好きな短歌100/ぬらっと短歌大賞

2019年07月06日

2019年上半期短歌大賞 40首 を発表します【後編】アンソロジー、その他部門

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2019年上半期短歌大賞 40首 を発表します【前編】結社誌、総合誌、歌集部門
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52239117.html
のつづきです。
18首目から。




次が【アンソロジー部門】10首です。『太陽の舟』『短歌タイムカプセル』『私の第一歌集』の三冊から選んだ歌が多くなったのでこれで一つの部門としました。



あほですわグミのおまけのベジータのカードもらって夫は喜ぶ
/大橋麻衣子

→『太陽の舟』から。夫婦間のことを詠んでいる。ほかにも好きな歌が多かったが、一首単位ではこれかな。具体的だ。



風呂上がり 風呂からあがれば風呂上がりなのかからだをふいてからなのか
/北川色糸

→屁理屈みたいな歌。しかし考えたこともないようなことだ。どこからが風呂上がりなのか。




やはらかく結びしゆゑに君の手の甲にほどけて来たる包帯
/佐々木実之

→ほんとうの優しさを問いかけてくるようだ。優しさには強さも必要だと思い知るのはつらいことだろう。
「君」に包帯を巻いてあげたってことだよね。




パレットにしつこくこびりついている絵の具でむりやり描く自画像
/當麻智子

→「しつこくこびりついている」が精神的な意味をおびてくる。こだわっていること、ゆずれないこと、あきらめられないこと、忘れられないことが自分をかたちづくっているのかもしれない。




師の顔を踏みつけるのが恩返しプロレスラーの業のかなしさ
/宮坂亨

→恩師を超えてゆくのが恩返しというのは広く通用することだろう。文字通りの意味で顔を踏みつけるというのはプロレスラーならではの恩返しだ。




みづうみのみづをみにゆく空いろをそのままうつすみづをみにゆく
/小池純代

→すっきりと透明だ。それでいて反復が呪文のようだ。一つだけ漢字になってるのが「空」。そら、であるとともに、くう、でもある文字だ。見に行った自分も透明になって空か水かに溶けていきそう。



冷たさがまくった腕に触れし時ふっきれたはずの想い動けり
/干場しおり

→精神と肉体の関係の不可思議さ。どこがどことつながっているか、わからないものだ。





わがあぶら吸ひつくしたる靴下はくらきどん底へ落ちてゆきたり
/疋田和男

→履いて脱いだ靴下のことを、残酷なくらいに詠んでいる。「くらきどん底」とはすごい。



とじて ひらいて とじて ひらいて 号令はいつも逆さであった
/鳥海昭子

→『私の第一歌集』から。
こどもの歌が多いのでこれもそういう歌と受け取った。「むすんでひらいて」みたいなお遊戯をしているのか。幼稚園やなんかで、言われたことの逆をやっている子供ってことだろう。号令のほうが逆ってことか。「号令」というと少し戦争っぽくもある。



夜のポストぬれつつ立てりおそらくは拒否の幾通かかへてあらむ
/大塚陽子

→いろんな短歌を見ていると、透視してるみたいな短歌をときおり見かける。
「夜」「ぬれつつ」が「拒否」にまとわりつく。



最後は【その他部門】13首です。これまでのものに当てはまらないもの全部です。基本的には書籍からです。ネットプリントやnoteからの選出は今回はありません。




雨音が全てを遮断する夜の誰に思われなくてもここにいる私だよ
/生田亜々子 『うたつかい』第31号

→下の句はあえてはみ出てきてるように見える。「私」がここにいると主張してくる。




きつくきつく抱きしめるとき喜びが恐れより多く伝わるといい
/羽島かよ子 『うたつかい』第31号

→すくなからぬ恐れをいだいていることがわかるが、それよりも伝えたい喜びがある。ひたむきなものが感じられた。




にらめっこしてもいいけど笑ったら負けなんてことあるはずがない
/斎藤見咲子 『かばん 新人特集号 第7号』

→たしかに、にらめっこのルールって特殊だ。人生は笑った人が勝ちだと、そういうのがちょっとあるのかな。笑うことが悪いことであるかのようなルールを強く否定している。
「してもいいけど」も大切なところだ。にらめっこを絶対やらない、とまで言ってしまうと滑稽味が出てしまう。




君のこと嫌いといえば君は問う ままごと、日本、みかんは好きか
/土井礼一郎 『かばん 新人特集号 第7号』

→謎だ。それに答えてどうなるのか。それら三つがすべて好きだったりすべて嫌いだったり、あるいは好きと嫌いの組み合わせ次第で何かどうにかなっちゃうというのか。
いや。「君」にとっては「君」自身がままごとや日本やみかんと同列なのか。まさか、嫌いと言われた痛みをともなわない、純粋な質問なのか。




踝は波打ち際でたのしそう退化まで待てない一万年
/沢茱萸 『かばん 新人特集号 第7号』

→「一万年」もそうだけど、スケールの大きなものがでてくる連作だった。
下の句、すごいパワーだ。退化を強く願っている。生命は海から来たとかいうけど、海へかえっていくという退化だろうね。進歩していこうとする人類とは逆へ行こうとしている。






ストローを回すと氷も珈琲も回って運命のおそろしさ
/佐々木遥 『かばん 新人特集号 第7号』

→アイスコーヒーをかきまぜるところから「運命のおそろしさ」までいく。回されれば回されるがままの氷と珈琲がある。
どんなおそろしい運命か、まったくわからない。それがおそろしい。



宇宙服の下に作務衣を はてしなきこのぬくもりに今、自信あり
/杉山モナミ 『かばん』2018年12月号

→「はてしなき」は宇宙服っぽい表現。「ぬくもり」「今、自信あり」は作務衣っぽい表現。そんな気がする。
両方着てるから両方の気持ちを持っている?? 
よくわからない自信を見せられると押しきられて丸つけてしまう。





ルービックキューブ6面みな真白 神様のいいなりになつたか
/喜多昭夫 『つばさ』第16号

→みんな真っ白になったら、動かしてもしょうがない。おしまいだ。謎はなくなった。ルービックキューブとしての死だ。こんな死もあるのか。
「神様のいいなり」ってなんだろう。神がすべてを白く浄化して、ルービックキューブは人間界から離れた、ということかな。
あの世のものを見ている気分になった。



八月のプールが映す青空を黄色く汚してすこし震える
/八重樫拓也 『ねむらない樹』2号

→プールでおしっこしてますね。ふるえるとバレるよ。上の句が夏らしさを出している。
ふざけた歌だと思ってたけど、「汚して少しふるえる」には、繊細な悩みのようなものも感じられた。




ガラガラうがいをしている口の中 見せようとしてこっち来た人
/ボリンボリン盆 
穂村弘『短歌ください 双子でも片方は泣く夜もある篇』

→見せてどうするんだ。逃げたくなる。
っていうか、なんだろうこのオノマトペ的な名前は。
でも子供のころは「見て! 見て!」ってお母さんになんでも見せたかった時期ってあるし、これに似たようなことはしていたかもしれない。




みずみずしいだけではないなこの川は 若いボクサーの努力って感じ
/青松輝 『稀風社の経験』

→下の句の、下手なのか上手いのかわかんない変な比喩がたのしい。そもそも、川を「みずみずしい」って言ってるところからすでにちょっと面白いし「だけではないな」の考えこんでる風なのもいい。表現に対して手探りしている。




ごみ箱の溢れたごみをごみで押す潰れる音とはねかえる音
/椛沢知世 『稀風社の経験』

→「溢」の字が違うんだけど出せなかった。
「ごみで押す」の、直接触りたくなさ、強引さ。「ごみ」だからさわりたくもないのだ。ごみ箱に入れられてしまえばみんな同じく「ごみ」なんだけども、音で違いが出てくる。
一度「ごみ」になったものが、音によってそれ以前のモノの特性をしめす。さわりたくないようなごみが、使われていたころのモノの特性をしめす。ごみとごみじゃないものの境界線に触れている。




腰にあるボタンを押せば肛門に紐が納まる掃除機俺は
/飯田和馬

→掃除機が人だったらこうなる。へんてこだが、掃除機は排泄しないしコードがあるからこれでよい。
考えていると肛門に紐がおさまっているようで落ち着かなくなる。掃除機は一生肛門に紐がくっついてるんだな。いやだなあ。




以上40首でした。
次回は2020年のはじめごろにやります。




https://togetter.com/li/1372826
ここに40首まとめて置いてあります。

んじゃまた。




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2019年07月05日

2019年上半期短歌大賞 40首 を発表します【前編】結社誌、総合誌、歌集部門

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第11回 ぬらっと!短歌大賞(2019年上半期短歌大賞) 40首
を始めます

ぬらっと!短歌大賞っていうのはなにかと申しますと、これまであらゆる場所で見てきた短歌のなかで特に良かったもの・印象深かったものを半年に一度まとめて発表するというものです。

2014年に始まりまして、年に二回やっておりまして、今回で11回目となります。

今回は、
総合誌・結社誌から7首、歌集から10首、アンソロジー本から10首、その他の書籍などから13首、という内容です。

前回(第10回・2018年下半期短歌大賞)の様子。
【ブログ版。評つき】
https://t.co/5nnPkSspt2
【togetter版。歌のみ】

https://t.co/hgmW2vIodZ

すべての回の様子はこちらから
https://t.co/Dw6Avyn6CW



今回の40首はこちらにまとめてあります。
https://togetter.com/li/1372826

ブログのほうには、一首ごとにコメントしていきます。この記事は前編で、はじめの17首についてコメントします。








まずは【結社誌・総合誌部門】7首

「しょうらいきみがそのたちばになったときにらくだよ」キロ先渋滞です
/鼠宮ぽむ 『未来』2018年11月号

→将来きみがその立場になった時に楽だよ、というのは大人が子供に・先輩が後輩にするアドバイスで、あるいは何かやらせるために善意っぽく言っている。そしてそっちは渋滞している。みんな同じ方向へ誘導されて立ち往生しているのだ。





かなしみを打ち明けたあとおもむろにあなたはと問ふ人のありたり
/丸地のぶ子 『未来』2018年12月号

→悲しいことを打ち明けた人がいる。「あなたは」ときいてくる。こちらは、悲しみを打ち明けあうというつもりがない。悲しいことがないのか、あっても打ち明けないということもある。それがこの悲しい人にはわからない。




車のなかでぼくらは桃を食べていた「最低だよ、桃なんか」ラジオが言ったように聞こえた
/ヨシダジャック 『未来』2018年12月号

→「最低だよ、桃なんか」がなければ短歌のかたちにうまくおさまる。ラジオの声は定型の外側に置かれている。
車のなかで桃っていうのは変わったシチュエーションだ。ぼたぼたと汁がこぼれそう。
定型の外側のラジオの声は、しかしあるいは自分の中の言葉かもしれない。無関係なはずの声が、じかに話しかけてきている、しかも強く否定している。





ドンドンドンドン・キホーテの片隅でカゴいっぱいのレトルトカレー
/フナコシリエ 『未来』2019年1月号

→ドンキホーテという安売り店のテーマソングの「ドンドンドン」が「カゴいっぱい」に響き合う。なんでも売ってるような店だけど、もしかして、こういうのがドンキホーテっぽい買い物の仕方なのかもと思った。
景気よさそうだけど、しかしこれがほんとの豊かさだろうかと立ち止まる。





