太宰治(文春文庫 現代日本文学館)を読んだ『塔』2019年4月号の座談会で、一瞬オレの名前が出たこと

2019年05月26日

[総合誌読む 131] 『歌壇』2019年2月号  ●歌壇賞発表

IMG_20190526_120700



総合誌読む 131


『歌壇』2019年2月号。歌壇賞発表号。



まぶしいと言えないままにすぎてゆく日々へわたしを運ぶ地下鉄
/高山由樹子「灯台を遠く離れて」



出しすぎてしまった芯をもどすとき感情が粉になって落ちる
/高山由樹子「灯台を遠く離れて」

→シャープペンシルを使うとそういうことがあるんで、ああ、あるなあと思って読んだ。感情というのはいったん人前で出しすぎてしまうと、やっぱり引っ込めるといっても完全に元通りにはならない。感情的に何か言って、しまったと思って取り繕ったのかと読んだんだけども。
戻るには戻るんだけど、でもちょっと、っていうこまかいところを、シャーペンの粉でうまく表現したなあと思った。

東さんが選考で「怒りのようなもの」をこの連作に見ている。この出しすぎて戻した感情も怒りとかそっちのほうの感情かな。



霧はすき人がひかりに見えるから呼吸をするみたいに手をのばす
/高山由樹子「灯台を遠く離れて」



散らばったかばんの中身の手鏡に映るわたしのものとわかる手
/椛沢知世「切り株の上」



口内にブドウの皮をひそませて傷つきたくて見ているドラマ
/椛沢知世「切り株の上」

→ブドウの皮のように、あとに残っていて、それでいて隠された、そういう感情があるのだろうか。



泣いているときもつめたい二の腕に頬を寄せたらかすかににおう
/椛沢知世「切り株の上」

→生きていること、肉体があることのどうしようもなさ、みたいなもの。



父の船に乗せられて見し沖からの小さきわが家あまりに小さき
/逢坂みずき「鯖の缶づめ」

→海のあるふるさとと家族の一連。体操服とかふでばことか黄色いトレーナーとか本棚にアルバムとか、道具がいいなあ。
この歌は、心細い気持ちになる。こういう思い出って忘れないものだ。



都会にはもうヤッホーと叫んでもいい場所はなくお釣を受け取る
/戸田響子「境界線の夢をみる」

→山のてっぺんで思いっきり叫ぶ、意味という意味はない言葉「ヤッホー」。受け取った小銭はこまかいが、こうである必然性がある。仕組みがある。



いけないと思うほどつい食パンの断面に指をしずめてしまう
/戸田響子「境界線の夢をみる」

→どれくらいしずめたかっていうのが「いけないと思うほど」という主観的な表現になってるのがよかった。いけない、っていうのはなんだろ。食パンに穴をあけちゃうってことか。
怒りがそうさせたのだろうか? それともパンのやわらかさを求めているのか。



ビルとビルの間に隙間があったかを思い出せない急に気になる
/戸田響子「境界線の夢をみる」



自販機の取り出し口から手が伸びて手をつかまれる気がしてならない
/戸田響子「境界線の夢をみる」

→「世にも奇妙な物語」の「自販機男」という話にちょこっとそういう場面があった。

ここまで引いた歌、どれも狂気に近いところにいる。そういう「境界線」か。



どうしても救われたくて飛び乗った地下鉄 ちがう 濁流 これは
/佐巻理奈子「水底の背」



パレードのごとき深夜のさっぽろを映してなんの予言だ川面は
/佐巻理奈子「水底の背」



柘榴を割る視野が端から赤くなる赤だけになる赤は綺麗だ
/岩田怜武「いのち」

→思いきった連作タイトルだ。
繰り返される「赤」を最後に「綺麗だ」という。赤につかまってしまったようでおそろしい。



自転車を押す間だけ空くサドルでも、ああ、そうか、そうでもないか
/岩田怜武「いのち」

→なにがだよ! っていう歌。下の句でなにか考えたり考えなおしたりしているが、それは読者には見えない。空いているサドルが意味ありげだ。



あのへんが海だったころ嘘つきはただ一滴のしずくであった
/辻原僚「スプリング・ブーケ」



ゆるされてしまう予感に耐えかねて天の写生をするこどもたち
/白川麒子「天景」




ここまでが歌壇賞。



冬ながら網目模様の太股がわれに近づく坐りてをれば
/島崎榮一「日常派」



痛くなくじょうずにお願いしたいです小包丁も林檎も言えり
/浜名理香

→上の句がこどものような口調でたのしい。林檎も実を切られたら痛いと言うんだろう。

開けて閉め閉めては開きのぞきこむいちばん楽しいところ冷蔵庫
/浜名理香「ばちかぶり」

→これも無邪気な感じがいいなあ。ちなみに、あんまり楽しくない冷蔵庫もあるんですよ、給料日前は特にすかすかで……。



怠惰なる日々にまとひし身の脂恥ぢて農夫の友と湯に入る
/山中律雄「風の言葉」



お手伝いお駄賃ねだり励む子の中が透けてる黄の貯金箱
/佐々木孝逸

→読者歌壇の特選作品。透けていてしかも色があるのがいい。いくらぐらい入っているのかなと想像させる。子のがんばりを親も見ているわけだ。
上の句にはぎこちなさがあるけども。



そんな感じで「歌壇」2月号はおわり。





▼▼▼



【こっちもおすすめ】

noteのほうでは、ブログでは読めない内容の記事をたくさんアップしています。




依頼こなし日記 2019.3/7-3/20  ~物足りなさの理由
https://t.co/CszEGnVTay

依頼こなし日記 2019.4/20-4/22  ~ご筆硯いよいよご多祥の段
https://t.co/GAhcd6RlQ9

依頼こなし日記 2019.5/6-5/16  ~日記とカレンダー
https://t.co/uH0Qg7bwZp


2018年12月のオレの短歌とその余談  ~鋭く突いた怪作です、ほか
https://t.co/1YynqfTbGS

2019年1月のオレの短歌とその余談  ~「おもらしクン」「大きなSNSの下で」ほか
https://t.co/XQaZ8NGI0y






などなど、
500円ですべての記事(約120記事)が読めます。よろしければどうぞ。



このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
太宰治(文春文庫 現代日本文学館)を読んだ『塔』2019年4月号の座談会で、一瞬オレの名前が出たこと