小説

2019年09月20日

長嶋有『問いのない答え』読んだ  ~ツイッターが近い

長嶋有『問いのない答え』読んだ。
三日かけて読んだので、感想を三部にわける。









ツイッターと、大喜利みたいなそうでないような遊びと、震災がでてくる小説。

なかなかおもしろくなってこないが、読むのをやめたくなるほどではなかった。
半分すぎておもしろくなる小説もあるので、そこはじっくりやるようにしている。



ツイッターが出てくるんだけど「ツイッター」とか「タイムライン」とか「アイコン」にカギカッコがついている。ツイッターについて説明しながら話が進められる。

ツイッターだけど、けっこう人と人とのつながりが濃い。

ツイッターで遊ぶ人がそれを「言葉遊び」とは言わないんじゃないか。

ちょっとずつひっかかる。

それとも震災直後と今とで変化してるのか。そのころからツイッターやってたけど、雰囲気まではわからないなあ。









この小説ではツイッターの利用者たちがお互いを対等に見ている。そこがオレとちがう感覚なんだ。
オレだったら、相手が自分よりおもしろいかどうか、長く活動しているか、年齢はどうか、フォロワー数はどうか……などなどと考えて上に見たり下に見たりしやすい。

そうか「数字」の要素を排除してるんだ。だから対等なんだ。

そういうふうにやれればいいんだろうなあ。オレは数字を気にしながらツイッターやっている。

数字のないツイッターっていうのは記名式の掲示板に近いんじゃないの。みんなで大喜利しようっていう掲示板のスレッドみたい。
それでもやっぱりこれは掲示板じゃなくてツイッターなんだと感じる要素があって、それは言葉遊びだけじゃなくて日常的なことも同じ場所に書き込まれるということ。



でてくるツイッターがなんだか古い。みんなに挨拶していく人が人気者になったと書いてあるが、そんなのうっとうしいだけだろう。オレならブロックする。ミュートじゃなくてブロック。挨拶NOの意志を示したい。一人でいいかげんにやりたい。

ツイッターが、お題を出して答えるための場所になっているが、今でいうと坊主の選手権みたいなものを想像すればいいのか。この小説の多くの登場人物がそれに参加している。っていうか、参加してる人が描かれているのか。



新人賞をとって本を一冊だした、と当たり前のように書いてある。
短歌の世界では新人賞と本は直結しない。本を出せてる人はすごいと思う。



なんかつまんなくて読むのをやめようかと一瞬思ったが、読み進めたら秋葉原の殺傷事件を起こした加藤が掲示板に残した書き込みについて書かれていて、興味がもどってきた。

スズキとか佐藤という人物に混ざって急に「加藤」がでてくる。これも小説の登場人物なのかと思ったら、実在の犯罪者なので驚いた。



「生半可でない」という言葉が流行っている、という設定だ。「ハンパないって」が最近流行ったのを思い出した。この小説のなかの人たちは、こちら現実世界の人よりも性格がいいし頭もいいと感じる。




ここまで出てきた登場人物のなかでは、オレは加藤が一番感情移入できる。全体的に悪の要素がないのを物足りなく感じる。ツイッターによってつくられる「輪」というかコミュニティに対してみんな従順なのがオレには気に入らない。

実際には、とんちんかんな回答者が雰囲気をこわしたり、それを過剰に注意する人がでてきてギスギスするもんだよ。
どんなお題でもエロや犯罪やそのときの流行にひっかけてくる安易な回答者が実際にはいるはずなんだが、いないことになっている。

オレはその陳腐な書き込みが溢れるところ、ギスギスするところがほんとのツイッターだと思うから、それがないと綺麗事と感じる。

ツイッターで出されたお題に答える遊びに、みんなけっこう真剣なのがこちらとしては変に思う。もっとテキトーな参加者がいっぱいいるはずだ。ナメた感じにならないのは震災後という時期もすこしはあるのか。



一二三という女子高生がでてくるが、加藤一二三のイメージが邪魔をして、なかなか馴染めない。



ツイッターにみんなが自分の生活について書き込んでいるようだが、実際はそんなことしないと思う。あんまり書き込まないし、互いに知ろうともしないと思う。

ネムオによるツイッターの「言葉遊び」によって多くの人がそれぞれで会うようになったというのも、信じにくい話だ。
でもまあそれは今の感覚であって、当時はすこしちがうんだろう。
思い出してみると、たしかにツイッターで突発的に歌会が始まったりしてたことはあった。


登場人物が多いが、いちはやく言葉遊びに違和感をおぼえはじめた「サキ」に注目したい。それと岡山に急にとばされた「少佐」。
仙台がでてくるので興味がつづいている。

当時は今とはちがってたんだろう、と考えないと納得できないし、納得しないと読みすすめられない。



アイコンを変えたときに「みんなのTLを流れる公共の景色なんだから」とブーイングされるなんて、いい迷惑だ。勝手だろって話だ。公共と個人だと公共が優先されている。

「あうー」と書いたら複数のリプライがくるとかも、本当か? と思う。

要するに「近すぎる」んだ。

古いものって、人と人が近いと思う。人と人が近いから古いと感じる。すぐ返信されるのも、TLの互いのことをみんなよく知っているのも、人と人が近いんだ。

話しかけてくるおばあちゃんがでてくるけど、おばあちゃんはほんとうに近い。うかつに話しかけて、悪人だったらどうするのか。老人が人にかんたんに近寄る性質を利用したのがオレオレ詐欺だ。

以前はそうじゃなかったものがいまはハラスメントとされたりするけど、要するに距離をとっているんだ。変に近づくな、過剰に関わるな、ということだ。そういう流れなんだ。

この本がなかなか読み進められないのは、現代のことを書いているようで微妙に人と人が近いところが古くて、ひっかかってくるからだ。



どうしても「リツイート」という言葉を使いたくないのか「口づて」と書いてある。
これはいくらなんでも無理がある。リツイートはリツイートだ。口づてじゃない。口づてというと人が集まってしゃべっているみたいで、近すぎる。

ツイッターについてくわしく書いているわりには、リプライもハッシュタグもファボもリムーブもブロックも出てこないし、いろいろ不自然だ。
そうそう、この小説ではみんななかよしになってるけど、ほんとのツイッターは変な人や嫌な人がいてミュートやリムーブやブロックやスパム報告をすることがあるわけだよ。
ツイッターの嫌なところは書かないと、決めて書いてる小説なのか。



ツイッターがよくでてくる小説なのに、ツイッターを知らない人に向けて書いている。オレにはツイッターの説明はいらない。だから、こっちを見ていない本だ、と感じる。そう感じながら、もうだいぶ読み進めてしまったし、気になるところも出てきたので最後まで付き合おう。
オレはツイッターを9年やってるけど、この小説のなかの人たちはせいぜい数年だ。感覚がちがうところもあるだろう。











機種変したら画像が鮮明になり、よくわからなかったアイコンの意味がわかるという場面、良い。
たたまれたティッシュの箱と上の面の紙の蓋の話もいいと思う。

ところどころおもしろいポイントがある。

読みおわった。読みおわってみると、いい本だったと思えてくる。

ツイッターの外側を描いているところは違和感なく読める。こまかいところが生きている。

ツイッターについてはやはり違和感が大きい。主人公は、知りたいことがあっても検索せずにツイッターで誰かにきくのが好きだという。それで誰かがちゃんと教えてくれるあたり、フォロワー多いんだろうなと思う。

主人公は作家だからフォロワーが多いのもわかるとして、編集者のスズキもそんな感じらしい。途中で送信したつぶやきに「大勢に」一斉にツッコまれている。こういうのがひっかかるんだ。編集者でそんなにフォロワー多いのはなぜ?



