永岡瑞季の毎日映画館!

映画館はびっくり箱です。 日常生活でいらいらしたことがあっても、 映画館に入ってチケットを買って、席について、もらったチラシを見ているうちに真っ暗になって予告編が始まる。 そうしたら、もう何もかも忘れてしまいます。映画館にはそんな魔力があります。 映画をこよなく愛する永岡瑞季の映画レビューを書いていきます☆DVDやスカパー!で観たものも入ったり、たまにはもう一つの趣味のドラマのことも書くかもしれません! よろしくお願いします。

優しい気持ちにしてくれる映画

「ディア・ドクター」



原作・脚本・監督 西川美和
出演 笑福亭鶴瓶 瑛太 余貴美子 井川遥 香川照之 八千草薫
配給 エンジンフィルム+アトミックエース(2009/日本/127分/カラー)

医者がいなかった村へ呼ばれてやってきた伊野(笑福亭鶴瓶)は
村のみんなに感謝され、なくてはならない存在だった。
しかしそんな彼が急に失踪し・・・
一つの嘘、そしてずっといえずにいたもう一つの嘘。
その嘘は罪ですか・・・?

伊野と看護士大竹(余貴美子)は毎日診療所にやってくる
患者の治療に加え往診にも行くという忙しい日々を送っていた。
そんな診療所にやってきた研修医・相馬(瑛太)は
次第にそんな伊野に共感を覚え始める。
そんなある日、未亡人の鳥飼かづ子(八千草薫)が
畑で貧血を起こす。どうやら胃を悪くしているらしい。
その夜、伊野はかづ子の家を訪ねる。

かづ子の娘は東京で医者をしており、忙しく
彼女は一人暮らしだ。
そして、夫を亡くした時、娘に負担をかけたことを負い目に思っている。
そんな彼女は娘に病気のことを話さないようにと
伊野に頼む。
「・・・ひきうけた」
「でも、僕には、おなか、見せてもらえませんかね」
そして出た検査の結果から、伊野はひとつの嘘を
つきとおすことを決心する。
しかし、その嘘から、もうひとつの大きな嘘が
発覚することとなり…

偽医者だった伊野。
そんなことは知らず、娘の勧めで入院したかづ子に
刑事は尋ねる。
「彼はあなたに、なにかしてくれたんですか」
何も知らないかづ子がにっこりほほえんで
「いいえ、なあんにも」というシーンが
わたしにとっては非常に印象的でした。
そして、失踪前に、伊野はかづ子に会いに行きます。
田んぼの仕事をしているかづ子に大きく手を振り、
白衣を投げ捨てるシーンが非常にきれいです。 
棚田の緑が鮮やかで、心に残ります。

伊野の理解者である製薬会社の斎門(香川照之)の
セリフがすごく好きでした。
刑事が言います。
「なぜ伊野は医者になり済まし続けたんですかね?
愛、ですか?」
その問いに答えることなく斎門は椅子から転げ落ちます。
思わず手を貸す刑事。
「今助けてくれたのは、愛、ですか、刑事さん。
伊野がやっていたのも、そんな気持ちからだと思いますよ」
(セリフは正確ではありません、ごめんなさい)

伊野が使っていたペンライトは医者だった父のものでした。
失踪先で、伊野はすでに認知症となり
彼のことがわからなくなっている父に電話をします。
「俺や。治や」
「そう・・・ですかあ」
「父さんのペンライト、なくしてしもた。ごめんな」
「そう・・・ですかあ」
そのシーンも心に残りました。

前作「ゆれる」、前々作「蛇イチゴ」では
家族の葛藤を描いた西川美和でしたが、
今回の作品は全編に温かいまなざしが満ちており
希望が感じられました。
八千草薫さんの笑顔が心に残る、美しい物語です。

(9月5日、ヒューマントラストシネマ渋谷にて鑑賞)

http://deardoctor.jp/ 

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「空気人形」5



監督・脚本・編集 是枝裕和
原作 業田良家「ゴーダ哲学堂 空気人形」
出演:ぺ・ドゥナ ARATA 板尾創路 高橋昌也 余貴美子 岩松了 丸山智己 奈良木未羽 柄本佑 星野真里 寺島進 オダギリジョー 富司純子
配給:アスミック・エース(2009/日本/カラー)

「ワタシハ、ココロヲモッテシマイマシタ。」
本来持ってはいけない「心」を持ってしまった
空気人形をめぐる人々をとおして
人と人とのつながりを描く是枝ファンタジー。

