うたつかい

2019年04月30日

小川佳世子さんの「「うたつかい」という場について」を読んで

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現代短歌文庫(砂子屋書房)の『小川佳世子歌集』で「「うたつかい」という場について」という文章を読む機会があった。思ったことを書く。




はじめのほうで「うたつかい」についての紹介があって、それはいいんだけど途中から「違和感」の話になる。

「2.ぬぐえない違和感」は三つの段落からなる。
第一段落で正直なことを書かねばと言い、
第二段落で自分が短歌を作り始めたときの話をして、
かと思うと第三段落で《編集長はえらい》などと言ってからコピー「うたを読みたい、うたを詠みたい」とタイトル「うたつかい」を批判する。

うたつかいの「うたを読みたい、うたを詠みたい」というコピーについて
《あまりにも軽く感じられた。誰でもすぐ「うた」は読めるし、詠めるものであるのか、と》
と小川さんは言うけど、誰でもすぐ読める/詠めるなんてどこにも書いてないじゃないか。書かれてないものを批判している。

小川さんは「うたつかい」というタイトルを《生意気なのではないか》と言っている。
《「うた」をあたかも「魔法使いのように軽く使いこなしてしまうように思えた》からなのだそうだ。
「うたつかい」からはオレも「魔法使い」を連想した。それっていうのは、「うた」は「魔法」みたいに不思議で素敵ってことなんじゃないかなあ。「つかい」を「利用」の意味ととれば生意気かもしれないね。
でも、生意気ってマイナスなことかなあ。生意気といわれるのを恐れていたら、なにも新しいことなんてできないよ。
これを読む感じだと、小川さんには一生懸命が善で生意気が悪なのか。正しいんだろうけど、退屈な話だなあ。



「うた」がどのような歌のことを指すのかわからないと書いてあるけど、ページをめくればわかることだ。みんなが一つのものを目指しているわけではないと。



小川さんは牛隆佑さんの文章を引いて
《短歌の世界はヒエラルキーが主であったのだろうか? そうであっても、それはいけないことなのだろうか。》
って書いてるけど、こういうこと書かれると信用できなくなるよ。申し訳ないけど。
ヒエラルキーが主かどうかの話から、いけないかどうかの話にスキップしちゃってる。いけないなんてうたつかいで誰も言ってないじゃん。またこの論法だ。

賞の受賞者の作品を優先して引き、
《岡井先生に習っていこうと決心》し、
タイトルやコピーが一生懸命じゃなくて軽いから生意気っていう「違和感」を表明する。
そんな小川さんから、短歌の世界のヒエラルキーをビンビンに感じますよオレは。



《選歌や、評を受けて、少しでも良い歌を作れるようになりたい、そうは思わないのだろうか。》
思わない人もいますよ。いろんなひとがいるんですよ。


《投稿した歌がただ並んでいるということは、選歌のないツイ
ッターの歌がそのまま紙媒体に載ったというだけのことではないだろうか。》

その「だけのこと」が大きいんですよ。
縦書き横書きの違いもある。タイトルをつけて五首という制限もある。一番ちがうのは、ツイッターとは読む人がちがうこと。フォロワーじゃない人も読むわけだから。
「だけのこと」のなかに(すぐ思いつくものだけでも)これだけの違いがある。


「うたつかい」に前号評が載らないのはたしかで、それは特徴と言えるわけだけど、だからといって評を拒否しているわけではない。毎号さいごのページにあるように、ハッシュタグを使って感想を書くことが推奨されている。そういうのも読んで理解してから論じてほしい。
ハッシュタグとか言ってもわからないかもしれないけど。

《「うたつかい」に批評はない》とそのあとも何度か書かれるけど、間違いなので指摘しておく。誌面に出ないだけだ。
オレはかなり前からこのブログに「うたつかい」について書き続けているんだよ。それが無いことにされたらムッとするよ。



《ヒエラルキーをなくそうとしている「うたつかい」が受賞者を多く出しているのは皮肉なのだろうか》
は腹が立つ一文だ。なくそうとしているなんて誰も言ってない。
オレはうたつかいを第4号から全部読んでるけどそんなこと書かれてなかった。

《ヒエラルキーが「うたつかい」にはないと牛は述べている》
ってあるけど、2015秋号の牛さんの文章を読みなおしてもそんなこと書かれてなかった。
牛さんは慎重に言葉を選んで書いたのであって、その慎重さを剥ぎ取ったら別のものだ。小川さんは「ヒエラルキー」にずいぶん強く反応している。

ヒエラルキーが主ではないことと、
ヒエラルキーがないことと、
ヒエラルキーをなくそうとしていること。
これらをイコールで結ぶのは無理というものだ。こういうことをしてると読者の信用をなくしてしまうよ。読者っていうか、オレの信用は。

小川さんの言う通りなら、ヒエラルキーがない場所には誰も文章を書いちゃいけない、短歌を引いて紹介しちゃいけないってことになる。めちゃくちゃだ。
そのあと「いや、思い直してみると」って意見を変えて、ぐらぐらしている。「いや」ではわからないよ。

なぜか賞のことをしつこく言ってくるけど、うたつかいとは関係ないと思うよ。ちがうものをくっつけようとしてがんばったってくっつかない、ということをやっているのがこの文章だ。
その「皮肉」によって小川さんが賞をヒエラルキーととらえていることはよくわかった。


さまざまな場所があって、歌人は柔軟に行き来しているのですよ。
うたつかいを結社と両立させている人もいれば、雑誌や新聞への投稿と両立させている人もいれば、賞への取り組みと両立させている人もいる。同人誌、ネットプリント、ツイキャス、ネット歌会、その他さまざまな場所があって「うたつかい」もある。そのなかで自由に歌人は活動しているんですよ。




そのあと新鋭歌人シリーズについて書いてあって、なぜかそこから「うたつかい」に肯定的になって閉じていく。「いろいろ考えていくうちに」とあるけど、小川さんの頭の中でなにが起きてこうなったのかはわからない。短歌の場の形成に関わっているからOKってこと?

