2018年01月23日

岡井隆『銀色の馬の鬣』を読む  ~歴史が淘汰したつて言ふの、ほか

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岡井隆『銀色の馬の鬣(たてがみ)』を読んだ。2014年の歌集。砂子屋書房。



笑つてゐるうちに真顔になつて来たやうな夕雲に向き合はねば、な/岡井隆『銀色の馬の鬣』



千隻の漁船のつどふ岬とは俺のことかと歯をみがきをり/岡井隆『銀色の馬の鬣』



たくさんの花の中から選ぶのだ時に葉みたいな花もまじるさ/岡井隆『銀色の馬の鬣』

→新百人一首(文藝春秋)についての一連から。もうすこし引いてみる。

正俊も稔も誠夫も姿がない歴史が淘汰したつて言ふの

相良宏も滝沢亘も此処に無いそして何故だかぼくだけは居る
/岡井隆『銀色の馬の鬣』

→なぜかよく思い出す歌。選とかアンソロジーを見るたびに。「歴史が淘汰したつて言ふの」と問われて、いったい誰に何が答えられるだろう。



いや判つてないと小声で応へてはくらやみに去るあなたは誰だ/岡井隆『銀色の馬の鬣』

魚焼いた臭ひを逃すべき窓ゆ見知らぬ夜がそつと入り来ぬ/岡井隆『銀色の馬の鬣』

刻んでる音がしてゐるやがて潰れて青いどろどろの現実が来る/岡井隆『銀色の馬の鬣』

→くらやみ、見知らぬ夜、青いどろどろ。そうしたものに反応した。



音(おと)だけの言葉つて無い。金色(こんじき)の輝きだけの葉がないやうに/岡井隆『銀色の馬の鬣』



微笑みつていはば〈待て〉てふ合図だよ判るかな分かるかな、私(わたくし)/岡井隆『銀色の馬の鬣』



わたくしを励ますやうに咲く花を(折つてやれ!)折れば駅が近づく/岡井隆『銀色の馬の鬣』

→パーレンのなかは心の声だろうか。不条理な暴力と言えるか。内なる声にしたがい、すすんでゆく。



この部屋から本がことごとく消え去る日意外に早からうぜ 雪降る/岡井隆『銀色の馬の鬣』
っていう歌が、この歌集のなかでは比較的よく引かれる。

おもしろさのひとつは、あんまり見かけないような口語の表現でしょう。「早からうぜ」もそうだし、「向き合はねば、な」とか「つて言ふの」とか、新鮮に響いてくる。


以上です。
んじゃまた。





▼▼▼



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2018年01月22日

noteやブログ等に発表された未来賞応募作品を読みつくす

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noteやブログなどに発表された未来賞応募作を読みます。
「未来賞」とは、未来短歌会が年に一度、二十首の連作を募集しているものです。

ツイッターの検索により五つの連作が確認できたので、それらの作品を読んでいきます。



ネットプリントやnote等で発表された「短歌研究新人賞」応募作品を読みつくす https://t.co/pLBzS137WA

ネットプリントやnote等で発表された「「角川短歌賞」応募作品を読みつくす
https://t.co/3AwspYrxVr

につづく、応募作品読みつくしシリーズの、今回は第三弾です。







https://t.co/bOpq5SZIgN

【1】価格未定さんの「夏から夏へ」を読みました。
青春、恋、夏、といったものが中心になっています。ありがちなところを、変わった比喩が彩ります。

裸単騎の役満は面白いですが、アンインストールはどうでしょうか。比喩が器用すぎると青春っぽさが薄まります。電撃文庫、自転車、横断歩道の歌がいい。

似た声が聞こえ横断歩道にて立ち止まる まだ信号は青/価格未定「夏から夏へ」








https://t.co/DGSdmBLrY5
【2】ひぞのゆうこさんの「すべてが夕陽」を読みました。
短歌研究のときは精神病が題材でしたが、今回もその内容です。ですが、歌いぶりがだいぶ変化しています。

生を売る保険屋に躁鬱病の持病を告げる午後はあかるい/ひぞのゆうこ
という歌は、
はつなつのゆふべひたひを光らせて保険屋が遠き死を売りにくる/塚本邦雄
を思わせずにはいられません。並べられると力の差が見えてしまうので、並べられるほどの距離まで寄っていくのは自覚の要ることです。
「躁鬱病の持病」って「病」が重なってますね。

ほかにも「この世はなべて黙示録」とか「受罰のごとく」とか「未だなお虚無」とか、それっぽいのが見られます。
「すべてが夕陽」というタイトルは穂村弘さんと山田航さんの共著「世界中が夕焼け」を思い出させます。
何かの借り物っぽい部分ばかり気になり、この方の苦しみはなかなかこちらに伝わってきません。


こまるのは一首目。
(千年に一度のフェスタ)地震より卑近な鬱にわれは戸惑う/ひぞのゆうこ

フェスタのことも地震のことも、これ以後には出てきません。カッコ書きもここだけで、一首だけ浮いてます。鬱も地震も千年に一度じゃありませんからフェスタとは無関係ですよね。
地震をお祭りだと言ってるみたいに見えて、そうではないと分かっていてもなんだかいい気はしません。
これから二十首つづく連作のテーマにたいして「卑近」はふさわしくないでしょう。






https://t.co/5o9TuCWj4l
【3】小川けいとさんの「ある日の出来事」を読みました。
電車で人身事故に遭遇したという内容で20首つくっています。