空気人形「のぞみ」(ペ・ドゥナ)は持ち主秀雄(板尾創路)の
夜のオモチャ、「性的処理のための代用品」。
そんな空気人形がある日「心」を持ちはじめ…。

秀雄がいない間に彼女は様々な人と出会う。
そして、レンタルビデオ屋でバイトをする純一(ARATA)を
一目見たとたん自分と同じ何かを持っていると感じ、
恋に落ちる。
空気人形が出会う人々はみな、心の中に
どこか空虚感を感じている人ばかりだ。
昔代用教員をしていた老人(高橋昌也)、
新聞に載っている犯罪をすべて自分のせいだと
思ってしまう未亡人(富司純子)、
家ではひとりさびしく卵かけご飯を食べる
レンタルビデオ店長(岩松了)、
過食症に陥っている一人暮らしのOL(星野真里)、
年をとっていく自分を認められず、
自分の代わりになる人はいないのだと
自分に言い聞かせる受付嬢(余貴美子)、
マニアックなビデオを借りてばかりの浪人中の受験生(柄本佑)、
妻に去られた夫(丸山智己)とその娘(奈良木未羽)。
そして、純一は癒えぬ傷をかかえて、生きることすら疑問を感じている。

「ワタシミタイナヒト、ケッコウオオイミタイ・・・」

 そんなある日、純一と映画の話をしながらビデオを
整理していた空気人形は、釘に腕を引っ掛けてしまい、
中の空気が抜けてしまう。
必死で栓を探し、息で空気を満たしてやる純一。

空気人形が家に帰ると、「ハッピーバースデイ」の歌を歌っている
秀雄がいた。そう、彼は新しい「のぞみ」を買ってきたのだ。
やっぱり自分は誰かの代用品。
その事実を眼前に押し付けられた空気人形は
自分が作られた人形工場を訪ねる。

彼女を作った人形師(オダギリジョー)は優しく
「おかえり」と彼女を迎え入れ、こう問う。
「君が見た世界は・・・きれいなものはあった?」
「うん」「生んでくれてありがとう」
そう言って彼女は純一を訪ねてこういう。
「代用品でもいい。あなたが望むことなんでもしてあげる」
そして純一は彼女にしか頼めないことを頼むのだが…。

作中で、老人が空気人形に教える詩の中のことばが
非常に印象的でした。
「生命は その中に欠如を抱き 
それを他者から満たしてもらうのだ
世界は多分 他者の総和」

人は誰もが代わりなどいない存在で
そして人は他者を必要としている。
そんなメッセージが根底に流れている
すばらしい作品でした。
空気人形は空気を満たしてもらうことで
生きていける。
純一が空気人形のおなかの栓から空気を満たすシーンは
原作にもあるのですが、
是枝監督の目には「非常にエロティック」であり
なおかつ「非常に映画的」に映ったのだそうです。
だから、このシーンはメタファーとしての
セックスシーンなのだそうです。
そして、そのシーンは非常に印象的です。

そして、是枝監督は「人と人とのつながり」を決して
きれいごとだけで描いてはいない。
純一は、哀しい選択をします。
純一を救えなかった空気人形がとった道も
哀しいものです。
しかし、最後に拒食症の女性が見た外の風景は
空気人形が初めに見た世界と同じくらい
「キレイ・・・」なものでした。

非常に多くの伏線が張られていて
密度が濃い映画でしたが、ゆっくりと、ゆっくりと
空気人形が赤ん坊の心から大人の女へと成長していく、
そんな物語でもありました。

もう一度最初から観てじっくり考えたい作品です。

(2009年10月11日シネマライズにて鑑賞)

http://www.kuuki-ningyo.com/index.html
 

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「花とアリス」4

花とアリス1花とアリス2花とアリス3











監督:岩井俊二
出演:鈴木杏 蒼井優、郭智博、相田翔子、阿部寛
(配給;東宝 2004/日本/135分/カラー)

駅で見かけた少年・中村雅人(郭智博)に
恋をしてしまった花(鈴木杏)。
その後花は彼と同じ高校に入学し、同じ部活に入る。
ある日中村は下校途中頭を強く打つが
懸命に介抱する花の名前どころか
顔も覚えていない。
さすがに腹を立てた花はこう嘘を付く。
「それじゃあ先輩わたしのこと好きだって
言ったことも覚えてないんですか?」
その言葉を真に受けた中村は
部分的に記憶喪失になったと思いこみ
花と付き合いだすが、嘘が嘘を呼び、
片思い時代に隠し撮りをした写真を
見つけられてしまった時に
つい「これは先輩がふった元カノが
嫌がらせに送ってきたんです!」
と言ってしまう。花はその元カノ役を
親友のアリス(蒼井優)に頼むが、
だんだんこの3人の関係が微妙になってきて…。