ネムオという主人公に、スズキという人物がからむから、自動的に鈴木宗男を思い出すわけだが、べつにそれらしいことはなにも書かれていない。



ネムオがツイッターでお題を出している言葉遊びで知り合った二人が結婚するというエピソードがある。ツイッターからそこまで仲良くなるんだね。
でも、これが意外なことに、似たようなことはオレにも心当たりがある。ツイッターを通して、ちょっと手の込んだ方法で結婚のお祝いを伝えたことがある。
だからなのか、このあたりから違和感が薄くなってくる。

それでも、転勤するひとりにそのフォロワーがみんなで一人暮らしのための荷物を送る場面は変な感じがする。
閲覧が1000くらいあるネット配信者が「開封枠」とかいって視聴者から届いたものを開けてるけど、そのノリに近い。



漫画家のアシスタントのことが書いてあるのがおもしろい。漫画が描かれる現場なんて、なかなかわかんないからなあ。
二つの絵をパタパタさせてどちらの表情にするか検討する場面など。


教室で一緒だと仲良くなるのにバスで一緒でも同じようにならないのはどんな要素が足りないのか、という問いに考えこんだ。
考えたこともないような問いが、日常にひそんでいる。それをみつけて引っ張ってくる。


「ノノちゃん」の震災時の行動は、一方からはだらしないと思われ、別のほうからは人として当然と思われる。終盤に重い問いがあらわれた。

液晶の点と、電飾を体に巻いたデブの話は好きだな



この小説の特徴として、場面が急に変わることが挙げられるだろう。誰かが何か行動すると、同じ行動をしている別の誰かにバトンタッチされる。
それが終盤でいきてくる。山を登りながらの思考であったり、人だかりに囲まれた猫の死骸をのぞきながらの思考。



感想はそんなところ。もっと早く出会っていたら違和感がすくなかったんじゃないかと思った。インターネットの数年ってけっこうでかいので。
オレが読むのが遅かったんだ。



この本おわり。
んじゃまた。





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2019年09月11日

村田沙耶香『コンビニ人間』読んだ

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村田沙耶香『コンビニ人間』


読んだ。
長くなくて読みやすかった。ほとんど一気に読んだ。



この記事のタイトルはもっと工夫すればいいんだけど、今から書く感想はたいしたことではないような気がするので、それに見合ったタイトルとした。



オレはこの小説を、あんまり他人事とは思わなかった。オレはスコップで頭を叩いたりはしないけど。

白羽という男は醜いが、二割くらいはほんとのことを言ってると思った。村社会のことだ。役割があって、それを求められるのは今も昔も変わらない。多数派がいて、少数派を奇異な目で見る。


でも主人公にコンビニがあってよかったと思うよ。コンビニが少数である主人公を多数の側にひらいている。

コンビニができるならスーパーも100円ショップもできるし、ほかの種類の店でも求められるものはある程度は共通するだろうし、ほかにもやれることありそうだけどな。それが状況を変えるかというとアレだけど。

ほんとはやれることがもっとありそうだけど、他に広げていく気持ちがないんだね。ずっと低い地位で同じことを繰り返していて満足している。

仕事に関してはオレもわりとそうだな。でも趣味は他にあってそっちではいろいろやりたいから、そこが主人公とオレのちがうところ。
この主人公はコンビニしかない。


コンビニが宗教になりうるのがひとつの衝撃だ。生き甲斐と平安をもたらしている。
コンビニの「音」のことが何度も出てきた。



印象にのこったのは、人間は周りの人間によってつくられることに意識的なところ。誰かのしゃべり方が、ほかの誰かにうつる。そうして人はつくられていく。
主人公も周りの人間を取り入れながら変化していく。

でも、そうやっていくら周りの人間を取り入れていっても、変わるのは振る舞いだけだ。主人公が「治る」ことはない。学習できる部分とできない部分がある。いくら真似できても、コンビニ以外の場所では周りの人と溶け込めない。言い訳が必要になる。村社会が求めているのは、もっと別のことだ。振る舞いが似ている、以上のことだ。誰にも影響されない感覚をもっていることによって、主人公は男と住むことになる。

あんなに差別的なことを言われたら男に怒ってもいいと思うんだけど、主人公はまったく怒りを感じないらしい。

変な男から主人公を救ってくれたのもコンビニだ。
感動的なおわりかただった。この意識の高さが主人公を守り続けてくれることを願う。

こんなに一生懸命働いて生きている人が、認められない現代社会なんだぞという告発みたいにも読めた。


そのまんまじゃダメだろう、と周りから見えても本人にその気がなければ変わらないよなあ。それこそ白羽の矢みたいなものが運命的に飛んできても変わらない。

ほんとうにダメになるときに、自然と道がひらけるんじゃないかと思うんだけど、楽天的かなあ。そのときにならないと見えてこないものがあると思う。コンビニとの出会いも偶然だったけども、そうやってあらたな出会いもあるんじゃなかろうか。

そうだなあ、男や就職じゃなくても、感覚が近くて心を打ち明けられるような友人ができるだけでも変わってくるとおもうよ。

って、なんか余計なところまで踏み込んでいきたくなってしまうからもう終わろう。




オレに初めて彼女ができたときに母親が喜んでたなあ。そんなことも思い出した。



この本おわり。
んじゃまた。



▼▼▼




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2019年05月24日

太宰治(文春文庫 現代日本文学館)を読んだ

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文春文庫の現代日本文学館というシリーズで太宰治を読んだ。



まず『斜陽』。これは三回目くらい。




『人間失格』を再読。
1998年に読んだときと感想は同じ。モテてうらやましい。
それと、男しかいない病院に入れられたらいやだなっていうのと、悲劇名詞喜劇名詞の話。生死不明で終わるのは忘れていた。
ギャグ漫画家でありながら偉い絵描きになりたがっているところに、なんとも言えないものを感じる。





