《歌集読む 143》 藤田貴佐代『歌集 花の渇き』人間らしい生活 他一篇  ~「未来」2018年2.3月号掲載

2018年03月13日

《歌集読む 144》 向山益雄『歌集 檐溜』3

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【12/36】
向山益雄『歌集 檐溜(たんりう)』。第一歌集。2015年。現代短歌社。

1ページ2首の260ページ。「八雁」所属。
2000年に会社を定年退職し、翌年から短歌を作りはじめたという。2001~2015年の歌を収録。



母の訃の電話を置けば広ごれり母のかたちのわが胸の虚(うろ)/向山益雄『檐溜』
→電話の最中ではなく、電話(固定電話なら「受話器」だが、いまは高齢者でも携帯を使うし、どうだろう)を置いてから感情がわいてくる。「うろ」は木を思わせる。胸のなかにいる母の大きさを感じる。



診察に吾が名呼ばれて読みかけのスポーツ新聞惜しみつつ置く/向山益雄『檐溜』



スクランブル交差点には合戦のごとくに人のなだれ入りゆく/向山益雄『檐溜』

→現代に戦国時代みたいな合戦はないけど、とてもよくわかる。映像で見たものが意識に深く浸透していることに気づかされる。
合戦のようだが、よく見ればみんながみんなすれ違っているのだ。



ネクタイが正月以来ハンガーにかかれり五時半指す形して/向山益雄『檐溜』
→「五時半指す形」が、これまた想像しやすく、よくわかる。
五時半とはいっても、何日たっても進まずに五時半のままなのだ。



うしろよりブーツの音の聞こえしが二つ目の角を過ぎて遠のく/向山益雄『檐溜』
→安心したとも拍子抜けしたとも言わず、事実だけを言う。「二つ目の角」というから、だいぶ意識していたんだろう。「ブーツ」もポイント。



転寝(うたたね)より覚むれば紙に長かりきルーズリーフの金具の影は/向山益雄『檐溜』
→うたたねってこういう漢字なのか。影の長さで時間を感じることはあるが、妙なものに影を引かせている。



焼け跡の校舎の庭に向日葵を播きたる教師いかにしあらむ/向山益雄『檐溜』
→そこは向日葵がどんなに成長したかを想像しそうなところだ。
ひまわりの“種”をまいたということだろうから、省略がやや気になる。さっきの「ルーズリーフの金具」という言い方もそう。



あぢさゐの青に行きあふときいつも夢のなかなる色とぞおもふ/向山益雄『檐溜』



気になった歌はそんな感じです。
この本おわり。






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