2022年09月19日

映画「世界で一番すばらしい俺」が賞に輝きました

映画に関する情報の続きです。

9/19
ロサンゼルス日本映画祭の閉会式がYouTubeライブで中継され
ていたので見てました。英語で何も分からなかったんですが、山森監督がスピーチしてたので「世界で一番すばらしい俺」は何か受賞したかもしれません。
動画の52分ごろ。
https://t.co/ZmjYzVBzDY

マサシヤマモリ! と山森監督が呼ばれて、英語で少ししゃべっていた。「tanka」のことを言っているのがわかった。
なんの賞なんだろう?


映画祭のホームページを見たら「Best Colors Award 」っていう賞だとわかりました。
https://t.co/ezzyBFY4Uk
というわけで。
「The most important me in the world / 世界で一番すばらしい俺」は
Best Colors Award を受賞したとのことです。おめでとうございます。

それがどんな賞なのかはよくわかりませんでした。過去の受賞作品を参照しようとしたら、去年や一昨年には「Best Colors Award 」はありませんでした。いずれにしても映画祭で受賞してるんだからすばらしいですね。


まあそのー、短歌といっても英訳されてるもんですから、オレの作品がどうこうっていうのとは違うような気がしますが、こうして映画に関わることができて、うれしくありがたく思います。






今後のことを書きます。
つづいて「札幌国際短編映画祭」があります。

https://twitter.com/sapporoshort/status/1570489993113796608

9/23に先行上映会があるとのことです。2712作品のなかの7作品を特別上映、200人を招待とのことで、その上映7作品に「世界で一番すばらしい俺」も入っています。

映画祭の本番は
【第17回 札幌国際短編映画祭
劇場上映:2022年10月7日(金)〜10日(月)
会場:サツゲキ(狸小路5丁目)

オンライン上映:2022年10月21日(金)〜11月6日(日)】

とのことです。11月までですから、まだまだ映画祭が続くんですね。

https://www.instagram.com/p/CioF9r5hUJD/?igshid=YmMyMTA2M2Y=
インスタグラムで見つけました。

リール動画のほうには「剛力彩芽さん主演の「世界で一番すばらしい俺」先行上映会でご覧いただけます!」っていうのもあったんですが、リール動画って確かすぐ消えるんですよね。
ツイッターだけじゃなく、インスタグラムもチェックしたほうがよさそうです。





https://ozueigasai.jp/table.html
9/24-25には蓼科高原映画祭に「世界で一番すばらしい俺」が登場します。スケジュールを見ると、24日に短編コンクールの結果が出るみたいです。結果によってオレがどうこうってことはありませんが、良い結果が出たらもちろんうれしいです。


最後に、映画「世界で一番すばらしい俺」の予告編の動画を紹介します。
https://youtu.be/s5lgz8QhfTc


んじゃまた。

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2022年09月15日

ロサンゼルス日本映画祭2022の短編作品の感想を書く

2022年9月3日ー14日まで、ロサンゼルス日本映画祭がオンライン配信されていました。
「世界で一番すばらしい俺」もオンラインで上映されました。
‍ご覧いただいたみなさん、ありがとうございました。


https://t.co/YnX299gdHK
剛力彩芽さんによるメッセージ動画です。ロサンゼルス日本映画祭で上映される「世界で一番すばらしい俺」の紹介です!

https://youtu.be/O12tU2_EX3o
こちらは「世界で一番すばらしい俺」山森正志監督のインタビューの動画です。





ロサンゼルス日本映画祭では14の短編映画が上映されました。
良い機会なので他の作品も見ました。見た作品の感想を軽く書きます。



「HOLDOUT」
終戦後もジャングルで戦っている残留日本兵の話。戦闘シーンはドキドキする。「ふるさと」の響きが印象的。


「cheind / チェインド」
息子を息子と認められない認知症? の母と、虐待で亡くなった少女の幽霊の話。母の演技がいい味だしてる。トイレの場面がよくて、隙間から洩れる光だけで多くを語っている。


「The Drifting Post」
漂流ポスト。
女子高生二人のキャッキャウフフのあと、話はズンと重くなる。ポストの場面の「間」がすごい。ためらい、迷いが見どころ。こういうポストがあるのは知らなかった。オレの理解力がなくて、なんでこんなにポストの前でモタモタしてるんだろうと思って再生速度を上げてしまった。最後まで見て理解した。


「MaTch」
東京に住む息子のところに大阪の母が訪ねる話。マッチングアプリって使ってる人を知らないんだがこんな感じなのかな。「マッチした」とか言って。昔のことにこだわらないでミキちゃんと会えばいいのに。謝りたいのかもしれないし。外国の方なんて、価値観の違いはもっと大きいかもしれないよ。
オレも母子家庭なので自分を少し重ねた。


「I Love Today’s Sky / 今日の空は大好き」
谷川俊太郎さんの詩を短編映画にした6分半の作品。詩と短編映画……こういうのもあるんですね。間を置きながら丁寧に朗読しているし、役者さんに清涼感があってすっきりと調和してるんじゃないでしょうか。好きな作品。


「CASSETTE TAPE / カセットテープ」。
周りの音が混ざるのがカセットテープだし、重ねて録音できるのがカセットテープだったな。古めかしさのある作品。
父も彼氏も感情が表現できずに無口で不器用で、東北の人ってこういうイメージを持たれてるのかなと。父は過去ばかり見ていて、彼氏はボサッとしてて変なプロポーズして彼女を泣かせている。つまり男は何もしなくて、女性ばかりが動き回ってるようにも見えなくもない。


「I'm less than zero / ぼくはぜろにみたない」
新型ウイルスの話。電話の場面がリアルだった。
この作品では外でもマスクを外しちゃいけない論調になってるが、オレが知ってるのは外ではマスクを外していいという呼びかけだから映画と食い違う。新しいものは古くもなりやすい。しのびよる感染症の恐怖が描かれている。


「First Street North」
アメリカの日本人街の日系人のみなさんの声を集めた作品。「小東京」って知らなかった。見たことないような形の筆が出てきた。はるか遠くにも「日本」が─そこに住む人々が日本であると信じている場所が─あると知った。大変よかった。


「Parents' Day/あした、授業参観いくから。」
複数の家庭で同じ会話が交わされる作品。各家庭の様子が興味深い。授業参観にくるってことは子供の様子に少しは関心あるわけで、それぞれの愛情があるんだと感じた。
いじめのその後が気になる。怒る保護者が怖かった、で終わっているけども。大事な人がこんな目にあったら、取り乱しちゃう気持ちは分からなくもない。うまくおさまってればいいなと思った。



Last Hawaiian Sugar
Orbital Christmas
Living in the Story
SUBMITTAN
は英語がわからないので見るのやめた。日本語は英語に訳されるが英語は日本語に訳されない、アウェイの環境の映画祭だ。

以上でロサンゼルス日本映画祭のショートフィルム14作品は終わり。20分前後の作品が中心だった。
愛情を伝える難しさを描いた作品が多い印象を受けた。


以上です。


■■■

工藤吉生 歌集 『世界で一番すばらしい俺』(短歌研究社)

発売中!



