2020年08月15日

工藤吉生歌集をもうちょい楽しむための二万字【評と初出】

■更新 8/15 「発売後の反響」に https://yurioil.seesaa.net/article/476845550.html へのリンクを追加



工藤吉生 第一歌集『世界で一番すばらしい俺』(短歌研究社)をもうちょい楽しむための二万字です(正確には二万一千字以上あります)。



『世界で一番すばらしい俺』は本屋さんで販売されています。販売されていない本屋さんもあることでしょう。
ネットではこちらから買えます。1500円+税。

短歌研究社
https://t.co/umdY4Nvspv

Amazon
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この記事の第一部ではこの歌集の収録歌に対して過去にいただいた評をまとめています。主に紙媒体のものをまとめました。ネットでの評は、まとまった量があるものはリンクを貼ります。ツイッターは除外しました。

第二部はこまかい初出一覧になっております。
第三部は発売後の反響をまとめました。これから増えていくものと思われます。
第四部はその他。



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第一部 連作評や一首評

歌集の収録歌について、これまでにいただいた評をまとめます。

ただし!
短歌の部分は全て【○p○首目】の形になっています。
歌集『世界で一番すばらしい俺』をご参照ください。
歌集がないと意味わからんようにしてありますが、評だけを見て作品を想像するのが好きな方はそのようにしてください。



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「校舎・飛び降り」50首

(『短歌研究』で発表したときのタイトルは「ヘ音記号みたいに」)

◇連作評

桑原正紀さん
〈次席となった「ヘ音記号みたいに」は、高校生の主人公が失恋・自殺未遂をして、この世に生きる意味を見失ってしまうというストーリーで展開される。作者が高校生にしては大人びた表現で、構成も巧みであり、ドラマチックな素材をうまくこなしている。〉

田中綾さん
〈次席「ヘ音記号みたいに」は、作中主体が男子高校生という設定。音楽部の女子に恋心を打ち明け、拒否され、校舎から飛び降りを試み、そして──という物語が、緊密に配列されている。ストーリーを第一とするあまり、事実列挙のみの説明的な歌もあったが、それをしのぐほどの物語構築の力に着目した。若さゆえの自意識との葛藤など、岸上大作の失恋詠を思わせる歌もあり、過去の秀作の鑑賞もおろそかにしない作り手と感じた。〉

時田則雄さん
〈高校の音楽部に所属する男子生徒の恋の歌を軸に詠い上げた一連。〈失恋〉、〈自殺未遂〉……。それらをみずみずしい感性でドラマチックに組み立てている。〉

※ここまで『短歌研究』2018年8月号「第8回 中城ふみ子賞」。



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「うしろまえ」20首

◇連作評

加藤治郎さん
〈相当な歌だと思うんです。【29p 2首目】こういった抽象的な歌はふつう失敗するんですけど「おそろしい形相をした歳月」って迫ってくるのが不思議な感じです。冒頭の【26p 1首目】から最後の【32p 3首目】 まで、一連を貫くこの悪夢のような感覚、なかなか迫ってきて読み応えのある一連でした。〉

岡井隆さん
〈相当な人だね、この人もね。こういうのが作れるっていうのも、羨ましいっていえば羨ましい。最初海から始まって、最後も海で終わるとかね、結構いろいろ考えてやっておられる。騙されちゃいけないよっていう感じもしないではないんだけど。読んでて何しろ楽しいっていうかな。面白かった、私は。〉

田中槐さん
〈【29p 3首目】この歌、凄いなと思う。意味がないと言われればなんの意味もないんだけど。〉

黒瀬珂瀾さん
〈【26p 2首目】にはすごく共感した。これを二首目に置ける思い切りのよさ。そこにこの人の詩精神の基礎があるのかなあ。【27p 2首目】この含羞と、自己紹介の時にも自己卑下のギャグを入れないと、なんとなく自分が落ち着かないという感覚。「おそろしい形相をした歳月が」もいい。【31p 1首目】は、ガチャなのか競馬なのかわかりませんが、ドブに捨てるようなものだ、と言いながら、そうしなければいられないんですよね。【32p 2首目】も世界の起点がある部屋、自分のいる地点イコール世界の中心、という感性がある。これで二十首まとめたのは凄い力技だなあと。読み応えがありました。〉

※ここまで『未来』2018年1月号



◇一首評

【32p 1首目】
▽穂村弘さん
〈「夜の電車の平凡の床」に臨場感が宿った。〉
「日本経済新聞」2016年2月21日「歌壇」






「校舎・飛び降り」~「うしろまえ」

松村正直さん
〈自己卑下の強さが基本的にはあまり好きじゃないんですけど、なぜ採ったかというと、最後に「校舎・飛び降り」という連作があって、結構沁みたんだすね。高校のときに同じ音楽部で好きな女の子ができて、その子に告白したんだけど、全然だめで、自分が情けなくなって、校舎から飛び降りて、という一連。そのことが作者にとって大きなトラウマになっていて、それがその後の人生に深い影を落としているということをかなり正面からがんばって詠んだな、と。歌としてうまいとかではなくて、胸を打たれるところがあって、それで5点入れた感じですね。〉
〈【27p 1首目】という歌が前半にあって、これが校舎飛び降りのことを受けてるんだと思うんですけど、作者はいま三十七歳で、十七歳のときの大きな出来事がその後の二十年間、影を落とし続けるということなんだなぁ、という・・歌としてどうこうより、そこに重みを感じて、こういうことを歌えるのも短歌のひとつの力だと思うし、「校舎・飛び降り」という連作を書いたことで、作者自身、区切りというか、それで何かが解決するわけじゃないんだけど、歌に詠めたということはすごいことなんじゃないかと、ちょっと思いました。〉
『現代短歌』2020年1月号「第七回 現代短歌社賞」



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「眠り男」15首。

◇一首評

【35p 3首目】
▽平出奔さん
https://hiraide-hon.tumblr.com/post/625438449402576896/20200803
Tumblr「機内モード」




【37p 3首目】
▽吉川宏志さん
〈「小さな」の繰り返しが印象的で、純真なまなざしで車椅子に乗った子を見つめている作者の姿が浮かんでくる。「かわいそう」と思うのではなく、小さな子の存在をそのまま受け止めている感じである。結句が「ゆっくり」で終わっているのも良く、やわらかな余情が伝わってくる。〉
『角川短歌』2012年12月号「角川短歌ライブラリ刊行記念 わたしの一首大賞」。



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「仙台に雪が降る」 30首

◇評

栗木京子さん
〈ゆるいみじめさをかかえながら、作者は仙台の冬を生きている。【46p 2首目】は三年前の東日本大震災の記憶であろう。景品の皿の無傷な白さが哀しみを際立たせ、おどけたような語調にかえって鬱屈の深さが感じられる。【42p 2首目】も、さらりと詠まれているが「ウサギとサンタ」が鋭い。軽みでコーティングされた心の叫びは予想以上に強い。〉

加藤治郎さん
〈仙台というポジションを明確に打ち出したことが新鮮であり作品の力になっている。震災が意想外の歌われ方をしている点にも注目した。【42p 1首目】とスローガンが拍に分解されていることが痛烈である。【49p 1首目】は最後の歌だが、ばらばらになった人々が空の青さを喜ぶ気持ちに束ねられてゆく。この希望が心に沁みる。〉


【48p 1首目】
▽加藤治郎さん
〈津波で流された人々を想像しました。流された人々がもう海底にいなくなった、でも、「そんな気がしてきただけさ」と言って、実はまだ流された人々の、霊魂とでも言うものがあるんだと歌っている。〉


【40p 1首目】
▽栗木京子さん
〈やや脱力のユーモアをまぶしながら詠んでいますけれども、実際にそこにずっと住んで暮らしていく人にとっては全身で雪風を受けながら歩いていくことは、がっくりするような苦しさがあるんだろうと思います。〉


【40p 2首目】
▽栗木京子さん
〈生活者としては雪をどけないと生きていけない。その点では、営業としてあやしげなことをやっていても真っ当なんだと。そこに住んでいないとわからないものだと思いました。〉


【44p 3首目】
▽栗木京子さん
〈普通に読めばパチンコの歌ですけれども、「特にあっさり消えたものへの」あたりに、震災、津波の犠牲者に対する思い、悔しさがあると思ったんです。〉


【41p 2首目】
▽穂村弘さん
〈好きだなあ、こういうこと、よく感じるから。何で僕の横にはいつも人が来ないんだろうとか。〉

※ここまで『短歌研究』2014年9月号「短歌研究新人賞」選考座談会。



◇一首評

【42p 2首目】
▽吉田隼人さん
〈平明な表現でシニカルな面白みを追求する作風はあまり好みでなかったのですが、その一貫した態度が社会問題に向かうとき、単純な肯定でも反対でもない微妙なニュアンスをうまく掬いとりうることに瞠目させられました。〉
『現代詩手帖』2015年12月号「極私的年間詞華集四十二首」


【42p 3首目】
▽俵万智さん
〈何かの勧誘の電話でしょうか。「しりぞけて」という動詞によって強い意志が伝わり、うまいなあと思いました。「あるある!」という共感と、くすっと笑えるユーモアが魅力です。〉
『仙台っこ』2017年4.5月号「第10回仙台っこ歌壇 俵万智賞 発表」


【44p 2首目】
▽山田航さん
〈この歌の後に省略されているのは、「僕はこんなことくらいしかできない」だろう。誰にでもできるようなことしかできない自分を情けなく思う気持ちが、すぐ消えてゆく吐息に託される。 〉
『小説 野性時代』2017年6月号「野性歌壇」


【48p 2首目】
▽佐佐木幸綱さん
〈突然、自身の内部のむき出しの本能に向き合った気がしたのでしょう。「恥じる」としか言いようのない感覚。的確な表現力に感心しました。〉
『NHK短歌テキスト』2016年2月号「いのち」

▽佐佐木幸綱さん
〈命っていうのは自分個人のものだというふうに我々は思いがちですけれどもこの作品はそうじゃないんですね。そういうふうに思っていたんだけれども実は何かもっと大きなものに支配されている。あるいはもっと大きなものにつかさどられている。そういう感じがするという事に気付いたというね日常生活の中ではふだんはなかなか気づけない事をきちっと表現されていてとても優れた一首だと思いました。〉
Eテレ「NHK短歌」2016年3月6日放送。テレビからの文字起こし



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「魂の転落」10首

◇一首評

【50p 1首目】
▽藪内亮輔さん
〈四つの雲の激突するすごい戦乱の中で、ぬぼーっと立っている場違いな電信柱に異様なものを感じる。ただそこにぬぼーっと立っている、あることの力。〉
『角川短歌』2018年6月号「歌壇時評」


【51p 2首目】
▽加藤治郎さん
〈自分に心のこもった礼をするつもりはない。相手も期待していないのだと分かっている。空疎な人間関係だ。〉
「毎日新聞」2014年9月29日「毎日歌壇」


【52p 2首目】
▽服部真里子さん
〈あんまり楽しそうなのでつい採ってしまった。 というばかりではない。この歌、私の中でダントツの一位だった。定型に対する言葉の斡旋がとても巧みなのだ。ドアとは一言も書いていないのに、おそらく誰もが「ああ、あのドアを開けるところね」と思い浮かべることができる。「肩で開けるぞ」ではなく、「肩からいくぞ」なのも高度な技。たしかに、例のドアを肩で押し開けるときの気分をよくよく思い返すと、「肩で開ける」より「肩からいく」が近い。「開ける」意識より、「入る」意識が勝るのだ。そして「いく」は「入る」よりも口語寄りの表現で、「分かっちゃったし」の「えへへへー」みたいな感じとよく合っている。 それにしても、ただドアを開けるだけのことで、この主人公はどうしてこんなに楽しそうなのだろう。やっぱり、あんまり楽しそうなのでつい採ってしまったのかもしれない。〉
「poecrival」vol.3


【52p 3首目】
▽穂村弘さん
〈『不吉において抜きん出た』という云い回しの可笑しさと奇妙なリアリティ。〉
「日本経済新聞」2014年5月25日「歌壇」

▽穂村弘さん
〈「不吉において抜きん出た」という云い回しがポイント。可笑しさの中に確かにリアリティがある。「重役」が「何人」かいれば、猪タイプや猿タイプに混ざって一人は死神タイプがいるものだろう。〉
『Maybe!』7号「銀杏を食べて鼻血が出ましたか」



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「黒い歯」10首。

◇連作評

▽やすたけまりさん
〈歯医者の待合室にいる時間と、そこで読んだ伝記漫画の「アインシュタイン」の時間がクロスする。一首だけ取り出して読むとシュールな雰囲気の歌になるのもおもしろかった。
【56p 2首目】〉
『未来』2017年9月号「ニューアトランティスoperaを読む」


▽朝倉冴希さん
https://t.co/MWg3MVrq2X
歌人・朝倉冴希の風花DIARY ~花と短歌のblog~ 【今日の短歌】


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「ピンクの壁」50首

◇一首評

【60p 1首目】
▽東直子さん
〈みんなの顔がそういう顔に見えてしまうという自虐的なところが面白かった。〉


【73p 1首目】
▽東直子さん
〈誰かに光が当たって、オレには光が当たらないことの暗喩としても見える。〉

【62p 1首目】
▽小池光さん
〈今の社会というものと向かいあっている感じがする。〉

※ここまで『角川短歌』2016年11月号「角川短歌賞選考座談会」


【62p 2首目】
▽松村正直さん
〈これなんか、ただごと歌だと思いますけど、落石注意の標識には必ず石は四つで、現実には真っ黒な石ってないと思いますが、標識では石が黒いよ、という発見を詠んでいる歌。〉
『現代短歌』2020年1月号「第七回 現代短歌社賞 」


【61p 1首目】
▽加藤治郎さん
〈スタンドの応援席だ。テレビでも見慣れたシーンである。よく見るとメガホンの奥で口が動いている。確かにそうだと追体験できる。こういう細部の発見が短歌に妙味をもたらすのである。〉
『短歌研究』2016年11月号「うたう★クラブ」


【66p 2首目】
▽松平盟子さん
〈これ不思議な歌です。つまり自分の思いを相手に対して投げかけているわけなんですけども投げかけつつ答えが、なんか、単純に求められているわけじゃないんです。
なぜかというと、「じゃあどうして僕と一緒になったの?」と訊いてみたいんだけれども、、、とくるその、、、の部分が深そうな森。これは相手のこころを読みとれないちょっと不安で、ちょっとまどろっこしく、ちょっとこわくって、答えが容易に出てこないことが最初からわかっているような、そんなふうでありながらでもやっぱり訊いてみたくなるような。
男性の側から女性への問いかけでありつつ同時に、人間てそんなに簡単に答えが出せないことがあるんだよってことを教えてくれるような、そんな恋というものの不可思議さを教えてくれる歌です。〉
YouTubeの動画【第十八回 万葉の里 あなたを想う恋のうた その2  秀逸講評・松平盟子審査員長】 https://t.co/uPM9AyNKWa
から書き起こした。


【68p 3首目】
▽伊藤一彦さん
〈実際の姿よりも美しく映りたいというのが人の一般的な欲望だが、作者は違う。美しかろうとそうでなかろうと、等身大の実像こそが大事、作者はそう言いたいように思える。「走る」の語もいい。〉
『角川短歌』2015年7月号「公募短歌館」


【70p 3首目】
▽穂村弘さん
〈「片方曲げた足」の角度や力の入り方やオーラに、「写真を撮るひと」の命の情報が集約されていたのでしょう。〉
『ダ・ヴィンチ』2013年10月号「短歌ください」