いつ見ても決して座らず背を向けて外を見ているマスクの女/小川けいと「ある日の出来事」

がよかったです。3-6首目はうまくいってると思います。


よくない意味で気になる表現がいくつもあって、全部つっこむとオレがいじめっ子みたいだからすこしだけ。

1首目
乗り換えの駅から駅へ階段を自動制御のよう下りてゆく
は「よう下りてゆく」がひっかかります。「ように下りてゆく」ですよね。それともまさか、「よう」で切れるのか。

14首目
亡くなったみたいですよとパソコンの画面をさして教えてもらう
という歌は、ねじれています。この書き方だと、教えてもらった人が画面をさしたように読めます。「画面をさして」が荒い。「ゆびさして」を略している。


一番賛成できなかったのは19-20首目。
わたしにはまだ続いてる今日がある遥かに続くその先がある
永遠に続く明日を断ち切った人に黙祷する更衣室


自殺した人に関してこんなことを言っているわけですが、自分の人生が「遥かに続く」と信じているわけです。
「永遠に続く明日」に至っては完全に間違っています。人は死ぬのだから、永遠に続く明日などないんです。数十年のことを永遠と呼ぶんでしょうか。「永遠」という言葉が軽すぎます。「更衣室」でおさめたのはうまい。
タイトルが弱い。






https://t.co/bJCJPMGpi0
【4】しま・しましまさんの「純白の紫陽花はもう」を読みました。
入院した親のことがテーマのようなんですが、だんだんそのテーマがぼやけて日常の歌になっていきます。

もう床に届いてしまうしおり紐 午睡の父の新潮文庫の

今届いた荷物の上で署名するゆがんでいるがわたしの名前
/しま・しましま「純白の紫陽花はもう」

といった歌などがよかったです。
しおり紐の歌は子規をふまえているのでしょうか。新潮文庫はたしかに紐がありますね。「の」の連続が長くのびた紐を思わせますが、これは百人一首を踏まえているのでしょうか。
一首単位ではいい歌が多いです。







https://t.co/JTPIUEOpPM
【5】桝屋善成さんの「忘却の景色」をよみました。

悪しきたくらみひとつ遂げんとホチキスで数枚の紙重ね留めたり/桝屋善成「忘却の景色」

などがよかったです。
安定している印象を受けました。ところどころ固有名詞がわかりませんがオレの知識教養の問題です。

A-B-Aの形になっていて、これはオレの好きな形です。オレがクラシックをよく聴くことと関係あるかもしれません。ABAは変化を出しつつ統一感をだそうとするときの、ひとつの回答例でしょう。
Aは草におおわれた廃車などの景色です。二回目のAでは霧雨がきます。回帰しつつ変化もしています。
忘却ってなにを忘れるのか、敗者ってなにに負けたのか、そのへんが気になるところです。


以上五つの連作のことを書きました。




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保坂和志『「三十歳までなんか生きるな」と思っていた』メモ

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保坂和志『「三十歳までなんか生きるな」と思っていた』という本を読んだ。草思社。2007年。気になったところをメモしておく。


▼以下引用


考えることとやっていることがリンクしなければ、人は何でも言うことができる。しかし、その二つがリンクしたら、「言ってることとやってることが違うじゃないか」ということになる。他人からそう言われるのではなく、自分の心の中でそれを感じる。そういうリンクする地点で考えたり書いたりしなければ意味がない。


テクニックなんてものは、書いたり読んだりしているうちに自然と身についてしまう。むしろ文章がうまくなりすぎることの方が危険で、うまくなりすぎると自分が身につけた文章で表現できること以外のことを書かなくなってしまう。

(白川静の文字の解読について)
「歌」という字の“可”の中の“口”は神を迎える器であり、“丁”は榊(さかき)などの枝の形で、「どうか神様降りてきて下さい」と言いながら人を意味する“欠”が枝で器を叩いているのが“可”の部分であり、それが二つ重なることは「激しく叩いて訴えている」ことを意味している。「歌」とは本来、神への訴えかけだった。


社会における〈死〉の位置づけというのは絶対に必要で、〈死〉の位置づけが自分自身の生きる態度や世界に対する働きかけのあり方を決定づけていると言えるのではないか。

ナルシシズムは克服不可能なのか?
それは、自分が死んでいなくなった後の世界を、自分が外に出て留守にしている部屋をイメージするのと同じことだと思えることなのではないか? というか、むしろ本当のところは、自分が生きているこの世界も自分が係わっているのはごくかぎられた領域だけなのだという事実を知ることなのではないか?


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2018年01月21日

近況▼整形前夜▼奥歯▼走る▼野性歌壇▼ほか

近況まとめ記事。

なんといっても、未来の新年会に出たことがおおきい。

「未来」の新年会に行ってきたぞ【前編】
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「未来」の新年会に行ってきたぞ【後編】

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ここではこれ以外のことをまとめる。



▼整形前夜

穂村弘さんの『整形前夜』をしばらく前に読んだ。

「著者近影」に書いてある。
《物書きの場合、写真のイメージというか影響力って大きいと思う。》
《現代の書き手ならそこまでじゃないけど、でも、やっぱり特に露出の多いひとを除けば、数枚の写真で印象は決まってしまうんじゃないか》