よく調べて、
正確に引用して、
読者がついていけるように順序だてて書いてほしいものだ。



小川さんのこの文章に対するリアクションをツイート検索して見たけど、『うたつかい』を取り上げてもらえてよかったというのが大半のようだ。それ以外のところが書かれてないようなので書きました。

うたつかいの皆さんに伝えたいことなのであれば『短歌往来』や『現代短歌文庫』に書くことはないわけだけど、短歌往来や現代短歌文庫の読者にはどう届くのだろう。


好意はわかるんだけど、それでもちょっと信用はできないです。文のなかの数字に間違いがあるという指摘も聞きました。
空回り、というのはこういうことなんでしょう。好意で車輪を回してるんだけど、車輪が地面についてないから前進しないんです。



同じ本に田中槐さんの連作についての論も載ってるんだけど、これも納得してません。『未来』で読んだときにイライラしました。なんでこの例歌からこのようなことが言えるのかわからない。
納得できないのはオレが田中さんの作品を熟読していないせいかもしれないので、そっちについては保留にしていたところだったんです。



以上です。


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2019年01月08日

{短歌の本読む 121}うたつかい 2018年秋号  ~マジシャンが挟で、ほか 

通算649回目の今回は「うたつかい」2018年秋号(31号)。
うたつかいは6号から感想を書いてるので、これが26回目かな。



雨音が全てを遮断する夜の誰に思われなくてもここにいる私だよ
えんえんとチェルニーを弾くかわいくて買ったのに苺、薄らぬるくて死ねる
/生田亜々子「苺、薄らぬるくて死ねる」

→5首のうちの1、2首目。下の句で粘ってくる。一首目は、あえてはみ出てきてるように見える。「私」が主張してくる。
二首目の「薄らぬるくて死ねる」はあるのかないのか微妙な言い回しで、とにかくイヤ~な感じを伝えている。指を速く器用に動かすチェルニーの練習曲との取り合わせ。



トランプとして遊ばれたことのないトランプをマジシャンが鋏で/田中ましろ「愛すべきもの3」
→ババ抜きやポーカーや神経衰弱や大貧民やなにかでみんなにたのしく遊ばれたいと、トランプは思っているのかなあと、そういう想像をしてみる。そうじゃなくてもたしかに、開封されてすぐに手際よくハサミを入れられるカードって変な感じだ。

「マジシャンが鋏で」で止めるあたり、うまさがある。切っているとも切ったともなんとも言わない。切れたのか切れてないのか、いままさに……、ってところだ。



信号の奥に大きな性病が待ち構えててしかも光った/橙田千尋「性病が光る夜に」
→歩行者用信号だろうか。そのなかにいるのは帽子をかぶった男で、止まっているか歩いているかだ。
それとも車のただ丸い信号なのか。そこに「大きな性病」を見ている。何がどう見えているのだろう。
下の句は信号の様子だ。「待ち構えてて」は、悪意を持って狙っているかのようだし「しかも」が悪意に輪をかけている。
とにかく見慣れたはずのものが大きく変化していてぎょっとした。



きつくきつく抱きしめるとき喜びが恐れより多く伝わるといい/羽島かよ子「ポトスに注ぐ」
→すくなからぬ恐れをいだいていることがわかるが、それよりも伝えたい喜びがある。比喩とかなにかで工夫しようというのが見えない、まっすぐな詠みぶりだ。ひたむきなものが感じられた。



2Hの鉛筆なんか学校で使うところを見たらもう好き/えんどうけいこ
→テーマ詠「アルファベット」から。
気になってる人がどんな文房具を使っているか、それを知ったときの感じ、そういうのあったなーとおもうよ。ちょっとずつ相手のことを知って、好きになっていくっていう。薄い鉛筆っていうのがいいよ。濃いとちょっと違う。
「もう好き」の手放し感がいい。「もう」に引力がある。



そんな感じでおわります。
2019年も変わらずやっていきます。





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2018年07月02日

{短歌の本読む 112} 「うたつかい」30号  ~色彩で話せるならば、ほか

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「うたつかい」30号を読みました。

「うたつかい」を知らない人に説明したいんだけど、URLを貼るのが一番正確なので貼ります。
https://t.co/KG7MPc7HEA https://t.co/4e2Ao21Goj

三行でまとめると、

年に二回発行される
参加者の短歌を集めた
数十ページの本

と思ってもらえるといいのかなと思います。自由に参加して作品が発表できて、ツイッターにいるたくさんの人の短歌が読めます。




ロールパンナはメロンパンナのおねえちゃん自分で選ばない道ばかり/かつらいす「ハンカチと深爪」
→上の句はアンパンマンのエンディングの歌の一節で、珍しい箇所を切り取っている。
上の句と下の句はどういうつながりなのか。よくよく考えれば、自分の家族は自分で選べないということか。選べないまま、自然に似てしまう。

……と書いてから、ロールパンナはメロンパンナの希望によってつくられたのだと知った。後からつくられたけど「姉」であるという。
そうすると、読みはおのずから変わってくる。




月曜がまたやってくる僕たちはセレクトボタンを押し続けている/嫉妬林檎「待ち人」
→これも前半後半に飛躍があって、つながりを考えてみたくなる歌。
昔「スターソルジャー」というゲームにセレクトボタンを押しつづけるとレーザーが使えるようになる裏技があったけども。
でもたぶんレーザーとかそんなんじゃなくて、選べない現実をそれでもどうにか選ぼうとしているという、そういう歌なんだと読んだ。選び直したい気持ちの強さが「押し続け」るという動作にあらわれていると。



色彩で話せるならばいまはもう菫色、の、濃淡ばかり/穂崎円「ひとつだけ」
→すみれ色は一体どんな会話なのだろう。ほかの色がかつてはあって、なくなっていったのだろうね。
こういう、謎っぽい歌に今回は魅力を感じている。「、」もおもしろい。話すことの呼吸、間合いがある。



