2017年10月20日

「なんたる星」2017年8月号を読んだ

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「なんたる星」の2017年8月号を今になって読んだ。
「わりと短歌が好きな人たち」と書いてある。客観的だ。ほんとに「わりと」なのか。謙遜だったり羞恥心だったりするのか。


作品のところでは丸つけた歌は今回は無し。つまらないわけではないよ。

オレが古い人だから新しい面白さはわからなくなっていくのかもしれないということを時々考える。時間はどんどん流れていって、オレはいつまでもやわらかい感性をもっているわけではなく、いつまでも生きてはいない。
でもそんなことで悲観していてはいけない。




「戦評」見て、みんないい歌を知ってるんだなーと思った。どこでいったいそんな面白い歌を!
ちょっと孫引きする。

ピーマンのなかに涼しい部屋があることを考えている日盛り/原田彩加


虚無僧はかごがぐらぐらゆれるからあんまり早く走れないはず/雪舟えま


プリクラでファック・ユーのポーズとる低所得者の女ふたりで/やまだわるいこ

「わるいこ」ってすごい名前だ。本名がもし「よしこ」だったとしたら、そしてもしそれを知ることがあったとしたら、その瞬間どんな気持ちになるだろうと妄想する。それはオレが「よしお」だからなのか。

でも「やまだ」だったら「よしこ」じゃない気がするね。どうして、ってことはないけど。
「やまだ」ですらないかもしれない。オレは「山本」で始まる筆名の人を二人知ってるが、ふたりとも本名が山本じゃないと聞いた。
作品と関係なく、そんなことを考えた。

作品のことを言うなら、つよい言葉であるはずの「ファック・ユー」が「プリクラ」や「低所得者」で弱められている、その弱められっぷりを味わう歌なのだと読んだ。



以上です。
んじゃまた。



▼▼▼



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mk7911 at 09:26|PermalinkComments(0)なんたる星 

2017年10月18日

谷とも子『やはらかい水』を読む  ~抱かれることを嫌ひなままで、ほか

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比較的新しい歌集を今回はとりあげます。

谷とも子さんの『やはらかい水』。現代短歌社。2017年8月。
1ページ2首で約160ページ。
谷さんは未来短歌会の「夏韻集」(大辻隆弘さんの選歌欄)に所属している方です。



涙して日曜美術館を観るさういふところを猫は見てをり/谷とも子『やはらかい水』



木の影とわたしの影のまじりあひとても無口な道となりたり/谷とも子『やはらかい水』



つよい陽が空き地のふかい轍までのびてゆくのを見てゐるだけの/谷とも子『やはらかい水』

→あとに何か続きそうな終わりかたをしていて、ひろがりがある。
ひらがなへのひらき方を見ていると、「つよい」「ふかい」「のびて」といった種類の言葉がひらがなにされている。



木とわたし話すことなどもう無くて霧にからだを湿らせてをり/谷とも子『やはらかい水』
→「話すことなどもう無くて」に、木との親しみが感じられる。これを見たあとでさっきの木の影の歌を見ると、影をかさねることも木との親しい関わり方のようだ。



暗がりの杉の林のしづけさに紛れるうちに影を失ふ/谷とも子『やはらかい水』
→これも木と影の歌で、「しづけさ」もある。「影を失ふ」はこわいことのようでもあるが、それだけではないんじゃないか。木と自分の一体化でもあると読んだ。



雲のむかうに茜はありてうつすらと肩あからめる人たちのゆく/谷とも子『やはらかい水』
→雲の向こうから、地上を歩く人までをとらえた、奥ゆきのある歌。



もりあがる根に躓いて出た声を山は覚えてくれたかどうか/谷とも子『やはらかい水』



息とこゑ同時に吐いて猫は逝く抱かれることを嫌ひなままで/谷とも子『やはらかい水』

→最初に猫の歌を引いて、最後にまた猫の歌を引く。日曜美術館を見て涙しているところを見ていたのと同じ猫として読んだ。下の句に猫の生きざまがある。


以上です。
んじゃまた。



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mk7911 at 11:37|PermalinkComments(0)歌集の感想 

