短歌の本・歌書読む

2019年09月30日

{そのほかの短歌読む 137} 『あみもの 第二十号』  ~祈りと呼ぼう、ほか

そのほかの短歌 137

『あみもの 第二十号』やります。
うかうかしていたら二十一号の締め切りがすぎて発行されてしまった。時間がはやい。



『あみもの』って何? ってところから話しますと、これは一ヶ月に一度でている「短歌連作サークル誌」であります。『あみもの』さんのブログを貼っておきます。
https://t.co/3eip8YAvp6

あみもの二十号でオレははじめて参加しまして、読んでみましたので、一ヶ月遅いんですけど感想を書いていこうと思います。




手のひらに色とりどりの錠剤をぶちまけてみる 祈りと呼ぼう
/加藤悠「自死止まぬ都市で」

→この歌は色とりどりなんですけど、連作は全体的に青っぽいです。陰鬱な都市の一連で、色とりどりなのは錠剤だというんです。薬の扱いが荒くてすさんでいます。平安をもたらすものという意味で薬と祈りがつながっているんでしょうか。



ばかばかりで肉を買うとき半額シールの可愛いさを悟るな
死に方が何百通りもあるから怖くなって毛布にありがとうを聞かせる
/小祝愛「死んでくれ」

→なにもかもウンザリだという感じが出ていて惹かれました。
二つ目の歌は、死に方の多さが恐怖になったり、感謝する相手が毛布になったりする、バグった夜の歌。



酒と涙と男と女と俺、スマホとAIと世間とタピオカと俺
/シシド テルヤ「なにも言わない」

→ジェンダーとか、政治と文学のこととか、現代短歌のこととかを題材にしています。歌人の多いタイムラインを眺めているみたいです。
「と」でつなぎまくるのが面白い。ふたつのグループの対比。「今」の切り取りかた。どちらにも「俺」がいること。



勤めてたヘルスが見えた、屋上で、ピンクのタオル、はためいている
/赤片亜美「ピンクのタオル」

→近いページに、こうした種類の職業の人が出てくる連作がもう一作ありました。
電車からの眺めでしょうか。外から見えるものはごく一部で、それがピンクのタオルだったわけです。「、」が多いです。すぐに過ぎ去って見えなくなっていく感じがでている、ような気も、します。



俺は木だ王子は無理だが町娘Aのあの子がもたれて泣く木だ
木の俺にもたれたあの子がテニス部の肩に頭を預け、終点
/はとサブレ「大人は俺を思春期と呼ぶ」

→4首目と9首目。4首目では木の役でありながら誇りをもっているけど、9首目ではそれも崩されてしまいます。
クラスカーストという言葉も出てきますが、テニス部は位が高そうですね。

へなちょこな男子の青春で、しんくわさんっぽいなーと思いました。あとこういう歌も。

タカハシの自慰を見ている(タカハシのノートの端のポエムを見ている)
/はとサブレ


我々は並んで帰る (エロ本の立ち読みであれ五人並んでだ)
/しんくわ






あらためてきみが好きだと思いますみたいな夏の風吹いてます
/街田青々「八月のメランコリック」

→いい風が吹いているなあと思いました。「ます」で好感度が上がりますね。



ろくろ首が今までもらったプレゼントの八割強がネックレスでした
/西淳子「ヒャッキヤコウ・カプリチオ」

→いろんな妖怪がでてくる一連。オレは小さい頃から「ゲゲゲの鬼太郎」見てたからそういう絵柄で想像するんだけど、ぬーべーとか妖怪ウォッチとかもっといろいろあるし漫画で考えなくてもいい。
身体的特徴がプレゼントに反映されるんだなあ。妖怪に「身体的特徴」っていうのも変な話だけど。



っつーことで、『あみもの』二十号からは以上です。ありがとうございました。


んじゃまた。




▼▼▼



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2019年09月03日

{そのほか短歌読む 136} ネットプリント「第三滑走路 8号」  ~いちまいいちまい大切に、ほか

その他の短歌読む 136。

ネットプリント「第三滑走路 8号」。

このネットプリントを読むのは初めて。第三滑走路は青松輝さん、丸田洋渡さん、森慎太郎さんの三人によるネットプリントです。一周年ということでゲストの志賀玲太さんを迎えています。

