2021年09月21日

ゆうばり映画祭2021で「ピアノ-piano-」「COMPLY+-ANCE」などの8作品を見た感想【スペシャルプログラム】

ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2021の「スペシャルプログラム」「特別上映」の作品を8本見て感想を書きましたので、ここにまとめます。



オレを知らない人も読みそうな記事なので自己紹介しますと、
オレ・工藤吉生はこの映画祭のスペシャルプログラムで上映された「世界で一番すばらしい俺」(主演・剛力彩芽、監督・山森正志)という作品の原作者であります。短歌をやってる人間、いわゆる歌人であります。同名の本『世界で一番すばらしい俺』を出しています。

映画にはべつに詳しくなくて、年に1本しか見ない年もあるくらいです。映画はよく知らないので、こういう機会にいろーんな映画を見てみたいなと思ってたくさん見ました。
そういう人が書いている感想として読んでいただければよいと思います。

星三つ付けてみました。基準は
☆☆☆すごくよかった
☆☆よかった
☆ちょっとよかった

です。それ以外は無印です。

見た順番で、Huluで見れた作品に限ります。






スペシャルプログラムと特別上映からは8作品を見ました。



「ピアノ -piano-」

☆☆
セリフがなくて、ピアノの音だけで物語を表現した作品。短歌だけで表現した「世界で一番すばらしい俺」の隣だったので縁を感じて真っ先に見た。

ピアノが変に上手くないのがいいよ。弾けるということは、既成のものを弾くことだ。そうではなくてピアノを手探りで弾くことで、無から有を産み出しているような感触がある。




「ATEOTD」


途中までわかってたけど、二人が出会うあたりからよくわからなくなった。自然の多い映像が美しい。




「イネーシャ」

☆☆
イギリス。隕石で友人を失くした教師マディは深い悲しみに沈んでいる。ルビアという生徒がたびたびマディのもとを訪れる。そういう話。

とても静かな映画だ。全体的に沈んでいる。悲しんでいる先生に生徒たちが寄り添おうとしている姿勢が印象的だ。




「めぐる」

☆☆☆
監督がミャンマーで囚われているという語りから始まるが、映画自体はミャンマーと関係ない。

ひとつの駆け込み乗車による電車のわずかな遅延が人々の運命を動かす話。ではあるけど、登場する人物は誰もが悩みながら生きている。いじめ、夫婦の不仲、祖母の死、就職難。重苦しい空気がからみあう。ずしりと重い作品。

タレントの千秋さんみたいな感じの、すごくサバサバした女子高生がでてくる。主人公に向かって「自殺するなら持ってるお金くれませんか?」と言ってくる。そこから仲良くなる流れが面白かった。このキャラがいいアクセントになっている。




「エイン」

☆☆☆
「めぐる」と同じ監督さんの作品らしいが、あきらかに映像が古い。2006年になってるけど、もっともっと古いだろう。1970-80年代に見える。電話が黒電話だ。

家族で日本に引っ越してきたミャンマー人の物語。主人公の長男13歳のアウメインは、外人と言われてバカにされることに耐えられない。学校でうまくいかずトラブルを起こし、家でもイライラしている。「ミャンマーに帰りたい、なんで日本に連れてきたんだ」と父に訴える。
アウメインは弟と一緒に家を出て海に向かう。そこに出会いが待っていた。そんな話。


警官や、変な車に乗ってるあんちゃんや、ハーフの漫才師がとても良くて、心あたたまる。弟が無邪気なのもいい。主人公の閉ざされた心がひらいていくのがよくわかり、気持ちのいい作品。

親が子を叱るときに腕組みさせるところや、白い粉で化粧してるのが印象的だった。

昔って、いじめと紙一重の「いじり」で人と人がコミュニケーションをとったり仲良くなってたようなところがある。わりとズケズケいくんだよ。

今の日本の学校でこんなことあるかなあ。外人がこわい・苦手、っていう意識のほうが強いんじゃないかと思うんだけどどうだろう。





「COMPLY+-ANCE」

☆☆☆
はじめは面白がって見てたけど、だんだん息苦しくなる。

いくつかに分かれている。
フランスの映像、
海辺で撮った映像を公開しないでほしいと言い出した女の子、
ラップ、
コンプライアンスに目覚める刑事を描いたアニメーション、
インタビューの収録がコンプライアンスのせいでこじれてゆく様子。
いろんな角度からコンプライアンスが描かれている。

どれも良かったけど、最後のほうはパンチが重かったな。そういう風刺がどこかにあるとは思ったけど、すごく精巧につくられているしジワジワ責めてくる。
ラバーガールの大水さんみたいな人がいた。「写真撮らないでください」と言われて動画を撮りだしたところで確信に変わった。大水さんのよくやるボケだ。





「奇跡」


なにが奇跡かはわからなかった。

韓国。自己破産した主人公ジャンウォンは、その原因になった男ミンギュを追っている。
ジャンウォンは地に足のつかない男で、仕事はちゃんとせず家族を大事にしない。競馬やってた。
妻ジヨンは体が悪くて死にそう。
ジャンウォンは同じくミンギュを追っているイヨンという女性と出会う。
みたいな話。

要するに、死ねばいい人がやっと死んだらみんなハッピーになったってことで理解してもいいかな。

余白がたっぷりあって、自然が美しい。雰囲気がいい。
イヨンとジヨンが区別できなかった。どっちも長い黒髪でやせている。これは致命的。

ジャンウォンはときどき深遠なことを言うんだが、それと行動が合ってない気がする。





「パプリカ」


夕張の高校生たちが地元の人たちと踊る。
映画というよりダンス動画。映画は知らないけどYouTubeはよく見てるんだろうなっていう感じがしました。



以上です。






あわせてどうぞ


ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2021 「インターナショナル・ショートフィルム・コンペティション部門」の作品をすべて見た感想 :
https://t.co/5TNfeziPmh



