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 これまでOver the Wallの活動を通して様々な経験をしてきましたが、今日はその中でもとびっきりのドラマが生まれました。

 昨日雨に降られたこともあり、朝からハイペースで絵を描いていきました。30メートルの壁は想像以上に大きく、まったく休むことなくとにかく描き続けました。17時までというタイムリミットは刑務所という場所がら絶対に守る必要があり、まさに一分一秒を惜しんで壁画の端から端まで駆けずりまわって描いていました。15時をすぎたところでお母さんたちが集会所に集まり、僕たちの活動を紹介する時間が設けられました。時間がない僕は仲間に説明を任せて、その間も壁画と向き合っていました。最後の挨拶だけということで、集会所に行き、挨拶とお礼をのべ、すぐにまた壁画制作を始めました。しかしドラマはここから始まりました。。
 僕の挨拶の後、お母さんたちに壁画を描いた感想を聞いたそうです。すると少しずつ、お母さんたちが話をしてくれました。


「壁画を描いてもらえるだけでも嬉しいのに、私たちも参加できるなんて思っても見なかった!」

「殺風景だった場所に、心が華やかになる壁画を描いてくれてとても感動している」

 
 そんな中、一人の女性が何かを決意したかのように話しだしました。

「私は花を選んでといわれた時、花を選ぶことが出来ませんでした。その時の私はとても落ち込んでいて、とてもそんな気分にはなれなかったからです。だから私は壁画を描いていません。ですが毎日毎日美しくなっていく壁画を見て、少しずつ気分が晴れていきました。このような壁画を描いてもらったお礼に、そして私の気持ちを晴れさせてくれたお礼に歌を歌わせてください」

といって歌を歌いだしました。
涙ながらに歌う彼女の姿を見て、みな涙をこらえることが出来ませんでした。いつのまにか会場みんなが泣いていて、感謝と感動とやはり刑務所という隔離された場所にいる寂しさがこみ上げてきたのか、みな声を上げて泣いていました。
 
 残念ながら僕はその場面を見ていません。後にいろんな人からその場面の感動を伝え聞くのですが、その時僕はひたすらに絵を描いていました。絵の具を取りにいくにも走り、とにかく早く早く早く描ききることだけを考えて筆を動かしました。しかし神様は僕に試練を与えます。なんと昨日とまったく同じように、大雨が降ってきたのです。。。
 しかし今日だけはそれで辞めるわけにはいきません。すぐにビニールシートを持ってきて、皆が雨の中体を張って画面を守ろうとしてくれました。ミヌクは画面に垂れようとする水滴を一滴残らず拭き取ってくれ、慶輔やみきさんや福井君は脚立を利用して即席の屋根を作ってくれました。その中で僕は最後の作業を進めました。
 正直に言うと、今回の絵はこれまでにないほどいろんな人の手が入っていたので、最後は出来るだけ自分で手を入れて、自分の手で仕上げたいと考えていました。しかしこの雨でそんな青写真は吹っ飛び、とにかく絵を終わらせることだけしか考えることが出来ませんでした。みんなに画面を守ってもらいながら最後の一筆を入れ、5時ギリギリに刑務所を出た時、何ともいえない達成感が生まれました。

 この壁画は特別なものになりました。それぞれが与えられた画面をギリギリまで描ききったところで終了になったのです。一緒に描かせてくれたと泣いていたお母さんたち、毎日壁画を一緒に描いてくれた仲間たち、そして僕が絵を仕上げるために必死で画面を守ってくれたみんなの想いが、全てこの壁画に詰め込まれているんだと思いました。これ以上描くところはないし、今完全にこの壁画は完成したんだと思えました。

 壁画を完成させることが出来た安堵感と、心から満足できた自分に大きな喜びを感じると共に、一緒に描いてくれた仲間に、刑務所のスタッフに、日本で支えてくれた人たちに、大きな感謝を伝えたいです。最高の壁画を残すことが出来ました、ありがとうございました!
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撮影:Kensuke Ono