2017年03月28日

角川「短歌」2017年3月号を読む  ~諦めてからが本番、ほか

角川「短歌」2017年3月号。



時といふ見えざる幕を押し分けてゆく力あるうちが命ぞ/蒔田さくら子「鳥瞰」



地球にそそぐひかりをぜんぶあつめても生きかへらざるたつたひとりが/渡辺松男「夕枯野」

→なんというまばゆさだろう。そしてなんと死とは重い暗いものだろう。



諦めてからが本番みたいなところあるよねと言う ないかなと言う/辻聡之
→特集「青春と短歌」から。
大胆なことを言いたいけど、相手の同意がほしいし否定されたくもないんだな。わかる。「本番」についての考えを突き詰めきれてない感じが青春かと思った。

寺井龍哉さんの「それにも心いたまむとしき」の話がよかった。
そういうのを聞くと得した気分になる。みんなどうやって乗り越えてるんだろうと思うもん。




目つぶしにあふがごとくに父母の思ひ出多しせまきこの世に/大橋智恵子「記念日」
→考えさせる比喩だ。思い出は目の前を見えなくするという意味で「目つぶし」なのかな。


枝豆の豆みっしりと太りいてその夜(よ)怒りのごとき一皿/加藤英彦「母の昭和」

免罪符買った粉屋のおかみさんのように募金の領収書もらう/松村由利子「中世の闇」

ごとくに、ごとき、ように。気がつけば比喩の歌に多く丸をつけていた。
枝豆の歌。枝豆がなにを怒るのか、そう思える人間のうちに怒りがあるのか。
免罪符の歌。「粉屋のおかみさん」が見事だ。



カーディガンのまるい背中に射していた薄日も消えて授業は終わる/千葉聡「キットカット」



飛行機より星の光の強ければ星の後ろを飛行機がゆく/花山周子

→連載から。他の星より高くまで飛行機は飛ばないが、光の強さが距離の近さに見える。
夜空を見ている気分になる。



不発弾と同い年なり爆弾のとびかふ時にわれら生まれて/中野昭子『窓に寄る』



「全国結社・歌誌動向」に、オレがここで紹介したことのある「群山」がでていた。
「少しでも新たな歌材や歌境に挑戦して若々しい作品を投稿し、分かりやすく若い人にも受け入れやすい作歌に力を入れています」におどろいた。そういうことを拒否しているからああなるんだとばかり思っていた。



どうせまたいっとき流行るはかなさに「PPAP」使い回さる/天野美奈子
→題詠「林檎」を詠う、より。たしかにPPAPのAはりんごだ。こういう題の使い方があるのかと感心した。
内容はあれだけども。流行を使い回してるのはこの歌も同じことだ。「どうせまた」って言うけど、いつまでも流行っていてほしいのかなあ。いっときでたくさんだけどな。



というわけでこの本はおわり。
オレは角川歌壇に佳作2首と秀逸1首、題詠で1首、角川全国短歌大会の佳作に1首載った。
久々湊盈子さんの選による「題詠・林檎を詠う」は一番前に載ったのでよかった。

りんごの上にリンゴを置いてそのうえに林檎を乗せたぐらい不安だ/工藤吉生


んじゃまた。




▼▼▼



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2017年03月24日

斎藤茂吉『ともしび』を読んだ

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歌集。斎藤茂吉『ともしび』。

火事の後からはじまる歌集だ。大正十四年から昭和三年。


Thanatos(タナトス) といふ文字見つけむと今日一日(ひとひ)焼けただれたる書(ふみ)をいぢれり/斎藤茂吉『ともしび』



戀にこがれて死なむとすらむをとめごもここの通(とほり)に居(を)るにやあらむ/斎藤茂吉『ともしび』



柱時計ここに焼けけむ齒ぐるまの錆(さ)び果て居るを蹴(け)とばしにけり/斎藤茂吉『ともしび』



たまきはる命をはりし後世(のちのよ)に砂に生れて我は居るべし/斎藤茂吉『ともしび』

さっきも砂と命の歌があった。砂に親しみがあるのか。



をさなごは吾が病み臥せる枕べの蜜柑を持ちて逃げ行かむとす/斎藤茂吉『ともしび』



ならび立つ墓石(はかいし)のひまにマリガレツといふ少女(をとめ)の墓も心ひきたり/斎藤茂吉『ともしび』

今なら「マーガレット」ってところか。青山墓地の歌。



よるふけし街の十字にしたたかに吐きたるものの氷りけるかも/斎藤茂吉『ともしび』



をさなごは「なるほど」という言おぼえて朝な夕なにしきりに使ふ/斎藤茂吉『ともしび』



味噌汁に笹竹の子を入れたるをあな珍(めづ)らあな難有(ありがた)と云ひつつ居たり/斎藤茂吉『ともしび』



朝がれひ旨(うま)らに食へど足いたし諸足いたしかがみがたしも/斎藤茂吉『ともしび』

茂吉と食べ物。ありがたく食べたりおいしく食べたりしている。ミカンは持ち去られている。
さっきの蜜柑の歌は「逃げ行かむとす」だった。茂吉から無事逃げきれたんだろうか。



人だかりの後(うし)ろよりわれのびあがり正岡子規が遺物見にけり/斎藤茂吉『ともしび』




あんまりコメントせずに好きな歌を引いてみた。



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mk7911 at 21:34|PermalinkComments(0)歌集の感想 

