2016年05月27日

片付けていたら目にとまった二つの歌

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スマートレターの封筒を収納場所にしてしまう https://t.co/dxwKM84OUt

片付けていたらなんとなく開けて読んだ冊子から、今回は2首だけ。



肛門に何か漢字を入れるなら「今」という字だ「出」は嫌だな/ナイス害「なんたる害」
→バカリズムが考えていそうなネタだ。「今」をからだの中に入れることに神秘を感じた。
「出」は意味からしても入れるのに適さないだろうが、形から見てもたしかに入っていかなそう。
二つの可能性を示されたことで、他の文字はどうだろうといろんな文字をお尻に入れる想像をしてしまった。



はらわれる ひかり の ごとき いきもの の Ok,it's the stylish century/堂園昌彦
→フリーペーパー「stylish century なう」から。
会津八一みたいなとぎれとぎれの平仮名からの英語。じりじり這っている虫がパッと払い除けられるみたいだ。
ひかりは大抵は夢だの希望だののように肯定的にとらえられる。大切なものがそうやってパッと振り落とされてしまう世紀か。



こういう薄い印刷物は、気軽な気持ちで読み返してしまうな。


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2016年05月26日

去年一年でつくった短歌の数

ちょっとツイッターに一年間に何首つくったかという話題がでたから書く。


オレは去年一年で746首つくった。
258首が発表された。発表というのは、なにかに選ばれたり掲載されたり、自分でブログやツイッターに載せたということ。後者はめったにやらないけれども。

一日二首のノルマにしてるから、365×2=730首がノルマだ。746首というのはほぼノルマどおりだ。ノルマを上げたら増えるんだろうか。いやいや、作歌が苦痛になりそうでこわいな。一日二首がオレにとって無理がかからないペースだ。

一昨年は851首。発表239首。それ以前は数えてない。
たぶん過去にさかのぼるほど増えてると思う。
4桁いくと「多いな!」って感じがするね。
発表は月に20首程度だが、結社で5~10首出て、そのほかに新聞や雑誌やコンテストで世に出る。新聞は四種類、雑誌は三~五誌に投稿している。弾が増えればもっと撃てるが、今はこのくらい。



塚本邦雄は毎朝10首つくったって何かに書いてたなあ。
小高賢さんの本には、毎日10首つくれ、慣れないはじめのうちは3首でもいいということが書いてあった。

極端な例だと、出口王仁三郎は一日200~300首つくるって言ってたっけ。100もの結社に所属したと。



オレは七日で100首つくる企画を、13時間半でおわらせたことがあるけど、今はもう無理だろうな。

これからは一日二首を維持できるかそれとも減るか、だろうなあ。これまでより増えることはないだろう。


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2016年05月25日

山田航『桜前線開架宣言』を読む【2】11-20  ~過去にだれともであわないでよ、ほか

山田航「桜前線開架宣言」を読む。
2回目。11人目から。



▼11



そこにいるときすこしさみしそうなとき。
めをつむる。あまい。そこにいたとき。
/今橋愛

→たぶんこの人の歌をある程度まとまった量で、読むのは初めてだけど、個性的だなと思った。
さみしそうな顔が魅力的な人がいて、その人のことを目を閉じて思い出していて、あまいような気分にひたっている。……みたいに読んではみたが、そうして繋げることより、途切れぶりの方に味がしていそう。


過去にだれともであわないでよ
若いきすしないでよ
今 産まれてきてよ
/今橋愛

→無茶なことを三つ求めている。無茶だけど、相手の過去が気になったりそれを無くしたくなることは、わかる気がする。いわゆる独占欲、なのかなあ。まっすぐに求めることで無茶さが露出している。


かなにもかもがゆめみたいだねー
そうかゆめか

それでがてんがいった

わかった
/今橋愛

→ここは夢か、それとも夢みたいな現実なのか。みるみるさめてゆく。
空いている行がこわい。こちらには何もないように見えても、きっとここで様々なことが考え合わされて結論が導かれている。



▼12



焼けだされた兄妹みたいに渋谷まで歩く あなたの背中しか見ない/岡崎裕美子
→のっぴきならない関係が描かれている。
焼けだされた兄妹は離れずにぴったりついていることだろう。


豆腐屋が不安を売りに来りけり殴られてまた好きだと思う/岡崎裕美子
→豆腐屋のなにが不安なのだろう。ラッパやなにかの音が不安なのか。例えばオレの家のほうにくる豆腐屋は「森のくまさん」のメロディーを流しているが、それでもなんか不快で嫌いだ。
あるいは崩れやすさか。
殴るイメージが豆腐のイメージに当たり、ずぶずぶっといく。


泣きそうなわたくしのためベッドではいつもあなたが海のまねする/岡崎裕美子
→決して他人がのぞいてはいけないところを見てしまったような気持ちになる。無性にかなしく、胸が痛くなってくる。
それはオレの経験やなんかからくる痛みだが、その経験やなんかをここで言うわけにいかないしその必要もない。



▼13



ポップコーンこぼれるみたい 簡単に無理だって言う絶対に言う/兵庫ユカ



使い方だれもしらないこの星に何巡目かのジョーカーが来た/兵庫ユカ


ルールのわからないゲームに入れられてしまうことが子供のころはあったなあ。それがすすんでいくのは不安だ。そこでなんらかの災難がやってくると解決方法がわからないし、去ってもまたなにかありそうで不安だ。
そんなことを思い出した。