【72p 1首目】
▽馬場あき子さん
〈巨木──、この曲者のような太い幹や、縦横にさし交わし絡まる枝々、大地をわしづかみにしているような根。その地中もまた絡み合っているだろう。巨人のような妖しさを漂わせる老樹への問いかけが人間への問いのようだ。〉
『短歌生活』7号



【74p 2首目】
▽花山多佳子さん
〈この感想がとても懐かしい。どんな家か想像をかきたてられる。「うっかりと」に自分の心のセンチメンタルものぞくところがいい。〉
『塔』2014年9月号「選歌後記」



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「車にはねられました」10首

◇評

特になし。



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「この人を追う」30首

◇評

加藤治郎さん
〈不条理な日常である。底ごもるような思索と行為を通じて現れる人間性は濃厚である。柔軟な文体で暗喩が巧みだ。【80p 2首目】には、この人物の奇妙な性格が滲んでいる。九つを読み通すところにむしろ不信感がある。【84p 1首目】は、日常の片隅のちぐはぐさを捉えた。どうでもよいことだ。それを受容することで我々は何とかやっている。〉

穂村弘さん
〈【80p 2首目】【81p 2首目】【89p 1首目】など、おかしないい方になるが、高度な無力感が表現されている。その根っこにあるのは完成された社会システムに対する違和と諦念と絶望だろう。魂の叫びの持ち時間が2分と限られているのはテレビ番組としての都合。でも、我々の現実は限りなくその世界に近づいている。〉


【85p 1首目】
▽加藤治郎さん
〈これも日常的によくあることをうたっています。ポイントという奇妙なものが現金のように使える。そんなポイントのように、もう我々は無垢な心には戻れない。これも柔軟な文体で修辞として巧い。まず「現金のように」という直喩が来て、「ポイントの」、実に短歌的な「の」です。格助詞の「の」が比喩として機能するわけです。「現金のように使えるポイント」のように、と上句全体が下句にかかってくる。二つの比喩のパターンを巧く使っている。〉
▽米川千嘉子さん
〈「無垢の心に」だけだとすごく安直なんですけれども、カードのポイントなどを含めて細かい目くらましのようなものがあらゆる場面でごしゃごしゃとまつわりついて真の価値や純粋さを消してゆく、そういう時代の雰囲気も感じさせます。〉


【83p 2首目】
▽穂村弘さん
〈すごろくのルールに従って戻ると一回休みと言っていて、これがずっと続くとこの人は永遠に休みとなって、合意したルールのもとで真っ暗になっていく。そこが面白かった。〉


【81p 2首目】
▽米川千嘉子さん
〈女が、しかもてのひらでストップと止めているわけで、よく考えてみると現実的に絶対そんなことはできないわけです。その奇妙さにはっとさせられる。〉
▽穂村弘さん
〈「てのひらで」という初句もユニーク。手がばーんと出ているポスターが浮かびます。そういう目立たない巧さがありますね。〉


【81p 1首目】
▽穂村弘さん
〈「キスをする距離の二人」が、「せずにいてくれていた」という変な日本語がいい。「いちゃいちゃしやがって、けっ」みたいな感じじゃなくて、そこを感謝するというのも意外性がある。〉


【88p 1首目】
▽加藤治郎さん
〈一日の終わりの靴下という、あまりいい感じがしない事物を投げ出して「距離感を」という。「距離感」の「感」が面白いと思ったんです。普通は人間関係などで使われる言葉です。自分の靴下という日常のどうしようもないのがふたつ散らばっていて、ふと鳩時計が鳴く。「鳩」から醸し出されるとぼけたような平和的なものに解消していく。〉

※ここまで『短歌研究』2018年9月号「第61回短歌研究新人賞」



【85p 1首目】
▽本田一弘さん
〈「ポイントカードはお持ちですか」。買い物の際にポイントをため、たまったポイントで買い物をすることができます。そんな状況をシニカルなまなざしで鋭く突いた怪作です。「ポイントの」の「の」がまさにポイント。「~のように」という意味で下の句に係っていきます。買い物の際に現金だけを渡していた「無垢の心」。そこには「もう戻れない」私たちの心の浅ましさ、業の深さが「の」の響きとともに身に染みています。〉
「河北新報」2018年12月19日「うたの泉」



【80p 2首目】
【85p 2首目】
▽佐佐木定綱さん
〈本心はどうかわからないが、「九つ」もある「禁止事項」をすべて受け入れて「歩き出す」。二首目は何が起きても、生きるためにはとりあえずやることはやらねばならないという。不条理を緩やかに受け止める強さの感じられる連作だ。〉
「東京新聞」2018年9月8日「佐佐木定綱の短歌を掴む」



【80p 1首目】
▽松村正直さん
〈風が吹いて景色を映さなくなった水面を深夜のテレビに喩えていて鮮やか。〉
『短歌研究』2018年12月号・短歌研究年鑑「作品展望」



【84p 1首目】
▽大松達知さん
〈新人賞受賞作から。選考委員の栗木京子が言うとおり、「揶揄」「躱し方」「芸人さんのよくできたコント」という指摘は当たっている。しかし、一首一首はこう詠むことによってしか切り取れない現代社会を抉っている。これも質量ともに充実して安価な日本の外食産業(これはチェーン店の牛丼だろう)を「しきたり」一語でうっちゃっているのがいい。〉
『現代短歌』2018年11月号「作品時評」



【85p 2首目】
▽御殿山みなみさん
https://gotenyamaminami.tumblr.com/post/184653004916/190505
「ひざがしら」


▽フェデリ子さん
https://dainanasouko.hatenablog.jp/entry/2018/12/19/190606
ブログ「ワルツは食べ物ではない」 
オレたちがつとめて無為であるために 工藤吉生『この人を追う』を読んで



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「人狼・ぼくは」30首



【100ページ3首目】
▽平出奔さん
https://hiraide-hon.tumblr.com/post/187209676256/20190823
Tumblr「機内モード」






「この人を追う」~「人狼・ぼくは」

▽花山周子さん
2019年1月28日
https://sunagoya.com/tanka/?p=19976
2019年1月30日
https://sunagoya.com/tanka/?p=19986
2019年2月1日
https://sunagoya.com/tanka/?p=19990
砂子屋書房「日々のクオリア」



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「おもらしクン」30首

◇一首評

【102p 1首目】
▽穂村弘さん
〈面白い。「子」、「父」、「牛丼」の時間がぐんぐん巻き戻る感覚が、生々しい命の流れを感じさせます。〉
『ダ・ヴィンチ』2013年10月号「短歌ください」


【104p 1首目】
▽穂村弘さん
〈一読、唱えずにはいられない。「わんたんめんせんもんてん」〉
「日本経済新聞」2016年8月7日「歌壇」

▽穂村弘さん
〈そのまんまじゃないか。でも、面白い。呪文のように口ずさむとさらに楽しくて、誰かに教えたくなる。わんたんめんせんもんてん。〉
『NHKテキスト きょうの料理ビギナーズ』2018年3月号「青汁解凍中」


【104p 2首目】
▽俵万智さん
〈音を使った言葉遊びが楽しい。ポップコーンにも「ぱ」やら「ぷ」やら、色々あるのだ。弾むようなリズムも、内容とぴったり。〉
「読売新聞」2014年10月16日「読売歌壇」


【106p 3首目】
▽穂村弘さん
〈「早く負けよう」の意外性。試合ではなく「授業」ってところがポイントか。下句に臨場感がある。〉
「日本経済新聞」2016年3月20日「歌壇」

▽穂村弘さん
〈「早く負けよう」のきっぱり感が面白い。試合ではなく「授業」がポイントで、たぶん初めから望んでいない戦いなのだろう。「やわらかく踏む畳のみどり」が臨場感を生んでいる。〉
『群像』2019年2月号「現代短歌ノート」


【110p 1首目】
▽中地俊夫さん
〈どんなに傷つけられたことか。これはもう苛めを越えている〉
『角川短歌』2016年9月号「題詠」


【111p 2首目】
▽伊舎堂仁さん
〈新品ではないボールから、その職には就かなかった私、を思う際に、私についた〈土〉かのような書かれ方が苦い。丁寧語で、報告調の〈でした〉なのも。〉
『ねむらない樹』vol.1「新世代がいま届けたい現代短歌100」2018年



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「まばたき」5首

◇評

特になし



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「ぬらっ」40首

◇一首評

【116p 1首目】
▽なみの亜子さん
〈「ヒョウ柄」に元・大阪のおばちゃんとして反応ー。「なに見てんねん!」とか言うてまいそう。まあ「ヒョウ柄」をそんな大阪の定番ファッション寄りに解釈しなくても、「強そうな人」「後ろから見」という直観による掴みが「ヒョウ柄」の人に付与するものを改めて発見させてくれる。動物の柄はその生環境が必然的になしたものだが、人間の環境においてはなかなかに人間をヒかせるディスプレイにもなり得るとか。歌に現れるまなざしの新鮮さ。これ「服」とか言わないで、「~柄の人」とか「オレの柄」とか言ってて、そういう柄の生きもん同士みたいな空気が出てるのも面白い。「チェック」も抜群。〉
『短歌研究』2012年6月号「うたう★クラブ」


【116p 3首目】
▽穂村弘さん
〈「オレ」が自覚している「オレ」像が面白い。「非常時に壊せる壁」がここで出てくるとは。〉
「日本経済新聞」2017年4月22日「歌壇」

▽穂村弘さん
〈実際に試みる前から「オレには無理だオレにはわかる」ときっぱり逃げている面白さ。人生において「壊せる壁を壊す」という「非常時」に出会う可能性はかなり低いと思うけど、それを想定してしまうほどのビビリ方がいい。「非常時」が怖いのではない。自分自身が不安なのだ。世の中には壊れない壁を壊して子どもを助けるヒーローだっているのに。〉
『群像』2020年1月号「現代短歌ノート」


【117p 2首目】
▽竹中優子さん
〈例えば電車の中や喫茶店にいる時、他人の話が耳に入ってきてしまう。それは断片的で、脈絡も不明だ。だからこそ、その言葉の断片が妙に輝いて見えたりもする。この場合は、「品性がない」と言われたのは自分かと思って、どきっとしたという話ですね。こういうこと、あります。他には、私は「性格がでるね~」と誰かが言う時もどきっとします。振り向いていた、とあるから、特に振り向く必要がなかったわけで、この「品性がない」が自分に向けられた言葉ではないことは本人も認識している。他人の話である。なのに振り向いちゃった。それも、「自動的に」「首からグンと」。歌の肝は、この「自動的に」「首からグンと」にあり、そんな自分の反応にちょっと驚いている、という点にある。感情を言うのではなくて、具体的に行動の様子を表した点が成功している。振り向いていた、と自覚するとき、それはどんな感情だろう。ちょっと恥ずかしくて、怖くて、そんな自分を客観視するユーモアもここにあると思います。〉
「ネットプリント毎月歌壇」2017年12月号


【117p 3首目】
▽石井僚一さん
〈「おみこし」といえばお祭りの際にたくさんの人たちに担がれながら「わっしょい!わっしょい!」とまちをゆくパワーアイテムだが、この人はその「おみこしになって」そして「元気な人達にかつがれたいな」と言う。この「かつがれたいな」には「おみこしになってお祭りのいちばん真ん中で元気な人たちに囲まれてテンションを上げたい!」というような願望があるとおもうのだけれど、その願望に反して「かつがれたいな」という口調がゆるすぎて可笑しい。どうも完全に他力本願で自らテンションを上げようという意思が全くないのだが、その力みのなさに却って安心してしまう。とってつけたような「年に二回は」も面白くて、要するに「年に一回じゃちょっと足りない気がするので二回かな」というような、そこまで真剣に考えていない感じがチラッと見えてニヤッとしてしまう。このユーモア&脱力感は短歌でなかなか出せないだろう。グッド!年に二回、おみこしになれることをここで祈ります!〉
▽谷川電話さん
〈「~になりたい」系の短歌はよくあるが、おみこしになりたいだなんて! この人は、とても疲れているのだ。だから、少しでも元気になりたい。元気になるためには、元気になれそうな状況に身を置くことだ。この人が考えついたのは、「おみこしになって元気な人達にかつがれ」ることだった(うむ、疲れているな)。でも、ちょっと待てよ。結句で「年に二回は」と言っている。元気がないなら、「いますぐおみこしになって元気な人達にわっしょいわっしょいされたい!」と言えばいいのに。このよくわからない謙虚さに、心を打たれた。また、読後、「おみこし」というのがいいなあ、としみじみ思えてきた。この元気のない、謙虚な人が、「おみこしになって元気な人達にかつがれたい」と言うのだ。生きることは、疲れる。生きることの疲れが、作中主体にこんな実現不可能な願望を抱かせたのだ。疲れて、疲れて、意識が薄くなって、そんなビジョンが見えてしまったのかもしれない。わっしょいわっしょい、がんばれがんばれ!〉
「ネットプリント毎月歌壇」2017年1月号


【118p 2首目】
▽沢口芙美さん
〈針の穴を通った糸の直後はピンと張っているが、観察が細かく、それを糸の「やる気」ととらえているのが、工夫である。〉
▽佐伯裕子さん
〈思わぬユーモアが漂っていて、不思議な一首になっている。「糸」に感情はないから、これも擬人化といえる。作者がやる気になるのではない。針穴を通っただけなのに、その「糸」が元気に見えるのだ。アニメ的な面白さといっていいだろう。〉
『角川短歌』2015年7月号「公募短歌館」


【118p 3首目】
▽穂村弘さん
〈「女子」と「男子」では、スピード、打点、打球、つまりは迫力が違いますね。でも、たちまち「見慣れる」のが不思議。〉
『ダ・ヴィンチ』2016年6月号「短歌ください」


【119p 2首目】
▽奥村晃作さん
〈コンビニに買い物に行った。たまたまおむすびの特売を知る。いつも百十円が、百円。買う事に決め、二個を選んだ。自分なら南高梅と日高昆布だが、工藤氏は何を選ばれたか。〉
『現代短歌』2017年4月号「読者歌壇」


【120p 1首目】
▽加藤治郎さん
〈「ふわわわ」とはユーモラスな擬態語である。突然湧き出す感じだ。恥ずかしいことはそんなふうに思い出される。下句の身振りも面白い。とにかく否定したいのである。〉
『角川短歌』2017年11月号「公募短歌館」


【120p 3首目】
▽穂村弘さん
〈その「男性」には他人とは違う世界が見えているのか。単に不気味な人なのか。実際にやられたら落ち着かない気分になりそうだけど、言葉にされると面白いのはどうしてだろう。〉
『ダ・ヴィンチ』2015年4月号「短歌ください」


【123p 1首目】
▽小林邦子さん
〈「四十になろうというのに」とあるが、四十などはまだまた若者だと高齢の筆者は思ってしまう。 身構えて聞いた話は意義のあることだったかと印象深い。〉
『国民文学』2019年10月号「歌壇管見」


【123p 2首目】
▽水原紫苑さん
〈全く理由のない生に対する、理由のない憎悪が伝わって来る。〉
『角川短歌』2013年11月号「公募短歌館」


【124p 2首目】
▽加藤治郎さん
〈ばらばらな金管楽器の音に引き込まれてゆく春。不思議な味があったのだろう。自由を感じたのかもしれない。〉
「毎日新聞」2014年7月14日「毎日歌壇」


【125p 2首目】
▽森山晴美さん
〈日常のほんの些細な一瞬を詠み、生きてあることの愛しさのようなものを漂わせている。〉
『角川短歌』2015年4月号「公募短歌館」


【126p 1首目】
▽加藤治郎さん
〈Aと言われて反射的にBへ歩みだしたかのようだ。そんな選択を冷静に見るもう一人の自分がいる。〉
「毎日新聞」2014年4月13日「毎日歌壇」


