トレッキングと生き物たち ~鳥 蝶 植物~

「URAWA FREAK」改め 自然との付き合いかたにかかわるサイトにリニューアルします! 最初にお断りしておきますが 本サイトでは基本的にWeb上にアップロードされました皆様の素晴らしい写真を使わせて頂いています URLあるいはサイト名を併記させて頂きますので どうかご容赦ください

八ヶ岳トレッキング ~蝶~

日本でも有数の広大な裾野を持つ八ヶ岳には「八ヶ岳トレッキング」でも述べた通り まだまだ良好な森林環境が残されています 確かに開発等のためにそれなりに人の手が入り そこに暮らす生き物たちの数自体は減ってはいますが 貴重な命に出逢うチャンスは十分にあるのです


八ヶ岳赤岳鉱泉
                            (4travel.jp)


戦後復興から高度経済成長期を経て人々の暮らしが豊かになり 我々の目が蔑ろにしてきた自然に向けられるようになったのは さほど昔の話ではありません 現在では日本各地で現存する希少種・固有種などの保護活動が展開されていますが その担い手は地元の心ある方々の手に委ねられるに近い状況にあるのが現実です
確かに地方公共団体レベルでの天然記念物指定に伴う採集禁止と罰則規定の制定はあるものの その傍らでインフラ整備事業が行われるなど その施策はちぐはぐで決して的を得たものではないと言わざるを得ないケースが多く見られます 山地帯から高山帯という恵まれた自然環境が大部分を占める長野・山梨等の中部地方には 言うまでもなく山地性・亜高山性・高山性の生き物たちが多く分布し かつてほどの繁栄はないものの それぞれの地に暮らす命の営みは比較的健在ではあります 一つ一つの生き物がその地に息づいているのには理由があり いわゆる生息環境というものは 極めて微妙なバランスの上に成り立つものです 特に亜高山帯・高山帯に暮らすものたちは氷河期の生き残り的意味合いが強く そういった命を育む環境は脆弱な聖域だと言えます 近年はそうした聖域へ大型哺乳類をはじめとする動物や下界から侵入する植物等の影響により 我々が思う以上に自然環境が変わりつつある時代に差し掛かりつつある現実があるのです 無論「八ヶ岳トレッキング」に書いたように この山の周辺域でも同様の変化が起こり始めています
ただ単純に天然記念物指定し 一つの種を守ろうとするレベルでは不十分なのです 小さな命のつながりを見据え 生態系という大きな規模での保全が必要であり 幸運にも現在なお残されている環境を極力そのまま後世へ伝えようとする努力が必至だと言えます
かつてよく言われたように「小さな命に経済的価値はない」という考え方があります 逆を言えば そうした思考があるが故に現状があるとも言える訳です ですが人々の意識は変わった 自然に目を向け足を運び 生き物たちに接する機会を能動的に作ろうとする方々は確実に増えています 環境を守り子子孫孫に続いていくべき命を絶やさないことが その地に人を招く時代なのです だからこそ行政の力に期待したいし これだけのことを実施するには公共団体レベルでの活動が必要です 

「小さな命にも経済的価値はある」 時代は変わるべき時に来ているのです


八ヶ岳美濃戸
                             (https://blog.goo.ne.jp/nauhts/e/730ca23eea605c7450e501e67b6201fd)

さて・・
話が逸れた感がありますが 今回この記事ではミヤマシロチョウ・オオイチモンジ・ヒメギフチョウ・クモマツマキチョウをメインに話を進めさせて頂きます どの種も様々な要因から近年数を減じているチョウたちです

①ミヤマシロチョウ

八ヶ岳ミヤマシロ①
                             (yachou2008.blog.fc2.com)



標高1400~2000mの中部山地帯にのみ生息する固有亜種で 20世紀に八ヶ岳にて発見されたことは有名です 食樹はメギ・ヒロハノヘビノボラズで 「ヘビノボラズ」またメギの別名「コトリトマラズ」というように棘のある低木です 食樹が低木なので林内のような暗い環境は不向きで 疎林的な明るい環境に自生し このチョウの生息地も同様の場所になります 成虫の発生時期は7月 アザミなどの花々で吸蜜する姿が見られるものです こうした環境は格好の開発用地になりやすく 運よく残った食樹も環境整備目的の草刈り等で除去されることが多く かつては周辺地域に広く分布していたミヤマシロチョウでしたが この200年弱の時間で激減してしまいました 
現在このチョウの発生が確認されているのは 沢沿い等の日射の届く明るい環境に残された食樹が自生する場所のみで 2016年には成虫・幼虫共に確認されなかった経緯があります
長野県は希少野生動植物保護条例に基づき特別指定希少野生動植物に本種を指定し事業を展開中ではあります 国のレッドデータブックでは絶滅危惧Ⅱ類に挙げられており 地元では茅野ミヤマシロチョウの会原村ミヤマシロチョウの会の皆様が地道な保護活動を継続中です

ミヤマシロチョウの幼虫は集団で生活をする習性があり 越冬時には越冬巣を形成し その中に有に100を超える幼虫が集まるため この習性を知ってさえいれば容易に多数の幼虫を確保することが可能です ですがこのチョウの飼育は湿度・温度管理が難しいと言われ また代用食としてナンテン・ヒイラギナンテンが挙げられるものの 飼育途中で死滅したり十分に成長しない等の弊害も多く 何より一度に非常に大量の幼虫を手にすることから飼育中の食料確保が出来ず 無駄に死に至らせてしまった愛好家たちの安易な行為が このチョウの衰退に拍車をかけたとも考えられます


八ヶ岳ミヤマシロ越冬巣
                             (n-shuhei.net)

また 森林を構成する樹木は当然年を追うごとに成長し森林環境は変化していくものです 主要な高木は更にその高さを増し枝を伸ばし メギなどへの日射を遮るようになります 日射は食樹であるメギにとっても 成虫の栄養源である吸蜜植物にとっても重要不可欠なものですがら それを遮られてしまえば ミヤマシロチョウの生育環境としてはふさわしくないものとなってしまいます
こうしたマイナス要因を排除し 環境ごとまるごと保全することが このチョウの存続に必要不可欠だと言える訳です

八ヶ岳ミヤマシロ②
                             (vill.hara.lg.jp)


今回は各保護団体の皆様の心情を配慮し 具体的な産地名の掲載は避けさせて頂くことにしました



②オオイチモンジ

八ヶ岳オオイチ①
                             (s.webry.info)



上高地トレッキング ~蝶~」でご紹介したように中部山岳を代表する大型のタテハチョウの仲間です ヤマナラシやドロノキといったヤナギ科植物を食樹とし7月~8月に成虫が発生します 栄養源は主に樹液なので訪花することはまずありません ミヤマシロチョウ同様かつてほどの個体数はないものの 現在でも運が良ければその雄大な姿に出逢うことは出来 川原で不意に給水に舞い降りた個体を目にすることがあります
国蝶のオオムラサキ同様 大型のタテハチョウ類は飛翔力が高く行動範囲が広いという特徴がありますが 逆を言えばこうした森林性のチョウたちの生活には ある程度規模の大きな良好な森林環境が必要だと言われています 幼虫の食樹であるドロノキなどの数量的条件はもとより成虫の栄養源である樹液を出す樹木の自生状況を含めた安定環境です オオムラサキの場合は低地から山地まで分布し 私の地元の浦和でも 関東低地最後のオオムラサキが昭和後期まで健在でした しかしながら雑木林は年々宅地に変わり 低地のオオムラサキは今となっては既に昔の語り草です 幸いオオムラサキは山地帯にも分布するため我が国の国蝶は今だ健在ですが 近縁種のゴマダラチョウの場合は少々事情が異なります ゴマダラチョウの分布は低地中心であまり山地には産しません 現状いわゆる平野と呼ばれる地域はすっかり開かれて住宅等の建物が密集 ゴマダラチョウの暮らせる環境はほぼ壊滅し 食樹のエノキが建物の隙間に僅かに残る程度 そこに海外からのアカボシゴマダラの進出です アカボシゴマダもエノキを食樹としますが このチョウは食樹さえあれば街中でも暮らしていけるタフな種類のため 低地で細々と暮らしていたゴマダラチョウは すっかりアカボシゴマダラに席巻され 今ではゴマダラチョウの絶滅が危惧されています アカボシゴマダラは人為的に国内に持ち込まれたものですが 開発等による森林性の生き物たちへの影響は致命的だということの表れです 八ヶ岳を含む中部山岳に細々と暮らすオオイチモンジが ゴマダラチョウ同様の衰退への道を辿ることのないよう祈る気持ちでいっぱいです


八ヶ岳オオイチ②
                             (konty33.exblog.jp)


八ヶ岳では主に1300~1400m以上の立場周辺・蓼科山・美濃戸などで発生していますが このチョウに意図的に逢うには少々コツがあります オオイチモンジは発生初期こそ発生木周辺にいますが その後は移動する傾向が強く ある一定条件を満たした寝床を選定するのです 沢沿いのヤナギ類で樹液が豊富であり かつチョウたちが飛翔するに十分な空間を備えた朝陽のよく当たる木です こうしたヤナギを寝床として 山地の寒い朝にいち早く届く陽射しでその体を温める習性があります 条件の良い木には複数個体が着いている可能性が高く そういった寝床を探して早朝入山することが大切です
オオイチモンジも絶滅危惧Ⅱ類指定種 当然採集禁止ですが望遠撮影機材があれば いい絵の撮れる機会は十分あると思います

