アルバム

2012年09月02日

中島みゆきのアルバムを聴く★42「真夜中の動物園」

中島みゆき「真夜中の動物園」





2010年のアルバム。ボーナストラック2曲を含めて全12曲。





歌詞カード、ジャケット

走っているみゆきさんのモノクロ写真のジャケット。何か追いかけているのだろうか。

歌詞カードに写真は多い。
ギターケースを持った写真、「歌旅」を思わせる青いギターを持った写真、動物。
タバコを吸ってる男性がスペシャルサンクスに名のある倉本聰さんだろう。





楽曲



1.今日以来

中庸なテンポのあっさりした楽曲。
うまくいかない人生の中で、愛を求める側から愛を与える側になりたいと歌う。





2.真夜中の動物園

7分あり最も長い。また、アルバムタイトルにもなっている。


動物園では真夜中になると逢いたい相手がやってくるという。

動物園にいる動物はどこか遠くから連れてこられて閉じ込められているわけだ。家族とも恋人(人じゃないが)とも友からも引き裂かれて。そんな相手が夜中に会いにくる。
群れだったり、地平線を飛んだり、流氷があったりと、まるで国ごと世界ごと動物がやってくるかのような迫力だ。動物達の逢いたいという想いがそうさせているのだろう。


その中にヒトがいる。人間というより、動物としてのヒトだ。
「誰だいヒトなんか呼んだのは」と動物の一匹が疎んじて言う。それに答えて別の動物が、このヒトはシロクマの親代わりだったんだという。

動物を動物園に閉じ込める人間を憎むのが動物の自然な感情だろう。(それとて人間の想像だが)
そこにあえてヒトを登場させたところに、人間を憎みきれない、見捨てきれない中島みゆきの想いを見る。

動物の住む広大な世界に比べ、人間の作った動物園はあまりに狭い。しかしその動物に正面から向き合った人間もまたいる。




3.まるで高速電車のようにあたしたちは擦れ違う


タイトル通りの言葉は出てこない。電車を思わせる言葉もほぼない。「走る」「停まる」くらいだ。では何が電車なのかというと、このリズムが電車っぽいんだと思う。

「私たちは春の中で」とか「過ぎゆく夏」みたいな内容だ。

その場限りの生き方をする「あたしたち」。時間はどんどん過ぎていき、はかない。若いようだが、しかし自由という名前に疑いを持っている。どこか危うい若者。

中島みゆきの歌う若者は実際の若者とは違う想像上の若者という感じもするが、でもその漠然とした危うさにはリアリティがある。





4.ハリネズミだって恋をする

ラテンっぽい曲調。研ナオコっぽいとも感じた。

傷つけてしまう、傷ついてしまう、うまく人と付き合えないハリネズミの嘆きをリズミカルに歌う。

「傷つけちまった悲しみに」っていいな。中原中也か何かが元なんだろうけど。





5.小さき負傷者たちの為に

6分50秒あり、長い。
これ苦手なんだよなあ。

小さき者とそれを騙す卑怯な者がいて、小さき者に味方したいという内容。
「言葉しかない命ども」を攻撃してるが、一歩間違えればみゆきさん自身に跳ね返ってきそうな批判だ。
第一、これは誰と誰を歌ってるんだろうか。


何に味方して何と戦っているんだろう。これを聴いて「みゆきさんが私に味方してくれてうれしい」とか「痛いところを突かれた」と感じるのはどんな人たちなんだろう。同志となるっていうけど、同志として何をするんだろう。






6.夢だもの

すぐに「夢だったんだね」と比較したくなってしまっていけない。

夢見るような曲だ。
夢だ夢だといいながら見る夢は苦いような気がする。どこまでいっても「こんなのは夢だ」という否定から逃れられないのは、現実であってほしいと強く望んでいるからか。





7.サメの歌

このアルバムの中で好きな曲だ。

この歌も人生が過ぎていくことを歌っているが、力強さがある。その力にはどこか盲目的なものがある。
自ら選んだ力というよりは、後ろを向いている余裕がないところから生まれる前向きさだ。
良い過去も悪い過去も終わったことだ。いつまでも振り返ってはいられない。
サメは泳ぎ続けていなければ死ぬ、と何かで聞いたが、そういうことかな。

「なまもの」というのが魚っぽくて面白い。




8.ごまめの歯ぎしり

うらぶれたようなあやしげな雰囲気だ。

「なつかない猫」がしゃべっているような印象だ。

冷たい性格になってしまった歌の主人公が、そうなってしまった自分を語る。失敗の記憶がそうさせているようだ。






9.鷹の歌

今までないタイプの歌じゃないか。

おそらくこれは倉本聰さんをイメージした歌なんだと思う。
老いてはいるが気高い。そんな人物を鷹になぞらえている。



「怖れるなかれ」というけど、文語で正確にいうなら「怖るるなかれ」になるんじゃないか。最近文語文法をちょろっとやっているので、そういうのが気になってしまう。「小さき負傷者たちの為に」もそうだ。






10.負けんもんね

一種の応援歌だ。

「試すなら試せ試金石」っていいなあ。開き直った感じだ。過酷な運命の胸ぐらをつかんで凄んでるみたいだ。


「失えばその分の何か恵みがあるのかとつい思う期待のあさましさ」も心に響いてくる。




「が」や「な」の一文字で一気に絶望から希望に転じるのがすごい。この一文字はでかい。絶望を一文字でぶっ壊すみたいなエネルギーだ。
これはすごいなあ。

仕事中に頭の中で流すこともある、好きな歌のひとつだ。





11.雪傘

一転して切ない歌だ。
冬のイメージと、恋人の不在と、曲を覆う(特に弦楽)のあたたかさが、交ざりあってなんとも胸に迫る。

以前オレはアルバム「パラダイス・カフェ」の「ALONE, PLEASE」を聴いて泣いたことがあるが、その系統の歌だ。





12.愛だけを残せ(Album Version )

恥ずかしながらシングルバージョンはまだ聴いてない。

しっとりとしている。

人生を「選ぶつもりで選ばされる手品だ」とするのは鋭い。

人生を歌っているんだが汗臭さがまるでなく、とても神秘的だ。それには古めかしい言い回しや命令形の効果もあるのだろう。
「弱き者」「汝」などの言葉は歌に重みを与えている。





おわりに

中島みゆきは文語に近づいているのだろうか。
「弱き」などの「き」で終わる形容詞、「知れず」「すべ」「己(おの)が身」「何ゆえ」「~なかれ」「汝」などにその傾向が見られる。そういう方向に行ってもらうのも悪くない。



「人生」という言葉が多いと思って数えてみたら、4曲に合計12回出てきた。

良いアルバムでした。まだ聴いてないアルバムもあるけど、もっと聴きたくなった。





 



このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック
mk7911 at 20:51|PermalinkComments(0)

2011年08月01日

橘いずみを聴き直す★6「TOUGH」 - 『WINDOW』ほか

TOUGH




1997年のアルバム。11曲入り。曲名が全て英語表記になっている。



ジャケット、歌詞カード

ジャケットはバラの花びらが散りばめられたバスタブに腰かけるいずみさん。あらぬ方向を見ている。波紋のある水のような衣装だ。


さらに外側には刺繍みたいな模様のワクがある。キラキラした印象を形づくっている。

歌詞カードの中も模様があり、壁紙みたいな印象を受ける。
アメリカにいるらしい。黄色いタクシーがある。黒人とチェスやってる写真もある。楽しそう。
「WINDOW」のページの写真は体がきれいな三角形になっていて印象的だ。


また、曲名のレタリングが一つ一つ違う字体になっている。
異なる字体に異なる背景。なかなかこだわっている。




楽曲について



1.WINDOW

濁ったギターから始まる、中庸なテンポのけだるくかっこいい曲。

どうやら夜で、主人公は孤独で、癒やしみたいなのを求めてるらしい。

しかしそういう内容はあまり重要ではなさそうだ。ひたすらかっこいい音に身を任せていたくなる楽曲。




2.BROWN

やはりけだるく、ちょっとワルそうなかっこよさを持つ。ヴォーカルがささやくように控えめなのも1曲目から続く傾向だ。

1番。応援してるみたいな詞で始まるが、逆にしんどそうな感じがする。

途中で少し早口になり朝食の描写をする。
「僕からは特別にない」という言い回しが独特だ。学校の先生のお話みたいだと思った。
先は行き止まりで戻れば砂漠、とはどういうことか。八方ふさがりってことか。


2番。さらにしんどそうな詞で始まる。

「ピンチ」と「パンチ」、「ピンチ」と「認否」が韻を踏む。

また早口になり、人生のやり直しを思わせることを言う。
1番だと「行き止まりなんだ」で2番だと「行き止まりだって」になってる。伝聞なのか?