【126p 3首目】
▽穂村弘さん
〈不思議そうに見ているのでしょうか。彼女には洋服とかも意味がわからないだろう。「オレ」と「アリス」との間には互いに解けない「謎」がある。そこにときめきを覚えます。〉
『ダ・ヴィンチ』2012年9月号「短歌ください」


【127p 3首目】
▽浜名理香さん
〈自分が生を終えた後の世を祝福している。宗教家だったら後世を頼むというような思想があるが、おそらく作者はそういうことではないだろう。初句の「このオレが」という宣言に強い自我を出しているからである。自分の死後の風景が大らかな愛と安寧に充ちているという想像は、心を嬉しくさせ、「死」を前提とした「生」を負う身がなぐさめられる。地の部分との区別に使った読点も上手い。〉
『現代短歌』2017年4月号「読者歌壇」



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「すばらしい俺」1首

◇評

▽木村比呂さん
https://note.com/rahiro/n/n65d7c5b73ef9
うたの日 一首鑑賞3


▽柳本々々さん
http://yagimotomotomoto.blog.fc2.com/blog-entry-1238.html
あとがき全集





評は以上です。



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第二部 初出など


工藤吉生 第一歌集『世界で一番すばらしい俺』の収録歌についての初出をここにまとめます。
おおよその初出は歌集のあとがきに書いてありますが、ここでは、より詳しく書きます。
初出以外の掲載は※を付けて書きます。
初出からの変更点があれば●を付けて書きます。

ただし!
ここでも短歌の部分は全て【○p○首目】の形になっています。
歌集『世界で一番すばらしい俺』をご参照ください。



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「校舎・飛び降り」50首

◆初出
『短歌研究』2018年8月号。「ヘ音記号みたいに」というタイトルで、第8回中城ふみ子賞の次席作品として以下の25首が抄録された。
1.【9p 1首目】~6.【11p 1首目】
8.【11p 3首目】
13.【13p 2首目】
15.【14p 1首目】
17.【14p 3首目】
18.【15p 1首目】
20.【15p 3首目】~22.【16p 2首目】
25.【17p 2首目】
34.【20p 2首目】
35.【20p 3首目】
38.【21p 3首目】
39.【22p 1首目】
42.【23p 1首目】
45.【24p 1首目】
47.【24p 3首目】~50.【25p 3首目】



●変更
【10p 3首目】結句「胸の中」を「胸の奥」にあらためた。



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「うしろまえ」20首

◆初出
『未来』2018年1月号。
二〇一七年度未来賞の受賞作。
1首だけ入れ替えた。



【32p 1首目】
→「日本経済新聞」2016年2月21日の「歌壇」から。穂村弘選。



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「眠り男」15首。

◆初出
短歌ミニコミ「ハッピーマウンテン」6号の「眠り男」10首を改作。2013年。

以下6首は別のところからこの連作に組み入れた。
2.【33p 2首目】
4.【34p 2首目】
5.【34p 3首目】
7.【35p 2首目】
10.【36p 2首目】
14.【37p 3首目】



【33p 2首目】
→ツイッター。2011年11月28日。

【34p 2首目】
→『公募ガイド』2018年8月号「東直子の短歌の時間」。東直子選・佳作。

【34p 3首目】
→ツイッター。「#短詩の風」でツイートしたもの。2017年2月26日。

【35p 2首目】
→『うたらばフリーペーパー vol.17「秘密」』。2016年。

【36p 2首目】
→『うたつかい』第24号。2015年。
※うたらばブログパーツ「絵」2016年5月。田中ましろ選。

【37p 3首目】
→『角川短歌』2012年12月号「角川短歌ライブラリ刊行記念 わたしの一首大賞」。吉川宏志選・大賞。



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「仙台に雪が降る」 30首

◆初出
『短歌研究』2014年9月号。
短歌研究新人賞の候補作として、30首連作のうち14首が掲載された。また、選考座談会のなかでそれ以外の4首が引用された。

以下15首は『短歌研究』2014年9月号掲載。
1.【39p 1首目】~4.【40p 2首目】
7.【41p 2首目】
9.【42p 1首目】
10.【42p 2首目】
12.【43p 1首目】
15.【44p 1首目】
17.【44p 3首目】
19.【45p 2首目】
20.【45p 3首目】
22.【46p 2首目】
27.【48p 1首目】
30.【49p 1首目】


5.8.13.14.23.24.26首目の合計7首は、誌面には掲載されなかったが2014年に短歌研究新人賞に応募した時から「仙台に雪が降る」30首に入っていた歌。
それ以外の歌はほかの場所から今回この連作に組み入れたものとなる。



【41p 1首目】
→ツイッター。2011年11月13日。

【42p 3首目】
→タウン誌『仙台っこ』2016年10.11月号「仙台っこ歌壇 俵万智賞予備選」。佐藤淑子選。
※『仙台っこ』2017年4.5月号「仙台っこ歌壇 俵万智賞」俵万智選・準賞。

【44p 2首目】
→『小説 野性時代』2017年6月号「野性歌壇」。山田航選・特選。

【46p 1首目】
→「河北新報」2016年6月26日「河北歌壇」。佐藤通雅選。

【47p 2首目】
→第4回角川全国短歌大賞。2013年。馬場あき子選・秀逸。
※『短歌生活 4号』掲載。
『角川短歌』2013年4月号掲載。

【48p 2首目】
→Eテレ「NHK短歌」2015年12月6日放送。題「いのち」一席。佐佐木幸綱選。
※おなじく「NHK短歌」2016年3月6日放送で発表された年間大賞に選ばれた。
※『NHK短歌テキスト』2016年2月号、5月号掲載。

【48p 3首目】
→ツイッター。2012年3月12日。



●変更

【43p 2首目】
三句「●●○●●」を「しらしらと」にあらためた。

【45p 3首目】
四句「上に左右に」を「上下左右に」にあらためた。



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「魂の転落」10首

◆初出
『短歌研究』2014年11月号「新進気鋭の歌人たち」を一部改作。

4.【51p 2首目】
7.【52p 2首目】
8.【52p 3首目】
の3首はほかのところからこの連作に組み入れた。



【51p 2首目】
→「毎日新聞」2014年9月29日「毎日歌壇」加藤治郎選・特選。

【52p 2首目】
→「poecrival」vol.3。2018年3月。服部真里子選。

【52p 3首目】
→「日本経済新聞」2014年5月25日。穂村弘選。



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「黒い歯」10首。

◆初出
1.【54p 1首目】
2.【54p 2首目】
4.【55p 2首目】
→『塔』2014年7月号。

3.【55p 1首目】
→未発表作品

5.【55p 3首目】 ~ 10.【57p 2首目】
→『未来』2017年6月号。タイトル「歯医者で読むアインシュタイン」。



●変更

【55p 2首目】四句以下「二日後となり二日を痛む」を「二日後 十七万秒痛む」にあらためた。

【57p 2首目】三句以下「アルベルト・アインシュタイン戦争の途中」を「アルベルトは黒い時代に置き去りのまま」にあらためた。



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「ピンクの壁」50首

◆初出
『角川短歌』2016年11月号。第62回角川短歌賞の候補作として、選考座談会のpに15首掲載。

以下の11首は『角川短歌』2016年11月号。
3.【59p 2首目】
5.【60p 1首目】
11.【62p 1首目】
18.【64p 2首目】
19.【64p 3首目】
25.【67p 1首目】
41.【72p 3首目】
42.【73p 1首目】
43.【73p 2首目】
47.【74p 3首目】
49.【75p 2首目】


1.2.4.6.7.10.12.17.20.22.28.29.31.32.33.36.38.40.50の合計19首は、誌面には掲載されなかったが2016年に角川短歌賞に応募した時から「ピンクの壁」50首に入っていた歌。
それ以外の歌はほかの場所から今回この連作に組み入れたものとなる。


【61p 1首目】
→『短歌研究』2016年11月号「うたう★クラブ」加藤治郎選・うたう★クラブ賞。

【61p 2首目】
→『未来』2016年1月号
※うたらばブログパーツ「無」2016年2月。田中ましろ選

【62p 3首目】
→ツイッター。2012年2月7日。

【63p 1首目】
→『短歌研究』2014年9月号「短歌研究詠草」。高野公彦選。
※うたらばブログパーツ「中」2016年2月。田中ましろ選。

【63p 2首目】
→『塔』2015年2月号

【63p 3首目】
→『未来』2016年6月号

【65p 3首目】
→『未来』2016年9月号

【66p 2首目】
→第十八回「万葉の里 あなたを想う恋のうた」秀逸。2016年。

【66p 3首目】
→『塔』2015年11月号

【67p 2首目】
→『短歌研究』2019年7月号。作品二十首「バラバラ事件」

【67p 3首目】
→ツイッター。2011年12月5日

【68p 3首目】
→『角川短歌』2015年7月号「公募短歌館」伊藤一彦選・特選

【70p 2首目】
→『未来』2016年3月号

【70p 3首目】
→『ダ・ヴィンチ』2013年10月号「短歌ください」穂村弘選

【71p 2首目】
→「朝日新聞」2019年1月9日夕刊「あるきだす言葉たち」

【72p 1首目】
→第7回角川全国短歌大賞。馬場あき子選・特選
※『短歌生活』7号掲載
『角川短歌』2016年1月号掲載。

【73p 3首目】
→ツイッター。2011年11月25日

【74p 1首目】
→第43回現代歌人協会主催 全国短歌大会。2014年。田村元選・佳作第一席

【74p 2首目】
→『塔』2014年9月号

【75p 1首目】
→ツイッター。2012年3月2日



●変更

【59p 3首目】三句以下「男性に見おろされれば行き急ぐのみ」を「男性の見下ろす視野を出ようと急ぐ」にあらためた。

【71p 1首目】「花々の」を「花々よ」にあらためた。



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「車にはねられました」10首

◆初出
1.【76p 1首目】~ 7.【78p 2首目】
10.【79p 2首目】
→ 『未来』2018年9月号

8.【78p 3首目】 ~ 9.【79p 1首目】
→『短歌研究』2012年9月号「短歌研究詠草」。高野公彦選



【79p 1首目】
※うたらばブログパーツ「結」2015年2月。田中ましろ選。



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「この人を追う」30首

◆初出
『短歌研究』2018年9月号「第61回 短歌研究新人賞」



●変更
【85p 2首目】結句「生活懸けて」を「生活かけて」にあらためた。

【90p 1首目】初句「見たくもない」を「見たくない」にあらためた。



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「人狼・ぼくは」30首

◆初出
『短歌研究』2018年10月号「短歌研究新人賞受賞第一作」

以下の5首はほかのところからここに移した。
4.【92p 2首目】
9.【94p 1首目】
14.【95p 3首目】
16.【96p 2首目】
26.【99p 3首目】



【92p 2首目】
→『未来』2016年1月号
※『あみもの 二十号』。2019年8月。

【94p 1首目】
→『現代短歌』2016年4月号「特別作品」

【95p 3首目】
→「河北新報」2016.1.17「河北歌壇」花山多佳子選

【96p 2首目】
→『うたつかい』22号。2015年4月

【99p 3首目】
→「読売新聞」2016年10月17日「読売歌壇」俵万智選



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「おもらしクン」30首

◆初出
「朝日新聞」2019年1月9日夕刊「あるきだす言葉たち」に掲載された8首を大幅に改作。

朝日新聞に掲載された「おもらしクン」8首に掲載された歌のうち、この30首に残っているのは、3首目と29首目のみ。



【102p 1首目】
→『ダ・ヴィンチ』2013年10月号「短歌ください」穂村弘選

【102p 2首目】
→『塔』2015年1月号

【103p 2首目】
→ツイッター。2011年11月3日

【103p 3首目】
【108p 3首目】
→『短歌研究』2019年7月号。作品二十首「バラバラ事件」

【104p 1首目】
→「日本経済新聞」2016年8月7日「歌壇」穂村弘選。

【104p 2首目】
→「読売新聞」2014年10月16日「読売歌壇」俵万智選。

【104p 3首目】
→『うたつかい』14号。2013年6月。

【105p 1首目】
→ツイッター。2011年12月1日

【105p 2首目】
→『塔』2013年5月号

【105p 3首目】
→『塔』2013年1月号
※「歌会たかまがはら」2014年6月号採用。しんくわ・田丸まひる・天野うずめ選

【106p 1首目】
→『短歌研究』2013年3月号「うたう★クラブ」斉藤斎藤選・佳作

【106p 2首目】
→ツイッター。2012年2月26日。
※うたらばブログパーツ「解」2012年2月。田中ましろ選。

【106p 3首目】
→「日本経済新聞」2016年3月20日「歌壇」穂村弘選。

【107p 1首目】
→ツイッター。2012年2月14日

【107p 2首目】
→ツイッター。2011年9月10日

【107p 3首目】
→ツイッター。2011年10月29日

【108p 1首目】
→ツイッター。2012年3月3日

【108p 2首目】
→うたらばの集い 2012年3月

【109p 1首目】
→『うたつかい』2016年夏号

【109p 2首目】
→ツイッター。2012年2月8日

【109p 3首目】
→『未来』2017年2月号

【110p 1首目】
→『角川短歌』2016年9月号「題詠」中地俊夫選。

【110p 2首目】
→『塔』2013年3月号

【110p 3首目】
→「読売新聞」2014年11月3日「読売歌壇」俵万智選

【111p 1首目】
→『未来』2017年6月号

【111p 2首目】
→『毎日新聞』2016年1月4日「毎日歌壇」加藤治郎選

【112p 1首目】
→『塔』2014年3月号



●変更
【110p 2首目】四句以下「アゲハのはばたきのもつやさしさ」を「アゲハやさしくはばたいてたよ」にあらためた。



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「まばたき」5首

◆初出

【113p 1首目】
→第3回 河野裕子短歌賞。恋の歌・愛の歌部門。池田理代子選・佳作。2014年

【113p 2首目】
→『未来』2016年5月号

【114p 1首目】
→第二十回「万葉の里 あなたを想う恋のうた」入選。2018年

【114p 2首目】
→「河北新報」2016年9月8日「河北歌壇」花山多佳子選。

【114p 3首目】
→書き下ろし



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「ぬらっ」40首

◆初出

【115p 1首目】
→ツイッター。2012年3月3日

【115p 2首目】
→ツイッター。2012年3月7日

【116p 1首目】
→『短歌研究』2012年6月号「うたう★クラブ」なみの亜子選・うたう★クラブ賞。

【116p 2首目】
→ツイッター。2012年1月13日。
●初出では最後が「生きる」。
※うたらばブログパーツ「味」。2012年1月。田中ましろ選。


【116p 3首目】
→「日本経済新聞」2017年4月22日「歌壇」穂村弘選。

【117p 1首目】
【124p 1首目】
→『短歌研究』2020年5月号。280歌人新作作品集・作品7首「乳首」

【117p 2首目】
→「ネットプリント毎月歌壇」2017年12月号。竹中優子選。

【117p 3首目】
→「ネットプリント毎月歌壇」2017年1月号。石井僚一・谷川電話選。

【118p 1首目】
→ツイッター。2012年3月3日

【118p 2首目】
→『角川短歌』2015年7月号「公募短歌館」沢口芙美選・特選、佐伯裕子選・特選。
※『角川 短歌年鑑 平成28年度版』にも掲載。公募短歌館 年間ベスト20作品・第6位

