永岡瑞季の毎日映画館!

映画館はびっくり箱です。 日常生活でいらいらしたことがあっても、 映画館に入ってチケットを買って、席について、もらったチラシを見ているうちに真っ暗になって予告編が始まる。 そうしたら、もう何もかも忘れてしまいます。映画館にはそんな魔力があります。 映画をこよなく愛する永岡瑞季の映画レビューを書いていきます☆DVDやスカパー!で観たものも入ったり、たまにはもう一つの趣味のドラマのことも書くかもしれません! よろしくお願いします。

西川美和

「蛇イチゴ」5

蛇イチゴ











監督・脚本 西川美和
プロデューサー 是枝裕和
出演 宮迫博之 つみきみほ 平泉成  大谷直子 手塚とおる 絵沢萠子 寺島進 笑福亭松之介
配給:ザナドゥー(2002/日本/108分/カラー)

明智倫子(つみきみほ)の家族はごく平凡な家庭。
まじめ一徹のエンジニアの父(平泉成)、
夫に尽くし、痴呆の進んだ義父を介護するおとなしい母(大谷直子)、
認知症が進み心臓も患った祖父(笑福亭松之介)の
4人家族である。祖父の奇行に悩まされることはあるが、
母と祖父の信頼関係も厚く、
心配することはない…と思っていた倫子だった。 
倫子は同僚で資産家の鎌田(手塚とおる)と近く結婚することになっており
今日は鎌田がはじめて自宅を訪問する日だった。
温かく迎えられる鎌田を見て、これからも幸せを
確信する倫子だったのだが、
祖父の死をきっかけに勘当された兄(宮迫博之)と再会、
そして家族一人一人が持っていたほつれが
一気に明らかになっていく…。

「ゆれる」の監督西川美和の初期作品です。
うまく行っていたかのように見えた家族の、
長い年月一緒にいたことによって
少しずつたまってきた鬱積や信頼関係の崩れが
一気に放出する姿を描いた見事な作品です。
「平凡な家庭」「温かい家庭」などというものは
もしかしたら幻想で、ほんとうには存在しないのではないか
とまで思わせるほどの恐ろしい作品になっています。
登場人物一人一人の描き方が、非常に冷めて現実的です。
失業したことを隠し借金をためまくった父親は
見栄っ張りで愚痴っぽく、鎌田の前では笑顔を見せながら
帰ったとたん悪口を言ったりします。
義父の介護に一人耐える母親がその死に関わり、
死後にほんの少し壊れていく姿も強烈です。
「いつも正しい」と言われてきた倫子は
母親が兄に「倫子は真面目すぎて息苦しい」と言っているのを
立ち聞きしてしまい今までの自分をいきなり否定されます。
そしてあまりの乱交ぶりに勘当された兄が
いきなり救世主のように現れ、
父親も母親も兄にすがるようにするのを見て、
自分の存在意義を無くしてしまいます。
家族が崩壊していく過程が、
真綿で首を絞めるように、じわじわと、そしてゆっくりと
描かれて行きます。

「うちがおしまいになっちゃう前に、
お兄ちゃんに出て行ってもらおうよ」
そんな台詞が印象的です。

「いつも正しい倫子」はいつも正しいわけじゃなかったことも
示唆されるところが深いと思いました。
小学校の教師をしている彼女は、生徒の一人が
うそをついたと決め付けるのですが、
一人の生徒にこう言われてはっとします。
「本当に、お母さんが病気だったんじゃないんですか」
そして、本当に「いつも正しい」「でたらめをいったことがない」
倫子はどこにもいなかったことが暗示されるような、
倫子の今までの生き方を否定するような、
そんな悲しみもあります。

「雨上がり決死隊」の宮迫博之が
いいかげんな兄を好演しています。
正直、ここまでうまいとは思いませんでした。
父親に最後の解決策を言い出すときの目が
忘れられません。
ちなみに、相方の蛍原も一瞬ですが出演していましたね。

家族、とくにきょうだいの葛藤を描いているところは
「ゆれる」と重なるところがあります。
これからも、西川監督は
いろんな家族を描いていってくれるのでしょうか。
ラストシーンの鮮やかな色彩が心に残る作品です。

(DVDにて鑑賞)

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「ゆれる」5

ブログネタ
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ゆれる





監督・脚本:西川美和
企画:是枝裕和
出演:オダギリジョー 香川照之 伊武雅刀 新井浩文 
真木よう子 蟹江敬三 木村祐一 
田口トモロヲ ピエール瀧
配給:シネカノン(2006/日本/119分/カラー)

東京でカメラマンとして成功している
弟・猛(オダギリジョー)は 
家業のガソリンスタンドを継いだ
兄・稔(香川照之)の誘いで 
母の法事をきっかけに故郷山梨に帰ってくる。 
幼馴染の智恵子(真木よう子)は
そのガソリンスタンドで働いている。 
どうやら兄は智恵子に思いを寄せている様子だ。 
次の日、子供のころに行った渓谷に3人で行こうと 
はしゃぐ稔。 
兄の気持ちを知りながら、猛は自分を前に想っていた 
智恵子とその晩関係を結ぶ。 
そして、渓谷で事件は起こった。 
ゆれる吊り橋から、智恵子が転落したのだ。 
そばにいたのは稔だけ。 
事故として処理されていく中、 
稔は自分が突き落したと自白する…。 

様々な人々の思いが、 
まさに「ゆれ」ていくのが 
じわじわと描かれていました。 
兄と自分を父に比較された猛の心も「ゆれ」、 
おそらく猛が帰ってくるまでは 
稔のことも悪くは思ってはいなかったであろう 
智恵子の気持ちも「ゆれ」、 
智恵子と出かけたまま遅くまで帰ってこない猛を思って 
稔の心も「ゆれる」。 
そして、被告人となった兄に 
面会しにいくうちに 
兄の心の深い深い所にふれた猛の心は 
さらに「ゆれる」。 

兄と面会室で口論になった時、猛を映すカメラが 
微妙にゆれていたのが印象的でした。 
あのときにこそまさに、 
猛の心はゆれていたのでしょう。 
思いあっていないわけではないのに、 
お互いに自分にないものを持っている 
兄弟との微妙な関係が 
絶妙に描かれていました。 

ほとんど表情を大きく変えることがないのに、 
ちょっとした目配りで 
積もっていく念のようなものを 
表現している香川照之の演技が 
すばらしかったです。 
また、被告人の父になってしまった 
伊武雅刀が、洗濯物を干すシーン、 
特に終盤ぼけてしまって新聞を干しているのが 
悲哀を感じさせます。 
また、終盤ゆっくりとブランコが揺れるシーンも 
象徴的でした。 

人間の奥底にあるどろどろとした感情が 
じわじわと、しかし決して暗くはなく 
じっくりと描かれたすばらしい作品でした。

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