③ヒメギフチョウ

八ヶ岳ヒメギフ①
                             (geocities.jp)



山梨県から長野方面へと八ヶ岳の裾野に沿って伸びる国道20号線は かつてヒメギフ街道と呼ばれるほど その沿線にはこのチョウを豊産しました 今を遡ること30数年前は20号線から少し離れればヒメギフチョウの舞う春の風景に出逢えたし 里山のウスバサイシンを見れば容易に卵を確認できました しかしながら近年はこの一帯のヒメギフチョウは急激にその数を減じており その傾向は山梨県の産地で顕著なようです
ヒメギフチョウは近縁種のギフチョウほど愛好家たちの人気を集める種類ではありません それはギフチョウのように産地ごとの変異が顕著でないことが大きな要因だと言えます ギフチョウたちがそれぞれの産地に於いて 長い時間の中で種分化したその土地固有のカンアオイを食草としているのに対し ヒメギフチョウの食草は中部地方ではウスバサイシンに限定されています 日本各地のカンアオイたちもウスバサイシンもカンアオイ属というウマノスズクサ科の植物ですが 共通して言えることは拡散能力に乏しい植物であり それ故カンアオイは各地で種分化が進み そのカンアオイにしがみつくようにギフチョウは本州にだけ分布しています ギフチョウ・ヒメギフチョウは原始的なアゲハチョウと言われますが いつの時代にどのような形で島国である日本に分布するようになったのかは分かりません ですがここまでに述べたようなカンアオイという植物の特性を考えると かなり古い時代にこの国へと分布を広げたと言えるのかもしれません ではヒメギフチョウの場合はどうでしょう 現時点でこのチョウの食草がウスバサイシンに限定されていることを考えると ヒメギフはギフよりも日本に分布拡大した時代が遅いということも言えるのかもしれないと思います だから産地ごとの変異も少なく食草も単一 ただこれは私の勝手な意見ですが・・・

赤城山トレッキング ~ヒメギフチョウ~」でも触れましたが 今各地でその数を減らし保護の対象となっている蝶たち衰退の原因は ほぼ間違いなく開発と乱獲ですが 今になって新たな原因が急浮上しています それが過去の記事でたびたび書いてきたニホンジカ食害による植生破壊なのです
八ヶ岳トレッキング」で述べた通り個体数300万頭を越えるシカたちの食害及び行動圏拡大は 近年極めて重大な問題としてクローズアップされ その影響は生態系そのものの存続というレベルにまで及んでいます 八ヶ岳周辺のヒメギフチョウについてみれば ウスバサイシンがシカに食べ尽くされた結果 壊滅的状況に至った産地が多数あり 特に山梨県でその被害が大きいのが現状ということです ここで大切なことはシカたちは動物でありエサを求めて移動するということ 現時点で食害を受けていない地域でも 今後彼らの侵入による被害を受ける可能性は決してゼロではないという点です いくら行政側が天然記念物指定したり罰則規定を設け また啓蒙活動を継続しても シカたちには何の改善も期待は出来ません ニホンジカに代表される野生動物の個体数を把握し管理する必要性が 我々人間に課せられた急務として浮上した そういう時代にさしかかっていると言わざるを得ない訳です 無論ヒメギフチョウもそういった背景を踏まえて準絶滅危惧種として挙げられています


八ヶ岳ヒメギフ②
                             (ze-ph.sakura.ne.jp)


八ヶ岳周辺でこの蝶が発生するのは 低標高域では早ければ4月下旬前後から 大型化の傾向が強い諏訪神社・入笠小黒川林道・釜無山・高ボッチ・青柳周辺 また小型ではあるものの黄色味が強くメリハリのある個体を産する蓼科湖周辺などでその姿を目にすることが出来 西麓での最盛期は五月上旬~中旬となります 東麓では筑波大学の八ヶ岳演習林・川上演習林内で発生しています


④クモマツマキチョウ


八ヶ岳クモツキ①
                              (geocities.jp)


絶滅危惧Ⅱ類 崩壊地の森林化・緑化工事・愛好者による採卵行為等の理由により数は極めて少なくなりました 柳川・立場川などの沢沿いで発生しますが 最近はほとんど確認されていないようです
その筋の話によれば「まだ局所的に発生している」とのことなので 沢沿いのガレ場なのでハタザオ類の自生地をコツコツ探す努力が必要でしょう


八ヶ岳クモツキ②
                             (dandara2.exblog.jp)

標高によって差はありますが5月から6月にかけてが出逢いのチャンス 残雪などの影響で比較的ダラダラと発生するのが本種の特徴でもあります



その他としては 高山域でのベニヒカゲ・クモマベニヒカゲ・コヒオドシ 稜線部ハイマツ帯のタカネヒカゲ 広葉樹林帯の各種ゼフィルスなどが期待できます 八ヶ岳は西風の影響を強く受けるため坪庭などの比較的標高の高い広葉樹林上部では樹高が低く 活動時間に合わせれば活発なゼフィルスたちの占有行動の観察・撮影に適しています 無論風次第ですが条件が良ければいい写真が撮れると思います


八ヶ岳ベニヒカゲ
                             (ベニヒカゲ naguhikage.com)



八ヶ岳コヒオドシ
                             (コヒオドシ yukki0227.exblog.jp)



八ヶ岳アイノ
                             (アイノミドリシジミ minorin861.exblog.jp)



八ヶ岳メスアカ
                             (メスアカミドリシジミ yoda1.exblog.jp)



八ヶ岳タカネヒカゲ
                             (タカネヒカゲ issun.exblog.jp)








 



 


八ヶ岳トレッキング

八ヶ岳はフォッサマグナの西縁に位置します 本州中央部を南北に縦断するフォッサマグナ周辺域は 地形的特徴及び盛んな火山活動等によって 植生的に特異な場所とされています これは火成岩・深成岩といった火山に由来する特徴的な地質と その場所場所の気候的要因などの影響で 固有種が分化する可能性が大きいからです
この山の周辺はいわゆる内陸性気候域に当たるため 夏期の雨量も冬期の積雪量も少なく 特に冬場は北西からの乾燥した季節風が吹きつけ 植物たちにとっては厳しい環境だと言えます こうした要因により
八ヶ岳独自の種分化や寒冷気候域を起源とする種類を依存させることにもなる訳です


八ヶ岳
                             (xn--ukvn62c.xyz)


今からおよそ100万年ほど前から 少なくとも4回の氷河期がこの星に襲来したと言われていますが そのたびに極地方から耐寒性の強い植物たちが南下し各地に分布を広げました そして最後の氷河期が終わり 現在のような温暖な気候になるにつれ これらの植物は極地方へ帰ったり 山岳地域に依存したと考えられます そしてその地に適応し近縁種と交配するなどしながら種分化が進み 固有種が誕生したと考えられます

八ヶ岳周辺は 先にも述べたように年間を通し雨量が少ない内陸性気候のため 乾燥に強い植物が生き残っています また高山植物の種類数も多く 白馬岳に次ぎ特産種・希少種の多いことでは屈指の山です 高山植物の多くは主に赤岳・横岳・硫黄岳一帯に分布し 「ヤツガタケ」を冠しこの山で発見された種類が多いのも特徴です


八ヶ岳②
                              (travelbook.co.jp)



ヤツガタケキンポゲ

八ヶ岳キンポウゲ
                             (tateshinakougen.gr.jp)



ヤツガタケスミレ

八ヶ岳スミレ
                             (hananoiori.pinoko.jp)



ヤツガタケタンポポ

八ヶ岳タンポポ
                             (ja.wikipedia.org)



ヤツガタケナズナ

八ヶ岳ナズナ
                             (yatsugatakemilk.co.jp)


ヤツガタケトウヒ

八ヶ岳トウヒ
                                             (shikokueastconifer.sblo.jp)



その他としては以下のような種類が八ヶ岳を特徴付ける植物になります


ウバウルシ(1985年命名 ロッキー山脈・ヨーロッパ北部山岳地域に隔離分布)

八ヶ岳ウバウルシ
                             (daredaomae.net)


ツクモグサ(本州では横岳・白馬岳のみ)

八ヶ岳ツクモグサ
                             (terujiji.tea-nifty.com)



オヤマノエンドウ

八ヶ岳オヤマノエンドウ
                             (f.hatena.ne.jp)



イワウメ

八ヶ岳イワウメ
                             (matome.naver.jp)



ツガザクラ

八ヶ岳ツガザクラ
                              (casaliz.tokyo)



キバナシャクナゲ(硫黄岳の群生地は国の天然記念物指定)

八ヶ岳キバナシャクナゲ
                             (photozou.jp)



コイワカガミ

八ヶ岳コイワカガミ
                             (sanyasou.com)



ウルップソウ

八ヶ岳ウルップソウ
                             (webnagano.jp)