つまり、このまま行くのでもなく、かといって戻るでもなく、新しい道を行こう、ということかな。
時間を持て余す、という部分から失職を連想した。

BROWNとはキリマンジャロの色だ。新しい朝、新しい人生の象徴かな、と考えた。実際の意味はもちろん知らない。




3.RADIO WAVE
相変わらずゆるいテンポだ。ゆるくてかっこいいのがこのアルバムの方向性なのだろう。洋楽の影響があるのかもしれない。


詞を見て「深夜急行」を思い出した。すぐに場面が変わり主役もいないため、全体としては筋がない。1~3行ずつ別の詞をコラージュしてるみたいだ。
それはまるでラジオの周波数をいじりながら聴いてるみたいでもある。ノイズに混じっていろんな放送局から断片が聞こえるわけだ。

「言葉をあやつる知能犯 詩人きどり」
「囚われの部屋までご案内」
がいいな。




4.MOON PALACE

テンポが上がる。内容が汗臭くなる。
がむしゃらに生きて、苦しんだり楽しんだりする内容。

「いいかげんにやってるふりして全力だしてしくじる」のがかわいい。
オレは逆だな。一生懸命さをアピールしながらスキを見ては手抜きする。いいかげんそうなやつが自分よりできてると焦る。




5.BLUE ARCADE

クラリネットが印象的な楽曲。
「きまり」「愛してる」の系列のつらい恋の歌だが、オシャレなアレンジのおかげで重くならず、流して聴ける。

アーケードを歩きながら彼を思っているのだろう。

サビが何かに似てると思ったら「可愛い女」に似てるんだと気づいた。




6.SHOOTING STAR

ハーモニカが印象的。よく見たらタンバリンを叩いてるのもいずみさんだ。
積極的になれと歌い、それから、自分の嘘やごまかしや不安を歌う。

「ミッドナイト」と「みんな」はそっくりだな。見事。




7.SHOELESS JOE

リラックスした楽曲が続いていたが、ここで熱い曲が出てくる。

外人さんの声をふんだんに使って金管で盛り上げる。弦楽器の人数が多いみたいだがあまり聴こえない。

2番の野球の描写が非常に印象的で、この歌といえば野球の歌、というイメージがオレにはある。
九回裏の逆転ホームラン。これは熱い。メジャーリーグを想像しながら聴く。




8.NATASHA

やや短い。テンポが速いがうっすらと悲しい。好きな歌だ。

「ゼッケン5」のように何人かの無関係な人が描写される。
ナターシャやイリーナはロシアの名前だ。ウォッカを出すのも効いてる。

彼らには共通項がある。「ウサギとベルベット」のようにみんな失った過去を考えている。

今回歌詞を読み直していて、「閉めた扉が開かない」の一行が心に響いた。





9.FERRY BOAT

ギターと弦楽が優しい。歌詞カード横のいずみさんもまた優しい。
手紙っぽい。「こぼれおちるもの」で手紙っぽい問いかけの歌詞が出てきたが、こちらはより徹底的に手紙のようになっている。

相手にたくさんのことを訪ねている。それらは相手を気づかう内容になっている。ただの問いかけなのに、優しさにあふれている。
そしてこちらからも近況を伝える。一つ一つは他愛のない内容のようだが、なぜだか心を打つ。

歌い出しで「わたしがいなくなったら」「わたしと別れたなら」と言っている。この2人は手紙をやりとりしてはいるが、思い出は遠くなり色ばかり残り、思わず知らずのうちに距離が広がっていくようだ。そんな別れの予感がこの歌に悲しみをもたらしている。

最後から2行目に「また逢えるかな」と言ってるが、もう逢えない感じだし、できることももはや何もないのではないか。
そういえば「こぼれおちるもの」の最後に「また、逢えるでしょ」という言葉がある。いずみさんが手紙の最後で言いたくなる言葉なのかな。


この曲はアルバムのトリを飾るくらいの器は充分にあるが、これで終わったら悲しいアルバムになりそうだな。
終わらずに引き続き次の曲が始まる。




10.TOUGH

弦楽器のメロディーが美しい。

歌詞の長いメッセージ性の強い曲には激しいものが多いが、この曲はそっとささやきながら言葉を聞き手の心に刻み込む。

最初の「小声で伝えてごらん」がすでに橘いずみの成長を語っている。
ないものをねだったり理屈を振り回す生き方を歌う。「なんぼのもんじゃろかい」という言い回しは特殊だ。

2番では父さん母さんが出てくる。両親の浮気話を聞きたがった「失格」の頃とは違う。苦労話や昔話を聞きたい。


曲調がかわる。ここでは自分の生き方らしきものが語られる。若くて、迷っていて、はかない。そんな描写だ。



続いて、人間や人生を悪くする欲求が歌われる。最後にようやくタフという言葉が出てくる。


人間の強さと弱さ両方が詞にも曲にも込められているように感じる。弱さを受け入れる強さって言えばいいのかな。
一つ一つのことを愚直にやっていくしかないな。




11.NEW YORK NITE

ピアノのみで歌われる。チャーリーという人は他の歌でもピアノを弾いている。
オレの英語力ではおぼろげにしかわからない。

弾んだ感じのオシャレで短い曲だ。

はじめは蛇足に感じていたが、8.9.10.とさびしい深刻な内容の楽曲が続いたし、こういう曲でサラッと終わるのもアリかなと今は思う。





おわりに

3つに分けられる。
はじめはけだるくかっこよく(1~3曲目)、
だんだん汗臭くなったり感情が混じってきて(4~7曲目)、
終盤では失われた過去を真摯に歌う(8~10曲目)。
最後はサラッと全て洗い流す。(11曲目)

「オリオン座」までのような激しいメッセージ性や力強さを期待すると「あれっ」と思ってしまう。が、リラックスした中にかっこよさも深さもあるのがこのアルバムだ。
正直はじめは変化にとまどい「失敗したかも」と思ったけど、聴いてるうちに大好きになっていった。そんなアルバム。




橘いずみを聴き直す
★1「どんなに打ちのめされても」
★2「太陽が見てるから」
★3「こぼれおちるもの」
★4「十字架とコイン」
★5「ごらん、あれがオリオン座だよ」



このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック
mk7911 at 21:27|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2011年06月27日

橘いずみを聴き直す★3「こぼれおちるもの」 - 『永遠のパズル』ほか

こぼれおちるもの



1994年。「THE SHADOW OF THE MOON」という題もついているが、これは前作「太陽が見てるから(THE SUN IN THE SKY)」との対比だろう。

10曲いり。


ジャケット、歌詞カード

ジャケット。
とにかく空が青い。いずみさんは真っ白い衣装で真っ白な場所にいる。ここはどこだ。どこなんだ。雲の上にでもいるみたいだ。



なんか橘いずみの歌詞カードはめくった最初のページにインパクトがあるようだ。
花を踏んづけているようないないような写真、生首みたいな写真がある。


手から砂がこぼれてるみたいな写真がいくつかある。よく見るとみんな違う。「すくってもすくってもこぼれおちてしまう」に対応してるのか。

中の写真でもいずみさんは一貫して衣装が真っ白い。





楽曲について

1.上海バンドネオン

中国の都会の夜の歌だ。弦楽器のトレモロが気持ちいい。好きな歌だ。

上海の裏と表、醜さと美しさを描く。色っぽいしロマンがある。
韻の踏み方が巧みだ。

ウォー、ルーキンショウシュウファー
ワイトウ、ヨウティア、ハン
という中国語はどんな意味だろう。



上海バンドネオンはシングルになった。その時のカップリング曲「まにあうかもしれない」はアルバムには入っていない。このアルバムのイメージとは違う楽曲かもしれないな。
「まにあうかもしれない」は、がむしゃらで前向きでパワーがある。LIVEの臨場感がある。かなりいい曲だ。




2.DARK ZOO

夜の歌が続く。激しいが暗い歌だ。
自分を閉じ込められ飢えた動物になぞらえている。

孤独、不信、恐怖。解決が見えず、閉塞感がある。




3.永遠のパズル

ドラマの主題歌になり、知名度がある。


人生における理想と現実のギャップを歌う。
このパズルとは正しい生き方、自分が満足できる生き方、理想の生き方とかそういうことだろう。永遠に理想的で完璧な生き方はできない。だからパズルは永遠に解けず、パズルのままでありつづける。



「流した涙の数だけ それだけの喜び 本当に君を救っているかい」
とは何が言いたいんだろう。あなたの涙は無駄な涙だと言いたいのか。
自分の尺度で「わりに合わない」などと言ってられる期間は限られているように思う。喜びがともなわなくとも涙を流しながら頑張らなきゃいけないこともあるんじゃないかと思った。




