【完結】 水城ゆうき ライトノベル 『ヒカリ☆ ~恋の落とし穴に落ちた享介の顛末~』

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最終章 完結 『ヒカリ☆ ~恋の落とし穴に落ちた享介の顛末~』


「イチョウの樹の根が、ひかりをイジめていたんだな」


 享介は走りだすと、イチョウの硬い樹皮めがけて左右のパンチを効かせて、くるりと後ろから腰をねじって回し蹴り。

 けっして伝承のイチョウまでは届かない、遠めの位置からの敵討ちって、やっぱりピントのズレた享介だった。


「なんて卑劣な! 森のイチョウ伝説」


「でもねワタシ、ずっと享ちゃんのそばにいたんだよ」


 ふり返るとたんぽぽを思わせる笑顔。

 ひかりは手を後ろに組んで、芝の広がったゆるい傾斜を踏みしめてくる。

 太陽の強い光を浴びながら、芝と土の織りまざる蒸気の臭いに包まれていく。


「たまには思いだしてほしかったなぁ」


「やめろ! 空を飛ぶのはやめろ!」



 ひかりが落ちた穴の開口部は輝きだした。

 巨石をのせた穴塞ぎの隙間から、まばゆい光があふれて輝度が満たされる。


「享ちゃん、さよならぁ!」


 ひかりが両腕をしなやかに広げ、享介に思い切って溶けこんでくる。

 胸を突かれる空気の震えを残して、享介を通過して消えてしまった。




「どういうことだ?」


「どうもこうもないわ、これが川嶋ひかりのすべてなのさ」



 ケンジがイチョウの木陰(こかげ)から立ち上がった。

 すでに園員の制服をなくして、ラフなTシャツ姿で、地べたの土汚れをはたいている。


「おまえは誰なんだ」


「へ? オレっちは悪魔だよ、ひかりはケンジ閣下だって決めつけていたぜ。

川嶋ひかりの悪魔っ娘(こ)としての将来性に惹かれて、悪魔界デビューを目指したのさ。

おもしろそうだろ? あれほど真っ直ぐなバイオレンスって。

まあ、オレっちは何て言うか、ただそれだけなのさ」


 光の放出を安らかに終えていく、縦穴の巨石に目をやりながら、気まずそうに鼻のてっぺんを掻いた。


「あ~あ、とびっきりの悪魔っ娘にスカウトしようとがんばってたのにな! 

じゃあ、オレっちも行くからさ。

楽しかったぜ、恋の落とし穴にはご用心ってね」


 ケンジも半透明になって、やがて姿がなくなる。

はしゃいじゃった後に見せる笑顔を残して。



 遊園地には誰もいない。

 蝉の声がきこえた。

 享介は額の汗を意識した。

 光は高く、熱気をはらんだ空気は、夏の景色をえがいた。


 肉厚の雲と伸びる空が苦しいんだ。



 

<終>


 

ご愛読ありがとうございました。


 
(
水城ゆうき)

最終章  ひかりのお腹の根 ④

 ひかりは横腹を手で押さえて、腹痛とも吐き気ともとれる姿勢で、じっとうつむいて耐えた。


「やっぱり教えてあげたいな。享ちゃんの知っている、イチョウの伝説はかなり違うよ。

そうじゃなくって満月の晩、イチョウの樹に触れたカップルには、永遠の別れがやってくるだよ。

もうね、永遠のラブラブって、まったく享ちゃんらしいわ」


 ひかりはセーラー服のわき腹にあるファスナーを、ジジジと引きあげた。

 あごをひっこめて前かがみに、苦しそうな短い呼吸をつづけていたが、こめかみから垂れた髪を優しく指でなぞって、


「約束だったよね。失くしたモノを返してあげる」


 セーラー服をヘソから持ちあげ、胸をふくらませて腹部ギリギリまで上着をめくっていく。


「これがあなたの十年よ」


「うわーっ! コレって根っこかよ!? マジにおえぇぇーっー」


 ひかりの白いお腹に、木の根が育っていた。

腹肉にびっしり塊状の根を張らせ、起伏と陥没を繰り返して渦巻いていた。

どこから根をおろしたのか、あるいは食い破って腹部に定着したのか、ただ動きのとれない根の先っぽがやわらかい肉から顔をだして、静かに息づいている。




「お疲れさまでした。またのご搭乗をお待ちしております」


 観覧車の乗り場に到着すると、ケンジが恭(うやうや)しく声をかけながらドアをオープンする。

あらためてゴンドラ内のカップルと、ずりあがったセーラー服の腹部を見てとると、やっちまったかという、天に手を向けて肩をすくめる降参ポーズをとった。


最終章  ひかりのお腹の根 ③

「享ちゃん、月の色が赤いよ」


「こんばんはムーン」


 すかさず飛びあがって満月のおでこにタッチする。

 学生の時から享介はこうだった。


「森へいこう! 今夜なら月の真実に近づけそうな気がする」


 そのような経緯で、学校の職員室から懐中電灯を調達して、二人の探検隊は森へでた。


 ゴンドラのひかりは身をのりだした。


「だからなんで! わざわざ夜の森に足を踏み入れたのかをきいてるの。あぶないでしょ、熊にでも遭遇したらどうするつもり」


「太鼓の音がしたから」


 すでに享介の頭はぐるぐると混乱していた。

 おかしくないか? 太鼓の音。

 享介は半狂乱になって森を走り、暗い場所のわずかな距離で消えたひかりをさがしたはずだ。

 ドンドンドンドンって不安な動悸が、気のふれそうな享介には、打ち叩く太鼓の音になって焼きついていた。


(俺は十年の間に何を失ったんだ?)


 観覧車スターレインボーは、最頂点をスルーして終点をめざした。

 遊園地の敷地に夏の影を落としてゆったり回る。



「さあ、悪夢をとっぱらおうぜ! ずっと俺はこの時を待っていた」


「それってやっぱりイチョウの樹に、つながっていくのか、とっても気になる」


「ありありだろ、満月の晩にイチョウの大樹に祈願した恋愛カップルには、生涯ラブラブが約束される、森のほとり伝説を忘れたのかよ」


「そのイチョウの樹が遊園地に運ばれて、ワタシが落っこちた穴の近くに、植えられちゃったのね」


 このままゴンドラが滑り落ちると、雲のように青々と密集した、イチョウ葉に着地しそうだ。


「一本の懐中電灯と月明かりをたよりに、道のない森を近道したつもりだった。

まるで赤い月を追いかけて、森で迷子になり、ひかりが穴に落ちて絶叫-っ、俺は走って走って、えーと、走って転んで走って、は走ってってアレ?」

 これまでの緊張がとけて、やっと顔をほころばせる享介を、ひかりは眩(まぶ)しそうに見まもっていた。


「あのね享ちゃん、ワタシね、ずっと穴の奥で待っていてもよかったけど、ゆっくりしていられなくなったの。

運ばれてきたイチョウの根が生えるとチクチクって体が痛むから」

『 ヒカリ☆ 』 DSストーリー
28才の夏、森 享介は海沿いの街をさまよって、セーラー服の女子高生ひかりと出会う。

(オ・レ・ハ・・・俺はひかりを知っている・・・何時いったい何処で知り合った?)

「ひかり・・・十年前に学校で何があったか、そろそろ話してもらっていいかな?」

<続きは・・・本文にて>
『 ヒカリ☆ 』 執筆にあたって、最も影響を受けた作品
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