2017年03月22日

生きる歓び、しつけのよさとは何か、その他の話題【2017.3.22】

3/12~3/22の話題8つ。
盛りだくさんになった。



▼生きる歓び



保坂和志『生きる歓び』
を読んだ。

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『生きる歓び』は捨てられている子猫を拾う話。病気の猫を看病している。元気になったそうで、安心した。
「小実昌さんのこと」という作品も収録されている。作家の田中小実昌さんの追悼。カルチャーセンターの講師として招いたことなど。引用されている戦争の小説がおもしろそうだった。読みたい作家として覚えておく。


以下、印つけたところ。数字はページ数。


30
大げさにきこえるとは思うが、自分のことを何もせずに誰かのことだけをするというのは、じつは一番充実する。野球やサッカーの応援だってそうだ。


32
いい名前はやっぱり自然を指すもののような気がした。

(「いい名前」に傍点)



▼何をしても楽しくない



月とか週で見れば、「全然たのしくない月」や「全然たのしくない週」はないけど、日で見れば、「全然たのしくない日」はある。
憂鬱な日がある。

"【何をしても楽しくない時に聞く話】つまらない人生を楽しくする方法"
https://youtu.be/oHGZp3TvI-8
検索してて見つけたやつ。お坊さんのお話。

自分はなにが好きなのか、どう生きていきたいのか一人でじっと考えてみなさいという話だった。大好きな人や憧れの人がいるなら会いに行きなさいって言ってた。




▼ボクサー


"The Boxer (1977) - Shuji Terayama"
https://youtu.be/n2TmwyC_E6o


見た。
ボクシングにそれほど興味なかったんだけど寺山修司なので見た。
すべてを憎むと言ってボクシングしたり、じぶんの写真をサンドバッグに貼りつけて練習してるのがよかった。


古い映画なので特訓でウサギ跳びしたり、ぼろい部屋で酒を飲んだくれてバカヤローと言ったりしている。
古いもの見るたびに、ダサさってどこからくるんだろうなと思う。どういう力がはたらいているんだろう。インターネットだって15年たったらしっかりダサくなる。


振り返ると熱血と根性のボクサー成長物語なんだけど、見てるあいだはおもしろかった。こまかいところに寺山っぽさ、と言っていいのかわからないが面白味があった。
妙なタイミングでチンドン屋が通りかかったり、男女のシーンで子供の声がするとか、でかいホラを吹いて人々の関心を集める女とか。



▼オレのbotで最も伸びたツイート


https://twitter.com/bot_anton/status/838466474276593664
「しつけのよさというものは、テーブルクロースの上にソースをこぼさぬようにするなんてことじゃなく、かりにだれかがこぼしても気にもとめないという点にあるんですね。」   「中二階のある家」チェーホフ



というツイートが広がってて驚いた。このチェーホフのbotはオレが作ったのだ。

誰かすごい人が拡散してくれたんだろうか。
twiccaでリツイートしたユーザーを最初までさかのぼれた。やるじゃんtwicca。作家の方がリツイートしてくださっていた。
420RT・640いいね。


ツイッターは七年近くやってるので、一万リツイートされるツイートのひとつやふたつは欲しいところだ。


チェーホフの「しつけのよさ」という点では、オレの失言ばかりあげつらう人はしつけがなってないというわけだ。




▼どうやって所属欄を決めたか


未來のひとってどうやって所属欄を決めたんだろう……

というツイートがまわってきた。

所属欄は自分で決めたって感じじゃないなあ。塔をやめるのは自分で決めたって感じがしたけど。もともと加藤治郎さんのツイート見て結社に興味もったから。
あとは、自分に合ってると思ったからだな。自分から一番近そうだったから。
加藤治郎さんについては、
作品もよく見てたし、
入門書も早い段階で読んでたし、
ツイートも読んでたし、
投稿もしてたし、
自分のなかで馴染みがあった。

比較的に若い人が多くて勢いのある欄といえばほかに笹欄・黒瀬欄・大辻欄がある。
笹さんも黒瀬さんも大辻さんも文語メインでしょう。黒瀬さん大辻さんは旧かな。文語旧かなの選者のところで口語新かなでやるのは、別に問題はないんだけどオレはちょっとためらう。
笹さんみたいなオカルトや空想に興味があるかどうか。そう考えると加藤欄ひとつにしぼられてくる。
それと、欄の他のひとの作品を見れば、自分はここだなとかここじゃないなとか、なんとなくわかる。



▼読者歌壇・特選



14日発売の「現代短歌」4月号の読者歌壇で二人の選者の方からそれぞれ別の歌に特選をいただいた。ありがとうございます。

ダブル特選はよかった。でも、うれしいとかおめでたいよりも「かろうじて面目を保った」くらいの感覚だ。これくらいはやらないと。

比較したくはないが、オレより若い人、後に始めたような人が作品を依頼されるなどして活躍している。
原稿料もらって丸一ページ・7首とか10首を載せてる若い人に比べたら、2首が特選でもしょぼすぎるくらいのものだ。越えられない壁がある。
比べるととてもみじめになるから、自分は自分のペースでやればいいんだと、うちはうち・よそはよそなんだと、そういうことにしている。

いつも特選でおもしろいから気になって作品を依頼したくなった、とか言わせるくらいまでいかないとオレのなかでは本当の成功ではない。成功とは、「これがなんらかの形で次のステップにつながる」ことだ。

