いまからちょうど2年前にロンドンから帰ってきて、無一文のまま個展を開いた。友達の家に居候しながら絵を売り、何とか食いつなぎながらの捨て身の展覧会。内容は散々だったけど、運よくNHKの人から仕事をもらえることになり、東京で生活することになった。
最初に佐賀ビルに引っ越してきた日、監獄のようなコンクリートの部屋に段ボールを敷き、その上に寝袋で寝た。風呂もキッチンもなにもない部屋で、ただ一人今にも崩れそうなビルでぽつん眠る。すべての社会から逃れてきたような不安と、圧倒的な開放感で、不安とも興奮ともとれるドキドキのなか眠った。
・・・あれから2年。今はどうにか仕事をしているし、キッチンも風呂もある家に住んでる。いろんなツテもできたし、絵だけで生活が成り立つようになった。もちろんまだ安定はしないし、先もどうなるかわからないけど、あの時から比べればずいぶんましになった。
もしも実家が東京だったら、こんな苦労をすることもなかったかもしれない。もしももっと違うスタイルの作家だったら、ここまで自分の生活を犠牲にする必要もなかったかもしれない。。。だけど佐賀の田舎から一人で飛び出してきたからこそ、型にはまらないスタイルだからこそ、逆境を楽しめ、また力に変えれたんだと思う。
何も持っていない自分に唯一できたことは、行動すること。才能がなくても、環境に恵まれなくても、健康な体と勇気があれば、運命は切り開ける。今にも壊れそうな佐賀ビルを見て、改めてよくぞここに一年以上住んだものだと感心しました(笑)。
