入門

2017年08月29日

[総合誌読む 118] 角川「短歌」2017年7月号  ~観念して続けましょう、ほか

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今ごろですが、角川「短歌」2017年7月号やります。



特集「短歌再入門」があって、その時はちょっと悩んでいたから、読んではげましにした。
小島ゆかりさんが「やめたいと思うのは、いい歌が作りたいのにできないという気持ちがあるからこそ。やめたいと思う方、観念して続けましょう」と書いていた。



暗殺の利点を妻に説きゐたり掃除機を手の忙しなき背に/佐古良男「この星」
→「せわしない」を「忙しない」と書くんだね。下の句、特に助詞に注目した。



息あさく眠れる父のかたわらに死は総身に蜜あびて立つ/服部真里子「絶対青度」
→蜜をあびている死の姿が印象的だ。ちょっとこわい。ドラクエの「ドロヌーバ」をイメージしたが、もっと抽象的なことだろう。蜜の甘さは、苦しみからの解放か。



眠る子のひたいの眉をなぞりつつしずかな夜のひたいは広し/花山周子




「たずねびと」ラジオ聴き終へ畑にゆく父の寡黙は長くつづけり/陶久要

→角川歌壇から。
オレはラジオでたずねびとは聞いたことないんだけど、たぶんNHKあたりでやってるんだろう。絵や写真がないとなかなかきびしいだろうな。
ラジオの声からイメージされた「たずねびと」の姿が寡黙な父の脳裡をさまよっていたのだろう。



モナリザは美人ではないと姑言ひき遺影の真顔はその時の顔/石上令








オレの歌も角川歌壇に載った。次の歌が、安田純生さんの秀逸で香川ヒサさんの特選にえらばれた。

体重が身長を超えないかぎり大丈夫だよと君を励ます/工藤吉生





んじゃまた。




▼▼▼



#2017上半期短歌大賞 50首 Togetterまとめ https://togetter.com/li/1126231
今年の上半期に読んだすべての短歌から50首選んでまとめました





2017年7月に発表した/掲載されたオレの短歌まとめ|mk7911|note(ノート)
https://note.mu/mk7911/n/n3dc9e6680faa

2017年6月に発表した/掲載された短歌まとめ【25首】|mk7911|note(ノート)
https://note.mu/mk7911/n/n6a0753b5ac49

短歌パトロール日誌【最終回】|mk7911|note(ノート)
https://note.mu/mk7911/n/n41c835707189

2017年6月の出来事についてあれこれ言う【短歌編】|mk7911|note(ノート)
https://note.mu/mk7911/n/n2b8ea3aa7fd3

2017年6月の出来事についてあれこれ言う【短歌以外編】|mk7911|note(ノート)https://note.mu/mk7911/n/n68525cac4bfd

工藤の有料マガジン【500円】やってます。よろしくお願いいたします。


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2016年07月11日

~歌書読む 43~ NHK短歌入門 岡井隆『歌を創るこころ』  ~カンガルは如何如何、ほか

NHK短歌入門 岡井隆『歌を創るこころ』を読みました。

主にテーマ別に古今の名歌秀歌を取り上げて解説する本ですが、はじめのほうには添削例もあります。



53ページ「結句の大切さ」にこんな文章があり、印をつけました。

わたしたちは、短歌を読んでいくときに、(もちろん、無意識のうちに、ではありますが)心の中のどこかを、はっきりと言い当てられたいと思っているようです。的をしぼって、ある一点を言ってほしいと欲求しているのではないかと思います。

言われてみるとそんな気がします。



自転車を押しつつ愉(たの)し星空へ立て掛けしごと冬の坂あり/久葉堯『海上銀河』



霜月の冬とふこのごろ只(ただ)曇り今日もくもれり思ふこと多し/伊藤左千夫「冬のくもり」



カンガルの大好きな少女が今日も来てカンガルは如何(いかが)如何(如何)かと聞く/前川佐美雄『植物祭』

→カンガルーをこの頃はカンガルと言っていたのでしょう。
いかがと言われても困りますね。「ぼく(わたし)も好きだよ」と言ってほしいのでしょうか。
「今日も来て」ってことは、たびたび来てカンガルのことを聞くんでしょうか。不思議な少女です。
「カンガル」と「いかがいかが」の音が重なり、呪文のようです。