▼奥歯

伊舎堂仁「奥歯」を読む  ~工藤吉生さん!な伊舎堂、ほか : ▼存在しない何かへの憧れ https://t.co/79ivQT75Jq


これを書いてから一年になる。
一年前とちがって、オレは東京に行って金屏風でしどろもどろなスピーチをしたりピースしたりしている。



▼拍手コメント

ライブドアブログの拍手にコメントがつけられなくなるそうで、すこしよかった。

【重要】 livedoor プロフィール 終了のお知らせ : livedoor プロフィール開発ブログ
https://t.co/z2WmgFhieZ
すこしよかったけど、そこで励ましてもらえることもあるんで、残念でもある。
どうしても匿名で書く人は質問箱を使ってもらえればいいかなと。
https://peing.net/mk7911



▼本を買う

母の誕生日に本を買った。母は宮部みゆきが好きで『ソロモンの偽証』の文庫本の(一)だけ読んで、その続きを読みたがっていた。というわけで二から六までを買ってあげた。



図書カードや商品券がけっこうあって、何に使うか悩ましい。
歌壇の二月号を買った。

歌集を買った。未来賞の同時受賞の蒼井さんと大西さんの歌集、それからしんくわさんのも買った。

それと佐藤理江さんのひとつ前の歌集も買った。この方も未来賞の人だ。

近藤芳美の本がほしい。

本が五冊増えたが、最近あまり本は読めていない。



▼野性歌壇

「野性時代」2月号の野性歌壇に佳作で一首掲載された。
加藤千恵さんの佳作一首目。かとちえさんは今回特選を一首しかえらんでいない。二首ならオレの歌が入ったんだが、そうならなかった。一歩及ばず。



▼走る

とつぜん「自分はどれくらい走りつづけられるんだろう」と思い、いつも歩いている場所を走ってみた。思ったよりも走れた。
25分かかるところを18分で行けた。でもへたばってしばらく動けなかったから、時間の節約にはなってない。



▼画像ふたつ

1990年の週刊少年ジャンプの付録のシール https://t.co/L5gGY4Xygc

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古いぬいぐるみを見つけた。名前はチャロ。



▼人嫌い

ツイッター見てて、あいつも嫌いこいつは見たくないというのが多くて、リストにいれててもはずしてしまう。人間嫌いなのか、おもしろいひとはオレの見えるところにあらわれないのか。




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扇畑忠雄『沼より沼へ』を読む  ~忘れゐたりし一つと思ふ、ほか

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扇畑忠雄の『沼より沼へ』を読んだ。



「扇畑忠雄自選歌抄」とあり、扇畑忠雄の全体像を見渡せるかと思って買ったんだが、よく見るとべつのところには「近作歌集」とある。
昭和62年。限定700部で、これは第179番。

1982年から86年までの限られた期間の歌が収録されていて、そのほかの過去の歌からの50首選がついている。たしかに、この時点での近作歌集であると同時に自選歌集でもある。



オレがなんで扇畑忠雄に興味あるかとか、そのへんは以前ここに書いた。

『扇畑忠雄研究』を読んだ
https://t.co/hoiJHG6Xuv



刑務所にて歌にはげみし思ひ出を心に持ちて世に生くといふ/扇畑忠雄『沼より沼へ』



花紅き山茶花の繁みにひそみつつ何の鳥ならむ動きの疾き/扇畑忠雄『沼より沼へ』



バラ園のやや素枯れたるバラの棚椅子あれば憩ふその花の前/扇畑忠雄『沼より沼へ』



二十数年まへ宿りたるさながらに畳古びし山の湯の宿/扇畑忠雄『沼より沼へ』



小さなる沼に下りゆく径ありて立つ草の香の迫るがごとし/扇畑忠雄『沼より沼へ』



地下鉄の工事に深く掘る音のわが行く街のいづこにもする/扇畑忠雄『沼より沼へ』

→「北仙台界隈」という一連から。ああ、あのあたりか、とわかる。
1983年の歌。そんなに前から地下鉄あったっけと思ってしらべたら、仙台市営地下鉄は1982年着工だそうだ。



治療台に窓の上の空仰ぐのみ義歯試むる医師のまにまに/扇畑忠雄『沼より沼へ』



黄のクレーン立てる錯雑の遠景にはだれ残れる丘一つ見ゆ/扇畑忠雄『沼より沼へ』

→「掘削機」という一連で、これも地下鉄のことを詠んでいる。
近く見えるものと遠く見えるものの歌が二つつづいた。



遠き丘も近き工事場のクレーンもおぼろとなりて雪降りみだる/扇畑忠雄『沼より沼へ』



東京にて去年(こぞ)の七月会ひし日を限りにとはに君を喪ふ

君の翻訳リルケの「ロダン」読みし日の思ひ出づるに茫々として
/扇畑忠雄『沼より沼へ』「高安国世」




木の柵の朽ちて昼顔咲きてゐし踏切よ幼きいつの日の景/扇畑忠雄『沼より沼へ』



今日の雨遠き丘べをけむらしめ狭し窓より見ゆる領域/扇畑忠雄『沼より沼へ』



伸びやすく硬き足の爪切らむとす忘れゐたりし一つと思ふ/扇畑忠雄『沼より沼へ』

→年をとってくると、ひとつ忘れてひとつ思い出すっていうふうじゃなくなる。いくつも忘れて、ひとつ思い出すんだけどそれが忘れていたことかどうかがあまりピンときていない。
足の爪、オレもほとんど忘れていて、たまに思い出したときに切る。




夕霧の立ちのまにまに暗くなりて秋草の野に人を嘆かむか/扇畑忠雄

雪原はかなしきまでに空気澄む夕映えの間の短けれども/扇畑忠雄『北西風』

磯ゆきてさびしき夕べ砕けたる貝殻白しわが踏む下に/扇畑忠雄

茜淡くなびかふ夕べの一つ雲街区の狭き空にしたしむ/扇畑忠雄


巻末の五十首選から四首えらんでみたけれども、どれも夕べの歌だった。「夕」が好きみたい。



この歌人は昭和25年に『北西風』という歌集を出してから、この昭和62年になっても第二歌集が出ていない。自選歌集や合同での歌集がでている。
踏切の歌、雪原の歌が特に好きだな。
この本おわり。



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mk7911 at 00:13|PermalinkComments(0)歌集の感想 

2018年01月19日

「なんたる星の100のやつ」で遊んだよ【30首】

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去年11月に「なんたる星の100のやつ」で遊んだ。
お題が100個あって、そこから短歌などをつくる遊び。「題詠ブログ」「題詠マラソン」を知ってる人は、あれのもっとくだけたやつだと思ってもらうとわかりやすいかも。
お題がかなりユニークで、創作意欲を刺激された。短歌じゃなくてもいいんだけど、オレは短歌にこだわった。30首をツイッターに投稿したので、それをここにまとめる。


「なんたる星」または「なんたる星の100のやつ」については

なんたる星10月号(2017年)
http://p.booklog.jp/book/118063

なんたる星1月号(2018年)

http://p.booklog.jp/book/119652

にくわしいので、いまの説明でよくわからなかった方はご覧ください。








16 へいへーい

へいへーいなんて言いつつ青森のキャベツ積んでたあの日の小野は



18 お題「首都」で何か書いてください

ブラジルの首都ブラジリア オレだって人間だよと言わなきゃよかった



21 青いコンビニエンスストアについて

近さには拘束力があるらしく今日もローソン明日もローソン



23 王様ゲーム

やったことないが王様ゲームってひどく封建的らしいじゃん




24 返してほしいもの

図書室で借りたまんまになっていた「リンカーン伝」読んでもいない



30 題詠 わかめ

湯をかけてみろよみるみる増えるぞとわかめが言えばオレはたじろぐ



33 だれも知らなそうな地名

妹が教えてくれたブルガリアの濡れて破れたみたいな地名



39 ひゃん歌

強風に舞う紙屑が美由紀ちゃんの顔に当たった酒井美由紀ちゃんの



42 ばよえ~ん

誤って倒したドミノのゆくすえの見せちゃいけない富士山みごと



44 家からいちばんちかいコンビニに行って帰ってくるあいだにできたもの

不覚にもまた年をとりローソンでロールケーキを160円



47 500円でいける町

間違えて循環バスに乗車して元の場所まできて五百円



48 どこかひとつかならず間違えてください


間違いを探すつもりで見てる絵の猫の水玉シャツ似合わない



49 居合い抜き


斬られちゃう or 斬っちゃうのどちらかに追い込まれてメラメラしてる人



50 内容がティッシュ一枚くらいの軽さの歌

クリネックスティシューをお使いでもないし鬼でも天使でもなく工藤



59 お酒の思い出

小便を廊下にしてた父のこと冷蔵庫にしていた父のこと



60 みじかい日記

四行の日記が書けるノート買い毎日のこる余白二、三行



67 ラジオから聴こえてきた短歌

ラジオネーム・はるママさんからいただいたリクエストです「涙のキッス」



69 「冬の海」でなにか書いてください

冬の海 ぜんぜん行ったことがない思い浮かべる紺とグレーと



73 円周率の最後の数字

円周率が無限であれば含まれる191945450721の列



82 題詠 かまいたちの夜

全身が青い人たち集まって腹さぐりあうかまいたちの夜



83 !!!以上!!!!!!!以下

あ!い!う!え!お! 竹中直人の表情をそれぞれ一時停止する夜



88 曜日感覚

曜日感覚がないと言ったら俺も俺も僕も僕もで部屋盛り上がる



89 ガッツの感じられる短歌

笑ってはいたがほんとのところではよくわからないオッケー牧場



90 穴埋め短歌
母親の○○○○○○○ニューヨーク○○○○○○○信じられずに


母親の皇潤皇潤ニューヨーク青汁青汁信じられずに

91 穴埋め短歌
デモニッシュ○○○○○○○走り出す○○○○○○○存在するな


デモニッシュグルコサミンが走り出すコサミンコサミン存在するな



94 角のあるもの

赤鬼は角が一本青鬼は二本あるいはその逆でしょう



97 スキヤキソング

丸美屋のすきやきふりかけかけていたフォロワーふたり減った朝にも



98 方言

「がんばっぺ!宮城」の文字がはずかしいオレの気持ちをオレは支持する



99 身体が一日中半透明

一日中半透明な身体(しんたい)になっても食っていかねばならぬ



100 やり終えた感想を一言(短歌で)

適当にやっていたから終わっても感慨のない一生だった



以上です。おもしろかったです。



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2018年01月17日

「未来」の新年会に行ってきました【ブログ用】

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未来の新年会に行ってきたことを書く。


※これは無料ブログのための縮小版です。全体はnoteの有料マガジンで公開しています。

「未来」の新年会に行ってきたぞ【前編】|mk7911|note(ノート)
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「未来」の新年会に行ってきたぞ【後編】|mk7911|note(ノート)https://t.co/NlUofZGYMB


