
おそらく京都アニメーションの、いや日本のアニメ史上最高傑作のひとつといってもよいだろう。悍ましい悲劇とコロナ禍を乗り越えて、作品の上映にこぎつけたスタジオ関係者の努力に心から敬意を表したい。
始まりは世界的にも評価の高かったアニメ第10話に登場した少女アンの孫が時は過ぎて自分のルーツを訪ねる旅にでることからだ。そして舞台は当時のライデンシャフトリヒの街に戻る。
ネタばれになるのでこれ以上は記さない。
それまでドールとして抑えていた感情を断ち切り、思いを解き放ち一人の成熟した女としてあらんかぎりの号泣を続ける様には感動した。二次元アニメの女性ではなく、生の女優が演じるような涙でくしゃくしゃになった表情のアップを見せられて目頭が熱くなる。
素晴らしい再会のシーンの後時代が戻り現代の少女がヴァイオレットのその後を偲んで物語は大団円を迎えるのだ。
声で心の成長を見事に表現した主演の石川由依さん、一人で絵コンテを書き上げた石立太一監督に感謝したい。そして何よりもこの長い物語の巧みな脚本を最後まで書きとおした吉田玲子さんの名人芸を称賛したい。