金を出す話になりて程もなく去りたる一人ありしを思う
/吉野亜矢 『未来』2019年1月号

→話し合いのなかで、みんなでお金を集めましょうということになったのか。ゆるい場で、すぐに立ち去れるような感じだったんだろう。
すぐに立ち去った人の、それは貧しさなのか心の狭さなのか。もういないからわからない。うっすら悲しい歌。





メロン食べた?わたしのメロンあんたのメロン 外は地獄だハッシュタグ無しだ
/細見晴一 『未来』2019年2月号

→もともとハッシュタグをつけなければハッシュタグ無しになるわけだが「ハッシュタグ無しだ」とあえて言っている。他の人たちとのつながりを拒もうとしている。
切り分けられたメロンは一人に一つずつあって、食べていいのは自分のメロンだ。自分のメロンを食べられてしまったのか。これはもしかしたら「あんた」との喧嘩が始まろうとしている。
メロンの模様がハッシュタグ「#
」っぽいというのは、無理矢理か。



自転車を押す間だけ空くサドルでも、ああ、そうか、そうでもないか
/岩田怜武 『歌壇』2019年2月号

→なにがだよ! っていう歌。下の句でなにか考えたり考えなおしたりしているが、それは読者には見えない。空いているサドルが意味ありげだ。




ここまでが最初の【結社誌・総合誌部門】7首。
この半年はオレがあまり総合誌を読んでないことがわかる。このように、選ぶ範囲やその割合が毎回変わるのがこの大賞の特徴。

2018年の歌があるけど、発表された時期ではなくてオレが読んだ時期が基準になっている。
オレが読んだ時期が基準になるということは、すごく古い歌も入ってくる可能性があるということで、それは毎回書いている。

続いては【歌集部門】10首




わが生れし日の夕暮に怒りきわまり木に斧を打ちこむ男
/八木博信『ザビエル忌』

→人にそれぞれ人生があり、生まれた人もいれば、そのとき別のことをしている人もいる。それをひとつの短歌のなかに同居させると、関連があるかのように見える。
「怒りきわまり木に斧を打ちこむ」は強烈だ。ただの伐採ではない。こんな行動に出るような怒りはやばい。




闇の中わがゆく時に舗道よりしめれる砂利に踏み移る音
/扇畑忠雄『野葡萄』

→闇で見えていなくて、音をするどくとらえている。びんびんとしたものがある。異界にでも踏み込んだかのような。



母の手記に読みて知りたり幼き日金魚模様の下駄はきしこと
/三宅奈緒子『桂若葉』

→親の愛情に気づかなかった自分……みたいなことが書いてあるように見えて、たまらなくなる。決して、直接そう書かれてはいないんだけど。
記憶から消えていた自分を、母を通して発見する。




一馬身の差をつけ勝つたと喜べる親ゐて幼稚園の運動会
/中根誠『秋のモテット』

→「一馬身」って単位がおかしい。まるで競馬を見る感覚で親が子の走りを見ている。
前の三宅奈緒子さんの歌と並べると親子関係のちがいが大きくみえる。



身をそりて弾くバイオリンの照り翳(かげ)り劣情ははやけじめなかりき
/佐伯裕子『未完の手紙』

→「照り翳り」に舞台照明の下で奏者とともに動く楽器の様子が見えるようだ。バイオリンが光にさらされたり、かげったりする。奏者が身をそらすなどして動くからであり、そこにけじめのない劣情が重ねられる。





さらさらとサーチライトが交差する極上の暴力を捜して
/加藤治郎『昏睡のパラダイス』

→上の句のSやRの音から、下の句の濁音への大きな変化。
サーチライトの交差の「さらさら」が非凡だ。

暴力を探すのは、暴力に対して妙な正義感で怒っていたい人たちなのかと思ったが、暴力を見て楽しみたい人たちのことなんじゃないかと、思い直した。
「極上」というと高級食材みたいだ。





もれ来(きた)る波のひかりの静かにて癒ゆる日を問ふ兵の或るとき
/近藤芳美『吾ら兵なりし日に』

→上の句がうつくしい。「癒ゆる」という言葉が自然に導かれる。静かな波のひかりは死後の世界のようだ。
戦争のきびしい現実をテーマとした歌集のなかに、こうした歌がある。





誰も居ぬ神社の庭に力こめて振りたる鈴は鈍き音する
/近内静子『山鳩』

→鈴の鈍い音は、人の意のままにならぬ神意のようだ。力をこめても力は反映されない。
誰もいないから思いきって振ったのだろうか。




恒星の光のとどかない星のしろい魚のこと 忘れない
/二三川練『惑星ジンタ』

→恒星の光のとどかない星とは、果てしなく遠い。きっと温度もとてつもなく低い。生命がいるとは考えにくい。そこにしろい魚がいた。きっと長くは生きられず孤独と寒さのなかで亡くなったのだろう。忘れないのは、一度は記憶したからだ。なにか接点があったのだろう。
この歌集にはほかにも、生まれてくることができなかった存在を感じさせる歌があり、印象的だった。
そのへんのことを『短歌研究』2019年4月号の歌集評のページに短く書いた。



どかどかと踏みつけられている駅の階段です元気をもらっています
/足立香子『蝸牛』

→「です」「ます」で、人間以外のものの気持ちを表現している。
駅の階段の気持ちなんて人は考えないで踏みつけているのに、階段のほうは元気をもらっているという。階段の元気ってなんだ。「元気をもらう」という表現が紋切り型で、でも丁寧に言っていて嘘っぽくはない。




ここまでが歌集部門。
のこり23首は次の記事で書きます。


んじゃまた。




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mk7911 at 10:04|PermalinkComments(0)

2019年05月05日

■短歌を楽しむ!!! リンク集■

短歌を楽しむブログ内リンク集


2009年10月に開設されたこのブログには2000ほどの記事があります。また、ブログのほかにtogetterなども作成しています。
そのなかから短歌関係でなにかのお役にたてそうな記事、おすすめ記事などをまとめました。



【1】さまざまな短歌作品のまとめ


私の好きな短歌100・まとめ
【2013年版】 http://t.co/bQ97LV4YWA
【2016年版】 https://t.co/gmubYuY1jN
このブログを書いてる工藤吉生の好きな短歌100選です。歌人1人3首までという縛りで選びました。好評です。2013と2016では3分の1ほど入れ替わっています。
ぜひ短歌のおもしろさを味わってみてください。


工藤吉生選現代百人一首・仮 Togetterまとめ
https://t.co/OUCrvKYJFB
2016年11月末に、仮の百人一首をつくりました。仮というのは、他の方の百人一首の影響を濃く受けているからです。2010年以降の歌が中心です。



また、半年ごとに素晴らしい短歌を厳選し誉め称える「ぬらっと!短歌大賞」をツイッター @mk7911 で開催しています。
総合誌、歌集、結社誌、ツイッターで発表された短歌などさまざまな短歌が入り乱れる饗宴です。そのまとめがこちら。

第1回 #2014上半期短歌大賞 65首
http://togetter.com/li/687898

第2回 #2014下半期短歌大賞 60首
http://togetter.com/li/761480

第3回 #2015上半期短歌大賞 60首
http://togetter.com/li/842561

第4回 #2015下半期短歌大賞 50首
http://togetter.com/li/917329

第5回 #2016上半期短歌大賞 55首
https://t.co/X60WvjAcKc

第6回 #2016下半期短歌大賞 45首
https://togetter.com/li/1066315

第7回 #2017上半期短歌大賞 50首
https://togetter.com/li/1126231

第8回 #2017下半期短歌大賞 50首
https://togetter.com/li/1185655





【東日本大震災から五年】東日本大震災を詠んだ短歌・25首選
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52160992.html
歌人たちは東日本大震災をどのように短歌に詠んできたのか。そのごく一部ではありますが、選んでみました。





【2】ネットで短歌を知る、参加する


#オレと短歌とハッシュタグの五年間を振り返る

https://t.co/2N2ilrKlfO

歌人による動画配信/インターネット生放送の五年間を振り返る
https://t.co/XGGxUTIzib
2011年の夏にオレが短歌を始めて、丸五年経ちました。その間のツイッターや動画配信サイトなどでの歌人たちの動きを一部まとめました。


おもしろい短歌のブログやホームページはどこにあるのだ/ネットの役割
https://t.co/M80LbjZmH6
さらにネットで短歌を楽しむためのご案内です。




詩客 短歌時評「橘上の短歌放浪記」に応える/短歌の若手のいいやつって誰だろう
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52160336.html
今の短歌の若手といえば、誰なんでしょう。ネットで読める若手歌人の短歌の場の紹介など。


短歌の投稿サイトまとめ▼うたのわ▼うたよみん▼ちどり短歌会▼うたの日
https://t.co/7ctEoby1UX
ネットで気軽に短歌を発表できるのが投稿サイトです。




小高賢「現代短歌作法」内容と感想  『はやわかり短歌史』まとめ
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52001584.html
近代からの短歌の歴史をまとめた記事として好評です。Yahoo!知恵袋の回答としてURLを貼っていただいたこともあります。




【3】短歌を作り始めた方に

短歌を学ぶのに最初の一冊を選ぶとしたらどの本がよいか
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52092053.html
入門書の紹介です。まあ入門書はいろいろありますし、これを書いた後にも続々と出ています。気になるものはどんどん読むとよいですね。



tankafulのアンケート「短歌に関わるなかで不便に感じていること」に応える
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52119427.html
光森裕樹さんの運営する短歌のポータルサイト「tankaful」によせられたアンケート結果に反応した記事です。
「どこまでが未発表作なのか」「原稿用紙の使い方は」などなどについて書きました。



オレの短歌連作の作り方
https://t.co/Nbz9AgNCwc



短歌研究新人賞をいただいたときのことを書きまくる
(1) 受賞の知らせ
https://t.co/LUjlwtrA5o
(2)受賞のことば、青春について
https://t.co/hUtryePl3s
(3)授賞式・前半
https://t.co/tmDDmrhRiw
(4)授賞式の一部始終
https://t.co/b1yJ9jOxgH




【4】短歌結社

「短歌年鑑」を見て、短歌結社の会員数とその増減をまとめた
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52115890.html

短歌研究の年鑑と角川短歌の年鑑では、結社・その他歌人団体の出詠者数の数字がけっこう違うという話
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52154742.html
どの結社に何人いるかを知りたくて短歌年鑑を追いかけました。





短歌結社の様子についてよく訊かれるので、結社についてのページを以下にまとめました。
といっても、オレに言えるのは「オレの場合はこうだった」ということに尽きると思います。

私は2012年夏に短歌結社「塔」に入りました。

短歌結社「塔」に入会した
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52002215.html

なぜ結社に入ったか、なぜ「塔」か、入ってみて良かったこと困ったこと
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52131314.html

「塔」の仙台歌会に参加しました
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52090897.html

結社の歌会に参加して、その感想や反省など。
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52102911.html

迷いながら楽しみながら、「三年はここにいよう」という気持ちで塔短歌会にいましたが、三年経った時に退会を決めました。そして未来短歌会 彗星集に入会しました。
その過程の記録が以下の記事です。

「塔」から「未来」に移った理由まとめ
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52205844.html

初めて「未来」に短歌が掲載されました
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52156028.html

二つの結社の特徴について、結社とは何か、ここからわかる部分があろうかと思います。
オレは今も迷いながら考えながら続けています。

塔と未来はどちらも若い方に人気のある結社です。もちろんほかにもいろいろあります。



【5】工藤吉生の短歌


最後にオレの作品のページを貼っておきます。

【主な50首】
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52107166.html
まず主な歌をご紹介している、はじめましての方向けのページです。