最近、青松さんのことが話題になっている関係で、気になってネプリを出してきました。

12首ずつ作品が載っているんですが、一人2首ずつ引いて感想を書いてみます。



ルールに沿ったり、無理やり離れたり、光がさすばかりのプールで
/青松輝「複数性について」

→この作品自体が、ルールに沿ったり離れたりのものに見えます。57577の区切りにはなっていないけど、合計の字数は合わせてあります。
プールにも利用者の安全のためのルールがありますね。ルールとの付き合い方があるわけですが、それと関係なく光はさしています。
(水にうつる光にもなんらかの法則=ルールがあると、頭のいい人が言うような気もします)



存在を知っているけど関わりはないものが好き 雪かきだとか
/青松輝「複数性について」

→逆選。良いとは思わないがなんか言いたい歌です。
オレは東北にいて雪かきもしますので、突き放された気持ちがしました。こういうのは、なんかさびしいですね。考えてみれば「大学」はオレに関わりのないものです。

口パクの歌とプール・サイドの歌もよかったです。誰かが引いてるのを見たので引きませんでした。





どっちみち悲劇に違いないのだし撃たれた方の話がしたい
/志賀玲太「作動薬」

→悲劇というとシェイクスピアとかなにかのオペラを思い出すんですが、長いこと見てないのでおぼろげな記憶です。誤って人を殺してしまって、後悔するような劇があった気がします。あれはオペラの『カルメン』だったか。
どちらの立場から見ても悲劇。「悲劇」の重さに対しての「どっちみち」の投げやり感。



例えば向かいにビルが建ち私の犬を食べてしまえば悲しい
/志賀玲太「作動薬」

→犬を食うビルであるとか、ビルに食われる犬であるとかを考えると、どちらにしても異様です。
なんの例えなんでしょう。悲しみの例え? 向かい?
っていう、不可解な要素をおもしろく読みました。





鶴の羽いちまいいちまい大切に捥いでゆく夢ばかり見る鶴
/丸田洋渡「水天」

→ひらがなにひらかれた「いちまいいちまい」が大切さを強めています。
「鶴の恩返し」に出てくる鶴は体を張って恩返しをするわけですが、この短歌の鶴は夢だけなので恩を返していませんし、恩を受けてもいないかもしれません。
夢の話だと思うと「いちまいいちまい大切に」がウットリした、いやらしいものに見えてきました。



見えるものは見えるだけだと水中の喇叭が教えようとしている
/丸田洋渡「水天」

→水中の喇叭のイメージが新鮮でした。そこにそれがあるはずないっていう状態です。
吹く人はいないし音も出ないが、喇叭だから楽器として見えている。それが上の句にかかっていくのかなあ。
教えているんじゃなくて、教え「ようとして」いる、ってところに意志のようなものがあります。



そういうのばっかり観てさ平和とかわざと低画質な動画とか
/森慎太郎「ボトルシップ・サマー」

→わざと低画質な動画、オレは好きですけどね。山田全自動さんのやつとか。

"さよならポニーテール「空飛ぶ子熊、巡礼ス」Music Video"
https://youtu.be/41hafnxkJjg
まあ、それはおいといて。

二つのものが並べられていますが、これが意外な組み合わせです。「わざと低画質な動画」と並んだことで「平和」まで、わざとらしい古くさい薄汚いものであるかのようです。



真っ白なお皿つめたい惑星の軌道みたいなかたちで静か
/森慎太郎「ボトルシップ・サマー」

→ただの白い皿から惑星の軌道まで飛躍したのがよかったです。
「つめたい」は「お皿」にも「惑星」にも掛かっていくことができます。
「真っ白」「つめたい」のうえに「静か」までつけちゃうと、ちょっとやりすぎなのかなーどうかなーってところです。そこまでの言葉で充分静かさは出ていたんじゃないかなと。



