感想

2018年09月29日

《歌集読む 185》 穂村弘『水中翼船炎上中』  ~席替えが理解できずに、ほか

IMG_20180917_215232




穂村弘さんの歌集『水中翼船炎上中』を読んだ。講談社。2018年5月。
https://t.co/jNT7epgPKM

なかなか読めなかった。あの穂村さんだし、なんと17年ぶりだというしっていうので、かまえてしまって。
でも、あんまり考えないことにした。読みたいように読んで、自分がおもしろいと思った歌をひいて、なんか書きたくなったらそれを書くという、それでいくことにした。



オルゴールが曲の途中で終わってもかまわないのだむしろ普通/穂村弘『水中翼船炎上中』
→四句は字数合わせみたいな「のだ」で七音にしてあって、でも結句は字足らず。この字足らずが、途中で終わった感なんだね。
たしかに、曲が途中で終わるのが普通だなんて、ヘンだねえ。「なんで途中で終わるんだよ」ってきかれて答えてるみたい。



なんだろうときどきこれがやってくる互いの干支をたずねる時間/穂村弘『水中翼船炎上中』
→なんだろうねえ。たしかにあるねえ。特にそれで何がどうなるってこともないよね。干支の動物が性格をあらわす、とかもそんなにないし。そんなこんなを「これ」の二文字にまとめている。



なんとなく次が最後の一枚のティッシュが箱の口から出てる

もうそろそろ目覚まし時計が鳴りそうな空気のなかで飲んでいる水
/穂村弘『水中翼船炎上中』

→離れたところにある歌だけど、共通したところがあるから二つまとめてみた。
予感の歌。わかんないけどそんな気がするっていう歌。
目覚まし時計が空気のなかにまるで含まれていて、水にも影響してるみたい。水がふるえだすところをイメージした。



席替えが理解できずに泣きながらおんなじ席に座っています/穂村弘『水中翼船炎上中』
→他のみんなは席替えを分かってるだろうね。みんなして机を一斉に動かしてガタガタしている。いまのこの子の席に移ろうとしてるほかの子もいて、待ってるんでしょう。先生が移りましょうと言ってくる。ここにいちゃいけない、あっちですよ。つらいだろうなあ。なんかわかる。悲しくなってくる。

ほかの席に移るのが楽しみって子もいれば、おんなじところにいたい子もいるでしょう。席替えについては説明してたはずだし、誰がどこへ移るか決めるための手続きも経ているはずなんだけど。ぼんやりしてたのかなあ。

こういう、変化についていけない子っていたし、オレもそうだった気がする。

泣いてても、このあと絶対動かされるじゃん。こういうことを経て、ものを学んでいくんだな。
そういえば、机を動かす席替えと、机の中身だけ移す席替えがあったなあ。



贋者の鉄人28号を千切れ鉄人28号/穂村弘『水中翼船炎上中』
→「歌壇」の10月号で、佐佐木定綱さんが穂村さんにインタビューしてたんだけど、どれだけ短く(文字数を少なく)作れるかやってみた歌だと、たしか語っていた。

「千切れ」てるみたいに短い。倒せでもやっつけろでもない。「千切れ」ってなかなか言わない命令だ。
なにもわざわざ千切らなくても勝てるでしょうに。ちぎるってつまり、上半身と下半身とか、あるいは首と胴体とかを力まかせに二つにしちゃうんでしょう。「千切れ」には幼さと残酷さが同時にある。



部屋中に煌めきながら散っているぬいぐるみたちの冬の通信簿/穂村弘『水中翼船炎上中』
→「千切る」のつぎは「散っている」歌。ほかに「ちらばる」歌も多いんですよ。と思って数えたら、ちらばる歌は7首。数えたら、多いか微妙な数になった。
ぬいぐるみに通信簿。こういう遊びは、おままごと的にありそう。

勉強もなにもしてないのに通信簿はある。通信簿があるということは、成績のいいぬいぐるみも悪いぬいぐるみもあるわけで。何もしてない/できないのに上下をつけられる彼らが悲しくなる。