あまりに長いので前後編に分けてあります。




▼準備など


未来短歌会の新年会は二つのパートがある。9:30~17:00のAパート、17:30~19:30のBパート。

未来賞の表彰がBパートだというので、受賞者のオレはそちらだけに参加することにした。経費の関係もあるし、時間の関係もある。無理すればAにも出れたかもしれないが、無理するところまではいかなかった。



少し前から、受賞のスピーチで何を話そうか考えていたんだが、どうもまとまらないし、その場になったら頭からすべて飛んでしまう気がする。事前に用意しても、その時になったら「こんなことは言うべきではない」と感じてやめてしまう気がする。
直前まで保留にすることにした。



何を着ていくか。てきとうな格好でいいと思ってたんだけど、受賞した人の場合はのちのちまで写真に残りそうだし、また変なイメージを与えては困るからちゃんとスーツでいくことにした。



▼到着


なんだかんだでいろいろ準備して、なんとか会場に無事たどりついた。


名前を知ってる人がたくさんいて緊張した。
オレは人見知りっていうか、コミュ障っていうか、人が苦手なんです。挨拶しなきゃという気持ちと、誰もオレに気づかないで! という気持ちがせめぎあい、オレに不審な動きをさせていた。

一人でもいたら緊張しそうなえらい歌人が何十人もいるので、オレの感じることのできる緊張を通り越して麻痺してきた。


加藤治郎さんをはじめ、主な人たちには挨拶できた。というのも、田中槐さんが「○○さんには挨拶した? まだ? じゃあ行こう」と連れていってくれたからで、こういうのはほんと助かる。



▼表彰


未来賞・未来年間賞の講評があり、賞状の授与があった。

佐伯裕子さんの講評によるとオレの連作は悪夢的らしい。オレとしては、実際に近所を散歩しながら感じたことを素直に書いたのだけれど。出前のバイクの位置が昨日とちがうなー、って。



そのときの写真がツイッターにアップされている。

https://twitter.com/enjutanaka/status/952463678254866432?s=09


そのあとスピーチしたんだけど、思ったよりみんなオレの話を聞いてないし、気軽だった。
東京にくるまでの高速バスに乗ってたら山から雪がなくなっていったこととかを話した。

『高速バスの窓の外に見えるのは、はじめは雪の目立つ山々だったが、だんだん雪が減ってきた。南に進んで、昼になってきて、景色まであたたかい印象になってきた。開放的な気分になった。あたたかい地域にいたらオレはこんな人間じゃなかった気がする。』
そんなことを話した。小さく、気づかないくらいに「ぬらっ」って言った。



それから、治郎さんと未来賞の受賞者三人でピースして記念撮影。

https://twitter.com/jiro57/status/952875931516850176

「ピース」をひさしぶりにした。慣れないから指が変な感じだ。笹さんの欄にいたら親指を立てていただろうけど、どっちがいいだろう。


毎月の月詠で評価される「未来年間賞」の表彰もあった。
結社といったら月詠だよね。コツコツとした活動が評価される仕組みがあるのは、とてもいい。オレも欲しいぜ。


そのあとは、いろんな人がマイクの前にでてきてしゃべっていた。顔と名前がたくさん覚えられたので良かった。

いろんな方とお話できてよかったな。えっマジで!? という方がオレのブログを読んでくださっていたり、熱いお言葉をかけてくださったりした。

で、それから二次会に行ってそこでもやんややんや(古い言い回しだなあ)した。


そんな感じでした。お会いしたみなさん、ありがとうございました。


▼▼▼


繰り返しますが、これは無料ブログのための縮小版です。
有料版ではこの八倍くらいの長さで書いています。もっと突っ込んだマジなやつを読みたい方、本気の工藤吉生を読みたい方は500円課金してみてください。


「未来」の新年会に行ってきたぞ【前編】|mk7911|note(ノート)
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「未来」の新年会に行ってきたぞ【後編】|mk7911|note(ノート)https://t.co/NlUofZGYMB


以上です。んじゃまた。


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2018年01月13日

横山未来子『はじめてのやさしい短歌のつくりかた』を読んだ

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入門書をやっていきます。

横山未来子さんの『やさしい短歌のつくりかた』。日本文芸社、2015年。144ページ。

読みやすい、いい入門書だなあと思った。
例歌は豊富で、おなじみの有名な歌から新しい歌まで幅広い。
ひとつひとつの歌に鑑賞文がついている。
どのページも黒と赤で見やすい。
大事なところにはあらかじめ傍線がある。上手にまとめたノートみたい。

強いて言うなら古典が薄いことくらいか。薄いというか、122ページのような短歌史の書き方からすると、あえて避けているようにも見える。




知らなかったなかでおもしろかった歌を引いていきます。



公園で一番齢(とし)をとりやすきブランコよ秋の夜に漕ぎてみむ/栗木京子『けむり水晶』
→上の句、どういうことだろう。「鎖の錆びたブランコなのでしょう」と横山さんが書いている。一番こきつかわれている感はある。



われらかつて魚(うを)なりし頃かたらひし藻の蔭に似るゆふぐれ来たる/水原紫苑『びあんか』



ドラマの中の女ならば如何にか哭きたらむ灯を消してわれの眠らむとする/大西民子『まぼろしの椅子』



階くだり来る人ありてひとところ踊場(をどりば)にさす月に顕(あら)はる/佐藤佐太郎『地表』



糸杉がめらめらと宙に攀づる絵をさびしくこころあへぐ日に見き/葛原妙子『飛行』

→この糸杉も、さっきのドラマの女も激しさがある。内に秘められた思いが目に見えるかたちで出ている。



さびしくて画廊を出づる画のなかの魚・壷・山羊らみな従えて/中城ふみ子『乳房喪失』
意識していなかったが、絵を見る歌がふたつづいた。
「従えて」は記憶のなかに刻み込んだという意味にとったが、文字通りに読んだほうがおもしろいか。