【さらに100首】
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52107180.html
主な50首を読んだうえで、もう少し付き合ってやってもいいというありがたーい方へのページです。


そのほかの作品
https://note.mu/mk7911
noteに作品をまとめています。
投げ銭はこちらで受け付けていますので、役に立ったぞ、楽しんだぞという方は応援していただけるとありがたいです。



以上です。興味のあるページはありましたか?
このブログは頻繁に更新していますので、またどうぞよろしくお願いいたします。



匿名で質問したい方は質問箱へどうぞ。
https://peing.net/mk7911
ただし不快な書き込みをするとブロックしますし、その場合はIPから住所を調べることができるそうです。




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2019年01月03日

#2018下半期短歌大賞 (第10回ぬらっと!短歌大賞) 50首

第10回 ぬらっと!短歌大賞(2018年下半期短歌大賞) 50首 を始めます。

第10回ぬらっと!短歌大賞 (2018下半期短歌大賞) は、
2018年7月1日から12月31日までにオレが読んだすべての短歌から50首を選びます。総合誌、結社誌、歌集、その他の本、ツイッター、という順でいきます。今回はネプリからの選出がありません。

前回の様子。
【第9回】 #2018上半期短歌大賞 50首 Togetter https://t.co/VatvOQhfxR

すべての回の様子はこちらから見ることがてきます
https://t.co/Dw6Avyn6CW

50首の内訳は、
▼総合誌 6首
▼「塔」7首
▼「未来」13首
▼歌集 10首
▼その他の本 5首
▼ツイッター 9首
です。

ここではそれぞれの歌に感想を書いています。
歌だけ見たい方はこちらからどうぞ。
https://togetter.com/li/1304603


それではいってみましょう。総合誌部門からです。




わかりやすい人と言われるルービックキューブ一面だけを揃えて/飯坂友紀子
角川「短歌」2018年6月号

1/50
→ルービックキューブ、古いおもちゃだけど今でも忘れられてはいないと思う。オレもあんまり熱心じゃないんで、一面そろえば満足だ。
物事にはいろんな面があるが、ひとつの面でとりあえず良しとする、そういう気楽さ。


伊豆へゆき触れたる犀のリカちゃんの角の手ざわり忘れてしまえり/永田紅
角川「短歌」2018年9月号

2/50
→「伊豆」も覚えているし「リカちゃん」という名前(かわいらしい名前のサイだなあ。人形のイメージもかさなる)も覚えているけど、さわったはずのツノの手ざわりは忘れてしまう。そういう感触って、忘れると悲しいかも。


一つづつ手放し今は数隻のボートが胸をただよへるのみ/佐藤モニカ
「短歌研究」2018年8月号

3/50
→池のような胸の内か。かつてはもっとにぎわっていたのだろう。残っている数隻のボートが、かえってひろびろとした空間を感じさせる。


雨上がり 言葉を使って為し遂げるべきことを知る前に死ぬだろう/馬場めぐみ
「短歌研究」2018年8月号

4/50
→と、いう歌について言葉でなにか言うのは困難なことだ。最初にツイートしたときも何もコメントしなかったけども。
ただ、これを読んで、打ちのめされた感じがしたから。


川向こう少年たちが野球する ホームランしか分からない、打て/ミラサカクジラ
「短歌研究」2018年9月号

5/50
「→この歌にはとても心ひかれるものがある。結句の読点からの命令形の効果かなあ。
自分にわかるものが見たい、自分にわかる行動をせよという、自分本位のまっすぐさ。」
って前に書いたんだけど、なんかもっと真剣な願いがこもってるように今は思いますね。


白よりも欲深さうなそれゆゑに悔い深さうな紅(くれなゐ)のばら/小島ゆかり
「短歌研究」2018年9月号

6/50
「→欲の深さが悔いの深さと、心の中に分け入っていきつつも、バラの色のようなはっきりしたところもある。」
って前に書いた。オレ自身が欲深いんで、引っ張られる。


できそうな仕事を探す(できそうな仕事など無い)仕事を探す/田村穂隆
「塔」2018年3月号

7/50
「→こういうことあるよなと思う。こんなにスッキリした形で言えることなんだなあ。」
って前に書いてた。形がいい。
世の中きびしいなって思うよ。


始祖鳥のごとき声にて子が叫ぶ手を打てば音生まるると知り/益田克行
「塔」2018年3月号

8/50
「→始祖鳥のたとえがすごい。下の句がしっかりそれを支える。子にはなにもかもが大発見なのだな。」


決着をつけにあなたに会いに行く街中の音すべて爆発音/王生令子
「塔」2018年3月号

9/50
「→決着をつけようとする心が音の感じ方にまで影響しているというのか。爆発しているところを歩いていくようで迫力がある。「すべて爆発音」という字余り、爆発している感があっていいんじゃないでしょうか。」


プラットホームに目陰をすれば手袋の甲あたたかし朝の陽ざしに/花山多佳子
「塔」2018年4月号

10/50
「→きれいなものを見たとか何か心が動いたときに、おっ短歌になるぞ、って思ったりする。だけどこれはかなり微弱なやつで、これをよく捕まえたなと思うよ。」
電車がこないかを見るためにこういうことをするんだけど、視界でなくて手のほうに注意が向いてるわけで、こういう「ずらし」が技だよね。


100均のカレンダーだと1年で割って1日は0.3円/真間梅子
「塔」2018年4月号

11/50
「→0.3のところだけ半角にしたのは、誌面でそういうふうに見えたから。
一見それっぽいことを言ってるけど、騙されないぞという気持ちになる。たしかに本の価格をページ数で割って考えることはあるけども。見たことないものを見た驚きがあった。」
「それに、このチマチマした計算だけで一首を成立させて、余計なものをなんにも入れないところは実にちゃんとしている。」
カレンダーの一日なのに、ほんとの一日の価値が0.3円しかないみたいにも見えた。


自殺は罪、罪か?自殺は。死にたいと思ふ一羽も飛びゐるや 空/岩野伸子
「塔」2018年5月号

12/50
「→苦しみの深い歌だ。自殺が罪なのか、思い詰めるこころ。死にたがっている鳥が空にいると思うと空が悲しいものに思えてくるし、そうでなくてもそんなことを考えながら空を見上げている人がいるのがつらい。」


友だちがいなくてつらいと言う友の口元にのぼりゆく抹茶ラテ/加瀬はる
「塔」2018年5月号

13/50
「→「言う友の」ってことは、主体っていうかこの人から見たら相手は「友」のわけです。でもその「友」は「友だちがいなくてつらい」と言っていて、こちらを友とは見ていない。ここにザラッとしたものがある。
抹茶ラテの色が、そんな気持ちをあらわしているのかな。」
「ストローが描かれてないけど抹茶ラテは飲まれていくわけで、この消えているストローが、友に友と見てもらえないこのひと自身なのかもしれない。」


吸殻の浮きたる狭きバスタブに不眠症(インソムニア)の人魚を匿ふ/三輪晃
「未来」2018年6月号

14/50
「→強烈にいやなイメージだ。きたなくてくるしい。それ以上のいやなものが外にあるというのか。」
って前に書いた。「インソムニア」って映画を見たことあるけど、そのなかの白夜のイメージが印象に残っている。


エンディングノートを書いてみましたが全く誰の事とも思えない/村瀬和美
「未来」2018年6月号

15/50
「→評のページから。
上の句は丁寧語で、下の句で強い否定に変貌する。字余りの効果もあるだろう。」


朝刊のサルのクローン不安げに寄り添ひながらわたしを見つむ/神崎クニ子
「未来」2018年6月号

16/50
「→結句に力がある。新聞の向こうだけの話ではなく、こちらにせまってくる。「寄り添ひながら」に生きた感情があらわれている。」


スタバなう 顔を上げたら店員がさっきとちがう人、五人とも/鷹山菜摘
「未来」2018年7月号

17/50
「→「スタバなう」の日常が、ふっと顔を上げると変化している。支障はないけど、がらりと変わっているのはしずかにこわい。」
いまは「○○なう」ってそんなに言わなくなった気がする。確かにスタバって五人くらいいる。


監視カメラつけよう誕生日おめでとう監視カメラつけよう/鼠宮ぽむ
「未来」2018年7月号

18/50
「→善意なのか悪意なのか、誰のための防犯なのか、おめでたいことが監視カメラにはさまれて薄気味わるくなっている。ある年齢になったら監視カメラの取り付けが義務づけられるとでもいうのか。」


悲鳴を上げながら過去へ過去へと倒れながら走ってゆく真夜中の火焔列車/青山みゆき
「未来」2018年7月号

19/50
「→57577じゃない作品ばかりの作者なんだが、ここではそれが内容にマッチしている。
すさまじいイメージだ。悲鳴とか、倒れながら走るというのは人間と重ね合わされているのか。エネルギッシュだが、過去になにを求めているのだろう。」


接吻のぷの丸だとか自慰のじの点々だとかを泥に埋めたし/佐藤羽美
「未来」2018年7月号

20/50
「→かわった目のつけどころだ。言ってることはなんとなくわかる。丸とか点が言葉の感じを変えてしまう。」
泥に埋めるのは、泥のなかがそれらにふさわしい場所だからでしょう。


CGの波にさらはれ指先がポップコーンを捉へられない/氷月真帆
「未来」2018年8月号

21/50
→ポップコーンから映画館にいると見た。コンピューターグラフィックも今はリアルだし、大きい画面で見れば迫力がある。さらわれるような感覚になるだろう。コンピュータが人をさらう。


自分の心臓の音まちがいなく隣のベッドから聞こえているとても遅い濁った/沼谷香澄
「未来」2018年9月号

22/50
「→隣にもベッドがある、ベッドが並んでいるということは、病院かなあ。となりの誰かに自分の心臓があるということは、自分は何者なのか。幽体離脱しているのか。その心臓の音もなんだかおかしいと。定型もぐにゃぐにゃだし、どうなってるのか不安な一首。」


青は愛より青しと夢に聞くマルク・シャガールといふ薔薇のあり/真篠未成
「未来」2018年9月号

23/50
「→青、愛、夢。それはシャガールの世界……とうっとりしていると最後にスッと薔薇になるわけです。」


人生つて闘争でせう、仇敵との。さう言ひながらわれは微笑む/岡井隆
「未来」2018年9月号

24/50
→「食えない」とはこういうことか。人生の外側にいるような微笑みだが、その「われ」の微笑を見ている「われ」もいる。


街路樹は遠近法に統べられて見えなくなりぬあなたの日傘/中沢直人
「未来」2018年10月号

25/50
→「遠近法」で絵画を思う。「統べられて」で規則ただしく並んだ街路樹を思う。見えなくなったのは、木の陰にいったのか。「日傘」からも絵画の香りがする。「あなた」が絵のなかにいるみたい。


花瓶、きみはきっと持っていないだろ 逃走をする立てこもり犯/岩田あを
「未来」2018年10月号

26/50
「→犯人に対して言いたいことがこれなのか。見当違いなようだが、しかしここに核心があるのかもとも思った。
電気グルーヴは「N.O.」のなかで「学校ないし家庭もないし」~「花を入れる花ビンもないし」と歌った。」
オレは花瓶ない。