4.砂場の太平洋

再び夜の歌。夢を見て理想に突っ走り、音楽に慰められ、そして悩む様子が伝わってくる。

「街の灯り消えてゆく中 私を照らす光を探してる」が好きだな。

好きな歌のひとつ。




5.指定席

「バニラ」もそうだったけど、この人は恋愛に罪悪感が伴うのかな。わからなくはないけど、「してはいけないこと」が何か気になる。

憂鬱な歌だ。終盤のエレキなんか、ズタズタに傷ついた心を表現してるみたいだ。聴くシチュエーションによっては落ち込みそう。





6.リフレッシュ・ホリデー

ここまで夜の歌、暗い歌、悩んでる歌が続いていたが、急に馬鹿みたいに明るくなる。明るいけど、みんなで盛り上がれるような歌じゃない。


休日に出かけて楽しいな、みたいな歌だ。しかしよく見ると皮肉っぽい。遊んでる自分に対して軽薄さを強調しているのは一種の自虐か。


シャガールであくびするのが個人的には残念。あれはいいものだ。




7.ズレテル

全編セリフでできている。

おじいちゃんを慰めるような音楽から急に変わるのが面白い。

教訓やことわざみたいなのが並んでいる。かなり理想が高い。こんなにたくさんの理想をこの通り実行できるわけないと思う。それでも、この人は理想通りにできないのを気にしてるらしい。
目標設定が現実とズレテルのだ。



おじいちゃんを慰めているが、これがまさにズレテいる。悩んでる若い者が老人の悩みなど聞いてどうなるものか。人生の先輩が後輩の悩みを聞く方が自然だ。そこにズレがある。




8.アドバイス
悩んでる歌が多かったが、それらの主人公達に捧げるような歌だ。落ち着く。

私が見てるから素直に自分らしく迷わず行きなさい、と歌う。
身近に信頼できる人がいるのは大事だな。




9.ボタン

悪い夢から作った歌だろうか。
冷たい別れが、けだるい雰囲気の中で歌われる。

夢から覚めると一番好きなシャツのボタンがとれてる。不吉だ。いや、もとから取れてたのか?





10.こぼれおちるもの

最初に上海バンドネオンの音型が出てくる。

手紙みたいに相手を気づかう調子でささやかに始まるが、胸が張り裂けそうな、つらい失恋の歌になってゆく。
叶わぬ思いだが、この主人公はあきらめきれない。あなたのことを全部知りたいと願い、答えを探している。

スケールの大きな傑作だ。





おわりに

英語のタイトル通り暗いアルバムだなあ。ジャケットが明るいから、聴いた時によけい暗く感じた。

1.2.4.は夜の歌で、5.9.10.は悲しい恋の歌だ。3.7.では理想の自分になれず悩んでいる。6.の明るさはうさんくさい。8.には救いがある。

5.6.7.9.はどちらかといえば捨て曲かな。

「上海バンドネオン」「砂場の太平洋」が好きだ。




橘いずみを聴き直す
★1「どんなに打ちのめされても」
★2「太陽が見てるから」



このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック
mk7911 at 11:30|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2011年06月22日

橘いずみを聴き直す★1「どんなに打ちのめされても」 - 『失格』ほか

序文

1回目なので少し序文めいたものを書く。

オレが橘いずみを知ったのはラジオから流れる「失格」が最初だったと思う。
当時中学生のオレはラジオばっかり聴いてた。ラジカセでラジオからテープに録ってそれを聴く、そんな生活。

「失格」は衝撃的だったが「バニラ」もとても衝撃的だった。
当時中学生でいろいろ思うところがあったが、しかしそれを言葉にするだけの頭もなかった。そんな時に橘いずみの言葉の洪水に会って感激したわけだ。


CDプレーヤーを入手したのは94年。
95年から97年にかけて橘いずみのアルバムを集めて聴いた。「tough」が最後で、それ以降は知らないが、機会があれば榊いずみになってからのアルバムも聴いてみたい。

ファーストアルバム「君なら大丈夫だよ」は気に入らなくて売ってしまった。それ以外の6枚のアルバムを聴き直し、今ならどう聴こえるか・どう感じるかを書いてみたい。





オレが急にこんなことを思いついたのは、榊いずみさんをTwitterで見つけたことがきっかけだ。まだ音楽活動をしてらっしゃるようで嬉しい限り。
光の速さでフォローしたけど、恐れ多いからリプライ飛ばしたりはしない。

そんなことがあり、懐かしくなって聴き直したいと思ったわけ。


どんなに打ちのめされても



10曲入り。3曲目に失格が入っているのが目をひく。



ジャケット、歌詞カード

ジャケットでは無表情の橘いずみがこちらを見ている。何か悩んでそうな感じがする。枯れた枝に取り巻かれている。紫色だ。一見地味なようで、なかなか個性的なことをしている。



裏側ではいずみさんは荒れ地のようなところを歩いている。




歌詞カードを開くといきなり砂で汚れた顔で笑ってるいずみさんが出てきてビビる。

何がおかしいのか、砂の上で笑い転げてる写真もある。

親しくもないような人からこれだけの表情を引き出すのがカメラマンの仕事だとしたら、カメラマンって偉いよな。



ミュージシャンの名前を見ると、中島みゆきのアルバムで見たことある名前がちらほら見られる。アレンジの星さんは「あした天気になれ」の編曲をやってた。キーボードの中西さん、浦田さん、ベースの美久月さんも名前は知ってる。




楽曲について


ようやく楽曲まできた。
書くまでもないとは思うけど、オレがここに書くのはオレの感じ方であって、アーティスト本人の意図とか、多くのファンの意見とか、そういうものとは必ずしも合致しないところもあるかと思います。


1.打ちのめされて


いい曲だなあ。曲は前向きな感じだけど、歌詞はそうでもない。

2番の最初だけ明るい。1番の生き方と対比されているんだろう。
だから、暗→暗→明→暗→暗、という変わった流れになっている。

サビの部分では挫折を歌う。優しい言葉で余計に打ちのめされる。わかるけど、善意ならば良い方に受け止めてほしいかな。




2.東京発



言葉が多い歌。「失格」から入ったオレは、こういうテンポのいい、言葉のマシンガンみたいな楽曲に特に魅力を感じる。

この歌でも主人公は打ちのめされているが、しかし自分らしく乗り越えている。
そして全てをリセットして新しい一歩を踏み出そうとしている。
青臭くていいね。

今、歌詞カードを見ていて誤解に気づいた。最後の部分、今まで「吠えてばかりいたけれど」だと思っていたら「微笑んでばかりいたけれど」だった。全然意味が違う。
愛想笑いでもしてたってことか? なんか違和感。


冷蔵庫がカラッポ、というのが気になった。淋しくておかしくなるのと関係あるのか。まあ何か食べて落ち着いてください。
冷蔵庫の次は洗濯機も出てくる。1人暮らしなのが強調されている。





3.失格

ここでいよいよ失格が登場。叩きつけられる言葉にマゾのような快感を感じながら聴いてきたけど、一度この歌詞をじっくり読んでみたいと思っていた。


出だしから不吉な感じだ。怪しい夜の都会を思わせる。


ざっくり言ってしまえば、この主人公は薄情で愚痴っぽくて恰好つけたがりで自分が大好きだ。


1番、前半では病人と赤ん坊がベッドにいて、後半では自分がベッドにいる。


まあこれくらいならどこにでもいる機嫌の悪いOLだな、って感じの内容だ。


2番。地名が多いが、あちこちに住むのがステータスだと思っている。
チャカ・カーンは知らないけど、オレだって橘いずみの歌の意味をよくわからずに夢中になったよ。

失格と言われたいのは、つまり開き直りたいんだろう。「そのままでいいんだよ」なんて優しい言葉を聞いたら打ちのめされるんだろう。


こんなふうなキャラになる前を振り返ってから3番。
両親の浮気に寛容なのは、自分が浮気者だからか。愛してない男にも抱かれるわけだから。

他人の不幸に関して問いかけている。「悪いのは自分だけじゃない」と言いたいんだろう。




こういう人って、けっこうどこにでもいると思う。それを失格だと言い放つことによって、むしろ聞き手をドキリとさせる。
いくつかは身に覚えがあるから共感できるし魅力を感じる。この歌を聴いて「なんて悪い女だ」と憤慨する方が珍しいんじゃないかと思う。




4.富良野

女性二人で傷心旅行というわけか。
せっちゃんはさみしい顔をして、飛び込んで死のうと言ったり、誰か(男かな)の悪口を言う。私は勝手にふさいでしまったりもしたが、なんとか明るいことを言ってせっちゃんを慰めようとする。