きっと血のように栞を垂らしてるあなたに貸したままのあの本/兵庫ユカ



▼14



いちにちの長さのなかの数秒はパチンコ台を拝む人見つ/内山晶太
→笑える光景のようだが、それを見た時間のわずかさを思うと、なんだかしんみりする。その数秒だけが自分とその人の接点なのだ。


死ののちのお花畑をほんのりと思いき社員食堂の昼/内山晶太

列車より見ゆる民家の窓、他者の食卓はいたく澄みとおりたり/内山晶太

→どの歌も同じような感想になるけど、生きるための日常が遠くはかなく感じられてしんみりとする。


山田さんが書いている、第一歌集に若書きの作品をおさめない内山さんのスタイルのことが印象にのこった。



▼15


わがために塔を、天を突く塔を、白き光の降る廃園を/黒瀬珂瀾
→オレが辞書登録した唯一の歌人、黒瀬珂瀾さん。この歌が第一印象だった。
今見てもよくわからないけど。なんかかっこいいということだけで印象に残った。


中心に死者立つごとく人らみなエレベーターの隅に寄りたり/黒瀬珂瀾

サイレンの止まざる夜を川の字の棒と呼ぶには短き吾児よ/黒瀬珂瀾




▼16



解体の工事にもがき古いビルの鉄筋ぐにゃぐにゃと雨を受く/齋藤芳生
→曲がった鉄筋がもがいているようだったのだろう。解体から逃れようというのか。
下の句は七七にすると 鉄筋ぐにゃぐ/にゃと雨を受く になる。四五五か。このかたちにぐにゃぐにゃ感がありそうだ。


もしかしたらここは大きな砂時計の中かもしれず 砂にまみるる/齋藤芳生
→砂時計で砂にまみれることは、そのまま時間の流れにまみれることだな。



▼17



もう何処へ行ってもわれはわれのまま信号待ちなどしてゐるだらう/田村元


封筒に書類を詰めてかなしみを詰めないやうに封をなしたり/田村元

→気をつけていないと悲しみが封筒に入ってしまうというのか。悲しみは空気中をとんでいるのか、からだや指先から滲んでくるのか、はてさて。


湯の中にわれの知らざる三分をのたうち回るカップラーメン/田村元
→湯をかけた麺はわりとおとなしく見えるが、麺には麺の苦しみがあるのかもなあ。
「われの知らざる三分」か。それを知る日は生きてるうちには来ないんだろう。



▼18



手花火が君の背後を照らしゐしさびしき夏をわれは閉ぢけり/澤村斉美
→手花火が出てくるとオレは弱いかも。なつかしくって。
背後を照らすというのがどういう状況なのか、イメージのなかでいろいろに「君」を回してみたりした。
アルバムの写真と考えてみた。


時をわれの味方のごとく思ひゐし日々にてあさく帽子かぶりき/澤村斉美
→風がつよく吹いたら帽子が飛んでいってしまうだろう。おだやかな気候なのだ。そのような時を過ごしていたんだと読んだ。


釣り銭を拾はむとする人のかほに自販機の灯はとどかざりけり/澤村斉美
→短歌をやってるような人なら「とどかざりけり」で思い出す有名な一首がある。子規は寝ながら藤を見たというが、自販機をどこから見ているのだろう。
飲み物を買うときに顔の消える瞬間をとらえた。



▼19



自転車の灯りをとほく見てをればあかり弱まる場所はさかみち/光森裕樹
→これも灯りを見ている歌。灯りがとどかなくなることはそれを見る心を動かすのだろうな。
「あかり弱まる場所はさかみち」の語順に妙がある。坂がどうというより先に灯りがある。


ゼブラゾーンはさみて人は並べられ神がはじめる黄昏のチェス/光森裕樹
→高いところから見ている。偶然信号待ちをしている人たちが、神々がその意志で並べた駒だった。すぐに横断する人々が、神にはどう見えているのか。


人の繰(く)るマウスカーソルを目に追ふに似てさびしかり紙飛行機は/光森裕樹



▼20



スプライトで冷やす首筋 好きな子はゐないゐないと言ひ張りながら/石川美南


グランドピアノの下に隠れし思ひ出を持つ者は目の光でわかる/石川美南

→子供のころのいろんな思い出がその人をかたちづくっているんだろうな。
グランドピアノの下にいる子にだけ与えられる光があると考えると、魔法みたいでいいなと思う。


霊長類最後の夕べ沸騰する空を見てゐる老婆の話/石川美南



これで半分。つづく。






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んじゃまた。


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2016年05月23日

問題です

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空欄に入る文字を答えよ(5点)

え→ね→?→?→り→?→み→?→

で一周している。なんの意味なんだろう。


これは仙台駅ちかくの、ハピナ名掛丁からアエル方面にむかう交差点にあった。


たまにはこういう短い記事もいいでしょう。





短歌五首
https://note.mu/mk7911/n/n7fb0df303a22

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mk7911 at 18:27|PermalinkComments(1)日常・日記 

2016年05月21日

山田航『桜前線開架宣言』を読む【1】1-10  ~少し多めのティッシュだけだよ、ほか

山田航『桜前線開架宣言』。


この本には、1970年以降に生まれた歌人40人の紹介と作品が収録されている。
それをオレは二日で一人ぶん、つまり80日くらいかけて読んだ。非常に刺激的な読書だった。