森さんは短歌を始めたころの印象と今の印象で、同じ歌人に対してすごいと書いています。
ほかの人はけっこう短歌への印象が変わってるでしょう。特に青松さんは楽しさが薄れている。
すごいと思い続けられるっていうのはいいなあ。



あと、クイズやってる人が多いんですね。
オレは最近クイズノックを見始めました。影響されやすいので「ベイカーベイカーパラドクス」を短歌に詠みこんだりしましたよ。知ったことをすぐなにかに使いたくなるんです。
知ってることが増えるっていうのは楽しいですよね。
まあそれは雑談です。







青松さんに関しては最近「飽きさせてはならない」の件があるわけです。


短歌は青松輝を飽きさせてはならない|私たちの恥じらい @RyojiGifu|note(ノート)https://note.mu/shame_on_us/n/n857ac0ed739e


「短歌は青松輝を飽きさせてはならない」の補足|私たちの恥じらい @RyojiGifu|note(ノート)https://note.mu/shame_on_us/n/n8a0ea5604794




それを考え合わせてみれば、青松さんが書いていることっていうのは、短歌からクイズに乗り換えようとしている動きにじゅうぶん見えます。
短歌への印象が「最高」から「心の底から良いと思える短歌って限りなく少ないかもしれない」になったというのはかなりの落差です。


ただ、オレ自身は誰かに短歌をやめないでほしいとか考えたことはないです。今回ネプリを見ましたがその点は変わってません。

その問題に関しては有料の日記に長文を書きました。でもたいしたアレではないです。


ぬらっ。「飽きさせてはならない」のこと|工藤吉生(短歌をやっている人) @mk7911|note(ノート)
https://note.mu/mk7911/n/n569dfb430ead


というわけでこのネプリおわり。
んじゃまた。

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2019年09月01日

〈結社誌読む 153〉『未来』2019年6月号  ~ビーバーが震えているよ、ほか

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結社誌読む 153

『未来』2019年6月号



何ごとか思い遂げし者あるごとく梯子が立てり夕暮れの木に
/廣岡優



背表紙をしばしながめているところ岩波文庫はこころやすらぐ
/鈴木麦太朗



病んでゐる人たちの手は繋がつて輪つか状のチーズ味の菓子
/金尾釘男

→人が手をつないでいって輪をつくる。そこからお菓子になる。うまい棒を想像したけど、棒状じゃなくて普通に輪っかになってるやつかな。いずれにしても、そういうお菓子はもろい。それでいて歯にこびりついたりする。



本棚をどけるとシール16歳の酒井法子が保険をすすめる
/高田ほのか「最後の生家②」

→本棚をどけるとシール、がたまらない。オレも子供の頃はところかまわずシールを貼ってた。「酒井法子」は意味が強い。実際にそうだったから変えられない人名なのかもしれないが。



ビーバーが震えているよ/全世界同時株安/震えているよ
/西村曜「神戸どうぶつ王国吟行」

→株安は人の世界の話だけど、株安のせいでビーバーが震えているみたいだ。
テレビのチャンネルを変えまくっていると、こんなふうに動物番組とニュースが重なることもありうる。どうぶつ王国吟行とタイトルにあるからテレビ読みは苦しい。



炭酸を口に含んで目を閉じてうごめくものの感触を得る
/戸田響子「カーニバル」

→「シリーズ 今月の一人」というページから。塔でいう「風炎集」、短歌人でいうと「卓上噴水」かな。歌数は9首なのでそれらよりは少ない。
「うごめくものの感触」がこわいところ。口のなかに生物がいっぱいいるみたいだ。



ちりぢりに芝生を跳ねる風船を絶望的に追う老警官
/三輪晃「春のサーカス」



骸骨を刷りしシャツ着て訪れる介護ヘルパー Good Morning
/星河安友子『歳月はかへらず』



ひげを抜く癖を咎めるまなざしを察知するちから得たり夫は
/吉村桃香

→人と暮らしているうちに人が変化する、そのちょっとしたところをすくいとっている。実に小さな「ちから」だ。
癖をやめてくれるわけではないようだ。



うすく開くまなこの底へひさかたのひかりの春の流れ入るかな
/壱羽烏有

→春の陽射しのなかで目覚めている。読んでなんともいえずいい気分になる。三句からのハ行とか「の」の連続の効果だったりするんだろうか。
「春のひかりの」じゃなくて「ひかりの春の」であるところ。春という季節がじかに目から入ってくるみたいでいいな。
関係ないけど、紀野さんの欄ではこういう語順についてよく指摘している印象がある。