あまのはら見る見るうちにかりがねの一(ひと)つら低くなり行きにけり/斎藤茂吉『白桃』
→「あまのはら」で広大なイメージを持たせてから低さを出すことで振り幅の大きい歌になっているのだと思います。



169ページに「夕占」という言葉が出てきました。
これは、人々の多く通る四辻なんかで、ふとききとめた言葉から未来を占ったり、願いごとを占ったりする一種の言霊信仰
なのだそうです。おもしろい占いがあるものです。



ポニーテイルを揺らしつつ劇薬のラベル貼(は)り替へてゐる君の影/喜多昭夫『青夕焼』
→劇薬のラベルを張り替えるのはなんとも邪悪な行為ですが、ポニーテイルはそれを感じさせない髪型で、そのギャップにおもしろさがありそうです。「影」にフォーカスしたのもよいです。ポニーテイルはあくまでも影なのです。



風たかき白桃の園をぬけ出でてかうかうと我をいつはるのみぞ/坂井修一『ラビュリントスの日々』



頬(ほほ)の肉(しし)落ちぬと人の驚くに落ちけるかもとさすりても見し/長塚節

→驚かれるということは目に見えて落ちているんでしょうが、とぼけたような身ぶりがあります。



人間とて金と同じでさびしがりやですから集るところに集る/石田比呂志

それなりの帳じり合っているひと生(よ)今宵(こよい)の風呂に首出している/石田比呂志


石田比呂志の歌は、ワサビの効いた、ずばりと警句めいたことをいう歌として紹介されていました。




以上です。
んじゃまた。


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2013年07月12日

[歌書読む17] 今野寿美『短歌のための文語文法入門』

今野寿美さんの「短歌のための文語文法入門」は最初に読んだときに挫折した本だ。頭に入ってこなくてわからなくてつまらなくなった。
で、再読をしかけるにあたり、歌とその意味だけをよむことにした。とにかく最後まで読み通すのを優先した。

ちょうど1年くらい前に出た本なんだけど、そのときは載ってる歌も面白いと思えなかった。でも今見たらすげー面白いの。丸つけていったら丸だらけになった。歌だけでも面白い。いい歌がたくさんあったので紹介していきます。


杖持つは病まざる足の方(ほう)の手と教へられたり知らざりにけり/蒔田さくら子『サイネリア考』



最初の数十ページはほとんど歌がなくて文法の説明になってる。こういうのを正面から読むと気力をかなり持っていかれるので今回は飛ばした。必要になったら読む。



野に生ふる、草にも物を、言はせばや。
涙もあらむ、歌もあるらむ。/与謝野鉄幹『東西南北』


→二行にしたり句読点いれてる。
推量の「らむ」のところで出てきた。希望の「ばや」も入ってる。



深からぬ山に来て死ぬ男女らも死といふきははしづかなるらめ/斎藤史『うたのゆくへ』

→「らめ」は強調したものだと書いてある。
深からぬ山で死ぬのは安易な死みたいに感じられる。山の深さが生死の深さでもないんだろうけど。死の際は静かであるという、その部分を詠んでるのがなんかただものではないな。



夜のふけに犬は鎖の音ひきて眠りのかたち選びゐるらし/尾崎左永子『夕霧峠』

→「らし」が推量なのは「らしい」があるからわかる。直接それは関係ないと書いてはあるけど。
鎖でなく鎖の音をひいているという。暗いから姿が見えず音のみがわかるのだろう。「眠りのかたち」がもうひと工夫になってる。寝る姿勢以上のなにかが表現されている。



よき恋をせよ と言ひしが 処女子(ヲトメゴ)のなげくを見れば 悲しかるらし/釈迢空『倭をぐな』



辛くして我が生き得しは彼等より狡猾なりし故にあらじか/岡野弘彦『冬の家族』


→この「じ」や「まじ」は打消推量とある。これだけ聞くと難しそう。そういう熟語にたじろぐオレだ。
許すまじ、あるまじき、といった言葉がまだ生きてるからわかる。「あらじか」は「あるまいか」



傷もたぬ魂などのあるまじく大樹は深き翳を抱けり/橋本喜典『無冠』

→この「あるまじく」は「あろうはずもなく」ってなってる。なるへそ。



このわれが山崎方代でもあると云うこの感情をまずあばくべし/山崎方代『方代』

→下の名前を歌集の名前にしてるのか。しかもこの歌の中にもフルネーム出てくるし。
「べし」もまあわかる。文語っつっても今も使われるのがけっこう多い。それが活用されたり変化するとわかんなくなるんだ。ああ、だからあの表がでてくるわけか。