「ダス・ゲマイネ」読んだ。なかなかいい。「太宰治」という登場人物の立ち位置がおもしろいと思ったら、解説(臼井吉見)にもそのあたりが書いてある。



「満願」読んだ。これは高校生のころに読んで覚えてた。




「富獄百景」読んだ。高校のとき以来。カメラの場面だけ覚えてた。
くつろいでいて、よかった。悩んだりギスギスしていない。あちこちで富士山がさまざまな表情を見せる。



「葉桜と魔笛」読んだ。おもしろい。手紙をめぐる話。自分と自分で、男と文通しているかのように手紙を書いているってやばい。

姉が、妹と男との手紙を見てしまったかと思ったら、妹が自分で自分に書いていた。いない男を装って姉が妹に手紙を書く。
「世にも奇妙な物語」の「ネカマな男」みたいな話だ。

その男が歌人だというのがよかった。



「駆込み訴え」読んだ。キリスト教の話。



「走れメロス」読んだ。ふつうに面白かった。短くてプツプツした文章。すこし遅れてくれば許してやるという王の言葉が、たいしたもんだと思った。悪役がちゃんとしてるのがいい。ちょっと情けがあることで、悪者度がアップする。この王が人を信じられなくなった背景には、ひどい裏切りがあったんじゃないか。



「トカトントン」読んだ。金槌の音が聞こえてくると無気力になる話なのは覚えていた。読み直してみると、かなり鬱陶しい手紙だ。知らない人からこれが届くのかー。住んでる所が近いというだけで。

トカトントンで無気力になるより、この人が情熱家であることのほうが印象的だ。小説に恋にマラソンに、えらく情熱的だ。マラソンなんて、自分が走ってるわけでもないのにものすごい思い入れだ。

「どうせ田舎の駈けっくらべ、タイムも何も問題にならんことは、よく知っているでしょうし、家へ帰っても、その家族の者たちに手柄話などする気もなく、かえってお父さんに叱られはせぬかと心配して、けれども、それでも走りたいのです。いのちがけで、やってみたいのです。」

マラソン選手に影響されて、やってみたのがキャッチボールというのがズレていて、それでもかなりの充実ぶりだ。

それと、トカトントンの聞こえかたが毎回ちがうんだよね。恋愛のときだけやたらはっきり聞こえていて、あとは遠くからだったり、「聞こえたような気がして」と、おぼろげになっている。

恋愛といえば、郵便局員がふつうに業務をやっているだけで、片想いの女性から誘われるのが、なんだか太宰っぽい。妙にモテるところ。

最後に「むざんにも無学無思想の男」だという作家が返信する。無学無思想でも作家をやれるものなのかと思って読むと、この男は聖書の言葉を引いて「真の思想」について語っていた。「真の思想とは叡智よりも勇気を必要とするものです」と。




「ヴィヨンの妻」読んだ。これは初めて読んだ。
解説では、斜陽や人間失格と並べて、特に注目すべきものだと書いてある。オレにはそうでもなかった。

「傷つきやすい心をまって生まれたために、ゆえ知らぬ不安におびえて巷を彷徨する、のんだくれの薄汚れた詩人の身の上について、決して傷つくことのない、すべてを軽くさばいていくその妻の口を通して語る」と解説に書いてあるとおり。

うちの父も青森なんだけど(「工藤」は青森に多い名字)、主人公が父に似ていてなんだか他人事とは思えなかった。ろくでもない。
それより妻のほうを見る話なんだろう。妻は、支払いがたまってる話をきいても笑ってるし、困った状況も知恵で乗り越えている。

お金の感覚がいまと違うから、金額にピンとこない。百円といえば大金、って言われても。換算すればいいという話ではない。

しかしそれにしても、酒臭い話だ。「男には、不幸だけがあるのです」とか読むと、ムワーッとしたものを吐きかけられるようだよ。




「桜桃」読んだ。高校生のころに図書室で読んで以来だ。今世紀になってから初めて読んだ。

前世紀に読んだときには「涙の谷」という言葉にやらしい意味しか読み取らなかった。生活がつらくて泣いてるんですという意味だったんだね。
夫はこうして逃げられるが、妻はどうすんの。

「私は議論をして、勝ったためしがない。必ず負けるのである。相手の確信の強さ、自己肯定のすさまじさに圧倒せられるのである」






以上です。


関連

太宰治『グッド・バイ』(新潮文庫)を読んだ : ▼存在しない何かへの憧れ http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52225103.html


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2019年03月05日

『群像』2019年2月号の特集「文学にできることをⅡ〈短篇創作〉」すべて読んだ感想

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すこし前の本だけど群像2月号に載ってる短編を読んだ。

『群像』2月号の特集「文学にできることをⅡ〈短篇創作〉」すべて読んだ感想を書く。


群像ってはじめて買ったんですよ。穂村弘さんの「現代短歌ノート」に自分の短歌が載ったからなんだけど



佐伯一麦「ななかまど、ローワンツリー」読んだ。 https://t.co/JFIntcMLAA

この作家さんの作品を読むのは初めて。
っていうかオレは現代の日本の小説ってあんまり読んでなくて、有名な作家ほぼ読んでない。



さて佐伯一麦さんの小説。
出だしから「寝覚めしたおれは、」で始まっている。意味はわかるけど見慣れない言い回し。少し進むと「妻の寝息がしている」「居心地が萌してきた」もある。

作家ごとにこういうのってあるよね。
この小説を読んで一番感じるのは、時間の動かしかた。
寝覚めしたところからすぐ昨日の話に飛んで、なかなか戻ってこない。場所も移動していて、時間と場所がわからなくなる。
わからなくなる感じがやりたいんだと思いながら読んだが、オレがダメな読者だからわからなくなるだけかもしれない。

主人公が仙台の人ということですこし親近感。でも舞台はイギリスのほうだ。指揮者のバルビローリの話がでてきたりする。

どんな話かっていうのをまとめるのはむずかしい。時間がこまかい範囲内で前後するが、内容もあっちこっちする。ベンとリズという夫婦との交流と、そのなかで起こった震災が主なところか。

古いお金が使えなくなる場面とか、「木漏れ日」という言葉は直訳語がないとか、ペニーレスポーチとか、そういうのを読んでいると観光の感じになる。

あと、夫婦のありかた。共同でよくやっている。
ベンはリズの制作したタペストリーの展示のためにけっこう危険な作業をやろうとして、うまくいかなかったのを残念がっていた。

ベンとリズの夫婦は日本滞在中に震災にあう。
ベンの手記のなかで、震災の強烈な体験として、暗い場所での食事でわさびの塊を口に入れてしまったことが書かれていた。
オレは震災の夜にもらったおにぎりを食べたら赤飯でおどろいた体験を思い出した。震災あるある、なのかも。