富良野にはオレも修学旅行で行ったことがある。ラベンダーアイス食べた。紫色なんだよな。
ちょうどこのアルバムが紫色だけど、ラベンダーの紫なのかな、なんて一瞬考えた。




5.愛してる

このアルバムのラブソングは5.6.8.の3曲だけか。

強く愛しているが、彼はそれを知らない。この愛は伝わることがない。
ハスキーな声が悲痛さを際立たせている。せつねえ。




6.またかけるから

まだかなり若いカップルの電話の様子だ。

ひとりで映画を見ててもあなたのことを考えている。
「あなた」に似た主人公がキスしてるから嫉妬でふてくされてるわけだ。空き缶つぶすのかわいい。

キスもまだだし、同じ番組見てるのを喜んでる。初々しい。

悪い夢の話は彼に心配を求めているのか。オレは彼女から「汚れたトイレの夢を繰り返し見る」と言われて「じゃあオレが行って掃除するからね」と言ったことがある。
そういう受容を期待したんだろう。


最後に全部ウソだと話す。そして電話を切る。ウソでした、というオチ。
本当は何してたんだ。
つまりラブシーンの話も夢の話も彼との距離を縮めたくて話したのか。黙ってりゃわかんないのに、ちゃんと話すのが正直だな。




7.オールファイト

青春って感じだな。
バスケ部なのか。バスケでグラウンド使うか? いや、いろんな部活の情景か。

ダメなチームなのが微笑ましい。

オレの時はオールファイトというかけ声は無かったな。もう覚えてないや。



ウーウー、というコーラスがださい曲だなあ。



8.ごみ

「愛してる」に近い内容。悲痛な恋の歌。

サビの部分で紙をクシャクシャするような音がある。これがごみっぽい。

ごみという言葉は出てこないが、私はあなたに拾ってもらう価値もない、というところがごみなんだろう。



9.ジュエル

「ごみ」の対比でこういうタイトルなのかな。
「ボロは着てても」という冒頭が水前寺清子の「いっぽんどっこの唄」みたいだ。


さまざまな矛盾を含んでいる。
地名が出てくるが、「失格」同様に、この人にとっては海外は金持ちの象徴なのだろう。

なにげに深い歌だと思う。難しいなぞなぞを見てるみたいだ。

さまざまな理想や過酷な状態が歌われるが、最後は無邪気になる。
理想と現実のギャップに苦しむより、素直にありのまま生きよう、みたいなことだろうか。



10.がんばれ、なまけもの

いくつか動物が出てくる。

ピンクのフラミンゴは見かけによらず頑張ってる。
なまけものはベソをかいてる。ベンチにいるということは人間を例えているのか。ベンチでなまけてるように見えても、普段は会社に勤めてるのかもしれない。
踊ってるどぶねずみにも忘れてしまいたいつらいことがある。
つまり、みんな頑張ってるんだ、と言いたいのか。

みんな頑張ってるから君もがんばれと歌う。がむしゃらなエネルギーがある歌だ。元気がでる。




おわりに

サウンドに多少の難はあるが名作だ。(まあ全部名作なんだけどさ)

4.5.8.は悲痛で、何度も軽く流すことはできない。7.は青臭さが最初は受け付けなかった。
名作だがヘビーローテーションには適さないアルバムのように思う。





 



このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック
mk7911 at 10:59|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2011年05月22日

中島みゆきのアルバムを聴く★40「I Love You,答えてくれ」

I Love You,答えてくれ



2007年のアルバム。
オレは「ララバイSINGER」やLAライヴを聴いていないから、順番を飛ばしていることになる。

オレがこれを買ったのは「歌旅」のライヴDVDを買ったのがきっかけだった。
歌旅というコンサートが大変素晴らしいものだった。そのコンサートの収録曲の多くがこのアルバムに入っているという理由でこのアルバムを手にした。



ジャケット、歌詞カード

ジャケットは「歌旅」のトラックのデザインと同じだ。つまり金色の背景に白い衣装、かっこいいみゆきさん。そして迫力ある毛筆で書かれたアルバムタイトル。

裏は赤い衣装だ。靴が気になる。女子プロレスラーが履きそうな靴だ。


歌詞カードを見る。
金色は屏風の色だとわかる。
畳やふすまなどが「和」を感じさせる。白いページに光をあてると和風な模様が浮きでる。

白い衣装は暴走族みたいだと思った。
「美雪組」「美雪会」とでも言えばよいだろうか。

和の中の上品さと、それに包まれた力強さを感じる。




収録楽曲の感想



1.本日、未熟者

TOKIOに提供した曲なので、TOKIOのバージョンもYouTubeで聴いた。全く動きのない舞妓さんが印象に残った。

コンサート「歌旅」で強い印象を残した曲だ。
金管の「パパラパパ~」から「ジャージャジャ・ジャージャジャ」が入ってくるところからしてインパクト抜群だ。

編曲のところに中村哲さんの名前がある。サックスの人だ。
このアルバムでは瀬尾さんの他に誰かもう一名がアレンジに加わってる曲がいくつかある。
最後のサックスと金管のユニゾンは今まで聴かれなかった手法だ。



詞の内容は、不器用な男の生きざま、といったところか。
この男は苦しんで生きている。そこに甘い誘いがかけられるが、男はそれを蹴る。要領よりも筋を通したまっすぐな生き方だ。
おろおろとしてはいるが、ある意味強い男だ。

「野望」「義」といった言葉は女性が使うような言葉じゃないな。このへんに男臭さがあり、和風な何かを思わせる。
「あるか」と問うている。野望、義、情、恥、そういったものが彼にこの生き方をさせていると考えられる。





2.顔のない街の中で

サクサク流れるサウンドだが、みゆきさんは何かを訴えかけるように歌う。

この歌はアルバム「短篇集」の中の「帰省」につながってるように思う。8月と1月以外の都会を歌っているのだ。
人同士が日々の中で物のようになってゆくことを歌う。

「ならば見知れ」とみゆきさんは言う。
「見知らぬ」「人見知り」という言葉はあるが、「見知る」という言葉はあまり聞かない。その命令形「見知れ」となると、さらに聞かない。
「思い知るまで見知れ」となると難解だ。何をどうしろというのだろう。

「顔のない国」と聞いてすぐに菅総理のことを思い出した。あまり政治的なことは書きたくないが、菅総理にはリーダーシップがない、方向性がないと言われている。「顔のない」というのはそういうことを言うのかな?と思った。




3.惜しみなく愛の言葉を

「歌旅」のエンディングに流れるのはこの曲だったのか。


今日ありったけの愛を語ったら明日は言うことがなくなるのか。いつかのために今日は黙っているのがいいのか。
いいや、私は今日も明日も惜しみなく愛の言葉を君に捧げる。
…という内容だと理解した。


今日という日を精一杯生きて、愛せる限り愛する。いいなあ、そういう生き方。恋愛に限らず、オレは怖くて全力でやらないことがあるなあ。




4.一期一会

世界ウルルン滞在記の曲になったらしい。そう思って読むと、なるほどしっくりくる歌詞だ。

「見たこともない」の連発や「遠く離れて」が海外を思わせるし「短い日々」もポイントだな。

あなた自身の笑顔を忘れないでほしい、というのがいいね。

中島みゆきの歌に出てくる旅人は孤独な人が多いけど、これは人とのつながりを感じさせてくれる歌だ。




5.サバイバル・ロード

なかなか激しく、迫力のある楽曲だ。

「裸足で走れ」の21世紀版だな。裏切りに満ちた世を歌う。

「身ぐるみ剥がれて」
「食いちぎられて」
「喰らいあって闇の中」
などエグい言葉に強い表現を感じる。かっこいいぜ。




6.Nobody Is Right

コーラスが充実している。手拍子が加わったあたりで「おだやかな時代」を思い出した。

はじめは良さがわからなかった。ラッパが軽薄に聞こえるし、同じ英語の繰り返しは変化に乏しい。しかし、じっくり聞いたら深い内容だと感じた。

何もかも正しい人なんていないんじゃないかと歌う。その上で、正しさを手段にして争いを起こしたり快楽を貪る行為を批判する内容だ。

何のことを歌ってるんだろう?