どんな歌が載ったかは本屋さんで確認してみてください。雑誌に送って雑誌に載ったので、雑誌で見るのが本来の見方だ。



▼性格診断



性格診断をやってみた。


性格診断結果:周りの人達の真似をして生きている。自分に自信がなく信念もない。長所は、協調性に富む、妥協性が強い、いい子である。短所は、現実無視、計画性がない、考えがまとまらない。 http://shindan.matchalarm.net/ma_egogram/intro/2540568


ひどい言われようだ。すこし憂鬱になった。

自分よりひどい結果の人を探した。「ダメなところが多すぎる。人生を考え直した方がよい」っていうのがあった。それを見て少し気分が持ち直した。そういうことをする性格である。




▼短歌あつめました



短歌あつめました @tanka_atsume というbotにオレの短歌があった。ありがとうございます。

https://twitter.com/tanka_atsume/status/840856812559581184
ワンタンメン専門店の前を過ぎ唱えるわんたんめんせんもんてん/工藤吉生 #短歌 #tanka



これで、オレの短歌をつぶやくbotは六つになった。

うたらぼっと、
歌会たかまがはらbot、
海の短歌bot、
短歌あつめました、
短歌ぼっとだお、
〈短歌bot〉

まだまだ入りたいぜ。




▼▼▼



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2017年03月21日

「現代短歌」2017年3月号を読む  ~おほほいひひひぽけぽけぽ、ほか

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現代短歌 2017年3月号。一ヶ月遅れでやっていきます。



同名短歌ユニット「太朗」の二人五十首というのがあるけど、正直どう受け止めていいのかわからない。新しいことをやってるわけだけど、オレは古い読み方しかできなかった。

まず「Desserts 染野太朗」とあるので、染野さんの連作だと思って連作を読むわけです。職探ししたり仕事したりする連作で、おもしろく読んで印つけたりするわけです。読み終わると6ページから11ページまでとばされる。
字がさかさまなので本もさかさまにして読んだ。自分は今さかさまの本を読んでるぞと思うとすこし楽しい。

「Stressed 吉岡太朗」とある。今度は吉岡さんだなと思って読みはじめると、染野さんの連作と同じ歌が順序を逆にして置かれている。

おもしろかったけど二回も読まなくていいやと思って二度目は軽く流して終わりにした。
おそらくどれかが染野さんの歌で他のどれかが吉岡さんの歌なんだけど、ひとつの歌の作者がはっきりしないのはなんか居心地悪いな。だって、署名と歌が一致しないでしょう。偶然同じ歌からなる連作を二人が同時につくるわけないんだから、染野さんのつくった歌が吉岡さんの名前で出てたり、その逆になってるわけでしょ。
連作はそれぞれ別のタイトルで別の署名になっていて、それもややこしい。合作であると同時にそれぞれの作品でもある。かなり入り組んだことになっている。考えるほどこんがらかる。

作者と作品の関係を揺るがすということで「洞田」につながってるんだろう。
音楽なら逆再生で別の曲になるかもしれない、絵画を逆さにすれば別の絵かもしれない。短歌の連作はどうだろう? ってことじゃないかな。
同じ50首連作を続けて読むのはしんどい。吉岡さんのが本の最後についてたらあるいは違ったかもしれないね。





「十首でわかる短歌史」
おもしろかった。恩田さんがとばした古今和歌集を、つぎの島内さんがしっかり大きく取り上げるところなど、スリリングだ。

吉田隼人さんの
「寺山は『月蝕機関説』で短歌と天皇制の関係に触れていますが、戦後短歌につきまとう人間像を彼が撃とうとしたのは、それが「人間宣言」をした天皇ヒロヒトの影法師だと見抜いていたからかも知れません」
っていう一文を、何度も何度も読み返した。



夜の卓にラ・フランスは自らの影の歪(いびつ)を見つめいるなり/三井修「芝浜」



着ぐるみの内側のよう起きたてのさまよいたての娘の皮膚は/東直子「金網とスカート」



朝がきて次期大統領映りをり この人を見ない権利がない/米川千嘉子



百五歳と記されてある投稿歌しばし眺めて最後には捨つ/道浦母都子

→渡辺つぎさんのことだろう。オレは投稿しはじめた2012年ごろからずっとこの人が自分の年齢を詠み込んだ歌で入選入賞するのを角川「短歌」で見てきている。最近も「百五年生きていること不思議なり預かりものの体のごとし」という歌で角川全国短歌大賞奨励賞をとっている。
長生きはすごいけど、自分の年齢のはいった歌ばかり発表してくる姿勢には疑問をもっている。だから、申し訳ないけども「捨つ」に愉快を感じてしまった。



「せんさうはなかつたことにしてください」おほほいひひひぽけぽけぽ/久保田登「月と金星」
→笑いすぎておかしくなってしまったのだろうか? 上の句のようなことを言う人間の愚かさを下の句で描写したのだと読んだ。



保険屋のセールスマンを家に上げしばし懇談す死亡一千万/小池光「赤い実」
→「懇談」というと親しげだ。辞書にも「うちとけて話し合うこと」とある。だが「死亡一千万」という要点がごろんと投げ出されている。いくらうちとけても、死と金の問題が目の前にある。