ゆうばり映画祭2021で「PARALLEL」「MY WORLD」を見た感想 :
https://t.co/ajn7yRlFsl


ゆうばり映画祭2021で「0&1」「スナック来夢来人」「美しい蛇」を見た感想 :
https://t.co/r5tySIDxK0






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ゆうばり映画祭2021で「0&1」「スナック来夢来人」「美しい蛇」を見た感想【ゆうばりチョイス部門】

ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2021の「ゆうばりチョイス部門」の作品を3本見て感想を書きましたので、ここにまとめます。



オレを知らない人も読みそうな記事なので自己紹介しますと、
オレ・工藤吉生はこの映画祭のスペシャルプログラムで上映された「世界で一番すばらしい俺」(主演・剛力彩芽、監督・山森正志)という作品の原作者であります。短歌をやってる人間、いわゆる歌人であります。同名の本『世界で一番すばらしい俺』を出しています。

映画にはべつに詳しくなくて、年に1本しか見ない年もあるくらいです。映画はよく知らないので、こういう機会にいろーんな映画を見てみたいなと思ってたくさん見ました。
そういう人が書いている感想として読んでいただければよいと思います。

星三つ付けてみました。基準は
☆☆☆すごくよかった
☆☆よかった
☆ちょっとよかった

です。それ以外は無印です。

見た順番で、Huluで見れた作品に限ります。






ゆうばりチョイス部門からは3作品を見ました。


「0&1 デジタルリマスター版」

☆☆
殺し屋の主人公0は、自分の生きる意味を見失いかけている。なにか残そうと、カメラで映像を残しはじめる。0は同じく殺し屋の1と出会い、親密になっていく。それを組織は危険視するのだった。そんな話。

まあたしかに、殺し屋って、ずっとやってたらメンタルにきそうな仕事だよなあ。

殺し屋がたくさん出てくる話で、彼らのなかにもいろんな考え方があり人間模様があるのが興味深かった。
撃つ前の無表情が印象的。

ちょっと古くて、いつごろの作品なんだろうと考えながら見た。コンビニはあるけど携帯はなくて撮影にはデジカメ使っている。90年代後半くらいかなあと。確認したら2002年だった。




「スナック来夢来人」
☆☆
スナック来夢来人にはいろんな人が集まってきて、佐知子ママを中心に楽しいひとときが繰り広げられる。

いろいろふざけ倒してて笑えた。80年代かそれ以前の、いろんなもののパロディがふんだんに散りばめられていて、ニヤニヤしてしまう。中年ホイホイだ。そういえば中年しかでてこない。
スコップを踏んだら柄の部分が顔に当たるって痛そう。




「美しい蛇」

☆☆
一見母と娘のような二人だったが、嘘がはがれて別れる話。

探偵みたいなことをして嘘を暴露すると盛り上がってワーッてなる。
だけど勝手な理想を相手に押しつけてるのはお互い様じゃないの。

そこからこぼれてくる虚しさというかさびしさを、サガンだったり蛇だったりがあらわしているんじゃないのかなあ。
何か刻んでるのはよくわからなかった。「母」を捨てるたびに名前を刻んでるとか?


サガンの『悲しみよこんにちは』が出てくるんだけど、こういうところに出てくる一冊の本っていいな。
自分の本が本として映画に登場して、作中人物に読まれたらどんな気分だろうな。





今回はどれも☆二つだった。つまり、どれもそれぞれ良かった。






あわせてどうぞ


ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2021 「インターナショナル・ショートフィルム・コンペティション部門」の作品をすべて見た感想 :
https://t.co/5TNfeziPmh



ゆうばり映画祭2021で「PARALLEL」「MY WORLD」を見た感想 :
https://t.co/ajn7yRlFsl



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ゆうばり映画祭2021で「PARALLEL」「MY WORLD」を見た感想【ファンタスティック・ゆうばり・コンペティション部門】

ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2021の「ファンタスティック・ゆうばり・コンペティション部門」の作品を見て感想を書きましたので、ここにまとめます。



オレを知らない人も読みそうな記事なので自己紹介しますと、
オレ・工藤吉生はこの映画祭のスペシャルプログラムで上映された「世界で一番すばらしい俺」(主演・剛力彩芽、監督・山森正志)という作品の原作者であります。短歌をやってる人間、いわゆる歌人であります。同名の本『世界で一番すばらしい俺』を出しています。

映画にはべつに詳しくなくて、年に1本しか見ない年もあるくらいです。映画はよく知らないので、こういう機会にいろーんな映画を見てみたいなと思ってたくさん見ました。
そういう人が書いている感想として読んでいただければよいと思います。

星三つ付けてみました。基準は
☆☆☆すごくよかった
☆☆よかった
☆ちょっとよかった

です。それ以外は無印です。

見た順番で、Huluで見れた作品に限ります。






ゆうばりファンタスティックコンペティション部門からは8作品のなかの2作品を見ました。





「PARALLEL」

☆☆
よくある感じのタイトルで避けてたけど、ダブル受賞したので見た。
アニメのかぶりものをしている連続殺人犯と、虐待のトラウマを抱えた女性の物語。

血が出るしなかなか暴力的なんだけど、表現力が感じられてあまり嫌じゃなかった。利用される生き方なんてまっぴらだという気持ちが出ていた。

人は人の上に立つのが好き、神はそのために人間を生み出した、という話が印象に残った。






「MY WORLD」

☆☆☆
タイトルがちょっとといえばこれもそうだが、シンプルなあらすじでとても気になった。
公園で目覚めた男が記憶喪失になってたことしか書かれていない。

公園で目覚めた男はあてもなく歩くが、女子高生に声をかけられて、しばらく住まわせてもらえることになる。
男は何日も暮らすが記憶は戻らない。だんだんあきたらなくなりこっそり外に出る。そして図書館で不思議な女に会う。


めちゃめちゃ好きな作品だった。最後にこれが見れてよかった。ゆうばり映画祭ありがとう。
謎めいているところ、エロいところ、人が少ないさびしいところ、反復するところ、みんなオレの好みだ。
一時間で三人しか出てこないし、音楽が耳鳴りみたいな音ばっかりだし、シンプルでよかった。