黄の付箋貼りて回せば地球儀にタジキスタンの位置は明らか
/かみのきみえ

→この歌の前の歌を見ると、この地域に興味があるようだ。
地球儀に付箋っていう発想がなかったので驚いた。グーグルマップで拠点に星印をつけたりはするけど。結句いいなあ。明らかにするために貼った付箋だ。



ドアのところで立って話しかける ないよね いないから探したりする
/唯織明

→一連のどの歌もひらがなと一字あけが多い。二人いるうちの一人だけを見ているような感覚だ。不思議な味があって気になる。



クレッシェンドで終わる曲きくそういった言葉に反論しなくてもいい
/佐藤真美「短歌バトル題詠」



背中押すわが手を離れブランコが空に近づくときに笑ふ子
/馬場順子



テレビにて幕下相撲ゆるらかに医院に次いで薬局に見る
/大谷ちか子





ということでこの本おわり。けっこう引いたなあ。



『未来』に載ったオレの短歌のまとめはこちら。
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2019年08月31日

{短歌の本読む 135} 『現代短歌新聞』2017年6月号

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その他の短歌の本読む135

『現代短歌新聞』2017年6月号




『現代短歌新聞』は現代短歌社から毎月でている新聞です。中途半端に古いんですが、この号だけ読みました。



澄んでゐる一椀の底にある貝(かひ)を挟まうとして怪(け)しき箸づかひ
/岡井隆「うすき闇の底の沼」

→一面の「現代の作家」は岡井隆さんと尾崎左永子さん。
箸で貝をうまく挟めない。どちらかというと箸が悪役みたいだ。



長き髪ひきずるごとく貨車ゆきぬ渡橋をくぐりなほもゆくべし
/葛原妙子『飛行』

こはれたる義歯(いれば)をもちて信号をわたり小路をふたつ入り来ぬ
/片山貞美『すもも咲く』

どんどん移動する歌にふたつ丸をつけた。この良さはなんだろう。入れ歯が、それもこわれている入れ歯が歩き回ってるみたいだから楽しいのか。



拳銃のようにリモコン向ける手が世界を変えてゆく窓の中
/山田航「ふるさとだった」


ナイフかと思う角度にケイタイを持ってこちらへ来る中学生
/小川佳世子『ゆきふる』

→作品特集「北海道の歌人」から。小川さんの歌はナイフとケータイで、山田さんの歌は拳銃とリモコン。普段使うものを凶器に重ねることで緊張感がもちこまれる。
「窓の中」って、自分は窓の外からそれを見ているものとみた。窓の外と内側の関係と、画面の外と内側の関係。



夫にもと二本つづけて押ししかば取り出し難し自販機のお茶
/西谷佐和子

→読者歌壇から。自販機あるあるでもあり、夫がいなければ気楽だと遠回しに言っているようでもある。



というわけでこの新聞おわり。

んじゃまた。



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2019年08月04日

〈結社誌読む 152〉『合歓』84号  ~四捨五入してわたしを拾う、ほか

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結社誌読む 152



『合歓』84号。2019年4月。




けっこう何度も取り上げている本なんだけど、馴染みのない方がほとんどだと思って説明します。
『合歓』は久々湊盈子さんを代表とする合歓の会が出している本。季刊。90ページ。久々湊さんによるインタビューがあるのが特徴か。



