実家が営む居酒屋に備え付けてあるカラオケや人と行ったカラオケで歌を聴いて、大物アーティストのコンサートさながら感動することがある。常連の酔っ払い、若干テンションのあがった母、友人、好きな人。その人の歩んできた人生や心境が声になり歌と絡まって僕の中の"本人"を超えてしまう瞬間というのは確かにあって、そうして心揺さぶられた時僕は内緒でiPhoneの録音アプリを開いている。変態やん。

そんな盗み録りした音声を聴いて心底うんざりするのが自分の声で、間奏、黙ってりゃ良いのに録音ボタンを押したことも忘れて
「すげえ良いわ〜!!泣きそうだわ〜!!」
なんて、素晴らしい歌声の余韻を台無しにするようにバッチリ記録されている。
その声は軽薄で、嘘つきで、頭が悪くて、嫌いな自分が濃縮されているようなTREBLE、MIDDLE、BASS。どんなツマミを回せばこんな声になるのだろう。良いと思う気持ちや涙腺の緩みは本当なのにな。

とか思いながらそのまま聴いていると録音を切り忘れたのか、そのまま僕が歌い出したりする。これで自分の歌声は結構気に入っていて、メロディ?なにが違うのだろう。結構誠実な良い男の声をしている。

歌うように喋れれば良いのにといつも思う。それがどうしても出来ないから歌うのだろうか。なにかと不器用でこれは死ぬまで治らなそうだけど、歌っている時だけは本当の意味で喋れている気がするんだな。