オレのなかでは全上映作品のなかのグランプリです。



「PARALLEL」も「MY WORLD」もそうだけど、無条件に受け入れてくれる女性が出てくる。男の作品だねと思う。






あわせてこちらもどうぞ

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ゆうばり映画祭2021で「0&1」「スナック来夢来人」「美しい蛇」を見た感想 :
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ゆうばり映画祭2021でスペシャルプログラム7作品等を見た感想 : https://t.co/S3Vb73JSxM




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2021年09月19日

ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2021「インターナショナル・ショートフィルム・コンペティション部門」の作品をすべて見た感想

ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2021の「インターナショナル・ショートフィルム・コンペティション部門」の作品をすべて見て感想を書きましたので、ここにまとめます。



オレを知らない人も読みそうな記事なので自己紹介しますと、
オレ・工藤吉生はこの映画祭のスペシャルプログラムで上映された「世界で一番すばらしい俺」(主演・剛力彩芽、監督・山森正志)という作品の原作者であります。短歌をやってる人間、いわゆる歌人であります。同名の本『世界で一番すばらしい俺』を出しています。

映画にはべつに詳しくなくて、年に1本しか見ない年もあるくらいです。映画はよく知らないので、こういう機会にいろーんな映画を見てみたいなと思って短いほうからたくさん見ました。
そういう奴が書いている感想として読んでいただければよいと思います。

星三つ付けてみました。基準は
☆☆☆すごくよかった
☆☆よかった
☆ちょっとよかった

です。それ以外は無印です。

見た順番で、Huluで見れた作品に限ります。






1.「くっつき村」

タイトルで気になってた作品。ツイッターで見かけた画像も強烈だった。
夫婦が背中合わせにくっついて生まれてくる村がある。互いの顔を知らずに一生を過ごすのだ。
設定は奇抜で絵面は強烈だが、わりと常識的に話が進む。



2.「おしり」

これもタイトルが気になった。
おしりが体の他の部分になりたがる話。
絵本の読み聞かせみたいに進む。最後のがなんなのか分からなかったが、しばらくしたら分かってきて、好ましく感じた。



3.「この監督ヤバスギ!」

韓国のコメディってこんな感じなのか。
横暴な映画監督に対してスタッフが復讐する内容。映画をつくる人は、もっと楽しめるかも。
監督もやばいが、他のスタッフもやばいよ。


4.「STIGMA-スティグマ-」

東京の上空に巨大生物がなんたらというあらすじが良さそうで見たが、思ってたのとは違う感じだった。
バドミントン選手が主人公というのが新鮮だった。たしかにバドミントンやってそうな感じがする人だ。

ちょっと嘘くさかったかなー。あんな記者会見ないでしょう。責任ある立場の人が会見でその場の思いつきを叫ぶのがやりすぎに感じた。



5.「フキダシ」

チョークを拾ったら、他の人の考えていることがわかるようになり、しかもその考えをチョークで書き替えることができるようになる話。
設定は「世にも奇妙な物語」みたいで映画で見るにはちょっときついが、フキダシで心の中が見えるのは楽しい。肝心な場面での主人公の決断を良いと思う。意外なところに着地する。



6.「童謡」
☆☆
シンガポールの話。
これだから戦争は悪いって感じのエピソードなんだけど、声高にならずにさりげなくまとめられる。



7.「ad lib」

英語の字幕がおもしろい働きをする。英語ができる人にはもっとおもしろいのだろう。
危険な男が出てくるので内容はシリアス。



8.「バーゲンセール・キラー」
☆☆☆
韓国。ここまでのところ、この作品がオレは一番おもしろかったです。

殺し屋の男が、客からしつこく値切られる。他の殺し屋はもっと安くやってくれますよ、と。殺し屋が値切りをしぶっているうちに状況が変わってくる。
ちょっとコントみたいだけどね。通話アプリを効果的につかって現代ふうに仕上がっている。

韓国の作品って、ちょっと懐かしさというか、もうすでに失われたものに再会している感じがある。
殺し屋が屋上から銃で狙いを定める場面なんて、今の日本でやったら古く見えるんじゃないでしょうか。



9.「Rendezvous」
サイレント映画みたいな方法だけど撮っているものは近未来、っていうギャップを狙っているんでしょう。



10.「ガールフィールーム」
☆☆
韓国。主人公は、いかがわしさのある女性ネット配信者にのめりこむ。バイトで配達に行った部屋でその女らしき女に会う。女は助けを求めていた──。

けっこうドキドキしたけど、最後がどうだったのかわからなくてモヤモヤした。ラストだけ二回見ちゃった。

揉み合いになって人を階段の上から突き落としてしまう表現があった。こういうところですよ。こういうのを微妙に古く╱なつかしく感じるんです。



11.「ステイホームしていたら」
イスラエル。一発ネタだな。信号機のカチカチいう音が夜の不穏な空気を感じさせる。



12.「電光石火」

盗塁王だった元プロ野球選手が、下着泥棒になる話。

クスリに走ってしまった元プロ野球選手を思い出した。
主人公がいいよ。野球選手っぽ
くてなおかつ変質者っぽくもあって、ドンピシャ。
泥棒って孤独なんだなと感じる。自分にヒーローインタビューするぐらいだからね。



13.「幸福キロカロリー」
亡くなった姑から受けたトラウマに苦しみつづける妻と、姑の味方をする夫の話。
ものすごい棒読みだけど、それも狙っているんだろう。
物足りない。そりゃそうなるでしょうね、ってところで終わっている。これで幸福になるかというと、ならないでしょうね。彼女が求めているのは理解者なのだと思う。



14.「4と6」
☆☆☆
素晴らしかった。
港町で男子と女子が出会う。男子はギターやってて女子はヴァイオリンやっている。
海が、港町がいいのよ。
バカで明るくて真っ直ぐな男子と、ツンツンしてるようで意外と人なつこい女子が、これまたいいのよ。
甘酸っぱい。こういう青春がしたかった!

