永岡瑞季の毎日映画館!

映画館はびっくり箱です。 日常生活でいらいらしたことがあっても、 映画館に入ってチケットを買って、席について、もらったチラシを見ているうちに真っ暗になって予告編が始まる。 そうしたら、もう何もかも忘れてしまいます。映画館にはそんな魔力があります。 映画をこよなく愛する永岡瑞季の映画レビューを書いていきます☆DVDやスカパー!で観たものも入ったり、たまにはもう一つの趣味のドラマのことも書くかもしれません! よろしくお願いします。

2008年11月

「BOY A」4

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BOY A






監督:ジョン・クローリー
出演:アンドリュー・ガーフィールド ピーター・ミュラン ケイティ・リオンズ ショーン・エヴァンス

配給:シネカノン(2007/イギリス/107分)

物語はどこかの施設から始まる。 
初老の男性と、20代の若者。 
やがて初老の男性の口から「保釈」という言葉が出る。 
そして、若者は新しい名前をつけることになる。 
本名で社会に出るのは危険すぎるほど 
彼は「尋常ではない」罪を犯したことが暗示される。 

何年かぶりに街に出たジャック(そう、彼が自分で 
選んだ新しい名前だ)の目には何もかも新鮮に映る。 
彼の無垢で純粋な笑顔が印象深い。 

運送の仕事を始めたジャック。 
人一倍友達思いの彼には親友ができ、 
そして恋人もできる。 
しかし、夜見る夢は彼をさいなむのだった。 

回想シーンから、わたしたちは 
「BOY B」フィリップの存在を知るようになる。 
フィリップは、無二の親友BOY Aでもいやすことのできない 
悲しみをたたえている。 
そして、彼らが「悪魔」になる日がやってきて…。 

殺人を正当化するつもりはない。 
でも、人間は身体だけの生き物ではない。 
わたしたちには「心」がある。 
そして、BOY B フィリップは 
「心を殺された」のだと思う。 
この映画を観ると、「心を殺す」ことは 
人を身体的に殺すことと同じくらい 
残酷になりうるのだと思わざるを得なくなってしまう。 

そしてジャックはフィリップの悲しみを 
自分自身の悲しみにしてしまう。 
友達の苦しみを自分から引き離して考えることが 
できない、そんな純潔なやさしさが 
このジャックにはある。 

ソーシャルワーカーのテリーは 
ジャックが保釈される時に 
「ESCAPE」というロゴが入ったスニーカーをプレゼントする。 
過去を忘れて生きるのだというメッセージを込めて 
贈られたはずのスニーカーだったのだろうが、 
恋人を本当に愛し始め、 
彼女に自分の秘密を話せないことで 
彼はどこへも「ESCAPE」できなくなってしまう。 

主役のアンドリュー・ガーフィールドと 
彼を支えるソーシャルワーカー役の 
ピーター・ミュランの演技が素晴らしかった。 
映画館を出てからのほうが、 
重くのしかかるものがあるような、 
にもかかわらず澄み切った情景が心に残る、 
そんな映画だった。

http://www.boy-a.jp/

渋谷・シネアミューズウェスト他で絶賛上映中!

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「フラガール」5

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フラガール2












監督・脚本 李相日
出演 松雪泰子 豊川悦司 蒼井優 山崎静代(南海キャンディーズ・しずちゃん)  池津祥子  徳永えり 三宅弘城  寺島進  志賀勝 高橋克実 岸部一徳 富司純子
企画・制作・配給:シネカノン (2006年/日本/120分/カラー/SRD)


昭和40年、福島いわき市の炭鉱の町。
エネルギーが石炭から石油にとって代わられ、
炭鉱は次々と閉鎖に追い込まれていた。 
雇用が悪化する中、炭鉱会社は町おこしのため
ハワイアン・センターの設立を決める。

炭鉱夫たちの根強い反対の中、 
東京・SKDでダンサーをしていた
平山まどか(松雪泰子)が呼ばれ、
フラダンサーとして炭鉱の娘たちに 
募集がかかる。
親友に誘われ、しぶしぶ参加していた
紀美子(蒼井優)だったが、
一人練習場で踊るまどかの姿を見て 
プロダンサーを目指すことを決意。
一方、気位が高く、
田舎の娘たちにダンスを教えることを 
拒絶していたまどかだったが、
少女たちの熱意に、少しずつ動かされていく。
そして、素人だった少女たちにも
徐々にプロ意識が芽生えてくるのだった。 
少女たちの笑顔は、やがて 
たくなだった炭鉱の男たちをも変えていく

