つきかげ
2017年09月21日
《歌集読む 107》 斎藤茂吉『つきかげ』 ~欠伸といふは善なりや惡か、ほか
斎藤茂吉の最後の歌集『つきかげ』の中から歌を紹介していく。
欠伸(あくび)すれば傍にゐる孫眞似す欠伸といふは善なりや惡か/斎藤茂吉『つきかげ』
われの背(せ)にゐるをさな兒が吃逆(しやくり)せり世の賢きもするがごとくに/斎藤茂吉『つきかげ』
→孫のあくび、しゃっくりの歌。あくびやしゃっくりを善悪や賢さに結びつけようとする。
山なかに作歌能力も衰へて七日を居つつ十日を居たり/斎藤茂吉『つきかげ』
思ひではをかしきものか遙かにし過ぎにし人も目のまへにくる/斎藤茂吉『つきかげ』
人富みてゆたかになれる面相を牛馬見なばいかにか見らむ/斎藤茂吉『つきかげ』
わが眉も白くなりたれば地下鐵にひそむ時さへ氣がひけてならず/斎藤茂吉『つきかげ』
→眉が白くなった経験はないが、そういうものなのか。地下鐵に「ひそむ」がいい。
予自身の心臓の音(おん)を聞くごとく冬の泉の湧く音(おん)を聞く/斎藤茂吉『つきかげ』
→「音」にだけ二度ルビがふってある。「おん」という読み方にこだわりがあるのか。思えば自分の心臓の音を聞くときって、聞くことにとても集中している。
さしあたり吾にむかひて傳ふるな性欲(せいよく)に似し情(じやう)の甘美(かんび)を/斎藤茂吉『つきかげ』
不可思議の面(おも)もちをしてわが孫はわが小便するをつくづくと見る/斎藤茂吉『つきかげ』
齒の手入れあらためてせむとおもひたち寝(ね)しかば夢二つばかり見たるかも/斎藤茂吉『つきかげ』
かの夜(よる)に電燈のうへ蔽(おほ)ひたる黒き紙いまだも殘り居りにき/斎藤茂吉『つきかげ』
ひとねむりせし老の身が目をあきて寂しくなりぬ山の夜のあめ/斎藤茂吉『つきかげ』
→年をとると眠りが浅くなると聞く。それとも雨の音で目覚めたのか。
老の身が寂しくなるってことは、若いころの夢でも見たのかと想像した。
硯の中に墨みづのかたまりが老いたる人の憂(うれ)ひのごとし/斎藤茂吉『つきかげ』
ひむがしに茜さす雲たなびきぬ平凡にして欲のなき雲/斎藤茂吉『つきかげ』
以上。
これまでのなかでとくに良いと思った。
これで講談社の日本現代文学全集51「齋藤茂吉集」に入ってる七つの歌集を読み終えた。
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