2017年10月16日

毎日新聞と読売新聞(2017.10.16)に短歌が掲載されました

今日は毎日新聞と読売新聞に短歌が掲載されました。



毎日新聞 毎日歌壇 加藤治郎選

マネキンにつるつるあたまよく似合うのっぺらぼうとはだかも似合う/工藤吉生



読売新聞 読売歌壇 俵万智選

引っ越しのトラック停まっている家を出てきて家具が浴びる太陽/工藤吉生






どちらも五首目に載りました。真ん中です。

毎日歌壇は一ヶ月ぶり、
読売歌壇は二ヶ月ぶり、
一日にふたつの新聞に短歌が載るのは八ヶ月ぶり。


新聞に載るとうれしくなるんですが、ふたつに載ると二倍気分がよくなります。

読売と毎日のふたつの新聞歌壇を見ていると、自分以外にも両方の新聞に載ってる方が二人かそれ以上います。特に野上さんと小杉さんはどちらの新聞でも隣り合って掲載されています。仲良しであるかのようです。
みなさんがんばりますねえ。



マネキンの歌は自分でもなかなかいいと思います。



うれしいのでバスタ屋でペペロンチーノを食べました。



新聞に載った短歌のまとめはこちら。
http://t.co/6IYOFlvBhk




以上です。
んじゃまた。

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mk7911 at 21:39|PermalinkComments(0)新聞歌壇 

2017年10月15日

五島美代子『そらなり』を読む  ~とてつもなくさわがしい夢、ほか

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歌集。五島美代子の『そらなり』を詠読む。短歌新聞社からでている「現代歌人叢書」というシリーズ。自選で500首くらい入っている。



人気(ひとけ)なき大仏殿の中(なか)にして子を呼びしわが声におどろく/五島美代子



あぶないものばかり持ちたがる子の手から次次にものをとり上げてふつと寂し/五島美代子



病む秋の庭に散らばるどんぐりの実とてつもなくさわがしい夢ばかり見る/五島美代子

→夢がさわがしいのは病のせいかもしれないが、庭のどんぐりの実まで出てきている。こうなると、どんぐりの実ととてつもないさわがしさが、関係しているような、していないような、妙な感じになり面白味がある。



わが子よこの家(いへ)のなかにある不合理はほんの世の中の一部分なのだよ/五島美代子



重態を悟らせじと作りしゑがほがそのまま脱げぬ面(めん)となりしか/五島美代子



ひらき見るわが手のなかに何もなし当然の如く草木枯れゐて/五島美代子

→「当然の如く」は上の句にも言える。なにも持ってない自分と、枯れてゆく草木。流れる時をどうすることもできない。



空が美しいだけでも生きてゐられると子に言ひし日ありき子の在りし日に/五島美代子

空の美しいのも子が生きてゐてこそとかの日言はざりしゆゑ子に死なれしか/五島美代子

→「長女ひとみ急逝」とあるところから二首。定型を大きくはみだしながらも七七でおさめている。
空を見てもなぐさめられぬ悲しみのなかにある。



灯を消せばわれをめぐりて亡き子あり風もかすかに室にかよひて/五島美代子



涙ためて栗の実ひとつとられじとせしをさな日のよみがへりつつ/五島美代子

→こういう歌はつらい。思い出して悲しくなる。現在から見ればしょうもないことに、そのころは泣いたりわめいたりしていた。



抱きしめて手の内にありとおもふ児(こ)は掌(て)のなかにして面がはりする/五島美代子



意地悪ぢいさんにも小判を上げればいいのにと絵本を見つつをさな児はいふ/五島美代子




印つけた歌は以上。
五島美代子は「心の花」の人だ。川田順からの「母性愛の歌によって、前人未踏の地へ健やかに第一歩を踏み入れた」という言葉がよく知られているんだそうだ。


むずかしくなくて読みやすかったし、いい歌が多かった。よかった。
以上です。
んじゃまた。



▼▼▼



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mk7911 at 11:21|PermalinkComments(0)歌集の感想 

2017年10月13日

【近況】▼にゃんこスター▼アイドル妄想漫画▼結社をつづけるむずかしさ▼ほか

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九月末から十月上旬までに、オレが見たもの読んだものをまとめた記事です。

▼にゃんこスターとキングオブコント
▼古泉智浩「アイドルヲタ長谷川大介のバッド・キャンディ」
▼ヒトラー演説
▼ホロコースト
▼心霊ドキュメンタリー
▼落書き
▼結社をつづけるむずかしさ