フラダンスの振付には、
一つ一つ意味があるのだそうです。 
その気持ちをこめて踊るシーンが 
印象的でした。
東京から来たダンサーのさっそうとした姿と
炭鉱の娘たちの田舎くささの対比が 
初めはくっきりと描かれているのですが、 
映画の終盤で、
まどかが踊っていたのと同じダンスを
紀美子が踊りきるシーンは圧巻。 
松雪泰子もいいですが、 
蒼井優の存在感はすごいですね。

何度観ても泣ける映画です。 


http://www.hula-girl.jp/top.html

フラガールスタンダード・エディション [DVD]フラガールスタンダード・エディション [DVD]
出演:松雪泰子
販売元:ハピネット・ピクチャーズ
発売日:2007-03-16
おすすめ度:4.5
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「パコと魔法の絵本」4

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パコ






監督 中島哲也 
出演 役所広司 アヤカ・ウィルソン 阿部サダヲ 妻扶木聡 國村隼 上川隆也 劇団ひとり 
土屋アンナ
配給:東宝 (2008年/日本/105分/カラー)

偏屈ジジイ「大貫」と、記憶を1日しかとどめておけない「パコ」の 
なんだか素敵なファンタジー。 

監督さんが「嫌われ松子の一生」の人だったのと、 
原作がもともと後藤ひろひと作の舞台で、 
ちらっと観に行こうかと思っていたものだったので 
気になってました 
でも期待通りの(いや、以上の?)出来で満足〜。 

中島哲也監督は「松子」の時と同じく 
POPでサイケな感じの色調をつかった映像を駆使していて 
ごきげんな感じ。 
ミュージカルチックな速い展開もよし。 
登場人物は仕事ばかりやってきた頑固爺だったり 
オカマだったり薬中だったりヤクザだったり 
ステレオタイプなんだけどそれを逆手にとって 
まさにおとなのためのメルヘンになってました。 

パコ役のアヤカ・ウィルソンちゃんは文句なくかわいい! 
それぞれのキャラクターはメイクが作りこんであって 
しばらく誰が誰かわからないほどでした! 
阿部サダヲ最高。「ヤゴ」と「ナースコール」がつぼでした。 
でも上川隆也とか妻夫木聡とか、 
わたしの中では「二枚目俳優」(?)な人たちが 
かなりはっちゃけてたのもよかったなあ。 
役所広司もうまい。 

休日だけあっておこちゃまばっかりの映画館で観ましたが、 
みんなすごく集中して観てて! 
そんなに単純な話じゃないのに、 
すごくちっちゃな子も夢中で観ていました。 
でも 
「自分が弱い人間だと気づいてほっとした」 
とか 
「涙を止める方法はいっぱい泣くこと」 
とか 
大人でも、いや大人だからこそどきっとするようなセリフもあり 
大人が見るべき映画だと思いました! 
土屋アンナのパンクな看護師のエピソードが泣けるのは 
やはり大人かなと思うし。 

CGもきれいだし、ぜひ大画面で観てほしいです! 


「ゲロゲ〜ロ。ゲロゲ〜ロ。 
ガマの王子はわがまま王子。 
ガマの王子は嫌われ王子。 
ゲロゲ〜ロ。ゲロゲ〜ロ。」

http://www.paco-magic.com/index.html

パコと魔法の絵本 通常版 [DVD]パコと魔法の絵本 通常版 [DVD]
出演:役所広司
販売元:アミューズソフトエンタテインメント
発売日:2009-03-06
おすすめ度:4.0
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「その日のまえに」5

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その日のまえに





監督 大林宣彦 
出演 永作博美、南原清隆、筧利夫、宝生舞、柴田理恵、風間杜夫
配給:角川映画(2008/日本/140分/カラー)

重松清原作の7編の短編群を
大林宣彦監督が1編の長編に紡ぎあげています。

死を目前にしたとし子(永作博美)と
その夫健大(南原清隆)の物語を縦糸にしながら、
死に直面した様々な人々の物語が 横糸のように絡み合います。
そして、現在と過去が交錯する構成は
まさに大林監督の真骨頂だと思いました。