でも部屋中にあるってことは、たくさん書いたんだね。がんばって書いた。書いている時には頭の中に、それぞれのぬいぐるみの普段の行いや学校生活があるのだろう。
ぬいぐるみが多いほど一人遊びも多いみたいで、なんかこういうのもなつかしくて悲しくなるなあ。

ちがうことを二つ書いたけど、「ぬいぐるみは何もできない」っていうのは大人の見方だったな。一人遊びの子からすれば、居てくれるだけでも大事なともだちだし遊び相手だから。



大晦日の炬燵布団へばばばっと切り損ねたるトランプの札/穂村弘『水中翼船炎上中』
→また散らばってる系の歌だ。いろんなものがよく散ってる。効果がある。
オレもこういうことしたなあ。テレビゲームがない頃はカードゲームやボードゲームをよくやった。暖かいと外に行って遊べと言われる。



登校日まちがえてきた無人教室には雲の声ひびくのみ/穂村弘『水中翼船炎上中』
→無人の教室だから「無人教室」なんだけど、いい言葉だなあ。「雲の声ひびくのみ」すごい。



さみしくてたまらぬ春の路上にはやきとりのたれこぼれていたり/穂村弘『水中翼船炎上中』





おトイレのドアを叩いたことがないわたしは冷酷なひとりっこ

どうしても芯の出し方がわからないペンを戻して売り場を去りぬ
/穂村弘『水中翼船炎上中』

→ちょっときいてみる、たずねてみるということが出来ない。オレもそうなので、そうだそうだと読んだ。
「冷酷」といわれると、そうだそうだと上げていた手が自然に下がる。「去りぬ」にわびしいものを感じた。遠のいてゆく背中がある。



冷えピタを近づけてゆく寝息から考えられるおでこの位置に/穂村弘『水中翼船炎上中』
→寝ているひとにそっと毛布をかけてあげる……なんて場面があるけど、ここでは寝ている人に冷えピタを貼ろうとしている。やさしいけど、思わぬ場所に冷えピタが貼られてしまいそうでハラハラする。起こしちゃうよ!



「この猫は毒があるから気をつけて」と猫は喋った自分のことを/穂村弘『水中翼船炎上中』
→猫に毒はないんで、これはほんとの猫のことじゃないんだなと読むわけですね。

SNSで猫のアイコンの性格悪い人が「毒吐き注意」みたいなことをプロフィールに書く。いろんな歪みが含まれていそうだなあ。
人なのに猫なのがひとつめ。「毒」という言い方がふたつめ。自分で「気をつけて」というのがみっつめ。
歪みっていうか、責任回避がありそうね。

というわけで、この本おわり。





▼▼▼



【こっちもおすすめ】
noteのほうでは、ブログでは読めない内容の記事をたくさんアップしています。




角川「短歌」2018年9月号の荻原裕幸さんの歌壇時評の感想すこし
https://t.co/CzRqDYixti

「短歌研究」2018年9月号・短歌研究新人賞のことを思うぞんぶんに書く【1】
https://t.co/9LDZrsWmr0

「短歌研究」2018年9月号・短歌研究新人賞のことを思うぞんぶんに書く【2】
https://t.co/lcoeLM1kt6

「短歌研究」2018年9月号・短歌研究新人賞のことを思うぞんぶんに書く【3】
https://t.co/f993MV2JHS



などなど、
500円ですべての記事(約100記事)が読めます。よろしければどうぞ。







このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote
mk7911 at 21:13|PermalinkComments(0)

2018年09月17日

「世にも奇妙な物語」全部見て順位をつけるぞ【5】1992年4-12月

48c817cc.jpg


「世にも奇妙な物語」全部見て順位をつけるぞ
【1】1990年4-9月
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52214819.html

【2】1990年10月-1991年3月
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52217094.html

【3】1991年4-9月
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52219169.html

【4】1991年10-12月
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52220996.html



のつづき。

http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Studio/8295/title.htm
このデータベースを参考にして、上から(古いのから)順番にYouTubeなどで見ていく。
(動画のリンクを貼っておくけど、消えている場合があります)