母の名は茜、子の名は雲なりき丘をしづかに下(くだ)る野生馬/伊藤一彦『海号の歌』
→いい名前つけるなあ。素朴でいい。時間は書かれていないが夕空の下のようにイメージした。
競馬にでてくるような馬ではこうはいかない。
シンプルな名前ということでいえば、自転車に「海号」と名付けるのもそうだろう。



われの不圖よろけし時になつかしむよろける母の手を握りし日/森岡貞香『帶紅』
→「圖」っていう字にめまいがしそうだ。




この本おわり。
んじゃまた。



▼▼▼



お読みいただきありがとうございました。
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未来賞をいただいて、いま書きたいこと
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2017年12月のオレの短歌とその余談(未来賞のことをもっと書く)
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第57回短歌研究新人賞候補作「仙台に雪が降る」全30首
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バリウムを初めて飲んできたんだけど、その話をします
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去年の角川短歌賞の予選通過作品 50首|note(ノート)
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2018年01月11日

「未来」2017年12月号を読む  ~アカウント凍結されたともだち、ほか

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「未来」2017年12月号。



少年と少女自転車に動きだす絶対重いよ、重くなんかねえよ/山田富士郎「ジムノペディ」
→なにかの一場面みたい。下の句は女の子と男の子の言葉だと読めばいいのだろう。
でも、後ろに乗りながら「重くなんかねえよ」という女の子がいたらいたで、いいと思うよ。



夜の壁に黒光りして掛かれるはフライパンなり王のごとしも/飯沼鮎子



こんなにも静かに過ぎてゆく風がベートーベンとは気づかずにいた/飯沼鮎子

→おお、そんな演奏に出会ってみたいものだ。悲愴の二楽章かなあ、などと想像してみる。気むずかしい激しい作曲家というイメージを持たれがちなベートーベンだが、こういう面もある。



さらば、この夜の暗さに紛れゆけ失意のうちに破られしメモよ/平田真紀
→何が書かれていたのか。余白のある歌だ。大切な約束でも書かれていたのだろうか。一枚の紙が劇的に葬り去られる。



どの庭にも顔だけふりむく花があり回覧板をかかへつつ入る/木下こう「冷えながら」



目を閉じてベーコンポテトパイと打つような選挙がはじまっている/中沢直人

→そういえばすこし前にマクドナルドのベーコンポテトパイは「ヘーホンホヘホハイ」で注文できたんだよな。口にものが入ってる状態でベーコンポテトパイと言おうとするとそうなる。体温計をくわえて「ゆひら」と言うのと同じだ。

それにしても、注文する側もされる側も口にものが入ってるはずがないんだから「ヘーホンホヘホハイ」って言う理由がないんだよ。スベっている。

オレが見たときは「ヘーホンホヘホハイ」で売ってて、そばに小さく「ベーコンポテトパイでも注文できます」と書いてあった。逆だろう。

だからオレからするとベーコンポテトパイっていうのは、味とかの以前に、独りよがりなユーモアを押しつけてくる困ったメニューだ。選挙にかさねてみると、まあ、なんとなく自分なりの想像はできる。
目をつぶって打ち込めばミスするだろうけど、「ヘーホンホヘホハイ」という打ち間違いはまずないだろう。



蟻に水やさしくかけている秋の真顔がわたしに似ている子供/山崎聡子「秋の子供」



水掛けあう浜辺の男女のすぐ側で放尿すれば夏は終わりぬ/中山一朗

→「いい気味だ」と見るか「逃げてー!」と思うかで何か診断できそうだ。あまり悪意が感じられず、結句に哀愁すらただよわせているのが不思議なところだ。
偶然、水をかける歌が二首つづいた。



アカウント凍結されたともだちと豪雨の中を走って帰る/蜂谷希一「さみしさ・なくす・システム」
→アカウントを凍結されたうえに豪雨にまで降られるとは、散々なともだちだ。しかし同じ雨のなかを一緒に走ってくれる人がネットの外側にいる。



注文はシェフのきまぐれ夕まぐれやさぐれささくれひびわれサラダ/魚虎サチ
→高級な店なのかなーと思ってると、だんだんまずそうな内容になってくる。言葉遊びだが、シェフの内面があらわれてくるようでもある。よくこれを注文したものだ。



海鳴りに産まれなかった子どもらの声変わりしたこと知らされて/藤木麗子
→海鳴りに知らされたということは、海鳴りはそれを知っている。海鳴りはこの世とあの世をつないでいるというのか。陸と海をそうしているように。向こう側で子どもらは成長している。長い月日がたったのだ。



ハンドベルそのうららかな躓きに人を拭かれぬ泥だと決めて/遠野真「打ち上げ花火、普通に見るか 冬まで見るか」
→なんとかついていけるかなーと思ってると途中で完全に置いていかれるような歌があった。それがちょっとおもしろかった。この歌でいうと、二句までついていけて、三句でかなり難しくなって、四句で異空間へいってしまう。その跳びかた。

無理につなげて意味をつくることはできる。
うららかな音色のハンドベルを、演奏者がミスしてつまずく。そのさまを確信をもって泥に見立てたと。
でもそう読むものじゃない気がしている。



