2016年08月27日

西村賢太『暗渠の宿』を読んだ

西村賢太『暗渠の宿』読んだ。字が大きめで読みやすくて、おもしろかったので一日で読めた。

前半の「けがれなき酒のへど」は、女の子と仲良くなりたいという理由で風俗に通いつめ、いいところまでいくがひどい目にあうという話。

後半の「暗渠の宿」はもっと後の話で、女性と一緒に住む部屋をさがすところから、敬愛する藤沢清造のために高額の出費をするところまで。


他人にたいしてすぐ不信感をいだいて、突っかかっていったり暴力に及ぶところが相変わらずだ。男性でも女性にでもすぐ暴力をふるう。
一方で、藤沢清造という作家に関してだけは無限の敬愛をもっている。

二度でてくる
「この女はもっと私に従順であるべきだと思う」
というのが、主人公をよくあらわしている。
一ヶ所、歌人の尾山篤二郎の名前がでてきて「おっ」と思った。藤沢清造と親交があったという。



二冊・四篇を読んだにすぎないが、どれを読んでも主人公が同じ性格をしている。そして話がそれぞれつながっている。そこにおもしろみを感じた。私小説作家を読むおもしろさというのはそういうところにあるのか。


一緒に住んでる女性が、頼んだのと違うラーメンを買ってきたとか、主人公は固めの麺が好きなのに女はやわらかく作ったとか、でブチキレている。

そういう繰り返しが嫌だとも思わずにおもしろく読んでしまう。なんかこの主人公が好きで。
こういうものを面白がって読んでるとモテなさそうだなと思った。でも、別にモテるために読書しているわけじゃないからいいのだ。


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote

2016年08月24日

現代短歌社の「書込歌集」の使い方を考えた

忘れかけていた「現代短歌」誌の「読者歌壇」特選の景品が届いた。

これは……短歌の世界にこういうものがあるのは知っていたが、なんのためにあり、どう使うものなのか……。




それは……『書込歌集』 https://t.co/lQAx6VHDj2

0dc0e71b.jpg











『書込歌集』は豪華箱入り。中身はパラフィン紙に覆われている。
https://t.co/IfxbwvANZw



これが郵便物として来たときに封筒の大きさや形を見て、
「どなたかが歌集を贈ってくださったんだな」と思った。
開けたら真っ白な歌集で中身も書いてないから、えらくびっくりした。攻めてる歌集だなと。
だが、これはこういうものなのだ。


これはどう使うものなのか。
ほかの人はどのように使っているのか、を調べてみたが、ツイッター検索もGoogle検索もなにも教えてはくれなかった。
おもしろいじゃないの。

https://t.co/BG0BjUZ9Ud
現代短歌社さんのツイート。なるほど、自分の歌ではないものを書いてもよいわけだ。好きな歌を大事にメモしておくと。



自分の歌を書くとしたら、ただのメモ帳にするには立派すぎるし、かといってなんのためにここに清書するのかわからない。紙だと、後になってから一首足したり削ったり直したりができないわけでしょう。

ならば完全に心が決まってからここに清書するわけだ。間違いなくここに清書したとして、それからどうするのかという問題がある。直筆のただ一冊の歌集を人に送るのはなんか「重い」気がする。送られてうれしいか。ということは、自分だけで見るのか。

手書きと印刷でも印象変わるからな。箱入りに薄紙が、間違えられないプレッシャーをかけてくる。

そんなこんなで、面白そうだけど使い方が難しそうなアイテムだ。知恵を試されている。



「ここに来た歌人はこのノートに自作を書いていってください」
に使うとよさそう。

せっかく現代短歌社さんからいただいたものだから、「現代短歌社賞」に送った300首を書いてみたらどうだろう。
「受賞してたらこういう歌集になったんだろうなあ……」とページをめくりながら想像してみるとか。
自作をどんな場所に置くかは大事だ。歌集の型に自分の歌をはめてみるとどう見えるのか。

ああそうか。
「好きな歌人だけどいっこうに歌集が出ない+歌集の形で読みたい」という人の歌を書き写していって自分だけの歌集をつくる
みたいなことができるのか。第一歌集がでない人でもいいし、あるいは「まみ」以降の穂村さんの歌を集めるみたいなケースも。

と考えたけども、いずれにしても従来あるような縦書きで一ページ三首組の『歌集』という形に愛着があってはじめてできることだ。



図書館とかから期限つきで借りた歌集をここに写したっていいわな。

あるいは、好きな歌集を毎日少しずつ書き移してみてもいいでしょう。











その二日後。

先日入手した「書込歌集」。いろんな使いかたを考えていたが、結局はひとつの使い方で使うしかない。
徐々に考え方がさだまってきた。

これは試着室なのだと思うことにする。

高価で着ることが難しい服があるとして、買うかどうかもわからないし着れるのか、似合うのかもわからない。まあそれが今のオレにとっての「歌集」なんだけれども、「書込歌集」に歌集の型にはめて短歌を置くことで、どんなもんかを見ることができるよと。