オレが原作の「世界で一番すばらしい俺」が陰ならば、「4と6」は陽だ。楽器やってる学生同士の恋愛模様という点で共通している。
タイトルは弦の本数だ。コントラバスは4で、マンドリンは8。



15.「あの夜、コザにいた。」
☆☆
よかったです。
沖縄。建物の屋上みたいなところで二人の男がウダウダしている話。食べたり会話してるんだが、そのやりとりが楽しい。場所が変わらずにセリフでつないでいて、劇を見てるようだった。
見ているうちに、だんだん、なぜこの二人はここにこうしているんだろうと疑問が湧いてくるが、実はそれが重要になる。

性欲の描写がすごい。あんなの若い頃でもなかったよ。



16.「おそとはキケン」
韓国。コロナで何年も外出せずに暮らしているWeb小説家の女性が主役。「デミアン」と名付けた男性の人形と暮らしていて、小説の主人公はいつもデミアンだ。
そこへ、デミアンによく似た配達員の男性が来る。主人公は仕事が手につかなくなり、配達員の男性との接触をこころみる。って話。

うーん。人形と暮らしているところでは面白そうな予感がしていたが、どんどん平凡になっていった。

韓国ものを見るたびに微妙に古い描写を見つけてしまうんだが、この作品では
《キスした瞬間に花火があがる》
場面があった。



17.「サンライズ・ヴァイブレーション」
主人公は、肛門に日光をあてるとうつ病などが治るという「光門日光浴」を広めようとする。これを試した人々は健康を取り戻していき、光門日光浴は広がりをみせる。って話。

最初はとんでもないものが始まりそうな予感があったのに、徐々に普通のドキュメンタリーになっていった。どんどん地味になるんだよ。
作品としてどう受け止めればいいかわからない。一種のパロディーなんだろうか。

こんなふうにあやしい民間療法が生まれるのかもしれないな。

終わったあとに検索した。ほんとに効果あるなら大変なことだよ。ネットの情報に騙されやすい人とか、藁にもすがりたいくらい苦しんでる人がこの作品を見たら、真似して肛門を日光にさらすかもしれない。
検索したかぎりでは、この健康法に根拠はないそうだ。



18.「Run Home」
ちょっと見てられないなあ。始まってすぐに、早く終わってくれないかなーと思った。

降ってきた隕石から人の形の怪物が出てきたところまではわかったが、あとは誰がどういう立場で何をやってるのかさっぱりわからなかった。序盤であきらめて、あとはただ眺めていた。
特撮って、よほど上手くつくられてないと見てられないなあ。テレビでやってる仮面ライダーも見れないんですよオレは。

子役がかわいい。



19.「Octane Quality」

全然わからない。見るの途中でやめてもいいかなあと思いながら最後まで見た。
保安官が鷹に、修行僧が蜘蛛にみちびかれて二人は出会い、車をぶつけ合って戦う、みたいな話らしい。途中で変なダンスが始まったり、血が流れたりもする。オレにわかるのはそこまでです。なんなんですか。これもちょっと特撮がある。

こういうのを見ると、韓国作品のベタベタな分かりやすさが恋しくなる。



20.「WAO」

ワオは中学生男子。じつは宇宙人であることを知らされ、元の星に帰ろうと誘われるんだが、地球に未練がある。仲の悪い両親が心配なのだ。両親の気持ちを試すと、二人はよりを戻す。そんなような話。

中学生が何人か集まって芝居すると、それだけでEテレの天才てれびくんみたいな雰囲気になるなあ。
この中学生は落語が好きという特徴があって、そこは面白く展開する。それと夫婦の物語はいい。
惑星パルナスの宇宙人の設定はうまくいってる気がしない。四人とも宇宙人なのに、宇宙人っぽい能力をもってるのは一人だけなのはなぜ? なんで四人じゃないと星に帰れないの? オレは納得できない。

オナニーしてもイケないことを悩んでる男子が二人でてくる。それは別にストーリーにあんまりからまないしどうにもなっていかないんだが。そういう悩みを持つ人もいるんだなあと。



21.「ドブ殺しは愛のきらめき」

男女のドロドロからの暴力沙汰。自転車の場面がウケる。
画商だからといって屋上にまで絵がたくさんある。実際は絵は日光にあてないほうがいい。商品ならなおさら。でもそれが映像作品だからこそできる表現なんだな。

オレには人の顔を見分ける能力が乏しいのか、いやそんなことないと思ってるんだけど、同じ女性が二人いるように見えて、そのせいで話がよくわからなかった。あらすじを読んでようやくどんな話だったかわかった。
ステーキ食べてるのが、好きな感じの女優さんだった。



22.「ヴォヤーズ 覗魔」

フランス。覗きを趣味にするホテルの主人がさまざまなものを目撃する。

「大人向け」とはあるが、はじめからかなり刺激的な場面がある。深い意味はよくわからないが、刺激があるから見れる。



23.「ライフライナーズ」
☆☆☆
素晴らしかった。
主人公はガスの集金人。滞納者の落合のところへ行くと、水道の集金人と電気の集金人と鉢合わせする。誰が最初に払ってもらうかで集金人の三人は喧嘩をはじめる。三人には驚きの共通点があることが明らかになっていく。という話。

いい意味で馬鹿馬鹿しくて、笑いながら見た。最後のほうはちょっと泣けた。みんながあったかいんだよ。
わかりにくいところは何もなくて、とても楽しく見れた。

オレの家にはコワモテの消費者金融の人と灯油屋さんがいっぺんに来たことがあります。



24.「ブローカー」

韓国。臓器売買のチラシを見た女性がトイレでブローカーと待ち合わせをする。ブローカーは始めは愛想がいいが、本性をあらわす。そんな話。

韓国のトイレってこんなふうなのか。入り口は男女が分かれてなくて、個室だけ分かれている。

かわいらしい主人公の女性がたくましくて強いので、そういうところに惹かれる。
スリルがあって、ハラハラした。
最後に種明かしがあったようだが、よくわからなかった。



25.「時雨さんの渡世」
☆☆☆
最後の数分、鳥肌たった。終わってからもしばらくゾクゾクしていた。これはすごい。かっこいい。

あやしいものを運んで暮らしている寡黙な時雨さんと、ヘラヘラした相棒の物語。運んでいた偽札を盗み、二人は組織から追われることになる。時雨さんは偽札を戻して許してもらおうとするが、相棒はこのまま逃げようという。これは偽札じゃない、本物の札だと。