一般的に言って 高山帯という過酷な環境に暮らす植物たちには 山岳地に適応するための 低地の植物とは違った特徴が見られます

①草丈は短いが根は長い
高山帯は得てして強風の吹き荒れることが多く そうした環境下に自生し続けるための構造です

②花は大きく鮮やか
短い夏に効率的に受粉に至るため 虫たちを誘引する上で有効です

③葉は多肉質で多毛なもの 内側へ巻いているなど 光合成・蒸散・呼吸のために有利な構造となっている



続いては八ヶ岳周辺の植生の概要についてです
今までにも何度か書いてきましたが フィールドの植生を把握することは その地に暮らす生き物たちの分布を予測する上で非常に大事なことです 昆虫たちにしても鳥たちにしても やはり好みの環境はあるもの 特に昆虫のように食草・植樹が限定される場合は その存在自体が最低必要条件になります 近年のように各地で自然環境の荒廃が進み かつては多産していた種類も今では稀というケースも多々あり そうした場合は生息していそうな場所での「待ち」が必要になるので猶更です

また植生自体が遷移するものであるということも忘れてはなりません
多くの場合森林が消失するする原因は 私たち人間の行ない(人為)に因るところが大きいと言わざるを得ません もちろん火山活動や大規模な地殻変動等も含まれますが それ以上に我々が自然環境を改変してきた長い歴史による影響は大きいのです 食物を得るために森を開き田畑とする 燃料を得るために それに適した種類の木々を植える 家畜の飼料としての牧草地を確保するなど 先人たちはそうして生きてきました
そうした環境の移り変わりを知ることは 人と自然の関わりという観点から 良い意味でも悪い意味でも 将来に向けての「保全」を考える上で大切ですし 一人ひとりの意識の啓発という意味でも 決して無駄にはならないことだと思います

1)山地帯(~1500m)
この標高域の原生植生は 比較的低所ではコナラ・クヌギ・ミズナラ 標高が上がるにつれブナの森林に代表される落葉性広葉樹林だったと言われています しかしながら現在では ブナ林はほぼ完全に消失し 人手が強く入った後に見られるミズナラ・コナラなどの二次林が広く分布しています 沢沿いにはクルミ類・ヤナギ類・ウラジロモミ等が残存し かつての面影を残しています
山地帯上部にはツガ類などの常緑針葉樹が混生し 尾根筋周辺でその様子が観察出来ます
こうした落葉性広葉樹を主とする環境の林内は明るく 林床にはササ類が繁茂するケースが多く 藪を好む鳥たちの棲家となっています 山地帯から標高1900m辺りではミヤコザサという種類が群落を形成し これは冬期の積雪量が少ない環境故の分布だと言えます 「丹沢トレッキング ~鳥~」に書いたように こうしたササ類は近年急増しているニホンジカたちの格好の食料になることが多く 丹沢などではシカの食害のために ササ類が壊滅状態の場所も多く見られるほどですが 八ヶ岳周辺では食痕はあっても大きな被害には至っていないのが現状です しかしながら他の植物への食害は顕著であり ニホンジカによる生態系全体への影響は 八ヶ岳周辺でも大きな問題になってしまっていますが これについては後程詳しく書かせていただきます

その他山地帯を特徴付ける植生としては カラマツ林とシラカバ林が挙げられます
カラマツは火山帯の貧栄養土質にもよく根付き成長も早いため 人為的に森林等が伐採された後に植栽されたもので 現在山地帯の半分以上をこのカラマツ林が占めています またシラカバについても同様に伐採地など森林的環境が消失した後に侵入する陽樹のため牧草地周辺等に多く見られます シラカバ林は明るい環境を好む特性から その後違う種類の樹木の侵入のために林内が暗くなると 次第に衰退していくものですが その景観の良さから観光資源として評価され 下草狩り等の管理によって維持されているのも 各地に見られる特徴です


2)亜高山帯(1500~2500m)
八ヶ岳の亜高山帯植生は 各地に見られるそれと同様で シラビソ・オオシラビソ・トウヒ群落となっています こうした常緑針葉樹林の林床は暗く下層植物は貧弱なものとなり ササ類が侵入するケースがほとんどで スズタケが繁茂しています
主要な亜高山帯樹種であるダケカンバも こうした針葉樹の間に点在するほか 亜高山帯上部のシラビソ・オオシラビソの生育限界域ではダケカンバ林を形成していますが 気象条件の厳しさから樹高は低くなります
この標高域には八ヶ岳固有の希少種が分布していることも特筆に値します 先にも紹介したヤツガタケトウヒがそれで西岳東斜面にのみに自生し 学術参考保護林に指定されています

3)高山帯(2500m~)
先にも述べた通り 八ヶ岳は内陸型気候域のために雨量が少ないうえ 強い風の影響を受けるため 特に西側斜面では日照条件の良さもあり 乾燥しやすい環境だと言えます 雨量の少なさは岩石の土壌化を抑制するため 植物たちは僅かな隙間などにしがみつくようにして生きています それ故比較的標高の低い場所で高山性植生が見られるのも大きな特徴です
逆に 比較的日陰になりやすい北側斜面の場合は 冬場に吹き荒れる北西の季節風のために雪が吹き溜まるため積雪量も多くなり 湿性環境を好むコケ類・シダ類・イワヒゲ・ミヤマダイモンジソウ等が見られます


八ヶ岳イワヒゲ
                             (イワヒゲ  yah55.exblog.jp)



なお 高山植物の詳細については 当記事前半部分をご覧になってください



*ニホンジカの食害について
白馬トレッキング」で触れましたが 現在中部地方の山岳地ではニホンジカの高山帯への進出が大きな問題となっています 八ヶ岳周辺でその傾向は顕著で 現在様々な調査が実施されると共に 高山帯という脆弱な環境保全に向けた取り組みが始められています
白馬トレッキング  ~鳥~」で述べたように 現在の国内でのニホンジカ推定頭数は300万頭を超えると言われており 平成25年の南アルプス・八ヶ岳・霧ヶ峰周辺での捕獲頭数が約2400頭という現状を考えると 今後シカ個体数を適正に管理することは極めて難しいと言わざるを得ません 現地では森林管理署・猟友会・ボランティア団体などの皆様の懸命な努力が続いていますが 目撃数や監視カメラの映像に基づくデータから その効果はあまり見られないようです
シカたちは20頭前後の群れで活動し 当然ですが嗜好には偏りがあります 好みに合った植物はどんどん減少し 逆に好まれない植物は勢力を拡大して植物の分布は単調なものとなり それらを食草・植樹とする昆虫相にまで影響は拡大し いわゆる生物多様性は失われていきます また環境的要因から シカの侵入しやすい場所とそうでない場所 採食しやすい植物も限定され 食害が集中する傾向も見られ 八ヶ岳では 高山帯周辺域の高山植物群および山麓の樹木への被害が多いようです


八ヶ岳シカ①
                             (rinya.maff.go.jp)



・高山植物への影響
当然ですが 植物たちが葉を伸ばし花を咲かせる夏期に被害は集中します 冬期は積雪もあり容易にエサにたどり着けない過酷な高山帯の環境が シカたちの行く手を阻むのも大きな要因です 生き物である以上 食料が豊富にあり生活する上でより居心地の良い環境を選ぶのは当然の本能です
近年の夏場の猛暑は我々人間ばかりでなく動物たちにとっても過酷なはず また森林内で食料を探すより 森林限界を超えたお花畑の方が はるかにその調達は楽だと言えます 植物の山八ヶ岳の環境がニホンジカを招いたのかもしれません
実際 神奈川県の丹沢では山麓の林内に広がるスズタケという林床植物が シカたちによって大きな打撃を受けています しかしこれは丹沢には八ヶ岳のような高山帯が存在しないが故です 「丹沢トレッキング  ~鳥~」にも書きましたが 丹沢の環境は林内で林床植物を食べるしかないものだと言えます
こうした環境の違いから 八ヶ岳では稜線近くの草地・高山植物への被害が大きく 山麓域だけでなく亜高山帯・高山帯でのニホンジカ捕獲が今後の課題として指摘されていますが もし将来的に高山植物が壊滅的被害に至れば 次は林内に豊富に自生するササ類に シカたちの矛先が向くのは必至だと思われます


八ヶ岳シカ④
                             (joyful-tateshina.com)


・樹木への影響
剥皮といって シカたちは樹皮を剥ぎ取って食べることがあります 基本的に草本類が不足する冬期に多く見られる行動ですが 八ヶ岳でもこの被害が広葉樹・針葉樹問わず多いと指摘されています
樹皮を剥かれた樹木は当然立ち枯れとなり 森林環境は悪化します また枯れ木はカミキリムシの格好の発生源となり個体数は増加する カミキリムシが増えると それを捕食するキツツキ類が増えるといった具合に 生態系全体への影響が次第に広がる訳です


八ヶ岳シカ③
                             (japanesealps.net)



ニホンオオカミ絶滅から100年を経過し 温暖化による積雪量減少は オオカミによる捕食や冬場の餓死などのニホンジカの個体数減少を抑制し さらに雪の減った環境はシカたちの行動範囲を広げ そのしわ寄せが やっと自然保護に目覚めた私たちに来ているのです
原因はどうあれ 大事なのは今後なのです 本気になって対策を講じなければ この国の自然環境は大きな変容を避けられないでしょう