あくまで試着で、大勢には見せられないし着たまま遠くへは行けないと。着心地だけはいくらかわかるよと。
そういうものだと考えてみることにした。


間違えたらいやなのでとりあえず鉛筆で下書きを始めた。ページをふってみたら、175ページあった。1ページ3首で525首書けるが、この前に書いたように「現代短歌社賞」300首を書いてみる。

もうひとつ迷ったのは、好きな短歌を書く楽しみかた。今まで「ぬらっと!短歌大賞」とか「私の好きな短歌」を選んできて、それが合わせて450首くらいある。ちょうどいい数だ。だからこれも捨てがたい。めくってもめくっても大好きな歌があったらテンション上がりそうだから。
でもそれはまた今度(今度があるならば)。




ただこれ、歌集が箱に入ってるとか薄い紙におおわれてるのとか、どちらかといえば高齢者向けっぽくないかなと。高齢の方だったらどんな使い方するんだろうと考えてみた。

六十の手習い?? みたいなことで生き甲斐として短歌をつくる方がいるとする。家族や老いの短歌をこれに書きためて、これ一冊を家族のためだけに遺して亡くなるのを想像した。

私の生涯の記録ですよと。ご家族はこの手書き歌集を大切にしていて、ときどきページをめくってこの方のことを思い出すの。


富良野に行きましたね。孫のこうちゃんをかわいがっていましたね。思い出が歌に綴られています。終わりのほうは字が震えています。最後までタエさんはこの手書き歌集を枕元に置いていました。
これを読むと声がきこえてくるようです──と娘のふさ子さんは語ります。

とまあ、これは想像だけど、こういうふうに使えば、書込歌集の「自由に書ける」「立派な外観」「保存にすぐれる」「筆跡があらわれる」「この世にただ一冊」という特性がいかされる。


そんなことを考えた。


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote

2016年08月22日

「うたつかい」2016年夏号を読む  ~開けてはならぬものの明るさ、ほか

うたつかい2016夏号。


どちらでもよいに○した どうだっていいがあったらそっちにしてた/阿南周平「傷痕」
→「どちらでもよい」と「どうだっていい」。少しの違いで投げやり感が増しています。


燃やせないゴミのようです火をつけてしまえば燃えるゴミのようです/小早川「燃やせないゴミ」
→ほかの四首を見ると人と人の心理について詠んでいて、このゴミの歌についてもそうした読みが可能です。
いけないとされていても、やってしまえばできますよと。しかし、燃えないゴミを燃やすと危険なことになります。


今日はやたら赤い車が走ってる誰も死なないよい一日だ/谷じゃこ「スーパーポンポコジャガピータウン」
→赤い車じゃない車も走ってるにちがいないし、それと同じように、どこかでは今日も人が死んでいるにちがいありません。
想像を交えずに自分の見える範囲だけを見ることで成立する状態です。肯定的な下の句に立ち止まりました。すがすがしいです。
赤になんらかの意味を読むこともできるでしょう。


iPhoneを忘れてしまった一日は指に包帯しているようで/春森糸結「分身」
→スマホの歌がならんでいまして、この「分身」とはスマホのことでしょう。
この歌は下の句の比喩のささやかさが良かったです。


苦しみがスゲエな(そうか?)苦しみはそんなにスゴくなくなっていた/木曜何某「にが」
→「スゲエ」ってカタカナで言っていて、客観的です。スポーツの大技でも見た時みたいな表現です。それをさらに(そうか?)と疑う者がいます。苦しみながらもどこか冷めていて、疑いが苦しみに勝ります。


家電屋のテレビ画面に清原はひとり残らず空振りをせり/千葉優作
→「ひとり残らず」が良いです。空振りしてない架空の清原がほんの少し感じられます。
それにしても、清原ですよ。薬物のイメージが強くついてしまいまして、「空振り」にべつの意味が付いてくるようです。


真夜中の観音開きの冷蔵庫開けてはならぬものの明るさ/月下  桜
→「観音」が開けてはならない感じを連れて来ているんでしょうかね。家電に聖性がやどります。


火の出ない中火でゆするフライパンIHっていいひとの略/外川菊絵
→比喩が決まっていて言葉遊びも巧みです。「ゆする」は何気ないようでなかなか出てこない、それでいて適切な言葉じゃないでしょうか。うまい。



たたさんの連載で印象に残ったのは、競技かるたを始めて二年で四段になったけど五段になるまで十七年かかったというところ。
よく粘りづよく続けて向上しているなあと、素晴らしいなと思いました。
オレなんて、結果がついてこなくなるとすぐ嫌になってしまう。

たくさんの嘘をあなたについたけど大丈夫って嘘は初めて/田中ましろ『かたすみさがし』








オレの出した歌を、自由詠5首だけ載せておきます。



「夏の一枚」 工藤吉生

二十秒ほどの電話をあなたから切られて夜の部屋の中央

居ずまいを正した夜がエンジンの音を低めに折り込んでゆく

この当時オレが笑っていたなんて信じ難いが夏の一枚

哀感と呼ぶべきものが心臓をしみ出してもう指の先まで

演奏をやめて十年ほど経ってまだ指が弾きたがるトリルを





んじゃまた。


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote

■短歌を楽しむ!!! リンク集■

短歌を楽しむブログ内リンク集



2009年10月に開設されたこのブログには1800ほどの記事があります。また、ブログのほかにtogetterなども作成しています。
そのなかから短歌関係でなにかのお役にたてそうな記事、おすすめ記事などをまとめました。