追憶のもつとも明るきひとつにてま夏弟のドルフィンキック/今野寿美『花絆(はなづな)』

→さりげなく著者ご本人の歌も入っている。これはいい夏短歌。



豆ごはんつぶりつぶりと食うてをり一粒ひとつぶ緑(あを)いなり 豆/河野裕子『歩く』

→なんかすごいなあ。
つぶりつぶり、がオノマトペとして面白い。「食うて」は「食って」ではだめなんだよな。そういうところも。緑に「あを」ってルビするのも納得。
一字あけて「豆」があっけにとられる。「豆緑(あを)いなり」にするところなんだろう。この離れた「豆」につぶつぶ感がある。



ガッツ石松がかつてボクサーたりし頃われも生き生き生きおりたりし/浜田康敬『旅人われは』


→生き生き生きおりたりし、がいいなあ。リズムがあってそれこそ生き生きしてる。
ガッツ石松は今はクイズ番組やなんかでとぼけたことを言ってるけど、今の「われ」までそんなふうなのかと思ってしまい、ひそかに可笑しい。



つきぬけて虚しき空と思ふとき燃え殻のごとき雪が落ちくる/安永蕗子『魚愁』



桟橋や暮れては母のふところに入(い)るとごとくに船かへりきぬ/与謝野晶子『舞姫』


→この二首はすぐれた比喩を持っている。



乗る舟を泥でもよしと思はせしなにならむそのどろのごときは/平井弘『振りまはした花のやうに』

歌集名にときどき面白いのがある。



言ふだけで言はるることのなき人が言はるるときの恨みは深し/花山多佳子『木香薔薇』



何となく、
案外に多き気もせらる、
自分と同じこと思ふ人。/石川啄木『悲しき玩具』




「まほし」は希望。これはなじみがない。見かけてるのに調べないから、そういうのがずっとわからないままなんだよな。



萩野原、薄野原を越え越えてきつねのやうに逢ひにゆきたし/大口玲子『海量(ハイリヤン)』

→萩野原、薄野原でもう抒情がすごくあるんだけど、きつねが愛らしくてもう一押しきた。



「生きざま」といふ語を好まず佳き人の歌にけふ見て消したき思ひ/橋本喜典『一己』

→「ざま」っていうのが嫌いなのかな。ざま見ろ、いいざまだ、みたいに悪い使い方をされる。



精神の支へともなす心棒を誰か、誰かが折りたがつてゐる/外塚喬『漏告』



必ずしも文語のない歌も例に挙がってる。
今の言葉にも文法はあるはずなんだけど、オレはそれをあんまりちゃんと把握してない。してなくてもおかしかったらおかしいとわかる。文語もできればちゃんとやらずに把握したいんだけど、日常の言葉じゃないからなかなかそうもいかないんだろう。



ふりそうと言って別れてそれっきり 死は六画ぞ生は五画ぞ/藤島秀憲『二丁目通信』

→この下の句、なんのことかと思ったんだけど、「さよなら三角また来て四角」を踏まえてるんだと思う。



口中に一粒の葡萄を潰したりすなはちわが目ふと暗きかも/葛原妙子『葡萄木立』

→さっき河野裕子さんの豆ごはんの歌を紹介したけど、つぶつぶのものを食べるのに、かなり違った詠みぶりをしていて面白いと思った。

「かも」は詠嘆なんだな。「かもしれない」にどうも引きずられてしまう。
詠嘆、というたびに矢沢がイメージされるのも困る。
頭の中に検索エンジンの「もしかして:」機能がついていて、似た言葉は同じものと解釈しようとするらしい。