鈴木杏と蒼井優という
全く違った個性を持った女優2人の
魅力を十二分に出しているところが
岩井監督さすがだと思いました。
2人の間にいる郭智博は
しゃべり方もとぼけていて天然ボケ系、
どうしてこの俳優さんを使ったのかしら?とも思いましたが
恋人のことだけ忘れてしまうなんていうことを
まじめに信じるような人なので
狙ったかなと思います。
初めは特に魅力ないなと思いましたが
だんだん味が出てきて
最後のほうはいいなと思いました。
彼と花の入っている部活は
落語研究会なのですが、
彼の落語はあまりにも無愛想で笑えます。

アリスというあだ名は
名字が有栖川だというところからきています。
彼女の両親は離婚していて、
母親(相田翔子)は次から次へと
新しい男を作っては振られるの繰り返し。
アリスの少しさみしげな
表情は蒼井優にぴったりです。
お父さんに逢う日があるのですが、
アリスにはお父さんとも
たくさん思い出があります。
海に行ったこと、そこでトランプをしたら
とばされてしまったこと、
昔はところてんが食べられなかったこと・・・。
そしてなぜかお父さんは知らない間に
中国語が話せるようになっていました。
「愛しています」「ウォーアイニー」を
教えてもらうアリス。
そんなお父さんとの思い出が、
中村との「嘘の思い出作り」と
重なるところがすばらしかったです。

アリスと花の共通の趣味はバレエ。
2人のレッスンを撮影しにくる
写真部の友人が何度も花にいいます。
「アリスと喧嘩しちゃだめだよ。」
その台詞がすごく心に残ります。
その友人役の女優さんは
大した特徴もない平凡な感じなのですが、
なぜだか心に残りました。
「はなやしき」のエピソードもよかったです。

しかし、蒼井優のバレエはすごいですね。
小さいころからやっていたらしいので他の映画にも
よく踊るシーンが出てきますが、
今回も素晴らしかったです。

女の子の友情もいいじゃん!
そう思わされた映画でした。

(NHKBS2にて鑑賞)

花とアリス 特別版 [DVD]花とアリス 特別版 [DVD]
出演:鈴木杏
販売元:アミューズソフトエンタテインメント
発売日:2004-10-08
おすすめ度:4.5
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「赤い文化住宅の初子」5

初子






監督・脚本 タナダユキ
原作 松田洋子
出演 東亜優 塩谷瞬 佐野一真 坂井真紀 桐谷美令 鈴木慶一 鈴木砂羽 浅田美代子 大杉漣
配給:スローラーナー (2007/日本/100分/カラー)

父(大杉漣)は幼い頃蒸発、その借金を返すために
働いて母(鈴木砂羽)は亡くなり、
高校を中退して工場で働く兄(塩谷瞬)と二人で
文化住宅に住む宇野初子(東亜優)、中学3年生。
お互いにほのかな恋心を寄せ合う同級生
三島(佐野一真)には
進学校である東高に一緒に行こうと言われ
一生懸命勉強しているが、参考書どころか、
電気代も払う余裕がないほどの極貧生活。
クラスメイトにもなじめず、いつも無表情な初子の
微妙な心の移ろいを描いた作品。

「赤い文化住宅」とは、文化住宅自体が赤くもあるが、
彼女の母が大好きだった「赤毛のアン」とも重なってくる。
赤毛のアンはいつも夢想に耽っていて、癇癪持ち。
なのに、みんなから愛される。
そんなことあるわけない。
アンに反発を覚えながらもことがあるとその本の一節を
朗読してしまう初子。
初子自身もいつも夢想に耽り癇癪持ちでもある。
そんな自分と重ね合わせて、
本当はアンにあこがれていたのだ。
そのいじらしさが観る者の心を打つ。

風邪をひいた初子に赤いマフラーをくれる三島。
そのマフラーを二人で巻いておんぶをしてもらうシーン、
夜寒くなって赤いどてらとそのマフラーを巻くシーン、
そのマフラーがほつれてしまい、その毛糸で
兄とあやとりをするシーン…。
赤を象徴したそれぞれのシーンがどれも印象的。
そして、ラスト近くのシーンもまた赤を象徴する。

無表情ながらも初子の微妙な心理を表現している、
綺麗な瞳が印象的な東亜優がいい。
また、さりげない優しさで初子を包む三島役の
佐野一真、やさぐれてはいるけれども
父が蒸発しなければいい兄になったはずであった
塩谷瞬など、若手俳優がみんな好演している。
また、生徒にまるで興味のない担任を演じる坂井真紀、
なぜか初子に親切にしてくれる浅田美代子など、
ベテラン女優たちも若い俳優たちを支えている。