八ヶ岳シカ②
                             (mt-templates.com)
 
 
 




白馬トレッキング ~鳥~

白馬村は観光の村であるが故に スキー場等の開発や長野五輪開催に伴う建設工事のために 自然環境にはかなり手を加えられてきましたが まだまだすばらしい環境は残されており 多くの鳥たちとの出逢いの場所としてお勧め出来るフィールドです


白馬三山
        (matome.naver.jp)


姫川渓谷という立地から水辺も多く 標高差のある環境はバラエティー豊かなコース設定が可能です 別荘地の中を歩いてもよし 水辺を散策してもよし 高山帯までライチョウに逢いに行くのもよし または白馬五竜高山植物園・栂池自然園などの園地を訪れるのも 歩きやすさを考えると良い選択だと思います
白馬村は北信地域に位置しますが そういった意味では戸隠周辺とほぼ同じ鳥たちに出逢うことが出来るので 具体的な内容は「戸隠高原トレッキング ~鳥~」をご覧になってください


今回この記事では 主にオオタカとライチョウについて書いていきたいと思います

<猛禽類>
捕食者である猛禽類は アンブレラ種という位置付けから環境指標としての意味合いが強く 各地でその保護に向けた取り組みが行われています 白馬村でも平成6年に「白馬村における希少野生動物の保護に関する条例」通称「オオタカ条例」が可決され 保護監視員を置き猛禽類の生息状況を把握・報告するシステムがつくられました また1998年の長野五輪に際しても 猛禽類保護の観点から会場変更・コース縮小等の環境配慮がなされた経緯があります


白馬五輪
                             (alexandrite222.com)


五輪開催にあたり 白馬村では内山地区がクロスカントリー会場に 飯森東山地区がバイアスロン会場候補地となり 白馬からは離れますが山ノ内町岩菅山は男子ダウンヒル会場候補地に選定されました しかしながら白馬村の両会場周辺には オオタカ・ノスリの営巣林があり また岩菅山にはイヌワシが生息するなどの理由から バイアスロン・ダウンヒル会場は変更され 内山地区クロスカントリー会場ではコース変更等の配慮がなされました 各会場では建設中・大会開催中共にいくつかの環境配慮があり 五輪終了後には 内山地区クロスカントリー会場は冬期のクロスカントリー競技 夏期には陸上・サッカーがメインスタジアムにて行なわれ 飯森東山地区の旧バイアスロン会場候補地には 1996年にミニゴルフ場が開業し その後産廃処理施設も建設されています 当然のことですが人の出入りは増加し 建設中から継続して車両の往来・騒音・振動などの影響は否めず 周辺の森林環境は悪化したと言えます


白馬サッカー
                             (vill.hakuba.nagano.jp)


五輪修了後は この白馬村内山地区・飯森東山地区を対象地とし猛禽類の生息状況調査が実施され 主に望遠鏡等による行動観察が2008年まで継続して行われました その結果は以下の通りです


1) 内山地区クロスカントリー会場周辺の営巣林では1997年以降オオタカの営巣は確認されていない

2) 飯森東山地区旧バイアスロン会場候補地周辺でも1998年以降オオタカの営巣は未確認

*両地点ともに五輪開催までは ほぼ毎年のようにオオタカの営巣が確認されていた ノスリの営巣はその後も確認はされている またハチクマはクロスカントリー会場で一回 周辺地域で二回営巣が観察された


新緑のオオタカ③



オオタカの営巣林の大きさには 比較的ばらつきがあると言われていますが 数haの孤立した林から大規模な森林まで 営巣林として選定される環境は一様ではありません また繁殖期の行動範囲は広く700~1200haにも及びます オオタカたちはこの中で採食行動を行いますが 会場建設や事業による環境改変が 鳥たちの採食域を変えてしまった可能性があると思われる訳です


オオタカ⑨


最近ではオオタカの都会への進出も多く見られていますが 基本的に言ってやはりある程度の規模を有した良好な自然環境こそがオオタカたちの暮らす本来の場所です 人為に限らず影響を及ぼす可能性のある要因が 生き物たちにとってのマイナス要素であることは紛れもない事実だと言えます 自然との共生をうたった長野五輪は 確かに環境への配慮を施したかもしれません ですがそれはあくまでも我々人間の尺度であり 想定は決して完全ではないのです 地震にしても気候変動にしても 私たちの想定範囲内で済むと思うのは大きな間違いだと言えます 人もまたこの星の環境に生かされている命のひとつに過ぎないという事実を忘れてはいけないと思います


つがい



<ライチョウ>

標高2200~2400m以上の高山帯ハイマツ群落で繁殖し 冬期は亜高山帯まで下降することもあります
言わずと知れた氷河期の生き残りで 主に北アルプスなどに生息します
国の天然記念物に指定されており 1980年代に全国で約3000羽と推定されていましたが 2000年代には1700羽ほどにまで減少してしまった(信州大学)と言われており 絶滅危惧ⅠB類として国のレッドリストに記載されています


白馬ライチョウ①
                            (tate-yama.info)


「ライチョウにはガスった時によく出逢える」と言われるように この鳥は好天を好まず 特にハイシーズン日中の高温は苦手なので 全くと言っていいほど活動しません 晴天時に活動しないのにはもう一つ理由があり 猛禽類による空からの狩りを回避するためでもあります 高山帯に暮らすライチョウにとっては本来猛禽類が唯一の天敵であり そのため地上からの襲撃に対する防衛本能は薄く 私たちが近くにいてもあまり逃げようとはしません しかしながら近年は暖冬などの影響等のため 低標高域からの侵入者たちによって 鳥たちの暮らしは危険にさらされている現実があります


白馬ライチョウ③
                             (suntory.co.jp)


1) ライチョウの生活を脅かす要因
・捕食者となり得るキツネ・カラス・ニホンザル等の分布拡大
・従来生息していなかったニホンジカ・イノシシ等の侵入により高山植物が採食のため劣化
・山岳環境の汚染による感染症の原因菌の侵入
・登山客等の増加に伴う錯乱(エサやり・残飯の放置含む)
・気候変動による営巣環境・植生への影響

このうち最近注目されているのがニホンザルです 食料の乏しい高山帯であるが故にライチョウを食料として認識する可能性が出てきています 実際にニホンザルがライチョウを食べたという事例はあり 完全に食料として認識したなら 致命的な被害に至るのではと関係者は懸念しています
先にも述べた通り ライチョウは地上からの襲撃という経験をあまり持ち得ません よって侵入して来たサルたちを外敵として認識するまでのスピードが大きなポイントになります 言い方を換えれば サルがトリをエサとして認識するのが早いか トリがサルを外敵として認識するのが早いかで結果は大きく異なると思われます もし前者の場合なら被害はかなりの規模になるということは想像出来るのではないでしょうか
ニホンザルだけでなく各地で騒がれているシカ・イノシシによる影響も忘れてはなりません 現在日本全国でのイノシシの頭数は約98万頭 シカに至っては実に約305万頭とも言われていて この国の山地帯は過密状態  それ故高山帯にまで進出するものが増えてきている訳です 大型の哺乳類はかなりの植物を摂取しますから 高山植物などの植生は崩壊すると言われていて それによる環境の変化はライチョウの暮らしにも大きな影響があると考えられ また大型哺乳類(人を含む)により持ち込まれる細菌類が 更にライチョウの健康被害をもたらす危険性もあります なおニホンジカの食害については丹沢トレッキング」「尾瀬トレッキング ~蝶~」にも書いていますので参考にしてください
暖冬の影響は植生にも変化をもたらし始めています いわゆる高山植物帯に平地で普通に目にするイネ科植物や高木類が侵入している事実もあり 前述した哺乳類や私たちの衣類等に付着して持ち込まれた種子が原因とも考えられますが 付着物を完全に落とすことは不可能かもしれません ですが自分の残飯なりごみ類など 不要に動物たちを誘引するようなものくらいは最低限確実に持ち帰りたいものです


②白馬ライチョウ
                             (tateyama-shizenhogo-c.raicho-mimamori.net)


かつては中央アルプスにもライチョウは生息していました しかしロープウエイ開通後ほんの数年で絶滅した経緯もあるのです 高山帯という極めて脆弱な環境を維持できるか否かは 全て私たち次第なのです 既に始まっているライチョウたちの暮らす環境への侵入は これ全て人が招いたものだということを決して忘れてはならないのです


白馬スキー場
                             (hakubavalley.jp)







白馬トレッキング ~ギフチョウ~

白馬村から糸魚川へと流下する姫川 両側に山並みが迫り フォッサマグナ沿いに流れるこの川は 急流河川として有名で 北アルプスの雪解け水を集める初夏の水量は多く 平成7年の7.11水害のように大雨の際には周辺地域に災害をもたらす暴れ川です 「姫川」という名は 「どうか穏やかであれ」という人々の願い故につけられたものなのかもしれません

姫川②
        (pref.nagano.lg.jp)


この姫川流域は リュードルフィア属と呼ばれるギフチョウ・ヒメギフチョウ混生地として知られていて 白馬村もまたその一画を占めています なおギフチョウ・ヒメギフチョウの分布については「赤城山トレッキング ~ヒメギフチョウ~」を参考にしてください


白馬ギフ
                            (ギフチョウ geocities.jp)