といったメニューでお送りします。





▼にゃんこスターとキングオブコント

キングオブコントを最後のほうから見た。ツイッターのタイムラインが「にゃんこスター」ばかりだったのが気になってきたから。

決まりがあるんだけど決まりじゃないやり方でやって、それにはじめは違和感があるんだけどそれが良くなってくると。普通は取れないようなどえらいものを取れちゃうんだけどすぐ捨てちゃって、かわいさ楽しさで押しまくって寄りきる。オレが見たにゃんこスターはそんな感じ。

神様の縄跳びとか神様のフラフープをもらったら、オレはありがたがって大事にするほうだなと思った。
そのまえに、縄跳びなりフラフープを手離しもしないだろうな。

もってる縄跳びを投げ捨てるのが新しくて楽しくて強いことになるとする。そうすると次は投げ捨てないで使い続けるほうが新しくなる。きっとその交互の繰り返しなんだ。

なんか考えちゃうんだよね。なわとびの縄は縛るもので、フラフープの輪は閉じている。それを短歌定型や短歌の内輪の問題に重ねてしまう。

にゃんこスターはキングオブコントで優勝をのがした。
審査員っていうのは「神さまの縄跳び」をあげる側にいるわけで、それをすぐぶん投げるかもしれない人たちにはあげられない。ぶん投げられていいという選考委員も世の中にはいるだろうが、このコンテストにはいなさそうだしいなかった。

輝かしいし楽しいし圧倒的なんだけど、遠いな、っておもった。いい映画見たあとによく「それに比べて自分は小さくてしょうもないやつだ」って思うんだけど、それだった。
「すごい」と「快」が結びつかないときがある。


それにしても、さまぁ~ずとバナナマンと松本人志ってことは、審査員は実質三人じゃない? 長年やってるコンビってことは、役割のちがいはあれど同じコントをやってきたんだからさ。同じ作品の作者なんだからさ。片方いれば充分なのでは? 
全員中年で、全員男性で、全員二人組というのは偏ってるんじゃないの? 点数や意見がまっぷたつに割れたらおもしろいのに。
M1グランプリの立川談志や、ものまね王座決定戦の淡谷のり子のことを思い出している。



▼古泉智浩「アイドルヲタ長谷川大介のバッド・キャンディ」

https://twitter.com/koizumi69/status/912883726161371137
このご時勢では単行本化不可能と言われたアイドル妄想漫画が、ほぼ全ての人物名を伏字で電子書籍となりました!!→ 古泉智浩 『アイドルヲタ長谷川大介のバッド・キャンディ』 https://t.co/1WlKjC4PNE



というのを買って読んだ。500円くらい。
「長谷川大介のバッド・キャンディ」には小粒な話がいっぱい入っている。どの話を見ても長谷川がアイドルとの関係でいいポジションにいるのがおもしろい。どのアイドルの近くにもいる。ジョブズとまで仲がいいのを見て笑ってしまった。仲良くなるような要素がないのに、当たり前のように仲良くしている。
自分勝手な妄想でも、ここまでやると立派だ。

妄想ってけっこうむずかしいと思うんだよ。頭の中だったらなんでも自分によいように考えていい、とわかっててもすぐ自制のブレーキがかかってしまう。この作品は走りきっている。拍手。
オチの弱い作品もあって玉石混淆だけど、楽しい一冊。



▼ヒトラー演説

高田博行『ヒトラー演説』読みおわった。

演説にレトリックがあることを知った。平行法、対比法、漸層法、マイナスイメージの言葉を別の表現に言いかえる「婉曲語法」、「頭韻法」など。

また、演説がこんなに分析されてるところを初めて見た。よく使われる言葉の時期ごとの変化、言葉とジェスチャーの関連、音の高さの変化。
ラジオとの関連。演説を聞くのが義務になったこと、海外の放送を聞くのが禁止になったこと。ナチはすぐ義務と禁止で縛ろうとする。

演説と関係ないが、パン屋のパンに「パンを持てるのは総統のおかげ」と書かれたシールを貼るのが義務づけられた話にぎょっとした。

チャップリンの「独裁者」のラストの演説のレトリックを指摘しているところがおもしろかった。主張は違うのにレトリックは寄せている。
そんなところまでパクっていたとは。見事。



