『群像』2020年1月号「競作24人」読む【4】 磯崎憲一郎、古川日出男、東山彰良、阿部和重『群像』2020年1月号「競作24人」読む【6】滝口悠生、青山七恵、町屋良平、山田由梨

2020年01月14日

『群像』2020年1月号「競作24人」読む【5】 長嶋有、上田岳弘、松田青子、藤野可織

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『群像』1月号の「競作24人」を1日1作読んでいく企画のまとめ。ひとつの記事に4作ずつ感想をまとめる。









2020.1/8

17日目。

長嶋有「あら丼さん」読んだ。

あら丼さんという知り合いが亡くなり、あら丼さんの思い出や通夜のことが書かれている。
以前読んだ『問いのない答え』のことが書いてあった。

俳句や句会のことがでてくる。『野性時代』の野性俳壇のこともでてくる。
あら丼さんは句会にラスクを持ってくる同人で、野性俳壇に投句していて、よく映画を見る、優しい人だった。

話はどこへ向かうでもなく、点々とつづいていく。
亡くなった人、生き残る人についての「誤った感じ方」など。

LINEってほぼやってないんで、そのへんの感じはあんまりわかんなかった。








2020.1/9

18日目。

上田岳弘「最後の恋」読んだ。

「僕」は、危篤の大叔母に会いにいく。大叔母に意識はない。帰ろうとしたときに、もうひとりの入院患者の付き添いの女性に話しかけられる。

はじめの方に、脳と白昼夢のことが書かれている。白昼夢のことは全然わからないんだけど、意識が休んでいるときに「あまった脳の資源(リソース)を勝手に思考が埋めようとして」いるのとか「制御」を外された思考が夢なのかもしれないなあ、とは思う。

この危篤状態の大叔母は、短歌をやってて「この辺の同人歌壇に入っていた」という。
「同人歌壇」という言葉を初めて見た。ツイッター検索では一件もかからない。オレがはじめてツイッターで「同人歌壇」と書いた。Googleだと7件あるが、文章のなかの「同人、歌壇」という部分だったりする。

でもなんとなく想像はつく。
少人数で歌会をしたり、合同歌集やなんかをつくっている小さなグループがあちこちにあるらしいのは知っている。だいたい高齢者で、「○○(花か地域の名称)の会」みたいな名前が多い。

その大叔母の短歌が最後にでてくるんだけど、なかなか変わった歌だった。

白昼夢といえばオレのなかでは椎名林檎の「シドと白昼夢」でしかなくて、急に聴いてみたくなりCDプレーヤーを動かした。ついでに倉木麻衣も聴いたりした。










2020.1/10

19日目。

松田青子「クレペリン検査はクレペリン検査の夢を見る」読んだ。

「私」は派遣の事務の仕事のために面接を受け、数字を足してゆくテストをした。「私」は単純作業に燃える性質でテストに受かり採用された。 その場にいた綾、律子、菜摘の視点からもこの出来事が描かれる。


オレもけっこう単純作業に燃えるほうで、しかしやる気をなくして無気力だった時期もあり、苦いなあーと思いながら読んだ。

「私」は、クレペリン検査を頑張ってしまったがためにクレペリン検査につかまってしまったのだろうか。

ほぼ女性しか出てこない作品。靴を脱いで足をぶらぶらさせるところが二回でてくる。

同じ出来事を複数の視点から見るのはおもしろい。それぞれがそれぞれの受け止め方で試験を受け止めている。










2020.1/11

20日目。

藤野可織「トーチカ」読んだ。

派遣の警備員の主人公・近子は放送局に勤務している。憧れの、モデル兼女優の青木きららに似た不審者を見つけるが、捕まえることができない。不審者は姿を変えながら何度も近子の前にあらわれる。

巨大な『放送局』に存在感がある。拡張工事でどんどん便利になり、さまざまな施設ができて、敷地から外に出なくても生活できるようになる。
それに加えて厳密なセキュリティのシステムが、こういう不審者を生み出したんだろう。

実害がないのに追いかけてしまう感じ、身に覚えがある。深追いすることで相手に近くなってしまう。近いような遠いような存在。近石、近子、遠山……そういう名前が出てくる。

「コフレ」って知らなくて検索した。



1992年の世にも奇妙な物語に「城」という話がある。たぶんカフカの「城」を意識してつくられた話で、めちゃくちゃでかいグループ企業が出てくる。複雑怪奇なシステムがあって遅延や間違いだらけの世界だ。

今日読んだ「トーチカ」もめちゃくちゃでっかい組織が出てくるんだけど、大きな混乱は見られず、便利でお得でセキュリティはきびしい。
思い描かれる巨大組織の姿が四半世紀のあいだに変わった、とかじゃないんだろうけど対照的なのがおもしろい。


あと、派遣で働く女性の話がふたつ続いたんだけど、「クレペリン検査はクレペリン検査の夢を見る」は採用された職場を二年で辞めることになり適性検査のことばかり思い出しているのに対して「トーチカ」は仕事にずぶずぶに深く入っていくのが対照的だ。

そういう、一見似てるのにどんどん違う方向に行っちゃう二つのもの、におもしろさを感じる。

ずぶずぶに深く入って大きな危険を予感する「トーチカ」と、通過したはずの入り口のところでつまずく「クレペリン検査はクレペリン検査の夢を見る」。
打たせて捕る守備と打たせない守備。





そんなことしているうちに『群像』は二月号がでた。このあいだ読んだ「猿を焼く」が合評のページで取り上げられていた。いいですよね、あの作品。
それにしても一ヶ月がはやい。オレはあと4日は一月号を読む。そういう計画になっている。
一月号に載った作品の合評が二月号に出るんだから、早いねえ。





つづく。







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