【1】さまざまな短歌作品のまとめ


私の好きな短歌100・まとめ
【2013年版】 http://t.co/bQ97LV4YWA
【2016年版】 https://t.co/gmubYuY1jN
このブログを書いてる工藤吉生の好きな短歌100選です。歌人1人3首までという縛りで選びました。好評です。2013と2016では3分の1ほど入れ替わっています。
ぜひ短歌のおもしろさを味わってみてください。



また、半年ごとに素晴らしい短歌を厳選し誉め称える「ぬらっと!短歌大賞」をツイッター @mk7911 で開催しています。
総合誌、歌集、結社誌、ツイッターで発表された短歌などさまざまな短歌が入り乱れる饗宴です。そのまとめがこちら。

第1回 #2014上半期短歌大賞 65首
http://togetter.com/li/687898

第2回 #2014下半期短歌大賞 60首
http://togetter.com/li/761480

第3回 #2015上半期短歌大賞 60首
http://togetter.com/li/842561

第4回 #2015下半期短歌大賞 50首
http://togetter.com/li/917329

第5回 #2016上半期短歌大賞 55首
https://t.co/X60WvjAcKc



まだまだありますよ。

★ベストふぁぼ短歌2015★  ツイッターでつぶやいたら反響の大きかった短歌26首
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52153621.html



【東日本大震災から五年】東日本大震災を詠んだ短歌・25首選
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52160992.html
これは震災を考えるすべての人に読んでいただきたいくらいの記事です。歌人たちは東日本大震災をどのように短歌に詠んできたのか。そのごく一部ではありますが、ぜひご覧ください。





【2】ネットで短歌を知る、参加する


#オレと短歌とハッシュタグの五年間を振り返る

https://t.co/2N2ilrKlfO

歌人による動画配信/インターネット生放送の五年間を振り返る
https://t.co/XGGxUTIzib
2011年の夏にオレが短歌を始めて、丸五年経ちました。その間のツイッターや動画配信サイトなどでの歌人たちの動きを一部まとめました。


「現代短歌について知りたいとき最初にフォローすべきアカウントの候補一覧」を考えた
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52152930.html
ツイッターで短歌の人をフォローしたいけど、誰をフォローしたらいいのかわからないあなたへの提案です。



詩客 短歌時評「橘上の短歌放浪記」に応える/短歌の若手のいいやつって誰だろう
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52160336.html
今の短歌の若手といえば、誰なんでしょう。ネットで読める若手歌人の短歌の場の紹介など。



短歌サイト「うたのわ」に登録した
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/51954417.html
短歌の投稿サイトで、数年前からあるサイトが「うたのわ」です。気軽に短歌を発表してみたい方はどうぞ。



「うたの日」の歌会に参加してみた
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52135593.html

「うたの日」に三日だけ参加しました/ネット歌会で評を書こう
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52154437.html
毎日ネット上で歌会をやっているサイト「うたの日」の体験を書きました。
短歌を読み投票しコメントしあう場です。




小高賢「現代短歌作法」内容と感想  『はやわかり短歌史』まとめ
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52001584.html
近代からの短歌の歴史をまとめた記事として好評です。Yahoo!知恵袋の回答としてURLを貼っていただいたこともあります。




【3】短歌を作り始めた方に

短歌を学ぶのに最初の一冊を選ぶとしたらどの本がよいか
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52092053.html
入門書の紹介です。まあ入門書はいろいろありますし、これを書いた後にも続々と出ています。気になるものはどんどん読むとよいですね。



tankafulのアンケート「短歌に関わるなかで不便に感じていること」に応える
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52119427.html
光森裕樹さんの運営する短歌のポータルサイト「tankaful」によせられたアンケート結果に反応した記事です。
「どこまでが未発表作なのか」「原稿用紙の使い方は」などなどについて書きました。



短歌の推敲について
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52128833.html
自分の短歌の推敲の仕方についてまとめてみました。参考になるかどうかはわかりません。





【4】短歌結社

「短歌年鑑」を見て、短歌結社の会員数とその増減をまとめた
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52115890.html

短歌研究の年鑑と角川短歌の年鑑では、結社・その他歌人団体の出詠者数の数字がけっこう違うという話
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52154742.html
どの結社に何人いるかを知りたくて短歌年鑑を追いかけました。





短歌結社の様子についてよく訊かれるので、結社についてのページを以下にまとめました。
といっても、オレに言えるのは「オレの場合はこうだった」ということに尽きると思います。

私は2012年夏に短歌結社「塔」に入りました。

短歌結社「塔」に入会した
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52002215.html

なぜ結社に入ったか、なぜ「塔」か、入ってみて良かったこと困ったこと
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52131314.html

