2019年08月08日

「救世主監督 片野坂知宏」はJ2魔境賛歌なのだ 

「救世主監督 片野坂知宏」 ひぐらしひなつ著

J3に降格したトリニータに、恩返しをしたいと就任した片野坂知宏監督。
J3優勝、J2昇格。
そして2年後にはJ1昇格。
J1でも旋風を巻き起こしている。

そんな、トリニータを救ってくれた、まさに救世主のカタさんとカタさんのサッカー、そしてトリニータというチーム、クラブを描いたトリニータ愛あふれる作品。

なーんて思っちゃ大間違い。
いや、確信しましたね。

これは、カタさんとトリニータを描くことを通して、J2ってなんて面白く、深みにはまるリーグなんだろうってことを知らしめてくれるまさにJ2魔境の賛歌なのだ。

トリニータの成長は、そこに立ちはだかる数々のひとくせふたくせあるJ2チームとの対戦があったからこそ。
そして、そのくせの強いJ2チームを率いるとことんくせの強すぎる監督たち。

そんなJ2リーグの対戦を描くひぐらしさんの筆致の、なんと愛情にあふれていること。
この人、しんけんJ2好きやな、もうJ2好きがだだもれやんけ。
と、微笑ましささえ感じるくらいだ。

J2ってすごいんだぜ。
まだ名前の知られていない未発掘成長過程の伸び率無限大の選手がごろごろいるんだぜ。
よし、そんな奴らを集めて、J1に殴り込みかけようぜ。
カタさんはそう思ったに違いない。

J1昇格を果たしたトリニータが補強した面々は、まさにJ2オールスターズと呼ぶにふさわしい昨季J2でポテンシャルを見せつけてくれた選手たちだ。

だから本著は、J1昇格の場面では終わらない。
J2オールスターズが、いかにJ1に旋風を巻き起こしたかまできちんと描く。

ほんと、思ったんだよね。
読み進めれば進めるほどに、トリニータというより昨年のJ2リーグの魅力がじわっと広がっていくなって。

そして、ひぐらしさんがこの本にふさわしいと選んだのが、超エンタメ文体。
カタノサッカーを始め、「言い得て妙」な言葉がたくさん出てくる。
駆け上がって行くトリニータの勢いを、軽くスピード感のある文章で描く。

片野坂監督のJ1チャレンジは、本著ではまさ序章の部分で終わっている。
きっとJ1で旋風を起こしたトリニータの姿も、続編として描いてくれるのではないかと期待している。
書いてくれるよねえ。

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