雨やみし路地裏ゆけば器なすものみな水をたたへてゐたり
/志垣澄幸



われにしか愚痴れぬ娘なれば詮なしと蜜柑の筋を丁寧にとる
/小田亜起子「声なき声を」

→娘の愚痴を聞いているのだろう。みかんを丁寧に食べるように、娘にも丁寧に接しているということか。そういうものだということで淡々としているように感じた。



B型のわれは立ち居を慎まむゴリラに多き血液型ゆえ
/関井宮子「墓終い」





暗きなか唇ほどのわづかなるあかり消えたり闇ふくらめり
/伊藤一彦『光の庭』

刺し違ふるごとく間近を走りあふ電車のはらわたの中にゐる
/伊藤一彦『光の庭』

歌集評のページから。一首目。灯りを「唇ほど」と見立てるのが非凡だ。ピンク色だったりしたのだろうか。ふくらんだ闇に、唇の感触がまだ残っているように感じられた。
ニ首目は電車のすれ違いに時代劇みたいな、別の種類の迫力が上乗せされた。



出しきれず残る力の重たさにうなだれてをり敗けし少年
/福士りか『サント・ネージュ』



雑踏で全身音にまみれしが四捨五入してわたしを拾う
/桑名知華子

→斉藤斎藤さんみたいな下の句だと思った。
雑踏のさまざまな音や言葉をすべて受け止めることはできない。切り捨てて切り捨てて自分を保つのだ。
これは前号評で見た歌。今回はどんな歌を出してるのかと思って名前を探したが、いなかった。

この本おわり。

何度も取り上げているけど、それだけ好きな本なのかというと別にそういうわけじゃない。いまのところ、届いたものはだいたい読めていて、読んだものにはだいたい感想を書いているんです。



んじゃまた。




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2019年07月24日

〈結社誌読む 151〉『未来』2019年5月号  ~最後に出会う火、ほか

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結社誌読む 151
『未来』2019年5月号
いつものやつですね。




復讐を考えている恐ろしさサーフィン波間に隠れて見えぬ
/前川明人

→サーフィンをしている人が波の間に隠れて見えなくなる。そんなふうに人の心は動くし見えないところがある。
サーフィンってさわやかなイメージがあるんで、意外性がある。



うつ病に「鬱」の文字(もんじ)の豊かさはそぐはぬものとつね思ふなり
/高島裕「薄雪」



お互ひに褒めあひませうわたしたち綺麗な声でささいなことを
/千坂麻緒「雪とコーヒー」



花束を机と椅子によこたへつ花にも眠る時間のありや
/山川築「授賞式周辺」

→オレも授賞式の花束の歌を作ったことあるので、おお、と思って読んだ。題材が同じだとかえって作者の性質のちがいがあらわになる。この下の句はオレからは出てこない。



逆剥けをめくったときに見る肉はいつもみずみずしく濡れている
/道券はな



エロチックな誘惑という文字を見き捨て置かれたる「オール読物」に
/鈴木麦太朗



椅子があると思ってたとこにないときの尻餅くらい思い切りいけ
/戸田響子「ラングドシャ」

→読むだけで驚きと痛みがおそってくるような歌だ。思い切りいくつもりが全くないときに、思い切りいかされてしまう。何もないところに一気に体重をかけるのだ。



あさからぬ縁なれどもさはつたら凍えるやうなほほをしてゐた
/門田照子



がぼがぼの入れ歯で母が笑う秋もうすぐ死ぬからこれでいいよと
/菅原志麻



ティカティカと雪が放てるきらめきを見つめていしが長靴に踏む
/工藤光子

→なんといっても「ティカティカ」がいい。青森の方。しっかり積もった雪のきらめきだろう。



#FF911B
ストーブに顔よせている 薪がいいわたくしの最後に出会う火は
/石畑由紀子

→詞書にカラーコードを置いた作品。結社誌に出す毎月の作品に絵や写真はつけられないが、このようにすれば色彩とともに作品を読むことができる。



ディストピア闇より深く輝いている宝石の名前のようだ
/三浦将崇



妖精がビビディバビディブーと唱えればシフト表から休日消えおり
/中山一朗「©️Disney」

→コピーライトの記号を初めて打った。
こういう魔法は日本のあちこちで唱えられている。そーかー妖精の仕業だったのかー、ってわけにはいかないけれども。



〈体操の例〉ではなくて〈大喪の礼〉だったとは!ラジオ聞きつつ
/山口ヤスヨ

→ラジオではこういう勘違いは時々ある。勘違いなのに、間違ってないところもあったりすると面白い。「!」が素直に驚いている。


AIがチョコっと駄洒落を言ってくる平成最後のバレンタインデー
/春原勝之

→AIが状況にあわせてしゃべったりするのはすごいけど、言ってることはどうでもいいことだ。その加減が「平成」なのだな。「チョコっと」っていうのが、まさかその駄洒落なのか……。