テーマ詠「文房具」から。

えーあしたー急だねと言い雲ひとつないスケジュールを睨んだりする/西村湯呑
→おもしろい入りかたをしている。「雲ひとつない」が空のようで、スケジュールを見るのが空を見ることに重なる。
気がのらない誘いを受けたというよりは、すぐOKしたいけど予定がガラガラだと思われたくなくて渋ってみせていると読んだ。



自己紹介から。
ばかやろう好きとか嫌いとかじゃなく必要なんだダブルクリップ/西村湯呑
→「ばかやろう」で始まって「ダブルクリップ」まで行けるのかと、その飛距離をおもしろく読んだ。
結句で成り立っている歌で、「お前のことが」みたいにすると、誰も近寄れない二人の世界になる。



ということで、「うたつかい」30号の感想はおわりです。





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短歌連作とジェンガ
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第57回短歌研究新人賞候補作「仙台に雪が降る」全30首
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2017年11月05日

{短歌の本読む 106} 「うたつかい」2017秋号  ~絶望が始まったのに、ほか

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「うたつかい」2017秋号(29号)を読む。
モノクロ、100円、48ページ。156人が参加している。今は年に二回の発行となっている。



まずは自由詠五首から。

テレパシー ライフの駐輪場に居る白内障の細い犬から/飯田和馬「けもの」
→「ライフ」は関東から近畿にあるスーパーマーケットらしい。
白内障の細い犬は何を伝えようとしたのだろう。元気だったらテレパシーなど使わず吠えるだろうけど、テレパシーでしか伝わらないものもありそうだ。

絶望が始まったのに止まり木を揺らすばかりで鳴かない小鳥/大葉れい「「ラジオ演説」より」
→「絶望が始まった」とは何がどうなっている状況か、自然災害か戦争か誰かの死か、はっきりしないだけに漠然と不安になる。
これも鳴かない動物の歌だ。



雨が降る 傘を持たない人と持つ人に世界が分断される/田中ましろ「勝ち負けの日々」

幸せになりたいのならケサランとパサラン二手に分かれて逃げろ/谷じゃこ「あるいはのもしくは」

隣り合っている二つの歌が、たまたまどちらとも「分かれる」歌だった。
ましろさんの歌は「世界が分断される」という大きな言い回しにポイントがある。「持つ/人」の句のまたがりは、そこにヒビが入って分断がはじまるかのようだ。

じゃこさんの歌は、ケサランパサランという言葉を二つに分けた遊びの歌のようだが、状況は意外に深刻なのではないか。
幸せになるための逃走、それも二手に分かれて。とてもかなわない相手から逃げているわけで、下手したらここで生き別れになるか、どちらかやられてしまうかもしれない。絶体絶命の分岐点だ。



折り紙でつくったヒドラを折り紙でつくったヒドラに喰わせている子/深影コトハ「へんないきもの」
→折り紙でヒドラって、かっこいい。技巧的な折り紙なのだろう。ヒドラふたつで遊ぼうとすればこういうふうにもなるだろうけど、ヒドラって共食いするのかなあ。折り紙でありながら獰猛だ。



信仰を持たざる者の歌ひたる聖歌のごとき君の告白/もりのさと「ふたりして」
→この告白は、恋の告白だろうね。神父の前での罪の告白だったら途端に付きすぎになってしまうからね。
比喩の歌。うつくしいがしっくりきていない感じか。



くちやくそく 人差し指の隙間からあいびきにくがぐにゅりと逃げる/ルイドリツコ「セキセイインコの水色」
→普段ひらがなで書かないような言葉をひらがなにすると新鮮味がある。「くちやくそく」は咀嚼しているオノマトペに近づくし「あいびきにく」から逢い引きが導かれる。
いや咀嚼でもないか。肉は指の隙間にあるのだから




つづいて、テーマ詠「学校」から。

胸いっぱい大好きだったと思うとき遠い校舎にふる弱い雨/外川菊絵
→「いっぱい」「大」と「遠い」「弱い」が対になっている。好きな思いが雨を降らせているような、いないような。強い気持ちでも、伝えるのはむずかしい。



ずくずくとこころに水がしみはじめなんて教室はとおいんだろう/杜崎アオ
→「ずくずくと」がいいオノマトペだ。教室で履く靴のことを「ズック」といったりするけど、その連想からか、濡れた靴で歩きにくさを感じながら教室に向かっているように思えた。
この遠さは、心理的な距離だろう。行きたくなさが、このように詩になる。



以上です。
んじゃまた。



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さっそく角川短歌賞のことを書こうじゃないか、または、オレと新人賞の六年間
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第57回短歌研究新人賞候補作「仙台に雪が降る」全30首
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2017年07月03日

{短歌の本読む 103} 「うたつかい」2017年春号  ~愛くらいしかこめられていない、ほか

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「うたつかい」。2017年春号。170人もの歌人が参加しているとのこと。 #ut17sqr


化学工場の近くに住んでいる 薬品臭が濃くなれば春/犬飼あき「自己紹介」



落雷のあとに誰かが泣いていたそれはわたしのはずがなかった/萩森美帆




愛くらいしかこめられていないから花束はすぐしおれてしまう/価格未定「男と女と謎の触手」

→愛のもろさを突いて鋭い歌。



月からの使いを待つのをやめた日に姫が人魚に書いた手紙座/絹更ミハル「星月夜」
→かぐや姫だと思ったら人魚姫も出てきて、手紙に焦点がうごいたと思ったら最後の一字で星になる。揺さぶりがある。
かぐや姫にどんな心境の変化があったのか、かぐや姫と人魚姫が知り合っていたらどんな手紙が書かれていたのか、そしてどんな星座なのか。イメージのふくらむ歌。




弁当箱の角の丸みを帯びたのが洗っても洗っても洗ってもこわい/小祝日魚子「きみはランチ」
→短歌はふだん気づかない感情をおしえてくれる。弁当箱の丸みにある怖さもおしえてくれる。
洗いながら、角の丸みに何度も触れたのだろう。何度こすっても丸い。こわいけれどそれをまた使うのだろう。