ここではほかのアンソロジーでもやってきたように、丸がついた歌を取り上げて、何か言ったり言わなかったりしていく。
一人あたり2~5首引いていく。2首なのか5首なのか、どれほどコメントするかでオレの得意不得意があらわれる。

一回の記事で10人ずつとりあげ、全四回で完結させるつもりでいる。

この本にあるのは抜粋なので、一首から受ける以上のことはあまり書かない方向でいきたい。



▼1



みづからは触れ合はすなきテディベアの両手の間(あひ)の一生(ひとよ)の虚空/大松達知
→あるあると思う。ぬいぐるみで遊んでいるときに、ぬいぐるみに何かポーズをとらせてみたりする。
オレの子供の頃は「おそ松くん」が流行っていて、シェーをやらせてみたりした。
そんなときに、ぬいぐるみの体の動かなさ、不自由さに気づく。

ぬいぐるみの動物はだいたい両手が短くて、両手を合わせることも難しい。
両手を合わせなくてもテディベアは一生を過ごすことができる。人間ではとても厳しい。そこに人間の一生とテディベアの一生のはるかな違いがある。
「の」の連続により、テディベアが虚空へとするっとつながる。


成績を上げます。がんばります。と書く賀状さみしも名を見ればなほ/大松達知
→成績のことが書かれた生徒の年賀状を見たら、めでたい気分や休日気分がややかげってきそうだ。
この生徒は成績のことを自分で気にしているのだろう。内容もさることながら「。」に生真面目さがうかがえる。
真面目だがそれがなかなか成績に結びつかない生徒なのだろう。


誤答なる選択肢③「日本は老人を減らさねばならない。」/大松達知
→誤答の選択肢から問題を想像するのが楽しい。「次の①~③のうち、上の文章の内容として正しいものを選べ」とかそういう問題だろうか。
選択肢として用意されているということは、少しは選んでしまう生徒がいて、問題作成者がそれをわかっているのだろう。あるいは冗談混じりなのか。

そして、この③を選んでしまう生徒は、こういう内容がテストの問題文に書かれているわけがないとは思わないのだろう。
ただの誤答ではない妖しさを放った選択肢に見えてくる。


シマウマの真似せよかしと命じればからだくねらす十三歳は/大松達知
→十三歳って中学生だし、大人に言われても変なことをそろそろやってくれなくなってくる年頃だ。シマウマの真似をやってくれる最後の方の年代になってくるのではないか。
そして体をくねらせる。シマウマはシマによってそれとわかるが、いくら動きを真似てもシマウマとはわかってもらえないのでは。

そういえば、英語の授業で、カードを引いてそこに書いてある英語をジェスチャーで表現して英語で当ててもらうというのをやらされたことがあるなあ。
オレのときは「バドミントンをする」で、できなくて変えてもらったら「エビフライを食べる」が出てきた。それもできなかったと記憶している。

オレのつぎの伊藤君は「エビフライを食べる」をクラスみんなの前で実にうまくジェスチャーしたんだよ。
誰が見てもあれはエビフライだった。エビフライが見えるようだった。オレは完全に負けたと思った。自分は劣っている! と思ったね。

このシマウマも、もしや授業でやらされているんじゃないかと思った。バドミントンやエビフライのジェスチャーよりも難しいなあ、シマウマは。



▼2



空くじはないでもたぶん景品は少し多めのティッシュだけだよ/中澤系


中澤系さんはbotを長くフォローしてたんで、けっこう歌は見ている。ここはさらっといきたい。

くじのティッシュといえば残念賞の景品としてお馴染みだ。空くじがなくて最低でもティッシュがもらえるのは親切だが、当てたときの景品が多めのティッシュではショボすぎる。

中澤さんのことだから、これは単なるくじ引きの話ではなくて世の中のシステムのことなんでしょう。ティッシュばかりで変なくじ引きだなあ、と読んで通りすぎるようなことは許されない。
敗者を守りつつ勝者の暴走を止めようとした結果、みんな残念賞程度になってしまう。まるで希望がもてない。「たぶん」が不透明だ。誰もこのくじ引きについてはっきりと知らないのだ。


夜の教室 それぞれの生それぞれのペットボトルが机上に並ぶ/中澤系



▼3


滑らかにエレベーターは上下して最後までビルを出ることはない/松村正直


犠打という思想を深く刻まれてベンチに帰る少年のかお/松村正直


こうして続けて引くと、中澤さんと松村さんが似て見えてくる。人間のつくりあげた仕組みのなかの閉塞感。


感情をあらわに見せて自動車が軽自動車を追い越してゆく/松村正直
→追い越すときにスピードを上げて、それとともにエンジン音も上がる車の様子はなるほど感情的ととれる。


包まれて妊婦のごときオムライス食べたりわれはケチャップを塗り/松村正直



▼4



子はにがき綿飴ならむ 眠る子の親指われが含みてみれば/高木佳子


たとふればパーレンとして見る虹に閉ぢられてゐる吾の地平は/高木佳子

→そんなこと考えたことなかったなあ。
この地平がパーレンの中ならば、まあ捕捉的なわけで、パーレンの外のほうがずっと広大だ。虹から世界の広さを感じる。



▼5



なにゆえに縦に造るか鉄格子強度のゆえか心理的にか/松木秀
→横だったり縦横両方や斜めでもいいはずだよなあ。
強度なら納得だが、心理的なものだとすれば、それはどういう心理にさせるためのものなんだろう? なんでもなさそうなものに何者かによる心理の操作が潜んでいるとしたら不気味だ。