「塔」の仙台歌会に参加しました
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52090897.html

結社の歌会に参加して、その感想や反省など。
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52102911.html

迷いながら楽しみながら、「三年はここにいよう」という気持ちで塔短歌会にいましたが、三年経った時に退会を決めました。そして未来短歌会 彗星集に入会しました。
その過程の記録が以下の記事です。

結社のことで迷っている
http://blog.livedoor.jp/mk7911-akogare/archives/51916924.html

未来の見本誌がきた
http://blog.livedoor.jp/mk7911-akogare/archives/51917634.html

小さな決断
http://blog.livedoor.jp/mk7911-akogare/archives/51923955.html

初めて「未来」に短歌が掲載されました
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52156028.html

二つの結社の特徴について、結社とは何か、ここからわかる部分があろうかと思います。
オレは今も迷いながら考えながら続けています。

塔と未来はどちらも若い方に人気のある結社です。もちろんほかにもいろいろあります。



【5】工藤吉生の短歌


最後にオレの作品のページを貼っておきます。

【主な50首】
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52107166.html
まず主な歌をご紹介している、はじめましての方向けのページです。

【おかわり100首】
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52107180.html
主な50首を読んだうえで、もう少し付き合ってやってもいいというありがたーい方へのページです。


そのほかの作品
https://note.mu/mk7911
noteに作品をまとめています。
投げ銭はこちらで受け付けていますので、役に立ったぞ、楽しんだぞという方は応援していただけるとありがたいです。



以上です。興味のあるページはありましたか?
このブログは頻繁に更新していますので、またどうぞよろしくお願いいたします。


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote

2016年08月20日

「短歌研究」2016年8月号を読む  ~フォーリファイビヤーゾウルド、ほか

短歌研究 2016年8月号。



フラミンゴ朱く眠るを夜空よりひとつの指がさし示すなり/中津昌子「ひとつの指」
→眠っているときもフラミンゴは朱い。夜空から見れば目印のように見えるであろうか。
誰の指なのかと考えるとき、建物の高層階や飛行機などの高いところににいる人間とは考えづらく、神の視点かと思う。人が夜空を指すように、地上を指さす者がいる。


恨まれているかも知れぬ身体もて校舎の階段果てまで昇る/川本千栄「真珠光」
→恨みの念かもしれず、そうでないかもしれないモヤモヤしたものが、校舎をどこまでのぼってもついてくる。


夜の窓をひらけばつひにわが鼻を探し当てたる煙草のけむり/染野太朗「二十時頃」
→このけむりはこの鼻を探して夜の窓のそとをただよっていたのか。おれを吸いこんでくれと。



45-years-old。

フォーリファイビヤーゾウルド。オウルドの響きずずんと身に沁みにけり/大松達知「ガチで」

→発音された英語をカタカナにすると、授業っぽいなあ。「ずずん」が重いような、楽しいような。




特集は「七十一年目の八月」で、たくさんの戦争体験が載っている。

ほらあれが戦争座よ、と夏空の星がこちらをみおろして言う/吉岡太朗


吉岡さんまでのところと、服部さんからのところで、一本の見えない線が引いてあるように思った。

オレが小学3-4年のころの担任の先生は、戦争の悲惨を強く訴えた。食べ物の配給が少なくて苦しんだ話をしていた。
戦争というのはそういう辛い苦しいひどい悪いものだというのがその頃には印象としてあって、それは今まで変わらず疑わず来た。
配給のイモが、ふつうに食べたらすぐ無くなる程度しかなくてとても足りなかったというくだりだけなぜか覚えてる。
ほかにもその先生はなぞなぞを出してくれたりいろいろあったんだけどその話を一番覚えてる。

何を言いたいかというと、オレは戦争は無条件に悪だと思っていて、それ以外の方向には考えちゃいけないもんだと思っている。それは盲目的とも言える。
服部さん石井さんはどうやらそうではなくて、オレが盲目的であるところのものに対して目を開いている。それが良いことか悪いことかはオレにはわからない。
オレには話題が大きすぎる。



悪口に付きくる笑い声だろうエレベーターの開く瞬間/田村ふみ乃「ティーバッグの雨」
→中城ふみ子賞の作品から。日常のなかにある危うさや気味悪さをうまくつかんでいる。
笑い声の断片から悪口を感じ取っている。


生は死のへうめんであるあかるさにけふ青年は遠泳したり/渡辺松男『雨(ふ)る』
→生の輝かしさと、死の深さ広さ。海面に生があり、その下に死があるようなイメージをもった。


素足でも行けるところが増える夏すこしあぶない牛乳を飲む/宥生
→うたう★クラブから。
夏の開放的なところと危ういところが出ている。あぶないことがしたくなる季節なのは、なんとなくイメージではわかる。