「みんな」という何か大きな暖かき塊を子は信じいるらし/川本千栄『日ざかり』

→子供の言う「みんな」って確かに暖かいなあ。同じ意味でも「人々」とかになると温度は変わってくる。



右の歯と左の歯にて均等に噛むこと大事とは知り申す/竹山広『空の空』

→シリアスな歌でばかり知っている歌人だったので、こういう歌がでてくると驚く。
敬語は二ページしかない。



といったところで、「短歌のための文語文法入門」で丸をつけた歌は以上です。
ひとまず終わるけど、また読み返すこともありそうな本だ。


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2012年07月05日

[歌書読む10] 「短歌」編集部編『決定版短歌入門』

「短歌」編集部編「決定版短歌入門」





いろいろ感じたことなど書いていく。ここで知った良い短歌も書いていく。その際は赤く色分けする。






斎藤茂吉の名歌の中の「たまきわる」って薪割りでもしてるんだと思ってたんだが、ようやくなんとなくの意味がわかった。枕詞か。

いやあ、薪割りみたいな日々の労働の中に自分の命があると言ってるのかなあ、と……





人はみな悲しみの器。頭を垂りて心ただよふ夜の電車に(岡野弘彦)




人生はただ一問の質問にすぎぬと書けば二月のかもめ(寺山修司)




ねばねばのバンドエイドをはがしたらしわしわのゆび じようゆうさあん(加藤治郎)




NO WAR とさけぶ人々過ぎゆけりそれさえアメリカを模倣して(吉川宏志)






3章「何を詠うか」では短歌のジャンルについて語られる。

穂村弘の「知恵くらべ」、石川美南「物語集」が紹介された、何にも分類し難い短歌を扱った最後の部分が面白い。光森裕樹さんの執筆した箇所。






4章「表現するために」の岩田正さんの文章の書き出しがインパクトある。
見ることです。よく見ることです。なおよく見ること。再度見ることです。対象のものに執することです。飽くなく見ることです。
これ自体が何かの詩や呪文みたいだ。






『しっかり心を入れて見れば、そのものの奥にあり心をも見ることができる』そのことが茂吉のいう「実相観入」だとある。 






「前略」を「全略」と書き以後空白そんな手紙を送りたい春(佐藤通雅)



4章まで読んだ。特別新しいことは書かれてないようだが、基本を読み直すのも大事だろう。
この本の秀歌から刺激を受け、いくつか短歌ができたり推敲ができたりしたのが嬉しい。



ありふれた表現に気をつけろ、比喩、オノマトペ、固有名詞、地名、てにをは、 そういったものが効果をあげた秀作の例示、といった内容。




第5章は「上達の秘訣」だ。最初は篠弘さんの「語彙を増やす」という文。
▼年齢の近い歌人の名歌集を読めば意欲がわく
▼類語辞典を使うと語句の選択が多彩になる
▼作品の出来は初句で見る。
などの内容が簡潔に書かれている。



島田修三さんの「上達の秘訣1」では子規の言う「頭重脚軽の病」について書かれる。初句や二句に強い言葉があり以後軽く終わるとバランスが悪く見える。




上達の秘訣2は俵万智さんが書いている。急に文章が軽く面白くなった感じがする。
スランプを脱する方法が書いてある。

人の歌を深く読むことも大事で、鑑賞文を書くのもよい。


歌うのは好きだけれど、人の歌をあまり聞いてない。プロの歌も聞かないし、これといって勉強もしない。そんな状態を佐佐木幸綱が「短歌カラオケ状態」と評したという。なるほど




さらにわれ生きねばならず夜の灯照る泥濘に無数に人行きし跡(田谷鋭)




非はわれにあれどもわれに譲れざる立場はありてまず水を飲む(永田和宏)




死ぬことを考えながら人は死ぬ茄子の花咲くしずかな日照り(吉川宏志)







6章では名歌を鑑賞する。古典、近代、現代に分かれている。現代は面白く読み、いくつか気になったのを既にツイートした。近代とか古典は、名前は知ってる歌人が多いが、解説なしで読むのは少々厳しい。解説がありがたい。




7章「短歌をもっと楽しむ」では、短歌をとりまく環境が語られる。

カルチャーセンターや通信講座で習うことが書いてある。経験者の話をとんと聞かない分野だ。




8章、松村正直「三分でわかる短歌史」はどうやっても三分ではわからない内容だ。作品のタイトルを常に作者がつけているわけではない、みたいな話を思い出す。コンパクトにまとまっていることは間違いない。




8章、山田航さんの「短歌名言録」が面白い。
斎藤茂吉の言葉にふれて山田さんが書いている国会答弁に引用されてしまう短歌とか、詩歌として最高級の敗北だと思うね。もまた名言だ。




もともと短歌といふ定型短詩に、幻を見る以外の何の使命があらう――塚本邦雄




「読むべき歌集・歌書」は読むのがしんどそうな本が多くて、リストを眺めてるだけてズシーンとくる。これは歴史の重さでもある。




 