飛び降りる人とか首を吊る人も大抵の場合「前向き」である/松木秀
→子供の口ごたえか揚げ足とりみたいな歌だが、有りだなと思う。
「とか」と自殺者を大雑把に括っているあたりが邪悪に楽しい。「大抵の場合」ってことは、後ろや横向きになって飛び降りる人などもたまにはいるんだろうな。



▼6



両腕をひらきて迎へゐるわれをまつすぐ透過してゆくひとか/横山未来子
→「透過」という単語は自分には出てこないなと思って読んだ。


一枚の水つらぬきて跳ね上がるイルカをけふの憧れとせり/横山未来子
→これも貫通する歌。
水が「一枚」とされる。うすい壁のようだ。単位を変えると性質が変わる。
「けふの」と時間を限定されている。その短さもまたよい。明日には明日の憧れがあるだろう。


きみの指に展かるるまでほのぐらき独語のままの封書一通/横山未来子


二匹の蟻遇ひてははなれゐるあたり日傘の影のなかのわが影/横山未来子

→日傘をさしてアリを見ているというのが表面のところだろう。
すれ違う黒いものと、二重になっている黒いものが出てくる。これがなにかの暗示のようで、なにか考えたくさせる。
「なにか」ばっかり言っている。




▼7


ぬばたまの夜のプールの水中で靴下を脱ぐ 童貞だった/しんくわ
→「ぬばたまの夜」とは似てるようでちがうが「プールの水中」に言葉のだぶつきがある。水に入る前に靴下を脱げばいいものを水中で脱いでいるところにもなにか無駄な間抜けなところがある。童貞とはそうしたものか。


窓を開けても風の入らぬこの部屋によるがきてよるがなかなか立ち去らぬ/しんくわ
→風のないムワッとした夜を想像した。途中からひらがなになり、字余りもあり、「よる」が長く感じられる。


一年を身体で表すならば、秋は尻だ。尻は好きだな/しんくわ
→どうやったら秋が尻になるのか。春夏秋冬を、頭胸尻足、にでもしたのか。
アルフォンス・ミュシャが四季をそれぞれ女性に見立てた絵のパズルがオレの部屋にあるが、こちらの歌は四季全体で一人の女性なんだろうな。
言い方はいやらしいようだが、秋が好きという歌だと読んだ。


ドブネズミのように美しくなりたい 金網から飛び降りたブル中野のような美しさがあるから/しんくわ
→たとえをたとえで返して、わかるような、いよいよ混乱してしまったような。わかる人にはたまらないのかもしれない。



▼8


ひとりでも生きていけるという口がふたつどちらも口笛は下手/松野志保


真夏日の螺旋階段なかばにて君という鮮烈なダメージ/松野志保

→ある人とすれちがうだけで心に傷を負うということは経験がある。
真夏日、螺旋階段。シチュエーションがいいなあ。


ぼくたちが神の似姿であるための化粧、刺青、ピアス、傷痕/松野志保



▼9


人間をすきじゃないまま死にそうなペット 宇宙の はるなつあきふゆ/雪舟えま
→ペットの心がわかる前提でここでは「人間をすきじゃない」と言っている。すきじゃないものとずっと一緒にいて、辛い一生だったに違いない。
宇宙にめぐる四季はどんな命もやわらかく包んでくれそうだ。そんなことを感じさせた一字空けやひらがな表記だ。


鹿の角は全方角をさすだめな矢印、よろこぶだめな恋人/雪舟えま
→鹿の角を矢印に見立てたのが面白い。恋人は、どうにでも見えるそれの喜ばしい一面だけを見ているのか。


両親よ何も怖れず生きなさいニューヨークビッグパフェをおごるわ/雪舟えま
→知ってた歌だけど、あらためてすごいと思った。
怖いものなし感がすごい。天下無敵かよ。アメリカ人がビッグというんだから、さぞかし大きいんだろうな。両親は三口くらいしか食べなさそう。



▼10



弟のポテトこっそり抜き取ればJOKERと細く書かれてありき/笹公人


自転車で八百屋の棚に突っ込んだあの夏の日よ 緑まみれの/笹公人

→なつかしい、ちょっと古い漫画のようだ。頭から野菜をかぶるなんて、そんなうまいこといくわけない。でもすごく想像がつく。


「みかん箱」なる芸名候補を見たときの二人の乙女のピンチを思え/笹公人
→思えというから思ってみる。
地味で、ものすごく苦労しそうだ。売れない頃はさかさまにしたビールケースの上に立ってネタをやった、なんて芸人の話を聞いたことはある。




次回につづく。







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んじゃまた。


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2016年05月19日

日本経済新聞の「歌壇」(2016.5.15)に短歌が掲載されました

書くのがすっかり遅くなりましたが、2016年5月15日の日本経済新聞の「歌壇」、いわゆる日経歌壇に短歌が掲載されました。


これは良い門ですなあと見ていたら向こう側から開いてしまった/工藤吉生
(穂村弘選)




12首載るうちの11首目です。

門にはいろいろあって、装飾がうつくしいものや立派なものもあります。それは閉まってる時に限って見られる美しさであります。

これは以前

これは良い門ですねえと見ていたら向こうから来て開いてしまった

として別の場所に送ったものを推敲しました。基本的に、歌はあまり捨てずにしつこく練り直して送っています。




この歌を含んだ、新聞に載った短歌のまとめを更新しました。
http://t.co/HGIHUKNZ1i






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ツイッターで些細な悪口を書かれています。そういう話が好きな方はこちらもどうぞ。