橋板をとどろと通る兵隊は皆のぞき見つ深き谿底を/松村英一『やますげ』
27/50
「→念のためしらべて「とどろ」は「とどろきひびくさま」と確認。
兵隊じゃなくてものぞきそうだけど、ここは兵隊だ。死と隣り合わせの立場だ。上の句はTが多い。音のおおきい導入から、深き谿底へと至る。うるさく始まるが、不気味な静けさに終わる。」


夕渚人こそ見えね間遠くの岩にほのかに寄する白波/土田耕平『青杉』
28/50
→「ほのかに」の使い方がいい。遠くから見ればそんなふうだろうな。やさしい、しみじとした風景。


毎日(まいにち)の雨量(うりやう)をしるす曲線の
漸(やや)にさがりて、
夏終(は)てにけり。
/石原純『靉日』

29/50
「→これはいいなと思った。自然や人々の様子を見て季節の移り変わりを感じることはあるだろうけど、さがっていく曲線からこの結句がでてきたところが。」
この人の場合は、学者らしいところが出た歌に特にいい歌があるという印象。


憎まれているのは俺か雪のなか湯気たてて血の小便小僧/穂村弘『シンジケート』
30/50
「→こういうことを考えながら小便することあるなあと思って読んだけど、共感の一筋縄ではいかない。「湯気たてて」と「小便」のあいだに「血」があるから血便みたいに見える。最後が「小便小僧」だからここで生命がなくなって石化してしまう。憎しみは、血は、湯気はなんだったんだと。」


朝からずっと夜だったような一日のおわりにテレビでみる隅田川/永井祐『日本の中でたのしく暮らす』
31/50
「→天気が悪いとかで朝から暗かったのかもしれないし、精神的なことかもしれない。この人にだけわかる、この人の一日だ。きっとほんとの川は見ていない日。」
そういう日あるかなーと考えて、オレにはなかった。隅田川は「花」の歌のイメージ。花火大会も名前はきく。


山火事のように山染める夕焼けをめくって紙芝居が始まる/望月裕二郎『あそこ』
32/50
→よく見えるなーと思って。火事、と思ったら夕焼け、かと思ったら紙芝居。紙芝居なんてずっと見てないなあ。
「虫をきたえる」「幕府をひらく」「これが顔だよ」「われわれわれは」みたいな歌がこの作者の真骨頂なのだろうな、とは思う。


風がドキドキしてる! 残りの人生へようこそ/ナイス害『フラッシュバックに勝つる』
33/50
「→テンションが高そうだけど、よく見るとなにも言ってない。そこが見事。一瞬、胸おどるような新しい世界にきたような気分になる。でも前半は何言ってるのかわかんないし、言われるまでもなく人は残りの人生を生きている。」

龍の背にせっかく乗れたのにすごくヌルヌルしてて落ちるシステム/ナイス害
にしようか迷って、わけわからないほうをとった。


乞ふべきか乞はざるべきか いや、やはり乞はざるべきだ 赦し、なんか/小佐野彈『メタリック』
34/50
→二句までは、シェイクスピアの有名すぎる台詞が下敷きになっているのだろう。結句には噛み締めるような力がある。一首のなかで、迷いは決意に変わったのだ。


しっとりと感情帯びて内がわへ腐りはじめる黄薔薇も家具も/嵯峨直樹『みずからの火』
35/50
「→「感情帯びて」ってことは、感情によって腐るのか。」人間的な感情が、物や植物をだめにする。人間もだめなのかもしれないが。
黄色いバラって「嫉妬」という花言葉があると思い出した。
ともかく不思議な歌で、ふっと周囲のものがぐずついていくようだ。


席替えが理解できずに泣きながらおんなじ席に座っています/穂村弘『水中翼船炎上中』
36/50
「→他のみんなは席替えを分かってるだろうね。みんなして机を一斉に動かしてガタガタしている。いまのこの子の席に移ろうとしてるほかの子もいて、待ってるんでしょう。先生が移りましょうと言ってくる。ここにいちゃいけない、あっちですよ。つらいだろうなあ。なんかわかる。悲しくなってくる。」
「ほかの席に移るのが楽しみって子もいれば、おんなじところにいたい子もいるでしょう。席替えについては説明してたはずだし、誰がどこへ移るか決めるための手続きも経ているはずなんだけど。ぼんやりしてたのかなあ。」
「こういう、変化についていけない子っていたし、オレもそうだった気がする。
泣いてても、このあと絶対動かされるじゃん。」
みんながこの子の移動を待っているわけで、つらい場面だ。


心臓が惜しげもないや 歌ってるときその歌にぼくはなってる/橋爪志保
『羽根と根』7号

37/50
「→カラオケしてるのか、ライブにでも来ているのか、前後からはわからない。全力で歌うことの喜びといえばいいのか、そういったものが出ている。」
「や」とか、後半の語順とか、見どころ読みどころがある。


背景に紺色が似合う君だけど意外と引いたら押してくる 好き/村上航
『岡大短歌』6号

38/50
「→服の色とかじゃなくて背景の色っていうのがおもしろい。紺はおとなしいほうの色だけど、見かけによらない人なんですね。「引いたら押してくる」もいい。かけひき。」
「好き」がストレートで、そこまでの工夫ある表現と釣り合いをとっている。


先輩に奢って貰うコンビニのソフトクリームの中は虚ろです/大原里梨歌
『岡大短歌』6号

39/50
「→ソフトクリーム、たしかに中が空洞のやつあるある。急にここだけ「です」になるけど、先輩がいるから気にならない。先輩に言ってはいないだろうけども。イメージがよくわかるし、それが心の中のことのようでもある。」
ものに気持ちを託す、っていうんですかね。


色彩で話せるならばいまはもう菫色、の、濃淡ばかり/穂崎円
『うたつかい』30号

40/50
「→すみれ色は一体どんな会話なのだろう。ほかの色がかつてはあって、なくなっていったのだろうね。「、」の使い方もおもしろい。話すことの呼吸、間合いがある。」
さっきのボートの歌の良さに近いかな。失って、残されたわずかなものが表現された歌。


マイナスの思考が追いつかないほどのスピードでゆく必要がある/脇川飛鳥
『テノヒラタンカ』

41/50
→思考のスピードがあり、行動のスピードがある。崩れてゆく橋を急いで走って渡りきろうとしている場面を想像した。


戦争が終わって以来海のない街で汽笛のふりをしている/平出奔
42/50
→なんのこと? と考えてみるとおもしろい。わかりそうでわからなくて。
戦争のころは何か機能していたのだろう。平和になってもそれは生きて動いていて、汽笛のような音を出しつづけている。汽笛というと、船の汽笛か。海がないのに汽笛がきこえるという、ちょっとしたズレを生みつづけている。


フォルテシモ 硝子が割れやしないかと怯えてもいた 試してもいた/喜楽熊
43/50
→笹短歌ドットコムのbotから。
音楽によってものを破壊するとか突き破るっていう、そのことへの恐れと期待。なんかわかるなあ。音楽部やってたけど、音楽で、良い音楽であること以上のなにかを達成したいという気持ち、あったなあ。


意味があることだと思う がんばったこと がんばれずここにいること/佐藤真由美
44/50
→ご本人のツイートから。
がんばれなかったことって、忘れたり否定したりしたくなるけど、それにも意味があるんだと思うと、すくわれる。がんばれていたらいまの自分ではなかった、それがいいか悪いかはわからない。ただ、自分はここにいる。


ざりざりと歯だけが積もる海岸でぼくたちはうたうたびに死ぬので/鈴木えて
45/50
→貝殻みたいに歯があるんだろうか。歯の夢ってたまに見るけど、そのなかでもかなり気味悪い。「うたうたびに死ぬ」も、嫌な分からなさだ。命がいくつもあるのか。
こわい嫌な歌、好きです。


トローチで笛を吹こうとするきみの顔がぐんぐん正しくなって/橙田千尋
46/50
→トローチ、のどにいいやつだね。穴があいてるから笛になる。笛を吹くための口のかたちにしていく過程で、顔が変わっていく。「ぐんぐん」がこわい。どうなっていくんだ。トローチを笛にすること自体、そんなに正しいことじゃないのに。


早すぎてゆっくりみたいな十二月 分けあうピザの画質がすごい/拝田啓佑
47/50
→十二月ってたしかに忙しくて早い。早すぎてゆっくりって、プロペラみたい。十二月の早さってそうかなあ? 下の句、分けあうってことは手に持ってるのかと思うけど、画質があるってことは本物じゃないのか。「すごい」は細かいのか荒いのか。そういう、ねじれをいくつも含む歌。


おい、それはドッジボールの最中に言うことなのか 俺も好きだよ/ねむけ
48/50
「→すごい球とともに言われて、それをしっかりキャッチして、投げ返したのかなあと、想像してみる。」


十月に金木犀のない町で元気ですかの先が書けない/愁愁
49/50
「→金木犀がないのが遠く離れたことを感じさせるし、下の句せつないなあ。」
書くことがない、なにを書いていいかわからない、ということにも遠さがあらわれている。


川はいい何を聞いてもいまちょっと流れることにいそがしいので/中本速
50/50
→「これ、見た瞬間すぐに覚えちゃった。スッと頭に入っていった。脈絡なしに、出勤中に口ずさんだ。」





以上50首でした。今年もいろんなおもしろい短歌に出会えればいいなーと思います。

第10回ぬらっと!短歌大賞でした。ありがとうございました。

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2018年07月03日

工藤吉生が選ぶ #2018上半期短歌大賞 50首

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第9回ぬらっと!短歌大賞 (2018上半期短歌大賞) 50首 の発表をおこないます。