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2012年01月17日

[歌書読む5] 岡井隆『今はじめる人のための短歌入門』

岡井隆 今はじめる人のための短歌入門





書かれた内容で、心に止まったものを挙げてみる。




原稿用紙で清書しろ




啄木は短歌を「人間の感情生活の変化の厳密なる報告、正直な日記でなければならぬ」と言った




初歩の初歩に多作期がある




比較した時に恥が生まれる。褒められたくなると伸びる。




なんでもない日常を歌った作品を楽しめるのが大切




初句はかろやかに、結句は予想もつかぬほど遠く、それでいて呼応させるのがよい。




短歌には伝統がある。文語で伝統につながろう。




説明や物語を入れてはいけない。




既成の言葉に頼らない。造語を使うくらいの気持ちで




素人は比喩が下手。意外な比喩を作れ




歌会は馴れ合いのように見えても、実はそうでもない……?








1987年にあとがきを書いてるから、それまでにまとまった文章だ。

1987年にサラダ記念日が発表されたと記憶しているが、それまでは文語が強かったんだと思う。引用されてる短歌が文語ばっかりだ。万葉集まで出てくる。

インターネットのない時代の文章で、古い古いと思いながら読んだ。




真ん中らへんに、口語短歌に賛成しない旨が書かれていて、これはオレとは相容れない。
そんなことで伝統につながりたいとは思わない。




自然を歌う「自然詠」のあたりで一度退屈した。自然を歌うという感覚も理解しがたい。自然に何も感じないわけではないけど、自然はオレの日常からは遠い。





例に挙げられた短歌でいうと、斎藤茂吉の良さはまだよくわからない。

若山牧水の

けふもまたこころの鉦をうち鳴しうち鳴らしつつあくがれて行く

はよい作品だと思った。





 



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2011年08月22日

歌書読む【1-1】枡野浩一『一人で始める短歌入門』(上)

枡野浩一 一人で始める短歌入門



はじめに

短歌の入門書。100首選ばれた短歌を鑑賞しながら短歌のテクニックや鑑賞の仕方を身につけることができる。

優れた短歌を多く鑑賞することが上達につながる。

右ページに短歌、左ページに解説がある。


ゆっくり少しずつ鑑賞するようにできているが、もっと多く読んだって充分味わうことはできると思う。


購入した動機を書く。
オレは短歌を戯れにちょこっとやることはあるけど、本気で上手くなろうとしてるわけではない。それでも上手くなったら嬉しいとは思う。

短歌の上達よりも短歌の鑑賞が好きだ。それと枡野浩一さんの本は見つけ次第買うようにしてるから買った。




このブログ記事では、100首の中から半分くらいの短歌を取り上げ、オレが感想を書く。
まずは右ページの短歌だけを読んで解釈や感想を書き、それから左ページの枡野さんの解説を読んで気づいたことなどを書く。


実際オレのTwitterには全ての短歌に感想を書いてるんだが、全ての短歌をまとめてネット上に掲載するのはマズいんじゃないかと思い、半分は遠慮した。



内容と感想

短歌→オレの感想→枡野さんの解説を読んでさらに感想、という順番でいく。





あの頃の通学路沿いに引っ越して制服の君にまた振られたい

たいした字余りじゃないのにリズムが悪い気がするのはなぜだろう。「きみ」がひらがなならいいと思った。「制服の君」が「征服の君(君主)」みたいに偉い人みたいに見えた。

「また振られたい」に全て集約されている気がする。
振られるのはつらいが、大事な思い出だから何もねじ曲げたくない。振られたことすら懐かしく甘く感じる、あるいは、振られてもいいから戻りたい。それほど強い過去への思いなのかな。



…とオレ流に解釈してからエッセイと照らし合わせると面白い。

枡野さんはこの歌からあきらめや謙虚さが見られるという。オレは感じなかったなあ。
「振られることもひっくるめて全てをもう一度!」という過去への強い渇望しか感じなかった。ニーチェの「永劫回帰」について読んだことを思い出していた







いびきまで愛しく思う今のうち 広めの部屋を探しに行こう

いびきを愛しく思うのは強い愛だけど、それが「今のうち」だと思ってるところに冷静さも見える。広めの部屋って、いびきが聞こえないようにってこと?矛盾をはらんだ気になる一首。

