寝たり起きたり

ぼーっと生きてます。

おはなしパチパチ

寝て、起きて。できるだけ、やれるだけ。でも呑気にいきたい。

尻尾は3本・13――三毛猫のぬいぐるみ3

私は台所に戻り、マグカップに氷を入れ、やかんに入った出来たての熱い麦茶を注いだ。あっという間に氷は溶け、後からまた氷を3つばかり放り込み、茶の間に戻る。
軒下の風鈴が揺れた。
今日もまた猛暑とか酷暑といった一日になるのだろう。

にゃあ。

庭にいつもの三毛猫が姿を現し、それに気づいたらしい奴も茶の間に戻って来た。
縁側に出て、おはよう、と声をかけると三毛猫は側に寄って来てまた鳴いた。
好物のプリンの催促である。
「いつもあるって訳じゃないのに」
そう呟いて冷蔵庫のプリンを取りに行く。
猫と猫モドキは何故か食べ物――特にこのプリン――の有無についてのカンが非常に鋭い。
蓋を開けて目の前に置いてやると、2匹共猛烈な勢いで食べ始める。
……ゼイタクモノ。
私は麦茶を前に溜息をついた。
……人間様が麦茶なのに猫とぬいぐるみがプリンてどういうこと。
いつものことだが納得いかないけど。
……でも、2匹に家中荒らされるよりはプリンの方がまだマシだ。
そう、お腹の中で呟いた。








(終わり)








続きを読む

尻尾は3本・12――三毛猫のぬいぐるみ3

ぼんやり眺めていると、昨日と少々様子が違うような気がして、首をかしげた。
……あれ?
尻尾は、1本。
昨日は2本に割れていたのに、何故か戻っている。
いや、これが普通で当たり前なのだが。
……何で減った?
首をかしげていると、飲み物の催促があったので、空になった器に水を注いでやる。

みー。

「牛乳はありません。今日はお水で我慢して下さい」

みー。

奴はしぶしぶ水を飲み始めた。
牛乳といっても、水で薄めたものしかあげたことはないのだが、味がある飲み物には違いなく、奴は牛乳を欲しがる。

みー。

またもや奴は物欲しそうに私を見上げる。
今度は何だ?……あれか。
冷蔵庫の中のプリン。
或る有名店の美味しいプリン。
奴は私以上に家にある食べ物について熟知している。
牛乳のことを知らなかったのは、昨夜遅くに私がカフェオレを作って飲んだ時に奴が眠っていたというだけだ。
「おやつは後にしなさい」
どうせ、もう少ししたら凶暴な猫が遊びに来て、プリンを食べるのである。今食べたらプリンが余計になくなってしまう。
奴はくるりと回れ右をして茶の間を出て行った。本意ではないだろうが一応納得したらしい。


尻尾は3本・11――三毛猫のぬいぐるみ3

すれ違う人や犬や猫が振り返ったりギョッとした顔をしたりするのを尻目に、奴は堂々とモーゼの海を歩いて行く。
慌ててついて行くと、奴は振り返って私を見上げ、尻尾を3本ともピンと立ててみせた。

明日は、晴れ。

私はつい笑った。
ぬいぐるみのくせに。
いっぱしの猫を気取って。
猫の天気予報が当たるかどうかは定かではないし、大体奴はぬいぐるみだ。
でも。
尻尾1本の予報より、3本の予報の方が何だか当たるような気がする。
……いいんだ、これで。
何故か、そう思えた。



みー!

いつもの時間に猫パンチで叩き起こされ、更にその直後、目覚まし時計が暴れ出した。
……眠い。

みーみー!

目覚ましを止め、あと1時間寝かせて、と言ったら今度は引っかかれた。
……うう。
のろのろと起き上がって朝の支度にとりかかる。

みーみーみー!

腹が減った何か喰わせろ!
ごはんーごはんーごはんー!
こんな感じの鳴き声は私が奴の前に餌を出すまで続く。
……五月蝿い。
昨夜の残り御飯に茹でた野菜とキャットフードを混ぜたものを定位置に置くと、勢いよく食べ始めた。
……全く。
もう少しゆっくり食べなさいよ、と言っても聞く訳がない。


尻尾は3本・10――三毛猫のぬいぐるみ3

捨てたら帰って来るっていうのは奴も同じで、面倒くさいよね、と言って2人して溜息をついたのを思い出した。
勿論、万年筆も奴もその場にいなかったから言えた訳だが。
「でも、そもそもぬいぐるみが猫又になるのがおかしいんですよ。猫が猫又になるっていうなら分かりますよ。ぬいぐるみのコイツが何で猫又になるのかが分かんないんですよねえ」
「実は本物の猫なんじゃないの?」
「中には綿とかスポンジみたいなものしか入ってないですよ」
「……見たの?」
「拾った時に少し中身が出ていたから縫ったんですよ」
「食べ物の干からびたやつとか入ってなかった?」
「ないですよ。何で食べられるのか謎ですけど」
と言うか、そもそも動くこと自体おかしいのだが。
最早、我々の感覚が麻痺しているのかも知れない。
「この仔、喋ってくれるといいのにね」
ふみさんが奴の方を見て呟いた。
みーみー鳴くだけでも五月蝿いのに、これで人間の言葉なんか喋ったらやってられない、と私は腹の中で考えた。



夢を見た。
奴の尻尾は更に割れて3つになっていた。
更に妖怪化が進んだと嘆く私に対して、奴は何だか楽しそうだった。


尻尾は3本・9――三毛猫のぬいぐるみ3

「そもそも、どうしてこの仔はあんたの家にいるの? 子供の頃からいる付喪神?」
「付喪神かどうかは知りませんが、来たのはここ何年かで――ゴミ捨て場にあったのを拾って来たんですよ、確か。それが居ついてるんですが」
「その前は何処にいたのかねえ」
「さあ……」
近所のゴミ捨て場だから、おそらくこの近辺の何処かの家にいたのだと思うのだが。
「篠崎さん家の省ちゃんのじゃないよねえ」
「省ちゃんはもう大学生ですし、小さい頃もぬいぐるみ好きじゃなかったと思いますよ」
それに、あの子のところにいるのは万年筆ですから、と続ける。
篠崎さんのお宅のおじいちゃんは最近施設で息を引き取った。
筆まめなおじいちゃんで、認知症になってからも頻繁に家族に手紙を書いている謎の人だった。
孫の省ちゃんはおじいちゃん愛用の万年筆を形見分けで貰ったのだが。
「あれも変な万年筆よねえ。省ちゃんにはよく喋るし手に持ったら勝手に文章書くんだから」
「万年筆が付喪神だったからって、奴まで篠崎さんのお宅にいたとは限らないでしょう」
「それはそうだけど」
そういえば。
省ちゃん、万年筆が鬱陶しいから捨てたらまた戻って来たって言ってたっけ。


月別アーカイブ
記事検索
QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