについて:話題にすることをやめよう

小保方晴子さんの書かれた論文等で剽窃が行われたこと、ほぼ間違いないようです。
研究倫理にもとるとかどうとか言う以前に、オバハン元低レベル研究者である私は、「なんとお粗末な」と口あんぐりです。
STAP細胞についても、さまざまな疑惑が持たれています。 ただ、私があまりにも門外漢すぎるため、内容がよくわかりません。生物学に詳しい友人たちに「教えて」とおねだりして、少しずつ教えてもらっている段階です(「幹細胞て何?」「それって、細胞の中にあるもの? 外にあるもの?」から説明するはめになった友人の皆さん、お手数おかけします)。
政府も、理研に調査を要請したようです(こちらの日経報道など)。 正直
「なんで今ごろ? なんで政府が? 」
と思います。「尻馬に乗る」という言い回しさえ思い浮かべてしまいます。

STAP細胞自体が出来たのか出来ていなかったのか、何か他の細胞との取り違えじゃないのか、実験手順に不正があったんじゃないか……といったこととは無関係に、小保方さんは研究者としては再浮上できないでしょう。
やってしまったことに対する社会的制裁としては充分、いや、もう充分以上かと思われます。
いずれ、科学界でも調査と制裁が行われることでしょう。

だから今は、話題にすることをやめませんか? 
居酒屋でも井戸端でも床屋でもSNSでも。
研究不正はいけません。「不正」なんですから。
必要以上の社会的制裁を「世間」が加えることは、「不正」とは呼ばれませんが、正しい行為とはいえないでしょう。
研究に倫理を求め、研究者に良心を求めるならば、求める側が倫理的かつ良心的であるべきではないでしょうか。

だから、当面、小保方さんを話題にすることはやめませんか?
小保方さんについて、口をつぐみませんか?
早晩、理研・早稲田大学などが調査を行い、適切な制裁が行われるかと思います。
小保方さんが研究の世界から追放されるのは、仕方ないことです。といいますか、ご自分の行為がご自分にふりかかってくるのは、大人として、一人の研究者として、当然のことでしょう。
でも、小保方さんを、ありとあらゆる場で生きていけない人にしてはいけません。 
研究の世界では生きていけないとしても、社会のどこかに居場所を作ってリスタートを支援すること、社会の義務ではないですか?

とりあえず私、自分自身の「倫理」「良心」の現れとして、当面の間、小保方さんを話題にすることはやめます。
STAP細胞に関する「あれは何?」は、引き続きぼちぼち勉強しますけど。 

メモ:小保方晴子さんの疑惑に関して思うこと

最初に、私はバイオテクノロジーが「ぜんぜん」といってよいほど分からないということを、お断りしておきます。
だから、小保方晴子さんの論文に関する疑惑については、何がどう問題なのかが分かりません。
ただ、きちんと調査がなされ、小保方さん自身からの説明がなされることを望みます。 
それはそれとして、思ったことのメモ書きを。
主に、実験を伴う科学研究に関する誤解に関するものです。

●「再現できない」は結構よくある話 

私が実験系の研究に直接関わっていたのは、通算で5年程度です。
そのたった5年の間にも「再現できない」は結構ありました。10回近くは経験していますかね。当時の実験ノート全部残してありますから、見れば調べられるんですが。
「論文に書かれている他人様の実験が再現できない」だけではなく、「自分たちがやった実験を自分たちが再現できない」というようなこともありました。
しかも、生き物が相手というわけでもなんでもなく、対象は半導体だったり光学デバイス(無機物)だったりしました。

●「証拠がない」は、いろんな理由で起こる
 
今から27年前、23歳のときの勤務先で、私が直接経験したことです。
私は当時、半導体レーザの研究で世界最先端の一つとみなされていた研究所で実験テクニシャンをやっていました。で、世界にいくつもなかったタイプの装置で、世界にまだなかった方法で、世界ではじめてのタイプのレーザダイオードが誕生しました。
結果は論文となり、世界中の同業者の注目を浴びました。
問題はその後です。
その一回の試作で、500個ほどのレーザダイオードができたわけですが、うち光ってくれてデータを取れたレーザダイオードは10個くらいしかありませんでした。で、論文のためにデータを取っているうちに、その10個くらいが全部壊れちゃったんです。これ自体はよくあることで、「測り壊し」という用語があるくらいです。動作確認してデータを取るときに、限界までの動作温度・出力などを試すわけですから、ここが限界だということが判明したときには壊れちゃってるわけなんです。
成功を喜んだ所属グループは、また同じタイプのレーザダイオードの試作を試みました。
ところが、数回続けて成功しなかったんです。
「最初のアレは、なんで成功したのか?」
と全員が首を傾げましたが、その「最初のアレ」は全部成仏しちゃってますから、成功の理由を調べることもできません。
幸いにして、
「結果に疑義があるからサンプルを出すように」
ということにはなりませんでした。間もなく、他の研究機関のグループが追試に成功してくれましたし。というか、追試されて真似された上に、さらにすごいものを作られてしまいましたし。
でも、もし疑惑がもたれていたら。
「これは本当にうまくいったんですよ!」
を示す実物は何一つ残っていないわけですから、大変ヤバいことになったでしょうね。
というわけで、「証拠がない」「証拠が残ってない」も、「何か不正しやがったんじゃね?」には直接は結びつかないのです。

●もし疑惑が本当だったら?

まだ30歳、ご自分の人生のスタートを切ったばかりといってよいような年齢の方に、再浮上できないほどのケチがついてしまうわけです。その後、どうなさるのでしょうか。どうやって生きていかれるのでしょうか。人生、先は長いのに。
もちろん、研究の世界に二度と戻れないくらいのペナルティは、有り得る話だと思います。
「もし疑惑が本当だったら、それは仕方ないかな?」
と私も思います。
ただ、おそらく日本では、それでは済まないでしょう。生涯にわたってリンチを受け続けるような毎日が続くのでは。
私は、それを懸念しています。
高い能力を持ち注目を浴びた女性にケチがついたら、研究の世界で退場させられるだけではなく、他の世界で生き延びることまで不可能になりかねないのが日本ですから。

●明確かつ再起を妨げない「けじめ」がほしい

研究の世界に、スポーツの試合のような「◯年間公式戦出場停止処分」といったものは作れないものでしょうか。
誤りを認め、何年間か「したくてもできない」という期間を経験するという「罰」を受けた後で、また復活・再生できるような仕組みを作れないものでしょうか。
逆説的ですが、もしそれが可能な状況だったら、不正行為・不適切行為の追及は迅速に徹底的にやれるようになると思うのです。
将来の救済、将来の敗者復活の可能性があればこそ、悪とされることは徹底的に追求できて、明確なペナルティを設定することができるのではないでしょうか。
救済や復活の可能性がないから、同業者による追及は、よほどのことでなければ「なあなあ」になってしまうのではないですか? また、救済や復活の可能性がないから、つまり叩いたのと同じだけ叩き返される心配をしなくていいから、「なんでもあり」の全人格的攻撃が行われてしまうのではないですか?

●「それはそれ」

話題になるまで関心も向けてなかったのに。
話題になったって、パーソナリティだの服装だの壁の色だのにしか反応しなかったのに。
自分ではよく理解できてない疑惑がかかったからといって、鬼の首を取ったように叩きますか?
そういう反応が、私は本当に嫌いなんです。
研究者は、居酒屋談義のネタにされるために生きているんじゃないんです。


研究者のゴシップを物語として消費するだけの方が一人でも減り、研究者や研究を「生き物」「生き物の仕事」として見る方が一人でも増えるように。
一つのケチを、全人的な否定につなげず「それはそれ」と言える方が増えるように。
私は自分の仕事で、結果を出し続けるしかないようです。
 
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「みわちゃん・いんふぉ」内を検索
著書です(2009年-)
「おしゃべりなコンピュータ
 音声合成技術の現在と未来」
(共著 2015.4 丸善出版)


「いちばんやさしいアルゴリズムの本」
 (執筆協力・永島孝 2013.9 技術評論社)


「生活保護リアル」
(2013.7 日本評論社)

「生活保護リアル(Kindle版)」
あります。

「ソフト・エッジ」
(中嶋震氏との共著 2013.3 丸善ライブラリー)


「組込みエンジニアのためのハードウェア入門」
(共著 2009.10 技術評論社)

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