ドイツ語は気むづかしいから薔薇の名もペーターフランケンフェルトといへり/今野寿美「お祓ひ」



路に触れ消えゆく雪と見ていしが白き厚みをもちはじめたり/吉川宏志「雪とアレント」

→雪が積もりはじめる瞬間という、じつに細かい瞬間をとらえている。
作者の名前を見ると、これが政治的な問題のことのようにも見えてくる。



樹のごときひとのひとりを思ひをりけさ美しき鳥を見しゆゑ/大辻隆弘「デューレルの犬」
→美しい鳥がとまる樹ならば、きっとそれにふさわしい樹なのだろうと想像したくなる。

連作タイトルのデューレルとは、「未来」の表紙のデューラーだろう。








読者歌壇にはオレの歌が「秀作」で載っている。

アンケートの「わからない」にだけ丸つけてオレも日本国民である/工藤吉生



以上です。







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2017年03月19日

寺山修司『書を捨てよ、町へ出よう』を読んだ

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寺山修司『書を捨てよ、町へ出よう』読んだ。角川文庫。昭和50年。 312ページ。

どんな本とも言いがたい、雑居ビルみたいな本だ。
同名の映画の動画(後半しかなかったから後半だけ)を先に見ていたが、それの原作というわけではなかった。短い文章がたくさんある。詩もある。



速さ、男らしさ、無宿、パチンコ、ストリッパー、銃、トラック運転手、競馬、ボクシング、詩、一点豪華主義、自殺学、歌謡曲。
話題は多岐にわたる。どれもおもしろく読める。


上の世代に抵抗する序盤は、マルキ・ド・サドを思い出した。サドは読んでみると意外に理屈っぽいのだ。

歌詞がしばしばでてくるけど、このころは流行歌が人生をあらわしていたんだな。

競馬については長く書かれる。競馬に興味なくてもおもしろく読める。馬の性生活、競争馬の一生など興味深かった。

「ハイティーン詩集」はすばらしい。

自殺学入門は独特だ。生活苦によるような自殺は、自殺ではなく他殺だとして退けられる。





以下、印をつけたところ。数字はページ数。

49
「小さな穴から入ってきた山椒魚が、中で成長して大きくなってしまったら、もう同じ穴から出てゆくことは出来ないし、かといってもう一度、小さなからだに戻ることも出来ません。そこで、“こうなったら、俺にも覚悟がある”といって穴の中で居直る。この居直り方が問題なのです」



192
賭博が、しばしば人の生甲斐となりうるのは、それがじぶんの運命をもっとも短時間に「知る」方便になるからである。女はだれでも、運の悪い女は美しくないということを知っているし、男はだれでも必然性からの脱出をもくろんでいる。



209
私が娼婦になったら
アンドロメダを腕輪にする呪文を覚えよう

岡本阿魅「私が娼婦になったら」




以上。
寺山修司はこれまで現代歌人文庫の一冊しか読んでなかった。ほかの本もいろいろ出ているようなので読んでみたい。


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2017年03月17日

「なんたる星」2017年2月号を読む  ~その後の川遊び、ほか

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なんたる星2017年2月号。



「なんたる星」はこちらから読める。
http://p.booklog.jp/book/112996
画像使わせてもらったけど大丈夫かな。ほかの本でも、記事にするときは表紙の画像を使うようにしています。そのほうがブログもたのしいし、読者に「自分もこれを読んでみたい」という気持ちになってもらえるからです。



ビーサンは流されてって その後の川遊びって感じだ、しごと/はだし「酪農」
→川遊びをしていて、うっかりビーチサンダルを流されてしまう。そのあとにもつづく川遊びが、まるで仕事のようだという。

オレも過去にあったことを思い出す。釣りしてて釣りざおを流されてしまって、気分が重ーーくなったことがある。

ビーチサンダルの略され方「ビーサン」はオレはたぶん口に出したことないな。字で見ることもあまりないが、あまりなくてもわかる言葉だ。
ビーサンは確かに仕事っぽくない履き物だ。略したからさらに仕事っぽくない。
ビーサンが無いと、遊んでいてもしごとのようになる。遊びとしごとの境目にビーサンは流れている。



お守りで押さえたカップヌードルのふたが開いてる あったかそうに/はだし「酪農」
→見たことがある歌だ。ツイッターで見たのだったか。そのときもいいなと思った。

カップヌードルに湯を注いだら、ふたを閉めて待つ。ふたは普通には閉まらないから上にものを置いたりする。日清のカップヌードルには専用のシールがついているが、オレは好まない。

たまたまそばにあったのか、お守りをのせたと。でも押さえ方としては不十分だったのか、ふたは空いていた。あったかそうなのは、あたためられたお守りか。

悪霊がとりついているとかで、何かにおふだを貼りつけることがある。それが剥がれると、とても不吉だ。立て続けに交通事故とか起こる。キョンシーならば動き出す。そんなふうに、神聖な力でふさいだものがふさぎきれていないのはとても恐ろしいことのように思える。
しかしそれを打ち消すように「あったかそうに」がある。ほのぼのしている。お守りが幸せそうですらある。角度によって、恐ろしくなったりほのぼのしたりする。



いっせーのせーので指を上げあって知らない人のその指も指/迂回「起立斉唱知人サンバ」
→あの遊びは「指スマ」と呼ぶのがもっとも通りがいいらしいんだが、スマップの前にもあったし、オレはあんまり納得していない。世の中には、これといった決まった名前の無いものがある。それぞれで名付けて、どれも定着しない。
だから「いっせーので決めようぜ」と言って親指を出してみせたりする。