記事の最後に、今回のベスト10を決めるから、最後まで見ていってくださいね。








"世にも奇妙な物語 シャドウ・ボクサー"
https://t.co/ROjCVMquK6

「シャドウ・ボクサー」見た。
──主人公のボクサー(柳葉敏郎)は、試合に負けてから再起をはかり練習にはげむが、スピードが出ない。はやく、はやく、はやくと心に唱えながら練習を繰り返しているうちに、周囲がゆっくり動いているように感じはじめた。試合には勝つが、彼はどんどん加速していく。──

うん。こういうのが「世にも奇妙な物語」なんだよな。ひとつの変なことがほかのすべてに影響してくる。
奇妙なだけでなく、悲しさがある。恋人が見えなくなるつらさがよく描かれている。

ハッピーバースデー・ツー・マイホームは動画が見つからず。





"「笑いの天才」 菊池桃子"
https://t.co/EW2dzYjFyu
「笑いの天才」見た。
──売れないお笑いコンビ「ツインピークス」のこはる(菊池桃子)は笑いがとれずに悩んでいる。神でも悪魔でもいいからお願い、わたしに笑いを取らせて! と叫ぶと、何を言っても大爆笑されるようになる。仕事の外でも、何か言うたび常に大爆笑され、生活に支障をきたしはじめる。──

これって、「シャドウ・ボクサー」と同じ流れだ。遅くて勝てない→速くなろうとする→速すぎる、というのが「シャドウ・ボクサー」。
笑いがとれない→とろうとする→笑われすぎる、というのが「笑いの天才」

その後のながれは違うけど、なんとなく「世にも奇妙な物語」の典型になっていると感じる。こわいことになる→夢だった→やっぱり夢じゃなかった、のながれ。
でも常に爆笑だから、こわくならないし、こっちもちょっとつられて笑ってしまう。





"世にも奇妙な物語 常識酒場 【今井雅之】"
https://t.co/f9pGMOQBtt
「常識酒場」見た。
──超能力をもった兄弟が酒場に入る。居合わせた客たちが超能力をバカにするのを見かねて、能力をつぎつぎにつかって酒場をめちゃめちゃにしてしまう。──

不自然なところが気になる。客の注文を無関係な客がバカにしたりするだろうか。超能力のテレビ番組がでてくるところも唐突だった。その場面の以前も以後もテレビは無いし。

奇遇、震える愛、気づかれない男、けむり男、デンデラ野、血も涙もない
は動画がみつからない。





"世にも 瞬"
https://t.co/RNe1DUe8PK

「瞬」見た。
──主人公は、ふつうに生活しているつもりなのだが時間に間に合わない。気がつくと時間がとんでいる。そんなことがエスカレートしていき、毎日行っているつもりの会社に無断欠勤してしまう。──

ひとりだけ速くなってしまう「シャドウ・ボクサー」の逆バージョンだ。時間がとぶのは「通勤電車」にも似ているが、いつ飛ぶのかがわからない恐怖がある。

あんまり見たことないタイプの回転寿司だ。皿が回っているけど目の前に握っている人がいる。
イカをとろうとしたらサバをとってしまいキレるくだりはおもしろい。

「いたれりつくせり」「精神力」動画みつからず。





"世にも すてきな休日"
https://t.co/8sckW0zQIQ

「すてきな休日」みた。
──主人公(高木美保)はいたずら電話に悩まされている。部屋のなかを見ているような内容の電話が留守電に入っている。警察を呼ぶがたよりにならない。ずけずけ入ってくる隣人、注文してないのに届くピザ、なれなれしい水道屋、水をかけてきた男。災難がつづく。──

動画に低評価が多いのが意外。気持ち悪い話だけど、それを見せているんでしょう。
女性であるというだけで受ける被害だし、ハラスメントに満ちている。

ボイスチェンジャーが今と同じだ。ツイキャスのマイキーさんという人がボイチェンして放送してるけど同じ声だ。4分の1世紀経っているのに。





"世にも 顔"
https://t.co/waBi7qSzMm

「顔」見た。
──主人公(きたろう)は、まわりの人々の顔がだんだん区別できなくなってくる。見るたびに顔がかわってゆくように思えてならない。変わったね変わったねと言って不審がられる。──