【118p 3首目】
→『ダ・ヴィンチ』2016年6月号「短歌ください」穂村弘選

【119p 1首目】
→うたらばブログパーツ「葉」。2014年10月。田中ましろ選。
※ポストカードになってうたらばWEBSHOPで販売されたことがある。

【119p 2首目】
→『現代短歌』2017年4月号「読者歌壇」奥村晃作選・特選。

【119p 3首目】
→『現代短歌』2017年5月号「読者歌壇」奥村晃作選・秀作

【120p 1首目】
→『角川短歌』2017年11月号「公募短歌館」加藤治郎選・秀逸

【120p 2首目】
→「毎日新聞」2017年11月6日「毎日歌壇」加藤治郎選

【120p 3首目】
→『ダ・ヴィンチ』2015年4月号「短歌ください」穂村弘選。

【121p 1首目】
→『塔』2015年12月号

【121p 2首目】
→『未来』2018年5月号

【121p 3首目】
→『うたつかい』32号。2019年9月

【122p 1首目】
→ネットプリント「ゆふぎり」2018年3月

【122p 2首目】
【123p 1首目】
→『短歌研究』2019年7月号。作品20首「バラバラ事件」

【122p 3首目】
→『小説 野性時代』2018年2月号「野性歌壇」加藤千恵選・佳作

【123p 2首目】
→『角川短歌』2013年11月号「公募短歌館」水原紫苑選・秀逸

【123p 3首目】
→うたらばブログパーツ「年」2016年1月。田中ましろ選

【124p 2首目】
→「毎日新聞」2014年7月14日「毎日歌壇」加藤治郎選・特選

【124p 3首目】
→ツイッター。2013年2月

【125p 1首目】
→『うたつかい』25号。2016年2月

【125p 2首目】
→『角川短歌』2015年4月号「公募短歌館」森山晴美選・秀逸、安田純生選・秀逸

【125p 3首目】
→『未来』2016年6月号

【126p 1首目】
→「毎日新聞」2014年4月13日「毎日歌壇」加藤治郎選・特選

【126p 2首目】
→「毎日新聞」2016年4月12日「毎日歌壇」加藤治郎選

【126p 3首目】
→『ダ・ヴィンチ』2012年9月「短歌ください」穂村弘選
※安福望『食器と食パンとペン わたしの好きな短歌』掲載

【127p 1首目】
→『角川短歌』2013年12月号「公募短歌館」水原紫苑選・佳作

【127p 2首目】
→空き瓶歌会。2013年6月

【127p 3首目】
→『現代短歌』2017年4月号「読者歌壇」浜名理香選・特選

【128p 1首目】
→『現代短歌』2016年11月号「読者歌壇」三枝浩樹選・佳作

【128p 2首目】
→『うたつかい』29号(2017年秋号)





☆備考
2020年5月に、収録する歌と収録しない歌の一部をネット公開し、選歌のアドバイス・リクエストをツイッターで募集した。
そのときいただいた意見は主にこの章に反映されている。

以下の7首はこのときの意見を受けて追加した。
【116p 2首目】
【117p 1首目】
【117p 2首目】
【120p 1首目】
【121p 1首目】
【124p 2首目】
【128p 1首目】

「仙台に雪が降る」の
【47p 2首目】
も同様に追加した。



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「すばらしい俺」1首

◆初出
【129ページ1首目】
→ウェブサイト「うたの日」2015年7月14日「膝」
http://utanohi.everyday.jp/open.php?no=470c&id=27



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第三部 発売後の反響


▽千葉聡さん
短歌時評158回 「あなたの歌は寂しいね」 ──「詩客」短歌時評 https://t.co/mvjrPRSh94


▽千種創一さん
工藤吉生『世界で一番すばらしい俺』 https://t.co/3AhGu695VF


▽匤成(おみなり)さん
書評;工藤吉生 第一歌集 「世界で一番すばらしい俺」
https://t.co/9Ilm6oKyo5


▽郡司和斗さん
工藤吉生『世界で一番すばらしい俺』感想──遠い感日記
https://tankagungun.hatenadiary.jp/entry/2020/08/07/030118


▽岩尾淳子さん
日々のクオリア
https://t.co/JmVLmP8FUq


▽梅内美華子さん
読売新聞 2020年8月1日夕刊「短歌とことば」

▽江戸雪さん
後ろ向きで突き抜けるオレ──からくれない日録
https://yurioil.seesaa.net/article/476845550.html


■■■■■■



第四部 その他



表紙は自分でスマホで自分の部屋から窓の外を撮った写真。2019年10月16日22時06分撮影。日記で見る限りは、特になにもない日だった。

帯の加藤治郎さん、穂村弘さんの言葉は、第61回 短歌研究新人賞の選考会での発言。『短歌研究』2018年9月号。



令和二年七月二十日 第一刷印刷発行
令和二年七月三十日 第二刷印刷発行
第二刷では127ページにノンブルがついた。
また「あとがき」から最終章に関する一文
〈「素晴らしい」を「すばらしい」に直しました〉
を削除した。事実と異なるため。


以上。なにかあれば書き足します。







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2020年08月12日

[結社誌読む 167] 『未来』2020年5月号  ~夜をねじりつづけて、ほか

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結社誌読む167

『未来』2020年5月号


自分がしっかりしなければと思いつつぐずぐずと居るこの快感
╱大島史洋



玄関は靴の寄港地ハイヒール、スニーカー、軍靴のようなロングブーツが
╱道浦母都子

→玄関を港に、靴を船にたとえた。ロングブーツはひときわ存在感があるようだ。「軍靴のような」で港の雰囲気が変わってくる。



「異邦人」聴きつつ願書を認(したた)める志望動機に架空を添へて
╱大西久美子「海の学校」



こくめいにおぼえていろよ どれくらい合鍵は夜をねじりつづけて
╱蒼井杏「6Pチーズ」

→合鍵はあるが簡単に出入りして済むようなことではなさそうで、情念が感じられる。ねじれた関係。




心って外開きかな閉ざすとき内側に引く感じがしてる
╱ゴウヒデキ

→心を窓にたとえた。心を閉ざすときの感覚をとらえている。



血であれば助けたろうか突然に吐く人を避け車両を移る
╱ゴウヒデキ



退勤後、口を閉じてる。舌の根にVC3000のど飴のせて
╱鷹山菜摘「オープニング」

→「VC3000のど飴」というと天童よしみの歌が聞こえてくるようだ。一瞬ウイルスの名前みたいにも見えてしまう。
口を閉じてるから自分しか口の中にあるものを知らない。一人の時間だ。



障子ほそく開けてのぞけば雪降りて音みなすはれしづかなる朝
╱飯田明美



お母さん体力なさすぎるという声背後より迫ってきたり
╱綾部未央



新たなる趣味のひとつに加えんと塗り絵ヨガジム茶道つみあがる
╱吉村桃香

→ひとつと言いながら四つでてくる。趣味を増やすというのは簡単ではないらしい。積極的に挑戦している。



霊柩車しずかに吾を追い越して霧たちこめる坂道に入る
╱八島わこ

→霧のむこうに死者の世界がありそう。「しずかに」にもこの世のものでなさそうな感じがでている。上りか下りか。下り坂で想像した。



恥ずかしいことばかりある人生にわざわざ人を集めて歌う
╱須田まどか




司書よりも百五十円高いからマスクを掛けて段ボールを閉じる
╱大塚絵里香「Ericaさん」

→時給が低い仕事から高い仕事へと移ってきたんだろう。司書のほうがやりたい仕事だったように読めた。



手巻き寿司の具材を作る家族全員で逃げるのがいいと思う

ポトフを作ったのでお集まりください予測変換はポルポト
╱鼠宮ぽむ「こんばんは」

→1首目と4首目。おいしそうなところから急に突き落とされる。



十五時間眠る間にご近所の新生児の名など思い出す
╱安藤ニキ

→ながい眠りだ。そのあいだに頭のなかにはいろんなものがあらわれては消えていったんだろう。ご近所の新生児の名は、けっこう遠い深いところにしまってあったようだ。



「ありがとう!仲間に感謝!」全身に書いて助かる耳なし芳一
╱篠田くらげ

→全身に書かれたその言葉は、もはや宗教的な力をもっている。この力で助かった芳一には、この世の試練がまだまだ続きそうだ。



フェイスブックのアイコンに見る幾とせを若い笑顔のままにてきみは

アイコンが季節の花となりてより闘ひの日々を思はざるを得ず
╱三田村広隆



ドーナツの穴に指入れまはしをり悪の魅惑と善の退屈
╱山田富士郎

→歌のたたずまい、みたいなのが良くて丸つけたけど、こういうときの「悪」ってのがほんとはよくわからない。あおり運転でも万引きでも痴漢でもなさそう。



合唱祭いちども開かぬ口がある一年生男子のなかに
╱長嶋あき子

→コンクールとか発表会でなくて「祭」なのが歌の影を濃くしている



わけもなくわれであるらし 膝折りて湯船に浸かる すこしあふれる
╱井上駿




『未来』2020年5月号でした。佐伯さん大辻さん紀野さんの欄については8月号の誌面に書いたのでここでは省略です。

この本おわり。








工藤吉生 歌集 『世界で一番すばらしい俺』(短歌研究社)

発売中!


2018年短歌研究新人賞受賞の第一歌集。
校舎から飛び降り、車にはねられながらも、ぬらっと生きながらえる。

「おかしないい方になるが、高度な無力感が表現されている。」──穂村弘

「人間性が色濃く表れた作品です。黒ずみにちょっとかけてみましょうよ。」──加藤治郎
(短歌研究新人賞選考座談会より)




ご注文はこちらから


短歌研究社
https://t.co/umdY4Nvspv

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https://t.co/tJsr2Aykh8








毎日更新 工藤吉生日記【300円】note
https://note.mu/mk7911/m/m94efea4348b3

有料マガジン【500円】note

https://note.mu/mk7911/m/mecb8b79




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2020年08月10日

『未来』2020年7月号・工房月旦〈4月号の歌〉

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短歌結社誌『未来』の前号評のページ「工房月旦」に執筆したものを置いておく。
これは『未来』2020年4月号の歌について書いたもので、2020年7月号に掲載された。



窓越しのとてもとほくに見た海と小さき画像にをさめた海と
╱谷とも子

ふたつの海。想像してみると似ている。距離と、大きさ。遠い小さい海が、詩的に感じられるのはなぜだろう。



「おべんとうはシュークリームね」おさな児の声遠ざかるエスカレーター
╱フナコシリエ

エスカレーターで親子とすれちがったのだろう。実現されなかっただろう理想のお弁当が頭の中に浮かび上がる。あるいは本当にそんな事があるのかもしれないが、もうわからないのだ。



身のどこか病む箇所あれば電灯の灯らぬ部屋のあるごとくいる
╱谷川郁子

体を家に例えた。昼間はいいけど夜は困る。



訪うたびに宗教用具ふえてゆく部屋に知らない人となる従兄(あに)
╱青山達雄

宗教が、知ってる人を知らない人にしてしまう。道具をたくさん買わされる宗教だ。



家の前に小さきかまくら掘られいて下はコンクリが見える雪の量
╱工藤光子

雪が少なかったということを弘前の作者は言いたいのかもしれないが、かまくらがつくれるほど降雪量のない地域の読者は雪が多いと感じるのではないだろうか。仙台のオレもそのひとり。



トマト鍋をぶちまけたような夕焼けで坂のほうから行こうと思う
╱下谷育正

上の句の比喩にインパクトがある。下の句は、夕焼けを見たい気持ちなのか避けたい気持ちなのか読みきれなかった。



玄関の引き戸の溝に入りたる小石がその都度向きを変へたり
╱小池美紀

生活のこまかいことでありながら、もっと違うことも思わせる。運命から逃れられない人が、悲惨なことに遭うたびに悲鳴をあげたり泣いたりする、というような。



高きより父の掌下りて来て子の頭を深く圧したりしばし
╱雅風子

 北原白秋の有名な卵の歌を思わせる。下の句は、不器用な愛情表現にも見えるし、もっと複雑な感情にも見える。



中三の修学旅行はカナダとうこの体験は役に立つはず
親である娘夫婦の言うことは無事に帰って来ることのみと
╱松浦寿美子

祖母の立場と読んだ。修学旅行へ孫(娘夫婦から見れば、子)を送り出す気持ちのちがいがあらわれている。送り出される本人の気持ちはあらわれない。



描かれた人形から目を逸らしつつ終了間際の展示を巡る
╱高橋菜穂子

人形そのものではなく、絵に描かれた人形の目だ。逸らしたくなるのはなんらかの力があるのだ。



年上の女性にもてると言ふ部長がヨガのポーズとる わからなくもない
╱木村弥生

「わからなくもない」の距離感がおもしろい。無理解無関心でもないが部長をとりまく「年上の女性」たちに加わっていきそうな様子もない。ヨガのポーズをとる男性を職場で見たことないオレには部長が不思議な人物であり、これは不思議な歌だ。



コスプレの衣装にアイロンかけている手の甲のしみ星空めいて
╱詩穂

 架空の世界と現実が交差する。また来月!

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2020年08月07日

▶工藤吉生の歌集 発売中!◀

歌集を出しました。



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工藤吉生 歌集 『世界で一番すばらしい俺』(短歌研究社)

7/20に発売しました。1500円+税=1650円。



帯にはこんなことが書いてあります。



膝蹴りを暗い野原で受けている世界で一番すばらしい俺


校舎から飛び降り、
車にはねられながらも、
ぬらっと生きながらえる。

「おかしないい方になるが、
高度な無力感
が表現されている。」
──穂村弘

「人間性が色濃く表れた作品です。
黒ずみにちょっとかけてみましょうよ。
──加藤治郎
(短歌研究新人賞選考座談会より)

第61回短歌研究新人賞、
ついに第一歌集刊行!





どうでしょう。
ちなみに、帯の裏側には短歌5首がならんでいます。そこから3首を紹介します。




何をしても落ちなさそうな黒ずみに両足で立ち〈1〉と〈閉〉押す

この人にひったくられればこの人を追うわけだよな生活かけて

東京に行って頑張りたいなどと聞こえるベンチにまどろんでゆく




こういう短歌がおさめられている歌集です。
みなさんよろしくお願いします。



ご注文はこちら

短歌研究社
https://t.co/umdY4Nvspv

Amazon

https://t.co/tJsr2Aykh8



書店のほうは、hontoとか紀伊國屋のサイトとかで在庫の確認または取り置きができることがあるので、書店で購入する方は知っておくと便利かと思います。






歌集の付録つくりました

工藤吉生歌集をもうちょい楽しむための二万字【評と初出】
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52259932.html





▼▼▼




そのほかの文章

毎日更新 工藤吉生日記【300円】note
https://note.mu/mk7911/m/m94efea4348b3

有料マガジン【500円】note

https://note.mu/mk7911/m/mecb8b79


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2020年08月03日

▼ニューウェーブ▼歌集ってえらい、ほか  ~2020年7月の日記から

毎日更新・工藤吉生日記【300円】note
https://note.mu/mk7911/m/m94efea4348b3

のなかから、7月前半に書いたものでなおかつ公開してもいいかなっていうものをここに出しておく。興味あったら300円でnoteの日記を買っていただければうれしいです。





▼ニューウェーブとは何か?