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2018年短歌研究新人賞受賞の第一歌集。
校舎から飛び降り、車にはねられながらも、ぬらっと生きながらえる。

「おかしないい方になるが、高度な無力感が表現されている。」──穂村弘

「人間性が色濃く表れた作品です。黒ずみにちょっとかけてみましょうよ。」──加藤治郎
(短歌研究新人賞選考座談会より)




ご注文はこちらから


短歌研究社
https://t.co/umdY4Nvspv

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https://t.co/tJsr2Aykh8

Kindle版
https://www.amazon.co.jp/dp/B09YSP7JYF/ref=dp_kinw_strp_2





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2022年09月02日

『世界で一番すばらしい俺』 主演の剛力彩芽さん インタビュー

https://lalalausa.com/archives/27648

剛力彩芽さんが映画「世界で一番すばらしい俺」について語っているインタビューです。
ロサンゼルス日本映画祭の上映スケジュールもここからわかります。ぜひご覧ください。

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mk7911 at 00:41|PermalinkComments(0)

2022年08月13日

映画「世界で一番すばらしい俺」情報!

まずは短歌研究さんのツイッターから。



https://twitter.com/tankakenkyu/status/1549291344186576898

\速報📣/
ロサンゼルス日本映画祭に選ばれました映画「世界で一番すばらしい俺」の現地上映が決定しました!
現地9月18日にマリリンモンローシアターにて上映されます。
ロス在住の方、ぜひ足をお運びくださいませ。
(監督:山森正志、主演:剛力彩芽、原作:工藤吉生)
https://t.co/O4djx2CaTs





工藤吉生です。
同じことをオレのほうからもお知らせします。
まずオレの歌集『世界で一番すばらしい俺』(短歌研究社)は短編映画になったのです。去年「ゆうばりファンタスティック映画祭」でご覧いただいた方もおられるかと思います。

短編映画「世界で一番すばらしい俺」は今年も上映の機会があります。ロサンゼルス日本映画祭〈略称JFFLA〉に選ばれまして、9月にオンライン上映されます。
https://t.co/BhycTRJNLG


それがさらに、現地ロサンゼルスのマリリンモンローシアターという場所でも上映されます。
スクリーンで見るとどんな感じなんでしょうねえ。ロサンゼルス日本映画祭では英語の字幕が付くそうです。



映画「世界で一番すばらしい俺」
(監督:山森正志、主演:剛力彩芽、原作:工藤吉生歌集『世界で一番すばらしい俺』)

なのですが、共演の菊池日菜子さんもいま活躍している女優さんで、注目です。





蓼科高原映画祭に入選しました! 小津安二郎にゆかりのある映画祭だそうです。
https://twitter.com/Ozu_Tanpen/status/1550987053126799360
9/17-25開催。




8/3
さらに、
札幌国際短編映画祭
に入選しました!
https://youtu.be/q1UQpQiUtdI
くわしくはこちらの動画をどうぞ。28分くらいから「世界で一番すばらしい俺」の話が出てます。
10月の上映なのでまだけっこう先です。


今回のお知らせは以上です。



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2022年08月11日

宮部みゆき『理由』読んだ

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8/7
直木賞作品の『理由』読み始めた。
高層ビルで四人亡くなっているんだが犯人どころか被害者も誰なのか身元がわからない。事件は大雨の深夜だし殺され方がひどくて、恐怖を感じた。この前読んだ『ソロモンの偽証』は中学生ばかりでワイワイしていたが、こちらは大人のドロドロの気配がする。79ページまで。


8/8
宮部みゆき『理由』読み進めている。
人はうじゃうじゃ出てくるのに、高層ビルでは人と人のつながりが薄かったりすれちがっているから孤独感がある。細い手がかりを辿って事件の真相へ近づいていく。ワクワクするというよりは、見たいような見たくないような真実に向かってカサブタを一枚一枚剥がしていくようだ。なにか判明すると同時に嫌な驚きとあらたな謎が発生する。夜は怖くてあんまり読めない。162ページまで。まだ三割ほど。闇に引き込まれる~。


8/9
宮部みゆき『理由』
登場人物が40人くらいになってきたので相関図を書いた。

不動産の問題がいろいろと出てきた。「占有屋」が問題になっている。これに関しては薄く知っていたが、知識を補強することができた。



8/10
宮部みゆき『理由』読み終わった。事件の全容があきらかになったのでだいぶスッキリした。
不動産とか住宅の話なのかと思ったが、最後まで読んだ今は、家を通した家族の話なんだなと思っている。
家族は困難だ。家族関係のいざこざやすれ違いがいろいろ出てくる。子育ての困難、親子の困難、夫婦の困難、介護の困難。家庭の歪みが集まって異様な疑似家族ができたり、事件になってるのかなと。
これだけたくさんの家が出てきて、ペットが一匹も出てこなかった。これからも気にしてしまいそう。

面白かった。部屋に「火車」「誰か」「過ぎ去りし王国の城」があるので次はそのどれかを読む。




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2022年08月07日

宮部みゆき『ソロモンの偽証』(新潮文庫)を読んだ

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2022.7/28
『ソロモンの偽証』読みはじめた。500ページで6冊、3000ページくらいある。そんな長さの小説はあんまり読んだことない。特に、日本の小説でこの長さのものは読んだことないかも。これまでに読んだ日本の一番長い小説は高校生のころに読んだ『次郎物語』かも。死にたいオレにカウンセラーさんが薦めてくれた本。海外だと普通に『戦争と平和』『カラマーゾフの兄弟』『ドン・キホーテ』とかそのあたり。

『ソロモンの偽証』読みやすい。面白い。目に浮かぶように書かれている。雪の感じとか、クリスマスの人混みの感じとか、不安そうな中学生の感じとか。当たり前だけど、めちゃめちゃ文章がうまい。話の動かしかたとか、事件の起こるタイミングとかが効果的。まだ助走のような段階だけど、これからすごいんだろうなと期待できる。こういうジャンルの小説をなぜか食わず嫌いしてきた。現代の日本の作家をあんまり知らないんだよ。オレの物足りなさを埋めるのは、これまで食わず嫌いしてきたものかもしれないぞ。