裏社会の映画なんてほとんど見たことなかったけど、面白いものがあるんだねえ。
「あの夜、コザにいた。」もやくざの二人組の話だったな。やくざのトークってなんで面白いんだろうね。映画だから? 
あと、猫がかわいい。



26. THE BELL

ホテルの従業員の物語。短いエピソードが束ねられている。

最初のほうはお笑いのノリがつらかった。見てて恥ずかしくなる。こんな小粒のショートコントをわざわざ映画で見てどうすんだと思っていたら、終盤は面白くなった。二人で踊るところ、とてもよい。





星をまとめる。

☆☆☆すごくよかった
「バーゲンセール・キラー」
「4と6」
「ライフライナーズ」
「時雨さんの渡世」

☆☆よかった
「あの夜、コザにいた。」
「童謡」
「ガールフィー・ルーム」

☆ちょっとよかった
「くっつき村」
「おしり」
「電光石火」
「ドブ殺しは愛のきらめき」
「ブローカー」




以上です。



■■■

工藤吉生 歌集 『世界で一番すばらしい俺』(短歌研究社)

発売中!



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2018年短歌研究新人賞受賞の第一歌集。
校舎から飛び降り、車にはねられながらも、ぬらっと生きながらえる。

「おかしないい方になるが、高度な無力感が表現されている。」──穂村弘

「人間性が色濃く表れた作品です。黒ずみにちょっとかけてみましょうよ。」──加藤治郎
(短歌研究新人賞選考座談会より)




ご注文はこちらから


短歌研究社
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2021年09月16日

短編映画『世界で一番すばらしい俺』が公開中です

工藤吉生原作の短編映画『世界で一番すばらしい俺』(主演は剛力彩芽さん)が、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で9/16~9/20に公開されます。

視聴方法
https://t.co/rXr2WFS9YC

二通りの視聴方法があって、作品によって違うのですが『世界で一番すばらしい俺』はHuluのオンデマンド配信(タイムテーブル式ではなく、期間中は好きな時に好きな作品を見られる)ということであります。
会員登録が要ります。オレも登録しました。はじめは無料の期間があって、あとから課金されるみたいでした。


9月16日0:00から始まってますので、もう見れるわけです。

9月16日 18:00からのオープニングセレモニー(これもHuluなんですが、オープニングとクロージングは会員登録をしなくても見れるそうです)で剛力彩芽さんは映像でコメントをするのだそうで、こちらも注目です。


作品の詳細はこちらです。
https://t.co/ozK7fgAq1t



オレの理解している範囲はそんな感じです。
Huluって初めて使うしオンラインの映画祭も初めてなので、探り探りで楽しんでいきたいと思います。

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2021年09月09日

剛力彩芽さん主演! 工藤吉生歌集『世界で一番すばらしい俺』原作の短編映画が公開されます

短歌研究さんのツイッターでの書き込みをここにそのまま写します。








https://twitter.com/tankakenkyu/status/1435897771119181826


【速報】
ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2021にて
剛力彩芽さんによる工藤吉生歌集『世界で一番すばらしい俺』原作の短編映画が公開されます!

企画/プロデュース協力/主演:剛力彩芽
監督/プロデューサー:山森正志さん
https://t.co/q7ocbmkF08
https://t.co/umdY4Nvspv
@yubarifanta







https://twitter.com/tankakenkyu/status/1435907771212259331
剛力彩芽さん企画・主演の映画「世界で一番すばらしい俺」は、
「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2021」Huluでオンデマンド配信です。
上映スケジュール: 9/16-9/20

https://t.co/q7ocbmkF08 @yubarifantaより







https://twitter.com/tankakenkyu/status/1435907939185741830
連作「校舎・飛び降り」の主人公を、剛力彩芽さんが演じます。https://t.co/q7ocbmkF08









以上です。



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工藤吉生 歌集 『世界で一番すばらしい俺』(短歌研究社)

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2018年短歌研究新人賞受賞の第一歌集。
校舎から飛び降り、車にはねられながらも、ぬらっと生きながらえる。

「おかしないい方になるが、高度な無力感が表現されている。」──穂村弘

「人間性が色濃く表れた作品です。黒ずみにちょっとかけてみましょうよ。」──加藤治郎
(短歌研究新人賞選考座談会より)




ご注文はこちらから


短歌研究社
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2021年09月04日

▶歌集『世界で一番すばらしい俺』への反響【9/4更新】

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工藤吉生歌集『世界で一番すばらしい俺』(短歌研究社、2020年7月20日発売)の、発売後の反響をまとめたページです。ネットで読めるものを先に、ネットで読めないものを後に置きました。ツイートは対象外としました。

歌集評や、この歌集にふれた時評などを見つけたらここに追加していきます。




■ネット動画、音声


▽枡野浩一さん、古泉智浩さん
"#本と雑談ラジオ 112 『アルプススタンドのはしの方』と今村夏子新作と工藤吉生歌集" https://t.co/ckQnHxGedj (YouTube動画)


▽スケザネさん、ネオ高等遊民さん
"書評。丸山健二・工藤吉生第1歌集:スケザネネオミンラジオ#25" https://youtu.be/aIpKvGj9PvU (YouTube動画)


▽伊沢拓司さん
"QKラジオ #17 読書" https://youtu.be/WCXPKD0tmVg (YouTube動画)


▽鈴木ジェロニモさん
29回目 オレの自意識に向き合う歌集
工藤吉生『世界で一番すばらしい俺』を読んで①、好きなものに好きと言う https://t.co/HLxMCgnSde (stand.fm 音声)