…とオレ流に解釈してから左ページの解説を読む。

枡野さんの経験が反映されたコメントだ。なるほど、二人の愛が長く続くように広い部屋なのか。




お隣りのこどもが親のいうことをきかないみたい こどもがんばれ

これも「逆を選ぶ」パターンかな。よく見られる光景だ。親の叱り方や子供の叱られ方によっては、子供を応援したくなることはあるかもね。ちょっとかわいい愉快な一首だと思った。

大人と子供なら大抵は大人が正しい。でも子供の好奇心やいたずら心もわかるから応援したくなる。
背徳的、とまではいかないが、イケナイ子供をひそかに応援するイケナイ気持ち。わかるかも。好きな一首。


解説を読む。こどもの中に自分を投影するっていう枡野さんの解釈は深いと思った。





おういいね 広くてきれいで言うことなし 荷物を入れるともとのオレんち

いいなあ。好きだよこういうの。最初の「おう」がいいじゃないですか。「オレ」の人柄が見えそう。
せっかく引っ越したのに、結局同じような部屋になるのも面白い。


解説を読む。なるほど、リズムに面白さの秘密があるのか。字余りだと読む時に早口になる、というのも覚えておこうっと。





トーストが焦げずに焼ける日が増えて いい部屋になりいい街になる

素晴らしい作品。暮らすほどにトーストの焼き加減もわかるようになる。部屋も街も良くなるのは、自分自身が環境に馴染んできたのだろう。こうありたい。


解説を読む。
トースト→部屋→街、と「カメラが引いていく」というのは気がつかなかったなあ。




猫と路地やたら多くて急行は停まりませんが夕日は大きい

これは個性的かも。「ません」が唐突なんだな。

この短歌だけでどんな地域かよくわかり、しかも夕日という詩的な言葉も含まれた、幅のある作品では?

解説を読む。やはりそんな感じだろう。オレの感じ方と大差ない。
「停まりませんが」に不動産屋が見えるのは気がつかなかった





ウクレレの音色が似合い近くには坂道のある家が良いです

またこれも面白いところを突いてきたな。ウクレレが聞こえるわけではなく「音色が似合い」っていうのが工夫あるね。自分で弾くのかな。

♪さよなーらだけがっ 、、さよならー
http://t.co/M5aXgj2

解説を読む。
あらすじをうまく説明できる人は短歌もうまい、とある。オレは下手なんだよなあ。絶対説明しないもん。「面白いから自分で見てよ」って言うもんね。




駅からの道に季節の花が咲きなじみの犬がいる部屋がいい

部屋そのものではなく、駅から部屋への道にこだわってるのが特徴。なじみの犬なんて最初は馴染んでないわけだが、馴染めそうな犬がいたら生活に潤いがあるよなあ。犬に挨拶したりしてさ。


解説を読む。
前の歌よりこちらが上なのか。ウクレレの音色に聴覚を感じるから前の歌も魅力的なんだが、言われてみたらそうかもしれない。前のは「良いです」という語尾がもたついてるし、この歌は「なじみの犬」に特徴があるしな。




また前の苗字に戻って住む部屋は窮屈が良い倒れないよう 

広いと相手の不在を感じるから窮屈がいい、ということだろう。「倒れないよう」は自分の心を建物に例えてるみたいだ。ここにこの歌のポイントがあると予想して左ページへ


解説を読む。倒れることもできぬほど狭い、という解釈もあるな。こっちか。
「夜と霧」に、座ることもできぬほど狭い牢獄が出てくるのを思い出した。




名字といえば、オレの両親が離婚した時、母の旧姓に変更することができると言われた。でもそれはオレには全くなじみのない名字だった。遠方に住む母方の祖父母には数えるほどしか会ってない。だからオレは工藤で居続けることを選んだ。




好きなものしか置かないと決めた部屋だからあなたを入れられません

あなたが嫌い、と言ってるわけだ。自分の部屋に対してなかなかのこだわりがあるんだな。
男が女の部屋に入りたがるってことは、まあ、つまり、アレをめぐる攻防だよね。キッパリした断り方だ。
かっこいい振り方だとは思う。あなたは物でしかない、しかも物以下ですらある、と言ってるわけだから。