時々は、よく知らないやつとそれをやることもある。友達の友達とかと。
それでも「いっせーの」すれば指は勢いよくビーンと上がるわけで、そんな知らない人の指に違和感をおぼえたという、そういう歌と読んだ。だとすればその感覚はわかるなと。



宇宙塵となった身体できみの乗るシャトルの窓を叩きに行くよ/スコヲプ「宇宙ガラス」
→ぐるぐるまわる文字で連作が編まれている。
スマホから読んだが、読もうとしてスマホを回していくのは面倒だがちょっとおもしろい体験だった。これはその最後の歌。
とってもロマンチックな歌にも見えるし、執念深さがやばい歌にも見える。
さっきのお守りの歌もそうだけど、やばく見えるしやばくないようにも見える歌をおもしろく思う。



中島みゆきのアルバム「生きていてもいいですか」
7曲目の「エレーン」に
行く先もなしにおまえがいつまでも
灯りの暖かに点ったにぎやかな窓を
ひとつずつ のぞいてる

とある。
8曲目「異国」には
百億粒の灰になってもあたし
帰り仕度をしつづける

とある。


ものは言い方で、「きみ」とか「シャトル」とか「宇宙」とか言えばなんだかいい感じにもなる。
粉々になっても意志は死なず、宇宙までいってもついてくるとは、すごい愛のようでもあるし、「生きていてもいいですか」的な執念・怨念でもある。そのどちらなのかは「きみ」次第だ。

このぐるぐるは、ブラックホールにでも飲まれていくのか。幸せな宇宙旅行ではなさそうだ。



企画は「戦評」
歌合の一種ですね。2ターンあるのと、時間が決まっているのと、その場にいない人の歌をとりあげるところが特徴か。判者が入れ替わるのも特徴かな。

空気がおもしろかった。相づちに独特なものがあって。これは「なんたる星」ならではのものでしょう。待ち時間がおもしろい。嫌味にならない程度のほどほどなおもしろさの変な言葉を放り込んでくるセンスがうらやましい。



以上です。









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mk7911 at 21:29|PermalinkComments(0)なんたる星 

2017年03月16日

松木秀『RERA』を読む  ~ごみ箱は何でもごみにしてしまう、ほか

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松木秀さんの『RERA』を読んだ。2010年。第2歌集。六花書林。



わが少年時代を無為とおもうとき橙色の巨人のマーク/松木秀『RERA』
→そういえば子供のころに巨人の帽子かぶってたなと思い出した。べつに野球も巨人も好きなわけではない。少年時代の楽しくなさがこの帽子にある、ような感覚。



君が代のオーケストラのアレンジが「むすまで」の「す」からユニゾンとなる/松木秀『RERA』
→ゾッとする。言われてみればまったくそうだ。ただひとつの音にまとまって国歌がおわる。


「止まったままの時計」がまたも惨劇を忘れぬためのアイテムとなる/松木秀『RERA』
→東日本大震災の報道でも止まった時計を見た。古くなっていない歌だ。「アイテム」というやや軽めの言葉も見逃せない。


人間の話をいちいち聞くような神様なんて信じられない/松木秀『RERA』
→矢井田瞳が「神様はいない」と歌うときに、オレはこの短歌を思い出す。


北朝鮮のアナウンサーに抑揚の似てF1のエンジンの音/松木秀『RERA』
→いや似てないだろうと思うんだけど、なぜだか頭の中で互いを似せていこうとする動きがおきて、結果として似てきた。


ロープへと投げられはねかえることもプロレスラーの仕事のひとつ/松木秀『RERA』


ごみ箱は何でもごみにしてしまうミカンの皮も記念写真も/松木秀『RERA』

→ミカンの皮とともに捨てられた記念写真が思い浮かぶ。特に焼かれたりやぶかれたりするわけではなく、ただ捨てられる記念写真。
ごみだからごみ箱へやるのではなく、ごみ箱にやるからごみになるという順序。
ツイッターでつぶやいたときに今回一番反応があったのはこの歌。


人間になりたくなくて泣いている赤ん坊十人に一人は/松木秀『RERA』
→妙にNの多い上の句だ。赤ん坊の泣き方ってそうかも。んなこたあないか。
十人に一人というのは、ほんとかうそかわからないがとても気になる数字。



つるつるの荒野にみんな立っていて動いたひとは転んだひとだ/松木秀『RERA』
→変わったことをすればたちまちダメにされる世の中を例えたのだろう。
中島みゆきは『裸足で走れ』で、ガラスだらけの荒れ地を裸足で突っ走れと歌った。



診断を受けました結果わたくしはキチガイと認定されました

キチガイという言葉さえ使えなくするキチガイをとりわけ憎む
/松木秀『RERA』



ぬばたまの、と書きかけ止める たらちねの母はいつしか六十歳(ろくじゅう)になる/松木秀『RERA』

→母に「ぬばたまの」という枕詞を使いそうになる気持ちがあらわれている。黒い感情は完全に隠されて、年齢だけが提示される。



パッケージに「うまいっちゃ!」と書かれたる仙台いちごがひどくかなしい/松木秀『RERA』
→たぶんまだそのイチゴは出回ってると思う。
オレは仙台でそれに関した仕事をしてるわりにはそのへんの記憶に自信がない。今度見てみよう(と思っても忘れるのはわかっている)。