私どこから来てどこへ行くのかを次のページで知ることもある
/望月みく



「悲愴」ばかりリクエストする男子をり放送室のわれは十三歳
/藤田正代

→中学校の昼の放送だろうか。チャイコフスキーの悲愴かベートーベンの悲愴かわからないが、いずれにしても校内に流しづらそうな曲だ。その曲に思い入れがあるんだな。
ドラマならここから関係が発展しそう。



「楽しみでならない。」とその感情は書かれつつ消えたり浮かんだり
/鷹山菜摘「自分のかたち」





という感じで『未来』5月号おわり。思ったより丸つけた歌が多かった。




『未来』に載ったオレの短歌のまとめはこちら。
http://matome.naver.jp/m/odai/2145087691179204501

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2019年07月17日

{短歌の本読む 134} 「みずつき8」  ~深夜には自分が水風船となり、ほか

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短歌の本読む134
「みずつき8」。
千原こはぎさんの企画による、水をテーマとした短歌のアンソロジー。6首の短歌を誰でも投稿できて、それがまとめられている。毎年六月に発行されている。

ここから読めます。
https://t.co/xDQ5pptoRD



ちょっと歌を引きます。




深夜には自分が水風船となりちょっとやそっとで割れそうだ パンッ
/甘酢「水風船」

→夜中になると不安定な気持ちになることがオレにもある。こういう題材の歌を見ると自分だけじゃないんだなと思う。
水風船に例えたのがまず一つ。割れるところまでいったので二つ。



ごまだれを片手にわらうその人のもう片手にぽん酢を持っている
/御殿山みなみ「ぽん酢」

→6首すべてにぽん酢が出てくるのがたのしい。こういうのは好き。花の名前をすべての歌に入れるようなのは時々見かけるけど、ぽん酢はもちろん珍しい。これは4首目。

どういう状況だろう。ごまだれをかけてからぽん酢、という順序が身に付いていて、談笑しながらでも流れるように実行できる人なのかな。



うつむけば泣けてしまえる家路にてこころのぽん酢の蓋は開きおり
/御殿山みなみ「ぽん酢」

→悲しげな歌なんだけど、ぽん酢がどんな意味を持つのか、その蓋が開いてたらだからなんなのか、「こころのぽん酢」ってなんなのか、謎めいた歌だ。
「ぽん」の音がなんといっても特殊だ。ここから楽しげなものが漂っているようにすら見える。



目覚めたら雨あの人が笑ってた夢は嘘でも本当でもない
/みやや「これは夢」

→「目覚めたら雨」で切れるんですね。雰囲気がある。
「嘘でも本当でもない」に物語を感じる。たとえば、あの人は今も笑っているだろうけどそれを見ることはもうない、みたいな。



ということで4首だけですが引いてみました。人体の何割は水、っていうところから発想する歌が多かった気がします。




オレの歌を載せて終わろうかと思いましたが、上にあるURLから読めるのでやめます。

終わります。
んじゃまた。




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2018年12月のオレの短歌とその余談  ~鋭く突いた怪作です、ほか
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2019年1月のオレの短歌とその余談  ~「おもらしクン」「大きなSNSの下で」ほか
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2019年2月のオレの短歌とその余談  ~文体そのものが行為になり得ている
https://t.co/Y6OCQ0tyUY





などなど、
500円ですべての記事(約120記事)が読めます。よろしければどうぞ。







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2019年07月09日

{短歌の本読む 133} 短歌綜合新聞『梧葉』60-61号

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短歌の本読む133
本ではないんだけど、短歌総合新聞『梧葉』60号(2019年1月)、61号(2019年4月)を読んだのでかるく感想を書きます。