この方はうたう★クラブ賞にもなっていて、そちらの歌もいい。



新人賞発表の9月号が出たので急いで更新しました。
んじゃまた。


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote

2016年08月18日

歌人による動画配信/インターネット生放送の五年間を振り返る

#オレと短歌とハッシュタグの五年間を振り返る
https://t.co/6hrBEh539v
のつづき。
前回はハッシュタグからここ数年の短歌とツイッターのことを振り返っていた。
今回は動画配信、インターネット生放送のことを思い出してみたい。
歌人(短歌やってる人)によるもので短歌に関するもの、と限定しておく。


初めて接してとても新鮮だったのが、歌会の生中継だった。
動画配信サイト「Ustream」で中継される歌会に、視聴してる人がツイッターで評を書くようなかたちで参加することがあった。それは歌ごとに決まったハッシュタグをつけてツイートするものだった。

ユーストで中継される歌会には、オレの知るかぎり
「空き地歌会」(東京)
「空き家歌会」(大阪)
「天下一短歌会」(大阪)

の三つがあった。

2013年、2014年の二回開催された天下一短歌会には二回とも出させていただいた。録画を見て、動いたりしゃべったりしている自分が恥ずかしくて悶絶する思いだった(録画は残ってません!)。
この「天下一短歌会」は普通の歌会とは少しちがっている。グループごとに無記名の歌会をして、得票数の上位の歌の作者が決勝へ進み、決勝の歌会での得票数で一番を決めるというものだった。会場での本選の前に、ネット上の歌会による予選もあった。



Ustreamで配信された上の三つの歌会のうち、「空き家歌会」以外はいまは開催されていない。空き家歌会のUstreamの視聴数も少なくなってきていて(最後に見たときは3-4人だった)、そうしたやり方は流行らなくなってきているのかもしれない。


そこにできた隙間に、角川がニコニコ生放送を使って行う、大学短歌会による年に一回の「歌合バトル」が2015年から入ってきた。これは参加人数が多くゲストも豪華だ。盛況のようだ。



歌会を別にすれば、短歌に関する動画配信、インターネット生放送は、

天野うずめさんによるUstream番組「歌会たかまがはら」

堂園昌彦さんによるUstreamのトーク番組「堂園食堂」(YouTubeにもアップされている)

虫武一俊さんによる同じくUstreamのトーク番組「むしたけのぞき」(一部がYouTubeにアップされている)

などある。
このなかでは「歌会たかまがはら」だけがペースを維持している。

ツイキャスでは、オレの知るかぎりでは濱松哲朗さんの、朗読や歌集鑑賞の放送「遠足前夜」だけが月一回のペースを維持している。
そのほかには、前回紹介した「うたの日」のなかの歌会に連動したキャスなどが時々放送されているようだ。
そのほかにもいろんな人がちょっとだけ放送してはやめていった。

これらを見ると継続すること、ペースを維持するのが難しいことがかわる。オレもツイキャスをすぐやめてしまった。

終わったと思ってるとまた放送されるようなこともある。自然消滅していくケースが多い。


YouTubeからは特筆すべき歌人の放送は出てきていないようだ。オレはしょっちゅう「短歌」で検索して目を光らせている。たまに朗読の動画などをアップする方がいるが再生数は少なく、続くこともない。

ちなみにYouTubeの短歌の動画でもっとも再生数が多いのは、現在のところはたぶんこれ。テレビ番組の録画。
NHK 短歌 2014.2.16 ゲスト: 久米小百合(久保田早紀)(ミュージックミッショナリー) https://youtu.be/c0hW4qODoPY
結局は有名人が強いのだ。



歌人のおこなう動画配信、ネット生放送については、おおむね限られた視聴者とともに楽しむものになっている。好きなときに放送できるという点がいかされている。

これらのなかでは「歌合バトル」だけが頭ひとつ抜きん出ているような印象を受ける。



前回から見ていただいたように、この数年でツイッター・インターネットから消えていったり、あらたに登場した短歌の楽しみ方がある。現在のことも数年後にはいくらかは消えてなくなっているんだろう。
オレの知っているわずかな過去と断片的な現在を、ここに二回にわたって書き留めておいた。







宣伝。

短歌に評をつけるからには |note(ノート)https://t.co/5Zq4romjzs
有料記事です。500円でマガジンのすべての記事が読めます。


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote

2016年08月16日

#オレと短歌とハッシュタグの五年間を振り返る

オレは2011年8月に短歌をはじめた。それより前からツイッターをやっていたので、すぐツイッターで短歌についての情報を収集をしたり、歌人の方とつながりを持つようになった。
オレの歌歴はツイッターとともにある。


オレがツイッターで短歌をはじめたころは、今よりもっとハッシュタグを使ってみんなで短歌つくって遊んでた気がする。

今回は、ツイッターでの短歌の五年間を、ハッシュタグから振り返ってみる。
オレの参加したタグは限られているが、そこから拾ってみる。
ツイログで、使ったことのある短歌関係のタグ一覧から過去の投稿を見てみた。



【2011年】

#短歌を広める
2011年12月。短歌を広めることについて、さまざまな意見が出て盛り上がった。これは今見てもおもしろいかもしれません。
過去のツイートは検索できるので、興味のある方は「#短歌を広める」で検索してご覧になってみては。