だんだんとつらら成長するさまを六時間ほど見続けたりき/松木秀『RERA』



ああ特に汚く聞こゆ「ふるさと」の「忘れがたき」の「が」の部分など/松木秀『RERA』

→さっき君が代の歌もあったけど、歌のなかの小さなところをとらえている。ふるさとの忘れがたさとは汚いものだ、とは言わないけれども。



シャツを脱ぐとき一瞬の闇がありこの闇のおかげで生きられる/松木秀『RERA』



「ドングリがないんだクマー」あちこちでツキノワグマが騒ぎ立ており/松木秀『RERA』

→完全にクマを馬鹿にした言葉だが、ニュースの見出しはこれくらいやりそうだ。知らないっていうのはこういうことだな。



「包丁を持った男が押し入り」と死ぬまでにあと何回聞くか/松木秀『RERA』
→とてもよく聞く言葉だが、どんな状況なのか、全然ピンとこない。「押し入る」って、どう入れば「押し入る」なのか? 勢いよく戸を開ければそうなるのか?
テレビの向こうとこちらが別世界みたい。



盛大にカウントダウンして終わる地球最期の日のワイドショー/松木秀『RERA』
→最期の最期にやることが、盛大なカウントダウンなのか。なんのための盛大さなのか。テンション高く滅亡したいのか。
松木さんの作品では、テレビやら新聞やらの愚かな部分が明るみに出される。地球最期の日のテレビなんてまだわからないしこれは仮定の歌だけども、充分ありうる。



以上です。
流行をこまかく観察するなどしてうまいこと言ってはいるんだけど、その向こうに厭世感とでもいうのか、暗いものがあって、オレには個性的に感じられる。発見もアイデアも面白さだけでは済まされず、苦い味がついている。
たくさん引いたけど、おもしろい歌集でした。








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mk7911 at 13:00|PermalinkComments(0)歌集の感想 

2017年03月14日

「未来」2017年2月号を読む  ~小指からゴジラになって、ほか

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未来2017年2月号。


あすなろうあすはなろうという人に暗き檜は答えを持たず/渡部光一郎「あすなろ」


つけっぱなしで寝ていたようにカーテンを開ければ朝は夕焼けの色/盛田志保子

→おもしろい比喩です。起きたら電気とかテレビとかつけっぱなしだったということがときどきオレもあります。空が電気に例えられるのもおもしろいんですが、さらに朝と夕も重なってきます。


この鍵はだれかの指の味がする。わたしいつでもひざまずけるよ/蒼井杏「星ふる」
→指の味と鍵の金属の味ってどこかで交わるような気がして、よく思い返してみるとおそらく鍵を握ったあとの指が金属くさかったという記憶です。誰かの指、ってことは他人が使ってきた鍵なのでしょうか。
いつでもひざまづけるのは思いきりがよいですね。一種の強さだと思います。
それで、上の句と下の句がどう関係するのかはよくわからないんです。誰かの指の味を感じることや、ひざまずいたりすることには、気分のいいことではないはずで、なにか背負ってるものがありそうだなという感じがします。



湖底にはかつてあなたであつたはずの映写機ねむり僕が沈めた/本山まりの

水底の銀のひかりに沈みたるみずより重き実は傾きて/嶋稟太郎

→底に沈む歌ふたつ。沈む、というのもいいですね、詩がありますね。
一首目、眠ってはいても、映写機と言われるとなにか映像を映しているところを想像します。どんなものが水のなかにうつしだされるのでしょう。「沈めた」にはそうしようとする意志があり、あなたと僕の間に物語がありそうです。



認知症のひとと話せり夜のうみに溶くるむすうの雪を想いて/田中哲博







ここから未来賞第一作のお三方の歌を引きます。
小指からゴジラになっていくような怒りだと言うまずは頷く/山階基「流れる一瞬の」
→小指からゴジラ、はおもしろいです。怒りのあまりだんだん全身が黒くゴワゴワしていくんでしょう。しかしそのおもしろさゆえに、ほんとに怒ってるのか疑いたくなります。おもしろいこと言ってる余裕があるじゃないかと。うなづいて様子を見ているところでしょうか。


壊される間際のビルに嵌められた窓は窓ゆえただ閉じている/山階基「流れる一瞬の」
→ビルが人体だったら、窓を開けてそこから悲鳴をあげるでしょうか。壊されるまでまったく動じないモノの姿をとらえています。



ハムからハムをめくり取るときひんやりと肉の離るる音ぞ聞ゆる/門脇篤史「生活と発光」
→三句で温度をあらわしておいて、それが音にかかってきます。わずかな音をよく聴いています。
動物を直接殺してその肉を食らうような生活から遠く隔たっていても、よくよく聴けばこうした音があります。


恋人と両想いとを隔ててる空き地で雲を見ていたかった/本条恵「メグリズム」






対岸の灯 と呼ぶとき目の前にひろがる黒ださざめいている/氏橋奈津子
→これは一字空きがいいなと。一字空きのなかでも、一字ぶん黙るタイプの一字空きですよね。これが対岸とこちらがわを隔てている。灯のとどかない黒いところこそが灯を対岸のものにしている。さざめいてその存在をあきらかにしている。



眠ったら私は手紙で、運命じゃなかった人への手紙になった/坂中まなみ「Moving」



小川佳世子さんの「田中槐の連作について」という評論がある。
Aだと読めるものをAではなくBなのだと断定するために必要なものが欠けているのではないか。自分がそう強く感じたから、そのほうが自分にはおもしろいからBだ、では受け入れ難い。オレにはそのおもしろさは伝わってこなかった。