以前、「現代短歌新聞」と「うた新聞」について感想を書いたんですけど、そのほかに「梧葉」っていう短歌新聞があります。梧葉出版というところから出ているようで、季刊です。全12面。
季刊であるところが他の二つの短歌新聞(月刊)とはちがうところです。ほかに、紙の色がクリーム色だという違いがあります。
季刊で60号なので15年続いているわけですね。



一面が「歌人の現在」で、文章と作品があります。「視点論点」という時評みたいなものがあります。進んでいきますと、新作五首、新作一首、コラム、書評、受賞などのニュースがあります。コラムは、歌を一首引いてそれについて書くタイプのものが目立ちます。



では60号(2019年1月25日発行)のほうから歌を引いたりしていきます。



竹は目をつむって見てもきれいだと今度は言おう雲のない日に
/大森静佳「一月」



道中に「東神奈川」という駅ありて何となく中途半端な駅名と覚ゆ
/浜田康敬「中途半端な…」



抽斗に眠る鉛筆4Hするどき線を描きし日あり
/杉山みはる「眠る鉛筆」



インパクト欲しき部分に飾らむと草間彌生の絵を落札す
/荒木由紀子



羽ばかり食べ残される夏の道夢の味してまずいんだきっと
/土井絵理


いろんなとこから引きました。歌人の現在、特別招待席、現代作家新作五首、書評、結社からの推薦歌12首。




61号では「秀歌の条件」の富田睦子さんの文章に注目しました。
〈私自身が読者として歌を読むときは、一首の読む速度を暗示する初句、そこから二句、三句への流れと四句の展開、そして結句から立ち上る作者の気配の三点がいつも気になっている。〉

速度とか気配とか、特になにも考えずに読んできたなあと思います。このあたりのことを考えながら読むとどのように歌を味わうことができるか、やってみるのも良さそうです。



この失態話すものかと決めしより顔あげて歩く家までの道
/逸見悦子





以上、短歌総合新聞『梧葉』60-61号でした。



んじゃまた。


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mk7911 at 00:20|PermalinkComments(0)

2019年06月30日

{短歌の本読む 132} 穂村弘『短歌ください 双子でも片方は泣く夜もある篇』

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短歌の本読む132

穂村弘『短歌ください 双子でも片方は泣く夜もある篇』
2019年3月




雑誌『ダ・ヴィンチ』で連載されていた短歌の投稿ページ「短歌ください」をまとめた本の四冊目。
オレの歌も二首載っているんだけど、当時の年齢になっていてちょっとだけ若い。これに載るのも最後だな。帯に使ってもらうことはなかったな。

いつもの感じで引いていきます。






コンビニでアイスを買った夢を見た深夜、雨、祖父、ねむるように死ぬ
/栗原夢子



今なにをしてますか 私 私はね すべてが不思議でならないのです
/佐内あい子

→「今なにをしてますか」と「私」のあいだに「あなたこそ何をしてるんですか」ってきかれたんだろう、と読めるけど、不思議そうな人なので、きかれてないようにも思えてくる。



誰もいない部屋のテレビがらんらんと美味しいお店すすめ続ける
/斉藤さくら

→きかれてないのに言う、といえばこっちがそうだ。すすめているのに、まるで貪るような「らんらんと」だ。

こういうときに一番思い出す「らんらん」が、アンパンマンのエンディングテーマの「めだまがらんらん ばいきんまん」だ。



地震です あなたもどこかでゆれている あっ とか言って別の誰かと
/ジュン

→自分の身の安全とかをすっとばして「あなた」と「別の誰か」に向かうところ。
「ジュン」と名乗るような人の短歌が読める場所、なかなかないと思う。変わったペンネームというわけでもなくて、カタカナのジュン。



くそ暑いのにどろどろ系ジュースばかり飲む奴がこのマンションにいる
/北山文子

→変わってるけど、どんな人なのかまったく想像つかないな。そしてそれが近くに必ず、いる。



いつきみを嫌いになってもいいように背景から描いてゆく絵
/鈴木美紀子





愛し合うふたりのしたをかなたから来てかなたへと向かう地下鉄
/泉陽太郎


高架下を歩いていたら高架上を電車が走る しぶとく生きる
/柴田葵「母の愛、僕のラブ」

ふたつ並べてみると、上と下が逆だったり、感情もだいぶ違っている。



グローブは百歩譲ってバットにもできると思う逆は無いけど
/和多鍋橋

→野球するのにバットがなかったりグローブがなかったりするのか。道具や人やスペースの足りないなかで遊ぶっていうことが、昔はあったなあと思い出す。なんて、しみじみする歌ではなさそうだが。