オレはなんとなくアメリカのことを考えた。あまり世界情勢に詳しくないから自信を持って書けないんだけど、アメリカが中東に対してやったことがなんとなくこれに当てはまってる気がする。違ってたらすみません。

戦争に正義も悪もないよな。

必ずしも「争い」が戦争を意味するとは限らないな。

オレは2ちゃんねるのいわゆる「祭」に加わって、悪い誰かが晒しあげられる様子を見て楽しく感じることがある。晒したり叩いてる人は、名目上は正義のためにやってると言うが、実際は勝利の美酒に酔いたいわけだ。
これはあくまで例えだけど、つまりそういう偽りの正義を戒める内容の歌ともとれる。


自分が絶対正しいという思い込みを捨て、多様な価値観を受け入れ理解し認めること。ありふれてるようで、難しい。




7.アイス・フィッシュ

編曲のところにみゆきさんの名前がある。神秘的な曲。「六花」「白菊」「伝説」あたりに近い。


さっきの歌とは対照的に比喩表現が多い。
解釈が分かれるかもしれないが、オレが想像したのはいじめ問題だ。

クラスにいじめられっこがいたとする。その子を助けたいと思いながらも保身からそれができず、そんな自分に悔しくなる。そんな状況が見えた。
自由に水の中を泳ぐことができず、怖じ気で凍りついて動けない、そんな魚。





8.ボディ・トーク

これもライブで印象的だった。かっこいい曲。

自分の気持ちを言葉を使って伝えることができないもどかしさを歌う。

命さえもさしだせる、そんな強い愛を伝えたい。海の様子だとか、爪に体温があるとか、そんなことを伝えたいわけじゃないのだ。思いを伝えられないんだから言葉なんて弱いものだ。言葉がダメならせめて身体から伝わってほしい。


みゆきさんほどすごみのある言葉を使って詞をかける人が「言葉なんて迫力がない、言葉は弱い」と言ってるのが不思議な感じだ。



9.背広の下のロックンロール

これは「歌旅」のトリを飾った曲だ。オレはDVD見てこの歌のところで泣いた。それぐらい感動した。

この歌に関しては「歌旅」の記事でさんざん書いたから繰り返さない。そちらを参照。

CDは映像がないぶん感動は少ないが、それでも堂々たる名曲には違いない。




10.昔から雨が降ってくる

これも「歌旅」の感想で既に書いた。DVDと大差ない内容だ。そちらを参照。

みゆきさんの歌には「時代」をはじめとして、生まれ変わりが出てくる歌はいくつかある。でも人間以外が絡んでくる例は少ない。「この空を飛べたら」くらいしか思いつかない。


盛り上がるからなんとなくいい曲みたいに聞こえるが、好きかと言われたら別に好きじゃないな。
降ってくる雨を見て大昔のことをしみじみ考えた体験なんてないし、いまいち共感できない。




11.I Love You,答えてくれ

いきなりみゆきさんの迫力のヴォーカルが入ってくるから開始早々でぶったまげてしまう。

損得も何もない真っ直ぐな愛の歌だ。しかしこの彼女、相当疑い深いようだ。

この告白にしても、伝えたいから伝える、それだけの純粋な告白だ。小細工も何もない純度100パーセントのラブソングだ。
愛は他の何かを得るための手段ではない。愛そのものが目的なのだ。

見返りを求めない愛というと女性的な感じがするが、この歌は男性的だ。



おわりに


中身の濃い11曲。つい感想も長くなる。感想が長いということは、色々考えさせられた、感じるものがあったということですね。
3.7.10.あたりがちょこっと物足りなかったけど、これは名盤と言っておきたい。いろんな感情のうねりやエネルギーがビシビシと伝わってくる一枚。








中島みゆきを聴き直す
★18「歌暦」
★19「中島みゆき」
★20「グッバイガール」
★21「回帰熱」
★22「夜を往け」
★23「singlesII」(2枚組・2枚目)
★24「歌でしか言えない」
★25「EAST ASIA」
★26「時代-time goes around-」
★27「singlesII」(2枚組・1枚目)
★28「LOVE OR NOTHING」
★29「10WINGS」
★30「パラダイス・カフェ」
★31「わたしの子供になりなさい」
★番外編
★32「日-WINGS」
★33「月-WINGS」
★34「短篇集」
★35「心守歌」
★36「おとぎばなし-Fairy Ring-」
★37「恋文」
★38「転生」
★39「いまのきもち」



DVD
★夜会vol.13「24時着0時発」
★歌旅 中島みゆきコンサートツアー2007[前編]
★歌旅 中島みゆきコンサートツアー2007[後編]


 



このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック
mk7911 at 23:11|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2011年02月24日

中島みゆきを聴き直す★38【最終回】 「転生」 - 『帰れない者たちへ』ほか

転生



数年前のアルバムだが、これがオレの持ってる最も新しい中島みゆきのアルバムとなる。

ジャケットは斜め上を見るみゆきさんと水しぶき。これは生命力みたいなのを表現してるんじゃないかと思う。
バックは紫っぽく、宗教っぽい。

11曲入り。




1.遺失物預り所

変な歌。普通のアーティストなら歌にしないような内容だ。こういう変わった歌があるのは、夜会があるからか。

3拍子でゆったりとしている。

とても丁寧な口調だ。
なくなったものを預かっている。どうやら旅に何か忘れて行ったらしい。夜会の歌なのかもしれないけど、知らないから「不思議な歌だなあ」で終わってしまう。

Good Morning Ms Castaway を思い出した。




2.帰れない者たちへ

なにかのドラマの歌になったんだっけ。見てない。

「異国」に近い世界観で、帰れない旅人の孤独を歌う。

しみじみと悲しい。歌声が遠吠えのようだ。




3.線路の外の風景

線路というのは人生のレールをいうようだ。決められた人生への反発。見渡す限り草原の中、ということは、レールのない場所を歩いているわけだ。しかし夜に夢の中でレールが夢に続いていたことを思い出す。


わかるかも。反発して人と違うことをして、それが個性だと思う。しかし実は自分の大切なものを失っている。
力強い歌唱だ。




4.メビウスの帯はねじれる

3拍子の歌が多いアルバムだな。1.2.4.7.は3拍子だ。
この歌も1.と同様、単体では話が見えない楽曲。タイトル通りのことを歌っている。「真直な線」の逆みたいだ。

ヘンテコな感じで、歌い方が変化する。駄々をこねる子供のようだったり、母親のようだったりする。
ネジを巻いて始まり、パタンと箱を閉じて終わる。オルゴールの曲であるかのようで面白い。




5.フォーチュン・クッキー

これもユニークな歌。とてもリラックスしている。手遊び唄みたいな調子の良さがある。

未来をクッキーに例える。どちらの未来が当たりなのか、悩んで選ぶ様子を歌う。




6.闇夜のテーブル

カードゲームをしている。イカサマがほのめかされる。ゲームのイカサマというより、人間の心の裏表なのか。

けだるくも邪悪であやしい魅力がある。



「ありえない」という言葉の使用頻度が上がっている気がする。90年以前は「くらやみ乙女」1曲だけだったはずだ。
「闇夜のテーブル」「ミラージュ・ホテル」「思い出だけではつらすぎる」と、思いつくだけで3曲ある。だからどうだということはないけど。




7.我が祖国は風の彼方

「日-WINGS」「月-WINGS」の最後の曲みたいなおだやかで広がりのある曲。どこかの国歌のようでもある。
「阿壇の木の下で」をもっと抽象的にしたような内容。

自分の国がなくなり名前などが変わっても、そこに自分は帰るだろう、というような歌。


国は変わって遥か彼方にあったとしても天空にある国は消せない、と歌う。これは「永久欠番」の、百億の人々に忘れられても宇宙(そら)の手のひらの中では確かに存在する、みたいな話だ。「樹高千丈落葉帰根」にも共通している。

つまり、人間には故郷やよりどころとするものがあり、それは表面的には消滅したように見えたとしても、見えないところでは不滅なのだ。そして必ず人はそこに帰ってゆく。中島みゆきの歌に出てくる旅人は、旅先ではなく故郷を思いながら旅をし、そしていつか帰る。




8.命のリレー

まさに「転生」というアルバムタイトルを感じさせる歌。
一人称が「僕」だ。個人的には「僕」で歌われる中島みゆきの歌にハズレなし、と思っている。「バラ色の未来」は苦手な方だけど。


命は限りあるもので、できることに限りがある。しかし、たどり着けなかったら次の命に願いを引き継げ、と歌う。「あたし時々おもうの」から比べれば確実に前進している。

歌唱も非常に力強い。素晴らしい楽曲。

引き継ぐべきバトンを持ってるだけでもすごいと思う。一世代で叶わぬほどの大きな目的に向かって生きるのはすごい。オレは死ぬ時に引き継ぐに値するバトンを持っているのだろうか。後悔や嘆きだけが残ってはいないだろうか。