白馬村を含め姫川流域は いわゆる落葉性広葉樹林が広がり ブナ・ミズナラ・コナラなどを主体とした雑木林が両種の生息場所となっています 白馬村周辺では 岩岳スキー場・北俣及び南俣・八方尾根・神城・深空などで両種が混生していて おおざっぱに言えば 松川・平川間にはギフチョウが多く ヒメギフチョウは その両側に多い傾向が見られます 一般的に言ってヒメギフチョウの発生は4月下旬から ギフチョウは若干遅れて5月に入ってからですが 多雪地帯であるが故に雪が溶けた場所から順次羽化するので 雪の残り具合で変動します 隣の小谷村では 標高が低いために白馬村よりも若干発生時期は早まります
リュードルフィア属の食草はウマノスズクサ科植物で 白馬村ではヒメギフチョウはウスバサイシン ギフチョウはミヤマアオイを食草としていますが ウスバサイシン・ミヤマアオイ共に標高1600m付近にまで自生しているため ギフチョウの場合では6月になっても新鮮な個体と遭遇することが度々あり ほかの産地とは異なり 比較的長い期間にダラダラと成虫の発生が続くのも白馬の特徴と言えます
それに対して小谷村の場合 特に大網部落周辺では両種ともにウスバサイシンを食草としていて 同じウスバサイシンから ギフチョウとヒメギフチョウの卵が同時に発見されることも多く 両種の混生を考えるうえで非常に興味深い点です 小谷村は白馬と違い 標高差からくる発生期のズレは左程なく 4月下旬から5月にかけて集中的に両種の発生が見られますが やはり残雪の関係で多少のズレはあると思われます


白馬ヒメギフ②
                             (ヒメギフチョウ y-asakawa.com)

ギフチョウとヒメギフチョウは近縁種なので 混生地内では両種の交雑も実際に起こっていて 野外に於いて交雑個体が確認されています
両種共に雌は一度しか交尾をせず 雄は交尾の際に雌の腹端に交尾嚢と呼ばれる「フタ」を形成しますが ギフチョウの交尾嚢は黒色であるのに対し ヒメギフチョウのそれは褐色と明らかに色が異なります よって野外で褐色の交尾嚢を着けたギフチョウ雌 あるいは黒色の交尾嚢を着けたヒメギフ雌を見つけた場合 それらは交雑個体と言えることになる訳です
このような交雑個体が存在しているということは その子孫たちが発生してもおかしくないはずですが 実際には そのような発生を裏付ける明確な事例はないようです 私も現地にて「それらしい個体?」は観察していますが確証はありません ただ交雑で生まれた子孫は生存率が低いとされており 特に褐色の交尾嚢を着けたギフチョウ雌の場合 つまりはヒメギフ雄とギフ雌の交雑の場合に顕著で ギフチョウとヒメギフチョウが混生していても やはり種として独立しているという事実は確かなようです

ここまで簡単に白馬村を含む姫川流域のギフチョウ・ヒメギフチョウ混生について書いてきましたが これ程愛好家たちにとって魅力的な場所はないと言えます さらに白馬村では 翅の縁毛がすべて黄色となる「イエローバンド」と呼ばれるギフチョウが高い確率で発生するので 当然ながら人気は上がることになります

白馬イエローバンド
                             (イエローバンド thecla.exblog.jp)

現在 白馬村のギフチョウ・ヒメギフチョウは村指定の天然記念物となり 採集行為は全面的に禁止されていますが 産地の状況はこの30年でかなり悪化してしまったようです 白馬村の主要収入源が観光なので 開発に伴う環境悪化なども重大なマイナス要素ですが 行政側のギフチョウに代表される村の自然環境を大切に保護していこうという意思がその施策から感じられ そのよい例として1998長野冬季五輪が挙げられます

長野五輪に際し 白馬村にはアルペンスキー会場・ノルディックジャンプ台等の施設整備が行われましたが 当時国のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類だったギフチョウ(ヒメギフチョウは準絶滅危惧)生息地保全が 「自然との共生」という基本理念に照らし大きな課題となりました
具体的にはギフチョウの食草であるミヤマアオイの移植が各対象地(混生地ではない)において実施され 1990年ジャンプ台建設予定地から約2000株 アルペンスキーゴールエリア造成地区から約4300株が それぞれ対象地区外の残存林へと移植されました その他コース上部においても同様の対応策がとられたと聞いていますが これは当然の対応です 個人的に感心したのは その後11年間ギフチョウの産卵数等についての調査が継続され 今後に生かせる結果が得られたことにあります
長野オリンピック冬季競技大会組織委員会(NAOC)・白馬村・長野県などの関係団体は 「林内下層植物繁茂により ギフチョウの産卵が妨げられている」との指摘を受け下草の刈り取りを実施 1997年にダウンヒルゴールエリア付近の残留林内(標高800m)に調査地が設定されました 調査地内は画分けされ ①一度刈り取りを行ない その後放置 ②毎年刈り取りを実施 ③何もせず放置の3区画での比較調査が行われました その後2001年に報告書が作成され 以後2008年まで同様の調査が継続されています

その結果をまとめると以下のようになります
1)産卵数は毎年刈り取りを実施した区画で最も多い
2)毎年刈り取りが行われた区画でも 林縁部に近く ミヤマアオイの葉数密度の高い場所ほど多い
3)同時に行われたミヤマアオイの葉数調査では 区画間の大きな差はない

つまり ギフチョウが下層植物に遮られることなく容易に食草までたどり着ける環境で 幼虫期の成長を支えるに十分なミヤマアオイの密度と量の確保された場所を チョウたちは選定しているということなのです

ギフチョウは地表近く30cmくらいの高度で食草に近づきます 生い茂った下草は 母蝶の食草発見のみならずアプローチをも阻む存在なのです かつて雑木林が薪炭林としてエネルギー供給の源だった時代には こうした林内の手入れが定期的に行われ チョウにとって良好な環境が維持され 明るい林内環境は食草であるカンアオイの成長に必要な日射を供給し得るものでした しかし化石燃料への依存が進むにつれ薪炭林は自ずと放置され 環境的変化がチョウたちの衰退に拍車をかけたと言えるでしょう
赤城山や石砂山など 現在各地で行われているギフ・ヒメギフ保護活動は どれも下草刈り等の林内管理の甲斐あって 食草の勢力拡大及び産卵数増加へ向かいつつあります 里山という人の暮らしに隣接する場に生きる生き物にとっては 人為の影響は良い意味でも悪い意味でも大きいということです

今その場所にある命を根絶やしにすることは極めて簡単なことです 開発や乱獲はギフチョウのみならず多くの生き物たちの姿を根絶するに十分な人為でしょう 「自分ひとりくらい大丈夫だろう」ではなく「自分ひとりからはじめる」気持ちを 皆が持つべき時なのだと思えて仕方ありません


白馬ヒメギフ
                             (ヒメギフチョウ usubasiro2.exblog.jp)


さて ギフ・ヒメギフの話が長くなってしまいましたので その他の蝶にも目を向けてみたいと思います
5月のギフチョウシーズンが終わると 一帯には初夏の代名詞ウスバシロチョウが発生します 白馬周辺のウスバシロチョウは 表日本型に近い白い個体が多いようです 少し小型のヒメシロチョウの姿も見られますし 夏になればヤマキチョウたちの姿も目にします
7月に入ると周辺のミズナラ林にはゼフィルスの季節がやって来ます オオミドリシジミ・ウラゴマダラシジミ・ウラキンシジミ・ウラクロシジミ・アカシジミ・ウラナミアカシジミ・ウスイロオナガシジミ・アイノミドリシジミ・エゾミドリシジミ・ジョウザンミドリシジミなどが見られ カシワがあればウラジロミドリシジミとハヤシミドリシジミ ブナからはフジミドリシジミも発生していますが フジミドリシジミの発生は他のゼフィルスよりも若干早くなります また局所的ですがムモンアカシジミも分布しているので 運が良ければ出逢えると思います


白馬オオミドリ
                             (オオミドリシジミ lycaenidae.exblog.jp)


白馬ウラゴマダラシジミ
                             (ウラゴマダラシジミ n-shuhei.net)


白馬ウラクロ
                             (ウラクロシジミ    ホタルの独り言より)


白馬アイノミドリ
                             (アイノミドリシジミ yurin2.exblog.jp)


白馬ムモンアカ
                             (ムモンアカシジミ tokyo-hotaru.com)


白馬ハヤシミドリ
                             (ハヤシミドリシジミ loggia52.exblog.jp)


その他としては 八方尾根・遠見尾根のゴマシジミ 各地で見られるアサマシジミなども面白いところです ゴマシジミは7月下旬から八月 アサマシジミは標高により低地型から高地型(シロウマ型)への移行も見られます


白馬ゴマ
                             (ゴマシジミ geocities.co.jp)


白馬アサマシジミ
                             (アサマシジミ spindasis.sakura.ne.jp)


周辺地域には各種ヒョウモン類・タテハ類が多く ヒョウモンチョウ・コヒョウモンモドキ・オオウラギンスジヒョウモン・クモガタヒョウモンなどが見られます  ダケカンバが多いことからキベリタテハも健在です