父自分の誕生日覚えていて八十三と云ふ享年八十三/SAKURAKO「父」
→「八十三と云ふ」までは自分の誕生日を覚えていた「父」。しっかりしてる方なんだなあと思って読みすすむと、「享年八十三」で突然亡くなってしまい、衝撃がある。



霧雨が朝から止まず飲み物がホットでもだめアイスでもだめ/たた「腕立て伏せ」



いくたびも乗り損なった観覧車に乗ったことある気がしはじめる/道券はな「ような気がする」

→認識がエラーを起こす瞬間をとらえて、さりげない怖さがある。ぐるぐる回る観覧車であることが、なにか意味ありげだ。普通の乗り物だとただの遅刻の歌になる。



うす暗い写真のなかでぶれながらほほえんでいることだけわかる/原平和「春風」



煉獄の(煉獄なんて行ったことないから想像するしかないけれど)パフェ/木曜何某「無無無題」

→わりと普通に読めたけどよく見ると字が余っている。
同じく行ったことなくても、天国や地獄ならいくらか想像しやすい。そのパフェおいしいのかなあ。
「パフェ」がオチみたいになってるけど、何がきても想像しづらい。
ダンテ読んでないんだよなあ。読んだような気はしてたけど。



そして君が傷つくことのないように僕は点滅し始めたのだ/Y川「祈らない」
→ちょっと笹井さんっぽい?
例えば信号の青が点滅するのは、他の信号に変わろうとしている時だ。人が点滅するのは、その存在が消えかけているようで、これは別れの場面なのかと思う。
点滅するから普通の人間じゃないようだが、「君が傷つくことのないように」という動機があり、そのためにあたたかみのある歌になっている。



つづいてはテーマ詠「お店」から。

ジャイアンの空き地の空の色だった文房具屋の青いクレパス/貝澤駿一
→「ジャイアンの空き地」がよかった。ドラえもんの空き地でものび太の空き地でもみんなの空き地でもない。ジャイアンがリサイタルをして、ジャイアンが中心となって野球する空き地。空き地にいるときのジャイアンが一番生き生きしてるんじゃないか。

この歌は青という色に向かっていく。空き地と空の色というのは、あんまりむすびつかない。そんなにジャイアンが空き地で空を見てたっけ? と思う。でも、少しくらい元の作品からはみ出る部分があってもドラえもん短歌としてはおもしろいのかなと。



カレー屋でカレーを頼まないというボケでウケる。という走馬灯。/空日一
→うたつかいはアイウエオ順に作品が載る。ちかごろはオレのひとつ前がこの方だ。

前にも、走馬灯に一発ギャグがあればいいっていう歌を取り上げたことがあるけど、オレはこういう歌が好きなんだな。笑えることを思い出して死ねたらそのほうがいい。それも、人生においてあまり重要じゃない笑いで。

君の見る走馬燈の中にわたくしの一発ギャグがあれば良いのだ/川島結佳子「あれば良いのだ」
短歌研究 2016年2月号


いや、でも、こういうボケでウケたのって思い出したいかなあ。はずかしくていやな走馬灯という意味で言ってるような気もしてきた。二つついてる「。」を見ていて。



賢治さんご愛顧のほど山猫軒web storeへはリンクをクリック/河野瑶
→「注文の多い料理店」がウェブストアになるっていう発想がおもしろい。クリックしてもクリックしてもなかなかたどり着けないだろうなあ。クリックのたびに何かを了承させられる。個人情報なんかも入力させられ丸裸にされる、そういうサイトはありそう。人を食う山猫は、現代にもいるのかも。



デニーズのメニューのパフェと目が合った空き容量は1BB(ベツバラ)ある/高木秀俊
→「1BB(ベツバラ)」の面白さで丸した。
パフェと目が合うのもいい。パフェもこちらを見ていたのだ。
自分のお腹はパソコンかスマホみたいに「容量」があるんだけど、パフェにはこちらを見る「目」がある。



真夜中のタワーレコード 試聴機が「愛してる」ってそっとささやく/西淳子
→「真夜中」が利いてる。試聴機の音楽って、常に一人だけのために鳴っているんだよな。三句以降Sの音が多めになっていて、雨音かささやきを感じさせる。



コンビニ家コンビニコンビニ家コンビニ新興宗教施設コンビニ/もりのさと
→なにを言ってるのか理解するまでにしばらくかかった。建物がならんでいて、それらがなんの建物なのかを言っている。コンビニがあって、そのとなりが家で、そのとなりがコンビニで、次もコンビニで。コンビニが多すぎて異様だ。そんな変な町に新興宗教施設もある。一件でも名前が長くて存在感ある。

コンビニって一つあれば充分だけどな。狂ってるぜ。どうなってるんだ。それぞれ違うコンビニだろうなあ。全部サンクスとかだともっとやだなあ。
そのコンビニ乱立に新興宗教が関わっていたりしたらもっと気持ち悪い。いや、どう関わるんだ。
へんてこな結果だけが示されて、いろいろ想像してしまう、おもしろい歌。



「たたさんのホップステップ短歌」は、前川佐美雄の推敲について。
これがひとつの歌ならばすごい推敲だ。あるいは、もしかしたら別の歌のつもりかもしれないなあと思った。

「ヴィヴァルディは600曲の協奏曲を書いたのではなく、1曲の協奏曲を600回書き換えたのだ。」とイタリアの現代作曲家ダルラピッコラという人が言った、と読んだことがある。
作品と作品の距離ということを考える。