古い感覚なんだろうけど、外国人と接触する場面になると緊張するよオレは。小説なのに、自分が話しかけられてるみたいに緊張する。

終盤にあたらしい人物を出すあたりにも、一直線でない筋書きを感じた。ラストがささやかで、別にこれが書きたくてここまでのことを書いたわけじゃないんだろうって感じがする。
ピントをひとつにしぼらせない感じ。

作者については調べずに読んだ。この佐伯さんという作家の立ち位置というかアレはわかんないけど、現代だなと思って読んだ。

これが15ページの短編小説、佐伯一麦「ななかまど、ローワンツリー」の感想。この調子で進める。







つづいて町田康「はなれて遠き」読んだ。

この作家さんも読んだことがない。ブックオフで「ほ」とか「ま」のあたりを見てると、この方の本が必ずある。だから名前だけは知っているし有名らしいこともわかる。こちらも作者情報なしでいく。それができるのは最初のうち。


はじめのほうはおもしろい言い回しがあって、印をつけながら読んだ。
「チャーハン色の革上衣」
「命を的に修羅場を駆け巡り、頑張って頑張ってきた」
「靴墨と眉墨を間違えるよりもまだ馬鹿らしい」
「ざっ風景」
「いかにも愛想笑い、みたいな、もう見るからに作り笑いみたいな笑いを笑った」
「鬼は外。福は内。こいつやはりただの鼠じゃねぇな」
「未来の乞食も宵の内」


わからない言葉が出てきて調べた。
ガタロ→河童
チボ→スリ

喉越しがいいというか、どんどん奥へ引っ張りこまれるような文章だった。

ふたりの男が楽屋で話し合っている場面が大半を占める。
二人はうだつのあがらない舞台人らしい。妙に観察眼がするどくて、互いの気持ちを探ったり、壁の落書きとか、ボトルのラベルについて考えて話し合っている。
ただの楽屋話ではないようだ。2人の洞察力の鋭さ・用心深さもそうだが、思想チェックがあるらしい噂とか、モニターがなくなっていてその代わりに集音マイクがつけられているとか、「密勅」とか。
なにかの象徴なのか。

「密勅」のくだりで思ったのは、小説では作者がその気になれば、何行も引き伸ばすことができる、秘密を秘密のままにして気をもたせることができるということ。「密勅」ってなんだと思って読み進んで、結局わからない。

わからないといえば、最後にでてくる舞台が圧倒的にわからない。漫才なのか芝居なのか。書かれ方が抽象的だ。
「二人は完全に受け入れられ、その場が一体化して全員が幸福感と高揚感、官能のよろこびに包まれた」

ひょうきんな話かと思って読み進んでいったが、気味の悪い話なんじゃないか。
この作品は、2人の男については細かく描かれているけどそれ以外はかなりぼかされている。巨大な力が2人を圧迫していて、それが特にぼかされている。






つづいて西村賢太「四冊めの『根津観現裏』」
この人の本は何冊か読んでいるから、「根津観現裏」ときけば「いつものやつだな」と察しがつく。変わってなくて安心した。
清造、土下座、慊い、ほき出す、没後弟子。

さっきブックオフのことを書いたけど、同じ古本でもまったく世界が違う。すごい情熱で同じ本を何冊も集めている。没後弟子への道は、なんとけわしいのだろう。
ソープランドの一件はおもしろい。

「文芸誌なんて好んで読んでる馬鹿な奴らは、馬鹿なだけに、何を言いたいのかまるで分からないやつのみを有難がる習性があるんだから、単純に分かり易く書いてるぼくの小説なんか、無条件に軽ろんじるだけで絶対に読みやしねえ」
に印をつけた。







つづいて、円城塔「わたしたちのてばなしたもの」
この人もすごく名前をよく見る人だけど作品は初めて読んだ。
読んで、最後のところで、まんまとやられた。

遠い遠い未来の人が言葉の変化について書き残した文章、ということになっている。
どれくらいの未来かというと、癌が制圧されているとか、生殖能力を含めた性転換が行えるようになっているとか書いてある。
そこでは「進化の歴史のどこかの時点で性別によって引き裂かれた言葉を一つに縫いあわせようという試み」が進んでいる。
言葉に性差がなくなり「彼」と「彼女」が同義語となっている。性別だけでなく「人種、国籍、年齢、信条など」もそのようになっている。

とっても難しい問題だ。
「モトカレ」はユーモアだろうし、「生産効率の上昇」もそうなのだろう。

読んでいると、自分が生きているのはなんて野蛮な世界だろうと思うと同時に、それを脱するために必要な見返りの大きさに、あぜんとする。



以上、『群像』2月号の特集「文学にできることをⅡ〈短篇創作〉」すべて読んだ感想でした。

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2017年10月04日

松尾スズキ『宗教が往く』を読んだ

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十日くらいかけて松尾スズキの『宗教が往く』という小説を読んだ。マガジンハウス、2004年。約500ページ。
日記にすこしずつ書いたものがあるのでそここにをまとめておく。





9/10
松尾スズキ『宗教が往く』読みはじめたが、なかなか始まらない。


9/12
松尾スズキ『宗教が往く』まえがきを読みおわった。まえがきだけで64ページある。


9/14
松尾スズキ『宗教が往く』75ページまで。あんまり進んでないなあ。中身が濃い。少しのページ数でもすごいことが起きている。
男が女に犯されたり、大きな鉄道事故を起こされて殺されそうになったり、山手線を何周もしながら酔っぱらいの話を延々と聞いたりしている。
わけわかんないでしょ?


9/15
読書は、それほどのページ数ではないがまあ仕方ない。とにかく濃いんだもの。少しのページ数でもすごいことがいろいろ起こる。エロとグロと笑いがどっと押し寄せてくる。


9/16
『宗教が往く』228ページまで。半分こえた。
相変わらずエログロ暴力笑いが強力に混じりあっている。
学校の場面がよかったな。おかしな数人が学校を混乱におとしいれる。分刻みで動くのもおもしろい。


9/17
松尾スズキ『宗教が往く』290ページくらいまで。テレビ局の場面、あいかわらず狂っている。そんななかで魔法少女がとてもいい。こっちまで好きになりそう。


9/18
松尾スズキ『宗教が往く』はミツコがいい味出てた。ただの暴力的な女かなと思っていたら、弱ってきた。芝居での失敗、失恋、居酒屋の店員の復讐。逮捕。


9/19
松尾スズキ『宗教が往く』読みおわった。すごいもの読んでしまった。
しばらく動けなかった。

作者の思い出と小説の筋がこんがらかるところとか。予定どおりのラストにたどりつけないところとか。いろいろよかった。





▼▼▼



■工藤吉生(くどうよしお)の短歌・自選50首 +プロフィール
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52107166.html