初子自身はみんなに愛されていないと思っているけど、
そのけなげな生き方を三島も兄も理解して、
本当は愛しているんだよ、そんなメッセージを送りたくなる
温かい映画だった。今度こそ、「大人になったら結婚しよう」
という夢がかなうといいね、そう思った。


(DVDにて鑑賞)

公式ホームページなし

赤い文化住宅の初子 [DVD]赤い文化住宅の初子 [DVD]
出演:佐野和真
販売元:JVCエンタテインメント
発売日:2008-01-25
おすすめ度:
4.0
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「亀は意外と速く泳ぐ」4

ブログネタ
日本映画2 に参加中!
亀は意外と速く泳ぐ








脚本・監督 三木聡
出演 上野樹里 蒼井優 岩松了 ふせえり 村松利文 松重豊  緋田康人 岡本信人 温水洋一 伊武雅刀
配給:ウィルコ (2005年/日本/90分/カラー)

夫が単身赴任中で一人暮らしの主婦、スズメ(上野樹里)。
そこそこにおいしいラーメンが好きで、夫は中肉中背。
夫は電話をかけてきても
ペットのカメ太郎に餌をやったかどうかしか確認しない。
それでも毎日餌をあげ続けるスズメだったが、
公衆トイレでは洗面台から押しのけられた揚句に
オバサンにおならをされたり、
バスを待っていてもバスが止まってくれなかったりする。
「もしかして、私って見えてない?」
そんなスズメとは対照的に、
同じ病院で生まれてからずっと親友のクジャク(蒼井優)は
センスもあり、生き方もビッグで豪快でエキセントリック。
夢はパリのエッフェル塔の見えるアパルトマンで
フランス人の彼と生活すること。
そんな彼女と自分を比較するつもりはないけれど、
自分の存在意義を見失ってしまったスズメは、
小さい頃からの思い出のある「百段階段」で
偶然「スパイ募集」という小さなポスターを見つけ、
応募してみるのだが…。

主婦がスパイになるという斬新なアイディアで
おもしろかったです。
スパイになるということは、ひたすら平凡に見せかけながら
暮らすということ。
ファミレスに行ったら何を注文したか
ウェイトレスが忘れてしまうようなものを頼み、
スーパーでは一般の主婦が買うようなものを
3000円くらい買い、
(ここのシーンでは偶然会ったクジャクが
アーティーチョークを買っているのを見て
なんだか勝ったような気になっているスズメがかわいい)
サングラスを買うなんて言語道断。
そんな「スパイの極意」を習っているうちに、
自分の平凡な生活が楽しくなってくるスズメなのでした。

よかったシーンは、スパイ活動の動きがあるという
情報が流れた時に、会いたい人に会っておきなさいという
シズオ(岩松了)とエツコ(ふせえり)の忠告を聞いて
スズメがお父さん(岡本信人)に会いに行くシーンです。
「お母さんってどうしてお父さんが好きだったんだろうね?」
「わからないけど・・・笑うのが上手な人が好きって言ってた」
「笑ってみて?」
(笑う)
「上手かもしれない」
「それじゃあ、今度何するか考えてにこにこしてみるか」
「なにそれ?」
「お前もしてみないか?今度何するか考えてにこにこ」
そして二人でにこにこ〜、にこにこ〜とするシーンが
印象深いです。

高校時代の憧れの加藤先輩(要潤)のエピソードも
地味に笑えます。破天荒な性格のクジャクも
実は友達思いだということがわかる楽しいシーンです。

結局スパイ活動とは何だったのか、
そもそも彼らはスパイだったのか、
わからないままストーリーはエンディングに突入しますが、
「そこそこラーメン」のレシピのくだりは思わずほろりとしてしまいます。

なんとなく話は進んでいくようで、
ただのわき役だと思って見ていた登場人物が
意外なところでつながっていたりして、
ゆるい話のわりにはとても構成がしっかりしているところが
いいですね。
さすがテレビなどで活躍していた三木聡という気がします。
緩急自在なストーリー展開が楽しめる、秀作だと思います。

(DVDで鑑賞)

http://www.wilco-jp.com/kamehaya/

亀は意外と速く泳ぐ デラックス版 [DVD]亀は意外と速く泳ぐ デラックス版 [DVD]
出演:上野樹里
販売元:ジェネオン エンタテインメント
発売日:2006-01-25
おすすめ度:
4.0
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livedoor プロフィール

永岡瑞季

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