なぜか、始まって5分くらいで すでに涙腺がゆるんでいました。
まだそんなに悲しくないシーンなのに、
一つ一つのセリフが心にしみこんできてしまって。
「かわいそう」という陳腐な涙じゃないんです。
映画の初めのほうで、 病院からおそらく最後になるであろう
外出を許されたとし子は 健大とともに、結婚してから2年間住んでいた
浜風という街を訪れます。
外出から帰ったら新しい療法を試してみようと いうことになっているので、
「思い出をたどるため」ではなく「これから始める」 という気持ちで。
でもやはりどこかで思い出をたどってしまうのですね。
まだ映画の初めで、登場人物たちに それほど思い入れがないはずなのに、
不思議と観ている者にまで その思い出を共有させてしまう。
すごいと思いました。

健大はイラストレーターなのですが、
とし子の病気が発覚する直前に 鉛筆をころころころがしてしまい
足で拾おうとするんですね。
「俺が鉛筆を転がしたから、
足で拾おうとしたから罰が当たったんだ」
というセリフぐっときました。
その鉛筆は映画を通じて何度も登場します。

チェロの弾き語りをしている 「くらむぼん」。
宮沢賢治の「永訣の朝」という有名な詩の
「あめゆじゅとてちてけんじゃ」 というフレーズが繰り返し歌われます。
賢治の妹は奇しくもとし子という名前です。
二人の「とし子」の死が交錯していくのも
まさに大林監督の宇宙ですね。

途中からは涙が止まらなくなってしまいました。

大ラスはすこし長いかなと思いましたが、
あれがあったから大林ワールドから現実に
戻れたかもしれません。
それが計算ずくだったとしたら、
大林監督ますますすごいと思いました。

原作を読んでからもう一度観にいきたくなりました。



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「誰も知らない」5

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「誰も知らない」 
誰も知らない









監督 是枝 裕和 出演 柳楽優弥 韓英恵 YOU 北浦愛 木村飛影 清水萌々子  

大人になりきれないまま親になってしまった母に育てられ、 人よりもほんの少し早く大人にならなければならなかった12歳の少年。 

子供は、演技します。父親の前で、母親の前で、演技をします。 それは、演技をしたら甘やかしてくれるとわかっているからです。 泣きながら「ゴメンナサイ」を言ったら許してくれるとわかっているからです。 にっこり笑って「クダサイ」を言えばくれることがわかっているからです。 子供は、甘えることを本能のように身につけていくのです。 

しかし、「誰も知らない」の明は、演技をしません。演技の仕方を知りません。 万引きの虚偽を受けてコンビニの店長に責められても、 母親に「あんたのお父さんが一番勝手よ」と言い放たれても、 淡々と受け答えをするだけです。お金がなくなって、 妹の父親かもしれない男たちに金をもらいにいくときも、 決して「クダサイ」をしません。ただ、表情一つ変えず 「あのさ、お金ないんだけど」 というだけです。 

そして、是枝監督は明役の柳楽優弥に決して演技をさせません。 だからこそ、カメラの前に立つ柳楽優弥は、 明になりえたのだと思います。 さらに、監督は観客に「感動してください」とは言いません。 「泣いてください」とも言いません。 そして何の説明もしません。 訴えようという気持ちの真逆にいるのです。 それでこそ、観客は子供たちの心情にふれることができるのです。 

子供たちの生活は、非日常です。 しかし、ちゃんとクリスマスが来て、お正月が来て、さくらが咲いて、 夕立が降って、ミンミンゼミが鳴きます。 季節は巡っていきます。 監督のカメラの前では、子供たちの生活は日常です。 

明の心情は、時にはぎゅっと握り締めるこぶしだったり、 震える指だったり、そんなものからしか伝わりません。 明は決して何も語りません。 そして、何も語らないモノがどんどん観客の胸の中に積もっていき、 限界値に達したまさにその瞬間、いきなり何かがつきつけられます。 

そんな物語でした。 あえてあらすじは書きません。 ぜひ観てください。 

http://www.kore-eda.com/daremoshiranai/

誰も知らない [DVD]誰も知らない [DVD]
出演:柳楽優弥
販売元:バンダイビジュアル
発売日:2005-03-11
おすすめ度:4.5
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