2017年7-9月の歌まとめ・20首
https://matome.naver.jp/m/odai/2150685074540729601




第57回短歌研究新人賞候補作「仙台に雪が降る」全30首
https://t.co/2qhYBXq6hv

2017年9月のオレの短歌とその余談【前編】|mk7911|note(ノート)https://note.mu/mk7911/n/nd4b539b8b11c

短歌パトロール日誌【最終回】|mk7911|note(ノート)
https://note.mu/mk7911/n/n41c835707189

最近読んだ戦争関連本11冊を5段階評価する|mk7911|note(ノート)https://t.co/mymQd04Grj


「工藤の有料マガジン」は500円ですべての記事が読めます。
よろしくお願いいたします。


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2017年08月21日

【ネットプリント読む 4】 我妻俊樹『天才歌人ヤマダ・ワタル』

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我妻俊樹さんがネットプリントで小説を出したので、読んだ。


ネットプリント
配布開始



緊急書き下ろし小説
「天才歌人ヤマダ・ワタル」

セブンイレブン
32250500



文・我妻俊樹



A3
2枚
¥40
白黒



8月27日23:59まで

https://twitter.com/agtmtsk_bot/status/898983186985738240




このブログは、ツイッターよりは閲覧している人たちの年齢層が高いと見ている。「ネットプリント」と言われてもサッパリなんのことかわからないかもしれない。
でも、ここに来たからには、ネットプリントの出しかたを覚えて帰っていただきたい。

まずコンビニ、(この場合はセブンイレブン)のコピー機に行っていただこう。
「ネットワークプリント」をタッチする。
番号を入れる画面がでるから、上の数字を入れる。次へ。
設定画面が出るが、なにもさわらなくていいと思う。「A3 2枚 白黒」になってればOK。次へ。
40円入れる。印刷が始まり、コピー機でコピーをしたときの感じで紙が出てくる。
それだけ。お釣りを取り忘れずに帰ること。

覚えてしまえばなんにも難しくない。
ネットプリントは基本的に一週間の期限があるので、後回しにせずなるべく早く出したほうがいい。

期限つきの作品なので、このブログでも素早く紹介することにした。









さてここからはその『天才歌人ヤマダ・ワタル』の感想。



「天才歌人ヤマダ・ワタル」読んだ。なんか考えちゃうね。なんか言いたくなる。



歌壇の陰口や皮肉がいろいろ出てくる。どっかの掲示板かと思った。「耳を貸す必要はこれっぽっちもない」とかなんとか言いながら、それでもかなりの文字数をつかって執拗にそれは書き出される。
まったく無視すればいいかというとそうではなく、「常連客」を無視したことでヤマダワタルは心身に傷を負う。


ヤマダは指折り五七五七七で犬に話しかけたり、素敵なバーをやっていたりするから、良い人物のように感じられる。
しかしよく読むと、来る客はひどい人ばかりだ。彼のなにかがそれを引き付けているんじゃないか。それに、飲み物に何か混ぜて出しちゃうあたりも、彼が善人でないことを示している。


グラスを叩きつけたつもりが眼鏡だったなんてこと、まずないでしょう。でもこの小説には2度ある。どうしても叩きつけて割ることができないグラスとは、歌人にとっての歌なんじゃないかと思った。誰かの歌に似てしまうこととか。
眼鏡も英語にすれば「グラス」だから、洒落になっている。


ダンゴ虫入りの酒をヤマダは変な味だと思ったり美酒だと感じたりする。これこそ短歌のむずかしさだと思う。どちらも真実だ。手を入れて良くなるものと悪くなるものがある。


歌集批評会でマイクを離さない「最悪の老害」のくだり。常連客の「糞」の話はなるほどひどいけど、擁護するヤマダの「短歌音」の論は深読みのしすぎでオカルトじみている。読者はどちらにも転べなくなる。
どちらにも転べないが、どちらにも一理ありそうだ。二つの不正解を示され、読者はどう考えるのかを問われている。


常連客がいかにも悪っぽいからヤマダに善を求めたくなるが、そのヤマダも信用ならない。
そもそも語り手もどこまで信用してよいかあやしい。この小説に出てくる何者にも慎重にかからなければならない。
語り手が言う、序盤の「漢字にも詳しい知性の輝き」からすでに皮肉の匂いがする。その次の文章では、歌人には豊かな教養もなければ政治への関心もないと言わんばかりだ。毒があり、油断ならない。

山田航さんのことを持ち上げてるように見えて「合衆国の現職大統領のような素晴らしいリーダーシップ」などと、これまた毒を含ませている。

山田さんのどこがトランプ大統領なのだろう? 
「かばん」で『水に沈む羊』の歌集評を書かせていただいたことがあるけど、トイレでいじめられたりコカコーラゼロを浴びせられてるようなイメージで、どうも結びつかない。
なんてことを書いたら、作中人物と作者と一緒にするなってことになるのか。



最後の段落は一転して調子が変わる。というか、ヤマダから離れる。
すべての短歌が「お国のため」につくられているかのようなトンデモな論があらわれる。これまでは作中人物が論じていたが、語り手が論じはじめた。
とんでもない話だが、まるっきり外れているわけでもない気もしてきて、「肩から上がまるごと欠損した作業員」によってこれはフィクションだと思い直したりもした。

でもオレの知ってるいくつかのブックオフは「歌集の棚が奇妙に充実して」いないからなあ。

ややグロテスクな風景で終わるけれども、最後の一行が多くを語っている。


と最後まで見てからあらためてタイトルを見ると、ヤマダ・ワタルのどこが天才歌人なのかと思うね。気持ち悪いやつらの話に相槌をうって異物混入させて棚に頭ぶつけてるばかりだ。「天才バカボン」みたいな意味での「天才」かな。



四方八方に毒を撒いた、歌壇につよく警鐘を鳴らす小説だ。
毒といえば、異物の入った酒を飲まされているのは、読者も同じことなのだ。変な味の小説とするのか、あるいは美酒とするのか。


「中庸の徳」というのが昔からある。
崇めることも貶めることも違う。ゲスの勘繰りにも一片の真実はあるが、足をとられないことだ。仕事を丁寧に見て、良いところを評価して悪いところは指摘すればいいんだ。マイクを離さない歌人には、角が立たない程度に注意するのが正解だ。
オレはそう思います。