『現代短歌のニューウェーブとは何か?』
読みはじめた。

小池光さん、藤原龍一郎さん、加藤治郎さん、荻原裕幸さんの「何が変わったか、どこが違うか」読んだ。なかなか両者の溝が埋まらず、ギスギスした気分になった。
加藤さんだけはもってきた歌を引いてしゃべっていてマイペースなところがある。

短歌は「何かを受けて返している」ものだという小池さんの話が印象的だった。







『現代短歌のニューウェーブとは何か?』読みおわった。
ひとつのことをみんなでがっつり論じた本って意外に珍しい気がした。おもしろかった。

新人賞の公開選考ってどんなもんだろうな。応募者になってその時間を過ごしてみたかったような、おっかないような。





▼歌集ってえらい

歌集ってえらいんだなと思うよ。
同じような内容でネットにアップしたってそんなに読まれないし話題にもならない。もっと安い価格であろうと、なかなかお金を出してはもらえない。
それがどうだ。紙の本にまとめたら1650円でも文句言わずに出してくれる人がいっぱいいる。

紙で歌集を出すというと注目してもらえる。今までどこに隠れていたんだ? というくらい人が集まってきて、いいねしたり拡散したり言及してくれる。

歌集ってえらいなあ。

考えてみれば、そういう「えらさ」への反発でネット活動してたところもあったかと思うよ。
あらゆる投稿サイトに出したり、まとめをあちこちに作成したり、短歌botを作ったり、ブログを頑張ったのも、自分の本は出ないと強く思っていたからだよ。
何が起こるかわかんないね。





▼大賞

ぬらっと!短歌大賞やった。
なんだかんだで今回も無事やれたのでよかった。
togetterにまとめた。

#2020上半期短歌大賞 35首 - Togetter
https://t.co/8tPb3vhZ1X


短歌の感想を書くの、むずかしいなあ。下手だなーと、思うように書けてないなーと、自分で思うよ。





▼歌集ラッシュ

若手の歌集出版ラッシュといわれる。
群雄割拠というか、すごそうなものが次々出てきて戦国時代だ。ようするに短歌が活発だということだ。自分がそのなかにいるからか、あんまりラッシュを感じてはいないんだけどさ。


ドーンといきたいな。
しかし、またも木下龍也・岡野大嗣両氏の次くらいの集団におさまるんだろうか。投稿をやってたころからずっとそんな感じなんだよ。

木下さん岡野さんの二人が投稿欄をにぎわせていたころ、オレはちょこちょこと載る人だった。
二人が歌集を出しはじめたころ、オレは投稿で常連になってきていた。
二人が何冊も著書を出した今、オレはようやく一冊でる。
二人とオレはたぶん同じくらいのタイミングで短歌をはじめたわけで、差がくっきりとでている。
オレは結社と新人賞を通っているから、違うところも多いといえば多い。

どこまでいっても前に同じ人が走っているから、客観視点では前進していても、オレの主観視点では視野に同じ背中がずっとある。
しかし案外こういう存在が、なくすと惜しいものになったりするんだろうね。
二人のおかげでオレはここまで進んでこれた、くらいのことは考えるかもしれないな。







今回はこんなところです。宣伝して終わります。



工藤吉生 第一歌集 『世界で一番すばらしい俺』(短歌研究社)

発売中!


2018年短歌研究新人賞受賞の第一歌集。
校舎から飛び降り、車にはねられながらも、ぬらっと生きながらえる。

「おかしないい方になるが、高度な無力感が表現されている。」──穂村弘

「人間性が色濃く表れた作品です。黒ずみにちょっとかけてみましょうよ。」──加藤治郎
(短歌研究新人賞選考座談会より)




ご注文はこちらから


短歌研究社
https://t.co/umdY4Nvspv

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mk7911 at 18:49|PermalinkComments(0)日常・日記 

2020年07月31日

『未来』2020年6月号・工房月旦〈3月号の歌〉

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短歌結社誌『未来』の前号評のページ「工房月旦」に執筆したものを置いておく。
これは『未来』2020年3月号の歌について書いたもので、2020年6月号に掲載された。






死にたいは死ぬ死ぬ詐偽だと後ろゆび指してわたしを責める書き込み
/ひぞのゆうこ

 なにを見たか見当がつく。何を見て何を見ないかの選択が大事なところだ。「後ろゆび」とは言い得ていて、その実際は「わたし」の視界に入ることを恐れる人達なのだ。



うす雲は右手にさっと払い取り見事な青をきみに見せよう
/山口青

神かなにかのように雲を手で払おうという、すがすがしい歌。お名前とも響きあっている。



向かい風を受けて歩いてきた友の春のイルカのような微笑み
/中山小雨

風を受けると顔の表情がちがってくる。「春のイルカ」ってどんなものかわからないが、ほのかにあたたかみがあり人懐っこいイメージが浮かんできて、魅力的な比喩だ。



冬の日の始発電車よしんしんと眠っていたか座席つめたし
/草野浩一
人と会うきもちをつくり家を出る冬陽ぬくもる運転席に
/森田しなの
乗り遅れ一時間待つ5番線木製ベンチはたそがれてゐし
/小野糸子

乗り物と座るものの歌を三首。一首目は「しんしんと」が生きている。寒さの描写のようであり、しずかに眠る様子のようでもある。電車が起きているか眠っているかは座席の温度による、というわけだ。
二首目は人と会うきもちが冬陽のぬくもりに、
三首目は駅で長く待つ気持ちが「たそがれてゐし」につながっていく。



百円の折り紙あがなひ児にやればひかうき、ハートになりてもどれり
/薮内栄子
温かな下着を渡しくしゃくしゃな笑顔が返る義母の誕生日
/黒川しゆう

何かをあげたら何かが返ってきた歌を二首。一首目は、百円が折り紙に変わり、折り紙が飛行機やハートに変わる。ハートは好意のようで、歌をあたたかいものにしている。
二首目は、一瞬、渡した下着がくしゃくしゃになったのかと思ったら、くしゃくしゃなのは笑顔だったので良かった。



妻と食べる土産のあんみつ甘ければ今日二個目だと口に出さざり
/別所勝己

余計なことを言わないのが円満の秘訣かもしれない。二人で食べるぶんは別ですね。



図書館の本は佳境のページにて姿あらわな蚊を挟みおり
/原裕

前に読んだ人もそのページに夢中だったのだろうか。邪魔したものは無惨な姿となった。



追いつめたあの日の記憶冬の陽はしわぶきながら傾きゆけり
/詩穂

 記憶と冬の陽が響き合い、冬の陽に表情が感じられる。句切れに体言止めが多用され、一連に硬い印象を受けた。ほかの歌だが略語「マン喫」とその表記に抵抗を感じた。



行きもせぬ旅の話の間ぢゆう(暇でさ)腕に枝描いてゐた
/野城知里

伸びる枝は体内を旅するかのようだ。



三段腹の二段目あたりを確実に温めている感情がある
/下谷育正

三段腹の二段目、をおもしろく読んだ。少女との食事と会話のひとときが描かれた一連で、最後の二首ではなにやらあやしげな感情が湧いている。さて、続きは書かれるのだろうか。



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2020年07月14日

#2020上半期短歌大賞(第13回ぬらっと!短歌大賞) 35首

第13回ぬらっと!短歌大賞を発表します。

2020年の1月から6月までに読んだ短歌(古いものも含めて)のなかから特に好きなものを35首選びました。

前回の様子です。毎回togetterにまとめています

#2019下半期短歌大賞 30首 - Togetter
https://t.co/5XbWpRqeS7

総合誌、結社誌、歌集、その他、の順でやっていきます。結社誌はほとんど『未来』しか読んでないので偏ってます。


歌だけまとめたものはこちら。
https://togetter.com/li/1554452





んじゃやります。ここでは歌に一応コメントつけます。あんまりうまく書けてなくて申し訳ないんですけど、いいう短歌ほどコメントしづらいってこともあります。



川に沿って自転車で走る 子はときどき川の名を聞く ずっと目黒川
/花山周子
『短歌研究』2019年10月号

→何回きいても同じことを言われるから子どもとしては退屈だろうな、言う親は意地悪してるみたいになっちゃう。でもしょうがないよねっていうところが面白かった。
母と子のかたわらに、ずっと変わらないものが流れている。



揺すられて体を起こす中3はぶっ殺すぞと少しだけ言う
/石井大成
『角川短歌』2019年11月号

→角川短歌賞の、佳作だったかなこれは。マリオの連作で、良かった。でも一首選んだらマリオと関係なさそうな歌になった。
ボソッと言ったのかと思うんだけど、それを「少しだけ」っていうのは表現の工夫だ。中3の感じが出てる。



コンクリートが可哀想だろ もしきみがじぶんの上に落ちて死んだら
/月野桂
『角川短歌』2019年11月号

→これも角川短歌賞の発表号から。
可哀想という気持ちをもっているからといって可哀想な人に味方するとは限らない。人の冷酷さに触れたようで、ひやりとした一首。



秋の夜の電車の床をころがれる缶は眼を持つごとくちかづく
/髙澤志帆
『現代短歌』2020年1月号

→現代短歌社賞の発表号から。
「眼を持つごとく」が気味悪かった。知らない人がちゃんと持ち帰らなかった缶になんて、さわりたくない。



こころを面会謝絶の馬が駆け抜けてたちまち暮れてゆく冬の街
/笹川諒
『現代短歌』2020年1月号

→これも現代短歌社賞の佳作から。
面会謝絶ってかなり危険なんだけど、こころだから走れる。「駆け抜けて」からの「たちまち」に速さがあり「面会謝絶」や「冬」には、かげりがある。



線香とカレーの匂い混ざりあう居間にてクロスワード解きたり
/西可織
『歌壇』2020年2月号

→歌壇賞の候補作。
30首が全体的におもしろかった。
匂いが混ざりあう居間は、クロスワードでいうとタテとヨコが交わるマス目だね。



レゴに住むレゴの男は頭頂部にレゴの凸部をひとつずつ持つ
/奥村知世
『歌壇』2020年2月号

→「レゴ」って三回も言うから、レゴじゃなくて、たとえば人間が浮かび上がってくる。
頭に何かをくっつけられる可能性を前提としてレゴの男はつくられた。レゴでさえあればどんな色でどんな形状のものでも頭にくっつけられる可能性が生まれつきある。



あなたからいちまい引いたトランプを胸に伏せつつ終える生涯
/鈴木美紀子
『未来』2019年10月号

→やりかけたことが終わらないまま、謎が解決しないまま終わっていく生涯。オレだってずーっと伏せてるトランプがあるなあ。この一枚を、不思議な力で言い当ててほしい。



星空が崩れて町を襲ふから人差し指を俺に向けるな
/森内道夫
『未来』2019年12月号

→指一本で宇宙が崩れる。それも、自分の指ではなくて誰か他人の指だ。あやうい。この意識がおもしろい。



磨りガラスの奥に積まるる荷物見ゆ眠り疲るるまで眠りたし
/山川築
『未来』2020年1月号

→外を歩いてるとそういうの見かける。はっきり見えない何かが雑然としている。それが心の中の状態のようで、なんだか眠りや疲労とうまく接続する。


ここまでで10首。



「聴くだけで運気の上がる音楽」がホラー動画に使われており
/安藤ニキ
『未来』2020年2月号

→聴くだけで運気の上がる音楽なんて嘘くさいが、YouTubeにはそういうのがある。フワフワーッとした音楽なんだろうなと想像がつく。ホラー動画にもちょっと合いそうだ。ホラーを見ると原因不明の不幸が起こったり精神にダメージを負いそうだが、運気が上がったらおもしろい。



倒産の出版社宛愛読者ハガキがブックオフの床へと
/三浦将崇
『未来』2020年2月号

→出版社はもうない、だから愛読者ハガキも届かない、そんなハガキがはらりと床に落ちる。見たことありそうな場面だ。時は流れ、あるものは消える。はかなさがある。



降り積もる枯れ葉一枚一枚にモザイクが掛かってる映像
/三浦将崇
『未来』2020年2月号

→枯葉に、モザイクで隠すべき何があるというのだろう。価値観やものの感じかたが大きく異なる世界の映像なのだろうか。小さなモザイクは積もって大きなモザイクになっていくのだろう。



級友を騙して勝ちぬマラソンの間に見ていた動かざる山
/青山達雄
『未来』2020年2月号

→オレはいま『未来』で「工房月旦」という前号評のページを担当してるんだけど、そこで取り上げた歌。
嘘のマラソンコースでも教えたのだろう。不動の山をどんな気持ちで見ていたのだろう。山は勝負のための不正なんかしない。



なにげなくのばしたゆびが自分ではほどけないほどからまっている
/川村清之介
『未来』2020年3月号

→「自分」だけ漢字だ。ひらがなにからまった感じがでている。「自分」はどうにかしようとするも、かなわない。自分でコントロールできない自分。なにか心理的なものがありそうだ。
「AKIRA」を思い出す、と以前書いた。

ここまでで15首。




雨音のなかにあなたの声があり聞こえないまま頷いたのだ
/平岡ゆめ
『未来』2020年4月号

→「聞こえないまま頷いた」のは、「あなた」への信頼があり、でも危険なものも感じる。「のだ」に、自分の意志があるように見える。「雨」と「あなた」が溶け合ってひとつのもののようだ。



この中でUFO見たことなかったの俺だけだった最初の閣議
/田島幸
『未来』2020年4月号

→現実離れした内容が閣議で話されている。そんななかで仲間はずれが起こり、力関係ができていく。



弟と
その妻が
交互に出る
電話
キーウィ入りヨーグルトの味
を想ひき
/岡井隆『伊太利亜』

→感じのいい夫婦なのかなあ。電話の声から味が導かれた。



面接官の役となり子に聞いてみる中学時代の良き思い出を
/宮地しもん『f字孔』

→面接の練習の時間なんだけど、母と子の時間でもある。こういう時じゃないとなかなかきけないこともありそうね。



亡きひとは譜面のなかに在るべしと祈りのごとく動きだす指
/飯沼鮎子『土のいろ草のいろ』

→父親が亡くなったという内容の歌集だった。
死者への思いが指にやどり、音楽となってゆく。

ここまでで20首



生命線ながく描き足し眠ってた幼子あわれ桃の咲くころ
/飯沼鮎子

→子供のこういうところがたまらない。命の長さも遊びになるし、遊んでないと思うと眠っている。かわいいような笑えるようないとおしいような淡く悲しいような、なんともいえない。桃にも時間が流れている。



空色のミニカーを拾ひあげみるに乾びたる泥びつしり詰まる
/佐藤通雅『昔話(むがすこ)』

→『昔話』は東日本大震災を詠んだ歌が収録されている。
どんな小さな隙間にも津波は入り込んだ。空色のミニカーから、明るい未来のある子供を連想した。



「生命」の墨書を壁に貼りおきて子らはふたたびもどることなし
/佐藤通雅『昔話(むがすこ)』

→これも子供が残していった物の歌。この学校にもどってこない子供たちの「生命」を思っている。



月の裏側には故意に砕かれた地球儀が無数に落ちている
/木下龍也『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』

→『玄関の~』は木下龍也さんと岡野大嗣さんの共著で、この歌は木下さんの歌。
地球への屈折した憎しみだろうか。水や空気や、あるいは生命がゆるせないのか。地球では月に対してそんなことせず、のほほんと眺めているが。



瑞々(ずいずい)と手足生えゆく感触に吾れおたまじやくしならばいかに耐へむや
/小池光『日々の思い出』

→『日々の思い出』はかなり良かった。出会うタイミングによってはオレの進路も変わったかもしれない。
未知の感触の歌。

ここまでで25首



道端に拾ひしカセットテープより意味不明なる声は出でたり
/小池光『日々の思い出』

→持って帰って再生してみたんだろうね。「ほんとにあった!呪いのビデオ」的なシチュエーションで、こういうのたまらなく好きなんですよ。



こはれたるラジ・カセをこよひ悲しみてふたり子ありぬこの遊星に
/小池光『草の庭』

→またカセットテープがらみの歌で、そこはオレのツボなんだろうね。
ラジカセがこわれるのが、荒野とか孤島とか砂漠とかに取り残されるみたいな絶望的な悲しみなんだろう。なんだかわかる気がする。