▼ホロコースト

芝健介『ホロコースト』160ページまで。ナチのもとでユダヤ人がどうなっていったのかを書いている本。
追放、隔離、虐殺。
苦しめているはずのナチまでもが徐々にユダヤ人によって苦しみはじめているように見える。隔離する場所をつくるのに苦しみ、殺した者はトラウマを持つ。誰も得しない。まったく愚かだ。

ゲットーのなかにユダヤ人による支配があったのを知った。その代表、ルムコフスキという人の写真はインパクトがある。見いってしまった。

終盤はだんだん場所と数字と実行者の羅列になってきて、心を動かされなくなってきた。何万人を殺害したというのが何度も出てくる。
220キロを休みなく歩かせたとか、一日に20グラムのラードしか与えなかったとか、想像がむずかしいくらいの惨状だ。

ホロコーストの全貌をさぐる研究は今なお続いているそうだ。



▼心霊ドキュメンタリー

はじめてGoogleplayで映画というか映像作品をレンタルした。「not found」っていう心霊ドキュメンタリーみたいなシリーズが昨日から気になっていて、それをひとつ。300円で。

ネットから削除されて見れなくなった動画を追いかけるというやつ。現代のホラーだなあ。

「本当にあった!呪いのビデオ」も興味ある。二本くらいしかまともに見てない。

ドキュメンタリーがいいんだよな。
「隅に顔みたいなのが映ってましたキャー」で終わりにしないで、映ってた人が不幸になったとか、撮影者が変わった人だったとか、そっちまで怖さを広げていくの。



▼落書き

近所の政治家のポスターに激しく落書きされていた。

実質死刑囚
ツイッター@(ID)
確認してもらえば
わかります


って黒いペンで書いてあった




▼結社をつづけるむずかしさ

最後に短歌の話。

未来の九月号を読みはじめた。そしたら振り込み用紙を見つけた。ああ、思い出した。支払わなきゃな。
結社の振り込み用紙を見るたびに、支払わずにやめちゃおうかと一瞬思う。でも今回はやめるわけにいかない理由がある。

半年ごとにやめちゃおうかと「一瞬」思ってきたが、ふとしたことで「首輪がはまる」ようなこともある。



五年前の「未来」を見て、人のうつりかわりを見た。
五年前の「彗星集」の会員52人のうち、今も彗星集にいるのは12人。
17人は無選歌欄「ニューアトランティスopera」に移動している。
22人は出詠していない。
1人はほかの欄に移った。

つまり、5年のあいだに4割弱の会員が誌面から消えている。名前を変えて続けている人もいるのかもしれないが。
結社を五年続けるというのは大変なことだ。






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2017年10月12日

高田ほのか『ライナスの毛布』を読む  ~ひんやりあたる傘の骨、ほか

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高田ほのかさんの『ライナスの毛布』という歌集を読みました。
書肆侃侃房。2017年9月。「ユニヴェール」の歌集を読むのは初めて。新鋭短歌シリーズと中の感じは変わらない。



はじめに大きな連作がある。三人の登場人物がいて物語がある。良いかなとおもった一首を引く。

それはスキップの直前みたいなくちづけで回れまわれよメリーゴーランド/高田ほのか『ライナスの毛布』
→甘いのを選んだつもりはないんだけど、あらためて見ると「スキップ」「くちづけ」「メリーゴーランド」と糖分多めな歌だ。
「スキップの直前みたいなくちづけ」というのがおもしろいかなと思って丸つけた。くちづけによって弾みがついて、回りだしたのだ。

「~だわ」「~ね」「~なの」って口調が苦手だし、世界観というのか、全体的な空気が合わなかった。



りぼんから別マに移る春のなか膨らまないよううつ伏せ寝する/高田ほのか『ライナスの毛布』
→「りぼんから別マに移る」におぼえがある。かつて、うちの妹が「りぼん」で、母が「別マ」だった。オレはコロコロからジャンプに移ったけど、そんな感じか。

この歌は「膨らまないよう」が何を指しているのかわからない。漫画が厚いことや付録でふくらむことと関係あるのか、年齢や身体と関係あるのか。



オレは、少女漫画は四コマやギャグ漫画をよく読んでたな。『りぼん』だったら「ちびまる子ちゃん」「こいつら100%伝説」「たんぽぽたん」「てこてこはこべ」で、『マーガレット』だと「ギンギラちかちゃん」「まんまるハイスクール」。
『なかよし』や『ぶ~け』も少し読んでた。