この投稿者の方は「ドラえもん短歌」でも優れた作品を残している。『のび太くん 乱暴にまさぐらないで そこは四次元ポケットじゃない』


解説を読む。この本のこの短歌のページに栞を挟んで男に貸してやれ、と枡野さんは言う。
それでもスルーだと思うなあ。本をもらったから脈アリ、と思うだけかと。ここにだけ付箋が貼ってあったらわかるかも



引っ越しは掃除のかわりといい放つあの娘は好きだが部屋はきらいだ

ふむ。発言は面白いから好きだが部屋は汚いから嫌い。わかる。でも言葉と行為を切り離すと違和感もある。そのおかしみを楽しむ短歌だな。
オレは震災が掃除のきっかけになった。片付けないと全く住めないほどグッチャグチャになったので。


解説を読む。
枡野さんの『引っ越しは掃除のかわり 詰めて運んで名字も変えて』
は夜逃げの短歌みたいだ。リズムがいいから、スタコラサッサと逃げてる感じだ。
恋は盲目じゃなくて、「あの娘が掃除さえできたらなあ…トホホ」という男性の願望にも見える





お客様、そんなお部屋はありません あれば住みますこのわたくしが

これいいね。無茶な希望をする客に対する不動産屋の胸の内だな。言葉があくまでも接客用の言葉使いなのが楽しい。

解説を読む。
オレはさっき「胸の内」と書いたが、実際に口に出すこともできるな。冗談めかして客に釘をさすわけだ。

オレは枡野浩一ファンだけど、特に何もしてあげられないのが残念。本は買います。




玄関はきれいにしている もし突然テレビに出ても大丈夫なよう

微笑ましい。実際には前もって連絡することも多いだろうけど、「隣の晩ごはん」みたいなのを想像してるんだろう。
テレビは来ないだろうけどきれいにするのはいいことだ


解説を読む。
ほらほら、やっぱり晩ごはんだ!
テレビを知る枡野さんならではのきめこまかなアドバイスが素晴らしい。




狭いイヤ遠いのもイヤ日陰イヤ古いのがイヤ払うのもイヤ

わがままがエスカレートしてゆく。
この短歌に対して不動産屋が
「お客様、そんなお部屋はありません あれば住みますこのわたくしが」
と短歌で返せば最高だ。



解説を読む。
歌人はわがままだと書いてある。枡野さんがどうかはわからないが、「あるきかたがただしくない」の河井克夫の漫画ではわがままだった。




この町はあすから遠い町になる 小学校からチャイムがきこえる

明日引っ越すのだろう。そして、もう聞くことがなくなるであろう、学校のチャイムを聞いている。なんかしみじみする。聴覚にうったえる歌だ


解説を読む。「あの○○」とつければ簡単にしみじみできる。その先駆者はユーミンだとあるが「あの素晴らしい愛をもう一度」はそれより前だろう。「あの鐘を鳴らすのはあなた」はいつかな





これでやっと全体の3割。この記事は(上)(中)(下)の3つに分けようと思う。





枡野浩一さんの本の感想の記事
「枡野浩一選 ドラえもん短歌」
「ショートソング」
「結婚失格」(上)
枡野浩一「結婚失格」(下)
「ハッピーロンリーウォーリーソング」
「石川くん」
「くじけな」
「淋しいのはお前だけじゃな」
「あるきかたがただしくない」
「ぼくは運動おんち」



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2011年08月13日

穂村弘「現実入門」内容と感想

穂村弘 現実入門


はじめに

現実での経験が少ない穂村さんがさまざまな体験をし、その体験談を書く。




内容と感想

表紙のクマはなんだろう。クマは「甘ったれた世間知らず」を示しているのか。英字新聞を持っているが、つまりは新聞を読んで外のことを知った気になってるのか。クマの目は新聞を見ていない。新聞を捨て、現実を見よう…と思いたったのか。




実はオレもかなり経験値はないほうだ。それだけに楽しみにしている。最初の方に列挙されてること、まるで経験値してない。



文体が面白い。たぶんこの人は何を書いても観察力や妄想力で面白くしてしまうのだろう。



美しいドラえもん

最初は献血だ。オレもやったことない。
「献血俳句コンテスト」が気になる。

「あなたから/もらった赤い/宝物」

みたいな感じ? 献血したことないけど詠んでみた。

タイトルほどドラえもんは出てこない。




〈生活〉といううすのろがいなければ

次はモデルルーム見学だ。しかしこの人は一度モデルルームを見学したことがあるみたいだ。じゃあ何やってんだ、って話だ。それでも佐野元春や足がぐじゅぐじゅした話をしてちゃんと面白くしている。何回モデルルームを見ても面白いものを書ける人なのだろう