松尾スズキに『同姓同名小説』という、有名人と同姓同名の主人公ばかりでてくる本があったな。


「正解」などとつまらんことを言ってしまったが、オレの中にも欲望があって陰湿な部分があるからくすぐられるんだと思う。


【2017.8.22付記】
付け足すと、ヤマダのやってるバーというのは、ネット掲示板の風刺だと思っていたが、もう少し広くて、ツイッターのいわゆる「短歌クラスタ」の風刺でもあるんじゃないか。歌人の集うSNS全般といえる。ネットでは年がら年中いつだって馴れ合っていられる。それが「常連客」だ。
表面は「隠れ家のような素敵なバー」だが、その中では悪口ばかり言う不愉快なやつらが酔っぱらっている。対話はなくて、一方的に話が垂れ流される。こんなところにいるかぎり、ろくなことはなさそうだ。
マスターであるヤマダは彼らに理解をしめすが、それも表面だけのことだ。うわべだけの場だ。

なんて言ったら「わたしと○○ちゃんや△△ちゃんのツイッターでの関係はそんなうわべだけのものじゃない」という反発もあるかもしれない。

戯画っていうかカリカチュアっていうのか、こういうのは大袈裟に書かれるものだ。目が少し小さい人の目はすごく小さく描かれ、目が少し大きい人は目をものすごく大きく描かれる。ここでは歌壇の悪い部分が大きく描かれているわけだ。
大袈裟だし言ってしまえば嘘なんだけど、創作だからそれでいいんだけど、それっていうのは、このままこの方向に進めばこうなりかねないぞという警告にもなりうるわけだね。



以上です。
んじゃまた。



▼▼▼



#2017上半期短歌大賞 50首 Togetterまとめ https://togetter.com/li/1126231
今年の上半期に読んだすべての短歌から50首選んでまとめました





2017年7月に発表した/掲載されたオレの短歌まとめ|mk7911|note(ノート)
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2017年6月に発表した/掲載された短歌まとめ【25首】|mk7911|note(ノート)
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短歌パトロール日誌【最終回】|mk7911|note(ノート)
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2017年6月の出来事についてあれこれ言う【短歌編】|mk7911|note(ノート)
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2017年06月17日

保坂和志『明け方の猫』を読んだ

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保坂和志『明け方の猫』を読みおわった。

中公文庫。2005年。二編が収録されている。

タイトルから、あーいつもの感じのやつかなーと思ってたら全然いつもの感じじゃなくて驚いた一冊だった。
小説論でよく保坂さんはカフカとベケットのことを言うけど、カフカとかベケットっぽいと感じた。



二つ入ってるうちの一つ目「明け方の猫」は、夢のなかで猫になる話。いわゆる明晰夢というやつなのか、これは夢なんだと知りながら人間の意識のまま猫をやっている。
夢とは思えないくらい豊かな感覚がある。いや、夢のなかって豊かな感覚があるのか?
さすが猫で、聴覚と嗅覚が発達していて身のこなしが軽い。音や匂いがこまかくたっぷり描写される。
触毛のおかげで楽に動けるとか、毛づくろいしてると安心するとか、でも爪や尻尾は意外と自由に動かせないとか、こまかいところまでしっかり描かれている。もしかして猫になったらこんな感覚なのかと思うくらい。ネコになった体験ができる小説。

「夢の中の声がすべて覚醒時に一度は実際に耳で聞いた声であるというフロイトの説」を知った。
会話がおもしろい。カップルの会話がおもしろくて笑った。女が男っぽいしゃべり方をして、会話が続くとどっちがどっちだかわからなくなる。「プレーンソング」とかもだけど、保坂さんの書く会話は面白い。

「早く出せよ」
「ほら、なんかくつろいじゃってんぞ」
「そんなんじゃねえよ。バーカ」
「そうだよ」
「早く出せよ」
「もうちょっと見てようぜ」
「見たくなんかねえよ。早く出せよ」
「出すって、どうやって出すんだよ」
「自分で考えろよ。バーカ。早く出せよ」


「バーカ」と「早く出せよ」があるほうが女のセリフ。いくら語彙が貧困でもここまでにはならないんじゃないか。だからやっぱりこれは夢なんだ、一度聞いた音が再生されているんだと思って読んだ。


69ページ。
『独り言は自分の頭に浮かんでは消えていく考えを耳で確認するためのものなんじゃないかと彼は思った。考えは頭の中にあるだけではつかみどころがないが、それを音に変換することでそれらしくなる』


81ページ
『猫にとっては自分の中にあるものよりも外にあるものの方がずっと多くて、自分が生きて存在していることよりも世界があることの方が確かなのではないかと彼は思った』


気がつくと猫になってて、猫として行動するっていうのがカフカっぽい。
終盤でこの猫は動けなくなるんだけど、動けない状況でほんの少しずつ話が動いてゆくあたりなんかはベケットっぽい。







その次の「揺籃」はもっと驚いた。

自分の記憶をたどっていこうとしてこまかくこまかく思い出してゆこうとするんだけど、変な出来事が混ざりだして、いつのまにか肝心なところを通りすぎたり、荒唐無稽な話になってゆく。
保坂さんの小説で初めて「この先どうなってしまうんだ!」と思った。

もうちょっと整理すると、喫茶店である事故が起こって、その事故のことを思いだそうとして書き始めるんだけど、喫茶店の名前や場所からして記憶が曖昧で、しかも幼いころの回想へ脱線してゆくものだからまったく収まりがつかなくなる。脱線に脱線を重ねてついに行き着いた場所とは、……という、そういう話。

砂まみれになってゆくところは怖かった。

それに、なんかエロ要素が多かった。男女の欲望がギラギラしてて。やっぱり保坂さんとしては異色の作品だ。書いた時期がほかのものと違うと書いてあった。

この本についてはそんなところで。




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2017年05月24日

『野性時代』2017年6月号の読みきり小説を読んでみた

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「野性歌壇」の特選になったことをきっかけに、『野性時代』をはじめて読んでみた。2017年6月号。




「小説 野性時代」って初めて買った。ほんとに小説ばっかりだ。860円で460ページもある。

野性時代には連載が多くて、460ページのうち300ページは連載だ。
連載は読む気しないな。第8回とかから読みたいと思わないよ。いくつもの小説を読みかけでやめて、来月また続きを読めるかっていうと、どうなんでしょう。こんなに連載が多いってことは、みなさん普通にできるんでしょうか。

漫画の連載だったら、パラパラめくっただけで少しは内容がわかる。好きなジャンルや絵柄だと読んでみたくなったり、かわいい女の子が描いてあると読んでみたくなったりする。だけど、小説はどうだろう。

とりあえず読みきりを読むことにした。
この雑誌に載る小説がどういう傾向のものか、とかは全然わからない状態で。








まず一番最初の。
荻原浩『僕と彼女と牛男のレシピ』

二十代のバーテンダーの男性が、年上のシングルマザーの看護婦の女性と交際する。男性はウシオという子供と仲良くなろうとがんばり、また仕事のカクテルづくりのほうも頑張る。
そんなような話。