半年に一回、おもしろかった短歌を50首えらんで発表するのが「ぬらっと!短歌大賞」です。本で見たもの、ネットで見たもの、なんでもありです。

だいたいいつもの通りに、
【1】結社誌部門
【2】歌集部門
【3】その他の本部門
【4】ネプリ・ネット部門

に分けて、順番にやっていきます。

この上半期は
「ブックオフ8店舗の540円以下の歌集ぜんぶ買って読んでみた」
「一年ぶんの塔を二週間で読む」

をやったので、そこが多めです。


#2018上半期短歌大賞 50首 - Togetter
https://t.co/Zh0lUaC9lI
ここにもまとめてあります。



これまでのまとめはこちら

第1回 #2014上半期短歌大賞 65首
http://togetter.com/li/687898

第2回 #2014下半期短歌大賞 60首
http://togetter.com/li/761480

第3回 #2015上半期短歌大賞 60首
http://togetter.com/li/842561

第4回 #2015下半期短歌大賞 50首
http://togetter.com/li/917329

第5回 #2016上半期短歌大賞 55首
https://togetter.com/li/995803

第6回 #2016下半期短歌大賞 45首
https://togetter.com/li/1066315

第7回 #2017上半期短歌大賞 50首
https://togetter.com/li/1126231

第8回 #2017下半期短歌大賞 50首
https://togetter.com/li/1185655



では、はじめます



【1】結社誌部門

アカウント凍結されたともだちと豪雨の中を走って帰る/蜂谷希一
「未来」2017年12月号 1/50

ちっぼけな日傘の森であのひとのロングトーンにでくわしちまう/蒼井杏
「未来」2018年1月号 2/50

わたしたち小さな家族 百円玉を入れてパンダの首を揺らして/山崎聡子
「未来」2018年2月号 3/50

エレベーターの今ゐる階を押してしまふ秋霖に遠き木木は濡れつつ/深井ちか子
「未来」2018年2月号 4/50

エレベーターの隅で話せる人の声さしすせソウソウさしすせそウソ/宗形光
「塔」2017年5月号 5/50

いらん事言はんでおかうといふことの身にしみて人はいつしか老いる/西之原一貴
「塔」2017年5月号 6/50

草原の絵本を開く そうげんがしゃべれるってことしらなかったね/田村穂隆
「塔」2017年6月号 7/50

サイテーと言いし女の抑揚の春の夕べに思い出ずるも/関野裕之
「塔」2017年8月号 8/50

内山ポンプ店の親父は口少な 内ポンと書いた工具箱持ち/米澤義道
「塔」2017年9月号 9/50

悪口がどこまでも流れてゆくところ日付が変わるまで見続けた/上澄眠
「塔」2017年10月号 10/50

「金銭のことで口論となり」まではうちと一緒だニュースは続く/垣野俊一郎
「塔」2018年1月号 11/50

つややかなる紅きおのれを夢見つつ腐りゆくなり林檎がひとつ/丸山順司
「塔」2018年2月号 12/50



【2】歌集部門

極まりて借りたれば金のたふとけれあまりに寂しき涙なるかも/松倉米吉
「松倉米吉歌集」 13/50

砂浜に君の名前を書きたればキモイからやめろやと言われき/喜多昭夫
『いとしい一日』 14/50

キキとララ星をふりまく棒切れ(スティック)をかたみに鳴らしさよならしたの/喜多昭夫
『いとしい一日』 15/50

絵葉書のこの風景に写り込む行方不明の叔母さんの踵/佐藤理江
『西日が穏やかですね』 16/50

流氷に取り残された白熊のように図書室で目を覚ます/しんくわ
『しんくわ』 17/50

やさしいひとってなんなんだよ、って3分間考えてカップめんの蓋めくる/石井僚一
『死ぬほど好きだから死なねーよ』 18/50

ちぐうんだ。いいだいことは。こんなんじないのだ。こんあちぐはうじないの。/石井僚一
『死ぬほど好きだから死なねーよ』 19/50

「好きな子の二位はいないの?」ランドセル揺らして女子が男子を囲む/山本夏子
『空を鳴らして』 20/50

死ねる紐も死ねない紐も巻かれいて手芸用品店紐売り場しずか/岡崎裕美子
『わたくしが樹木であれば』 21/50

去る人がひとりひとりに置いていくアドレスの無いやさしい手紙/山川藍
『いらっしゃい』 22/50

あたたかき日暮れの街を帰るなり小さき画廊に野鳥展みて/三宅奈緒子
『遠き木立』 23/50

誤字多き圖表を貼りて少女らはきほへり男子生徒らの前に/三宅奈緒子
『遠き木立』 24/50

ほろ酔ひの夫は無邪気に喜びて娘に容赦なきトランプ遊び/工藤しげ子
『花咲く過程』 25/50

働くのみに老いたるが唯空しいと「人生案内」にひとの問ひゐる/大井ふくみ
『落差の音』 26/50

瓦礫より運び出さるる死者を囲む慟哭が哄笑に似つつおそろし/大井ふくみ
『落差の音』 27/50

遠ざかる記憶の中にもくきやかに梅雨のある日の逢瀬まみどり/大和類子
『杏の樹』 28/50

真っ直ぐなビルの感情傷つけるピサの斜塔よ倒れてしまえ/青山兟
『アメーバ短歌』 29/50

寒いし暗いしたすけて越列吉的爾はやくしてええれきてる罹災の夜は/川﨑あんな
『ぴくにっく』 30/50

ばらを描く児ら眺めつつ思い出すわが幼日は空腹なりき/梅本武義
『仮眠室の鳩』 31/50

十匹ずつ麻酔をかけられ殺されるねずみのように新宿にいる/牧野芝草
『整流』 32/50

電柱をいつぽん一本抱きながら通る子のあり夕焼けの村/対馬静子
『すみれいろどき』 33/50

電気毛布あたたかくして亡き母のふところにわれ還りたるごと/福田二三男
『存命』 34/50

竹とんぼ百円ショップに来て買へり婚後三十八年の秋/高野公彦
『天平の水煙』 35/50



【3】その他の本部門

目の前の谷の紅葉のおそ早もさびしかりけり命それぞれ/土屋文明
『続々青南集』 36/50

雪原はかなしきまでに空気澄む夕映えの間の短けれども/扇畑忠雄
『北西風』 37/50

一つずつ街灯されてゆくことも負担のごとしいまのわれには/岸上大作
『意志表示』 38/50

大海からドンと私の胃袋に踊り込んだよこの初ガツオ/加藤敦子
『麻苅』44号 39/50
毟り取る角度を変へればまだ織れるまだ織れるさあ恩返しせよ/岸野亜紗子
『66(ロクロク)』 40/50

ピアノ向きらしい手指で土を掘る断じて何も埋まっていない/千石龍
『外大短歌8』 41/50

ベローチェはかつてセーブポイントで回復するために配る泥水/山城周
『外大短歌8』 42/50

この人が降りれば座って親指に絆創膏巻くメトロよ進め/河野真南
『平成29年度NHK全国短歌大会入選作品集』 43/50

おろかしく螺旋(らせん)階段焼けのこり雨の日赫(あか)く濡(ぬ)れて滴(しづく)す/中村正爾
『昭和萬葉集 巻七』 44/50

新しくせまる暴力をわが思ふ暴力は何時(いつ)にても理論を持てり/小暮政次
『昭和萬葉集 巻七』 45/50



【4】ネプリ、ネット部門

物分かりいいと女は幸せになれないらしい さんまが言ってた/檀可南子
ネットプリント「else」 46/50

ミュージックどうぞといって海で死ぬそういう者にわたしはなりたい/盛田志保子
47/50

暗闇に光る涙を描けるのに蛍光ペンに黒があったら/岡野大嗣
48/50

実際は皿ではないが軍人に言われてこれを皿にして喰う/内山佑樹
49/50

人に合わせてる自分が嫌いじゃないから多分私は自殺をしない/脇川飛鳥
50/50



以上です。

#2018上半期短歌大賞 50首 - Togetter
https://t.co/Zh0lUaC9lI
ここにもまとめてあります。


ではまた半年後。




▼▼▼



【こっちもおすすめ】
noteのほうでは、ブログでは読めない内容の記事をたくさんアップしています。



短歌連作とジェンガ
https://t.co/vssnyy5mrn

速報です
https://t.co/nbzpaCZ3OP

2018年5月のオレの短歌とその余談
https://note.mu/mk7911/n/n75bf05a79de6

未来賞をいただいて、いま書きたいこと
https://note.mu/mk7911/n/n0b1f389aea2f

第57回短歌研究新人賞候補作「仙台に雪が降る」全30首
https://note.mu/mk7911/n/n58e5f4337568




などなど、
500円ですべての記事(約100記事)が読めます。よろしければどうぞ。










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2016年07月09日

工藤吉生が選ぶ 2016年上半期短歌大賞 55首【4】ツイッター部門ほか

第5回ぬらっと!短歌大賞 ( #2016上半期短歌大賞 )
三つ目の「その他歌集歌書部門」のつづきからです。



このブログではコメントつきで紹介しますが、歌だけをまとめたものもあります。
#2016上半期短歌大賞 55首 - Togetterまとめ https://t.co/X60WvjAcKc
歌だけのまとめはこちら






ついに来ぬ人を待ちつつ待ち場所を少しずつ右にずらせてゆく/光栄堯夫『ゴドーそれから』
#2016上半期短歌大賞 38/55


ここから四首は黒瀬珂瀾さんの『街角の歌』から引きます。
全然聞いたこともないような知らない歌人の歌集のおもしろい歌が紹介されていて、刺激を受けました。
「→そのままどこへ行くのか。まさか帰ってしまうのか。いいや帰れないし、どこにも行けないだろう。会える確率はいよいよはてしなくゼロに近づいていく。
ベケットはオレも読んだ。」

と以前書きました。
舞台作品となると、いよいよどこにも行けなさが強くなりそうです。



駅前は自自自自自自公公社民民主主主主共恋人は来ない/大野道夫『冬ビア・ドロローサ』
#2016上半期短歌大賞 39/55

「→同じ字がつづくと楽しい。こどもかよって感じだけど。
「共」が「今日」みたい。平成12年の歌集だが、今とそれほど政党の勢力は変わってないような。」

と以前書きました。今でも同じことを書くと思います。



七階からみおろす午後の がらくたのあ のごみどもの 虫けら達の ああめちゃめちゃの東京の街
#2016上半期短歌大賞 40/55

「→七音ずつきっちりはみ出してくる。そして意味が重複している。こういう余らせ方もあるんだなあ。過剰さが憎しみを伝える。」
と少し前のオレが書いてます。



あ 雨の匂い 日暮れの舗装路を閑かに多数派が埋めていく/勝野かおり『Br 臭素』
#2016上半期短歌大賞 41/55

「31音だけど、上の句は一字空けの位置によってふつうじゃないリズムになる。一字空けの前後の母音が揃えられている。あ→雨、匂い→日暮れ。舗装路を→閑か、もそうか。
一字空けられていてもつながっているというか、自然な感じがする。」

と以前書きました。

「閑か」をオレは「のどか」と読んだからそう書いたんですが、「しずか」とも読むようです。これについてはYahoo!知恵袋に複数質問が上がっていてそれぞれいろんなことが言われています。

しずかでものどかでも、「多数派」のそれはいつか大きな声や行動に変貌しそうな予感がします。



ここからは『桜前線開架宣言』から5首引きます。これこそ2016上半期に読む本って感じです。

一枚の水つらぬきて跳ね上がるイルカをけふの憧れとせり/横山未来子
#2016上半期短歌大賞 42/55

→「水が「一枚」とされる。うすい壁のようだ。単位を変えると性質が変わる。
「けふの」と時間を限定されている。その短さもまたよい。明日には明日の憧れがあるだろう。」

と書きました。
「憧れ」って言葉が好きなんですよ。



なにもかもがゆめみたいだねー
そうかゆめか

それでがてんがいった

わかった
/今橋愛
#2016上半期短歌大賞 43/55

「→ここは夢か、それとも夢みたいな現実なのか。みるみるさめてゆく。
空いている行がこわい。こちらには何もないように見えても、きっとここで様々なことが考え合わされて結論が導かれている。」

と書きました。この作者のほかの歌もおもしろかったです。



焼けだされた兄妹みたいに渋谷まで歩く あなたの背中しか見ない/岡崎裕美子
#2016上半期短歌大賞 44/55

→渋谷への道なのに、焼け野原みたいです。物質ではない部分での飢えが東京の景色を消し去っているのでしょう。



お金の計算が好きなり桁繰り上がるたび胸はときめく/花山周子
#2016上半期短歌大賞 45/55

「→お金の歌がある。興奮したりときめいたりしている。それがいやらしくならないのはなんだろう。素直に表現しているからだろうか?」
と以前書きました。
字足らずが気になるところです。もしかして「桁」に五文字になる読み方があるのかと思いましたが、そんなことはありませんでした。
素直っていうのは例えば「好きなり」とか「胸はときめく」っていう気持ちの表現を指しています。



ではなく雪は燃えるもの・ハッピー・バースデイ・あなたも傘も似たようなもの/瀬戸夏子
#2016上半期短歌大賞 46/55

これを入れるのは迷いました。
「→「・」が三つある。「ハッピー・バースデイ」はわかるが、その前後にも「・」がある。結句から初句につながりそうで、そのあたりも形のさだまらないウネウネとしたものを感じる。ハッピー・バースデイが無限に繰り返されるような。」
と以前書きました。