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mk7911 at 08:46|PermalinkComments(0)新聞歌壇 

2016年05月17日

「短歌研究」2016年5月号を読む  ~茄子が食えない、ほか

「短歌研究」2016年5月号。


冬の夜を階下に独り老は寝る掛布団の端(はし)を握るなどして/田中子之吉「老の生」
→下の句の小さい動作によって、冬の夜や独りの雰囲気がより出てきた。


わが腕を離れゆきたるうすき肩遠くなりたり動く歩道を/八城水明
→別れを詠んだ歌は数々あるだろうが、「動く歩道」でおっと思った。歩いていないのにスーッと遠くなっていくことと「うすき肩」がなんとも儚い。


洋式のトイレの水は渦巻きて吸ひこまれまたしづかに満ちぬ/由良琢郎「無償うつくし」
→それはそのとおりで、特にこれといった工夫もないようなのだが、こうして言葉にしてみると見慣れたものにあらたな表情が見えるようだ。
激動の人生ののちに平穏がやってきました、みたいな。いや関係あるはずないんだけど。


この朝もレンジでチンする貧すれば鈍するごとき言葉にあれど/野田光介「良いひばり」


百舌啼けば紺の腹掛新らしきわかき大工も涙ながしぬ/北原白秋『桐の花』


プルトップ引いて三時の桃を食む盆地を染めし西野の桃を/三枝昂之「やなぎの春、ももの春」

→プルトップからの盆地を染めし西野の桃、の展開が大きくていいなあ。サッカーで言うと、逆サイドへの大きなパスが通った感じかなあ、と思ったりした。
おやつに桃かあ。食べたくなるなあ。


よくも付けたと思ふはわれらヒトばかりギンメッキゴミグモ風に揺らるる/永田和宏「固有名詞」
→おもしろい生き物の名前がたくさん出てくる一連。虫を上から目線でおもしろがっているばかりではないのは「ヒト」の片仮名表記から察せられる。途中から人間のフルネームが出てくるのもそうだ。
虫から人への転換があざやかだ。これもひとつの「短連作」の作り方だろう。

オレは確か以前ゴミムシのでてくる歌をツイートしたことがあるぞと思って探したら、それも永田和宏さんの歌だった。角川「短歌」2013年8月号にこういう歌がある。

ゴミムシとゴミムシダマシ歓びはゴミムシにこそありと思はめ/永田和宏「秋さらば」



もうこんな稚(おさな)き顔を子は描(か)かず十年前の父の日のかお/吉川宏志「春はまだ」
→子は十年ぶん年を取り絵が変わってくるし、父も十年ぶん年を取り顔がかわる。一枚の絵から二つの時間の流れが見える。


車椅子風のふかへんはうにむけ君に吸はせし煙草のいくつ/吉岡太朗「沼」


待ち合わせもろくにできない 茄子がまずい 君に会いたい 茄子が食えない/石井僚一「おまえの声じゃねーと寝れねーんだよ」

→茄子はあんまり人を待ちながら食べるものじゃない。茄子を食べながら君にも会おうとしていると読むときびしい。待ち合わせに失敗して茄子を食ってると読めなくもないが。

二つの場面が交互に切り替わる。関わりなさそうで、しかしなんだかどちらも苦しんでいる。根底には似たものがありそうだな。
あるいは夢の中だったりするのか。「寝れねー」結果、悪夢を見ていると。
ナスを「茄子」と漢字表記にするとちょっと人名っぽいことを思った。



金属のひっかき傷より白く浮く雲も地球のアプリのひとつ/井辻朱美「梅王丸の散歩」


反論に移るまでの間バスーンのやうなをのこになりたる我れか/中島行矢『モーリタニアの蛸』

→おもしろい例えだ。バスーンの音が頭の中で、不満を持ちながら相槌している男性の声にかわってくる。


町角のポストのなかに隣り合うかなしい手紙やさしい手紙/鳥居『キリンの子』
→見えないものを想像する歌。
ポストのなかが、まず見えない。ポストを開けて中を見たとしても、こんどは手紙の中が見えない。二つの透視がある。
「やさしい」「かなしい」は対比のようでよく見るとそうでもなく、シンプルながら平板でない。

あるいは、二通の手紙を投函したという歌かもしれない。もう自分の手を離れた手紙を思っている。そう読んでも、良い歌だと思う。


楽園で不老で不死でアダムしかいないだなんて 退屈で死ぬ/天野慶『次の物語がはじまるまで』
→楽園の特徴がそのままかんたんに地獄になる。「退屈で死ぬ」の「死ぬ」も不可能を承知で言っているのだ。


『一生に一度は見たい絶景』を立ち読みの後脳に蔵えり/芹澤弘子







オレの短歌。
短歌研究詠草は2首。米川千嘉子選。

光陰は矢の如く過ぎオレはいま二度寝を終えて三度寝に入る/工藤吉生

昼の墓地に鳥と鳥とが鳴き交わす死ぬとのんびりできそうだなあ/(同)