誰も死なないしひどい目にも合わない、大きな山もひねりもない。それが逆にめずらしい話だ。

顔のかわりかたが微妙でよくわからなかったが、OLがかわいくなったのだけはわかった。あれ、なってるっけ? オレまで不安になってきた……。





"【 何回見ても 面白い 】 世にも奇妙な物語 【食べ過ぎた男】 【 迷路】 怖い話 恐怖"
https://t.co/EP6Xplwhd7

「食べ過ぎた男」見た。
──主人公(草刈正雄)は食欲がとまらない。家族といても、大事な商談のときにも、狂ったように食べつづけてしまう。彼は病院に連れていかれる。医師が見たのは、胃袋で瞬く間に消えてゆく食べ物だった。──

これ、当時テレビで見てすごく怖かったのを覚えていて、今回覚悟しながら見た。雪山がでてくる話は怖いのが多い。

序盤から雪山の伏線がびっしり貼ってあることに気づいた。手のふるえかたが尋常でなくて、それもこわい。





"920514③青い鳥 /世にも奇妙な物語"
https://t.co/K8uLNr0tVs

「青い鳥」見た。
──主人公(藤田朋子)の前に不思議な男の子があらわれる。いたと思うといつのまにか消えている。主人公はそれが小さい頃に一緒に遊んだ子だと思い出す。──

地味だし大きな展開はないんだけど、しみじみしたところがある。ざしきわらし的な話。「青い鳥」があんまり関係ないような。





"世にも奇妙な物語 もれパス係長"
https://t.co/M8Sj4I4796

「もれパス係長」見た。
──主人公(小野寺昭)は心のなかが周りに漏れてしまう。テレパシーならぬ「もれパシー」がある。そんな彼が大事な会議で発表することになった。──

コメディーですね。ドタバタした話。どんどん漏れて、それをつくろっていこうとして、どうにもならなくなっていく。
見かけによらず毒舌なことを考えているものだ。

「タガタガの島」「声が聞こえる」動画みつからず





"世にも奇妙な物語 ハイ・ヌーン 玉置浩二"
https://t.co/U5U5fkeIki

「ハイ・ヌーン」見た。
──主人公(玉置浩二)は店のメニューをはじから順番に注文してゆく。近所の人が見物にきて店はにぎわい、応援ムードがたかまってゆく。──

これはよく覚えている。筋は覚えているので、細部を見た。
うだるような夏、クーラーが故障している店、高校野球、商店街。丸眼鏡、背広、少ない口数。ひとつの世界が完成している。
母と子、青年、おじさん、店の主人に奥さん、それぞれキャラがある。

電機じかけの幽霊、人形、お前が悪い、リフレクション、は動画みつからず





"世にも奇妙な物語 38′25″"
https://t.co/LNp2hRyRNO

「38分25秒」見た。
──主人公(勝俣州和)の買った携帯電話は38分未来につながる。普通につながる家の電話を組み合わせて、競馬で金もうけをたくらむ。──

これ、うちにはじめてビデオデッキがきたときに録画した回だ。なつかしい。何回も見たはずなんだが、今見たら新鮮だった。

携帯電話が鍵になる話。BGMはアレンジがきいている。カメラワークというか見せ方がうまい。うまく作ってあるなあ。
「いいかげん」動画みつからず





"箱の中 世にも奇妙な物語"
https://t.co/W8mQeswwet

「箱の中」見た
──深夜、エレベーターに男女ふたりが閉じ込められてしまう。男が変な気を起こしかけたころに女が豹変する。女は男をシマダという人物と決めつけて責めてくる。凶器をつきつけたり、かと思うと歌いだしたりする。──

