永岡瑞季の毎日映画館!

映画館はびっくり箱です。 日常生活でいらいらしたことがあっても、 映画館に入ってチケットを買って、席について、もらったチラシを見ているうちに真っ暗になって予告編が始まる。 そうしたら、もう何もかも忘れてしまいます。映画館にはそんな魔力があります。 映画をこよなく愛する永岡瑞季の映画レビューを書いていきます☆DVDやスカパー!で観たものも入ったり、たまにはもう一つの趣味のドラマのことも書くかもしれません! よろしくお願いします。

ゾクゾクと怖い映画

「鈍獣」5

鈍獣






監督 細野ひで彦
脚本 宮藤官九郎
出演 浅野忠信 北村一輝 真木よう子 佐津川愛美 南野陽子 ユースケ・サンタマリア ジェロ 本田博太郎
配給:ギャガ・コミュニケーションズ(2009/日本/カラー)

殺しても殺しても死なない幼なじみが生まれ故郷に帰ってきた!

なぜかすべてが相撲で回っている片田舎の街に
降り立ったのは出版社に勤める
キャリア志向の女、静(真木よう子)。
彼女が担当する雑誌に連載された小説「鈍獣」が
名誉ある「明多川賞」の候補となったというのに
その作家・凸川 が失踪したのだ。
生まれ故郷にいるとにらんだ静は、
彼の幼なじみ達が集うホストクラブ、スーパーヘビーに向かう。
出迎えた江田っちこと江田(北村一輝)、
岡本(ユースケ・サンタマリア)、
順子ママ(南野陽子)、 ロリコンホステスのノラ(佐津川愛美)は
どうやら彼の行方を知っている様子。

静が問いただすと、4人は少しずつ
凸やんこと凸川のことを語りだす。
実は凸川は小説「鈍獣」で江田と岡本の悪事を
次々に暴露していたのだ。 
「まさかあいつ、あのことを書くんじゃないだろうな?」
このままでは自分たちの生活が崩れてしまうと思った江田は
凸川殺害を計画する。
しかし・・・。

鈍い・・・というよりは馬鹿??愛すべきキャラでありながら
しかし、どこか、ゾクっとこわい、
そんな凸やんを浅野忠信が好演。
「あ、おしまい?もう、おしまい?」の決め台詞がいい。
凸やんをとりまく4人が断片的に語りつつ、
最後にはすべてがわかるというストーリーテリングの方法も
クドカンの真骨頂。
だけど、肝心なことが最後までよくわからない
ナンセンスさは、テレビドラマでぶいぶい言わせている
クドカンではなく、
劇団「ウーマンリブ」のクドカンだなあというところも
ファンとしては嬉しい。
(ちなみに、この映画は舞台作品として上演され
岸田國士賞を取った作品を映画化したもの。)
あくまでブラックでシュールでクール。
コミカルなのに最後にどろっとした怖さが残る
脚本はさすが。
人間とは、鈍い獣なのである。
というセリフがどーんと心に迫る。

ちなみに、隠れキャラ的存在で
演歌歌手・ジェロと元横綱・大乃国が登場。
ジェロの使い方は痛い!
あのジェロをこう使うかい!という感じでした。

殺しても殺しても死なないのは一体なぜ?
江田っちは本当に凸やんを殺す、いやポロしてしまうのか?
そして凸やんの3つ目の乳首の謎とは?
ぜひ映画館でその謎を解き明かしてきてください。

http://donju.gyao.jp/

(シネ・クイントにて鑑賞)


 

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「絶対の愛」3

絶対の愛






監督 キム・ギドク
出演 ソン・ヒョナ ハ・ジョンウ パク・チヨン キム・ソンミン ソ・ジソク チョン・ファン チョン・キョウン カン・シンチョル 
配給:ハピネット(2004/韓国=日本/95分/カラー)

つきあって2年になるセヒ(パク・チヨン)とジウ(ハ・ジョンウ)。
セヒはほかの女につい目が行ってしまうジウを見て
自分の顔が飽きられてしまったと悲観する。
「いつも同じ顔でごめんね」と泣くセヒ。
そしてセヒは突然姿を消す。
なんとセヒは整形手術を受け、
顔の腫れのひいた6ヶ月後に
別人スェヒ(ソン・ヒョナ)としてジウのまえにあらわれたのだ。
だんだんスェヒに惹かれて行くジウだが、
やはりセヒのことも忘れられない。
そんなジウを見て、セヒは過去の自分に嫉妬し始めるのだが… 。