うたう☆クラブは佳作。星なし。斉藤斎藤選。

凧揚げのやたら上手な姉さんがさっきからずーーっとやっている/工藤吉生




うーむ。まだまだだなあ。
また来月。







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2016年05月16日

「NHK短歌テキスト」2016年5月号を読む  ~一枚の刃となりたり坂は、ほか

「NHK短歌テキスト」2016年5月号。


あめんぼの足つんつんと蹴る光ふるさと捨てたかちちはは捨てたか/川野里子『五月の王』


金曜といふ語うつくし蜂蜜の壜提(さ)げて金曜の橋わたりきぬ/雨宮雅子『昼顔の譜』

→金、蜂蜜、金、と歌全体が金色に輝いているみたいだ。そのなかに橋がある。


緋の色の自動車(くるま)がくだりゆきしより一枚の刃となりたり坂は/真鍋美恵子『彩秋』
→緋の色が血だというのか。車が流れおちる血の一滴となる。血が出てから刃物が生まれるという順序もおもしろい。


転がるは心地よからむ風の坂吹かるる紙にうらおもてあり/栗木京子『綺羅』
→紙は吹かれて転がっている。「心地よからむ」や「うらおもてあり」でその吹かれぶり、転がりぶりが生き生きと描きだされる。


過ぎゆきてふたたびかえらざるものを なのはなばたけのなのはなの はな/村木道彦『天唇』
→字の形に特徴があったり、視覚にうったえる効果を持つ歌は、本来の縦書きでこそぞんぶんに持ち味を発揮できるのだろうけれども。
ひらがなにくらくらとする。なのはなに取り囲まれるようだ。




入選歌・佳作歌。

ベレー帽かぶりし佐佐木幸綱を想像しては一人笑いす/松木秀
→これを佐佐木幸綱さん本人が 「帽子」の佳作に選んでいるのがおもしろい。
こういうことってたまにある。選者が選者本人を詠んだ投稿歌を選んでいる光景。

つい、右のページの幸綱さんの写真に想像でベレー帽をかぶせてしまう。



フラレてもつながっている空の下なんぞと言ってまた嫌われる/本田純子


お前だよ赤い歩行者信号のランプのなかに立ち尽くすのは/西村曜

→オレじゃねえよと言いたくなる。でも、決まってしまったのだ。
永遠に赤一色の空間で停止していなければならない。なんの罰だというのか。






オレの短歌は二首載った。

年間大賞発表のページに例の

生命を恥じるとりわけ火に触れた指を即座に引っ込めるとき/工藤吉生

が載った。選評は以前テキストに載ったときと同じ。
このことについてはこちらの記事にも書いた。
http://blog.livedoor.jp/mk7911-akogare/archives/51950615.html


また、短歌de胸キュンの佳作に一首載った。

カッコーが鳴ったら渡る青信号このカッコーは嘘をつかない/工藤吉生


んじゃまた。


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2016年05月14日

工藤 吉生 短歌集【ブログ版】をつくりました

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工藤 吉生 短歌集〈ブログ版〉

2015年2月に55部限定で作成した32ページからなる冊子「工藤 吉生 短歌集」をブログの形で公開しました。

工藤 吉生 短歌集【ブログ版】
http://blog.livedoor.jp/mk7911-kasyuu/


冊子「工藤 吉生 短歌集」には、2011~2014年に作られた短歌から155首を選び収録しました。ブログ版では、冊子限定の15首を除いた140首を公開します。

冊子での文字の入力間違いを訂正したほか、「備考」を大幅に新しくしました。
各ページに「備考」ページへのリンクを貼りました。備考には、初出が記載されているほか、主に紙媒体でいただいた評を紹介しています。

ページをめくりながら読むタイプの通常版と、一気にスクロールして読めるロング版をご用意しました。内容は同じです。

冊子の紙面の画像をつけました。縦書きでも横書きでも読めるようになっています。



▼短歌集をつくった経緯


http://t.co/cNVU1kdIu1

短歌集を紹介したツイキャスがあるので、この歌集についてもっと知りたい方は録画をご覧ください。オレの肉声が聞けます。しゃべり方には多くの情報が含まれていると思います。



録画と内容が重なりますが、この短歌集ができた経緯を言いますと、まず2014年の秋ごろに知り合いから「安く印刷できるところがあるから短歌を印刷してみないか」と誘われたのです。
自分にはまだ早いのではないかとも思ったのですが、薄い冊子を試しに作ってみることにしました。

そして2015年2月に、5000円+交通費で30冊の印刷物ができました。そして、ツイッターで欲しい人を募って無料で送りました。また、お世話になった方に送りました。送料と手間がすごくて、有料にすればよかったと思いました。
また、オレはパソコンがほとんどできないので文字の入力を知り合いに頼んだのですが、打ち間違いが多く、すべてを訂正しきれなかったのが痛恨のミスです。校正の大切さを学びました。


すぐに30冊がなくなったので25冊を追加し、それもなくなりました。
10冊でも余るんじゃないかと思っていたので、うれしい誤算でした。



▼歌集と短歌集


歌集ではなく「短歌集」なのは、枡野浩一さんの影響です。「歌集」が短歌の本であるのを知らない方が世の中には少なからずいると思います。
まあしかし実際には短歌を自分でも作っているような方ばかりに配布したのでありますが。

「歌集」という言葉はオレにはまだ重いです。この冊子はオレには「第一歌集」という位置づけではなく、「ためしにつくってみた初めての印刷物」です。



▼ブログの形にした経緯


一年前の印刷物をブログにしてみたのは、ツイッターで歌集の話題が盛り上がっていて、自分にもあったなと思ったのが始まりです。
自分のところにももう残りがないので、何かに残しておきたかったのもあります。