白馬ヒョウモンチョウ
                             (ヒョウモンチョウ sdknz610.exblog.jp)


白馬オオウラギンスジ
                             (オオウラギンスジヒョウモン memobird3.exblog.jp)


白馬コヒョウモンモドキ
                             (コヒョウモンモドキ ganref.jp)


白馬キベリ
                             (キベリタテハ yoda1.exblog.jp)



最後に高山蝶についてです
白馬周辺で見られる高山蝶の種類は少なく タカネヒカゲ・クモマベニヒカゲ・ベニヒカゲ・クモマツマキチョウに限られます 立山連峰に多産するミヤマモンキチョウは五竜岳以南でないと分布しませんし コヒオドシについても同様です オオイチモンジ・ミヤマシロチョウ・タカネキマダラセセリもこの一帯に生息していません

①クモマツマキチョウ

白馬クモツキ
                             (クモマツマキチョウ dandara2.exblog.jp)


白馬では小雪渓周辺・南俣上部などで かつては容易に姿を見ることが出来ましたが 近年はかなり減少してしまいました 高山蝶と呼ばれますが低標高域にも産地はあり 姫川流域では標高400m程度の産地も確認されていますが やはり「逢えれば幸運」といった現状は否めません
基本的には5月から7月にかけて成虫が発生しますが ギフチョウ同様雪の消えた場所から順次羽化するので その年の積雪量と雪解けの具合で 発生期にはかなりのばらつきがあります
食草はミヤマハタザオ・ミヤマタネツケバナなど 沢沿いの荒れ地・岩場に自生しています
各地でクモマツマキチョウが減少した主な原因は やはりマニア・業者などによる乱獲です 採集を目的とする人たちは成虫のみならず卵も持ち帰ってしまいますが これは自宅飼育によってより綺麗な個体を手にするのが目的です 飼育のためには食草も欠かせませんから 当然ミヤマハタザオやイワハタザオといった食草も いくら多年草とはいっても減少してしまいます そして標本数個で満足してくれるならまだいいのですが 同じコレクションを多く並べることを良しとするため 採集は際限なく続くことになる訳です
戸隠高原トレッキング ~ヒメギフチョウ~」に書いたように 鬼無里村ではこのチョウを天然記念物指定し保護しているため 比較的安定した発生数を保っています

②タカネヒカゲ

白馬タカネヒカゲ②
                             (タカネヒカゲ thecla.exblog.jp)


稜線部に暮らす氷河期の生き残りです そう言ってしまうと数は少ないかと思われがちですが 極めて高標高域に分布するため 天候次第では全く逢えないことも多く かつアクエス的要因などにより 安定した生息状況にあると言えます
タカネヒカゲが活動するのは晴天の日 それも陽射しが高くなる日中の限られた間のみです 雄は各所で占有行動をとり活発に飛翔し 雌雄ともに吸蜜のためによく訪花もします
食草はヒメスゲ・イワスゲなどカヤツリグサ科植物 成虫までに足掛け3年かかります

③クモマベニヒカゲ・ベニヒカゲ

白馬ムモベニ
                             (クモマベニヒカゲ yurin2.exblog.jp)


白馬ベニヒカゲ
                             (ベニヒカゲ shinshu.fm)


標高1600m以上に分布します 発生は7~8月でクモマベニヒカゲの方がひと回り大型です
クモマベニヒカゲの食草はイワスゲ等のカヤツリグサ科植物 3年かけて成虫になります
ベニヒカゲはカヤツリグサ科・イネ科植物を食草とし クモマベニヒカゲより食草の幅が広く その辺が分布の違いにも表れています
この2種は近縁でよく似ていますが 後翅裏面にはっきりとした違いが見られます


以上 白馬村のチョウたちについて書いてきましたが やはり開発による森林の減少はかなり進んでいます スキー場開発はかなりの規模で木々を伐採しますから 特にブナの少なさを痛感してしまいます
人が生きていくために自然に手を加えることは ある意味仕方ないことだと言えますが 一方的に人間本位にならずに計画が各地で進んでいくことを 常日頃 心から望んでいます


白馬ギフ②
        (tefuya.cocolog-nifty.com)











白馬トレッキング

かつて私が唯一移住を考えた場所 3000m級の後立山連峰が間近に迫る迫力の景観と恵まれた自然環境 きれいな水を生むパウダースノー その全てに引かれたのが理由でした
残念ながら移住は叶いませんでしたが 今でもなお恋焦がれる憧れのフィールドです
どの季節もすばらしいですが 個人的に好きなのは5月の新緑の季節 あの雄大な景色は忘れることが出来ません

1白馬村
                             (atpress.ne.jp)


白馬村は 日本海に流下する姫川源流の佐野坂から白馬大池駅までの大きな村 西に迫り来る北アルプスと東方山地に挟まれ 糸魚川へ向かい流れる姫川に平川・松川が流れ込む場所です 1998年に長野冬季五輪が開催された地でスキー場が多く 特に八方尾根周辺はかなり開発された感があります
冬季五輪開催後は 雪質の良さから海外からの観光客も増え また夏期は北アルプス登山の拠点として 多くの方が訪れる観光の村と言えます


白馬村
                             (oois4649ex.exblog.jp)

1998長野冬季五輪の基本理念は「自然との共存」でしたが それ故準備段階では様々な問題も多く 随分と議論が交わされた経緯がありました アルペンスキーダウンヒルのスタート地点問題などは有名な話ですが そもそもこれはコースの難易度不足からスタート地点を引き上げることにより 国立公園の第一級園地をコースが横切るという問題でした 最終的にはこの個所はジャンプで飛び越えるコース設定とするなどして大会を迎えるに至った訳ですが これには国立公園の管理的要因が大きく関与しているのです
本来 国立公園など貴重な自然環境を管理保護するためには 公園園地とそれ以外の一般地の間に「移行区間」を設ける必要があるとされています これは園地内への不用意な踏み込み等を回避して貴重な植物などへの被害を最小限に抑えるという意図に因るものですが 現状は境界線上に点々と看板表示があるのみで「移行区間」は存在していません 八方尾根においても公園外に設置されたリフトで上がってきたスキーヤーが国立公園の内外を問わず 地形のままに黒菱平へと滑走しているという現実もあります この周辺は蛇紋岩地質といって アルカリ性が強いうえ 蛇紋岩は風化すると粘土質となって水分を通しにくく湿地的環境となり植物の生育には不向きで 木々は大きく育たない地質のため低木を交えた草原的環境でしたが 冬期のスキーヤーと夏期のハイカーたちの踏み込みのため すっかり地肌が露出してしまっています
こういった状況は白馬周辺域のみならず各地の国立公園に広くみられる傾向で 管理側の落度も否めませんが 現地を訪れるのが我々個人である以上 訪れる側が現状を正しく認識し その一歩にまでも注意を払う必要があると言えるでしょう 理由はどうあれ一度壊れた環境の回復にはより長い時間を要するということを忘れてはなりません

1)植生
白馬周辺の植生は 山地帯・亜高山帯・高山帯に区分されます

①山地帯(700~1700m)
ブナ・ミズナラ・シナノキなどの落葉性広葉樹林が広がりますが ブナは全体的に少なめです 沢沿いにはヤナギ類・クルミ類・ハンノキ類が見られます
標高1650mを超えると徐々にツガ・オオシラビソ等の針葉樹及びダケカンバへと移行します

②亜高山帯(~2600m)
言わずと知れた多雪地帯で 一般的には針葉樹林帯(ツガ・シラビソ・オオシラビソ)になる標高域ですが 白馬周辺では針葉樹は乏しく 代わりにダケカンバ林が広がります 林床には多雪地帯の特徴であるチシマザサが繁茂します
八方尾根の八方池(2100m)~黒菱平(1680m)にかけても含まれますが 先に述べたようにこの周辺は高木が育ち難いために小型草本・湿性植物の侵入が顕著で また高山植物の降下も見られます さらに地質・地形的要因による固有種も多く ハッポウアザミ・ハッポウワレモコウ・ハッポウウスユキソウ・ハッポウタカネセンブリなどの生育地としても重要なエリアといえます


白馬ハッポウワレモコウ
                            (ハッポウワレモコウ wondersquare.net)


白馬ハッポウウスウキソウ
                           (ハッポウウスユキソウ sanyasou.com)


白馬ハッポウタカネセンブリ
                           (ハッポウタカネセンブリ hakubaescal.com)


③高山帯(~3000m)
森林限界(2300~2600m)を超えるとハイマツ群落・高山植物群のエリアです
北アルプス稜線部は 強い季節風の影響であまり積雪量はなく そういった場所ではハイマツ群落は発達しません 北斜面の残雪の多い場所は雪田植生となることが多いですが 全体としては風衝草原になります
以下 代表的な高山植物を紹介します

<湿原>
チングルマ・ウラジロナナカマド・ミヤマナラ・ミズバショウ・ニッコウキスゲ・ミヤマアオイ・モウセンゴケ・イワイチョウ・ワダスゲ etc


白馬チングルマ
                             (チングルマ sanyasou.com)


白馬ニッコウキスゲ
                            (ニッコウキスゲ yaplog.jp)