宮部みゆきさんのことはあまりよく知らないが、『ICO』だけは読んだことがある。同名のゲームが好きだったから。
宮部さんでオレが印象深いのは、「模倣犯」の映画の試写会で原作者の宮部さんが途中退席したエピソード。自分の書いたものが映画になったら、オレならちゃんと見ると思ったから。よほどだったんだね。



7/29
『ソロモンの偽証』120ページすすむ。
60ページくらいのところで柏木卓也という不登校の中学生が死んでいるのが見つかる。飛び降り自殺と見られるが、遺書がなく、他殺もありうる。雪の朝だ。
おそらくこれで自殺でしたってことはないだろうし、犯人探しになっていくんだろう。
つい、誰が殺したんだろうという目線で読んでしまうな。っていうかそういう小説なんじゃないか。犯人探しの小説をオレは今まで読んだことがないんです。

第一発見者は柏木と同じクラスの野田健一。目立たない生徒。雪から手だけが出てるのを発見しあわてて掻き出し大声で人を呼んでいる。当日に警察に詳しい事情をきかれている。両親が難しい状態らしく、健一が無断で出掛けたとかで母が取り乱して父に電話したり、翌朝に夫婦で大喧嘩になったりしている。

野田の友人に向坂行夫がいて、こちらも目立たない生徒。昌子という絵のうまい妹がいる。
当日に野田が教室に出てこなかったのは第一発見者になったからじゃないかと察している。妙に察しがいいな。あやしいとも言えるし、友人だからわかるのかもしれないし。野田と向坂は前日に柏木を目撃している。柏木はマクドナルドで黙々と食べていた。

藤野涼子はクラス委員。ほかのみんなが事件を受けて泣いているのに自分は平気であることで、自分は冷たいのかと自問自答している。妹が二人いる。父が刑事。

倉田まり子は藤野と入れ替わりたいと思っている女子。口の悪い弟の大樹にバカにされて傷ついている。家族はそれを咎めもしない。まり子は自分を不幸だと思っている。

担任の森内先生はモリリンと呼ばれる若い女性。不良にからわれる。事件に責任を感じているらしい。説明会にいない。

高木先生は学年主任。てきぱきしている。あまり好かれていない。

校長の津崎は豆ダヌキのあだ名をもつ。死体とか遺体と言わずにあくまで「柏木卓也君」と言い続けるというところ、保護者への説明会での慎重な発言に真面目さがうかがわれる。

保健室の尾崎先生は年齢不詳。詳しく話をきかれて疲れた野田が保健室に立ち寄っている。尾崎先生はやさしい。

保護者説明会が荒れる。多くの教師や保護者が入り乱れるんだが書き分けがしっかりしている。保護者は真相を知りたがるが学校側は慎重だ。保護者説明会は涼子の母、邦子の視点で書かれる。視点の移動がスムーズで、違和感がなかった。
柏木は大出という不良の生徒と喧嘩して1ヶ月ほど前から不登校になっていた。大出は他の生徒を階段から突き落としたことがあり、今回も大出が柏木を突き落としたんじゃないかと保護者の一人が指摘する。こんなに序盤でこんなに明快な説が出てきても、読者としては真相は別のところにある気がしてならない。
柏木は寡黙だったが、一瀬祐子とは一緒に図書委員をやっていて交流がすこしある。

柏木には宏之という兄がいる。「宏之」はどうしても若くして亡くなった歌人の名前のようで、生き残っているほうが宏之であることに、毎回脳の一部に負荷がかかる感じになる。
卓也は病弱で、親は卓也から離れることができない。宏之は卓也のせいで親の愛情を充分に受けずに育った。卓也を、本当は病気なんか無いんじゃないかと疑って喧嘩までしている。離れて住む。


ここまでで200ページ。序盤で人物を大方そろえておいて、このあたりの人物を中心にして回していくんだろう。まだ出てくるかな。このなかに犯人もいるのか。
ウジャウジャと人が出てくるが、一人一人が生きた人物の感じがする。


7/30
『ソロモンの偽証』370ページまですすむ。
12 告別式。演劇をやってた古野章子は柏木とわずかな接点があった。演劇部が、チェーホフの抜粋を大阪弁で演じたことがあった。古野は馬鹿馬鹿しく思いながらもさからわずに参加していた。そこに柏木が「くだらないな」とやってくる。「くだらないってわかってるのに、何で黙ってるんだ?」
13 野田の父親が仕事をやめて家を売って引っ越してペンション経営をしようと言い出す。伯父が何か企んでいる。健一は反対するが父には響いていない。
14 亡くなった柏木卓也の母親と、兄の宏之のすれ違い。宏之が卓也の本に触ろうとすると母親が触るなというところなど、何を言ってもむなしく、痛みを感じた章だった。
15 ニキビに悩む樹理と、太っているが特に悩んでる様子のない松子が登場。樹理は事件の犯人は大出らであるとする、定規をつかって線を引いて書いた告発文を、消印を意識して遠くまで出かけて三通投函する。樹理は自分の名前にも悩んでいる。ニキビの悩みを家族は深刻に受け止めてくれない。ニキビのせいで大出達からいじめを受けたこともある。
うーん、「樹理」は上野樹理とかいるしべつにキラキラネームでもないと思う。1990年だからすこし話が古い。男子が女子の顔を蹴ったりするいじめがちょっと信じられない。
16 藤野涼子あてに告発文がとどく。刑事である父の剛がそれを開封。学校に行って校長と会うと、校長のところにも告発文が届いていた。対応を話し合う。同席した学年主任の高木先生は外聞を気にして隠す方向で考えるが校長はより広い視野でものを見ている。告発を受け取ったことが告発者に伝わるようにすれば告発者は次の行動を起こし、あぶり出されてくるだろうと剛は考える。
17 藤野は警察にも行って担当の刑事ふたりに告発文を見せる。すぐにクラスメートが書いたものだろうと当たりをつけている。内容の真偽については誰も真に受けていない。少年課の佐々木刑事は事件後に大出達に会ったが彼らは特にあやしくなかったという。その際に大出といつもつるんでいる無口な橋田が柏木のことを「薄気味悪いやつだった」と言っている。

ここまで。警察や刑事の感じもよく書けている。さすが安定している。人物がみんな粒が立っている。告発は三通投函されていたが二通しか出てきていない。残り一通の行方が気になる。そういう興味のもたせ方がうまい。樹理は切羽詰まっていたし告発がイタズラには見えないがどうなんだ。怪文書が出てくると盛り上がる。