【2012】

#縛り短歌
三句だけあらかじめ決められていて、それをつかってみんなで短歌をつくる企画。
2012年2月かそれ以前には始まっていて、同年6月までやってたらしい。さかのぼるのがむずかしいくらいたくさんの歌がよせられた。


#指短歌
2012年9月。指の短歌のタグ。
このころって、「今日はこれについて短歌を詠もう」と誰かが呼びかけると、みんなで集まってワイワイ詠むような企画がけっこうあった。それがトゥギャッターにまとめられたりられなかったりして。


#あなたの詠み方教えてください
2012年3月~5月。ほかの人がどのように短歌をつくっているかというのはなかなか興味深い。盛り上がった。


#夜の短歌の会
夜に関する短歌をながすタグ。2012年8月。参加したのに覚えてない。


#超縛り短歌
2012年6月。自分の名前にふくまれる文字だけを使って短歌をつくるタグ。オレだったら「く、ど、う、よ、し、お」の六字だけを使うことになる。

どうしよう私欲汚欲よ追う欲よよく浮く毒よ毒々し死よ(くどうよしお) #超縛り短歌


#実話短歌
実話にもとづいた短歌のタグ。2012年3月に集中的に使われた。それ以後もぽつぽつ使われている。


#57dai
診断メーカー「短歌のための5字または7字のお題ったー」で出たお題+αに沿って短歌をつくる際に使われるタグ。オレは2012年6月に遊んだ。
見るとまだ使っている人がいる。短歌に関する診断メーカーでは人気のある方だろう。


#短歌バトル漫画
短歌を題材にしたバトル漫画があったらどんなものか、どんなキャラがいてどんな技がありどんな話なのか、などを妄想するタグ。2012年5月に一瞬流行った。


#occulttanka
オカルトな短歌のタグ。オレは2012年5月に参加した。このタグは8月まで使われていた。


#手描き短歌
短歌を手書きして写真を撮り、その画像をアップするタグ。だいたい2012年3月から同年9月まで盛んだった。



#7days100tanka
7日で100首をつくってツイートするタグ。オレが参加したのは2012年3月だったが、2015年ごろまで続いていたらしい。


ハッシュタグをつかってツイッター上で歌会をするこころみがいくつかあった。今はあまり見かけなくなった。
#1h_kakai はその一つ。
2012年6月に開催されたツイッター上の歌会、「一時間歌会」のタグ。思い立ってから一時間で歌会ができるかどうかという山本まともさんの突発企画。
歌ごとにハッシュタグがあり「#1h_kakai_1」などと区別された。

#五文字歌会
一時間歌会の話をしたので、その流れで同じアカウントが企画した「五文字歌会」にも触れなければいけない。2014年4月。五文字だけで評をするというツイッター上の歌会。オレは不参加。



【2013】

#アカウント名で折り句をして自己紹介
2013年5月。難しかったなあこれ。

くろびかる
どうもうなもの
よくぼうを
したたらせつつ
おったっている
#アカウント名で折り句をして自己紹介


くちびるは
どうにでもして
夜空へと
静かな星の
落とす涙は
#アカウント名で折り句をして自己紹介


縦に読むと「くどうよしお」になる。



#工藤吉生まつり
2013年のオレの誕生日にできたタグ。ありがたいことでした。



【2014】

#短詩の風
2014年から年に一度おこなわれている。決まった時間にいっせいに詩歌をツイートする企画。瞬間的にものすごい盛り上がりを見せる。トゥギャッターにまとめられている。


#ときどき歌会
何度か開催されたが、2013年5月に一度だけ参加させていただいた。
この名前、このタグでの歌会は2014年9月が最後のようだ。
御糸さちさんによる歌会。


ツイッター上であまり歌会がひらかれなくなったのは、「うたの日」ができたからでしょう。歌会が毎日開催されていて、そこに多くの人が参加している。ネット歌会の歴史にあらたなページがきざまれたと言ってもいいだろう。

「うたの日」には、投票・票数が重視される傾向がある。評を書く人が限られている。
それとは違った形のネットの歌会として、スカイプを使った少人数の歌会がツイッターで呼び掛けられて行われているようだ。
……と、話がそれた。ハッシュタグの話にもどる。



【2015】

#たんばな
2015年。短歌について語るタグ。期間と話題が決まっていて、ひとつの話題について語り合う。#たんばな10 まで、つまり10回まで行われた。盛り上がったハッシュタグのひとつ。


#自作短歌の中でなぜかこれが一番人気
2015年8月。「自分には人気の短歌がない」という意味のツイートがいくつかあり、それが一番記憶にのこった。


#短歌をやっているひとにクエスチョン
2015年6月。誰かに質問したい人とこれに答えたい人がお互いにこのタグを使ってツイートした。
おもしろそうだが、実際は盛り上がらなかった。