んじゃまた。


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2016年12月05日

{短歌の本読む 91} 「うたつかい」2016年秋号  ~わたしたち菌糸類、ほか

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うたつかい 2016秋号。



すこしずつ丸みのちがう「あ」の文字が並んでふいに愛しい色紙/逢「一学期をふりかえって」
→色紙に書かれる「あ」といったら「ありがとう」の「あ」かなあ。そういう想像の余地を残しな表現にそそられます。みんなそれぞれちがうありがとうの気持ちをもっていて、色紙にそれが集まっている。
「ふいに」「愛しい」は言い過ぎの感もありますが、「丸み」に注目したのがよかったです。



真夜中に帰ればぼくのためだけにしづしづまはる唐揚げ弁当/有村桔梗「食」




やはらかいくぼみを持てる春の石恋をしてゐる石だときみは/太田宣子「石をあつめる」




薄い毛布の頼りないこと飛行機の四方すべてが水平線で/田中ましろ「DL278」

→空の旅の一連。海の広さと心細さ。そういえば毛布ありますね。毛布と海の広さを頭の中で比較していると、いよいよ不安になってきます。



どこへゆくにも行き止まり 石像を動かしたひと戻してください/谷じゃこ「うらがえし」
→ゲームっぽい歌につい反応します。石像を動かして道をひらくことがRPGでは時々あります。
この勇者はそのへんの町やオフィスを攻略していったのですね。



むかしむかしあるところにもいただろう「そうだそうだ」というだけの役/西村湯呑「むかしむかしパート2」
→昔も今もいて、あるところにも別のところにもいる。決しておはなしの主役になることのないその他大勢の人物にスポットライトを当てた歌です。



青林檎なんて遥かな天体を見上げるわたしたち菌糸類/藤本玲未「鉱石」
→うんと小さい菌糸類からすれば小さい青林檎が天体であると。そうすると地球やそのほか天体を青林檎程度に見ている巨大な生き物のことが思われます。
「わたしたち菌糸類」がとてもいいんですね。菌糸類の立場から詠んでいるとも読めますし、わたしたちはある意味で菌糸類のようなものだという比喩にも読めてきます。いやもっと言うと「わたしたち」の「たち」のなかに読者のオレも含まれるように感じられ、引き込まれるのです。







「牛さんの短歌なう」はツイキャスを取り上げています。短歌のツイキャスを話題にした文章をはじめて紙で読みました。まさに「なう」、今を伝えています。





この本おわり。
んじゃまた。






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2016年08月22日

{短歌の本読む 86}  「うたつかい」2016年夏号  ~開けてはならぬものの明るさ、ほか

うたつかい2016夏号。


どちらでもよいに○した どうだっていいがあったらそっちにしてた/阿南周平「傷痕」
→「どちらでもよい」と「どうだっていい」。少しの違いで投げやり感が増しています。


燃やせないゴミのようです火をつけてしまえば燃えるゴミのようです/小早川「燃やせないゴミ」
→ほかの四首を見ると人と人の心理について詠んでいて、このゴミの歌についてもそうした読みが可能です。
いけないとされていても、やってしまえばできますよと。しかし、燃えないゴミを燃やすと危険なことになります。


今日はやたら赤い車が走ってる誰も死なないよい一日だ/谷じゃこ「スーパーポンポコジャガピータウン」
→赤い車じゃない車も走ってるにちがいないし、それと同じように、どこかでは今日も人が死んでいるにちがいありません。
想像を交えずに自分の見える範囲だけを見ることで成立する状態です。肯定的な下の句に立ち止まりました。すがすがしいです。
赤になんらかの意味を読むこともできるでしょう。


iPhoneを忘れてしまった一日は指に包帯しているようで/春森糸結「分身」
→スマホの歌がならんでいまして、この「分身」とはスマホのことでしょう。
この歌は下の句の比喩のささやかさが良かったです。


苦しみがスゲエな(そうか?)苦しみはそんなにスゴくなくなっていた/木曜何某「にが」
→「スゲエ」ってカタカナで言っていて、客観的です。スポーツの大技でも見た時みたいな表現です。それをさらに(そうか?)と疑う者がいます。苦しみながらもどこか冷めていて、疑いが苦しみに勝ります。


家電屋のテレビ画面に清原はひとり残らず空振りをせり/千葉優作
→「ひとり残らず」が良いです。空振りしてない架空の清原がほんの少し感じられます。
それにしても、清原ですよ。薬物のイメージが強くついてしまいまして、「空振り」にべつの意味が付いてくるようです。


真夜中の観音開きの冷蔵庫開けてはならぬものの明るさ/月下  桜
→「観音」が開けてはならない感じを連れて来ているんでしょうかね。家電に聖性がやどります。


火の出ない中火でゆするフライパンIHっていいひとの略/外川菊絵
→比喩が決まっていて言葉遊びも巧みです。「ゆする」は何気ないようでなかなか出てこない、それでいて適切な言葉じゃないでしょうか。うまい。



たたさんの連載で印象に残ったのは、競技かるたを始めて二年で四段になったけど五段になるまで十七年かかったというところ。
よく粘りづよく続けて向上しているなあと、素晴らしいなと思いました。
オレなんて、結果がついてこなくなるとすぐ嫌になってしまう。

たくさんの嘘をあなたについたけど大丈夫って嘘は初めて/田中ましろ『かたすみさがし』








オレの出した歌を、自由詠5首だけ載せておきます。



「夏の一枚」 工藤吉生

二十秒ほどの電話をあなたから切られて夜の部屋の中央

居ずまいを正した夜がエンジンの音を低めに折り込んでゆく

この当時オレが笑っていたなんて信じ難いが夏の一枚

哀感と呼ぶべきものが心臓をしみ出してもう指の先まで

演奏をやめて十年ほど経ってまだ指が弾きたがるトリルを





んじゃまた。


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2016年02月27日

{短歌の本読む 75} 「うたつかい」2016年冬号  ~どこかで広がるオーロラがある、ほか

うたつかい2016冬号(第25号)。


「野生では四、五十年が、飼育下では三十年が彼らの寿命」/秋山生糸「ぱんだらんど」
→この歌だけ「パンダ」と書かれてないが、「彼ら」がパンダなのは明白だ。「彼ら」と呼ぶと、パンダと人間が対等になる。
飼育することは十、二十年のパンダの命を奪うことを意味していると、初めて知った。
「飼育下」は耳慣れない言葉だ。考えるほど「飼育」という行為にもひっかかりをおぼえた。


こころにはちひさな湾の入り組んでくぢらの鳴けば潮位の変はる/太田宣子「ZOO」
→心のなかに景色があるような歌はいくつか見ていて、丸もつけてきたので意識して読んでいる。
一筋縄ではいかない心をよく表現している。
鯨とはなんだろう。オレは一種の感情、衝動、気まぐれといったものなんじゃないかと考えた。

(このまえテレビでロンドンハーツを見ていたら、水族館で飼い慣らされた小型のクジラが、人の合図でジャンプして客席に思いっきり水しぶきを飛ばしていた。
そんなふうに、わざと波風を立てて人に迷惑をかけるような心の在り方もあるなあと、オレは自分に対して思うのだった。)


友人の家の静けさ友人がトイレに立って戻る前まで/荻森美帆「友人と午後」
→けっこうどの歌も日常をうまくすくいとっていておもしろかった。
一人になったからって勝手にあちこち見て回れないし、じっとしていなきゃいけないんだよな。


その人の思い出だけで毒蜂の群れに三十二時間耐えろ/空日一「普通」
→「三十二時間」がおもしろい数字だ。区切りがいいようで、あんまりよくない。
過酷だ。なんの罰ゲームだろう。


あかときの薄雲ほどけ片恋は麻薬ってより麻酔だろうな/西藤定「剃る」
→下の句で口調が変わるが、これは「ほどけ」に対応しているんだろう。「あかとき」と「片恋」も寄せてあるのかな。
片恋で感じなくなる痛みとはなんだろう。
麻薬と麻酔、毒蜂に三十二時間耐えられるのはどっちだろう(まだ気になる)。


善男であるかどうかは心許ないけれど用を足してふるえる/たた「力一杯」
→うん。それとこれを結びつけたのは新鮮だなあ。震えるほうが少しいい人っぽい?


もう誰も信じられなくなった夜もどこかで広がるオーロラがある/ニキタ・フユ「夜の約束」
→そうか、オーロラってそういうものかもしれないなと思いました。つまり、誰も信じられなくなることとの対にあるようなもの。オーロラがこの人に届いてほしい。


道場に行ってきまーすだけじゃあれだからか押忍のスタンプもくる/はだし「おわってるハウス」
→ラインをやってるんですかね。オレはやらないんでよくわからないんですけど。スタンプをメールの絵文字のようなものだろうと理解しました。
「あれだから」っていう微妙な感覚を、とても多くの人が持っていてスタンプがそれを埋める。時には逆効果で、別の「あれ」な感じになってしまう。


理解からもつとも遠い形して西洋梨の剥かれてゐたり/濱松哲朗「やさしい声」
→西洋梨の剥かれる様子はなんとなくイメージできます。そこから「理解」の形を想像させるのが面白いです。皮を剥いて内部を露出させることが「理解」ではないと。それとも、剥きかたによってはそれは「理解」に近くなるのでしょうか?? ううむ。


予報では明日の夜から初雪が鍵のふるへのやうに降り出す/濱松哲朗「やさしい声」
→まだ見ていない初雪の様子が「鍵のふるへのやうに」と比喩をもって語られます。
この鍵はなぜ震えているのでしょう。寒い外から部屋に入ろうとして取り出した鍵なのでしょうか。それとも、秘密の箱かなにかを開けようとしている鍵なのでしょうか。想像がふくらみます。
オレは完全に「カギ」だと思って読んだんだけど、そうじゃない読みもあるかもしれない。そんなような指摘をいただいた。


ただならぬ気配があると思ったら野菜室いっぱいに目薬/むぎたうろす「ルリタテハ」
→それはただならぬ状態です。仕舞う場所もおかしいし、量もおかしいです。
気配でわかるものなんですかね。野菜室がやばそうだと。

穂村さんの卵置き場の涙の歌を思い出しました。

ほんとうにおれのもんかよ冷蔵庫の卵置き場に落ちる涙は/穂村弘



テーマ詠「匂い」からは無いです。オレは「匂い」が苦手みたいです。
鼻が悪いんじゃないかと親に言われたことがあります。自分では嗅げているつもりです。







牛さんの「短歌なう」を読んでからネットプリントについてはけっこう考えました。
オレはどちらかというとネットプリントに後ろ向きなことを書いてきたと思うんですが、本だったら買うような内容のものならば出していますし、要は内容なのでしょう。

ネプリだから歓迎するとか逆にネプリだから嫌がるとかそういうことはないんですね。ただ、欲しくなるようなものが出ないからあんまり出さないだけで。



ネットプリントは【手軽に】【無料で】って書いてありますが、別に手軽でも無料でもないというのがオレの実感です。

Amazonで手続きするのや、本屋で棚から本を抜いてレジにもっていき会計するのに比べて、コンビニのコピー機でスマホ見ながら番号を打ち込むのがそんなに手軽でしょうか。
コンビニだから手軽、というのも少し違うんですよね。地域によっては近くにないこともありますからね。

数十円でも印刷にかかるのであれば無料ではないです。無料とは0円のことです。交通費だろうとなんだろうと、お金がかかれば無料とは言えません。嘘はいけません。
オレは100円のコンテンツを販売したりしていますが、ほとんど売れません。無料なら読まれるのに。それくらい100円は高い壁なのです。

ですが、ネットプリントを出すのは慣れれば特別面倒でもないし高くもないからことさらに文句を言うほどではないです。内容量に対して、普通です。



「その作品を読みたい人だけにその作品を届ける」というのも大事なんだなと思いました。
オレは通りすがりや偶然見てくれる人がいることに面白さを感じる度合いが高かったようです。だから「閉じてるなあ」という感想しかなかったのですが、まあ必ずしもそれはマイナスではないのかなとも思いました。