7/31
宮部みゆき『ソロモンの偽証』は二冊目へ。面白いことや気になることがどんどん起こる。これがエンタメってことか。

18 森内先生の隣人の垣内美奈絵が登場。夫に浮気される。証券会社に勤める夫は理性的で、浮気がばれても落ち着いて離婚を切り出してくる。美奈絵は別れたくなくて夫にすがって醜態を演じる。それを森内に目撃され、笑われたと思い込んで森内を憎む。美奈絵は森内に届いた郵便物を勝手に読むようになる。そのなかに、例の告発文を見つけた。三通目は担任の森内に届いていたのだ。美奈絵は、森内が告発を握りつぶしたことにしようとする。告発文を自分で破いて、ゴミ捨て場でこんなものを拾いましたとマスコミにたれ込んだ。
→垣内はちょっと安っぽい人物に感じた。物語の都合で出てきたような。
19 野田は両親から離れたい。家出したい。向坂はウチに来いよと言ってくれるが、本当に行くわけにはいかないだろう。そこで、両親がいなくなればいいんだと考え始める。
告発文を書いた三宅樹理は、結果が知りたくてウズウズしている。自分のところに告発文が届いたことにしたらどうかと、樹理は藤野に電話しかけてあやうく思いとどまった。
→ウズウズぶりがリアル。電話しても相手に番号がわからないから命拾いしたね。
20 別の中学の一年生の増井望は大出、橋田、井口の三人に暴行され金を奪われた。強盗傷害か。
21 増井を暴行した加害者三人とその家族が警察に来て調べをすすめる。大出の父、大出勝は高圧的で、うちの息子はやってないの一点張りだ。大出と行動を共にしていた無口な橋田の母親は、愚痴っぽくて自分語りばかりする。もう一人の井口の父親は大出を強盗扱いして大出の父を激怒させる。
→大出勝の恫喝が嫌すぎる。読んでると嫌なドキドキがある。
22 藤野涼子は図書館で倉田まり子と一緒に勉強する約束だったが、まり子がなかなかこない。涼子の隣に変な男が座ってきて触ろうとしてくる。涼子は逃げる。男が追ってくる。野田がいるのに気づいて、涼子は野田に話しかける。野田は毅然とした態度で男に向かっていくので、涼子は野田をたのもしく感じ、好意を寄せかける。野田が見ていたのは毒物に関する本だった。涼子は野田と一緒にまり子の家に向かう。野田がいつも通りに見えてきて好意はなくなる。
→中学生の淡い恋愛っていいよね。恋愛未満。ちょっといいなと思ったり、帰り道を一緒に歩いたり、そういうの。
図書館で痴漢行為とか信じられない。隣で勉強してるふりをしながら近づいてきて肘で胸を触ろうとしていた。

ここから二冊目。
23 増井望の件で大出たちは無罪放免となった。被害者が納得しているから、だそうだ。少年課の刑事・が佐々木礼子にはくやしい結果となった。生徒たちへの面談を重ねた結果、佐々木は、告発文を書いたのは三宅樹理にちがいないと津崎校長に告げる。
24 樹理があやしかったのは、落ち着かず緊張しているところ、面談のなかで友人の松子が何をしゃべったかを気にしていたところ、佐々木刑事からなにかを聞き出そうとしているところ。佐々木は樹理に接触して本当のことを聞き出そうと決める。
25 津崎校長のところにニュース番組の記者・茂木がやってくる。真っ二つに裂かれた告発文を見せてきた。こんなものが寄せられた、学校はなにか隠蔽しているのではないか、柏木卓也は本当に自殺なのか? 茂木は若いのになかなか鋭く、津崎は慎重に対応する。茂木記者はその後、不審なビクビクした中学生ほどの男の子を見かける。
26 藤野涼子は剣道部の先輩、仲間哲郎に淡い好意をよせている。涼子は仲間からヘンな話があると呼び出される。仲間の家は薬局なのだが、仲間が店番をしているときに野田がやってきてそわそわとおかしな様子だったという。野田は園芸用の農薬を買いにきたという。置いてないことを告げると野田は帰っていった。仲間がそれを父に教えると、彼は農薬を使って死ぬつもりかもしれないぞと言う。野田はそこまで悩んでいるのか? 涼子は野田に話を聞いてみることにする。後日、野田をなかなかつかまえられない涼子は、野田と仲の良い向坂に野田の様子をきいてみた。向坂によれば、野田は両親とうまくいかず悩んでいて一人になりたがっていた。


ここまで。興味のポイントがいろいろある。
・気弱な野田は果たして親を毒殺するのか?
・樹理は告発がバレて佐々木刑事に追われるがどうなっていくのか?
・茂木記者が告発文をつかってグイグイ取材していきそうだが、引っかき回されてどうなってしまうのか?
・大出たちは悪事をはたらいても親に守られて捕まらない。また何かやるだろう。井口の父親や橋田は何か腹にありそうで、大出をなんとかできるとしたらこのあたりからだ。なんとかならないか?