岡井隆さんが連載のなかで、
「選歌にあたつたときの感想を、によろつと述べた。」(「によろつと」に傍点)
と書いていた。
これがうれしい。感想とは「によろつと」述べるものなのだ。オレは「ぬらっと」やってきた。



唐黍の籠を背負へる婆(ばあ)様が足踏ん張つて立つまでを見つ/桑田靖之
→歌を読んでいて、自分もそれを見ているような気持ちになった。「までを見つ」に時間のひろがりがあるのかな。


レンジから取り出されずに冷えてゆくミルクみたいな一日がある/しま・しましま
→ある。コンディションが整っても、やる気がでても、それを発揮しないまま終わってしまう。オレの場合は休みの日に多いな。今日は何しようかなって考えてるうちに夕方になっている。



評のページから。
丘の上は夏の暴風虫も鳥も飛ばされながらかんがえている/平田真紀


何もかも終へて戻りし天井に無用の紐がつるされてをり/金村洋子


ビニールを破つたパンを食べないでしばらく観ててまづさうになる/三田村広隆

→開けたらすぐ食べるオレにはありえない世界だ。開けたらすぐ食べるから、まずそうになる感覚もわからないわけだが、そうか、そっちの世界はそうなっているのかーという興味があった。


新しき自転車は淡き紫のやや小ぶりなり心ゆさぶる/加藤ミユキ
→あたらしく何かを入手して幸せでいるときの感覚だ。この色、この大きさがこの方にとっては心ゆさぶるものなのだ。「淡き紫」「やや小ぶり」と、くわしく描こうとしている。




以上です。

『未来』に載ったオレの短歌のまとめはこちら。
http://matome.naver.jp/m/odai/2145087691179204501


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2017年03月12日

『小田嶋隆のコラム道』を読んだ

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『小田嶋隆のコラム道』を読んだ。

ミシマ社。1500円。2012年6月。

コラムの書き方について書いてある本。

帯には書店員のほめてる言葉が書いてある。オレの行ったことある仙台ロフトのジュンク堂書店の店員さんの言葉もあるが、その店は今はもうない。

書店の店員さんはコラムの書き方の本をどういうつもりで読んだのだろうか。
ほんとに読んだのかどうか疑いたくなるような帯文がならんでいるが、おもしろい本なのは間違いない。


オレはコラムを書くことには縁のない人間だった。しかし、このあいだ短歌結社誌「未来」で「その日その日」という欄の執筆を依頼された。囲まれていて短いし内容が自由だし、コラムだといってもいいくらいの欄だ。
残念ながらそれを終えてからこの本を読んだ。まあ、またなにかの機会に役に立つこともあるかもしれない。

小田嶋隆さんのことは枡野浩一さん経由で知った。ツイッターを長くフォローしている。笑ってるアイコンがタイムラインによく流れてくる。


印つけたところは以下のとおり。数字はページ数。




18
書けない時間は、ものを書く者にとって、決してムダにはならない。逃避であってさえ。


36
書き手が楽しめてないと、読者も楽しめない……というのはウソだが、書き手は、楽しめる書き方を探求せねばならない。
何より、自分自身の精神衛生のために。必ずしも、読者のためでなくても良い。


48
会話文として書いた文章は、筆者の文責から離れる


51
文章は、思考の足跡を書き残すことで、思考の到達距離を広げるツール


64
「才能」という考えほど若い人々を毒しているものはない

才能は、良い原稿を生み出したということから逆算される架空の財産みたいなものだ。


86
良い文章は、九五パーセントの普遍性に五パーセントの個性を付加したくらいのバランスの上に成立している。


105
文章は、失敗が許される分野だ。どんな手ひどい失敗をしたところで、ダメなコラムで人が死ぬわけではない。会社の業績にアナがアクわけでもない。とすれば、コラムニストは、ビジネスマンよりもずっと失敗に対して大胆であらねばならない。


111
文章の最後に、映像喚起的な一行を添えておく。と、文章全体に、叙情的な色彩が加わる。

最期に季節の話を持ってくる終わり方は、純真な人々の心をわしづかみにする。


113
結末の一行は、コラム全体とは別個な、ひとつの作品だと思ってかかれば良い。
その意味で、結末は、おもしろいフレーズでさえあれば、木に竹を接ぐカタチであってもかまわない。
かろうじてつながっていれば良い。



印をつけたのは以上。

おもしろいおもしろいと読んでしまうが、とてもためになりそうな本でもある。ほんとにこれで良いコラムが書けるかどうかは、読者それぞれにかかっている。当たり前だな。





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2017年03月11日

うたのかべ、1998年の穂村さん、その他の話題【2017.3.11】

2/28から今日までにネットのどこかに書いたもののなかで、まだここにまとまっていなくて、ここに載せていい内容のものをこちらにまとめる。話題六つ。





▼うたのかべ



http://www.tankachop.com/kabe/kekka.html
「大阪短歌チョップ2」の「うたのかべ」の結果がでた。短歌を募集して投票する企画。