読んでるときはまあまあ面白かったんだけど、読み終わってしばらくしたらなんかムカついてしまった。
これはドラマでやるやつだね。イケメン俳優に美人女優に天才子役が演じるのが目にうかんでくるよ。ドラマならウケるだろうな。どんなにウケてもオレはそういうのは見ないけど。
テレビだったら一秒でチャンネル変えるのに、小説だから最後まで付き合ってしまった。

ムカつくっていうのは、別にこの小説が悪いんじゃない。小説自体はうまいこと書いてある。
恋に仕事に前向きに頑張る主人公に自分をかさねると、自分がイヤになってしまう。重ねたいわけじゃないんだが「それにひきかえオレは……」って勝手に思ってしまう。思うと暗い気分になる。こういう劣等感がいやだからドラマも避けてるのに。

カクテルがでてくるが、酒を一滴も飲まないオレにはまったく響いてこない。

最後にほめておわる。
キャッチボールしながら自分の父親の気持ちがわかっていく場面が良いと思いました。







二番目の読みきりはホラー。
小池真理子「ゾフィーの手袋」


夫婦がいて、奥さんが主人公。旦那が海外でゾフィーっていうオーストリアの弱々しい女と知り合うんだけど、このゾフィーという女性が旦那さんのことを好きだったんだよ。帰国した旦那を追って日本にまでくる。でも旦那はゾフィーに気がないからオーストリアに帰しちゃうんだよ。
それから旦那さんが亡くなって、それから間もなくゾフィーも亡くなるんだけど、奥さんのところにゾフィーの霊がでるようになる。
奥さんは怯えながら過ごす。洋箪笥にゾフィーの霊を見つけて箪笥を処分する。これで解決したと思っていたら、それでもまた出てきてワーッ。
そんなような話。





読みやすくてツルツルッて読んだけど、終わってみると、なんかなあ。古くささが気になった。すごくよくありそうな話。

なんでゾフィーは奥さんのとこに幽霊になって出ておどかす必要があるんだ。奥さんはゾフィーに恨まれるようなことはしてないでしょ。もともと男はゾフィーに気がなかったんだから、その奥さんにあたっても八つ当たりだよ。うまいこと呪い殺したとしてもなんの意味もない。

ゾフィーって賢そうに見えるけどバカなんだなと思った。あなたが会いたいのは男のほうなんじゃないか。お互いがあの世にいるんだから、この世にはなんの未練もないはずだ。近い時期に亡くなったから、てっきりゾフィーは旦那を追いかけて死んだのかと思ったよ。
未亡人を旦那さんのことでいじめるとか最悪だ。そんなんだから旦那にも相手にされないんだ。


それと、ゾフィーが見えた洋箪笥を処分したくらいで解決したと、小説を読み慣れた読者が思うわけないでしょう。案の定おわってない。
オチが想定の範囲内だ。そりゃそうなりますわな、という読後感だった。

色白で病弱で恋にやぶれたゾフィーが化けてでるなんて、幽霊として類型的だ。最初から幽霊になってこわがらせるためにいるようなキャラだ。平凡なんだよ。

奥さんがじぶんで塩をまいてたけど、西洋の霊と日本の霊で同じ対処でいいのか、オーストリアにも「化けて出る」っていう発想があるのかな? というのが一番興味のわいたところだった。

褒めて終わる。
よかったのは、洋箪笥のなかにいたゾフィーと対決したところ。自分から確かめにいってほんとにゾフィーを確認したところ。ここだけちょっと怖かった。








五本の読みきりのうち、三本目五本目は「スピンオフ」だった。読む気にならない。本流がないのに支流なんてない。二番煎じとまでは言わないが、前もって本流になる作品を読んでたほうが断然いいわけで、スピンオフは「読みきり」と思わない。

「二人目!」なんてタイトルについてる作品があるけど、柳の下のどじょう「二匹目」みたいだ。


うっかり二番煎じって言っちゃったけど、それを言うなら表紙の魔女はどうなんだ。スタジオジブリのアニメのホウキに乗った少女が黒猫を連れて飛んでいる。
セルフカバー、オマージュ、いろんな言葉が頭のなかを押し合いへし合いする。








四番目
窪美澄「無花果のレジデンス」

夫婦がいて、夫のほうが主人公。妻が子供をほしがっている。だがなかなか妊娠しない。妻は妊娠するための活動「妊活」をするが、夫はそこまで子供がほしいわけじゃなくて、妻のやり方に息苦しさをおぼえる。
妊娠のための検査をおこない、夫の精子が弱いことがわかる。医師から体外受精をすすめられるが夫は内心反発する。
ちょっと夫婦関係がギクシャクするが、お互いに心境の変化がおこり、歩みよって元にもどる。
「千草さん」という、亡くなった上司の奥さんがいて、ところどころで深いことばを投げかけてくる。
そんなような話。




これはよかった。
不妊治療とか妊活とか、オレの知らない世界が描かれている。興味をもって読んだ。命ってなんだろう夫婦ってなんだろうという深いところまで届いている作品だと思う。
結末が最後まで読めなかった。どうなっちゃうのかと思った。


読みきり小説は以上。







「野性」ってなんだろと思うね。むしろお利口さんでみんなに愛される血統書つきの立派な動物みたいな小説が多い。スピンオフだって、本流が人気作品だから可能なわけだから。

このまえ読んだ「三田文學」はわけわかんない小説ばっかりでおもしろかったけどな。
雑誌によって小説の色もちがうんだな。って、文章にすると当然のことを今さら言うようだけど。



小説以外だと、やっぱり野性歌壇を見ちゃうね。

一首引きます。

はじまりの合図が鳴って走り出す止まったままの君を残して/水澤賢人
→徒競走でそんな生徒は見たことないし、なにかほかのことかなと思う。
なんで「君」は止まったままなのか、とても気になる。気になるが、「君」とそれ以外のみんなは一秒ごとに離れていってしまう。
重い障害でみんなと同じようにできないのか、家庭の事情かそのほかの事情があるのか、そもそも生まれてこれているのかも、なんにもわからない「君」だ。とても心配になる。



「牛男」の主人公みたいな健康的な頑張る人を見てるとイヤになるんだと書いたけど、この短歌のようななんにもできない人を見ると感情移入する。オレはそういう読者なんだなとあらためて思った。


以上です。んじゃまた。




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2017年05月06日

マストドン関連、『猫に時間の流れる』【2017.5.6】

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四月後半から今日までの雑多な文章をまとめておく。



▼マストドン関連



「マストドン」は、一言でいえば最近できたツイッターに似たSNSで、分散していることが特徴。


いまのところ、マストドンをやっている歌人は数人で、活発にやってるのはオレとあと一人くらいしかいない。

オレはもっともマストドンをやってる歌人だと思う。参加しているインスタンスの数、フォロワー数、トゥート数、どこをとってもずばぬけて自分が一番だという自負がある。
だがほんとうに有効活用しているかどうかは自信がなく、そこがむずがゆい。