8/1
『ソロモンの偽証』二冊目おわり。400ページ進んだ。次から次に何か起こるんで、面白いけど嘘っぽくもなってきた。

27 野田は両親を葬るための計画を練る。練った「計画」自体が生き物と化して野田に実現をせまってくる。「オレに顔を与えろ」と。だが実行できず計画は完全に失敗する。向坂や藤野が駆けつける。野田の父は息子への態度を反省する。
28 捨てられていた森内先生宛ての告発状をめぐって紛糾。森内先生は告発状を受け取っていないと主張する。しかし郵便事故は無く確かに届けられていることがわかって、その主張は通らない。
29 茂木記者は学校の生徒たちに取材を重ねる。
30 三宅樹理から、佐々木刑事に会って話したいと連絡。「柏木卓也は自殺じゃない、大出たちが柏木を気にくわないと言い合っていた、柏木の死後に大出たちが上手くいったとしゃべっているのを聞いた」と樹理は嘘を重ねる。
31 柏木卓也の兄・宏之は真相を知りたいと強く願っている。両親はひどく落ち込んでいて、特に母親はまるで壊れてしまって宏之が殺したのかとまで言ってくる。
32 茂木は派遣社員の小玉を連れて大出のところに取材にいく。大出の父・勝は怒って茂木を殴る。小玉はそれを映像に収めている。その後、校長に詰め寄る大出勝を茂木が隠れて撮影していると、数人の生徒があやしんで茂木を取り囲む。
33 刑事課の部屋。少年課の佐々木礼子とタバコ臭いの名古屋刑事とのやりとり。やつれた森内は教師をやめたいとこぼす。そのころ津崎校長は辞表をしたためていた。
→いい加減なようで的を外さない名古屋のキャラがよく出ている。名古屋章を想像する。といってもダチョウ倶楽部の肥後さんがモノマネしている名古屋章だが。
34 茂木の番組「ニュースアドベンチャー」がついに柏木卓也の件を放送する。告発状も出てきて、本当に自殺なのか疑わせるような内容。三宅樹理や垣内美奈絵は告発状で起こった騒ぎを見て愉快で仕方ない。一方、野田は柏木が亡くなっていた場所で謎の少年と遭遇する。少年は柏木と同じ塾の友達だという。
→架空のテレビ番組の描写がうまい。この少年は冒頭で電話ボックスにいた少年か。
35 保護者説明会。テレビ放送を受けて校長が告発文について説明するが、荒れる。
36 浅井松子は太っていて両親も太っている。ダイエットを試みたこともあるが成功することはなかった。おおらかな両親に育てられて松子はお人好しだった。樹理には松子しか友人がいない。樹理のためを思って松子は告発状の投函の場所探しに付き合うなどしたが、告発状の内容が疑わしいものと知って松子は衝撃を受ける。
37 浅井松子が車にはねられる。目撃者がいて、松子は道路に飛び出してしまったそうだ。松子の事故と一連の事件をつなげて考える者もいた。松子はなにかを知っていて口封じされたのかと。藤野涼子はそれを知り体調を崩して保健室へ行く。保健室には三宅樹理がいて、声をかけても返事をせず、樹理は涼子に対して奇怪な笑い声をたてる。
38 松子が病院で亡くなった。樹理は、告発状について唯一知っている松子の死を知って安堵する、が、しゃべることができなくなっていた。
39 松子の死の反響。両親の悲しみ。
40 津崎に代わって教頭の岡野が校長代理となり、記者会見をひらく。告発状を怪文書と切り捨て、生徒の安心に全力で取り組む決意を表明した。大出とつるんでいた、橋田が井口と喧嘩して井口を三回の窓から落とし重傷を負わせる。井口は橋田が告発文を書いたのではないかと因縁をつけたらしい。
41 「ニュースアドベンチャー」で松子の事故、井口の件などが放送される。中学三年になっていた涼子たちは、卒業制作で柏木について何かできないかと考える。
42 大出の家が火事となり全焼。認知症の祖母の富子が亡くなる。放火の可能性。橋田が疑われている。茂木が涼子を取材する。涼子は茂木に怒りをあらわにし、自分達が真実を明らかにすると語る。
第一部おわり。


8/2
『ソロモンの偽証』は三冊目を一気に読んだ。なんか久しぶりに読書に夢中になれてるなあ。
いろんな不明なことをはっきりさせるために学校のなかで裁判をしようということになる。はじめは数人しか集まらず実現は厳しいかと思われたが、徐々に人が集まる。判事やら検事やら弁護人やらが決まる。反対や無関心の反応も多いが理解を示す人たちもいて、輪は広がる。丁寧にあたってみると意外な人が意外にも情報をくれたりする。
面白いのは三宅樹理の動き。なおも三宅樹理は告発状を作ろうとしていて、それを母親に見つかる。母親は娘を溺愛している。母親は声の出ない娘の代わりに茂木記者に告発の電話をするが、うっかり「うちの樹理が」と言ってしまう。茂木は電話を録音していた。

→どうしても「裁判」という言い方にひっかかるなあ。これを一番やりたいんだろうけども。「話し合いの場をもつ」とか「会談」とか「説明会」とかじゃだめなのか。法的な処分を決めるのが裁判だろうという認識に邪魔されて、スッと入ってこない。が、まあそれはそれで脇に置いておけるくらいには面白い本だ。
でもたしかに、集められる限りの情報や各々の意見から事実が追求されて、第三者がそれらを判断する、何日にもわたっておこなわれる集まり、を意味する日本語がほかにない。
「花火師」っていう隠語が興味深い。

昨日までのように細かく内容をまとめない。まとめは他のサイトがやってるだろうし、まとめてる時間があるなら次を読みたい。


8/3
『ソロモンの偽証』は四冊目の420ページまで。
地道な聞き込みやひらめきで不明なものが少しずつわかってくる論理的な面白さがある。事件がさらに起こって飽きさせない。かといってものすごく盛り上がるってほどでもない。電話がからむとどうしても古さを感じる。ポケットベルがまだある。

自分がこんなに連日にわたってスラスラと何百ページも本を読めるとは知らなかった。短歌の総合誌はなかなか読み進められなかったのに。長い小説は、乗ってしまえば読みやすいなあ。楽だ。興味でグイグイ読まされている状態が気持ちいい。もっとこういうのを読んでもいい。

宮部さんの本ではほかに『悲嘆の門』『模倣犯』が気になる。長そうなのを読んでいきたい。本は長い方がいいなんて初めての感覚なので、自分でおどろいている。ひとつの作品世界にどっぷり浸かる感覚、ページをめくると人が動き出来事が動くことへの興奮がたまらんのよ。



ミステリってどういうジャンルなのかWikipediaを調べたりした。まっったく触れてないのよ。ゲームで「かまいたちの夜2」(シナリオは我孫子武丸)をやったくらいか。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E6%8E%A8%E7%90%86%E4%BD%9C%E5%AE%B6%E4%B8%80%E8%A6%A7
日本のミステリ作家一覧。筒井康隆と星新一は読んだことある。ミステリ? あとはほぼ読んでない。めちゃくちゃ作家がいるけど、ここから自分に一番合う作家を見つけようとしたら寿命が足りなさそう。



8/5
『ソロモンの偽証』読み終わった! 面白かったな。ところどころ冷めてしまいそうだったが最後まで持ちこたえた。夢中で読めたといってもいい。
殺人事件だの法廷だのっていうようなこのジャンルに対して、理屈をもてあそぶ頭の体操みたいなイメージを持っていたが、イメージで軽視してはいけないね。すごい本です。ちょっと舐めててすみませんでした。
中心になってるのが中学生っていうのが良かったかも。

くっつている書き下ろしの中編はまだ読んでない。

映画はどうなのかとレビューを見たが賛否真っ二つだった。日本であらたに映像化が制作されているような話もあるようだ。
韓国で12話のドラマになっていて、そちらはレビューが少なくて高評価。レビューが多くて賛否分かれるのと、レビューが少なくて高評価なのはどっちがいいんだろう?