さて最後は「ツイッター部門」です。
タイムラインに流れてきた短歌で良かったものはリツイートしたりなんらかの反応をして残しています。そのなかから9首選びました。


はじめからお菓子が撒いてある森で引き換えに兄妹のおもいで/安田直彦
#2016上半期短歌大賞 47/55

→ヘンゼルとグレーテルのあれですね。案内の立て札をたてるとかじゃなくて、お菓子を撒いておくというのがすごいですね。見た目は同じことでも、誤解がある。
便利とひきかえに思い出を失ったのでしょう。



外っすか ああ、なんかやってるんすよ いま なんだっけ、どっかの国の/はだし
#2016上半期短歌大賞 48/55

→この若い男性とみられる人物は、外の状況をきかれている。しかしなんにもわかってなくて曖昧なことしか言わない。
この曖昧模糊としたなかに不穏なものが感じられる。戦闘でもしているんじゃないか。そうだとしてもこの人物はいつも通りに過ごすのだろう。



ホームランバッターとエースピッチャーが教室にいる掃除の時間/シュンイチ
#2016上半期短歌大賞 49/55

よく「うたの日」の歌会が終わったあとに自作をツイートする方がいますが、そういうツイートから取りました。

「場によっては大活躍したりバチバチと勝負しあう二人が、自分たちとおなじように机を運んだり雑巾がけしている。掃除をしている時でも野球をしているときのまぶしい姿が見えている。
地味なことをしながら晴れの舞台を思っている、そういうもどかしさが懐かしい。授業を受けながら休み時間を待つとか、校庭をぐるぐる走りながら試合を待つとか、そういう忍耐がたくさんあった。」


と以前書きましたが、うーんこんなことが書きたいんじゃないぞと思いながら書いた記憶があります。
いろんな種類の才能や個性と一緒に過ごすというのも、学校生活のワクワクドキドキの一つだったのかなあ。



こんばんは「ODで死ぬには」というワードで検索して来たあなた/前田沙耶子
#2016上半期短歌大賞 50/55

→ブログの検索ワードを眺める趣味がオレにもありまして、よくわかります。検索ワードだけでも相手のことがわかったような気になることもあります。
ODという単語でつながった他人同士は、挨拶しあうこともなくそれぞれの精神で夜を過ごすのです。



何故生きる なんてたずねて欲しそうな戦力外の詩的なおまえ/陣崎草子「春戦争」
#2016上半期短歌大賞 51/55

→歌集の歌です。新鋭短歌シリーズのbotからです。
何故生きるのかたずねることもない、戦力になる詩的でない人間がこれを言っているのでしょうか。自分が言われているように思えてなんとも痛いです。



二十五階 おまえが飛んだ高さより高いところでおれは生きている/きよだまさき
#2016上半期短歌大賞 52/55

→うたよみんに投稿された歌で、「死を笑え短歌コンテスト」の入選作です。
生きることの厳しさがにじみ出ています。亡くなった「おまえ」を思いながらも「おれは生きている」。



茶と水を混ぜて飲みます…… ウワッ薄っ……水と水でも試してみます……/わなざわ
#2016上半期短歌大賞 53/55

→なんとも言えないです。いつか美味しい組み合わせに到達してほしいですね。



個包装クッキー砕け散っているどこもなんにも汚すことなく/若草のみち
#2016上半期短歌大賞 54/55

→クッキーをつい人間に置き換えて読みたくなります。部屋で餓死していたけどしばらく誰にも気づかれない事例であるとかを考えます。



「我」という文字そっと見よ 滅裂に線が飛び交うその滅裂を/大井学『サンクチュアリ』
#2016上半期短歌大賞 55/55

→文字の形に注目した歌です。「そっと見よ」がおもしろいと思いました。見てはいけないところを覗くようです。



以上がツイッター部門であります。
これで第5回ぬらっと!短歌大賞を終わります。ありがとうございました。

次回またお会いしましょう。


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2016年07月08日

工藤吉生が選ぶ 2016年上半期短歌大賞 55首【3】その他歌集歌書部門

第5回ぬらっと!短歌大賞 ( #2016上半期短歌大賞 )
三つ目の部門は「その他歌集歌書部門」です。
「その他歌集歌書」といってもいろいろありますが、この半年に読んだものを大きく分けるとおおよそ
▽月刊ではないが定期的な雑誌、作品集▽個人の歌集▽アンソロジー、の三つになります。

このブログではコメントつきで紹介しますが、歌だけをまとめたものもあります。
#2016上半期短歌大賞 55首 - Togetterまとめ https://t.co/X60WvjAcKc
歌だけのまとめはこちら






帰りきし妻の買物袋にはわれの食べたき蜜柑はあらず/志垣澄幸「生きる」
梁 90号
#2016上半期短歌大賞 26/55


「梁」は伊藤一彦さんらの「現代短歌・南の会」というところが出している本。結社誌みたいな体裁をしている。
「→かわいい。子供みたい。」
と以前書いてます。それに尽きます。



もう誰も信じられなくなった夜もどこかで広がるオーロラがある/ニキタ・フユ「夜の約束」
うたつかい 2016年冬号
#2016上半期短歌大賞 27/55

「梁」を説明した関係でこちらもあらためて言うと、
「うたつかい」は季節ごとに発行される数十ページのzine(ジン)であります。百数十人が5首詠やテーマ詠に参加しています。
「→そうか、オーロラってそういうものかもしれな
いなと思いました。つまり、誰も信じられなくなることとの対にあるようなもの。オーロラがこの人に届いてほしい。」

って以前書きました。



<木星>(ジュピター)の名をもつサンプリングマシン 父を断ち切る音をください/正岡豊
#2016上半期短歌大賞 28/55

岡大短歌4で見つけたのでここに入っています。たぶん一昨日も書きましたが、古い歌でもこの半年に印象に残れば対象になります。
今日読んだネットプリントのこともありますし、正岡さんは今気になる歌人の一人ってことになりますね。



補聴器を外しゐたれば亡き妻の今はの言葉聞きもらしけり/山口啓輔
平成27年度 NHK全国短歌大会入選作品集
#2016上半期短歌大賞 29/55

「→これは何度も思い出している歌。そんな悲しい事があっていいのかと。」
と以前書きました。オレの中では、思い出す歌はいい歌、ということになっています。



おれはおれの、おまえはおまえの喪に服す 切符を裏返しにいれてみる/洞田明子『洞田』
#2016上半期短歌大賞 30/55

名義は洞田明子ですが、この歌の作者は濱田友郎さんです。

ほかにもおもしろい歌がありまして、迷いました。
どうしても一首単位で見てしまうんですよねえ。もっと違うところにこの本の持ち味はあるのかもしれませんが。



夕なぎさ子牛に乳をのませ居る牛の額のかがやけるかも/古泉千樫『川のほとり』
#2016上半期短歌大賞 31/55


以前から、「筑摩現代文学大系68 現代歌集」という本を少しずつ読んでいて、結局まだ読み終わってません。十数人の歌集を一冊ずつ収録した本です。
そこから今回は三首選びました。


大(おほ)きなる声ひとつだに挙(あ)げずして心さみしき秋は過ぎにき/中村憲吉『しがらみ』
#2016上半期短歌大賞 32/55

「→大声をあげないことを言ったことで、声がきこえてくるということがある。秋に大きい声をだして、それでさみしさがどうなるのだろう。叫びたい思いが内側にあるのか、などと想像する。」
と以前書いています。
んん。どうでしょうねえ。言葉にならないさみしさを感じとりたい歌かなと今は思います。


金輪際(こんりんざい)なくなれる子を声かぎりこの世のものの呼びにけるかな/木下利玄『紅玉』
#2016上半期短歌大賞 33/55

→「声かぎり」ではあるがOの音が全体をつらぬいていて、低いトーンの一首だ。
「金輪際」という言葉は、強い拒否、否定が感じられる言葉だ。生と死のあいだに大きな隔たりがある。
(以前書いたのをちょっと書き替えました。)


水平線に向けて出航してやがて背後に現れる水平線/池田行謙『たどり着けない地平線』
#2016上半期短歌大賞 34/55


うってかわって現代の歌集からです。全体的にはのれない歌集でしたが、いくつかいい歌がありました。
「→経験はしてないけど、考えてみると、それはそうなるだろうなと思う。水平線にもてあそばれて、自分がどこにいるのかわからなくなるようだ。」
と以前書きました。


この雨の奥にも海はあるだろう きっとあなたは寝坊などして/千種創一『砂丘律』
#2016上半期短歌大賞 35/55

「さっき連作という単位で読まないって書いたばっかりだけど、この「終りの塩」はよかった。たぶんこれ初めて読んだ。」
と以前書きました。
いい歌が多いんです。あんまり有名な歌を今さら選びたくないのと、ほんとに好きなのを選びたいという気持ちがぶつかってこういう選択になりました。


引き潮の渚で拾ってしまったのあなたの部屋の窓の破片を/鈴木美紀子
穂村弘『短歌ください 君の抜け殻篇』
#2016上半期短歌大賞 36/55

→これについてはオレはなにも言わなかったんです。穂村さんのコメントを見たらオレが書くことはないなと思って。それは今見直してみてもそうです。


欠席のはずの佐藤が校庭を横切っている何か背負って/木下龍也
穂村弘『短歌ください 君の抜け殻篇』
#2016上半期短歌大賞 37/55

これは逆にいろいろ書きたくなったのでした。
「→こういうこと、あったなあと思う。思うけど、幻みたいな光景だとも思う。
「何か」は気になるね。カバンじゃないみたいだし。「佐藤」という名前がはっきりしてるけど、具体的なようで、どこにでもある名字で、なんの情報も含まれていない。名前があるのに匿名的なのだ。
校庭を横切るのも変なルートだよねえ。学校にもよるかもしれないが、普通に登下校するなら校庭を横切ったりするかなあ。
佐藤はどこから来てどこへゆくのか。ほんとに佐藤なのかも不安になってくる。影を背負った幽霊的なものじゃないのか。」

と以前書きました。



まだ続きます。次回で終わります。


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2016年07月06日

工藤吉生が選ぶ 2016年上半期短歌大賞 55首【2】結社誌部門

2016年上半期のおもしろかった短歌をオレが独断と偏見で選ぶ、第5回ぬらっと!短歌大賞。( #2016上半期短歌大賞 )
四部門のうちの二つ目、結社誌部門をご紹介してまいります。


このブログではコメントつきで紹介しますが、歌だけをまとめたものもあります。
#2016上半期短歌大賞 55首 - Togetterまとめ https://t.co/X60WvjAcKc
歌だけのまとめはこちら



長い間よくしてくれてありがとうと言われて君はさみしい息子/岩尾淳子
未来 2015年12月号
#2016上半期短歌大賞 14/55

→2015年の本ですが、いつの本であってもオレが2016年上半期に読めばこの賞の対象であります。
「→親が子にかけるものをなんと言うべきだろう。
「よく」する、とは他人行儀な言葉だ。」

と以前書きました。


早朝の稲垣吾郎はぎこちなく(今日の天気は)(雨)(のち)(くもり)/鈴木麦太朗
未来 2015年12月号
#2016上半期短歌大賞 15/55

「→カッコに入れただけで稲垣吾郎の声になる。ふしぎ!」
と以前書きました。丸括弧/パーレンに入れると言葉がささやきのようになる効果があります。一息に言わず何度も区切られているのがぎこちなさなのでしょう。