「うたのかべ」でオレが星をつけたのは森下裕隆さんの歌でした。

集会に辿り着けない『変身』の下巻がどこにも売っていなくて/森下裕隆

たどりつけないっていうのもカフカらしい世界だ。「城」はそういう話だ。「変身」は短いから下巻なんてないんだが、あるいは長編だったらどうなるのかと興味をもった。



オレはだめだった。他の人が言われてた「テクで作ってる」っていう評がオレにもあてはまる。
テク以外のところで人をひきつけられればいいんだがなあ。
あと、ゴミ収集車の歌がけっこうあったので、題材で失敗した。

快晴の冠婚葬祭会館をゴミ収集車はむぐむぐと去る/工藤吉生



▼1998年の穂村弘インタビュー


「恒信風 穂村弘氏インタビュー 1998年」
http://www.koshinfu.com/homu.html
すげーおもしろかった。



いいこと聞いて、よし! と思ってもまたすぐ忘れて同じことでうじうじしてしまうな。もっとうまくちゃんとくっつかないものか。

穂村「今は存在しないものに対する憧れを持とうとすると、気が狂いそうになるんだ、必ず。で、今は存在しないものに対する憧れはあるけど、気は狂いそうじゃないっていうやつを信用しないんだよね。」
というのを読んで、オレのブログ「存在しない何かへの憧れ」のことかと思ってびびった。
そう言われてみると、オレはちゃんと憧れをもってないかもしれないなあ。「魂の偽物性」って言葉もでてきたけども、耳が痛い。目で読んでいるけど。

「菓子パンオナニー小僧」って言葉もでてきたな。
誰かがツイッターで「チンカス感想家」って言ったときに、オレだな! と思ったね。

実際にオレが書かれたことがあるのは「東北の粗大ゴミ」だけども、オレが大きく見えて仕方ないという気持ちが見えてしまっている。
竹原慎二が「広島の粗大ゴミ」と呼ばれたわけだから、オレがそれよりでかかったら駄目だろう。


自分のことをなんといっても、そこにあぐらをかかないようにしないと。憧れないと。本物の魂であろうとしないと。


荒々しくて鮮烈になりたいって穂村さんが言ってた。
オレは自分がどうなりたいとかってろくに考えてこなかったな。その場その場で苦しくない人になりたい、でもなるべく今のままでずっとなんとかならないかなって感じ。うーむ。


ブルーハーツかあ。高校の文化祭かなにかで「トレイントレイン」歌ったことがあった。ほんものを動画でいま見た。
いくつか動画を見たけど、それぞれにちがう動きをしまくっている。
千回やってきたことであっても、今のこの一回をそのなかで最高のものにしようとする、し続けること。




▼ブログのプロフィール


ライブドアブログのスマホ版の下のほうにプロフィールをつけてる人が多いから「存在しない何かへの憧れ」につけてみた。初めてきたときに、どんな人が書いてるかがわかるといいかなーと。
http://blog.livedoor.jp/mk7911/
でも、プロフィールってなにを書いていいかわからない。いくつかあらかじめ用意してあるけど、どれもしっくりこない。

「短歌をつくったり読んだり紹介したりしています。未来短歌会・彗星集所属。新聞歌壇や雑誌にも投稿しています。平成28年度「NHK短歌」年間大賞。宮城県在住。」
と書いてみた。

なんかもっとオレって特色ある人間のような気がしたけど、プロフィールに書こうとすると文字にならない。気のせいなのかもしれない。
短歌をつくってるとか未来短歌会にいるとか、普通っぽいことしか書くことない。賞とか成績に関してはゴテゴテ書くといやらしいから一つにした。

「ぬらっとしています」とでも書こうか。

ほんとは「短歌をつくってる」って普通じゃないんだけどね。普通に見えてしまうようなところにおさまっている。

「ぬらっとしています」ってプロフィールに入れた。「なんなんだよ」と思ってもらえればいい。こういうのがあると記憶にひっかかるだろう。
真面目に書いて「はいはいご立派ご立派」だとつまらんからな。



▼選ばれなかった



短歌の投稿先、参加しているところを数えたらざっと20くらいあるんだが、
掲載率八割以上は五ヶ所にすぎない。二割以下の場所が六。のこりは三割以上七割以下の確率で載る。多くが『選ばれなかった』でできている。

あらためて、結社が核になっていることを確認した。ほとんど唯一の安定した毎月の発表の場だ。




▼連投しなかった話



ツイッター上で不満をぶちまけなかった話|mk7911|note(ノート)
https://note.mu/mk7911/n/nb9e091436ccf
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ツイッターで連投しようとしたことを、やっぱりやめて、有料のnoteにだけ書いた。前に「納得いかない」っていうタイトルでこのブログに書いたものは消して、加筆して有料noteにまとめた。
有料にするだけで、プチ炎上みたいなことを防げる。みんな課金してくれるならそれもいいけども。


しばらくイライラしていた件を、事を荒立てずに処理できたので満足した。

今までのいろんなトラブルも、時間をかけて相手に歩み寄ればだいぶ防げたにちがいない。それをくりかえして信頼を得るわけだ。



▼トトロの劇



ポッドキャスト「僕たちだけがおもしろい」略して「僕おも」の

僕おも 2017/02/27 「Googleは神だがYoutubeも神ではないか」 http://bokuomo.seesaa.net/article/447478499.html


で言ってたとなりのトトロの劇を見た。なんか最後まで見てしまった。

"劇「となりのトトロ」" https://youtu.be/iH3c_Rb6rdw
トトロの人がおもしろくてサツキとメイの人がかわいい。




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