8/6
宮部みゆき『ソロモンの偽証』にくっついていた中編「負の方程式」を半分くらい読んだ。ソロモンの偽証となんの関係があるのかと思ったら、メインキャラだった中学生の藤野涼子がこっちでは大人になって弁護士で出てきた。藤野涼子が杉村三郎という探偵とからむんだが、宮部みゆきには杉村三郎シリーズというのがある。さりげなく他のシリーズに誘導してるのが面白い。杉村三郎を知ってる人からしたら、知ってるキャラ同士のコラボの面白さがある。内容は言った言わないの争いだ。

そんなわけで、他の宮部みゆき作品も読んでみようと思っている。読んでみたい作品とその興味のポイントを整理する。読んでみたい順で。


『火車』
→「このミステリーがすごい!」の1988-2008のベスト1位だったという。ジャンルの代表作となれば読むしかないでしょう。カード破産の話とのこと。

『理由』
→直木賞作品だから。直木賞作品って読んだことないかも。と思って歴代受賞作品を調べたら、本当に一冊も読んだことないのがわかった!!! マジかよ。

『誰か』
→杉村三郎シリーズ一作目。これが面白ければ『名もなき毒』『ペテロの葬列』『希望荘』に進む。いま読んでる「負の方程式」での杉村三郎次第では優先順位が下がる。

『過ぎ去りし王国の城』
→母が持ってたから。デザインやタイトルがいいから。スクールカーストが云々と書かれている。

『模倣犯』
→長いし人気作品だから。タイトルもいいな。この三文字だけで悪が渦巻いてるもん。これを読めば続きの『楽園』への道ができる。

『今夜は眠れない』
→突然5億円もらう話。それくらい誰でも空想しそうだが、宮部みゆきならリアルに描いて面白く展開してくれるという期待がある。

『クロスファイア』
→念じれば発火できる能力を持つ人の話。特殊能力ものは他にもあるが、時間旅行できる人が出てくる『蒲生邸事件』や、心を読める人が出てくる『龍は眠る』はあまり興味がない。なんで火だけ興味あるのか?

『R.P.G』
→ゲーム好きなので。考えてみたらRPGって聞き込みや探索で事件の手がかりを集めて話を進めていくゲームなんだから、ミステリの面白さと要素が重なるところがある。宮部さんはゲーム好きらしい。

『英雄の書』
→ファンタジーものでほどほどの長さ。これが面白ければ他のファンタジーものにつながる。気になってた『悲嘆の門』はこれの続きだという。

『レベル7』
→あらすじや紹介を読んでもよくわからないが重要な作品らしい。記憶を失った人が出てくる。

『魔術はささやく』
→日本推理サスペンス大賞受賞。

他に読んでもいいかなっていうのが『スナーク狩り』『長い長い殺人』。時代ものもたくさんあるようだが今のところ興味なし。
ざっと見ただけで読んでみたいのが11冊ある。息切れしたら買ってあるブルガーコフに逸れていけばよい。
検索してたら、イヤな気分にさせる「イヤミス」っていうジャンルがあるそうで、そちらの代表的な作家は湊かなえ。そっちも薄く気になる。


8/7
宮部みゆき「負の方程式」読みおわった。最後にサラッと明かされる設定でちょっとマイナス。それだけはやめてほしかった。
話自体は、中編でもしっかりとパズルが組み上がっているという印象。犯行がバレて逃走した犯人がすぐに車にはねられてあっけなく御用となったが、そのあたりが長編じゃなくて中編の展開のさせ方なのかと思ったりした。
不安定な境遇の子供とか、中学生が企んで大きなことをするとか、「ソロモンの偽証」に似たところはある。
杉村探偵は、あるテレビゲームについて聞きかじった後に、やってないゲームをやったかのように聞きかじりの知識をしゃべって子供に近づいて情報を聞き出そうとしていた。平気で嘘をつくからすごいね。車をカスタムする架空のテレビゲームなのだが、本当に存在するゲームみたいに描写されていてさすがだった。こまかい場面だが、老人にスマホの写真を見せようとしたらそんなの小さくて見れないと拒否されるところもリアルだった。
設定がスマートフォンのある時代になっているのは大きな違い。のようで、そうでもないか。
長編の文庫化にあたって中編を書き下ろすなんて、たいしたもんだ。単行本を読んだ人も中編のために文庫を買いたくなるでしょう。



次に読み始めたのが直木賞作品の『理由』。
高層ビルで四人亡くなっているんだが犯人どころか被害者も誰なのか身元がわからない。事件は大雨の深夜だし殺され方がひどくて、恐怖を感じた。『ソロモンの偽証』は中学生ばかりでワイワイしていたが、こちらは大人のドロドロの気配がする。79ページまで。

これについては次回。

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2022年07月07日

第16回ぬらっと!短歌大賞(2021下半期~2022上半期短歌大賞) 25首

第16回ぬらっと!短歌大賞をやります。

ぬらっと!短歌大賞とは
▷この半年に読んだ短歌から25首選びます。読んで良かった短歌はツイートしたりブログにまとめているので、ブログやツイートを読み返して選びました。
▷選ばれても賞金賞品は何もありません。ごめんなさい。
▷前回休んだので一年ぶりの開催となります。一年ぶりですが前回と同じ25首にしました。



これまでの様子をざっくりと。

【第1回】2014上半期短歌大賞 65首 https://t.co/wKPedkRliu.

【第15回(前回)】2021上半期短歌大賞 25首 https://t.co/WABPM84CXm.




この記事では評というかコメントをつけて短歌を紹介していきます。
歌だけまとめたものはこちら
第16回ぬらっと!短歌大賞(2021下半期~2022上半期短歌大賞) - Togetter https://t.co/fVhYmVxpmM.








第16回ぬらっと!短歌大賞




決めたことを守る時から始まると思うこの世の悲劇のすべて
╱盛田志保子
『未来』2020.12
1/25

→「思う」の個人のところから「この世の悲劇のすべて」にぶわっと広がるところにダイナミックなものを感じた。



夭折の少女の肖像画のような思い出がある あなたに わたしに
╱野樹かずみ
『未来』2020.12
2/25

→「あなたに わたしに」からたちのぼってくるものがある。読んでるこっちに短歌が直に語りかけて関わってくる感じ?
見るたびに可哀想になる儚い寂しい絵、あるいは、あどけなかったり可憐だったりするか。



へたくそに折ってしまった紙飛行機のようにするどく落ちるテンション
╱沼谷香澄
『未来』2020.12
3/25

→たしかに下手な紙飛行機ってすごい落ち方をする。オレは上手に折れなくていつもこんなふうでした。「するどく」が素晴らしい。するどいけど刺さらないし危なげない。
比喩によってものの見えかたが変わるのがおもしろい。



腹押せば喋る人形の声だけが聞こえる夜なりわが誕生日
╱竹中玲子
『つばさ』18号
4/25
→何も聞こえないしずかな夜に、人形の腹を押してみたんですね。「わが誕生日」でひやりと寒くなる。なんと孤独な誕生日の過ごし方だろう。