直角に頭を下げて二分経つ次は膝つくほかなき謝罪/井元乙仁
未来 2016年1月号
#2016上半期短歌大賞 16/55

一月号ですが、十月号の評のページなのでこれも2015年の歌です。
「→佐伯裕子さんの欄でオレが特に注目しているのがこの方。
謝罪してもゆるされないつらさがピリピリとつたわる。」

と以前書きました。
なんと長い二分でしょうか。


ぼうりょくの上手なひとだかなしげに鍵束に似た楽器を抱いて/氏橋奈津子
未来 2016年1月号
#2016上半期短歌大賞 17/55

「→鍵束はいろいろに見ることができて、暴力ということならば監禁のための鍵のようにも見れる。「かなしげ」に「抱いて」いる顔つき手つき、つまり暴力を暴力っぽく見せないのがぼうりょくの「上手」さなのかな。」
などと一月のオレが書いてました。


この学校の先生たちは優しいと言ふ生徒ひとり水際にゐる/野田オリカ
未来 2016年2月号
#2016上半期短歌大賞 18/55

この方はいまは違う名前で発表してらっしゃるようですが、この時のお名前のままとしました。
「→印象的な一連だった。生徒と教師の関係のむず
かしさを言っているんだと読んだ。」

と以前書きました。水際にいるだけで、飛び込んでしまいそうな危うさがあります。


チョークもて路面に描いたオムレツを食はされてをり柴犬のりん/桑田靖之
未来 2016年2月号
#2016上半期短歌大賞 19/55

「犬の種類(柴犬)とか名前(りん)とか、
路面のオムレツと直接は無関係な情報が生きている。」
って書いてます。
子供と犬の関係が楽しそうでいいですねえ。


冷凍の炊き込みご飯をもどし食ふ妻手作りの最後の味に/矢野正二郎
塔 2015年12月号
#2016上半期短歌大賞 20/55

→以前のオレはこれに対してなにを書いたんだろうと思って確認したら、コメントしてませんでした。
昨日は車イスの老人の歌に何も言えませんでしたが、こういう内容にはなんとも言えません。


ひとを抱くようにあなたは陽光を抱いたカーテンまとめるときに/坂井ユリ
塔 2016年1月号
#2016上半期短歌大賞 21/55

「→かすかな嫉妬があるのか、美しいと思って見ているのか。
二人で一夜を明かした朝の部屋のカーテンだと思いこんでたけど、別にそうじゃなくても読めるな。」

と以前書きました。


これくらい大きかったと広げたる手をだんだんとすぼめるあなた/村松建彦
塔 2016年3月号
#2016上半期短歌大賞 22/55

「→驚きを伝えようとしたが、時間を経て冷静になってきたのか。こういうことはある。
何が大きかったのかわからないのもまたよい。」

と以前書きました。記憶の変化が広げた手の幅の変化に現れているのがおもしろいです。見えないものが見えるおもしろさ。


人にながき子供の時代「どこからでもかかつて来い」が舌につかへて/朝井さとる
塔 2016年4月号
#2016上半期短歌大賞 23/55

「→「どこからでもかかつて来い」は正義の味方が言いそうなセリフだ。かっこいいことを言いたくてこういうのを真似するんだけど、言い慣れないもんだからうまく言えない。
「人にながき子供の時代」は、大人になってからも記憶のなかで長く子供時代の出来事が繰り返されるということだと読んだ。」



弟とひとつを取り合いせしころの天のかみさまのいうとおり/山下裕美
塔 2016年5月号
#2016上半期短歌大賞 24/55

「→子どもの頃にしかやらないような物の取り合いやケンカがある。その一方で子どもの頃にしかない純粋さもある。
どちらもひっくるめて、しみじみする。」

と以前書きました。子供時代を振り返った歌が続きましたが、そのへんにオレのツボがありそうです。


無神経 泣きそうで目が開かなくてとうてい分からない花の唄/恋をしている「ひかりのくに」
なんたる星 2016年1月号
#2016上半期短歌大賞 25/55


→いやよくわかんないんですよ。目をあけると泣きそうだから開かないのか、もっと違う理由で開かないのか。分からないのは見えないから分からないのか。
でもこの連作全体がそうなんですが、ひかりにあふれていて、なにか強く感じるものがありました。
泣きそうな気持ちがあって、開かない目があって、花があって唄があってわからなさがあって。
それって、生まれてくる時とか、幸せに死ぬ時なんじゃないかなあ、と思いました。」

などと、以前長く書きました。
生まれた時か、死ぬ時か。泣きそうで唄が聞こえるのだから、前者の状況でしょうか。



「結社誌部門」はここまでです。次は、「その他歌集歌書部門」です。


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2016年07月05日

工藤吉生が選ぶ 2016年上半期短歌大賞 55首【1】総合誌部門

今年も半分が終わりました。
第5回ぬらっと!短歌大賞 #2016上半期短歌大賞 を発表いたします。
今年の1月から6月に読んだ全ての短歌のなかから特に心を動かされた55首を選びました。

このブログではコメントつきで紹介しますが、歌だけをまとめたものもあります。
#2016上半期短歌大賞 55首 - Togetterまとめ https://t.co/X60WvjAcKc
歌だけのまとめはこちら。



ではいつも通り、総合誌(+NHK短歌)部門、結社誌部門、その他歌集歌書部門、ツイッター部門の四つに分けて紹介していきます。

「総合誌」は、短歌研究は毎月読んでいて、その他は読んだり読まなかったりしています。
「結社誌」は塔と未来となんたる星を読んでます。
「その他歌集歌書」は実にいろいろですが、今回は『桜前線開架宣言』の存在が大きかったです。
「ツイッター部門」はタイムラインで知った短歌が対象です。

これまでですと半年に1500首程度をツイートしていてそこから選んでるんですが、たぶん今回はそれより少なくなっています。1000首あるかどうかというくらいでしょうか。



津波にて海ただよひし裸婦像がホールに立てり傷跡ふかく/岡田紘子
角川短歌年鑑平成28年版
#2016上半期短歌大賞 1/55

→短歌年鑑のなかにさまざまなコンテスト、大会の大賞作品が載っているページがあって、そこで見た歌です。
裸で海をさまよい、傷を負いながらも再び立っている像。希望のようでもあり、痛ましいようでもあります。


「オモチカエリデスカ」「ピッ」と言ひつつ幼子は吾の背中に何か押し当つ/花山多佳子
角川短歌年鑑 平成28年版
#2016上半期短歌大賞 2/55

「→背中だから、何を押し当てられたのかよくわからない。
楽しいごっこ遊びでもあり、自分がお持ち帰りの商品として機械で処理されたようでもある。孫歌でありながら、現代の不安も映し出した、すごい歌だ。」

と以前書きました。
これは角川短歌年鑑の「作品点描」というのに載っていた歌です。歌人ごとに一年の活動を振り返るページです。
ですので、2015年の歌ということになりますね。


匍匐前進しつつ迫りてゆくさまをもしよかつたら見せてやらうか/関広範『いちぜんめし』
短歌研究 2016年1月号
#2016上半期短歌大賞 3/55

「→戦争を記録する品物やエピソードがあるが、このように動きでもって示すことのできる人がいるのだ。
こんなこと言われても「ではぜひ見せてください」なんて言えないだろう。新聞テレビの取材だったら言うかな。大正十一年生まれとある。」

と以前書きました。

「もしよかつたら」は、見たくなければ無理にとはいわないが……という配慮でしょうが、こちらが選択しなければいけないということでもありますね。見たら見たでどうすればいいんでしょう。「すごいですね」とか言えばいいんでしょうか。
体験を語り継ぐということの難しい部分があらわれているのではないでしょうか。


君の見る走馬燈の中にわたくしの一発ギャグがあれば良いのだ/川島結佳子「あれば良いのだ」
短歌研究 2016年2月号
#2016上半期短歌大賞 4/55

→去年の短歌研究新人賞次席の「感傷ストーブ」はオレにはそこまでではなかったんですが、それ以後は何かと引っかかる歌が多くて、今では気になる歌人の一人であります。
走馬燈に一発ギャグを見て、フッ……と笑いながら死ねたらいいでしょうね。


歌うたふ老人たちの最後尾に妻をり車椅子に頭(かうべ)を垂れて/杜澤光一郎「映画 他」
短歌研究 2016年4月号
#2016上半期短歌大賞 5/55

→前にツイートしたときには何も言わなかった歌ですが、今回も何とも言えません。わびしい。


待ち合わせもろくにできない 茄子がまずい 君に会いたい 茄子が食えない/石井僚一「おまえの声じゃねーと寝れねーんだよ」
短歌研究 2016年5月号
#2016上半期短歌大賞 6/55

「→茄子はあんまり人を待ちながら食べるものじゃない。茄子を食べながら君にも会おうとしていると読むときびしい。待ち合わせに失敗して茄子を食ってると読めなくもないが。
二つの場面が交互に切り替わる。関わりなさそうで、しかしなんだかどちらも苦しんでいる。根底には似たものがありそうだな。
あるいは夢の中だったりするのか。「寝れねー」結果、悪夢を見ていると。
ナスを「茄子」と漢字表記にするとちょっと人名っぽいことを思った。」
と以前書きました。

君と茄子が交互に出てくる場面転換が、何度読んでも面白いです。


疎開した綾町(あやちよう)を母は絵に描(か)きぬうすやみのなか低き井戸あり/吉川宏志「鳥ふたつ」
角川「短歌」 2016年1月号
#2016上半期短歌大賞 7/55

「→うすやみと低い井戸。なんだかおそろしい。戦争、疎開といったことがこの「うすやみ」を作り出したようにも感じられた。
調べると宮崎県のようだ。」

と以前書きました。


掃除機のコードひつぱり出す途中にてむなしくなりぬああ生きて何せむ/小池光『思川の岸辺』
#2016上半期短歌大賞 8/55

「→コードがのびているのを反映してか、字数も増えている。むなしさはふいにやってくる。これから掃除するぞという動作のときにもくる。」
と以前書きました。
歌集の歌ですが、角川「短歌」一月号で最初に見つけたので総合誌部門に入れました。
「ああ」は無いほうがおさまりが良さそうですけども。でも、そこが大切なんでしょうね。くたびれてしまって、四句から結句へ行く間に一息ついているみたいです。


沈んだところのふたつてまへまではみづ切りの石もその気だつた/平井弘「キスケ」
角川「短歌」2016年5月号
#2016上半期短歌大賞 9/55

「→その気だった石が、二回跳ねるあいだにみるみる勢いを失って沈んでしまった。
人もみるみる衰えて亡くなったり、挫折してしまうことがあると思うと、ふいに来る失速がこわくなる。」

と以前書きました。
「その気」の石の気を削いで失速させ沈ませてしまう何者かの巨大さを感じる、こわい歌だなあという感想です。


この星の破片をあなたは手に取つていま水切りの体勢に入る/飯田彩乃「微笑みに似る」
歌壇 2016年2月号
#2016上半期短歌大賞 10/55

水切りの歌が続きました。
「→そのへんの河原の石も、星の破片なんだね。宇宙からの視点がある。
水切りの体勢に入る、その瞬間のさまが描かれる。投げられた石でも水面でもない。見ているところがいい。
星というはるかな規模から、すごく細かいところへ自在に展開する。」