にわかには信じがたいでしょうが~りそな姫

二人の占い師が出てくる。一人目はあきらかにダメな占い師だ。本をあげてごまかしたりしてる。変な名前の占い師一覧が笑える。

二人目の占い師は、占いなんかできないが、占いしに来た客の心をつかむ才能がある。プロの技がある。


占いなら、オレは彼女に連れられて行ったことがあるなあ。中年のあやしい女性がタロットをやってた。タロットのカードの絵柄が面白いなと思った。





真夏のおめでとう

本上まなみの結婚式の話。これの何が現実入門なのかはわからない。

短歌がいくつか載ってた。本上まなみの
「この雪は一緒に見てるっていうのかな 電話の向こうで君がつぶやく」
が一番いい。






逆転の花園

合コン。ライバルが女性に不評な話をして株を落としてゆくのをほくそ笑む描写がいい。オレもこういう感じだ。自分では何もせず、周りが落ちるのをただ待ってる




祖母を訪ねる

祖母に会う話。爪が指の途中から生える話がこわい。 孫という漢字が書けない筆者はどうかと思った。
祖母の対応は普通なのにどこかせつない。いたたまれなくなり逃げるように帰る筆者の気持ちがわかる気がする。




幸福の町

はとバス。オバチャン軍団のエネルギー、あやしいカップルの様子がみどころだな。
ドトールの椅子は座り心地を悪くしてある話。

結局なにが鳩だったんだ。



ちかいます

ブライダルフェア
様子は伝わってきた。穂村さんは激しく疲れたようだな。
ユーミン好きのようだな。オレはあまり聴かないんだよなあ




アカスリとムームー

健康ランド。 全く未知の領域だ。はじめは低俗さに激しい拒否反応を示していたが、なじんでいくのがわかる。これも一つの楽園の形なのか



ゲロネクタイの翼

体調を崩し心電図をとる話。真面目な説明会の中でゲロの話をする穂村さんは楽しい




一日お父さん

1日お父さん。昼の部と夜の部に分かれる。

これが今までで一番面白かった。子供のおしゃべりがシュールで面白すぎる。爆笑必至。




ダンディーと競馬

競馬。競馬そのものよりも、競馬場にいる変な人や、ダンディーなスザキさんの観察に重点が置かれていた。変な人がいるのはわかった




魅せられて

ウェディングドレスを見に行く。 ウェディングドレスが女性を幸せにするのはわかった。実際に穂村さんが見聞きしたことよりも、無関係な妄想の方が面白いのはどうなんだ。面白いからいいけどさ




夢のマス席

相撲観戦。お菓子がいっぱい出てくる。心づけのシステムは独特だな。

頭のとんがった朝日山親方が気になって検索した。なるほどインパクトある頭だ





パラサイトシングルマン、部屋を探しに~木星重力の日

部屋探し、プロポーズ。これはサクマさんと結婚したみたいに読める。これは企画として完結したのか?

箸がちゃんと持てないのはどうかと思った。

面白い本だけど最後はすっきりしなかった。伏線を張るなどしてほしかった。

検索して調べたが、やっぱりサクマさんと結婚したわけではないようだ。紛らわしい。





おわりに

面白いのは確かだ。しかし「好きか」と言われたら好きでも嫌いでもない。

この筆者は現実に入門しながらも、幻想や妄想が最後まで強かった。そういう人なんだろう。
その場その場で面白いのはわかるが、それらを経験することで少しずつでも何らかの成長が見られれば良かった。

最後にすごいことしてるこど、それまでに経験した現実が少しは活かされてるのかもよくわからない。
「現実での経験は人を成長させる」とオレは信じてるけど、「そんなことない、せいぜいちょっと面白い文章をつくるための材料になるに過ぎない」と言ってるような作品だ。






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今まで読んできた世界の文学をザックリとまとめる

ヘッセ「車輪の下」
ヘッセ「青春彷徨(ペーター・カーメンチント)」
ヘッセ「青春はうるわし 他三編」

ドストエフスキー「虐げられた人びと」[上]
ドストエフスキー「虐げられた人びと」[下]



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mk7911 at 21:20|PermalinkComments(0)TrackBack(0)