私んちも引っ越しすればいいのにと独りギュンギュン揺らすブランコ
/タンポポ

→引っ越ししたからってそんなに楽しいとは限らないんだけどさ。でもこういうことがうらやましくてたまらない時期があったな。意地になって激しく遊んだりするんだよな。
ブランコで「ギュンギュン」はなかなか出せない。



ガラガラうがいをしている口の中 見せようとしてこっち来た人
/ボリンボリン盆

→見せてどうするんだ。逃げたくなる。
っていうか、なんだろうこのオノマトペ的な名前は。



ほのぼのとキャッチボールをしていたら突然アンダースローに変わる
/土居健悟




読みながら丸つけた歌で、いま読み直してもおもしろかった歌はそういう歌でした。
キャッチボールとか、ガラガラうがいとか、ブランコとか、子供のころっぽいなあ。
この本おわり。

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mk7911 at 08:45|PermalinkComments(0)

2019年06月25日

〈結社誌読む 150〉『未来』2019年4月号  ~片付けないなら捨てるよいいの、ほか

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結社誌読む 150

『未来』2019年4月号



目玉なき達磨を頭上に掲げくる人あり師走の雑踏の中
/前川明人



手のひらに当てるシャワーの水圧にここは実家とやうやく思ふ
/門脇篤史



花火とかエグザイルとか高速道路付近の気候とかを愉しめ
/細見晴一

→テレビかな。時間によっていろんなものを映すテレビの内容が、要約された。「とかを愉しめ」のおおざっぱで乱暴なところ。



本物のA4用紙だったのにコピー機くぐりコピーになった
/西村曜「永遠以降」

→本物の用紙はコピー機の上のところにはさまったままなんだけど。でもなんかよくわかる。失われず枚数が増えているのに、喪失感ばかりがある。

カメラで撮影されると魂がぬかれるとか、電話機やテレビのなかに人がいるんじゃないかとか、そういうのは古くて滑稽に思えるんだけど、コピー機のこれはそうでもないんだよな。近い感覚だと思うんだけど。



建物が高いね ちゃんと帰れること気にしてくれる人に手を振る
/竹中優子



その意味を見失うまでつくづくと信号の灯を見むとすれども
/三輪晃



人生はまだ先がある次回から表示しないにチェックを入れる
/佐原みつる

→ネットで表示される注意書きや案内を、「次回から表示しない」をチェックすることで無くすことができる。この先の人生はそれが表示されない人生だ。
実に小さな選択だが、これも人生の選択で、こうして何かを捨てながら先へすすんでゆく。



育児とは本性を暴かれるもの片付けないなら捨てるよいいの
/新原繭

→よく言われることだしオレも言っちゃうことだ。弱い立場の人のものを奪い去ろうとする「本性」が顔を出している。



書初めはもうしないから自殺つて書かなくていい有難さかな
/酒井景二朗

「脳を舐められている感覚」見えないアドバルーンは太めのポップ体
/鼠宮ぽむ「湯冷め」

奇妙な言葉が書かれる歌をふたつ。一首目、自殺と書いて一年を生きる人。
二首目、アドバルーンは何を伝えようとしているのか、ぞっとしろと言っているのか? そしてなぜ見えないのか。見えないけどポップ体なのだ。



水馬(あめんぼ)の踏んばっている細き脚いつも健気と思っているのだ
/中村重義





この本はこんな感じです。もっと印をつけた歌はあったんだけど、読み直したら別にいいかなっていう気持ちになる歌がけっこうあった。そのときの気分もある。




『未来』に載ったオレの短歌のまとめはこちら。
http://matome.naver.jp/m/odai/2145087691179204501



んじゃまた。


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mk7911 at 10:29|PermalinkComments(0)