<草原>
5~6月
ユキワリソウ・タテヤマリンドウ・ムシトリスミレ・イワカガミ・クモマスミレ・ウメハタザオ etc


白馬ユキワリソウ
                            (ユキワリソウ lohas21.sakura.ne.jp)


白馬タテヤマリンドウ
                             (タテヤマリンドウ npaalp.com)


白馬クモマスミレ
                             (クモマスミレ wondersquare.net)


7月
キンコウカ・チングルマ・イワシモツケ ・コバイケイソウ etc


白馬キンコウカ
                             (キンコウカ photozou.jp)


白馬イワシモツケ
                             (イワシモツケ neko-net.com)


白馬コバイケイソウ
                             (コバイケイソウ chuo-alps.com)


8~9月
タカネマツムシソウ・ハッポウワレモコウ・カライトソウ・オヤマリンドウ・ミヤマアキノキリンソウ クモマキンポウゲ・タカネキンポウゲ etc


白馬タカネマツムシソウ
                             (タカネマツムシソウ yamasuki.at.webry.info)


白馬オヤマリンドウ
                             (オヤマリンドウ sanyasou.com)


白馬ミヤマアキノキリンソウ
                             (ミヤマアキノキリンソウ geocities.jp)


*クモマキンポウゲ・タカネキンポウゲは白馬連峰にのみ分布する希少種


白馬タカネキンポウゲ
                             (タカネキンポウゲ wildplants.sakura.ne.jp)



白馬岳周辺は高山植物が豊富なエリア その種類数800とも言われ今でも新種が発見されることが時々あるほどです
また白馬五竜高山植物園・栂池自然園といった手軽に高山植物を観察できる場所もあり ちょっと訪ねてみるのにいいかもしれません

白馬五竜高山植物園
標高1515mの現地までゴンドラで8分 シーズンは6月から紅葉の10月まで 約300種類の花々が待っています

栂池自然園
所在は隣の小谷村になります 日本有数の高層湿原が有名です 一周5.5kmはのんびり歩いても半日あれば十分でしょう


2)ニホンジカ対策
丹沢トレッキング」「尾瀬トレッキング 〜蝶〜」「戸隠高原トレッキング 〜ヒメギフチョウ〜」など過去の記事でも何度か書いてきましたが 白馬を含む北アルプスでもニホンジカは今後要注意の対象となっています
現在 同地域ではシカによる食害と生態系への影響はほぼないと言えますが 乗鞍岳高山帯・亜高山帯でのニホンジカ・イノシシの目撃例 そして後立山連峰稜線部でのニホンジカ目撃例を考えると 今後の状況を注視する必要があると言え 環境省・林野庁・新潟県・長野県・岐阜県・富山県では予防的措置の観点から ニホンジカの個体数調査等の生態系保全に向けた取り組みが開始されています



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中部山岳国立公園内の高山帯(2500m~)・亜高山帯(1500m~)は 氷河期に形成された特有の脆弱な生態系であり いわゆる下界に存在する細菌・ウイルスなどのいない無菌室的環境です 当然シカ本来の生息域には当たらず その侵入は壊滅的結果をもたらすと思われます
シカのみならず私たちもまた 人の生活圏から余計なものを決して持ち込まない配慮を忘れてはならないでしょう よく言われるようにペット同伴の登山などもっての外 大型哺乳類の糞尿は多くの雑菌類を含み非常に危険だと言えます
そして これは高山帯に限ったことではありませんが 人間はあくまで訪問者です そこに暮らす多くの命の中には私たちに危害を及ぼす可能性のあるもの 具体的に言えばツキノワグマですが そういった動物と遭遇するかもしれない危険性に対する備えをする必要があります

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屋久島トレッキング ~鳥~

黒潮暖流の中に浮かぶ孤島  1900mを超える高標高による気候区分の多様さと  それに裏付けされた植物の豊富さ  そして深い原生林  多くの生き物を支えるに十分な環境の屋久島ですが  ことバードウォッチングとなると  我々は非常に手を焼きます
それは  やはりこの島特有の険しい地形と深く豊かな森が  鳥たちとの出逢いを阻むからです  留鳥として島に暮らす鳥も決して少なくなく  固有の亜種や希少種など魅力十分にもかかわらず  「声は聞こえても姿なし」という現状はさすがに厳しいと言えます
しかし屋久島は大海原に浮かぶ立地から渡り鳥たちの中継地として重要な位置にあり  春と秋の渡りの季節には多くの鳥たちが立ち寄り  羽根を休める場所として知られていて  その数は56科233種にもなるのです
島の南東モッチョム岳の上昇気流に乗り南へと旅立つサシバたちや  群れとなってやって来るヤツガシラなどは有名な話ですが  その他にも思いがけない種類との出逢いの可能性が高いことは  屋久島の大きな魅力でもあります
周辺の島々にはミサゴ・アマツバメ・ベニアジサシ・エリグロアジサシなどが繁殖しているので  そういった鳥との出逢いも期待出来ますし  環境の良さからハチクマ・トビ・ハヤブサ・チョウゲンボウ・オオコノハズク等も健在です

今回は希少種・屋久島亜種のほか  季節毎に見られるかもしれない種類についてお話します

1)希少種
日本周辺の島々に生息する我が国特産種が2種類  屋久島でも留鳥として記録されています
まずはアカヒゲです

アカヒゲ
        (s.webry.info)


コマドリの近縁種で  屋久島のほか男女群島・種子島・奄美大島・徳之島などに分布します
動物食なので照葉樹林の林床部が生活域です

つぎにアカコッコですが  この鳥はツグミの仲間で「島の特産ツグミ」などと言われています


アカコッコ
                             (nine-swans.com)

アカヒゲ同様屋久島周辺の島々に分布するほか伊豆諸島にも生息しています

双方共に日本特産種で限られた環境のみで見られる鳥であり  また数も少なく世界的にみても学術上貴重な種類だと言えます
残念ながら屋久島では  古い記録はありますが  現在ではほぼ絶滅状態です

最後にカラスバトです


カラスバト
                              (okinawa-kaeru.net)

伊豆諸島・西日本の島嶼に分布しますが数が少なく  国の天然記念物に指定されています
牛のような鳴き声が特徴的です

2)屋久島亜種
本土で見られるものの亜種が数種類  留鳥として生息しています

①タネコマドリ

タネコマドリ
                             (ganref.jp)

コマドリ島嶼亜種  照葉樹林帯の谷筋や沢沿いなどに暮らしています  絶滅危惧II類

②シマメジロ

シマメジロ
                              (rinya.maff.go.jp)

メジロ島嶼亜種  本土で見られるメジロより声がよいため密猟と違法飼育が絶えず  現在では絶滅が危惧されています

③タネヤマガラ

タネヤマガラ
                              (www4.kcn.ne.jp)

屋久島固有亜種  ヤマガラは全8亜種に分類されます  一般的には南方の個体ほど体色が暗くなると言われています

④リュウキュウキビタキ

リュウキュウキビタキ
                             (photozou.jp)

キビタキ島嶼亜種  先島諸島に分布します  照葉樹林帯の深い森に暮らすので  なかなかお目にかかれないでしょう

⑤ヤクシマカケス


カケス①


カケス島嶼亜種  特徴的な声だけはよく聞くことが出来ます

3)留鳥
ヒクイナ・サンコウチョウ・ミサゴ・トビ・クロサギ・イソヒヨドリ・アオゲラ・コゲラ・ミソサザイ・カワガラス・カワラヒワ・ウグイス・ヤマシギ・キジ・アカショウビン・キセキレイ・サンショウクイ・ヤブサメ・セッカ etc


ヒクイナ
                          (ヒクイナ zukan.com)


ミサゴ
                          (ミサゴ ktkto108.blog.fc2.com)


セッカ
                          (セッカ degibird.com)


4)夏鳥
ホトトギス・キビタキ・アオバズク・アマツバメ・ベニアジサシ・エリグロアジサシ etc


アマツバメ
                          (アマツバメ kaze-travel.co.jp)


ベニアジサシ
                           (ベニアジサシ birds.mints.ne.jp)


5)冬鳥
ノスリ・オオタカ・アトリ・ジョウビタキ・コチョウゲンボウ・ルリビタキ・チョウゲンボウ・ウズラ・ウミウ・コガモ・イカル・オカヨシガモ・ハマシギ・クロジ・アオジ・オオハクチョウ(?)・メダイチドリ・ビンズイ・ムネアカタヒバリ・タヒバリ・レンジャク etc


ノスリ⑧
                          (ノスリ)


チョウゲンボウ③-1
             (チョウゲンボウ)


新緑のオオタカ⑥
                          (オオタカ)


るりお
                          (ルリビタキ)


ビンズイ
                          (ビンズイ degibird.com)


ムネアカタヒバリ
                          (ムネアカタヒバリ love-birds.net)


アトリ②
                           (アトリ)


ヒレンジャク
                          (レンジャク)


6)旅鳥
エゾビタキ・ミソゴイ・メダイチドリ・ムナグロ・キョウジョシギ・ダイゼン・トウネン・ウズラシギ・エリマキシギ・ツルシギ・アカアシシギ etc


ムナグロ
                          (ムナグロ suntory.co.jp)


ダイゼン
                          (ダイゼン tajimamori.com)