これから欲しいと言っていただいても印刷物の形ではお送りできないので、せめて雰囲気だけでもお届けできればという気持ちでした。

ブログにしたのは、オレの思い通りにできるのはブログだからです。ほかの方法を知らないからです。オレが作れるのはブログとツイッターくらいなので、それでどこまで泳げるのかやってみたかったのです。


打ち間違いの多い、
無料といいつつお金のことで泣き言を言ってしまった、
むだにサイズのでかい、
手書きの解説が読みづらい、
不完全な短歌集のことはオレの中でずっと引っ掛かっていました。

これで少しだけ気が済みました。

次にいつか印刷物をつくることがあったら、この反省をいかしていきたいです(当分は作らない気がします)。







以上は短歌集の「はじめに」「あとがき」を再構成したものです。そういうものをつくったので、お知らせでした。

工藤 吉生 短歌集【ブログ版】
http://blog.livedoor.jp/mk7911-kasyuu/


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2016年05月13日

■工藤吉生(くどうよしお)の短歌【さらに100首】

工藤吉生(くどうよしお)の短歌【さらに100首】

ようこそおいでくださいました。主な50首 http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52107166.html 以外にさらに工藤吉生の短歌をお読みくださるという、ありがたい方のために、近作を中心にどーんと!100首をご用意しました。

・短歌総合誌への投稿作品
・結社誌「塔」「未来」
・新聞歌壇
・ツイッターでの発表作
・ドラゴンクエスト3短歌
・第57回短歌研究新人賞候補作「仙台に雪が降る」
などといった内容です。



2016/5/14に更新しました。半年ごとに更新しています。





工藤吉生の短歌【さらに100首】




連作「眠り男」10首
(「ハッピーマウンテン 6号」2013年)



問題に取り組むよりも問題を忘れることで生きのびてきた



欲望が背中で床を這ってきてこちらのオレをがっかりさせる



CGで作った顔は病的だしかし上手にサッカーをする



少年が繰り返す「イブ」みずからの名前を一人称にしていた



3個入りプリンを一人で食べきった強い気持ちが叶えた夢だ



出てきてはいけないものが出てくると思えばやはり出る夢の中



つぶやいている場合だが重要なことをしている場合ではない



夕焼けの赤紫っぽい方を日付の変わるころにとりだす



つかのまのドサクサがありあのひとと乾杯のカチンを交わせない



寝るほどに疲れるようだ 起き上がりぼんやりとしてもう一度寝る




連作「雨傘」6首
(「みずつき4」2015年)



一滴がひらたい石の床に落ちそれが聞こえるくらいに孤独



公園の池の中にも苦しみが映って雨粒など受け止める



水上に鳥は集まり話し合うこともないまま真昼をうごく



エサをやる男がいれば鳥たちは群がってゆき奪いつつ食う



雨傘を杖のつもりで使おうと試みやめた数秒の間に



離れると水の流れる便器から聴いた気がする舌打ちの音



連作「音だけになって雨は」抄
(「みずつき3」2014年)