以上です。んじゃまた。


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2015年10月19日

{短歌の本読む 66} うたつかい 2015年秋号  ~自由から抜いた包丁、ほか

うたつかい。2015年秋号。



自由詠5首

不思議MANブラザーズバンド現れて信じることが不思議だと言う/牛隆佑「愛する」
→「大事MANブラザーズバンド」ってかわった名前だったなあ。
なつかしかったり、パロディーだったりしながら、黒い後味を残す。きっと「それが不思議」って歌なんだろう。それがーいちばん不思議ー、って歌いたくなる。


「五時半に起こして」「ウェブで“助けて”に関する情報が見つかりました」/宇野なずき「自動操縦」
→Siriだっけ。これはほんとにありそうね。あたらしいサービスがでてくるたびにこういう歌は作られていき、時代をあらわす。
仮に「助けて」と言っても、その程度しかこいつはしてくれないんだろうな。「助けて」で検索しても役立つ情報が出てくる気がしないよ。最先端なのにとんちんかんなのだ。


神様を見たと言い張る米田から次々うつりだす声変わり/大葉れい「机に彫った名前は今でもたまに光ったりしている」
→ちょっと笹さんぽい?
神様が少年たちの体を大人にしていく。大人になるために声がかわることも、ある意味神秘だよな。


メガネって呼ばれてるけど掛けてないやけに激しい風が吹いてる/北大路京介「ニャーゴの風が吹いている」
→そういう付け句の募集があったな。ツイッターで募集してラジオで発表してるんだっけ? ほんらいは印刷されることのない短歌たちだ。

この付け句の処理のしかたとしては、どれもうまくいってると思った。上の句の不思議さを下の句の激しい風が引き受ける形。


綻びにゆびを入れれば裏返すことも可能な日常である/香村かな「稜線と月」
→ほころびのイメージのわかりやすさと、実際にひっくり返った日常のイメージしづらさ。裏返された日常って怖い気がする。「である」の落ち着き。


リリィ、リリィ、ビキニ力士に意味必死 ビキニ力士に意味必死/ナイス害「僕は貧乳が好き」
→5首がそれぞれア段、イ段、ウ段……に対応していて、これはイ段の歌。
ビキニ力士、はすごいよ。見えてるものを隠すことで、逆にいやらしくはずかしく感じになる。
おしゃれそうな「リリィ」と力士のコントラスト。
意味不明だが、そもそも「はっけよい、のこったのこった」だって調べなければそういうものだ。
(言っちゃ悪いが)変態みたいな力士を、「意味」が必死に倒そうとしてるようだな。意味不明と意味のたたかいだ。だが必死になってるのは「意味」のほうだ。ビキニ力士に分がありそうな取組だ。


ハウス名作劇場に出てくる人みたい 明るい髪に喪服の君は/まるやま「生活」
→「AKB48に似てる」、という抽象的なほめかた(けなしかた?)がある。
ハウス名作劇場にも色々あるが、どれだろう。でも、確かにそんなキャラはいる気がするし、的確だと感じた。


生きているひとのとなりは空席でそのとなりには生きているひと/実山咲千花「橋をかける」
→「生きている」を繰り返すことで「空席」に生死のいずれかがあるように見えるのがポイントかなと。


連れてってくれとも言わず暗闇はソファの下でじっとしている/やじこ「おやあれは」
→ソファの下にいるのが散歩好きな犬だったらなんでもないところなんだが、暗闇だ。ソファの下が暗いのはわかるが、そこから暗闇が出てくる可能性があるわけで、自分を連れていかせようとする暗闇とはどんなものだろう。ちょっとこわい。



自由詠ここまで。






つづいてテーマ詠「乗り物」

護送車のやうなるものとすれちがふ一瞬アイスクリームを落とさない/伊豆みつ
→護送車がきて、アイスクリームを落とす。それでも成立しそうだが、そうなってない。
護送車「のやうなるもの」で、なんだかわからない。アイスクリームは「一瞬」「落とさない」。落ちてはいないが、落としそうになったか。
見せ消ちみたいなところのある、不安のよぎる歌。


自由から抜いた包丁持ったまま電車に乗ってしまったキティ/藤本玲未
→キティがハローキティとは限らないが、どうにもそのイメージがつよい。
「抜いた包丁」で刺したことをあらわす。自由を殺してしまったか。不自由の世界の電車はキティをどこへ運んでゆくのだろうか。
「持ったまま」は手に持ったまんまってことだろうか。怖さがある。
「乗ってしまった」の「しまった」は取り返しのつかない行為であることを示しているようだ。


さびしいと思ったことのある町をとまりつつとまりつつバスがゆく/虫武一俊
→バスがとまるのはバス停があるからだが、その町への未練だとか、そこに降ろそうとしているとか、なにか深読みしたくなる停車だ。下の句の五五五のリズムが停車しながら走るバスにかさなる。







牛さんの「うたつかい四週年に寄せて」がよかった。その「うたつかいのようなものが五十もできたら」っていうの、オレもどっかで聞いた。ほんとに数えるとは! というところで驚いた。

終わるものも多いよな。たとえば「めためたドロップス」のことを考えて、たしか終わるんだよなと思い当たる。単発での企画やたまにしかやらないのもあるよね。

たとえば配信や動画関係も、うまくいけばここに数えられるんだろうが、ニコニコ生放送の歌合にしても、ユーストリームにしても、継続しないか、人が集まらないかのどちらかになるようだ。YouTubeでの試みもあるようだが、特筆するものはない。このあたりから何か出てくると、どうなるんだろうという興味がある。

アプリやネット上のサービスも、いくつかでてきているが、さてどうだろう。


あとは、オレが贔屓している「なんたる星」をここに入れてあげてほしい。




うたつかいの話にもどすと、自己紹介の文字が、字数が少ないほど大きくなるのが面白いと思った。








一応、オレの出した歌を載せておきましょうか。


「魚市場」  工藤吉生

入り口の五から喪服の男性が出てきて朝に向け口ひらく
覆面の両目が電車で読んでいる漫画に魚市場の競りの場面
真緑の無数の蔓の手足した女の怖がらせるための顔
通ってた四階建ての学校の階段だけは夢によく踏む
ありえない向きに体が曲がってて顔は笑っていて子供の絵