9.ミラージュ・ホテル

「恋文」にも入ってた曲。ずいぶん早いリメイクだ。

ふわふわしたアレンジ・歌い方になっている。しっとりしているが、その中から悲しみや不安が漂ってくる。ぼんやりとあらわれる霊のようだ。

「ミラージュ・ホテル」という部分はコーラスのみが歌っている。
間奏ではチェロが歌う。怖い霊ではなく、何か想いを持ってさまよっている悲しい霊を思わせる。




10.サーモン・ダンス
打って変わって生命力がみなぎる楽曲。アルバムジャケットの水しぶきが一番似合う曲だと思う。「生まれ直せ」という言葉が「転生」を連想させる。このアルバムの中核といっていい作品だろう。

必死に転轍機を動かそうとしている。これは自分の生き方をガラッと変えようとしているんだろうか。何か自分を縛るものから自由になろうとする力にも見える。

「ファイト!」で魚の比喩が出てくるが、それを思い出した。

「涙は後ろへ流せ」はいい言葉だな。悲しみは過去へ捨て、いつも澄んだ前向きな目で未来を見てるみたいだ。
荒々しいほどに強い応援歌。
大好きな曲。





11.無限・軌道

このねじれは「メビウスの帯はねじれる」につながるのかな。
とても抽象的な内容だ。

人生は行き先のわからない列車、ということか。いや、それは人生なんてものを越えた無限の時間の流れなのか。そして私たちはその無限の時間をゆく列車の中の乗客というわけか。
なんとスケールの大きな歌だろう。

ゆったりとしたおおらかな楽曲。





▽おわりに

内容にまとまりがある。

列車や旅にまつわる比喩が多くの楽曲に見られる。
「転生」の名にふさわしい、ねじれてつながる時間や引き継がれる命をテーマにした楽曲がある。
いろんな音楽がありながらも、統一性や関連性が見られる。


また、恋愛の歌が全くと言っていいほど無い。これは珍しいことだ。


オレはこのアルバムは傑作だと思う。変な曲ではじまるが、だんだん良くなる。終盤の「命のリレー」「サーモン・ダンス」は素晴らしいエネルギーだ。聴かないと損だ。





▼「中島みゆきを聴き直す」のおわりに

12月はじめから3ヶ月以上かけて中島みゆきの楽曲をアルバム単位で聴いた。まだいくつも聴いてないアルバムがあるが、是非とも聴いてみたいと思っている。必ずや聴いて記事にしたいと思う。機会があれば夜会の映像も見たい。すぐにでも見たり聴いたりしたい。ここまで聴いたんだから全部聴きたい。


やっぱりオレは中島みゆきの歌が好きだ。ずっと応援していきたい。「中島みゆきを聴き直す」はこれで終わりだが、もう聴かないわけではない。
新たに聴いたアルバムは「中島みゆきを聴く」というタイトルでまた記事にする。近いうちに記事になるかもしれない。



ここまで勝手な解釈でさんざん書いてきた。間違いや勉強不足な部分も多いかと思う。それでも自分が感じたままを書いたからある程度は満足している。とりあえずではあるが、一つのシリーズを完結できて安心しているし充実感もある。

読んでくれた皆さん、ありがとうございました。



中島みゆきを聴き直す
★1「私の声が聞こえますか」
★2「みんな去ってしまった」
★3「あ・り・が・と・う」
★4「愛していると云ってくれ」
★5「親愛なる者へ」
★6「singles」(3枚組・3枚目)
★7「おかえりなさい」
★8「生きていてもいいですか」
★9「臨月」
★10「寒水魚」
★11「予感」
★12「singles」(3枚組・2枚目)
★13「はじめまして」
★14「御色なおし」
★15「miss M.」
★16「36.5℃」
★17「singles」(3枚組・1枚目)
★18「歌暦」
★19「中島みゆき」
★20「グッバイガール」
★21「回帰熱」
★22「夜を往け」
★23「singlesII」(2枚組・2枚目)
★24「歌でしか言えない」
★25「EAST ASIA」
★26「時代-time goes around-」
★27「singlesII」(2枚組・1枚目)
★28「LOVE OR NOTHING」
★29「10WINGS」
★30「パラダイス・カフェ」
★31「わたしの子供になりなさい」
★番外編
★32「日-WINGS」
★33「月-WINGS」
★34「短篇集」
★35「心守歌」
★36「おとぎばなし-Fairy Ring-」
★37「恋文」 - 『銀の龍の背に乗って』『思い出だけではつらすぎる』ほか




 


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック
mk7911 at 22:25|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2011年02月11日

中島みゆきを聴き直す★33「月-WINGS」

月-WINGS



9曲入り。日-WINGSより1曲少ないが、「PAIN」が長いことでバランスをとっている。


今ごろ気づいたんだけど、収録順は夜会の順番になっている。最初の3曲は「2分の2」、次の3曲は「問う女」、最後の3曲は「海嘯」から。




ジャケットのみゆきさんは細い月を見てるみたいだ。





1.一人で生まれて来たのだから

一人で生まれて来たのだから一人でいるのが当たり前、淋しくない、と歌う。
MaybeやI Love himみたいな「それでも夢を見たい」という内容はない。わりと淡々としている。


リズムは打ち込んであるみたい。人間が叩いてる感じじゃない。
軽くて心地よい。


「ジャスミン」というのは劇中の主要人物のことだろう。




2.紅い河

「子守歌」みたいなテイストの民族的な音楽。
5拍子。カラオケだと歌いづらい。


紅い河がただ流れてゆく。その流れに「あの人」への想いをたくす。




3.LAST SCENE

歌詞の少ない歌。もともとは歌詞のないインストだったと解説に書いてある。


ジャズっぽい遅くて妖しい曲。都会の夜って感じだ。

みゆきさんは歌詞のないけだるいメロディーを妖しく歌う。
1コーラス目は歌詞がない。

3分過ぎてようやく歌詞が出てくる。
詞は5行だけだが、うまい俳句みたいに情景が浮かぶ。





4.女という商売

いかにもいかがわしい店みたいな雰囲気だ。


雰囲気はいかがわしいが、歌詞は深い。平易な言葉で奥行きのある表現をするのがうまい、なんてのは言い尽くされてるだろうけど、あらためてそう感じる。




5.SMILE,SMILE

オレがこのアルバムで一番好きな曲。邪悪なピエロのようなものが思い浮かぶ。

歌い方が邪悪だ。それが好きだ。
遊園地っぽい音楽。


「君」の笑顔は不思議な力を持っていると歌う。挨拶や声にも力がある。

オレもそういう能力欲しいなあ。





6.PAIN

オーケストラと同時にヴォーカルを収録したとか。
弦楽と木管などによるオーケストラのサウンド。


前曲とは対照的な真摯な内容だ。
詞の内容もスケールが大きい。
人間のもつ弱さや傷全てを包み込むような感じだ。

「心の中には淋しさの手紙が 宛名を書きかけてあふれている」
かける相手がなくてイタズラ電話をする「ローリング」を思い出した。




7.白菊

曲の雰囲気はパラダイス・カフェの「伝説」に近い。

月、水面、冬、雪、幻。出てくる単語がみな神秘で美しい。




8.時効

孤独な犯罪者が後ろめたさを抱えて走って逃げてゆくのが見えるようだ。

アップテンポでサックスが出てくる。
ささやくように歌われるが、誰も知らない重大なことを隠してるような、漏らしてるような、そんな感じだ。




9.愛から遠く離れて

以前、カラオケに行って中島みゆきの歌を曲名のアイウエオ順に歌う企画を一人でやったことがある。その時、アイウエオ順で一番最初にあるのがこの曲だった。
「愛から遠く離れて」→「相席」→「愛情物語」…と続いていた。
結局、その企画は「か行」が終わったところで飽きてやめた。か行の最後は「こんばんわ」だった。



「愛から遠く離れて」はしゃべるように自然に歌われる。「等身大」とはこういうことだろうか。

「愛から遥か遠く離れて生きる人」とはどんな人だろう。
「風にならないか」や「風の姿」に出てくるような、自分らしさを見失いかけてる人達だろうか、と想像した。「明日なき我等」の歌詞からも見えるように、「風」というのが自然な生き方の象徴みたいだ。この歌とは関係ないけど。



時計を海に捨てに行こうという。もちろん文字通りに時計を捨てるわけではないだろう。
過去に縛られるのをやめようとか、そういうことかな。



歌い方も自然なら、テンポも自然な感じがする。あっさりしてるけどホッと安心するような曲だ。





▽おわりに

日と月の2枚を聴いた。どちらが優れてるとか、そういうのはない。極端な違いはなく、片方が楽しめるならもう片方も楽しめると思う。

このアルバムでは5.6.7.が好きかな。日の方が好きだけど、月もほぼ互角に良い曲が揃っている。



かつて「慟哭」「バラ色の未来」「下町の上、山の手の下」に見られたような激しい歌い方はこの2枚には見られない。
いい感じで力が抜けている。双方のラストの曲を聞いて特にそう思う。