7)迷鳥
マナヅル・ナベコウ・コグンカンドリ etc

ナベコウ
                          (ナベコウ aya-go.com)


コグンカンドリ
                          (コグンカンドリ s.webry.info)


8)春の渡り
カツオドリ・アカガシラサギ・アマサギ・カワアイサ・アマツバメ・ツバメ・ヤツガシラ・コサメビタキ・ホシムクドリ・ギンムクドリ・ハシグロハラアジサシ etc


カツオドリ
                          (カツオドリ zukan.com)



アマツバメ
                          (アマツバメ kaze-travel.co.jp)


ヤツガシラ
                          (ヤツガシラ tajima.or.jp)


9)秋の渡り
サシバ・キアシシギ・セイタカシギ・シマアカモズ・ノゴマ・ムギマキ・オオルリ・マヒワ etc


ムギマキ
                          (ムギマキ nine-swans.com)



マヒワ
                          (マヒワ pref.kagawa.lg.jp)


ノゴマ
                          (ノゴマ yachou.org)


サシバ
                          (サシバ pepy.jp)



確かに逢えないかもしれない でも逢えるかもしれない
思いがけない想定外の鳥に出逢えるチャンスが数多くある! それが屋久島の魅力だと思います




TripAdvisor (トリップアドバイザー)

屋久島トレッキング 〜蝶〜

屋久島トレッキング」で書いたように1900種を超える多様な植物を育み気候的変化の大きい屋久島では  日本各地で見られる蝶たちが分布していますが  いわゆる普通種がほとんどで希少種や山地性の蝶はほとんど見られません  これは「屋久島トレッキング」で述べたようにブナ・トウヒ群落に代表される落葉性広葉樹林の欠落によるもので  山麓の照葉樹林から屋久杉などの針葉樹林へ移行する屋久島の植生が大きく関係しているのです  日本産蝶類には落葉性広葉樹林に暮らし  そこに自生する植物を食草・食樹としている種類が多く  そういった蝶たちは屋久島には分布しません  ですが南西諸島の北端に位置するこの島では南方系の蝶たちが豊富で  私たちの目を楽しませてくれます
その多くは本来屋久島に分布しない種類で  台風などの上昇気流に巻き上げられそのまま運ばれて来て  その後島内で発生をするもので迷蝶と呼ばれます  こういった蝶たちは屋久島より更に南の熱帯・亜熱帯を分布域とする蝶なので越冬という習性を持たず  発生地では通年活動していますが  屋久島では冬場の低温のため死滅してしまうのです  そしてまた次のシーズンに運ばれて来るといったサイクルになります
今回はそうした南の蝶たち中心に話を進めていきます

ツマベニチョウ

ツマベニチョウ
                              (youtube.com)

ちょうど屋久島や隣の種子島辺りを北限とする大型のシロチョウです
食樹はギョボク  一年を通して発生を繰り返すので  いつでも逢うことが出来ます  ハイビスカスとツマベニチョウの組み合わせは南国のイメージにぴったりです

ウスキシロチョウ

ウスキシロチョウ
                             (ganref.jp)


奄美大島以南を分布域とするシロチョウの仲間  屋久島では一応迷蝶として扱われているようです
食草はハネセンナ・フタホセンナなどのマメ科植物です

カバマダラ

カバマダラ
                             (chigaku.ed.gifu-u.ac.jp)


奄美大島以南に分布するマダラチョウの一種で屋久島では迷蝶です
ガガイモ科のトウワタなどを食草としますが  ガガイモの仲間はアルカロイドという毒素を持ち  マダラチョウの幼虫はアルカロイドを体内に蓄積することで鳥などの捕食から逃れることが出来ます  この成分は成虫になっても残存しているので成虫もまた捕食される危険がなく  そのためマダラチョウはフワフワと優雅に飛ぶのかもしれません  幼虫も蛹も非常に色鮮やかで  あえて目立つ色彩になることで毒を持つことをアピールしていると考えられています
このような蝶を毒蝶と言いますが ガガイモ科植物を食草とするマダラチョウに共通している特徴です

スジグロカバマダラ

スジグロカバマダラ
                             (kansa2.org)

カバマダラによく似ていますが  名前の通り翅脈が黒い点が相違点です
宮古島以南に分布する種類でやはり迷蝶です  ガガイモ科のリュウキュウガシワを食草とする毒蝶です

タテハモドキ

タテハモドキ夏型IMG_9475
                               (shinkai.info)

「モドキ」とありますがれっきとしたタテハチョウの仲間です
クマツヅラ科のイワダレソウを食草として  通年発生する蝶です

アオタテハモドキ

アオタテハモドキ
                              (cairns.nu)

名前の通りタテハモドキを青く輝かせた色合いの蝶で屋久島では迷蝶です
キツネノマゴが食草です

メスアカムラサキ

メスアカムラサキ
                              (lunasan.sakura.ne.jp)

屋久島では迷蝶  スベリヒユを食草とします
この蝶の雌が  毒蝶であるカバマダラに擬態することで捕食から逃れようとしているのは有名な話です  何故雌なのかというと  やはり産卵という大仕事を担っているからでしょう
ツマグロヒョウモンの雌も同様にカバマダラによく似ています

リュウキュウムラサキ

リュウキュウムラサキ
                              (ganref.jp)

南シナ海沿岸域に広く分布する蝶ですが屋久島ではやはり迷蝶です
台湾型・パラオ型・大陸型・フィリピン型など雌の変異が大きいことが特徴  更にそれぞれの型の雑交による模様変化が著しく  愛好家に人気のある蝶です
食草はイノコヅチゼニアオイなど幅が広いのもこの蝶の特徴です

タイワンツバメシジミ

タイワンツバメシジミ
                              (photozou.jp)

本州南西部・四国・九州及び南西諸島に分布しますが各地で減少している種類  環境省レッドリストで本土亜種は絶滅危惧1B  南西諸島亜種は絶滅危惧1A類に指定されています 
本種の幼虫はマメ科のシバハギヒメノハギ等を食し  成虫は年一回8月中旬から下旬に発生します
食草が極めて丈の低い植物で  そういった植物の自生する芝草原の減少が本種衰退の最大要因と考えられています

ヤクシマミドリシジミ

ヤクシマミドリ
                               (yakushima-ikimono.com)

西日本中心に分布し照葉樹林のカシ類を食樹とするキリシマミドリシジミの屋久島亜種  孤島という環境下で分化したこの島固有の蝶です
アカガシ・ウラジロガシを食樹として島内に広がる照葉樹林に暮らす森林性の蝶で  成虫の発生時期は78月になります
「屋久島トレッキング」で書いたように島内には照葉樹林が健在で本種の生息環境として申し分ありませんが  ヤクシマミドリシジミはカシ類の樹冠を主な生活圏とし  また急峻な地形と深い森そして多雨といった環境から  観察はなかなか困難を極める  いわゆる最難関種です

ルリウラナミシジミ

ルリウラナミシジミ
                               (yatyou1116.blog.fc2.com)

宮古島以南に分布し屋久島では迷蝶とされています
食草はウラナミシジミ属の多くがそうであるようにマメ科植物  ルリ色の輝きが美しい蝶です

アマミウラナミシジミ

アマミウラナミシジミ
                               (photozou.jp)

本来は奄美大島以南を分布域としますが  最近は温暖化の影響で九州南部ても定着したのでは?と言われています
マメ科植物を食草とするウラナミシジミ属にあって  本種はヤブコウジ科植物を食樹としています

サツマシジミ

サツマシジミ
          (geocities.jp)

三重県以南の本州・四国・九州に分布し冬以外の季節にはよく見られる蝶です
スイカズラ科・バラ科・ハイノキ科植物と食草の幅は広いのですが  季節によって幼虫が食する植物の種類が異なるという特徴があります

クロマダラソテツシジミ

クロマダラソテツシジミ
          (yoshmotm.ti-da.net)

東南アジア方面に広く分布する種類ですが  1992年に沖縄で発見され  その後分布を拡大している蝶です
名前の通りソテツを食樹とし  近年関東圏でも発生が確認されています

ヤクシマルリシジミ

ヤクシマルリ
          (photozou.jp)

紀伊半島以南の地域で冬以外の季節に見られます
食樹はバラ科のノイバラ・テリハノイバラなどです

リュウキュウヒメジヤノメ

リュウキュウウラジャノメ
                              (yoda1.exblog.jp)

ヒメジャノメによく似た日本固有種です
食草はススキ・チガヤなどイネ科植物  成虫の発生時期は311月ですが  八重山では通年発生しています

クロセセリ

クロセセリ
                              (in-nature.ruriboshi.net)

本来は四国・九州以南に分布するセセリチョウです
イネ科植物を食草とするセセリチョウ科にあって  本種の幼虫はショウガ科の植物を食します
近年では西日本に広く安定して分布するほどに勢力を拡大しています


四季のはっきりした日本では  蝶は夏の生き物といったイメージがあるかもしれませんが  実際には春にだけ発生するもの・秋になって個体数が増えるもの・条件次第では冬でも逢えるもの等そな生活は様々です
屋久島のような南国ともなると一年を通して蝶が舞っているという環境になりますから  季節を問わず同島を訪れた際には  生き物たちの暮らしに目を向けていただきたいと思います




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