汽笛にもうるせえと言う荒れ方でここ三年は乗り切ったけど
/三田三郎
『ぱんたれい vol.1』

→荒れることで乗り切るってことがあって、三年たって限界を感じている。人生の曲がり角にさしかかっている。



首もとにクリームを塗る手のひらになお強くなる加害意識が
/坂井ユリ
『羽根と根 9』

→この一首が特別に、っていうことではないんだけど、『鯨の脳』っていうこの連作をこの半年間に読んだということを残しておきたい。



賽銭を十五円だけ投げ込んで神様やっぱりなんでもないです
/戸似田一郎
『半夏生の本』

→お賽銭が、神様に話しかけるための通話料みたいになっている。十五円ってお賽銭としては特別少ないわけじゃないし二枚は硬貨を投げているわけです。やめちゃうのが、かわいいような謙虚なような無気力なような。願うのをやめてしまう気持ちはわかる気がする。

ここまでで30首



おはようございます!nanaco の残高30円、すでに遅刻も決まっています
/安錠ほとり
『あみもの 第二十四号』

→自分の朝を実況しているアナウンサーがどこかにいるかのようだ。古舘伊知郎の声で再生したくなる。さんざんな朝だが時はどんどん流れていく。



生涯に何度名前を書くだろうその度「愛」と書く人強し
/田中有芽子
『かばん』2019年12月号

→『私は日本狼アレルギーかもしれないがもうわからない』特集の自選三十首から。
書くことで強くなれる文字かもしれないな、愛。愛という人を好きだったことがある。



プルプルとひとを本気で怒らせるわたしのわたしらしさがこわい
/藤島優実
『かばん』2019年12月号

→本気で怒ってるのに「プルプル」ってちょっとかわいい。それに「わたしらしさ」と思ってるってことは、あんまり直す気がなさそう。こわがってはいても。



あなたになりわたしになりあなたになりわたしになり川の面の光を享けていたり車窓に
/とみいえひろこ
『うたつかい 第33号』

→不思議なことだが、光だったらそういうこともありそうな気がする。光でなにかあらわれたり消えたり変わったりできそうな気がするのはなんなんだろう。



泣くことしかできない夜のかたはらに鳴ってゐる夢のやうなアンダンテ
/中山明
『短歌ヴァーサス vol.2』

→「泣くことしかできない」が何度見ても悲しいよ。どうにもならないことってあるよな。アンダンテは慰めてくれるようだけども。




って感じで、2020上半期短歌大賞の発表はおわりです。あとで歌だけtogetterにまとめます。また半年後にやります。

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2020年07月11日

▼アンケート的なやつ▼入門書と歌集▼歌会と興味 ~2020年6月

6月後半に書いた文章で、ここに発表してなかったやつをいくつかここにまとめます。





▼アンケート的なやつ

https://twitter.com/shinabitanori/status/1276453692460240897

短歌に関するアンケートみたいなことをやっていたので答えた。
コピペする。「→」がオレの回答。





名前
→工藤吉生

所属(あれば)
→未来短歌会

私の作品はネットだとここで読めます(URLを入力してね)
https://twitter.com/mk7911_bot

ひとことメッセージ
→ぬらっ

よくいる場所(複数回答可)
→Twitter
note
その他のブログ
結社誌



短歌でポイントだと思うこと *

意味や内容のもつ魅力
→とても重要

詠まれていることに共感できるか
→とても重要

韻律やリズムのよさ
→とても重要

着眼点や独創性
→とても重要

想像の余地があるかどうか
→とても重要

語り口や文体
→とても重要



どちらかというと(詠む/読むほうが好き)
→まんなか

どちらかというと(実景派/虚構派)
→どちらかというと実景派

どちらかというと(作品を/詠んだ人を好きになる)
→どちらかというと作品


どちらかというと(手書き派/デジタル派)
→どちらかというとデジタル派


どちらかというと(名詞萌え/動詞萌え)
→どちらかというと名詞萌え


どちらかというと(ひとりで黙々/みんなでワイワイ)
→どちらかというとひとりで黙々と楽しみたい







五段階での選択肢になると、二番目や四番目ばかり選んで、一番目や五番目は選ばない。性格だね。ひとつ極端なのをえらぶと、勢いでほかのものもそうしちゃう。
「よくいる場所」に新聞や雑誌がなくなって、その代わりがないので居場所は減っている。




▼入門書と歌集


自分はもう入門って感じじゃないと思って遠ざけていた入門書だが、ひさしぶりにめくってみたら歌集の出し方とか書いてあるものもある。

穂村弘『短歌という爆弾』。
キャリア5年、500首つくったうちから300首選んで一冊にするとある。

謹呈する数について書いていた。一般的には歌人に100-150冊、そのほか50-100冊、合わせて200冊程度送るものだという。穂村さんは400冊送ったという。
こういう数字が書いてあるのは珍しいかも。
そんなに献本するのか。



小高賢『現代短歌作法』
小高さんは短歌を7年やって40歳で第一歌集を出したという。
9年やって40歳で出すオレと近くて意外。

序文やら栞やらは作者を読者に知ってもらうために、第一歌集には付けたほうがいいという。一冊に350首前後入れるという。



総合誌。
現代短歌2019年2月号。特集「第一歌集の頃」
小池光さんが、現代歌人協会賞のおかげで第一歌集が売れたと書いている。そうか受賞すると売れるのか。



▼歌会と興味


歌会でもらった「興味がない」という「評」のおかげで、「短歌の評」というものの価値が、よくわかった。
https://t.co/x7iuAXOFuN



という記事がちょっと話題になってた。



短歌の感想をよく書くオレとしては、なんかずきずきした気分になる記事だ。




歌会っていうのは、普段なら何も書かずに言わずに済ませられることに、なにか言わなきゃいけない場だ。半強制的に。司会に指されて発言を拒否すれば、拒否したということが残ってしまう場所だ。

歌会に出席したからといって、詠草一覧のなかに書かれたどんなものでも全力で読み解いてしゃべらなきゃいけないという、奴隷の契約みたいなものを、結ばされたことになるのかどうか。そこは微妙なんだけど、「どちらかというと」ならないとオレは考えている。

「興味ない」っていう言い方が気に入らないってこと?
「まだ考えがまとまらなくって~」とか「わたしにはうまく読みきれなくて」とか上手にごまかせばよかったってことかね。



歌会に行かないならそれでいいじゃんって思うよ。「二度と行きません」とか、べつにいらないっていうか。そんなの自由だし。それ言っちゃうと、勢いはつくけど、あとで気が変わったときにバツが悪いんですよ。

なんにも面白くない、メリットを感じられないときもあるよ。あるあるオレもある。オレも塔の歌会はすぐ行かなくなっちゃったし。
歌会に行かないのとか、全然いいと思うよ。もっとほかにいろいろ短歌の楽しみ方や取り組み方はあるからね。




許すとか許せないとかは、個人だ。歌会が許したり許さなかったりではないんじゃないの。「興味ない」くらいの発言なら止めない司会が多数と思う。

ちょっと短歌が好きってだけで歌会に来ている人もいるんだから、いたらない評もあるでしょう。得意不得意あるでしょう。できるできないあるでしょう。それを許せないという人が歌会から出ていっても誰も引き止めないでしょう。

公募の話もしてたけど、選にも評にも下手に関わらないほうがよりよくやれるっていう人もいるでしょう。そしたらべつの道に進めばいいし、その新しい道について考えるのが良いんじゃないかな。



創作にでてくる悪役で、
まだ無垢な状態のときになんかひどい目にあって、その経験で世界すべてを呪うようになり世界を滅ぼそうと考え始めた……
みたいなやつがいるけど、なんかそういうことを思いましたね。不幸なことです。

考えてみれば、オレは歌会でそんなひどい目にあってない。ひどい目にあったひとにかける言葉はみつからないなあ。同じ立場に立てない。立場ちがうからもう言わないほうがいいですか。



でもどう考えても「興味ない」だけで短歌の評の価値はわからないよ。腐った野菜を食べたらまずくて腹こわして野菜は不要とわかった、みたいな論だ。野菜をほかのものに置き換えても、ちょっと成立する気がしない。
悪いところだけ見れば、そりゃ悪いものなんだよ。いいと感じる人がいるから人が集まっている。

なにかに価値あるのかないのか検討するなら、サンプルはある程度は多いほうが正確で、少ないと不正確になりやすい。そして、この人はサンプルを「興味ない」発言ひとつしか使用してない。サンプル、つまり思考の材料がないわけです。

それを「ひどいことを言われた」のカードを場に提示することによってスキップしようとしてるわけでしょう。

このカードを出した者は、それ以上の経験・実験を行わずに最終結論を導き出すことができる。

……と、そのカードを使う人は考える。それに周りが合わせてくれるかは別。

腹立ったんだ、嫌だったんだ! という話ならわかるけど、一般論みたいなところまで広げられると、違うんじゃないのって反応になるよこっちは。

その歌会がたまたまその人に合わなかっただけじゃんって思っちゃうけどね。
嫌なことを言ったならその発言だけを批判すればいいのに、
場を批判して、
評する人々を批判して、
公募を批判して。
それによってこの人が癒えているならそれでもいいのかなー。



投げつけちゃったことで、「投げつけた人」っていうことで名前を覚えられちゃうわけです。これからそのつもりで見られるわけです。特に評を。ハードル上げましたねえ。



入門書なんか見ると、歌会はためになるいいところだから参加しようよって書いている。嫌なこともあるかもしれないのに、いいことばかり書く。
だから、期待して歌会の場に入ってきた人が、うまくいかないと落胆も強い。
むしろ衝撃映像の前にでてくる警告みたいに
「この場で言われることであなたは深刻な精神のダメージを受けるおそれがあります。ご了承のうえご参加ください」
くらいのことを言ったら親切かもしれない。



その歌会に同席した人もいるんだし、どうなのかねえ。まあねえ。微妙な問題だよねえ。



一番嫌なのは、下手でも下手なりに評を書いたりして短歌のことを考えて味わって楽しんでいるところに水をさされることだよ。退場するのはいいけど、そこはアレしてもらえるといいですね。




▼二千年



モンテネッリ『ローマの歴史』を見ていたら、二千年前の出版について書いてあった。


出版は採算のとれる事業となりつつあった。書物はすべて奴隷の筆写によるものだが、五千部から一万部出版され数ヶ月で売り切れた。値段は千円から二千円ていどであろうか。一かどの家庭なら、書物は読まずとも備えておくべきものとされていた。地方からは出版社に注文が殺到した。





今回はこんなところで。



■■■


工藤吉生 第一歌集 『世界で一番すばらしい俺』(短歌研究社)
2020年7月20日発売予定です。


2018年短歌研究新人賞受賞の第一歌集。
校舎から飛び降り、車にはねられながらも、ぬらっと生きながらえる。

「おかしないい方になるが、高度な無力感が表現されている。」──穂村弘

「人間性が色濃く表れた作品です。黒ずみにちょっとかけてみましょうよ。」──加藤治郎
(短歌研究新人賞選考座談会より)




ご注文はこちらから

短歌研究社
https://t.co/umdY4Nvspv

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https://t.co/tJsr2Aykh8







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mk7911 at 11:49|PermalinkComments(0)日常・日記 