現在、マストドンでは短歌に関して特に動きもないし、知らなくてもなにも問題ない。

それこそ「ツイッターにもしものことがあったらどこに集まるか」というくらいしかマストドンが必要になりそうな状況が思い浮かばない。ツイッターがあるかぎりは特に必要ない。


オレはどこがなくなってもいいようにしている。ツイートを編集してブログにまとめたり、複数の場所に同時投稿している。ブログはライブドアとFC2の二種類を使ってる。簡単には書いたものがなくならない。
なくなることの良さもあるんだろうけども。



ブログをはじめた直後に「生還できなかった女」とかそういうタイトルのブログを読んだ。大事なブログが消えてしまって、それを運営に訴えて、それでも復活することはなくて、恨みつらみを書きまくってるヤバいブログだった。
そういうふうにだけはならないようにしようと思ったのだった。

「生還した女」だった
http://fuckofjimen.seesaa.net/s/



ツイッターが突然なくなったらと想像すると、うっとりする。頭が空っぽになるだろうな。一人にもどって、あちこちのホームページや小さいSNSでもう一度みんなと出会い直していくのも悪くない。
ファイナルファンタジー6の世界崩壊みたいなイメージ。


とツイートしたら、60いいねついた。短歌の外の人にツイートが届くのは気持ちがよい。



"FINAL FANTASY Ⅵ 仲間を求めて 公式歌Ver"
https://youtu.be/Tm5z5wnZu2I






https://575toot.jp/
マストドンに短歌俳句のインスタンスができてた。3人だったがオレがツイートしたら9人になった。それからなんだかんだでいまは17人。


マストドンのインスタンスは個人が管理しているので状態が不安定になったりデータがとんだりする場合もある。突然なくなることも当然ある。


短歌俳句のインスタンス、けっこう前からあったようで、気づかなったのは不覚だった。ずっと探してたんだけどな。
「インスタンス一覧」みたいなのに載るのはある程度人の集まってるところだけだから、それで気づかなかったんだろう。

よく見たら、短歌や俳句について語り合う場所ではなく、575や57577の形式で書き込む場所だった。うむ。



利用者が少ないと書き込みに気をつかう。350人くらいのところでも気をつかいながらじゃないと書けないなあ。






▼猫に時間の流れる


保坂和志『猫に時間の流れる』の表題作を読んだ。
クロシロっていうちょっと困った猫が主役で、おもしろかった。
猫のほんとうのところって、人にはわかんないよなあ。タイル屋のおばさんの不確かな情報、西井と美里さんの考え方の違い。真実なんて、わからない。

オレもけっこう長く猫を飼ってるけど、こんなに猫のことは知らない。この差はなんだろう。オレは自分で思うほど猫に興味がないんだろうか?

最近読んだ、仁尾智さんの『これから猫を飼う人に伝えたい10のこと』も自分の猫へのテキトウさを感じさせられたし。
猫に関して、引け目を感じることが増えてきた。



後半「キャット・ナップ」は読み終えたときには猫をつかまえてなんやかんやで保護する話なんだけど、読み返してみるとガイラさんのキャラが強い。こういう人には会ったことがある。


会社にいるけど仕事はしてもしなくてもよくて、報酬のなさそうな肉体労働をやっている。
女性と仲良くなるけど色恋の気配がない。
勝手に家に上がり込まれたりされたりするけど、トラブルにはならない。

あっさりしてるけどほんのりあたたかくて、保坂さんの世界だなと思う。





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2017年03月09日

「三田文學 2017冬季号」を読んだ  ●特集―保坂和志

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「三田文學」2017冬季号を買って読んだ。
292ページ980円。
保坂和志さんの特集だったので買った。

短歌以外の文学の雑誌をはじめて買った。
小説もあるし、エッセーもあるし、短歌も俳句も詩のページもある。宗教についても書いてあるし、幅広い。

そういえば、少し前に「現代短歌」の時評でこの雑誌のことが書いてあった。短詩の特集を組んだということで評価されていた。



保坂和志さんの「ある講演原稿」が載っている。原稿なのに講演としてまとまりきらずにプリントの内容にふれられないのとか、おもしろかったな。一週間だけいた見知らぬ女性の話とか。



知らない人が書いた短い小説が載っていたから読んだ。雑誌のなかで小説を読むっていうのがオレにとっては新鮮だった。知らない日本の現代の作家の小説っていうのも新鮮だった。小説って、よく選んで知ってる著者のものばかり読んできた。


桜井晴也さんの「僕たちが語られる時間」を読んだ。一段落に句点がひとつしかなくて、一文がとても長い。段落ごとに視点がかわったりもする。
極端に打たれよわい女性と、それに寄り添う男性がでてくる。地震の話のあたりでひとつ変化する。とまどったが、最後まで読めた。

つまんないと読むのやめちゃうので、最後まで読めたら、それはオーケーなんだと思う。おもしろいとまでは言わないけど。



岡英里奈さんの「瞬間、屈折率100%」を読んだ。
これはおもしろかったな。エロくて。だんだん液体まみれになって現実ばなれしていく。「飯田ちゃん」の情熱がすごかった。

『寝てる間に、無意識にポケットに手を入れるようにパンツに手を入れてしまう癖があって、生理の時には結構悲惨。爪の奥の方で固まってしまった血は石鹸で洗ったところで届かない』
というところに印をつけていた。
おもしろかったところには印つけながら読むんですよ。



保坂和志さんの『TELL TALE SINGS』という連載がある。以下、印つけたところ。

『カフカもベケットもいつか自分の言葉で世界が凍りつくなどの野心はなく、自分は小声で書く、書くとは小声で書くことだ、その小声を聞き取る人がもしいたらその人にだけは届くこともあるかもしれないとだけ考えていた』


そのあとに対談がある。対談で保坂さんが言っている。
『人工知能の時代になったときに、最後に残された人間にできることは祈ることだと思う。祈りほど、合理的でないものはない。』
『聞いてくれないのを承知で祈る。そこが人間の本領だと思う。』



織田作之助青春賞、という賞の発表があった。223作のなかから受賞した小説が載っている。223分の1とは、狭き門だ。
中野美月さんの『海をわたる』という作品。最後まで読めた。外国が舞台で、そこで失恋していて、両親の関係も複雑で、体調も悪くなるし、なんだか心細かった。

小説の感想って何言えばいいのかわかんないけど、読み終えてしばらくたった今になっても頭に残ってたことなどを書きました。
以上です。







2017年2月の工藤吉生の短歌すべて見せます|mk7911|note(ノート)
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