30回目 『りりむキッス』の話をさせてくれ
工藤吉生『世界で一番すばらしい俺』を読んで②、ネタ見せ
https://t.co/NjwRJwThGV (stand.fm 音声)


▽短歌部カプカプ
ラジオ石巻「たんたか短歌」1/19放送「現代短歌の小窓」




■ネット記事、ブログほか


▽読書メーターhttps://bookmeter.com/books/16243197


▽ブクログ
https://booklog.jp/item/1/4862726445


▽土佐有明さん
自殺しても、車にはねられても、死ねなかった。業の深い歌人の処女短歌集── ダ・ヴィンチニュース
https://t.co/ZM1XX2FjIk


▽千葉聡さん
短歌時評158回 「あなたの歌は寂しいね」 ──「詩客」
https://t.co/mvjrPRSh94


▽大松達知さん
短歌時評159回  問題山積みで静かな歌 ──「詩客」
https://t.co/v9OAa7aPWC



▽千種創一さん
工藤吉生『世界で一番すばらしい俺』
https://t.co/3AhGu695VF (note)


▽匤成(おみなり)さん
書評;工藤吉生 第一歌集 「世界で一番すばらしい俺」
https://t.co/9Ilm6oKyo5 (note)


▽郡司和斗さん
工藤吉生『世界で一番すばらしい俺』感想──遠い感日記
https://tankagungun.hatenadiary.jp/entry/2020/08/07/030118


▽岩尾淳子さん
──日々のクオリア 2020.8/10
https://t.co/JmVLmP8FUq

▽久我田鶴子さん
──日々のクオリア 2021.2/1
https://sunagoya.com/tanka/?p=24113


▽江戸雪さん
後ろ向きで突き抜けるオレ──からくれない日録
https://yurioil.seesaa.net/article/476845550.html


▽うにがわえりもさん
工藤吉生歌集『世界で一番すばらしい俺』(2020) ── 永遠のぶどう http://erimounigawa.blog.jp/archives/23479967.html


▽重吉知美さん
工藤吉生歌集『世界で一番すばらしい俺』
https://t.co/cEKFMGa5DH (note)


▽北山順子さん
https://t.co/TdEPHjbgJM (Facebook)


▽宇梶晶子さん
『世界で一番すばらしい俺』工藤吉生──Sugarless
https://t.co/Bt23dw0v0s


▽エノキダケイコさん
https://books.enokidakeiko.com/entry/2021/05/01/105749


▽yayoi saikiさん
https://fc2.to/qL40v3


▽mame3さん──奥さまは149CM
https://okusama149.blogspot.com/2021/08/768.html?m=1


▽嶋田さくらこさん
「編集部の本棚」『うたつかい36号』
http://utatsukai.com/archives/55758886.html


▽note公式
https://t.co/RL8TiuA3Gy (note)


▽穂村弘さん
『Precious』2020年12月号:新進歌人・工藤吉生による注目の第一歌集!自身の人生の悲喜こもごもがつづられる短歌が味わい深い : https://t.co/fbVgLKWJWO






■新聞


▽梅内美華子さん
読売新聞 2020年8月1日夕刊「短歌とことば」


▽大井学さん
共同通信・2020年8月の短歌時評「大きな世界観からの透過」


▽長谷川櫂さん(一首評)
読売新聞 2020年8月21日 朝刊「四季」


▽谷川電話さん
しんぶん赤旗 2020年8月28日 歌壇「無気力という武器」



朝日新聞 2020年8月23日 朝日歌壇・俳壇「風信」


▽加藤千恵さん
北海道新聞 2020年9月20日 新しい朝、新しい本


▽宮田健さん〈河北新報 記者〉
河北新報 2020年12月13日 東北の本棚
https://www.bookbang.jp/review/article/656343


▽千葉聡さん
朝日新聞 2021年1月30日 ブックガイド「お悩みのそばに短歌を」
https://book.asahi.com/article/14152924



■書籍

▽佐佐木定綱さん
『短歌研究』2020年10月号 時評「一人称という衣装」


▽生沼義朗さん
『現代短歌』2020年11月号「第一歌集ノオト」


▽穂村弘さん(一首評)
『本の窓』2020年11月号「短歌のガチャポン」


▽寺井龍哉さん(一首評)
『NHK短歌テキスト』2020年11月号「短歌は越境する」


▽近江瞬さん
『短歌研究』2020年11月号・第一歌集リレー書評


▽笹公人さん
『角川 短歌』2020年11月号 書評


▽辻聡之さん
『短歌研究』2020年12月号「歌集・歌書展望」


▽松井竜也さん
『コスモス』2020年11月号「気になるホン・ほん・本」


▽山崎聡子さん
『未来』2020年11月号・時評


▽遠野真さん
『未来』2020年12月号 書評


▽生沼義朗さん
『うた新聞』2020年12月号 書評



『角川短歌年鑑』令和3年版
「今年の秀歌集」アンケート(三人の方から推薦とコメントをいただきました)


▽片岡絢さん
『COCOON issue18』歌集 in the news


▽俵万智さん(一首評)
『週刊新潮』2020年9月24日発売・10月1日号「新々句歌歳時記」


▽大前粟生さん
『BRUTUS』2020年10月15日発売・11月1日号<特集・恋の、答え。>恋と、恋らしきもの。


▽枡野浩一さん
『週刊読書人』2020.12/11号「二〇二〇年の収穫!!」



『本の雑誌』2021年1月号「読者が選んだベスト1」


▽枡野浩一さん
『フリースタイル 46』「ONE,TWO,THREE!」


▽穂村弘さん(一首評)
『群像』2021年2月号「現代短歌ノート二冊目」


▽梅崎実奈さん
「文鳥は一本脚で夢をみる」
▽喜多昭夫さん
書評「しずくはしずく」
▽山田航さん、枡野浩一さん、千葉聡さん
特集「二〇二〇年の収穫」
『ねむらない樹 vol.6』


▽逢坂みずきさん
「わたしが読む恋の歌百首No.23」(ネットプリント、2021年3月6日)


▽原詩夏至さん
『コールサック』105号 「土」と「つまらぬもの」、そして╱または「文学のふるさと」


▽穂村弘さん、佐藤モニカさん、山田航さん
『短歌研究』2021年4月号「作品季評」


▽錦見映理子さん
『NHK短歌』2021年7月号「き・も・ち短歌」


▽木下龍也さん
『天才による凡人のための短歌教室』




■■■■




工藤吉生 歌集 『世界で一番すばらしい俺』(短歌研究社)

発売中!