けどさ、ギャグ漫画だけ選んで読んでたっていうのはつまり、オレが少女漫画にほぼ理解がないっていうことを示してもいるんだと思うよ。池野恋も柊あおいも矢沢あいも、全くおもしろそうに見えなくて避けていたわけだからさ。今読めばちがうかもしれないけど……。

オレと少女漫画の接点の話をしたけども、この歌集には少女漫画を短歌で表現したパートがある。わかる人にはおもしろいんだろうな。
オレが読んでた「ねこねこ幻想曲」も「うさぎ月夜に星の船」も「きんぎょ注意報」もないし、ズレがあった。こういうのは、ピンポイントで当たると楽しいんだよな。当たってないと、元ネタありきの歌は避けたくなる。
オレが一時やってた「ドラゴンクエスト短歌」 https://matome.naver.jp/m/odai/2137807984614954201 もそうだな。
オレは元々「ドラえもん短歌」から短歌に入ってきたくらいだし、試みとしてはよくわかる。




そのほかの歌。

首筋にひんやりあたる傘の骨気づかぬうちに傷ついている/高田ほのか『ライナスの毛布』
→首筋に傘の骨があたるっていうところに感じがでている。
「気づかぬ」と「傷ついて」で音を合わせようとしたのかもしれないけど、有名な短歌ですでにそういう歌があるのでそこは加点できない。
気づくとは傷つくことだ 刺青のごとく言葉を胸に刻んで/枡野浩一『ショートソング』(集英社文庫)収録作



ありえない駅の読み方教わって緑深まるあなたの故郷/高田ほのか『ライナスの毛布』
→地名と出会ったり、読み方を知ることでひらけてくるものがある。「あなた」にも一歩近づく気持ちがしたんじゃないだろうかと、想像してみる。



そんな感じでした。
ある年代の少女漫画を好きな方にはおもしろい歌集なのではないでしょうか。
というのはつまり、ターゲットに入っていないオレには、申し訳ないんですがおもしろさがわからなかったということです。
同じく短歌をやってるとか、同じ結社にいるとか、そういうことで良い読者になれるとは限らないんですね。この人はこういうことをやってるんだなと知るための名刺にはなりますけれども。

少女漫画を愛好する人が楽しめる内容の歌集だと思いますし、オレみたいな歌人じゃなくて少女漫画の読者に読まれるのがこの歌集にとっての幸福なのだと思います。そうした人々に届くとよいですね。



おわります。
んじゃまた。




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2017年10月10日

猫十首

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「猫十首」


固そうにキャットフードを食う猫だテトラポッドをかじるみたいだ

百円のえんじ色したネクタイで猫にジャンプをしてもらう趣味

四本の足をのばして二十本の指をひらいて伸びをする猫

正しさによって猫背を直そうとする者もないネコ相手なら

神妙な顔して用を足す猫をしばし見つめる関心がある

オレたちが見ればかわいい猫だけどこの可愛さがネコにわかるか

眠ってる猫がねじれて世界から裏返ろうとするうるう秒

前足と肘の間を舐め耳に擦りつけ猫は清潔保つ

死んでいるネコが道路の隅にいて小学生のふたり駆け出す

猫耳をかぶせてみれば猫耳がとてもかわいいオレの弟


「未来」 2017年10月号掲載





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2017年10月07日

「短歌研究」2017年9月号を読む ●短歌研究新人賞発表

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「短歌研究」2017年9月号。8/21に出た本なので、およそ一ヶ月半が過ぎている。



白詰草の群れ咲くなかにころがりて小一時間を死者となりたり/藤島秀憲「ミステリー4 選」
→作品連載の四回目。四回目で「4」ということは、作品連載全体を通してひとつの作品になるような構想か。
詞書に「土曜日 四首」とある。金曜日三首、土曜日四首、日曜日五首とつづく。毎日つくっているのがわかる。



異なれるわれにならむとするごとく手首に繊(ほそ)き鎖まはしつ/横山未来子「なきごゑ」
→「繊き」で「ほそき」と読ませるが、「細」よりもよほどほそいものをあらわしているような気がする。
「つける」になりそうなところを「まはし」と工夫している。動きがでる。