中島みゆきを聴き直す
★1「私の声が聞こえますか」
★2「みんな去ってしまった」
★3「あ・り・が・と・う」
★4「愛していると云ってくれ」
★5「親愛なる者へ」
★6「singles」(3枚組・3枚目)
★7「おかえりなさい」
★8「生きていてもいいですか」
★9「臨月」
★10「寒水魚」
★11「予感」
★12「singles」(3枚組・2枚目)
★13「はじめまして」
★14「御色なおし」
★15「miss M.」
★16「36.5℃」
★17「singles」(3枚組・1枚目)
★18「歌暦」
★19「中島みゆき」
★20「グッバイガール」
★21「回帰熱」
★22「夜を往け」
★23「singlesII」(2枚組・2枚目)
★24「歌でしか言えない」
★25「EAST ASIA」
★26「時代-time goes around-」
★27「singlesII」(2枚組・1枚目)
★28「LOVE OR NOTHING」
★29「10WINGS」
★30「パラダイス・カフェ」
★31「わたしの子供になりなさい」
★番外編
★32「日-WINGS」



 


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック
mk7911 at 13:40|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2011年02月08日

中島みゆきを聴き直す★32「日-WINGS」

日-WINGS




「月-WINGS」と同時発売したアルバム。夜会で歌われた作品が収録されている。夜会は知らないが、「2分の2」と「問う女」は小説を読んだから話は一応知ってる程度。



ジャケットは、レコーディングスタジオらしき場所のみゆきさん。日蝕みたいな太陽を見上げてる。


10曲入り。解説つき。この解説は「この曲は夜会ではこんな場面で使われた」という内容が主。



1.竹の歌

様々な自然現象に合いながらも、それに打ちのめされることのない竹。「わたし」は竹になりたい、竹の国に住みたい、と望む。



神秘的なエネルギーを感じる。異教の踊りみたいな妖しさがあって好きだなあ。

サビには一週間をあらわす言葉が出てくる。「金に踊って」は人間への風刺みたいに聞こえる。





2.NEVER CRY OVER SPILT MILK

こぼしたミルクのことで泣かないで、くらいの意味か。

過去のことを思って悔やんでいてもしょうがない、という内容。


大人っぽいサウンド。
リズムが打ち込みっぽい。




3.いつか夢の中へ

宮下文一という人とのデュエット曲。かっこいい声をしている。


ハーモニーが良い。この歌の歌詞の意味なんか考えたことはなかった。今読み直してみたけど、よくわからない。いろいろと曖昧だ。なんとなく美しくて、それだけで充分だ。





4.羊の歌

なんといっても2種類の声で歌われてるのが特徴だ。そしてその2種類の声がハモってる。一人でデュエットしてる。ある意味これもデュエット曲だ。


羊とは、無口な女だ。男女関係の手練手管が語られる。
「あたし」「あたしの今の彼」「あなた」がいる。
「あなた」は知人男性に「女が何かほざいても放っとけ」とそそのかされ、放っとく。それが原因で「あたし」と「あなた」は別れた。放っとけとそそのかした男性が「あたし」の今の彼でした、チャンチャン♪って理解でいいのかな。

羊のようなおとなしい女も、しゃべりだすこともあるし、ものも考えている。





5.異国の女

不思議な拍子感がある。
カラオケでこの歌を歌ったら歌いづらかった。


私は遥かな国まで流れる風、と歌う。





6.あなたの言葉がわからない


この歌を聴いて泣いたことがある。すごく美しい曲だし泣けるけど、悲しいから好きではない。オレには美しすぎる。


言葉が通じない人とのコミュニケーションの難しさ。質問を簡単にしていくが何一つわからない。
意志が通じないと、相手に心はないのか、存在はないのかと思ってしまう。

言葉のわからない相手と星空の下で立ち尽くしてるようなイメージが湧いてきた。



これもデュエットみたいなものか。





7.難破船


序盤、後悔と航海をかけてるのか。

どこへもたどり着きたくない船。なぜ先に行かないのか。
思い出に縛られているのか?



解説にある通り、クールな楽曲だ。激し過ぎない心地よいロック。




8.知人・友人・愛人・家人

家人は妻のことだと解説されてる。

知人・友人・愛人・家人のどれにも私は属してない、と歌う。

オーボエ、弦など。しっとりしているいい曲だ。





9.Good Morning, Ms Castaway

独特な曲。早い3拍子。ご機嫌な感じで歌う。チェンバロが出てくる。


この漂流者は時間の谷間に着いて、眠っていたようだ。海の向こうに何があるのか話を求められている。



終わったと思ったら、もう一度インストが始まる。古いレコードみたいだ。




10.明日なき我等

言葉は古めかしいが、柔らかく歌われる。

難しい。迂闊なことは書けない。

「風のままに風に打たれいつか風になろう」は「風にならないか」に通じてると思った。願いを持たずに自然にしてるのがあるべき姿なのかな。

明日に期待したり、悲観したり、予想したり、そういうのはいかんってことかな。





▽おわりに

個性的な楽曲が多いと思う。そして、それは概ね成功してると思う。1.や4.は繰り返し聴きたくなる、大好きな曲だ。

有名曲はないし、アマゾンのレビューは少ないけど、買いだ!と言っておこう。



中島みゆきを聴き直す
★1「私の声が聞こえますか」
★2「みんな去ってしまった」
★3「あ・り・が・と・う」
★4「愛していると云ってくれ」
★5「親愛なる者へ」
★6「singles」(3枚組・3枚目)
★7「おかえりなさい」
★8「生きていてもいいですか」
★9「臨月」
★10「寒水魚」
★11「予感」
★12「singles」(3枚組・2枚目)
★13「はじめまして」
★14「御色なおし」
★15「miss M.」
★16「36.5℃」
★17「singles」(3枚組・1枚目)
★18「歌暦」
★19「中島みゆき」
★20「グッバイガール」
★21「回帰熱」
★22「夜を往け」
★23「singlesII」(2枚組・2枚目)
★24「歌でしか言えない」
★25「EAST ASIA」
★26「時代-time goes around-」
★27「singlesII」(2枚組・1枚目)
★28「LOVE OR NOTHING」
★29「10WINGS」
★30「パラダイス・カフェ」
★31「わたしの子供になりなさい」




 


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック
mk7911 at 23:47|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2011年01月30日

中島みゆきを聴き直す★25「EAST ASIA」 - 『浅い眠り』『誕生』『二隻の舟』『糸』ほか

EAST ASIA




92年のアルバム。



オレが初めて買ったCDが、これと「時代-Time goes around-」の2枚だった。


歌詞があるだけで嬉しかった。ラジオからカセットテープに録音したものを少しずつ聞きながら紙に歌詞を書く時代は終わった。
曲が途中で終わらないし、音はいいし、曲から曲へすぐ飛べるし、みゆきさんの写真はついてるし、CD最高!と思った。




さてジャケットから。

みゆきさんの顔写真をビリッとやぶいたような第一印象だが、よく見ると白い部分は布か衣類のようだ。腕で顔を隠したのか。


このアルバムの写真は色が少ない。白い。




1.EAST ASIA

竹を思わせる音色。

この東アジアとは中国の山あたりのイメージだろうか。音階がそれっぽいし、「山より高い壁」で万里の長城を連想した。


非常にスケールの大きな傑作。


圧迫してくる何かを払いのける強さ、したたかさを感じる。それは戦って勝つのではない。「私の心」も「柔らかな風」も「地球」も、みんな笑っている。





2.やばい恋

今度は対照的に都会のビルにいる。しかもエレベーターというせまい空間だ。1番でも2番でも主人公はエレベーターにいる。
アジアの広さとは本当に対照的な狭さだ。

内容は恋の心理戦だ。言いたいことを口に出せない女性。


音楽としては孤独の肖像とか100人目の恋人みたいな感じだ。サウンドは激しくとも、ヴォーカルはささやくように歌う。




3.浅い眠り

ドラマの主題歌としてヒットした。オレは「家なき子」の頃からのファンで、ドラマを見てない。

恋の追憶。概ね3人称で語られる。
街を擬人化する手法は「異国」などにも見られる。街が愛を呼ぶ、というのは何度聴いてもよくわからない。


ドラマチックに始まる。こちらはヴォーカルも力強い。サビでのハーモニーがいい。





4.萩野原

まどろむような歌。まさに浅い眠りの中で見る夢みたいだ。

幼い日の記憶。
昔もらった一輪の花、少年。

野暮だろうけど、「野原に行ったことがない」と「なつかしい野原」の整合性が気になる。いつか帰ってゆくって?