2020年07月08日

新聞に掲載された短歌まとめ【2014-2018】

2018年7月23日 読売新聞「読売歌壇」 俵万智選

意地悪なクイズ出してる十歳のオレに会ったよクスリ屋の前



2018年6月18日 読売新聞「読売歌壇」 俵万智選

「お召し上がりの直前に入れてください」はやや生意気な態度じゃないか



2018年4月10日 読売新聞「読売歌壇」 俵万智選

空調が紙ナプキンを飛ばしてく 生きやすいってどんなんだろう



2018年3月5日 毎日新聞「毎日歌壇」 加藤治郎選

真夜中をおびえてるのは草や木や闇のほうかもしれないのです



2018年2月26日 毎日新聞「毎日歌壇」 加藤治郎選

ラーメンの立て看板がさかさまだオレと犬しか気づいてないが



2018年2月12日 読売新聞「読売歌壇」 俵万智選

「こう蹴ればもっとじょうずになりますよ」などとしゃべるか未来のボール



2018年1月29日 読売新聞「読売歌壇」 俵万智選

釣り針に小さな虫をつけている時は器用に見えていた父



2018年1月9日 読売新聞「読売歌壇」 俵万智選

衝動のままに深夜の暗黒をスマホで撮ってみたよ手軽に



2017年11月27日 毎日新聞「毎日歌壇」 加藤治郎選

水面に映るマンションちょっとした風で崩れる全面的に



2017年11月6日 毎日新聞「毎日歌壇」 加藤治郎選

ヨーグルトを容器とフタとスプーンとスプーン袋にして食べ終える



2017年10月16日 読売新聞「読売歌壇」俵万智選

引っ越しのトラック停まっている家を出てきて家具が浴びる太陽



2017年10月16日 毎日新聞「毎日歌壇」 加藤治郎選

マネキンにつるつるあたまよく似合うのっぺらぼうとはだかも似合う



2017年9月9日 日本経済新聞「日経歌壇」穂村弘選

朝ドラが小声でしゃべる待合室さてとりあえず肉体を置く



2017年9月4日 毎日新聞「毎日歌壇」 加藤治郎選

弟がネットで喧嘩したことをオレに言うんだ眼をひからせて



2017年8月14日 読売新聞「読売歌壇」 俵万智選【二席】

標識に赤い斜線をかけられた男が禁止行為をやめない



2017年8月5日 日本経済新聞「日経歌壇」穂村弘選

化粧品売り場を君と歩くとき何も知らないオレだと思う



2017年5月14日 河北新報「河北歌壇」 花山多佳子選

病院にスズキサブロウさんの名は何度も響くどこにいるのか



2017年5月9日 読売新聞「読売歌壇」 俵万智選

Yシャツにとってのオレは第一に首のうしろの汚れたところ



2017年5月7日 河北新報「河北歌壇」 佐藤通雅選

夕焼けがああ、ああ、ああと思わせる色でしばらくこの世を照らす



2017年4月24日 読売新聞「読売歌壇」 俵万智選

ひときれのリンゴに楊枝を刺すときに手応えはあり持ち上げて食う



2017年4月23日 河北新報「河北歌壇」 花山多佳子選

魯迅の碑とても大きな功績があるとオレにもわかる大きさ



2017年4月22日 日本経済新聞「日経歌壇」穂村弘選【二席】

非常時に壊せる壁を壊すのはオレには無理だオレにはわかる



2017年4月1日 日本経済新聞「日経歌壇」穂村弘選

ここからは学習塾が覗けるぞ時計が見えるエアコンも見える



2017年2月19日 日本経済新聞「日経歌壇」穂村弘選

わからないままでどんどん行きなさい雨が何滴あるのかな、とか



2017年2月19日 河北新報「河北歌壇」 佐藤通雅選

遠くではマジックショーが始まった騙そうとする声のあかるさ



2017年2月12日 河北新報「河北歌壇」 花山多佳子選

五百円得するために五万円使わせるためのカードの薄さ



2016年12月25日 河北新報「河北歌壇」 花山多佳子選

生活に支障なければひび割れた壁もそのまま五年と半年



2016年12月18日 河北新報「河北歌壇」 花山多佳子選

スイカ割りをやった記憶は目隠しに覆われていてあの声は父



2016年11月28日 読売新聞「読売歌壇」 俵万智選【二席】

「同」という漢字みたいな顔をしたおじさんのいるたこ焼き屋さん



2016年11月20日 河北新報「河北歌壇」 花山多佳子選

目印にしていた傷だらけの車なくなっていて町は漠然



2016年11月6日 河北新報「河北歌壇」 花山多佳子選

貸倉庫が並んでいれば味気なし昔よく来た駄菓子屋の前



2016年10月17日 読売新聞「読売歌壇」 俵万智選

三日月の欠けたところに腰かけるみたいにオレを知ろうとするな



2016年10月16日 日本経済新聞「日経歌壇」穂村弘選

妹のことはいまいちわからないさっきは「ふるさと」を歌ってた



2016年9月18日 河北新報「河北歌壇」 花山多佳子選

まばたきを何秒せずにいられるか競争したね愛しい人よ



2016年9月13日 読売新聞「読売歌壇」 俵万智選

円形の青い標識を歩いてる白い男が明日部屋にくる



2016年8月28日 日本経済新聞「日経歌壇」穂村弘選

手の甲に目玉をたくさん描いている女子高生だ かける声なし



2016年8月14日 河北新報「河北歌壇」 花山多佳子選

逃げる子と追いかける子のひたむきを眺める 売った漫画のように



2016年8月7日 日本経済新聞「日経歌壇」穂村弘選

ワンタンメン専門店の前を過ぎ唱えるわんたんめんせんもんてん



2016年7月31日 河北新報「河北歌壇」 佐藤通雅選

正面に電車を見ればオマエナド轢イテヤルワという顔である



2016年7月24日 河北新報「河北歌壇」 花山多佳子選

オレが木になったとしても「なるようにしかならんよ」と言うんだろうな



2016年7月13日 読売新聞「読売歌壇」 俵万智選

いただいたピンクのパンツは履くことはできないけれどたまに眺める



2016年7月3日 河北新報「河北歌壇」 佐藤通雅選

赤白黄チューリップ咲く施設にて正座で囲碁を打つ人のあり



2016年6月26日 河北新報「河北歌壇」 花山多佳子選

ポケットの中でこぶしをあたためるたまにこっそりチョキにしてみる



2016年6月26日 河北新報「河北歌壇」 佐藤通雅選

わたくしをあげますあなたをくださいと読めるポーズでフィギュアが終わる



2016年6月19日 日本経済新聞「日経歌壇」穂村弘選

悲しげな声で鳴いてる犬がいた塀の向こうの昨日の夜に



2016年6月12日 河北新報「河北歌壇」 佐藤通雅選

十年がひと昔なら半分が昔話になった震災



2016年6月5日 河北新報「河北歌壇」 花山多佳子選

扇畑忠雄の歌碑の読めぬ字を調べて「翳(かげ)」の一字だと知る



2016年5月15日 日本経済新聞「日経歌壇」穂村弘選

これは良い門ですなあと見ていたら向こう側から開いてしまった



2016年4月17日 河北新報「河北歌壇」 花山多佳子選

行きたくはならない朝の道で見る小石の影の濃いこと濃いこと



2016年4月12日 毎日新聞「毎日歌壇」 加藤治郎選

図書館はとてもしずかで子供なりの小声がおしっこと言っている



2016年4月10日 河北新報「河北歌壇」 佐藤通雅選

目の前にある風景が千年後から見た千年前の風景



2016年3月27日 河北新報「河北歌壇」 佐藤通雅選

青春と人が呼ぶ時期オレはただ君を見て見ぬふりするばかり



2016年3月20日 日本経済新聞「日経歌壇」穂村弘選 二席

柔道の授業で早く負けようとやわらかく踏む畳のみどり



2016年3月14日 毎日新聞「毎日歌壇」 加藤治郎選

レコードのなかでは雨が降っているこちらよりややしっとりとした



2016年2月28日 河北新報「河北歌壇」 佐藤通雅選

戦隊ショーの悪役たちが声出さず高笑いする肩を使って



2016年2月21日 日本経済新聞「日経歌壇」穂村弘選 一席

思い詰めた顔の少女の目の先は夜の電車の平凡の床



2016年1月31日 河北新報「河北歌壇」佐藤通雅選

投げやりな態度でバウンドパスし合うふたり緑のネットの向こう



2016年1月24日 日本経済新聞「日経歌壇」穂村弘選

朝の陽が暴いてみせる蜘蛛の巣になにかこまごましてゆれるもの



2016年1月17日 河北新報「河北歌壇」 花山多佳子選 三席

イスにイスを重ねていって人間が座れそうにはないイスにする



2016年1月11日 毎日新聞「毎日歌壇」 加藤治郎選

「コケコッコー」K音四つ「国権の最高機関」K音五つ



2016年1月10日 河北新報「河北歌壇」 佐藤通雅選 三席

ちょうどよく敷かれた砂利だ砂利なりの秩序をもって日に照らされて



2016年1月4日 毎日新聞「毎日歌壇」 加藤治郎選

水色のボールころがり土がつく 夢は習字の先生でした



2015年12月27日 河北新報「河北歌壇」 花山多佳子選

一票を入れて日本が良くなったそんな経験あっていいのに



2015年11月22日 河北新報「河北歌壇」 佐藤通雅選 一席

ぴかぴかなボールを壁に当ててる子壁はよけずに受け止めかえす



2015年11月15日 河北新報「河北歌壇」 花山多佳子選

壊れかけの傘を突き出る一本の骨を見上げて朝の雨ゆく



2015年11月8日 日本経済新聞「日経歌壇」穂村弘選 三席

このへんの人はどこまで買い物に行くのと母が二度言った道



2015年11月2日 毎日新聞「毎日歌壇」 加藤治郎選

〈30㎞〉〈駐車禁止〉の標識にキスしたくなる連休初日



2015年10月25日 河北新報「河北歌壇」 佐藤通雅・花山多佳子 共選

いつもなら曲がるところを曲がらずに歩いて後ろからの足音



2015年10月18日 河北新報「河北歌壇」 佐藤通雅選 二席

楽天の銀次が打席に立つ時の何かしでかしそうな真顔よ



2015年10月11日 河北新報「河北歌壇」 佐藤通雅選

犬吠える・自動車がくる・自動車はそのまま走り去る・犬吠える



2015年10月11日 河北新報「河北歌壇」 花山多佳子選

一輪車壁にたてかけキリキリとどのグループにも馴染めなかった



2015年10月4日 日本経済新聞「日経歌壇」穂村弘選

本来は目立つ色だが時を経て自然な色の安全の旗



2015年10月4日 河北新報「河北歌壇」 花山多佳子選

十字架が屋根の上へと立てられて秋に囲まれひときわ白い



2015年9月27日 河北新報「河北歌壇」 花山多佳子選

ひとつの葉をゆらした風がべつの葉に移って今夜オレの耳まで



2015年9月15日 毎日新聞「毎日歌壇」 加藤治郎選

ちいさめの大人が乗ったブランコが前後する申し訳程度に



2015年9月13日 河北新報「河北歌壇」 佐藤通雅選

用意した袋に土を入れている野球部員も被写体の夏



2015年9月7日 毎日新聞「毎日歌壇」 加藤治郎選

ひとつぶのホクロみたいな天体の中でもぞもぞ終わる一生



2015年8月31日 毎日新聞「毎日歌壇」 加藤治郎選

限界を超えた荷物で下校する中学生の眼のひかり良し



2015年8月30日 河北新報「河北歌壇」 佐藤通雅選

ここだけが自宅であれば不機嫌に四人が囲むコンビニ弁当



2015年8月23日 河北新報「河北歌壇」 花山多佳子選

NHKが放送しない採決をインターネット中継で見た



2015年8月16日 河北新報「河北歌壇」 花山多佳子選

するべきかしないべきかをそのたびに考えないで済むように する



2015年8月10日 毎日新聞「毎日歌壇」 加藤治郎選

散会の後にプラカードは下がる危機は今から立ち上がるところ



2015年8月2日 河北新報「河北歌壇」 花山多佳子選 【一席】

薄型のテレビが毎朝映し出す日本列島なめらかな島



2015年7月19日 河北新報「河北歌壇」 佐藤通雅選

機械とかに強そうな人とそうじゃない人がならんで綱引きをする



2015年7月12日 日本経済新聞「日経歌壇」穂村弘選

遊びにも緩急があり鉄棒に子供らもたれかかる午後四時



2015年7月6日 毎日新聞「毎日歌壇」 加藤治郎選

遠くには青みがかった街があり青みがかっているオレかなあ



2015年7月5日 河北新報「河北歌壇」 佐藤通雅選 【一席】

携帯をカパリと閉じる音さえもすでに懐かしみを帯びながら



2015年7月5日 河北新報「河北歌壇」 花山多佳子選

日が長くなったと言い合いお辞儀してよそのテレビの笑い声聞く



2015年6月28日 河北新報「河北歌 壇」 佐藤通雅選

みずからの美しさなど知るよしもないまま開けっぴろげな一輪



2015年6月23日 読売新聞「よみうり 文芸」 宮城県版 松平盟子選 【秀逸】

発進によろめく夜の自転車のオレを防犯ライトは照らす




2015年6月16日 読売新聞「よみうり文芸」 宮城県版 松平盟子選

押しつけることが布教で信仰でつまり愛だと信じていた日



2015年6月14日 河北新報「河北歌壇」 佐藤通雅選

アイドルが真面目にタフに生きていることをテレビに見せつけられて



2015年6月9日 読売新聞「よみうり文芸」 宮城県版 松平盟子選

生き生きと電光掲示板に跳ねている「もっちもちのナン」という文字



2015年6月7日 日経新聞「日経歌壇」穂村弘選

泥棒の手足が触れたことのある柵があったら光ってみてよ



2015年5月26日 読売新聞「よみうり文芸」 宮城県版 松平盟子選

子が親に似ていることを悲しげに噂されてるモリさん一家



2015年5月31日 河北新報「河北歌壇」 佐藤通雅・花山多佳子 共選

だぶだぶのシャツは干されて一年中きみだけずっと休んでてよし



2015年5月3日 河北新報「河北歌壇」 佐藤通雅・花山多佳子 共選

カップ麺を持ち運ぶとき手の中にほんの小さな波の音する



2015年3月30日 毎日新聞「毎日歌壇」 加藤治郎選

インターネット炎上に湧く匿名のごとき植物、当然のみどり



2015年3月24日 読売新聞「よみうり文芸」宮城県版 松平盟子選

悲しみのない日の終わりを見届けて部屋の電気を完全に消す



2015年3月22日 河北新報「河北歌壇」 佐藤通雅選

やや雑な雨の続いて人類の退化の果てのオレかもしれぬ



2015年3月9日 読売新聞「読売歌壇」 栗木京子選

ありのままのオレはどういう奴なのか笑うと裂けるくちびるの皮



2015年3月1日 河北新報「河北歌壇」 佐藤通雅選

憎んでるやつに似てきた自分だがまだ同じではないので憎い



2015年2月22日 河北新報「河北歌壇」 佐藤通雅選

ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」背景の一言も物言わぬ野山よ



2015年2月16日 毎日新聞「毎日歌壇」 加藤治郎選

あざっす!の言い方により階層の二つ三つが表面化する



2015年2月9日 河北新報「河北歌壇」 佐藤通雅選

寝てるのを起こされ眠い 寝てるのを起こす行為を違法としたい



2015年2月2日 毎日新聞「毎日歌壇」 加藤治郎選

「監視するやつがいなけりゃ誰だってサボる」と言えば変な空気だ



2015年1月19日 毎日新聞「毎日歌壇」 加藤治郎選

まっさらな心に石を投げ入れた波紋のひとつ、(ひとつ)、((ひとつ))



2015年1月5日 毎日新聞「毎日歌壇」 加藤治郎選

ひとりきり夜を歩けばオレのいるここが世界の最果てとなる



2014年11月3日 読売新聞「読売歌壇」 俵万智選

お父さんにかまわれたくて怪物の口のあたりで撫でるテーブル



2014年10月6日 読売新聞「読売歌壇」 俵万智選 【三席】

ぱぴぷぺのポップコーンに固いのがあって口からいま出すところ



2014年9月29日 毎日新聞「毎日歌壇」 加藤治郎選 【特選】

礼というよりはつかのま下を向くくらいでよいと思われている



2014年8月4日 毎日新聞「毎日歌壇」 加藤治郎選

爆破する音のテレビを物言わぬ男見ているその上に夜



2014年7月14日 毎日新聞「毎日歌壇」 加藤治郎選 【特選】

ばらばらのブラスバンドの練習のそのばらばらに聞き入って春



2014年6月23日 毎日新聞「毎日歌壇」 加藤治郎選

真四角が崩れていって完全になくなる前に朝を迎えた



2014年6月22日 日本経済新聞「日経歌壇」 穂村弘選

納豆の入ったうどんを次こそは食べる決意で会計終えた



2014年5月25日 日本経済新聞「日経歌壇」 穂村弘選 【三席】

重役が何人か来てその中の不吉において抜きん出た顔



2014年4月13日 毎日新聞「毎日歌壇」 加藤治郎選 【特選】

Aだねと言われてBへ歩み出すオレの進路は危ういだろう

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2020年07月05日

『塔』に掲載された短歌

結社誌「塔」2015年12月号に載った歌

オレん家(ち)にオレが入ってゆく夜の忍び込んだという心持

騒々しい人のひとりが作業場に戻り休憩室は暖房

踏みつけたオレの悪意の体重に耐えて九月のマツボックリは

赤がありオレンジがあり青がある計算通りの花園に雨

西側と東側とに向いているスピスピーカーカーの声声

上からの目線で家を見るときの屋根のアンテナかわいらしいね

セーターに象が並んでいたこととそれらが同じ向きだったこと



結社誌「塔」2015年11月号に載った歌

いざという時は近づく精神が追いつかなくて頭など掻く

赤い布をかけられていてジャンという音が鳴ったら出る段取りだ

透明なガラスのせいで進めないふりがうまくて行かないで済む

近すぎて見えないものに囲まれた生活にいて目薬たらす

足だけを鏡に映す 片寄った情報だから注意なさいよ

午前五時「END」の文字が現れて終わる気がするヒゲ剃りながら



結社誌「塔」2015年10月号に載った歌

かき氷の「氷」マークの下にある波はよくよく見れば荒れてる

蹴られても壁に当たって跳ね返るボールの妙に強気な夕べ

雨のたび水の溜まりやすい場所のようなくぼみを精神に持つ

タッチされ追われる役目を子は終える獣だったら喰われるところ

石ころを懐かしい気持ちで蹴れば軌道いじけて隅へ逸れゆく



結社誌「塔」2015年9月号に載った歌

イエスに似た外人に道をたずねられ「わかりません」と三回言った

右耳から入れた言葉が左から抜けてすずしい海へと至る

足払いネコにかけても転ばない 裸になれるデブはいいデブ

おじさんのキャリーバッグはおじさんに引かれそのまま男子トイレへ

建てかけの家を見ているじいさんは永くたたずむ飽きないらしく

板に書く名字、石に掘る名字、教師が呼び捨てにする名字



結社誌「塔」2015年8月号に載った歌

はつらつとした生命を表現し死ぬまで背伸びしている銅像

半袖にしてもずるずる降りてきて半袖になるオレの生活

柄にもなく深刻なことを考えていたら畳がずいぶん近い

オレの何がダメなんだろと書き込んでいるからダメなんだろとの指摘

悪口が自分のことに聞こえるよ いつものことだ 足が花踏む

買いすぎた灯油を減らすため点けたわりとどうでもいいぬくもりだ



結社誌「塔」2015年7月号に載った歌

何をしているところかはわからない裸ふたりの彫刻の前

「飼い主がフンを片付けましょう」って正論を言うイラストの犬

あたたかくなってくるのはありがたい母がなにかをゴシゴシしてる

何回か夢に見ている焼け焦げた跡のあるピンク色の建物



結社誌「塔」2015年6月号に載った歌

ズボンからチェーンじゃらつかせる者の半径2メートルに立ち入らず

そっとしておきたい花の美しさやっつけてしまいたい美しさ

人工の模倣に見えてこの山のみどりうすみどりややうすみどり

精神をおおむね休止させたまま太陽から目をそむけて歩く

前をゆくトラックの背を長いこと見ていて不幸の度が増してきた

醜さのバリエーションと思うまで総合百貨店の人ごみ



結社誌「塔」2015年5月号に載った歌

大雨が予報通りに降り出して人ら行き交う活気を増して

思い出すために振ってるサイコロの1の目、そんな国もあったね

動き出す車窓はホームでタバコ吸う女をすぐに置き去りにした

生きている人をひとりも見なかった散歩と気づく 蛇口をひねる

テレビ見て大笑いする妹のそばでひっそり寝ている母よ



結社誌「塔」2015年4月号に載った歌

若いとはうるさいことと思ったがじゃあいつオレは若かったのか?