【2016】

#短歌クラスタの本棚が見たい
2016年4~5月。わりと最近だね。


#2016年上半期の自選4首
2016年6月。ごく最近。4首というところにツイッターの文字数制限が反映されていると見られる。


#僕の短歌が好きそうなフォロワーさんにRTして届けておくれ短歌
2016年8月。タイトルの通りで、このタグをつけて自作をツイートすると親切な方が広めてくれる。




だいたいこんなところ。ツイッター上の書きこみはいつまでも残っているので、これらは今でも読むことができる。



ネット歌会の話がでたけど、動画配信やネット生放送について次回ちょっと書きます。


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote

2016年08月14日

河北新報「河北歌壇」(7/24・7/31・8/14)に短歌が掲載されました

河北新報「河北歌壇」に載るたびにここで報告していたんですが、報告し忘れていたぶんがありましたので、三回ぶんをここでまとめて報告します。




【1】
2016年7月24日 河北新報「河北歌壇」 花山多佳子選 9首目

オレが木になったとしても「なるようにしかならんよ」と言うんだろうな/工藤吉生


「なるようにしかならんよ」はオレがいつも心の中で思っていることです。真面目な話になるとつい口に出して「あーまた言ってしまった」と思います。



【2】
2016年7月31日 河北新報「河北歌壇」 佐藤通雅選 10首目

正面に電車を見ればオマエナド轢イテヤルワという顔である/工藤吉生


オレはよく地下鉄を利用するんですが、ホームの一番前にいるときにふと駅に入ってくる電車を見ると、暗闇に二つのライトがまぶしく光っていて、怖い顔をした人のように感じられるのです。



【3】
2016年8月14日 河北新報「河北歌壇」 花山多佳子選 15首目

逃げる子と追いかける子のひたむきを眺める 売った漫画のように/工藤吉生

公園でよく歌をつくります。子供を見ていると、自分の忘れたもの、失ったものがそこにあるように思えます。
オレはさいきん漫画をいくらか処分しました。読まないし、部屋が狭くなるので。自分の売った漫画を古本屋などで見かけると、ある気持ちになります。喜怒哀楽のなにともつかない気持ちです。
短歌はそういう、喜怒哀楽からはみ出るような気持ちを表現することもできます。







先日本屋に行ったら、河北歌壇の震災に関する歌をまとめた「震災のうた」という本を見かけました。五年ぶんの震災の歌が収録されています。
自分の歌がないことだけ確認して帰ってきましたが、やっぱり、河北歌壇の投稿者として読んでおきたい気がしてきました。
投稿歌を集めた歌には珍しい、作者の五十音順の索引がついていたのが印象的でした。



新聞に載った短歌のまとめはこちら。
- NAVER まとめ http://matome.naver.jp/odai/2142456033808575801



んじゃまた。


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote
mk7911 at 20:01|PermalinkComments(0)新聞歌壇 

2016年08月13日

「本の雑誌」2016年9月号にオレの短歌が載っていた/それを買って読んでの感想

「本の雑誌」2016年9月号の穂村弘さんのエッセイに、オレの短歌が引用されていたのを見つけた! ひそかに毎月読んでたページ。うれしいっ。「あ」と声が出た。



いつもそこだけ立ち読みしてたんだけど、びっくりしたしうれしかったので買ってきた。720円。


穂村さんのページは、カラーページとの境目にあるから見つけやすい。
「続・棒パン日常」というページだ。

棒パン日常。なにか略したようなタイトルだ。「棒状のパンこそがぼくの日常なのだ」といった意味なのだと想像する。
棒状のパンのことを「棒パン」って言いますかね。オレは言わない。言わないから推測で書いている。もしかしたらそういう名前のパンがあるのかもしれない。
「棒パン」がなにかの略みたいだし、助詞無しで「日常」をくっつけるからそこにも省略感がある。「続」はそのまえにあったものが前提にあるわけで、もう、きりつめられた素っ気なさだ。


いつもチェックはしているが、このエッセイはあんまり短歌の話をしない。穂村さんが本のことを語る。「本の雑誌」だからそうなんだけど。
短歌の話をあまりしないエッセイに短歌を引いていただいたので、ちょっとレア感がある。


穂村さんはここで今回、お店に置いてある本について書いている。
「床屋」の本を詠った短歌もある。ということでオレの

24年前から床屋の本棚の漫画が変わっていないようだが/工藤吉生

という短歌を引いていただいた。
思いがけなくうれしい。







せっかく初めて買った雑誌なので、ほかのページにも目を通した。
オレは高校生のころから椎名誠さんの本を読んでて、沢野ひとしさんのイラストにとても馴染みがあるし、この雰囲気が好きなんですよ。

表紙からしていいね。手書きでいろいろ書いてある。イラストも気が抜けていてよい。ぶどうの一粒一粒に顔が書いてあるけど、半分くらいは顔がない。この加減。

映画特集だ。オレはあんまり映画を見ないしよく知らない。だけどなにやら面白そうにいろいろ書いてあり、興味をひかれる。
これはこの雑誌のどこを見ても感じることだ。つまり、オレのよく知らないようなものについてなにやら面白そうにいろいろ書いてあり、興味をひかれる。
「新刊めったくたガイド」もそう。タイトルからしておもしろそうだが、中身も濃い。なにやら面白そうにいろいろ書いてあり、興味をひかれる。