かなり恐ろしい話でした。
自分の顔が飽きられると思い込んでしまい
エキセントリックな行動に出るセヒの描き方が怖いです。
そして、新しい顔になってまたジウの恋人になるという
思いを達したのに、過去の自分に嫉妬してしまう、
その情念の深さ。業のようなものを感じました。
少しネタばれですが、自分の元の顔の写真を切り取って
お面にしてジウのまえにあらわれるシーンは本当に怖い。
写真はモノクロで表情が変わらないのに
スェヒ(セヒ)は激しく感情を波打たせます。
そして、スェヒがセヒだと知った後のジウの行動も
また非常に奇異なものです。
人間は顔だけでできているのではないのに、
顔が変わると誰だかわからなくなる。
そんな当たり前のことが非常に恐ろしい事実となって
主人公たちに突きつけられます。
「あなたは誰?」
そんなスェヒのセリフがそれを象徴しています。

顔の腫れを隠すためにスカーフやサングラスをまとって
現れる主人公もビジュアル的に怖いです。
二人のデートスポットである彫刻公園の
現代彫刻が人間の生々しさを表している気がして
ちょっとやりすぎかもと思ったくらいです。 

この映画の怖さは「繰り返し」の怖さでもあります。
最後のシーンを観た後、
誰もがあれ?と不思議に思うと思います。
繰り返して失敗してもまた同じ事をしてしまう、
そんな人間の愚かさが寓話的に描かれています。 
この映画の原題は「時間」ですが、
様々な意味を持っていると思います。
わたしとしては、腫れが引くまでの
「6ヶ月間」という猶予期間のような時間が
非常に恐ろしかったですね。

今まで気になっていながら観ていなかった
キム・ギドク監督ですが、
他の作品も観てみたいと思わされました。
人間の醜く愚かな部分を見せつけられたような
そんな気がしました。

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出演:ソン・ヒョナ.ハ・ジョンウ.パク・チヨン
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「異人たちとの夏」3

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異人たちとの夏




監督 大林宣彦
原作 山田太一
出演 風間杜夫 秋吉久美子 片岡鶴太郎 永島敏行
名取裕子
配給:松竹(1988/日本/108分/カラー) 

中年のシナリオライター原田(風間杜夫)は
妻子と別れて、オフィスビルの一室に一人住んでいる。
どうやら3階にも一人、住居として住んでいる人がいるらしい。
夜中に外から見ると、自分の部屋とそこの部屋だけしか
明かりがついていないのを見てさみしく思う原田。

一方仕事仲間の間宮(永島敏行)は
原田の元の妻に思いを寄せていたことを告白、
離婚を機にその思いを遂げたいという。
さらにはその妻から「あなたの荷物残っていたから
着払いで送ります。あしからず」という留守電が。
いらいらしていたところに、3階の住人である
若い女性(名取裕子)が、「ひとりでいられなくて」と
シャンパンを持って訪ねてくるのだが
冷たくあしらってしまう原田。
思えばそれが、あの不思議な夏の始まりだった…

ロケハンに行った帰りに、
子供のころ住んでいた浅草に行った原田は、
死んだはずの父親(片岡鶴太郎)に
そっくりの男に出会う。
ごく自然に「行くぞ」と話しかけられた原田が
連れて行かれたのは元の実家。
そしてそこで待っていたのは
やはり亡くなった母親(秋吉久美子)だった・・・

死んだ人をはじめとして、「会うはずのない人」との
邂逅というのは、大林監督が貫いているテーマの
一つだと思います。
この作品のテーマもまたその一つだと思います。
ただ、大林監督の大ファンであるわたしとしては
もう一歩食い足りない気がしました。
監督の魅力は、1シーン1シーンにかける
愛情だと思うのですが、
その思い入れが他の映画に比べると
少なかったような…。
と思っているところに、大林監督のコメントを読む
チャンスがありました。

「これは映像作家というより、
映画監督の作品だな。だから
大林作品は嫌いという人たちにも
広く受け入れてもらえました」

ここで監督がいう「映像作家の作品」が
何を指すかは不明ですが、
何となく私の物足りなさを納得させてくれる言葉でした。

でも、やはりすごいと思ったのは
女性の描き方ですね。
母親である秋吉久美子にしても、
父親と比べると息子に対する情念が強い。
そしてなんといっても名取祐子演じる「桂」。
終盤近く、女の執念とはここまで強いものかと
圧倒されます。
そのシーンについては賛否両論あると思いますが
わたしは大林監督の劇場映画デビュー作である
B級ホラーの名作「HOUSE」を彷彿させる、
アナログ的な怖さがあり、嫌いではなかったですね。
「HOUSE」はお勧めです。
怖いですけどね。

シナリオライター原田が描いたセリフに
「過去は取り返しがつかないというけれど
そんなはずはない。自分の過去なんだから
いくらでも取り返しはつく」
というのがありますが、
その台詞が効いていますね。
異人たちにとって、そして原田にとって、
人生は取り返しがついたのでしょうか…。

大林監督らしい抒情もあり、好きな作品ではありますが
監督への期待度と照らし合わせて、
迷いましたが敢えて厳しく三つ星にしました。
これを四つ星にしてしまうと、
もっといい監督の作品が紹介できなくなってしまうので。
新作「その日のまえに」公開に当たって
70歳の新人宣言をした大林宣彦監督。
これからの作品にも大いに期待しています。

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