雨模様ではあるけれど明るさは残ってオレが散歩している



すぐにやむお天気雨だそのような気持ちではない気持ちとかじゃない



晴れた日は見えてる山が雨の日はさぼってるんじゃないの? みたいな



カーテンを閉めれば雨は音だけになってどこかで泣きだすおんな





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短歌研究「うたう★クラブ」


太ってる女性の座っていた席に別の太った女性が座る



泣きながら叱ってくれる人は去り笑ってごまかす歯の真っ黄色



学校のチャイムが鳴った。そのことでやめた遊びの面白かろう





「短歌研究」 短歌研究詠草


現実をある一定の角度から揺さぶるさまを犯罪と呼ぶ



窓の外を見ている時は硝子見ず硝子を見ている時は外見ず



用のない者は中へと入れない門の向こうがオレの母校だ



メロディーをつけてあくびをした時の下降しようとするそのちから



「星野監督はこの表情」とうどん屋のテレビが言えば客の振り向く



右耳と左耳とが聴いている虫のそれぞれ愛かもしれず



コーヒーのつもりで飲んだ一口が紅茶だったし世の中おかしい




角川「短歌」 公募短歌館


座ってはならぬ規則のあるように男がオレを影として立つ



貧乏になりやすい者の特徴に合致ししかも貧乏である



自転車に乗ってるオレと目が合ってボール蹴るのをやめた少年



屋根の上にソーラーパネルを置いている家の子供の歯科矯正具



どうしても勝てない敵と戦ってドサと倒れる ではまた明日



かわいそう 窓全開の車から大ボリュームで流された歌



美しく映る鏡があるならばそれには映らないよう走る





「歌壇」読者歌壇


追い越していいよっていうスピードに落としてあげてもうだいぶ経つ




「現代短歌」特別作品


泣きながら登校する子とすれちがい地面に落ちる一滴を見た



蹴飛ばした椅子に近づき立て直しまた蹴りたくなる前に立ち去る





結社誌「塔」


思い出すために振ってるサイコロの1の目、そんな国もあったね



被害者の知人女性が心情を吐露し画面はその胸映す



子供らの踊るテレビの棒立ちのひとりとオレの目が合っている



半袖にしてもずるずる降りてきて長袖になるオレの生活



醜さのバリエーションと思うまで総合百貨店の人ごみ



足払いネコにかけても転ばない 裸になれるデブはいいデブ



雨のたび水の溜まりやすい場所のようなくぼみを精神に持つ



足だけを鏡に映す 片寄った情報だから注意なさいよ



透明なガラスのせいで進めないふりが上手くて行かないで済む



オレん家(ち)にオレが入ってゆく夜の忍び込んだという心持





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結社誌「未来」


かなたよりジグソーこぼれ現代の一兆ピースに生き埋めの君



鳴き声が省略形のこの犬を ゥ ゥ 真似したくなる ゥ ゥ



まっすぐな木とかたむいて生えた木がならんでオレにもの思わせる



ここまでは音のない川ここからは音のある川ひかり集めて



このシャツは薄くてちょっと透けるのだオレの乳首ようれしいだろう



自転車が徐々に大きくなりながらこちらにやってきていやらしい



すべり台を寝そべりながらずり落ちる君たちの無限の可能性



宮城県公安委員会指定奥羽自動車学校も朝



踏み切りの不協和音のほのぼのと響いて冬の自動車学校



点滅の青信号に止まろうとするオレ、突っ走ろうとする君





「ダ・ヴィンチ」短歌ください 穂村弘選


遠足の途中でオレの家が見えそのまま帰っちゃダメなんですか



ストローで飲み干した後しばらくはスースースースー吸う男性だ





大会・コンテスト


楽曲が人間ひとりの一生と感じられればその死まで聴く
(第20回与謝野晶子短歌文学賞 入選 伊藤一彦選)



のたれ死にしたことがある気がしてる照らされてオレンジの歩道橋
(現代歌人協会主催 第四十三回全国短歌大会 佳作)



おのおのの枝ひんまがる木の下で言われるままの愛であったな
(第3回河野裕子短歌賞 池田理代子選 入選)





日本経済新聞 日経歌壇 穂村弘選


このへんの人はどこまで買い物に行くのと母が二度言った道





毎日新聞 毎日歌壇 加藤治郎選


充実の人のかかえるオレよりも高いリスクを畏れ敬う



レコードのなかでは雨が降っているこちらよりややしっとりとした



まっさらな心に石を投げ入れた波紋のひとつ、(ひとつ)、((ひとつ))



ちいさめの大人が乗ったブランコが前後する申し訳程度に





河北新報「河北歌壇」 佐藤通雅・花山多佳子選


薄型のテレビが毎朝映し出す日本列島なめらかな島



ぴかぴかなボールを壁に当ててる子壁は避けずに受け止めかえす



楽天の銀次が打席に立つ時の何かしでかしそうな真顔よ



だぶだぶのシャツは干されて一年中きみだけずっと休んでてよし



カップ麺を持ち運ぶとき手の中にほんの小さな波の音する





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ツイッターでの発表作


精神科デイルームにて四十代男四人で語るフーゾク



雨男世界選手権最優秀鉄砲水賞受賞者溺死



1988年ファミコンで見た青空を今も愛する



愛の裏の裏の裏の裏の裏 君守るため握ったナイフ



ばれなけりゃいいさと風呂で小便をすればなぜだかいつもより濃い



子を抱いた母親、男、警官のいずれも黒くして夜がくる



「どうでもいい男ばかりが言い寄ってくる」と聞こえてズタズタになる



歌壇賞ぽとりと落ちて掛からない箸と棒とで持ち上げろ寿司



ワ.タ.ク.シ.ハ.ア.ナ.タ.ヲ.オ.ッ.テ.ユ.ク.シ.カ.ナ.イ.ド.ン.ナ.ス.ガ.タ.ニ.ナ.リ.ハ.テ.ヨ.ウ.ト



「美味しんぼ」第一回で山岡が水三杯を飲み干すところ






「ドラゴンクエスト3短歌」から


となえればさまようよろい既に亡くホイミスライムやわらかいこえ



おうごんのカンダタこぶん 見てごらん夕陽が海にゆっくり沈む



あやしいと思えばあやしいかげでありせつないと思えばせつないかげのA、B、



みかわしのふくを吹き過ぐ春風にいのりのゆびわの破片が混じる



この世から悪を滅ぼし永遠にその名を刻む勇者ああああ





連作「仙台に雪が降る」抄
(「短歌研究」2014年)




目覚めてもゆるくみじめだ今積もり始めた雪のしとしとしとと



クイズショー不正解者の心地する顔面もろに雪風を受け



三人で歩いていれば前をゆく二人と後ろをゆくオレとなる



あわよくば世界を覆い尽くそうと上へ左右へ命は伸びる



   ・ ・ ・ ・
四拍のゲンパツイラナイ
   ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
七拍のキレイナミヤギヲトリモドソウ



仙台の町にウサギとサンタいて看板を持つ「原発NO」の



打ち出され釘に転がる銀玉の特にあっさり消えたものへの



近づけば夜のマンホールさざめいていつかは海になりたい汚泥



震災にヤマザキ春のパン祭り景品皿に傷ひとつなし



そんな気がしてきただけさわたくしもあなたもいなくなった海底





▼▼▼





以上です。
お読みいただきありがとうございました。お疲れさまでした。100首も読むとは、なかなかやりますね。素晴らしい。
これからもあちこちで発表してまいりますのでよろしくお願いいたします。



この記事は近作が中心でしたが、初期作品を中心としたまとめはこちら。

工藤 吉生 短歌集【ブログ版】
http://blog.livedoor.jp/mk7911-kasyuu/
こちらは画像によって縦書きでも読めるようになってます。

ほかに、ツイッター @mk7911 もやってます。
短歌bot @mk7911_bot もあります。

要するにあちこちでいろいろやってます。



ありがとうございました。

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