歌つくるは魚(うお)釣るごとし虚空よりをどる一尾の鯉を釣り上ぐ
╱小池光
『角川短歌年鑑 令和3年版』
5/25

→「をどる一尾の鯉」とは見事だなあ。作歌のよろこびを感じる。こんなふうに生き生きしたピチピチした歌を作れたらいいな。



肩にいるカマキリそして生活苦思わず肩を揺すったオレは
╱坪内稔典「キスしたばかり」
『現代短歌』2021.1
6/25

→カマキリは落ちそうだけど生活苦は落ちなさそう。
巻頭100首から。読んだことないような感じの作品で、おもしろかった。



役者志望が役者になった知らせあり虹の途中で手を振るような
╱貝澤駿一「フィールドワーク」
『現代短歌』2021.1
7/25

→現代短歌社賞から。よかったねえ、しか言葉がでてこない。虹を渡るような生き方、いいよねえ。



森林のなかを歩いたある記憶ぼくは光に憧れていて
╱岩倉文也「紙飛行機」
『ねむらない樹』vol.5
8/25

→暗くて光のとどかない森林なんだろう。下の句が好きだなあ。気持ちの明るさやそれをさえぎるもののことのように感じた。悩みから解放されたいとかの。でもやっぱりただ夢のようでもあるし。
「ある記憶」って言い方もポイントなのかもしれない。「昔々あるところに」の「ある」。



水底に何か動いたような気がしてドブ覗く デカビタの瓶
╱八重樫拓也
『ねむらない樹』vol.5
9/25

→途中からめちゃくちゃ濁音が増える。
「水底」の段階ではそうじゃなかったのに後からドブとわかるから、想像した水が急に濁る。底にあるものの正体がわかって安心しそうになるけど、デカビタの瓶だったら動くわけないんだよなあ。



夕闇に木の幹から暗くなる子供三人かがまり遊ぶ
╱高橋みずほ『ひとふりの尾に立てる』
10/25

ここから歌集がつづく。
→木の暗さが幹から枝葉に広がっていく。子供三人の「かがまり」が危うい。木の影がせまってきて飲み込まれそうで。



涙もろくなりたる母が虫食ひの栗を手にして切なさうなり
╱伝田幸子『冬薔薇』
11/25

→泣くほどのことではなくて、涙するところまではいかずにとどまっている。涙する前の段階にせつなさがある。「手にして」がいい。しみじみと手の上の栗を見ているのだろうか。
母の歌に良いものがある歌集だった。



ぺろんぺろん証明写真四ピースわたしの顔を手のひらに受く
╱中川佐和子『春の野に鏡を置けば』
12/25

→お金を入れると証明写真を撮ってくれる機械かな。軽い写真があっさりでてくる様子が「ぺろんぺろん」によくあらわれている。何か舐めているのか、状況をつかめない初句で、そこからよくわかる状況になる。読みようによってはシュールな下の句。



山眠る よく燃えそうな神社へと人びとの列ときどき動く
╱鈴木ちはね『予言』
13/25

→まがまがしい。
「山眠る」は目覚めた山を思わせて「よく燃えそうな」はよく燃えているところを思わせて「ときどき動く」は止まった時に行われることを思わせる。燃やすこともできる人たちが、順番を守って参拝している。



リコーダー持つて帰ると子は決めて「さびしい時に吹くから」と言ふ
╱大口玲子『自由』
14/25

→歌集を読んでいくとこの子が不登校であることがわかる。不登校だからリコーダーを学校に置くか家に置くかを選択する自由がある。おそらく子供が吹けるリコーダーの曲はごく限られているんだが、そんななかでも音楽はさびしさに寄り添ってくれる。
オレなんかは好きじゃないのに授業で吹かされていたから、リコーダーとの向き合い方の違いを感じた。
「さびしい時に吹くから」と言われたら、親の気持ちとしては、リコーダーが聴こえるたびに子のさびしさを思うのだろう。



いいんいいんと余韻波だつ鐘楼の下の石にて蜘蛛は動かず
╱蒔田さくら子『翡翠の連』
15/25

→余韻だけをあらわしている「いいんいいん」がおもしろい。蜘蛛は全身で響きを感じているのだろうか。
「波だつ」もいい。水面にひろがる波紋を思わせる。



海の場面に変わる映画のひかりにて腕の時計の針を読みおり
╱吉川宏志『石蓮花』
16/25

→映画の、夜や暗がりの場面が切り替わってパッと明るくなったんだね。その一瞬に映画の中からこちらに意識が戻ってきた。強いひかりを浴びていながら、ひかりや海とは別の時間を過ごしている。



少なくてもいいという意味もできるだけ込めて好きなだけ食べてと言おう
╱永井祐『広い世界と2や8や7』
17/25

→「好きなだけ」って言うとたしかに「いっぱい」の意味にとられがちだ。言葉って難しい。意味をこめるためにタイミングや声音やイントネーションを工夫するわけでしょう。実際にその意味で「好きなだけ食べて」って言うとしたらむずかしそう。



心いま針のようなりひとすじの糸通さねば慰められぬ
╱遠藤由季『北緯43度』
18/25

→「針のよう」と言われれば細くとがっているのかと想像するが、穴のほうについて言われるので意外性があり、慰められることと慰めることのむずかしさも感じる。



やねのむかういつちやつたね、と手を振る児よ父に飛行機(ぶーん)はまだ見えてゐて
╱黒瀬珂瀾『ひかりの針がうたふ』
19/25

→同じものを見ていても背の高さで見えかたがちがう。有名な、正岡子規の藤の花の歌を思い出した。見てる人が二人になり、対象が動くものになって、畳が屋根になった。
かっこいいルビが出てくる歌集だが、子の歌になるとちがった感じになる。獅子と書いて「がおー」と読ませる等もある。



柵に手をかけたる写真 横顔であればわが耳うず巻きいたり
╱中津昌子『記憶の椅子』
20/25

→自分の耳のうずまき具合ってなかなか見ないな。鏡でもそんなに見るものじゃない。「柵」は字からもタテヨコタテヨコしていて、結句のうず巻きとの関係がおもしろい。
っていうか横顔なんてめったに撮られない。オレは自分の想像する自分の横顔の正確さに自信がないぐらい。



陽のひかり薄らぎながら遠のいて真昼 記憶が多めに消える
╱笹川諒『水の聖歌隊』
21/25

→なんなのかわかんないけど不安で悲しくなる。何もしてる感じがなくて空だけ見ている植物の視点みたい。多めに、ってことは普段から消えつづけているのか。もう増えることがなさそう。