一私小説書きの日乗
オレは最近西村賢太さんの小説を読みはじめたが、その西村さんの連載がはじまっていた。「日乗」というのは日記のことかと思ったが、調べたらズバリその通りだった。

よくサウナに行く人だ。ひとりの作家についてとても熱心に調べている。
オレは西村さんの本をやっと一冊読んだが、44冊も出ているのか。



読者アンケート三角窓口もそうだが、読者の文章が熱い。みなさんの本への情熱が文章にあらわれていて、生きてるのが楽しそうだ。
短歌の雑誌では見られない光景だ。さまざまな本で鍛えられた文章なのか。

肩書きがさまざまだが、おおむね50代というのがこの雑誌の読者の年齢層のようだ。まだまだ元気いっぱいだな50代は。
30代やそれ以下は一人もいない。



「今月書いた人」はジャンプでいうと「ハロージャンプガイ」にあたるページだな(これはわかりやすくしようとして例えたつもりなんだが、実はそうでもないかもしれない)。
穂村さんのところをみると
「暑くてゆっくりしか歩けません。」
だって。
そうかなあ? そうかも? という線を突いてくる。面白いねえ。どんな長さで書いてもおもしろく書けるってすごくないですか?






宣伝

あるところに載った川柳|mk7911|note(ノート)https://t.co/FXU0cXhqdv
有料マガジンを更新しました。500円ですべての記事が読めます。


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote

2016年08月11日

「現代短歌」2016年8月号を読む  ~音なき界を深めつつ、ほか

「現代短歌」2016年8月号。


いよいよに音なき界を深めつつ相触れて飛ぶ蝶のふたひら/奈賀美和子「龍が鳴く」


夕雲に一両列車照らされてどの窓もこの世だけを見せるよ/大森静佳「旅のつづき」

→この世ならぬものの見えそうな夕方だったのかな。
列車から異世界にいく話があるけど、列車の窓は空想を誘うのかもしれないね。



特集は「熊本地震を詠む」。オレは大阪から西に行ったことがないんで熊本のことはわかんないんだけど、地震なら少し経験している。自分に引き付けるのは少し申し訳ないけど、その経験を思い返しながら読んだ。


選挙のためには良い時に震災が起きたなどと政治家でも人間でもなき奴が言ふ/楠田立身「益城」
→政治家でも人間でもないようなことを言うものが、人間の政治家なのだからまいってしまう。


一夜にて廃屋となりしマンションに小さくズボン干されたるまま/河上洋子「熊本地震」






運ばるるエスカレーターにもの思ふこころは重量の如きを帯びぬ/島田幸典「白き札」


光る箱雨夜にありてそこに立つ人は総身見せて電話す/島田幸典「白き札」

→電話しているだけなのに、雨の夜に全身を光に照らされるという、すごく目立つことになってしまっている。
直接は関係ないが、携帯電話が普及してくると、電話ボックスの見方がかわってくる。


せせらぎに差す月光のごときもの秘めて或る日は人を見舞えり/谷岡亜紀「夜の河口」


夢の中で夢と知りつつみる夢のごとく西日の中にありたり/谷岡亜紀「夜の河口」

→「明晰夢」と書いてしまえば一言で済むが、「夢の中で夢と知りつつみる夢」とすることで「夢」が繰り返され深い夢にまどろむような気持ちになってくる。



二つ目の特集は「生誕130年の歌人」

きみとゐてなほ待つもののあるごときこころのつくるさまざまのかげ/三ヶ島葭子


わが影のうつる日なたの街道をすでに何里かあるきて来たり/木下利玄


灯(ほ)あかりのほとほととゞかぬくらがりに大木(たいぼく)の幹の太々(ふとぶと)とあり/木下利玄


夏の夜のうす紫のうすもののうすき情(なさけ)の君をわすれず/吉井勇

→「うす」が繰り返される。夏の夜に読むと、なんだか涼しげでいいな。


我が前に立ちいし人がつり革の揺れを残して離れてゆきぬ/山内頌子「風待月」
→同じ別れの歌でも、こちらは吉井勇ほどの強い思いはない。ささやかだ。
つり革ってそんなに揺れるかと考えていた。わずかな揺れだと想像する。


ぬかるみは踏み場なきまで足跡がうごめきてをりきのふも今日(けふ)も/森岡貞香
→「足跡がうごめきて」は想像だけども、そのように見えるのはなんだかわかる。かつてそこを歩いたたくさんの足が見えてくるようだ。
二句や結句にも見どころがある。







オレは「読者歌壇」で初の特選をいただいた。ありがたい。
それについては以前くわしく書いたので、こちらを参照。

「現代短歌」2016年8月号の読者歌壇で特選をいただきました/これまでの掲載歌まとめ :
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52170515.html






宣伝
あるところに載った川柳|mk7911|note(ノート)https://t.co/FXU0cXhqdv
有料マガジンを更新しました。500円ですべての記事が読めます。


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote