『ミリオンダラー・ベイビー』

公式サイト http://www.md-baby.jp/

クリント・イーストウッドの監督としてそして何よりも役者としての実力に、ただただ震えるしかない。
本当にいい映画を見せてもらった、彼は本当にひと癖もふた癖もある味のある映画を作りますね。
エンドロールが終わった瞬間、こっちが土下座の勢いで頭下げたくなっちゃったもん(笑)
「貴方のような映画を作る人がいるから、映画見るのが止められないんです!有難う!」ってね(爆)
久しぶりに、映画で泣きました。それは悲しみや辛さだけの涙じゃなかったんだよ。
そこにある絶対的な「愛」に、この映画の投げかける究極の問題提起に心が震えた。
この映画凄い、今年見た映画(自宅鑑賞含む)で今の所、ダントツトップに踊り出てきた。

と、いう訳でキャスティングから。
主役の女性ボクサーのマギー役に、ヒラリー・スワンク。
イーストウッドが影で上手く彼女の味を引き出してのリードもあってか、彼女の演技は抜群。
彼女のファイトやボクシングに賭ける夢、誇り。勝利の笑顔。
全てがヒラリー・スワンクだからこそと言っていいと思う。
正直ね、あまり美人さん!ってタイプじゃないと思うの、彼女。
でもボクシングで勝利した時の笑顔は、本当に可愛かった。本当に純粋な笑顔だった。
助演をもぎ取ったモーガン・フリーマン。「この人がいるから、大丈夫」と思わせる安心感(笑)
物語を脇で支えるキーマン的存在を、上手く演じていました。全てを見守る男でしたね、スクラップ。
そして、最強の名演技を見せてくれたフランキー役クリント・イーストウッド。
あんな貫禄ある姿かつ、あの名演技っぷりは卑怯だ!泣くしかないじゃないか!
一つ一つの動作全てに意味があるような、言葉にしなくてもスクリーン越しでバンバン伝わってくるの。
私の泣き所は全部彼、流石監督美味しいところ持っていきますなぁ(笑)
身体全体で、フランキーという役柄の持つ全てをぶつけてくるような演技は圧巻。
ヒラリーも、本当に抜群の演技力で上手かったんだけどイーストウッドが上手すぎるんだよね。

ストーリーに関しては、前半と後半のギャップが激しい構成だった。
だけど、私はそれこそが『ミリオンダラー・ベイビー』の良さではないかと思ってる。
しかもけして前半と後半は別物ではなくて、太いしっかりとした芯で繋がってるんだ。
前半があるからこそ、後半があり、映えて重たいものを感じさせられるとね。

前半にはボクシングのトレーニングや試合を通じて、フランキーとマギーが心を通わせ会う過程が
描かれててそれがまた本当に繊細に作られてるんだよ。
フランキーの偏屈でシャイで、でも孤独をいつも隣に抱えている性格を丁寧に表現していて
マギーに近づくまでの、時間経過と共に変わる彼の心の内をイーストウッドの素晴らしい演技で
表現されててさ。マギーもマギーで、フランキーに見てもらいたいという思いとボクシングが
上達しない焦りとか、年齢的なものなどで苦悩する姿を丁寧に描がかれてる。
不器用な接し方をするフランキーを、受けとめるマギーの関係が素晴らしい。
時間にしては長い時間じゃないのにも関わらず、取りこぼさずにきちんと二人の触れ合いを
まとめあげる監督の腕がここでキラリと光ってるよね。
そして二人は、栄光への道を駈けあがる。次々と試合に勝って行くマギーにつけられたあだ名。
お揃いの緑のウエア。控え室での会話の流れとか、本当に自然体だったな。

ボクシングシーンでの、ヒラリーのパンチ頑張ってるねー(笑)
身体の筋肉も鍛え上げてて、彼女の努力をすごい感じる。
そんなボクシングシーンでもマギーの動きをハラハラ見つめるフランキーは、トレーナーというより
もうこの時点で父親的なものを感じたな。大丈夫か?大丈夫なのか!?ってもう顔に書いてある(苦笑)

それに気づかない(?)マギーが素直にフランキーに懐く姿っていうのがまた可愛くてさ。
それを照れを隠しながらも、愛を込めて接するフランキーとの関係が穏やか。
あぁ、ここに「愛」があるんだなと見るものに感じさせる。
特別なことは、なにもなくても空気がそう訴えかけてくるんだよね。
お互いに決定的に埋まらない孤独…フランキーは疎遠の娘だったり、マギーは自分の家族だったりは
あるものの、それとは別次元の彼らだけの、彼らにしか判らない「愛」がそこにあるんですよね。
だからこそ、後半の流れに繋がった時のフランキーやマギーの姿が強烈に焼きつく。
まさしくそのギャップこそ、この映画の売りなのでは。
前半のサクセスストーリーから、いっきに転落させるのが余計引き立たせるんだよね。

後半は、涙なしでは見れなかった。強烈な演技や、台詞がほんっと多くて。
中でも一番印象に残っているのは、フランキーが覚悟を決めるシーン。
ここはヒラリーもイーストウッドも、本当に素晴らしい演技をしていたと思う。
言葉はないのに、何故ここまで伝わるものがあるのか。
鎮静剤を打たれたために、虚ろな目のマギー。だが、そんな朦朧とする意識の中にすらある彼女の望み。
マギーの瞳を、状態を見て決断を下す時のフランキー表情。絶品としかいいようがないよ。
前半のシーンでの、二人の絆を見ているだけに本当に切ない気持ちになる。
このシーンから泣きっぱなしだったなぁ(苦笑)今思い出してもなんかこみ上げてくる。
教会で震えるように、「俺は彼女を守りたい」と訴えるフランキーの姿にも震えたな。
もう堪らない、ただ病室でマギーと同じ空間にいるフランキーの姿とか。
ただ当たり前のように側にいて、見守る存在としてのフランキーの姿は印象深い。

マギーがフランキーに願いを乞うとき「誇り」という言葉を口に出しましたが、これは
前半のほうである「ボクシングとは相手の尊厳を奪い勝つものだ」みたいな部分と被るものがあって
マギーの人生とは、ボクシングと直結するような人生でもあったのではないかと思わせられた。

フランキーが下した決断が、正しいものだったかなんて誰にもわかりません。
ただあの時安らかな顔をしたマギーにとっては、それが紛れもなく望んだ事であって
彼女の人生はスクラップが言うとおり「幸せ」だったのだろう。というか、そう思いたいよ私が。
これは、生きる上で失ってしまった愛を取り戻す優しさ溢れる物語であると同時に
生きる上で誰しも何かしら背負っている罪の存在、「生きる」という事の楽しさや辛さ
そして残酷さを詰め込み、人間としての厳しさを突きつけてくる刃を偲ばせた映画に思えた。

イーストウッド監督が投げかけてきた数々の問題提示と、作中では答えが出ない謎。
(フランキーと娘の確執の内容、ラストシーンもろもろ)
投げかけたまま、この映画はどこか「ミスティックリバー」のラストを感じさせるような雰囲気で
終わっていくわけですが、その投げかけはけして不愉快なものじゃなかった。
観客一人一人に、それぞれの答えを求めたまま閉じるラストシーン。

私は作った監督本人の中にあるだろう答えすら、それは正解ではないんじゃないかなとすら思う。
それほど見る人の数だけ、感じるものが違う作品かな。
この映画は是非、本当に見ていただきたい。
あぁぁ久しぶりにいっぱいいっぱいの状態で見たから、考えが上手くまとまらないや。

あとちょっと違う視点からだと、エンドロールが短かったよね?
ハリウッド大作というとお金と手間がかかりまくってエンドロールがすっごい長いのが当たり前ですが
この映画は低予算で作ったんじゃないかなぁなんてチラリと思いました。
低予算でも、無駄に金かかったくだらない映画なんかと比べるのが失礼なぐらい素晴らしい
作品を残すイーストウッドの監督としての腕前も凄いなぁ。
あと今回音楽もイーストウッドが手がけているそうですが、凄い良かった。
作風とピッタリでしたよね。

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