原罪の重みに肩をゆがませてピアノを運ぶ男二人は/八木博信「夜」
→「世の中の苦しみをすべて背負ったような顔」という表現を聞いたことがあるが、とっても重そうに運んでいたんだろう。黒くて大きなピアノが原罪そのものに見えてくる。
原罪といえばアダムとイブだが、男二人であるところにも注目した。



嘘でいい 夢でいいから泣いてほしい それを宝石だと思いたい/馬場めぐみ「幻覚」



世のなべて少女とならばおそろしき少女のむかで、少女のみみず/水原紫苑「極光」



笛吹けば石投げらるる帝國の地下大いなる劇場ありき/水原紫苑「夏鳥」

→こわいなーと思った。「笛」「石」の小ささからの「大いなる劇場」。おもてでは禁止しながら、裏では自分達のために大いにやる。権力のもつ暗い一面だ。







それでここから短歌研究新人賞であります。ネプリやら何やらのときは期限があったのでかなり早くにやったんだけど、期限がないとこれくらいの遅れにもなる。


ほんたうの差別について語らへば徐々に湿つてゆく白いシャツ/小佐野彈「無垢な日本で」
→受賞作から。選考のなかで評価が上がっていったという。オレもそうで、選考会の様子を読んではじめて気づくことが多かった。色が多いこととか。
日本のどこなのか土地が分かるのは、なんとなく良いことのような気がする。



弁髪というのを初めて見ましたと宛先のないメールを打った/戸田響子「拾いながらゆく」
→メールって宛先を入れないと送れないものだ。送ったとは書かれていない。「打った」のだ。
ツイッターとかそういうのって、宛先のない言葉の受け皿なんだろうな。オレも別に「この歌がよかったんです」と特定の誰かに言いたい感じではない。ただ発したいのだ。
「弁髪」ってキン肉マンのモンゴルマンのイメージがものすごく強いなあ。本物は見たことない。



偽物のわたしは入れてもらえずに毎晩ドアの裏側にいる/木村友「木の根空の根」



人類を超えた知能は人類を超えてないふりしているだろう/井上閏日「無力力」

→納得。
人類を超えた知能は人類を滅ぼそうとしているような気がするけど、それも人類の考えることなんで、超えていてほしいな。



病もつ口のなかへとさっくりと入ってゆきぬ裸のりんご/詩穂「春の夜のプール」
→「裸のりんご」がよくて丸つけたが、「病もつ口」ってなんだろう。風邪とかの病人の口と読んだが、よく見たら口に関する病があるように見える。「さっくり」って噛んだときの音みたいだが、ここでは入ってゆくときの様子を示していて、そこも不思議な歌だ。表現の不備とも読めるが。



あきらめない人が私を追い抜いて満員列車に飛び乗ってゆく/目白しずか「解約」
→いいタイトルだな。
「追い抜いて」「飛び乗って」には追う、抜く、飛ぶ、乗るの四つの動きが含まれていて、あきらめない人は元気だ。自分のなかのあきらめが浮き彫りになっている。



好きじゃないひととつきあうともだちの千切りキャベツは端でつながる/道券はな
→人間関係もキャベツもよく切れてませんよということだ。「端でつながる」は言い得ている。



夕飯をビスケットにする山小屋の朝食べたのと同じビスケット/山本まとも
→「山小屋の朝」のさわやかなイメージが、夕飯を適当なもので済ます生活と、ビスケットでつながっている。



ゆめというゆめの密輸をみてしまう鍵のかかったテニスコートで/伊波慧
→「ゆめ」の繰り返しや「ゆめ」と「みつゆ」の音でのつながりだとかを味わいたい。
鍵のかかったテニスコートは無人じゃないか? でもそこに目撃者がいる。主体が人間なのかもあやしい。ゆめの密輸を見たのも、夢の中だったのか。



父という逃げ場なき身に豆浴びて淋しき鬼の面を取りけり/大野靖史


新人賞はそんな感じ。

そのあとに短歌年表がある。こういうのを見ると、オレは短歌史に残るほどのことを何一つやってねえなと思う。



以上です。



オレは佳作5首でした。そのときの思いはすでにこのブログに書いています。
2017年の短歌研究新人賞の「佳作」という結果をオレが自分のなかでどう受け止めたかを書く
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52198060.html




んじゃまた。


▼▼▼



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2017年7-9月の歌まとめ・20首
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第57回短歌研究新人賞候補作「仙台に雪が降る」全30首
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2017年10月06日