S極──ラブホの受付とか時給いいらしいよ。あそう。──N極/鼠宮ぽむ「ドロップ」
→まるで一首の歌が棒磁石のようだ。
二人が会話しているが、この人たちは二人とも絶対ラブホの受付なんてやらないんだろうな。噂話に、気のない相づち。引きつける力もないし離れようとする力もない。まるでくっついていかない、すぐに忘れそうな会話だ。



トロイメライトロイメライ溢れるのと引っ繰り返すのは違うって/平岡ゆめ
→トロイメライは「夢」。シューマンのピアノ曲がイメージされる。繰り返すと何かくるくる回ってるようで響きのおもしろさもある。
そんな夢のなかではあふれるのとひっくりかえすのが近づいたりもする。どう似てるんだ、ということが間違われる。二人いるようだな。



評のページから気になる歌をいくつか。

耳朶の遠いとおもう夜の来て た たん は たたん なまえをなくす/唐津いづみ「雪を聴く」

ゆれながら水の底へと沈みゆくとほき意識で六月の母/佐藤薫






以上「未来」12月号でした。

オレの月詠はこっちにまとまってます
https://t.co/zfiW1zK2s6

んじゃまた。





▼▼▼



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バリウムを初めて飲んできたんだけど、その話をします
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去年の角川短歌賞の予選通過作品 50首|note(ノート)
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2018年01月10日

ハイドンの弦楽四重奏曲をすべて聴きます一日ひとつ【6】63番から最後まで

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ハイドンの弦楽四重奏曲をぜんぶ聴こうとするシリーズの最終回。



63番から。


"J. Haydn - Hob III:63 - String Quartet Op. 64 No. 5 in D major"
https://t.co/y5Qh7q3aa2
ハイドンの弦楽四重奏曲第63番を聴いた。これ「ひばり」だよなたしか。久々に聴くなあ。フィナーレの無窮動がおもしろい。この演奏は速くていい。



"J. Haydn - Hob III:64 - String Quartet Op. 64 No. 6 in E flat major"
https://t.co/bBZ6syea2s
ハイドンの弦楽四重奏曲第64番を聴いた。オレのコンディションがいいのか、おもしろく聴けた。2楽章は日の出を思わせるようなおだやかな楽章だが激しい中間部をもつ。



"J. Haydn - Hob III:65 - String Quartet Op. 64 No. 1 in C major"
https://t.co/1Mf310nEd4
ハイドンの弦楽四重奏曲第65番を聴いた。3楽章の変奏曲がやや単調だが4楽章は激しいところもある。



"J. Haydn - Hob III:66 - String Quartet Op. 64 No. 4 in G major"
https://t.co/KSfO9i8PLP
ハイドンの弦楽四重奏曲第66番を聴いた。充実の一曲なのではないでしょうか。両端楽章の活発さ、3楽章のやわらかい哀愁。メヌエットは、トリオがほとんど一人なのが印象的だった。



"J. Haydn - Hob III:67 - String Quartet Op. 64 No. 3 in B flat major"
https://t.co/WgNachAsL5
ハイドンの弦楽四重奏曲第67番を聴いた。1楽章はひとつの動機が大きく支配している。4楽章はにぎやかだが、ところどころで夕暮れみたいにゆるやかになり、それも心地よい。



"J. Haydn - Hob III:68 - String Quartet Op. 64 No. 2 in B minor"
https://t.co/tB8rGgaUag
ハイドンの弦楽四重奏曲第68番を聴いた。3楽章4楽章に特に短調の味がある。3楽章は毅然とした態度のメヌエット。



"J. Haydn - Hob III:69 - String Quartet Op. 71 No. 1 in B flat major"
https://t.co/E6n7L8v0IL
ハイドンの弦楽四重奏曲第69番を聴いた。メヌエットではチェロがよく歌う。フィナーレにぎやか。
変わった楽章構成がなくなってきたな。そのへんはすっかり落ち着いたようだ。



"J. Haydn - Hob III:70 - String Quartet Op. 71 No. 2 in D major"
https://t.co/FPr5qKU7YK
ハイドンの弦楽四重奏曲第70番を聴いた。だんだん終盤にはいってきたな。1楽章が特におもしろい。裏拍のつよい主題など。



"J. Haydn - Hob III:71 - String Quartet Op. 71 No. 3 in E flat major"
https://t.co/cRoDkDxWQ8
ハイドンの弦楽四重奏曲第71番を聴いた。なんておもしろい1楽章だろう。大きな機械、たとえば機関車が動いているみたいだ。「刻み」の面白さ。4楽章もはつらつとしている。


"J. Haydn - Hob III:72 - String Quartet Op. 74 No. 1 in C major"
https://t.co/cgiaXEOQ47
ハイドンの弦楽四重奏曲第72番を聴いた。31分あって長い。1楽章にジュピター音型っぽいのがでてくる。1796年だからモーツァルトはすでに亡くなっている。
2楽章が長いが、それほどの内容とは思わなかった。3楽章のメヌエットは分厚い。4楽章はこまかい動きと、シンコペーションで盛り上げてゆく。



"J. Haydn - Hob III:73 - String Quartet Op. 74 No. 2 in F major"
https://t.co/VY9XiRX7ix
ハイドンの弦楽四重奏曲第73番を聴いた。1楽章は明るく、行進曲ふう。



"J. Haydn - Hob III:74 - String Quartet Op. 74 No. 3 in G minor"
https://t.co/rahkJnw1ib
ハイドンの弦楽四重奏曲第74番を聴いた。短調。2楽章は和音の移り変わりをじっくり楽しむ楽章だろう。



"J. Haydn - Hob III:75 - String Quartet Op. 76 No. 1 in G major"
https://t.co/GxJzIbFJIS
ハイドンの弦楽四重奏曲第75番を聴いた。1楽章は分散和音が多い。2楽章はなだらかにはじまるが変化してゆく。4楽章は緊張感がある。



"J. Haydn - Hob III:76 - String Quartet Op. 76 No. 2 in D minor"
https://t.co/eHjkIeYWJZ
ハイドンの弦楽四重奏曲第76番を聴いた。「五度」だっけ。久しぶりに聴いた。愛称をつけて親しまれるにふさわしい内容だ。1楽章がかっこいい。3楽章のカノンもインパクト充分だ。中間部も非凡。



"J. Haydn - Hob III:77 - String Quartet Op. 76 No. 3 in C major"
https://t.co/DxEBvMf4UD
ハイドンの弦楽四重奏曲第77番を聞いた。ついにここまできたか。皇帝。ついにここまできたか。それだけだ。



"J. Haydn - Hob III:78 - String Quartet Op. 76 No. 4 in B flat major"
https://t.co/Pe5Yn91X9g
ハイドンの弦楽四重奏曲第78番を聴いた。3楽章のメヌエットがだいぶ変わっている。ゆるいトリルみたいな音型が支配している。トリオはさらに変わっていて、バグパイプというんだったか、一種の民族音楽のような内容。



"J. Haydn - Hob III:79 - String Quartet Op. 76 No. 5 in D majo
" https://t.co/EZFBDkHrbL
ハイドンの弦楽四重奏曲第79番を聴いた。1楽章はいわゆるシチリアーノというやつかな。くつろいでいる。4楽章はこまかく刻んでいる。まな板のうえでみじん切りしているみたいだ。



"J. Haydn - Hob III:80 - String Quartet Op. 76 No. 6 in E flat major"
https://t.co/0AIbDIj2Ap
ハイドンの弦楽四重奏曲第80番を聴いた。小さな音型の積み上げでできていることがよくわかる。



"J. Haydn - Hob III:81 - String Quartet Op. 77 No. 1 in G major"
https://t.co/NsriaBnhX9
ハイドンの弦楽四重奏曲第81番を聴いた。1楽章はほがらかなで、行進曲ふう。3楽章のプレストのメヌエットは、スケルツォというよりはワルツに接近しているように聴こえる。



"J. Haydn - Hob III:82 - String Quartet Op. 77 No. 2 in F major"
https://t.co/3CjZbvPkkY
ハイドンの弦楽四重奏曲第82番を聴いた。うーんすばらしい。1楽章は充実していて、二回聴いた。2楽章のプレストのメヌエットはスケルツォに近いようだ。3楽章は符点と装飾音でいっぱいだ。しみじみしている。



"J. Haydn - Hob III:83 - String Quartet Op. 103 in D minor (unfinished)"
https://t.co/UJU9Uos5b6
ハイドンの弦楽四重奏曲第83番を聴いた。未完で、アンダンテとメヌエットしかない。メヌエットはプレスト。スケルツォでもワルツでもないメヌエット・プレスト。ベートーベンが出始めているこのころには、メヌエットは古いものになっていたのか。

通し番号になっていない弦楽四重奏曲があと二曲あるようなので、それを聴きおわる1/3にこのシリーズは終了となる。



"J. Haydn - Hob III:D3 - String Quartet in D major"
https://t.co/ezxQY05yv5
ハイドンの弦楽四重奏曲の、番号がついてないのを聴いた。5楽章あって、はじめに13分の変奏曲がありアンバランスだ。最後はシャキシャキしてていいんじゃないでしょうか。



"J. Haydn - Hob III:E2 - String Quartet in E major"
https://t.co/VMMfN28Heq
ハイドンの弦楽四重奏曲の、これまた番号がついてないやつ聴いた。これが最後。
演奏者名もわからず、なんだか古い演奏だ。最初の分散和音からして、ハイドンこんなことするかなーという印象。







去年の10月11日からハイドンの弦楽四重奏曲を一日一曲聴いてきたが、1月3日に無事おわった。


ハイドンの弦楽四重奏曲を聴き通して、オレが考えたのはメヌエットのことだ。
最初の弦楽四重奏曲が1755年、最後のが1803年。約半世紀。モーツァルトの生涯を丸々カバーしている。

はじめのころの四重奏は、五楽章構成でメヌエットが二つあった。
ベートーヴェンはメヌエットに代えてスケルツォを入れた。ハイドンの四重奏の初期にスケルツォはあるけど、緩徐楽章の代わりにスケルツォを入れている。メヌエットの代わりではない。

一曲に二つも入れていたメヌエットが、第19番以降はひとつになる。それが、晩年になってくると「メヌエット・プレスト」になる。スケルツォではない。あくまでも「メヌエット・プレスト」。

「テンポ・ディ・メヌエット」という言葉があるくらいで、メヌエットにはメヌエットのテンポがある。プレストにしてしまったメヌエットというのは、半分メヌエットじゃなくなったようなものだ。

はじめは二つあったメヌエットが、一つになり、プレストになる。そこを取り出してみるとこの半世紀、18世紀後半は、メヌエットが廃れていく50年だったのがわかる。スケルツォとワルツの19世紀がやってこようとしている。


以上です。


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