2018年短歌研究新人賞受賞の第一歌集。
校舎から飛び降り、車にはねられながらも、ぬらっと生きながらえる。

「おかしないい方になるが、高度な無力感が表現されている。」──穂村弘

「人間性が色濃く表れた作品です。黒ずみにちょっとかけてみましょうよ。」──加藤治郎
(短歌研究新人賞選考座談会より)




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2021年09月03日

《歌集読む265》蒔田さくら子『翡翠の連』  ~いいんいいんと余韻波だつ、ほか

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歌集読む265
蒔田さくら子『翡翠の連(ひすいのれん)』
2009年。角川書店



雲よそんなにやすやす散(ばら)けてしまふのか 一ぬけ二ぬけみんな消えたり
╱蒔田さくら子『翡翠の連』

→雲をかなり時間をかけて見ているようだ。離れていっただけではなく「みんな消えたり」までを見ている。見上げる者だけが残った。



流れ星消えしは虚空の果てのはて恋に落ちるといふことありき
╱蒔田さくら子『翡翠の連』



忘れたきことあらばかうして忘れよと身を削ぐごとく花零すなり
╱蒔田さくら子『翡翠の連』

→ここまで三首引いたが、空に消えるもの・落ちるものの歌が続いている。
ここで言う「忘れたきこと」は、ぼやっとしてれば忘れるようなことではない。花は身をもって教えている。



裏白き葉をいくたびも翻す風の午後ひとりの名を抹消す
╱蒔田さくら子『翡翠の連』



すこしずつ力が抜けてゆくやうにうすれゆく雲あれはわたくし
╱蒔田さくら子『翡翠の連』





頬杖をしばしばつきてゐたりしは憂ひの嵩を支ふるに似る
╱蒔田さくら子『翡翠の連』

奥歯かみしめかみしめをりぬ弾けざる怒りの持つて行き場はここか
╱蒔田さくら子『翡翠の連』

→頬杖の歌と奥歯の歌。憂いや怒りが頬杖や奥歯の噛みしめにいたる。



いいんいいんと余韻波だつ鐘楼の下の石にて蜘蛛は動かず
╱蒔田さくら子『翡翠の連』

→余韻だけをあらわしている「いいんいいん」がおもしろい。蜘蛛は全身で響きを感じているのだろうか。



青少年心理相談所と鑑別所背中合わせにあり根はからみゐむ
╱蒔田さくら子『翡翠の連』

→漢字の連続する施設から、背中や根が出てきて命あるものになっていく。



ひと日樹をしきりにゆすりなにごとか問ひゐし風もいつしか去りぬ
╱蒔田さくら子『翡翠の連』

→「去りぬ」まで言うと、しずかに立っている樹の姿が浮かんでくるなあ。風は「なんでなんで?」ってしつこい子どもみたいだし、樹はすべてを知っていて語らない孤独な大人のようだ。



この本からはそんなところです。






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mk7911 at 13:49|PermalinkComments(0)歌集読む 

2021年08月29日

《歌集読む264》大口玲子『自由』  ~光の問ひを投げつづけをり、ほか

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歌集読む264
大口玲子『自由』

2020年12月。書肆侃侃房。第七歌集。



海暗くあるのみ白き灯台は光の問ひを投げつづけをり
╱大口玲子『自由』

→「光の問ひ」がいいなと思った。「光」にくわえて灯台の「白き」がさらに問いの性質をあらわしているようだ。いくら問いを投げても海は応えないのだろうけども。



混沌のミックスジュースを飲んで子は「関西人になりたい」と言ふ
╱大口玲子『自由』






(詞書)差し入れ品から紐状のものはすべて取り除かれる。

真新しき聖書その人が開くとき栞紐二本とも切られをり
╱大口玲子『自由』

→大阪拘置所に面会に行く連作「黒き桜」から。
命を守るためであろう。本の栞があらかじめ切られる。こんな人命の守りかたがあるとは知らなかった。
見せることあらねど見せしめのごとき死を死ぬのか人は目隠しをされ
╱大口玲子『自由』






仁王像の憤怒の前につつしみて子は箒取り落ち葉を掃けり
╱大口玲子『自由』

→重いテーマを含む歌集だが、子がでてくると空気がゆるむ。さっきの「関西人になりたい」の歌もそういうところがある。子の歌でほっと息をつける。
しかし、そうとばかりも言えなくなってくる。


先の丸き息子のはさみが朝刊の辺野古の海を切り抜いてゆく
╱大口玲子『自由』




転校し今年二度目の運動会少し疲れて立つ息子見ゆ

ピストルの弾込め係となれる子は心をこめて弾込めてをり
╱大口玲子『自由』

→「心をこめて弾込めて」なんてちょっと調子がいいが、ピストルといったら他の用途も想像されるわけで、危うさも含んでいる。



腰低きジャグラーがナイフ投げながら自らの来歴を語りをり
╱大口玲子『自由』

→「腰低き」は態度が謙虚な、の意味にとった。
投げながらしゃべれるくらいにナイフの扱いに熟練しているのだろう。ナイフは仕事道具に過ぎない。ジャグラーに来歴がある。



年の瀬の息子の山札(デッキ)にさへ「悪のサイヤ人」ゐてわれはかなしむ
╱大口玲子『自由』



一緒に漫画読んでほしいと息子言ひ「ケシカスくん」を朝から読めり
╱大口玲子『自由』

→ひとつ前の歌に「学校に行かなくなつた息子かな~」とあり、この息子さんは不登校だ。それで朝から漫画(コロコロコミックかな?)を読んでいる。
ケシカスくんは消しゴムの姿をしているが学校を連想させないのだろうか。学校を休んで親子でケシカスくん読むって互いにどんな気分だろう。