見るつもりないのに見えた新成人のスマホのなかの漫画三コマ

頭髪をブルーに染める人なのでオレと話の合うはずがない

成人の日の成人とすれちがう行きたい場所が反対だから

ユーキャンのペン字講座をてきとうに受けて一年経ったこの文字



結社誌「塔」2015年3月号に載った歌

世の中はいつでも暗く壁に見る神の言葉の文字の真っ白

子供らの踊るテレビの棒立ちのひとりとオレの目が合っている

まっすぐに立っていた日がなさそうなフェンスの向こうからのぞくオレ

鳥の群れはカーブしてゆき電気屋ののぼりの四本とも鏡文字

「人それぞれ」なんて言ってはみたもののつぶしつづける口中の泡

固体ならさわり心地のよさそうな浮かれた雲の真下のオレだ

人形のサンタが片手に持っているリボンのほどけないプレゼント



結社誌「塔」2015年2月号に載った歌

十二月中旬オープン! サラダバー「K」の壁へと脚立かけられ

セルフって書かれたガソリンスタンドの何かを握る手のデザインだ

捨ててあるタイヤのなかに雨水が住んでてわりとちゃんとしている

Uターンさせるタイプの看板に従ったこと一度もないよ

遠近法の効いた畑の奥にある輪郭に味わいのある山



結社誌「塔」2015年1月号に載った歌

ぶつかった形跡のある自動車のぶつかりの中心をさぐる目

宝くじ買いたくないが当たりたいオレの気持ちを知ってる手口

面倒なことがひとつもなくなった時代がきたら起こしてほしい

日光を特に頭に受けている いつでも修理中の街だな

悲しみがからだの上に積もってた 夢で誰かと別れたらしい

恐竜の絵を描き上げた画用紙を破らずになどいられなかった



結社誌「塔」2014年12月号に載った歌

風に乗りスタジアムから敷布団叩くみたいな応援とどく

食べ物のはさまりやすい歯の隙間をほじくりいつか趣味の範疇

遠い遠い関西に来て自分ちの近所のような錯覚がある

インターネット動画配信サービスにいくつかののぞき趣味満たされて

ポロポロリンポロポロリンと自己顕示欲が自身の重さでこぼれ



結社誌「塔」2014年11月号に載った歌

恋人よ 今日より昨日、昨日より一昨日のオレが好ましかろう

担任の女教師が指でつくる銃口オレの無気力に向く

韓国のドラマを何度もくり返し見ている母いまは寝ながら見ている

見上げても見えないつまり音だけの飛行機が今いたんださっき



結社誌「塔」2014年11月号に載った特別作品「夢の中で読んだ自分の歌集から」

サンドバッグにされた自由をつまんだりするとしようかヴェネツィアの河

タリラリラン春さんざめくルーベンスここで会ったがすれちがうのみ

くす玉がひらいたままだおめでとう実にしずかなフロアーである

機械にもなったんだけど人間に戻る技術ができヒトがえり

スズメから落ちた涙でつくられたオレの良心ですひさしぶり

マイケルという名の知人はいないんだルーシーもいない晴雄ならいる

ももんもん→ももんがでした サザンザン→二度と会えないかもしれぬ父

産廃を参拝しないタラバガニたられば言わないオレは折れない

夜の中を立っている気だ朝立っているのと同じつもりらしいぞ

家にあるものを使ってできるだけさっきのことを忘れる方法

ロドリゲス言ってみただけワシントンDCちょっと言ってみただけ

箱があるそこで体が真っ二つ手品師と見せかけて首相だ

トンネルだ出口だ海だ端的に言えばつながれている脳みそ

ドラえもんニセ最終回 植物になったのび太の上、夏の雲

一日が毎日あればとろろ食うたびに歌おうとなりのトトロ

エリエリレマサバクタニ裁かれて谷間はゆびとゆびとのあいだ



結社誌「塔」2014年10月号に載った歌

朝の陽のまぶしすぎれば回想のようで遠くに自転車のひと

人生に形式はあり逸脱の日ごと広がり心もとなし

目の前に吊革がある吊革の等間隔にさびしさがある

六月の十四日夜 今シーズン初のバルサン直撃ジェット



結社誌「塔」2014年9月号に載った歌

うっかりと入っていくと晩飯がふるまわれそうな灯かりの家だ

筆記体の雲が呼んでる夕空へ死後に行けたらきっと素敵だ

まず型を身につけそれを壊そうと言った自分の歯の裏なめる

広告の集合である球場のすごくゆっくりしたファインプレー

夕闇に汚点のようにへばりつく校章を持ちわが校舎立つ



結社誌「塔」2014年8月号に載った短歌

歯科医療器具の中には暴走族のバイクの音で動くものあり

はらはらと舞い降りてきた蚊が腹に止まってオレはオレの腹打つ

プリンセスプリンセスのことを略すときンセスンセスという裏世界

脇役のようにたたずむ 地下鉄のホームの隅で咳をしながら

ひたいからあごへてのひら降りるとき猫の居る場所もっとも涼しい



結社誌「塔」 2014年7月号 に載った短歌

歯が痛みはじめたことで生活のまんなか黒いものがひろがる

仕方なく電話入れれば診療は二日後となり二日を痛む

なんらかの規則によって歯痛には強弱があり現在は中

これほどの歯痛に耐えているオレに世界はいやらしいほどしずか

歯医者にはろくな漫画がないもんで「京大短歌」カバンに入れる



結社誌「塔」 2014年6月号 に載った短歌

この愛は純度10パーセントほど のこり90暴力である

ローソンにいい店員と悪い店員 いい店員で会計済ます

五秒ほど寿命が縮まったと言われそれ相応に謝っておく

ひとつだけ悪く言われたそのことで彼を悪口専門家とする

オレに似た人がこんなにいやらしいものか深夜の便器へと吐く



結社誌「塔」2014年5月号に載った特別作品 「ゴチャゴチャのゴチャ」

カサブタは触っちゃダメと言ってくれたミナコちゃん、オレまだいじってる

呪いにも似ているジョーク呪わずにいられなかった人の横顔

被害者の知人女性が心情を吐露し画面はその胸映す

その人に近づくほどにその人のオレの視界に占める割合

ゴチャゴチャな室内だろうゴチャゴチャのゴチャが外から見えている家

広告を白いよだれのようにして101のドアの昏睡

立ち小便をしている人を二階から見ている 音をたてないように

たった今、今の今まで持っていたペンをどこかになくしてしまう

このへんにお店があった。今はない。ゴルフの素振りの人はまだいる

「さみしい」と膝を抱えてつぶやいた君がドラマの場面そっくり

どの店に行ってもそこのスタッフが自分につとまるかが気がかりだ

だらしなさを音にしながらぺったんこぺったんこサンダルの午後五時

ゴミ箱があると信じている場所へ投げつけそれに背を向けて寝る



結社誌「塔」 2014年5月号 に載った短歌

朝の陽のまぶしすぎれば回想のようで遠くに自転車のひと

庭を行くオレにちょうちょがついてきたように見えてた時間があった

世の中のすべてのことを箱に入れならべかえたりして過ごしたい

頭痛する箇所をかたどる指により頭痛世界に陸地が浮かぶ

カラオケは健康にいいと言い張ってカラオケに誘う男の声だ



結社誌「塔」 2014年4月号 に載った短歌

「工藤さん」で検索すればオレじゃない工藤さん達慕われている

いいとこで漫画が終わりその次を読むため鍵を自転車に差す

木の陰にいると涼しいそのかわり帰れない永遠に家には

聞き入れる必要のない泣き声をなお耳は入れ脳認識す

なつかしのアニメ特集番組にマルコ三千回目の再会

予選通過二首のみ載った総合誌を入れたカバンとのぼる坂道

「青春の旅」と言われてそんなのがあった気がしたトンネルの中



結社誌「塔」2014年3月号に載った短歌

あらかじめ壊れるようにつくられたスマホ充電コードや人間

泣いている子が笑わされそのことをなしにするべくより強く泣く

いいことを考えついていいことであること以外忘れてしまう

眠るため消した電気だ。悲しみを思い返して泣くためじゃない

サスペンスドラマの死体に(動くなよ)(うまくやれよ)と励ます心



結社誌「塔」2014年2月号に載った短歌

やんでから名残りのように垂れている雨のしずくが明るさになる

真夜中の明るい窓のカーテンの向こうの人と話がしたい

「言ってやれ言ってやれもっと言ってやれ」オレが近ごろ愛する言葉

のりたまをかけたご飯からのりたまを適度に含む一口すくう

白っぽい切断面を見せながら途中までの木が立たされている



結社誌「塔」2014年1月号に載った短歌

コンピュータゲーム得点上位者に冷めた性格与えて憎む

得をしたような音させバーコード読み取り機器がオレをあやつる

それで?って思う歌ありそれで?って心の中で言い丸つける

笑ってるような顔した自動車にいきなりビシャッとされたビシャッと

4番のカードをお持ちのお客様二足歩行でお越し下さい



結社誌「塔」2013年12月号に載った短歌

自転車の横転による自転車の横転によりごっちゃごちゃごちゃ

あらかじめパンの内部に仕込まれたマーガリンまるで心のように

子供らの声かすかならいとおしくかすかなままで眠らせてくれ

一日を十分にした動画見て 日の出・雲・雲・雲・雲・日暮れ

夕方の料理番組の調理器具ウチのやつよりどれも立派だ



結社誌「塔」2013年11月号に載った短歌

あとまわしにしていることが一つあり毎日それを考えている

考えているけど行動することにつながらなくて(結句もなくて)

本当に追いつめられればきっとやるはずなんだけどまだやってない

ふんぎりがいつもつかない全試合全打席とも見送り三振

年齢がだんだん重くなってくる 三十三 見つめても減らない

やばくなるばかりであると知っていて今のやばさにたじろいでいる



結社誌「塔」2013年10月号に載った特別作品「独楽」

どう生きてゆきたいのかだ回り終え独楽は再び紐を巻かれる

できていることが突然ダメになり二度とうまくはいかない予感

とめどなく行き交う人のいくらかはオレの姿が見えてるらしい

後ろから見れば全員顔がない横から見れば横顔はある

デパートの前で少しも動かない馬が時おり写メを撮られる

音楽を背負った人が乗ってきてしばらく経ってしずかに降りた

妙に重いカバンを探りいらぬもの出して持ち上げればまだ重い

飛んできたテニスボールを投げ返し礼から逃げるように砂利道

太陽が泣いてるマークがあるとしてそんな天気にふさわしい風

秋風にぼんやり思う灰を撒き枯れ木に花を咲かす感触

猫を抱く誰にも会わぬ休日の心の底に敷くワタとして

出会い系サイト広告つきティッシュ ジーンズにひしゃげられておさまる

眠ってる間に解決してほしい枕に今夜も髪は貼り付く

ごまかして逃げ続けても一ミリも離れられない自分自身だ



結社誌「塔」2013年10月号に載った短歌

触れたものが黄金になる王様を時おり思いあわれに思う

便所にはペニスの大きさ自慢する落書き、それをけなす落書き

地下鉄で男のカバンが二度三度オレのケツに触れ憎しみを抱く

菓子パンがパンを失いビニールがベッドの上につくる陰影



結社誌「塔」2013年9月号に載った短歌

年下の有名人の活躍を素直に喜べない幼さだ

おそろしい目の輝きだ口に手を当てて語れるおんなふたりは

喜んで受け入れられる「もう一度言って下さい」の言い方知りたい

卒業の夢を毎年見続ける二度と入学できないオレが



結社誌「塔」2013年8月号に載った短歌

うねうねと動く海面そのどこに落ちても服がびしょびしょになる

幾億の精子の中で一番を目指してそれが叶ってオレだ

フーリガンがピッチに入りて選手らはその場にぢっと立ち尽くしたり

運動会決行合図用花火 朝の布団じゃ防ぎきれない



結社誌「塔」2013年7月号に載った短歌

このごろはですます言葉を使わない職場でもヘイラッシャイラッシャイ

マニュアルに沿って洗った手ばかりが十本揃い朝礼となる

ケガせずに作業するよう書いている紙は声出し読むのが決まり

連絡です工藤吉生さん明日までに必ず検便出して下さい

値引いても売れそうならば値引きして売れなさそうなものはポイする

値引いたら売れるだろうか売れなくてポイされるのかオレはそのうち

礼をする角度ビシッと決まってる上司にビシッとした礼くらう

こっそりと駄洒落を落とすチーフいてそれを拾って笑うオレあり



結社誌「塔」2013年6月号に載った短歌

指のない手がグーなんて決めたのは握れる指のある人達だ

髭剃れば鏡越しの山なだらかに青と青とで連なっている

上を向きコンビニに行く空こそが唯一の自然物と見込んで

途中のみ見しアニメではヒーローがヒロインの名を飽かず叫びぬ



結社誌「塔」2013年5月号に載った短歌

自転車に乗る練習をした空き地アパート二つの広さだったか

村山のハゲは駄菓子屋やめたのかテレビ見てるの外から見えるぞ

言い逃れできぬ話を聞きながら指紋の迷路も行き詰まってる

強風に乗ったら空を飛べるかと木の葉一枚くらいのロマン

洗面所ゆびを洗えば水滴は袖から肘へ潜って滲む



結社誌「塔」2013年4月号に載った短歌

暗闇にわれ背後より近づけば女学生の足やや速まりぬ

高ければ買えないけれど安ければひどい代物かもと疑う

展示室ほこりをかぶりひびわれた空のケースに目と足が向く

破かれた網戸の端が曇天を横切る風の言いなりとなり

とりあえずビール運ばれとりあえず生きてるオレはカルピスを飲む



結社誌「塔」2013年3月号に載った短歌

濁流に飲まれた渡部から聞いたタオルのラクなしぼり方とか

何か言う時の形の口をして自分の番を催促してる

向かい側7人掛けに座る人みんな携帯見ている ビンゴ

カッパ巻きにカッパは入っていないけど人の注文した皿取るな

おもいでの虫捕り網がつかまえたアゲハのはばたきのもつやさしさ



結社誌「塔」2013年2月号に載った短歌

公園の遊具と乗っている子供が同じ顔をしていた

いじめられる方が悪いと主張する君が遺族の目を見れずいる

柔道の組み手争い近づいて副審銀の椅子持って立つ



結社誌「塔」2013年1月号に載った短歌

剃ってない顎に剃るべきヒゲはあり撫でても撫でてもまだヒゲはあり

シューティングゲームのうまいやつが来て雨粒全てよけて帰った

窓の外見てれば津田が「よしおさん青春してるね」と言い残し去る

足の裏に何かついてて歩くたびつるっつるっとしてしまいます

熟したるトマトに納得せぬ客に頭下げつつ後ずさるわれ


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mk7911 at 17:10|PermalinkComments(0)