テーマ詠「乗り物」
ワイパーに何かの紙がはさまった古い汚い車のような


以上です。んじゃまた。


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2015年08月04日

{短歌の本読む 65} 「うたつかい」2015夏号  ~夜空は北斗七星だらけ、ほか

うたつかい2015夏号。



沈みかけのゆうぐれに浸したせいでかばんがやけに重いのですが/逢「あなたへ」
→「浸した」が「ゆうぐれ」を液体のように感じさせる。「沈みかけ」は夕日にも液体にも掛かります。
かばんの重さは、抱えている想い、こころの重さでもあるのでしょう。ゆうぐれが心に深く染み入ってきたのだと読みました。


電話機のかたちで眠るこの次の夏までは鳴らない電話機の/魚住蓮奈「月光」
→スマホでばかり電話していて電話機からはやや縁遠くなっているオレですが、電話の受話器はちょっと独特な形をしています。人の寝ている形にも見えます。
この本は「夏号」で、夏に読んでいるので、次の夏というのは一年後となります。ある特別な人以外からはかからない電話機なのでしょう。
ということは一年くらいの深い眠りについているような、そんな様子の眠り。


僕だけがインターネットの亡霊で他のみんなは居酒屋にいる/宇野なずき「インターネット」
→ツイッターやってると、他のみんなは歌会やらイベントやらその後の二次会やらで盛り上がっていて、自分だけここでチマチマ文字を打っているようなみじめな気分になることがあります。
居酒屋のいきいきした交流や会話に対し、亡霊のような暗さや生気の無さ。



僕の手のなかにあなたの手があつてまた橋をひとつ渡つてしまふ/太田宣子「id」

われといふ袋の砂の湿りゐて赤いスコップ突き刺してある/(同)

→橋や砂や赤いスコップ、いずれもなにかのシンボルのようだ。心のなかにそれらがあるような感じ。
橋の歌は、橋を渡ることでふたりが戻れない場所へ行ってしまいそうな不安があります。
砂とスコップの歌。湿った砂のようなじめじめした気持ちと、それをえぐるもの。


酔わせても敬語で話す人でした 約束をして駅で別れる/きつね「花束」
→連作としてよかったです。「あなた」はいつもきちんとしていて、それに対してこちらがわは激しい乱れた感情を秘めている。そのすれ違いが描かれています。
2首目以降は、花束、テーブル、メール、ごみといった、物に気持ちをこめる方法が効果をあげています。
花束のつもりで渡したこの傘をあなたはきちんと返してくれた/きつね「花束」



薄型のテレビはどこを叩けばいい?ぶっ生き返せなくて悲しい/小坂井大輔「脳があるのです」

→「ぶっ生き返す」には前例があるのですが、この使い方は納得がいきました。


冷えてきた 夕方 もっと冷えてきた 夜 もう帰る ひとりの家に/越田勇俊「はるのさいごに」
→頻繁な一字空けが、書いてある以上の寒さや孤独を手渡してきます。カタコトのようでもあります。


光なら瞬きの間(ま)にアルプスのお花を摘んできて驚かす/小林ちい「光なら」
→初句が「光なら」で統一された連作です。正岡子規の「足たたば」を思い出しますが、「光なら」はひたすら相手のために何かしようとしています。その献身的な様子に心打たれます。

足たたば北インヂアのヒマラヤのエヴェレストなる雪くはましを/正岡子規「足たたば」


夏の草踏みつけてゆく行くあてもないけど夏の草踏みつけて/田中ましろ「離岸」
→タイトル「離岸」を含んだ歌はありませんが、このように草を踏みつけ力強く歩んでゆくのは、住み慣れた場所か遠くへ行きたいという気持ちからなのでしょう。くりかえしが一歩一歩の歩みを強くたしかなものにしています。


君らだっで泣いでるやんがとくちゃくちゃの顔で手を振りあった三月/西村湯呑「せんせい」
→生徒と先生の別れの連作。泣きながらしゃべっているのを濁音で表現しています。そのうえ関西弁なのがよいです。


ゆげのたつしろいごはんのまんなかでたまごのきみをすべるおしょうゆ/笛地静恵「アネモエーシス・7」
→まったくなんでもないことを、とても丁寧に描いています。しょうゆの気持ちになってきそうです。



自由詠おわり。テーマ詠から四首くらい。

また朝が来るはずだった ああせめて光の声を聞かせてほしい/あみー
→「来るはずだった」ということは、このひとにはもう朝が来ないようです。そして光を求めています。暗闇で苦しんでいる様子が印象的でした。


きっとまた逃げる私と思うとき夜空は北斗七星だらけ/西藤定
→北斗七星だらけ、がすごい。走りながら夜空を見たら視界が揺れてそのように見えたのでしょうか。
星は方角をあらわしますが、どちらへ行けばよいかを迷わせるようです。


夜たちをリュックに詰めてゆく旅をきみの国では眠りと呼んだ/辻聡之
→では別の国では眠りのことを旅というのでしょうか。なんともロマンチックです。
ゆうぐれがかばんを浸す歌を最初に引きましたが、こういう歌はオレのツボかもしれません。


泣いてないと言いはる君を右折車のヘッドライトが一瞬揺らす/ルイドリツコ
→ライトによって、「君」が泣いてるのがあきらかになったのかもしれませんが、そこまでは言わずふくらみをつくっています。
「照らす」だと思っていましたが今見たら「揺らす」でした。体の揺れとも心の揺れとも受け取れます。



歌は以上です。
あとは、ショージサキさんの「すごくまじめなかお」が印象的でした。
終わります。



んじゃまた。


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mk7911 at 06:56|PermalinkComments(0)