学校には自由がないと子が言へり卵かけご飯かきまぜながら

学校に行かなくてもよいが勉強はすべしと思ふ 自由のために
╱大口玲子『自由』

→子にとっての自由とは今の自由で、親が思う自由はもっと先にある自由だ。



リコーダー持つて帰ると子は決めて「さびしい時に吹くから」と言ふ
╱大口玲子『自由』



問ひとしてブランコ垂れてゐる朝(あした)息子よ立ち漕ぎからジャンプせよ
╱大口玲子『自由』

→あぶないけど、これは思いきった行動ってことなのだろう。

問いの歌を最初に引いて、問いの歌で終わってみた。

子どもが出てくると軽くなるようなイメージだったが、子の悩みや苦しみがだんだん前に出てきた。

この本おわり。

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mk7911 at 09:12|PermalinkComments(0)歌集読む 

2021年08月27日

《歌集読む263》鈴木ちはね『予言』  ~人びとの列ときどき動く、ほか

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歌集読む263

鈴木ちはね『予言』
2020年8月。書肆侃侃房。



表紙は、どうやら雨または雪が降っていて人々は傘をさしている。人々はそろって同じ方を、カメラにそっぽを向いて並んでいる。バスでも待っているのか。傘で顔は隠れ、ほかに特徴もなく、みんな誰でもない感じだ。

表紙にも背表紙にも、黒に白く『予言』って書いてあるんだけど、これが新聞の中からでてきたような書体だ。
新聞っていうのは近い過去のことが主に書かれていて、予言というのは先のことをいう。なので新聞の書体で「予言」と書くのは、赤い文字で「青」と書くのに似ている。


よく見るとわずかに黒いリュックにロゴマークらしきものが見える。
同じ場所で同じほうを向いているけどみんなが一人一人だ。
みんなが背を向けていると書いたが、よく見たら左隅の人たちはそうでもないし動きが感じられる。こっちが列の最後尾か。



堤防を上りつめたらでかい川が予言のように広がっていた
╱鈴木ちはね『予言』

→予言ってしばしば第三次世界大戦が起こるとかばかでかい話をしてくるものだ。「でかい」うえに「広がっていた」だからかなりの大きさを感じる。予言者は堤防みたいな高いものを越えて未来を見てるのかもしれない。



工事中の白い壁まぶしく光る 義務教育の子どもが通る

円形の建物だから円形の足場にいまは囲われている
╱鈴木ちはね『予言』



新幹線の田んぼの中の看板は実際行けば大きいだろう
╱鈴木ちはね『予言』

→通りすぎてから「新幹線の」の「の」の自然な省略に気づく。新幹線の【中から見た】田んぼ、だ。
新幹線で通過したのは「実際行」ったうちには含まれない。
「ん」が多い。
看板に書かれている内容はない。看板から大きさだけが取り出されている。



よみがえる昔かけてた眼鏡たち順番に並べることができる
╱鈴木ちはね『予言』

→オレは眼鏡かけてたことないんだけど、携帯電話だったら並べられるなあと自分に引き寄せて読んでたんだが、眼鏡の場合はそれぞれの差がもっと小さいだろう。本人にしか並べかえられないのではないか。
試験には歴史上の出来事を順番に並べる問題があるが、個人にも歴史がある。

この歌、「よみがえる」から始まっている。記憶によみがえっていると読むと自然だが、紛失した場所やごみ捨て場からよみがえるのを想像した。



山眠る よく燃えそうな神社へと人びとの列ときどき動く
╱鈴木ちはね『予言』

→まがまがしい。
「山眠る」は目覚めた山を思わせて「よく燃えそうな」はよく燃えているところを思わせる。「ときどき動く」で従順さが感じられる。しずかに待って、することをして、帰っていくのでしょう。



プラネタリウムで叫ぶのを止められない子がひかりのもとへ引きずり出される
╱鈴木ちはね『予言』

→表紙の絵で雨の中をならんでいる人たち、よく燃えそうな神社に向かって基本的にじっとしている人たち、プラネタリウムで叫ばずに見上げている子たち。彼らはきっとつながっている。人々は雨や暗闇やなにかに群れていて、光の中にいるのがはじき出された者だ。



ウォーリーをさがせ!を描いている人がウォーリーを描くタイミング いつ
╱鈴木ちはね『予言』

→連作「感情のために」は天皇の言葉が詞書に添えられている。この歌には八十を越えた天皇がこの先の自分の在り方云々ってことが書いてある。
天皇を降りるのに「タイミング」がある。ウォーリーを描くにも「タイミング」がある。人でいうと八十を越えたあたりでウォーリーが描かれていたりして。

また、一字あけてからの「いつ」が検索ワードっぽい。それを検索するって。いや、べつに変でもないか。天皇の動向はいっぱい検索されるだろうね。



保留音の小さな世界の二周目が終わって三周目が流れだす
╱鈴木ちはね『予言』

→三周目になると、そろそろ聴き飽きてうんざりしてくるころだ。やっと終わったと思ったら、またかと。その歌詞や「思いに寄り添うことも大切なこと」という詞書は優しい。



ライターで手持ち花火に火をつける ついたら急に明るい更地
╱鈴木ちはね『予言』



雪なのに律儀にバスを待っている人たちの一員になるのだ
╱鈴木ちはね『予言』

→表紙のか。雪だったんだ。雪だと運行が大幅に乱れることもあり、人はそれでも時間通りに来ておとなしく待つ。
「なるのだ」はなんだろう。バカボンパパかもしれないし、ハム太郎かもしれないし、滑走路かもしれないし、べつに何でもないかもしれない。従順な存在になるために入れた力だ。



そんな感じでこの本おわりです。


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mk7911 at 10:05|PermalinkComments(0)歌集読む