昨夜(きぞのよ)に泥づきし靴(くつ)もまづしくてデパアトの屋上(をくじやう)にをりし一時(ひととき)
╱佐藤佐太郎『歩道』
22/25

→夜に泥のついた靴を翌日の朝とか昼間に見ると違って感じるだろうね。そういう時間の隔たりもありつつ、泥のあった場所からデパートの屋上への場所の隔たりもある。
……って前に書いて、満足はしてないけどこれ以上いま書けることもない。



「かえろう」と入力すれば「きえろあ」と入力される夜の荒涼
╱朝倉康夫「一塊のトマト」
『かばん』2021.6
23/25

→フリック入力だとこういうことがある。「きえろあ」って、怖いお兄さんにからまれている。怖いお兄さんに文字入力を乗っ取られたかのようだ。



人類がいない地球で三度目の二足歩行が流行り始める
╱清水にすい「自由」
『かばん』2021.6
24/25

→「三度目」が良くて、人類の前にも二足歩行があったのかと思わせる。人類でもない三度目でもない、この短歌の外側の存在が気になる。それと、二足歩行って流行りなんだ。ってことは廃れることもありそう。



まばたきに似た電灯の無人駅からどれくらい歩いたんだ……?
╱郡司和斗「あきキャン」
つくば集 創刊号
25/25

→切れかけている電灯は、まばたきみたいに点いたり消えたりする。けっこう歩いているようだが、次の場所に着かないらしい。現在地もわからず、さらに心細い。人の気配がしなくて、人っぽいのは遠い背後の電灯のまばたきのような明滅。下の句もなんだか不安定だ。



以上「第16回ぬらっと!短歌大賞」でした。次回は半年後。今年の年末か来年のはじめにやれるといいなと思います。


ありがとうございました。

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2022年06月26日

{短歌の本読む160}『かばん』2021年6月号  ~林檎の家族、ほか

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短歌の本読む160
『かばん』2021年6月号
去年の本なのでちょっと古いんですが順番にやっていきます。
「かばんの会」から出ている本で、会員の短歌作品などが載っています。



勝てそうな方を応援する癖で いつも自分を見捨ててしまう
╱島坂準一「舗装道路」



寄り添って祈るほかなき日もあるか野菜室に林檎の家族ねむれり
╱中沢直人「ジブラルタル」

→林檎の家族ってかわいいと思ったけど、冷え冷えとしている場所にいてどうにもならない。その祈りってなんだろう。一年以上前の短歌なんだけど、ウクライナで工場のなかにいる家族の映像を思い出した。



漆黒の心が歪み穴が開き四月の雨が染み込んでいく
╱野川忍「いつまでも狂気」



人という字はケータイとケータイが支え合ってできているのです
╱杉城君緒「人人人」

→物事の由来とされているものって、どこまで正確かわからないものだ。ケータイで支え合う部分もあるけども。
それが標準になった世界では教師の説教も変わるだろう。髪をかきあげながら「だから君たちは人としてケータイを大事にしなさいっ」とか言うんだ。



誰かの犠牲でやさしい顔が出来ている鏡のなかで火事が広がる
╱来栖啓斗「倦怠かもしれない」



「かえろう」と入力すれば「きえろあ」と入力される夜の荒涼
╱朝倉康夫「一塊のトマト」

→フリック入力あるある。「きえろあ」って、怖いお兄さんにからまれたみたいだ。「荒涼」も「かえろう」に近い。



夢にみたあなたの手から放たれてブーケのようにおちてゆくだけ
╱森山緋紗「ジェラート」



人類がいない地球で三度目の二足歩行が流行り始める
╱清水にすい「自由」

→「三度目」がいいところで、人類の前にも二足歩行があったのかと思わせる。人類でもない三度目でもない、この短歌の外側の存在が気になる。それと、二足歩行って流行りなんだ。ってことは廃れることもありそう。



これが夢ならブルーのおねしょするだろうこんな寒い日に人に嫌われ
╱高柳蕗子「雑霊」




そんなところで、この本おわりです。

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2022年06月24日

〈総合誌読む154〉『短歌往来』2021年3月号  ~目を閉じて見ている線路、ほか

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短歌総合誌読む154
『短歌往来』2021年3月号

古い本なんですが、とにかく順番にやっていきます。「飛翔する歌人たち」っていう、若手? 的な人を集めた特集があって、それにオレも呼んでいただいたのでした。

『短歌往来』ってめったに書店に置いてない雑誌なんですが、電子書籍があったりします。

手元の2021年3月号は142ページ850円。ほかの短歌雑誌と比べるとページ少なめで価格も控えめだけど、これくらいでも充分と思う。ぶ厚くて価格も高いものが毎月出るとなかなかチェックしきれない。



おならのやうな楽鳴らしつつ若者の車過ぎゆく楠並木通り
╱志垣澄幸「翼あらねば」




特集「飛翔する歌人たち」は24人が五十音順に載っている。

目を閉じて見ている線路 氷漬けのやさしさよりは氷が欲しい
╱大森静佳「氷」

→「やさしさよりは氷が欲しい」でかっこいいなと思った。目を閉じてても見えていて、迷いがなさそう。



雪ふれば空をみあげるひとの瞳(め)はひとときずたずたの凧として
╱大森静佳「氷」



さっきまでがらすむこうにいたひとがこっちがわへときてこえをもつ
╱長屋琴璃「ふゆのかんかくしついくつか」



かつてありしBarの跡地は駐車場月見るだけの窓も消えたり
╱川口慈子「黒リップ」

特集からはそんなところで。



もつといいことあつたらう目覚めわろき夢ばかり見するなづきを叱る
╱萩岡良博「みたまのふゆ」



ヘッドライト消せば真闇の洞窟にわれが野生の眼みひらく
╱尾﨑朗子「青木ヶ原樹海」

→「自然を詠む・撮る・描く」というページ。写真や絵が添えられていてイメージの助けになる。


この本からはこんな感じです。

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2022年06月22日

『短歌研究』2022年7月号のお知らせ

『短歌研究』7月号。連載「Twitterで短歌さがします」のほかに、作品20首とミニエッセイ的なやーつを書いてます。

「Twitterで短歌さがします」第12回は「うたらば」です。

「連作づくりのキモ中のキモ」という連作に関するミニエッセイ的なやーつは、オレは誰も書かなそうなことを書いた……と思ったら、きかれてないことに答えていたと気づいた。
「キモ中のキモ」と言われても、めちゃくちゃキモい人みたいだよねえ。キモさなら負ける気はしないが。

新作20首は「強力アンソロジー」っていう括りになっていた。あんまり強力じゃなくてごめんなさい。
自分の20首を見てると、たとえば歩いてたら突然床が抜けるみたいに、ボコッ! ってクオリティーの落ちる歌がいくつかあるように思う。提出する前に、自分自身の歌をもっと意識して読みたいと思った。

そんな感じです。

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