目を覚ますと知らぬ人の腕の中にいる。これが一番気になる。




▽歌詞カードのこのあたりに絵がある。
ウサギとサルとカエルがいる。よく見るとキツネや蝶もいる。
コミカルだ。なんとなく「予感」の部屋の壁紙を思い出した。

左側ではサルとウサギが踊っていて盛り上がってる。
中央ではサルとウサギが泳いでる。
カエルが花を持って相談している。

右ではカエルが葉っぱの傘をさしているが、雨は葉っぱにだけ降っている。雨が降ったから傘をさすのではない。傘をさすから雨が降るのだ。





5.誕生

何かの映画の歌だそうだけど、それだけではこんなに人気曲にはならない。


人生は流れてゆき、つまずいたり、無駄なんじゃないかと思ったり、別れがあったりする。
しかし思い出してほしい。自分が生まれた時はみんな祝福してくれたはずだ。それが思い出せないなら私があなたにそれを言う。


素晴らしい。傑作だ。以前聴いた時より胸にせまるものがある。こういう歌は一生の宝だ。




6.此処じゃない何処かへ

この歌の歌詞が何かのテストの問題文になったとラジオで聴いた。

これは「誕生」とは逆の、人生を振り返らず遠くまで来た状態だ。

若い。そして反抗的だ。
まわりの環境には適応できない。自分がいやになる。音楽に真実を見つけ、衝動のまま街を離れる。
「裸爪のライオン」「夜を往け」みたいな方向性だ。
反社会的な不良にならず、自分を責めたり遠くへ行きたがるのがかわいい。

一行目はよくわかる。オレもラジカセから音楽を吸収した。もう今は使ってないけど、今でもそばにラジカセはある。





7.妹じゃあるまいし

以前「あ・り・が・と・う」について書いた時に「勝手にしやがれ」との類似性を書いた。別に何と似ていようが関係ないんだが、気がついてしまうし、気がつくと書きたくなる。


最初の下降する音型が、甘える妹みたいだ。
「浅い眠り」でも気になったけど、この作品でも声を裏返しながら歌っている。西城秀樹のモノマネをする人が強調するアレですよ。




8.二隻の舟

夜会のテーマ曲として有名だが、オレは夜会を知らない。「2分の2」「問う女」の小説を呼んだだけだ。避けていたけど、食わず嫌いもどうかと思うし、機会があれば映像も見てみたい。



だいぶ変則的な構成になっている歌。

人生を海に例えている。
過酷なことがあっても二人は見えない絆で固く結ばれている。

最後のピアノはリズムを変えずに音階だけが変化してゆくのが面白い。




9.糸

結婚式のために作ったと聞いたことがある。
後にドラマに使われた。
ミスチルがカバーしたんだっけ。
オレの地元の銀行がこの歌をテーマ曲にしている。だからよく聴く。


珍しく…というのもアレだが、二人が幸せになる歌だ。ほんの少しアジアの風味を感じる。

幸せが「仕合わせ」なのが気になる。携帯では変換できない。





▽おわりに

前作に比べたら曲数は減ったし収録時間も減ったが、密度は濃い。

安心して人に薦められるアルバム。誰かに「中島みゆきを聴きたいから何かアルバム貸して」みたいになったら候補になりうるアルバム。


▼気まぐれ企画・初心者に薦める中島みゆきのアルバム

◎ 大吟醸、あるいはsinglesのどれか

○ EAST ASIA、あるいは自分の好きなアルバム

△ 短篇集、あるいはその時点で一番新しいアルバム

× 生きていてもいいですか


ってところでどうでしょう。2006年以降のアルバムは聴いてないから、聴いたら変わるかも?

 




中島みゆきを聴き直す
★1「私の声が聞こえますか」
★2「みんな去ってしまった」
★3「あ・り・が・と・う」
★4「愛していると云ってくれ」
★5「親愛なる者へ」
★6「singles」(3枚組・3枚目)
★7「おかえりなさい」
★8「生きていてもいいですか」
★9「臨月」
★10「寒水魚」
★11「予感」
★12「singles」(3枚組・2枚目)
★13「はじめまして」
★14「御色なおし」
★15「miss M.」
★16「36.5℃」
★17「singles」(3枚組・1枚目)
★18「歌暦」
★19「中島みゆき」
★20「グッバイガール」
★21「回帰熱」
★22「夜を往け」
★23「singlesII」(2枚組・2枚目)
★24「歌でしか言えない」


 


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック
mk7911 at 12:23|PermalinkComments(1)TrackBack(0)

2011年01月09日

中島みゆきを聴き直す★19「中島みゆき」

中島みゆき


中島みゆきの88年3月のアルバムのタイトルは、ズバリ「中島みゆき」だ。
「missM」「36.5℃」「中島みゆき」と、「そのままの自分」みたいな事を意味するタイトルが続いている。「すっぴん」というツアータイトルだってそうでしょう。


ジャケットはうなじから鎖骨のあたり。これも「素の自分」を表現したものだろうか。


セールスには恵まれないアルバムだったようだ。




1.湾岸24時

海、都会、夜、恋のかけひき。「36.5℃」に出てきた要素を凝縮したような一曲。

AメロとBメロの間に「間」があるのが特徴。




2.御機嫌如何

和風で引き締まっている。着物が合いそう。
昔の男に手紙を書いているようだが、突き放した感じがある。未練は最後の切手だけにとどまる。




3.土用波

ロックの色が濃い、かっこいい曲。

波が全てをさらってゆく。折れたカイトというのが思い出や未練を象徴してるように感じた。




4.泥は降りしきる

ありそうでなかったタイプの曲。精いっぱい笑っているが、恥やみじめさや悲しさが詰まっている。




5.ミュージシャン

男性ミュージシャンが未来、過去、夢を悲観的に語る。サビで女性が励ます。

オレも悲観的なところはあるし、特に2番の歌詞は刺さる。自分は愛する者に何ができるのか、と悩む。

ラジオで最後の長い悩みの手紙に対し、みゆきさんが短くメッセージを送る場面を思い出す。それは聴く者の心にストレートに入ってくる。


数字がいくつか出てくるが、これは珍しい。
20年後
20才の頃。
12才の頃、8回の裏。

Cメロと言えばいいのか、後半になって新しいメロディーが出てくる歌が増えた。次の「黄色い犬」もそうだが、楽曲の構成に変化がある。




6.黄色い犬

異色な歌だ。構成も内容もいつもと違うし英語も多い。

肩書きや地位としての女。しかし素のままを愛してほしい。
しかしそれは例え。これは女の話ではなく、言えない危ない話だ。

これは人種の話をしてるんだろうか。化粧は白いが素は黄色い。最後は、黄色は月の色で綺麗だという。意味深だ。




7.仮面

落ちぶれた強がりな男と、ツンツンしながらも彼をずっと愛する女。

曲調があっさりしてる。


これをシングルにするとは、思い切った判断だと思う。



8.クレンジング・クリーム

これも特殊な構成の歌。「黄色い犬」は複雑だったが、こちらは逆に単純に同じことを繰り返しながら盛り上げる。クラシックでいうとラヴェルの「ボレロ」のようだ。

化粧を落とすたびに醜悪にみじめになってゆく。歌い方もグロテスクさが増してゆく。聴きごたえがある。



このアルバムは仮の自分、素の自分、というものを扱った歌が多いように思う。




9.ローリング

93年にリメイクされた。リメイクしたということは満足してなかったのか、それとも?

こちらは93年のような粘り気はなくあっさりしてるけど、疲れたような感じは出ている。「クレンジング・クリーム」の後だとこのイントロは安心する。


2番が難しい。「足並みそろえた」で兵隊の行進を想像した。

電話番号って9桁?この頃はそうだったの?
一つだけ押せない組は、本当は一番電話したい相手なんじゃないか。そこへ電話できないから寂しいんじゃないか。

イタズラ電話なんかしたら余計淋しくなりそうだ。
いや、電話ボックスに入った時はイタズラ電話をするつもりじゃなかったのかもしれない。

オレは昔イタズラ電話したことある。110番にかけたらかけ直されてビビった。それでやめた。




▽おわりに
かっこいい曲が多いし、変化に富んだ良いアルバム。




中島みゆきを聴き直す
★1「私の声が聞こえますか」
★2「みんな去ってしまった」
★3「あ・り・が・と・う」
★4「愛していると云ってくれ」
★5「親愛なる者へ」
★6「singles」(3枚組・3枚目)
★7「おかえりなさい」
★8「生きていてもいいですか」
★9「臨月」
★10「寒水魚」
★11「予感」
★12「singles」(3枚組・2枚目)
★13「はじめまして」
★14「御色なおし」
★15「miss M.」
★16「36.5℃」
★17「singles」(3枚組・1枚目)
★18「歌暦」


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック
mk7911 at 12:06|PermalinkComments(0)TrackBack(0)