映画「ワルシャワ・ゲットー」を見た

"ワルシャワ・ゲットー"
https://t.co/vIXOIGmr4o



「ワルシャワ・ゲットー」という映画を見た。
言ってしまうと、「戦場のピアニスト」からピアノをとったような映画だ。ニーナという二十歳そこそこの学生が主人公。ニーナはユダヤ人で、戦時に行き場をなくして転々として必死で生き延びる話。

ピアノがないかわりに何があるかというと、二つある。一つは家族で助け合っていて、家族のつながりが最後まで濃いこと。二つめは、「ご本人」がいること。現代を生きているニーナ本人の語りがはさまる。



好きな場面は、母がニーナに「お前がピンクのドレスを着て舞踏会で踊る夢を見た、だからきっとうまくいくよ」って言うところ。
あと、ニーナ本人が、一緒に逃げてたリシオという少年のことを覚えてないというところ。「リシオのことはほとんど覚えていないのです」と本人が語って、リシオの無表情の顔がアップになっていく。


行列に並ばされるときはなるべく後ろに並ぶことで生き残る確率が上がるという、極限状態での知恵。



タイトルは「ワルシャワ・ゲットー」になってるけど原題は「ニーナの旅」といったものらしい。ワルシャワにとどまらずあちこちに行ってるから「ニーナの旅」のほうが適切だ。でも、このタイトルだから目にとまったのも確かだ。


各種サイトのレビュー見ると、★5をつける人がほとんどいない。でもオレはとても良いと思った。おもしろくなるまでに時間がかかるけれども、最後は泣けてしょうがなかった。





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2017年10月05日

「poecrival2」を読む  ~木の鈍器的なにか、ほか

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詩歌SNSサイト「ポエクリ」(poecri)
https://t.co/lNPRDPzKMP
で発表された作品集「poecrival2」の短歌のほうを読んだんだけどおもしろかったです。
事前に作品7首の募集があって、堀田季何さんと服部真里子さんが10首ずつ選んで評を書いている。オレも応募した。

これ、読むには会員登録しなくちゃいけないし、作品をダウンロードしなくちゃいけない。ポイント制になってて、それがなんなのかあんまり書いてなかったり(よく探さないと見つからなかったり)する。まあポイントはほとんど気にしなくていいんだけども。


よかった歌を引きます。


ひどく頭痛していたのだろう熱帯魚を丸飲みしてる青い人魚は/榛瑞穂
→まったく不思議だ。ちょっと原因と結果の説明っぽいからよけい不思議だ。人魚は頭痛がすると熱帯魚を丸飲みするのか。
へんてこだけど、人魚のことはわからないから、もしかして……と思う。そもそも人魚って何食べてるか見当もつかない。
「青い」はどんな青さだろう。



こけしから頭を抜いてどちらとも木の鈍器的なにかとなった/西明石
→「鈍器的なにか」とぼやかしているが、ぼやかしても鈍器のもつ凶悪なイメージが薄まらない。
こけしの頭とこけしの胴体。こけしの頭を抜く行為がすでに何だかあぶない。なんのために?
こけしが凶器に変貌する、こわい歌。



マグネットかちっと浮かぶ夢覚めてなんの順番が逆だったのだろ/斎木道太
「置いてあるマグネットに上から磁石か鉄を近づけたらかちっと音を立ててくっついた」と評に書いてあって、それで上の句の意味がわかった。
「だったのだろ」っていう歌の収め方。そして、なんとも答えようのない問いが投げかけられている。

こんな奇妙な問いを見ると、詩の言葉だなあと思う。なんの順番が逆だったのかがわからないということは、「順番が逆だった」こと自体は分かってるわけだよね。その分かり方もまた不思議におもしろいし、夢だとそういう分かり方がありうる気がする。









いちおう、オレの採用歌も出しておきます。

堀田季何選
もうちょっと近いものかと思ったが他人は遠い 歯を削られる/工藤吉生


服部真里子選 拾遺集

ゴミ箱をあふれるごみのてっぺんで曲がるストローまっすぐのまま
もうちょっと近いものかと思ったが他人は遠い 歯を削られる
千円を紙きれにするマジックにおそれおののき客席にいる/工藤吉生



以上です。んじゃまた。




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