と以前書きました。


水鏡あて先のない花束を両手のゆびであたためている/西藤定「夏天(Xiatian)」
歌壇 2016年2月号
#2016上半期短歌大賞 11/55

「→なんてせつない歌かと思ったね。
花束って相手あってのものだから、相手がいないとほんとにどうにもならない。
ゆびであたためるという細部に実感がある。ゆっくりしずかに花がダメになっていくのだ。「恋に恋する」ってこんな感じかなあ。」

と以前書きました。

歌壇賞から二首選びましたが、上半期は歌壇賞がひとつの山です。下半期になると短歌研究新人賞や角川短歌賞があります。新人賞作品を見ると興奮します。


しろたへのチョーク一本取り出して竹と大きく黒板に書く/本田一弘
現代短歌 2016年4月号
#2016上半期短歌大賞 12/55

「→作品時評から。「一読して「竹」でなければならぬと心より思った」とさいとうなおこさんの評。オレもそう思う。この「竹」の説得力はなんだろう。」
って以前書いてました。

ピッタリくる確信みたいなものがありながら、しかし何故これなのかがよくわからない、そういうところがとても面白いです。わからなさが好き、ということがあります。


ファンファーレ響け深紅の緞帳(どんちょう)よ開け私の初恋はいま/玉川萌
NHK短歌テキスト 2016年6月号
#2016上半期短歌大賞 13/55

→「初恋」二席。
「いかにも輝かしい。引き込まれる。初恋っていいな。なんかうらやましい。」
と、つい最近書きました。堂々と主人公として生きることができるのがまぶしいです。

オレのときはもっと、やましいような戸惑うような気持ちだった気がするなあ。噂を怖がったり、失敗を恐れたりして。


ここまでが、総合誌(+NHK短歌テキスト)部門です。
次は結社誌部門です。
第5回ぬらっと!短歌大賞、まだまだ続きます。


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2016年03月18日

わたしの好きな短歌100・2016年版【3】66~100 《もしかしたら選んでいた歌》付き

わたしの好きな短歌100・2016年版【1】1~30 《もしかしたら選んでいた歌》付き : http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52161359.html

わたしの好きな短歌100・2016年版【2】31~65 《もしかしたら選んでいた歌》付き : http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52161427.html

のつづき。



▼歌だけ見たい方はこちら。
工藤吉生の「わたしの好きな短歌100」
【2013年版】 http://t.co/bQ97LV4YWA
【2016年版】 https://t.co/gmubYuY1jN




〈66〉
退屈に歌えるもんか ひとがきて黙ったりして坂道をいく/とびやま
→初めて参加したコンテストで見た歌で、印象が強い。オレは歌いながら歩いていたことがある。



〈67〉
ガンダーラ その音程でがんばれと心の中で歌いだすとき/戸村凡
→おもしろいと思うんだがなあ。ツイートしても反響のない歌。がんばれと思っているのかいないのかよくわからないのが面白い。


〈68〉
リリィ、リリィ ビキニ力士に意味必死 ビキニ力士に意味必死/ナイス害



〈69〉
パーマでもかけないとやってらんないよみたいのもありますよ 1円/永井祐
→総合誌で内山晶太さんが
君に会いたい君に会いたい 雪の道 聖書はいくらぐらいだろうか/永井祐
という歌について
「一瞬で視野におさまる短歌という詩型に三つの瞬間
入れたとき、三つの瞬間は、一瞬となって重なりあう。脈絡のない各瞬間が、「一瞬」として脈絡を持ったとき、それは何かしらのバグのように見える」

と書いておられて、なるほどと思った。
この一円の歌にもそういうことが言えるだろう。



〈70〉
あはれしづかな東洋の春ガリレオの望遠鏡にはなびらながれ/永井陽子
→2013年に100首選んだときに、「あっ、入れ忘れた」と思った歌。ガリレオと東洋、望遠鏡と地球の花びら。ふしぎな距離感だ。



〈71〉
一瞬のノイズにも受信者たちの意味探しゲームは始まっている/中澤系

〈72〉
小さめにきざんでおいてくれないか口を大きく開ける気はない/中澤系
→前回も中澤さんは二首だったが、〈72〉は今回初めて入れた。よく思い出す歌を優先させている。

《前回選んだ歌》
知る? きみは少し先回りしたあと後ろ向きでそれを見ただけだ/中澤系



〈73〉
あの胸が岬のように遠かった。畜生! いつまでおれの少年/永田和宏
→畜生! のいらだちは何度見ても若々しくていいな。


〈74〉
自転車で君を家まで送ってた どこでもドアがなくてよかった/仁尾智
→短歌を始めるきっかけになった歌。弟の夏休みの宿題を見てやっていたらこの歌を見つけて、そこから短歌を始めたと、オレはことあるごとに言っている。


〈75〉
かたむいているような気がする国道をしんしんとひとりひとりで歩く/早坂類


〈76〉
向こうから おるょ と声がしてからは一度も開けていないカーテン/はだし

《もしかしたら選んでいた歌》
流氷のひとつにバームクーヘンが山盛り ですがここでお時間/はだし


〈77〉
豚の交尾終わるまで見て戻り来し我に成人通知来ている/浜田康敬
→好きな歌人なのに前回入れてなかった。これは有名だから別のにしようとしたが、結局これになった。

《もしかしたら選んでいた歌》
マスクの先軽くつまんで風邪気味の味疎き口にガムねじり込む/浜田康敬


〈78〉
好きだった世界をみんな連れてゆくあなたのカヌー燃えるみずうみ/東直子
→初めて見た時はそうでもなかったのに、読むほど印象の強まっていった歌。それまでは桃の皮の歌がだんぜん一番だった。一読して迫ってくるものがあった。

《前回選んだ歌》
廃村を告げる活字に桃の皮ふれればにじみゆくばかり 来て/東直子


〈79〉
ファミコンに飽きて臀部に触りくる夫の顎をほどほどに撫ず/広坂早苗


〈80〉
ハーブティーにハーブ煮えつつ春の夜の嘘つきはどらえもんのはじまり/穂村弘


〈81〉
信じないことを学んだうすのろが自転車洗う夜の噴水/穂村弘
→上の句だけで、他人事ではないなと思った。下の句はなんだろう。
「自転車」は、車を持たない程度の能力や収入か。
「夜」なのは昼夜逆転生活をしてるのか、人の目が怖いのか。
「噴水」なのは、水道代を少しでも節約しようというケチな気持ちの表れか。


〈82〉
解放せよ、タンバリンを飾る鈴。解放せよ、果たされぬ約束。/穂村弘
→手紙魔まみの歌のなかで、特にまみの強い気持ちがこもっている歌だと感じたから選んだ。タンバリンがタリバンを思わせたりもする。

穂村さんは前回につづき三首選んだが、どらえもん以外の二首は変えた。

《前回選んだ歌》
サバンナの象のうんこよ聞いてくれだるいせつないこわいさみしい/穂村弘
→これはそろそろもういいかなと。見すぎて衝撃がなくなってしまった。

バットマン交通事故死同乗者ロビン永久記憶喪失/穂村弘



〈83〉
不安でたまらないわれの背後(うしろ)からおもたい靴音がいつまでもする/前川佐美雄

《もしかしたら選んでいた歌》
どんな血を浴(あび)ればわれのなぐさむか狂ほしく若葉の杜(もり)歩きつつ/前川佐美雄



〈84〉
吉原の太鼓聞えて更くる夜にひとり俳句を分類すわれは/正岡子規
→東京や大阪のイベントの盛り上がりをツイッターで見るたびに、東北のオレはこれを思い出す。


〈85〉
屈みこみヘッドライトで読む手紙 待って 読んだら返したいから/増田静


〈86〉
気づくとは傷つくことだ 刺青のごとく言葉を胸に刻んで/枡野浩一

〈87〉
だれからも愛されないということの自由気ままを誇りつつ咲け/枡野浩一

〈88〉
さようなら さよなら さらば そうならば そうしなければならないならば/枡野浩一


〈89〉
雨の日の貯水タンクの背にきみもバモイドオキの神を見たのか/虫武一俊
→新しい歌も発表もしてるのに、古い歌ばかり何度も持ち出して申し訳ない。
でもこれほんとに好き。バモイドオキ、だけでぐっとくるんだが、それ以外もいい。
「きみも」ということは、バモイドオキは少年一人だけのものではなかったのだ。ありふれた景色のなかにそれは居るのだ。
雨と貯水タンク。どちらも水だ。人体の七割は水だとかいうくらい人間に係わりの深い水のなかに、こうしたものがあらわれるのだ。決してバモイドオキは突然変異の異常な妄想やたわごとではないと思わせる。オレやあなたの町にいるかもしれない。
便利だからあまり使いたくなかった言葉で言うなら「生々しい」「立ち上がってくる」歌だ。


〈90〉
遠くから手を振ったんだ笑ったんだ 涙に色がなくてよかった/柳澤真実


〈92〉
死にさうな少女に死にさうな紳士がシルクハットのなかから花を/藪内亮輔
→最初に取り上げたとき、オレはS音に着目したのだった。雨の多い連作で、S音の効果もあり、この歌には直接書かれていなくても雨が降っているように感じられるのだと。
「塔」で藪内さんが自選一首にこれを挙げていたのも印象に残っている。


83から92まで前回と変わってない。


〈93〉
「天国に行くよ」と兄が猫に言う 無職は本当に黙ってて/山川藍
→いらだちの表現が魅力的だ。もっと読んでみたい。

《前回選んだ歌》
もう好きじゃないなと言えばじゃあ嫌いなのかと聞いてくる人滅べ/山川藍


〈94〉
いつまでも転んでいるといつまでもそのまま転んで暮らしたくなる/山崎方代


〈95〉
諦めろ無駄だ止めろと声がする何故だか俺の声に似ている/山本左足
→前回はスーパーボールの歌だったが、くよくよした歌が多い方なのでそちらから選んだ。
他人の声か自分の声かわからないようなものに心を支配されている。

《前回選んだ歌》
楽しくて役に立たないものがいい例えばスーパーボールのような/山本左足


〈96〉
逢えばくるうこころ逢わなければくるうこころ愛に友だちはいない/雪舟えま
→るるるっと、の歌も印象的だったんだけど、こういうところでは真面目な歌が強くなる。

《もしかしたら選んでいた歌》
るるるっとおちんちんから顔離す 火星の一軒家に雨がふる/雪舟えま


〈97〉
兄さんと製造番号2つちがい 抱かれて死ぬんだあったかいんだ/吉岡太朗
→実はツイッターで見かけただけの歌なので、おそるおそるの気持ちがある。ちゃんと前後がわかる形でいつか読みたい。


〈98〉
秋の雲「ふわ」と数えることにする 一ふわ二ふわ三ふわの雲/吉川宏志
→前回は911についての歌を挙げた。近藤芳美のところで書いたけど、さりげない歌のほうが響いてくることが時々ある。

《前回選んだ歌》
巻き戻しボタンを押せば飛行機はビル内部より吐き出されたる/吉川宏志



〈99〉
ひたすらにドレミの歌を繰り返す サンドバッグを蹴り上げながら/龍翔


〈100〉
けふもまたこころの鉦をうち鳴しうち鳴らしつつあくがれて行く/若山牧水




以上です。
次回は2020年くらいかなあ。生きていれば。オリンピックの年にやる、とかでもいいな。

んじゃまた。


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mk7911 at 10:29|PermalinkComments(0)