これも録画したから何度も見たはずで、エレベーターの話なのは知っていた。でも緊迫感がすごい。女のかわりようがおそろしい。





"920625③不幸の伝説 /世にも奇妙な物語"
https://t.co/6a5YsItTuo

「不幸の伝説」見た。
──酒を飲みながら話している二人のサラリーマン。そのひとりが言うには、12時間以内に10人に話さないと不幸になる「不幸の伝説」という話があるそうだ。これを話さなかったために不幸になった田中くんという男がいて、──

これもよく覚えてる。一時流行った「不幸の手紙」を口頭で伝える形にしたわけだが、そうなると伝えるのが難しくなっていておもしろい。
不幸の伝説のなかに不幸の伝説がでてくるという、剥いても剥いても中身がない仕組みになっている。
この回は三話ともおもしろいな。






"920702③言葉のない部屋 /世にも奇妙な物語"
https://t.co/wwKq7VidRp

「言葉のない部屋」見た。
──1970年を舞台にした話。青森から東京に出てきて工場で働いてる主人公(木村拓哉)は、なにをしてもパッとしない内気な青年。職場の理解あるおじさんが辞めていき、孤独が深まる。そんなある日、青年は録音機を手に入れる。──

キムタクの東北弁がうまい。1970年を再現することに力が入っている。終盤までなかなか奇妙なことが起こらないが、青年のやりきれない日々がずっしりと重い。

あと、タイトルいいね。この内容にこのタイトルをつけるのはたいしたもんだ。

景気のいい時代にもこういう人はいる。っていうか、景気のいい時代に設定してあるからこそ、この暗さが活きているんだろう。

「水を飲む男」「ラッキー小泉」は動画みつからず。たぶんこの週は見てない。





"920709①似顔絵の女 /世にも奇妙な物語"
https://t.co/IlhlTmPPVN

「似顔絵の女」見た。
──女性と別れて意気消沈している主人公(錦織一清)のまえに、謎の似顔絵描きがあらわれる。またたく間に顔を描いてよこすが、知らない女の顔だ。それからすぐに、会社にその顔の女が配属されてくる。──

よくわからない終わり方だったけど、女が空からふってきたということなのか。だとすると雑だなあ。なんとなく、絵描きに金を払わなかったことが関係しているような気がする。
最初の似顔絵にでてきた橘っていう女の子がかわいかったな。





"世にも奇妙な物語 DOOR"
https://t.co/CRpoayTUIi

「DOOR」見た。
──交際している女性が暴力団の組長の娘で、男は組の者に捕まって二つのドアのある部屋に監禁される。赤いドアと青いドア。どちらかに爆薬が仕掛けられている。「赤いドアを」のメモが落ちている。男は二つのドアの前に苦悩する。──

印象のある話で、ドキドキしたのを覚えている。
今はそれより、序盤の無理矢理な展開が気になる。すぐ気絶するスプレーとか。
でも男の決断はこれでいいと思う。バッドエンドにも見えるが、きもちのいい最後だと思う。

「顔色」「完全犯罪」は動画みつからず。





"920806①待ちぶせ /世にも奇妙な物語"
https://t.co/oakT06c5Ol

「待ちぶせ」見た。
──主人公(小堺一機)は小学校のころに年上の三人組にいじめられた記憶がある。会社のなかで、通勤の道で、あらゆる場所で三人組に待ち伏せされているような恐怖を感じ、生活に支障をきたすまでになる。主人公は彼らが現在どうしているか突き止めようとする。──

小堺さんがいじめられっ子っぽく見えてくる。キャスティングの妙だろう。平泉成さんの医者の役も合っている。
かなり半端に終わったように見えたが、その後味も含めて作品なのだろう。思い出してはいけないものを思い出して、彼はどうなるのだろう。

これはこれでひとつの終わりだよな。いじめられっ子であることが終わった。そのとたんに、それまで写真みたいに静止していた三人組が動きだすのは、あらたな恐怖のはじまりだ。つぎは別の立場として過去に苦しめられるのではないか。





"920806②見たら最期 /世にも奇妙な物語"
https://t.co/KehJEE2G5M

「見たら最期」見た。
──主人公(筧利夫)ら数人の心霊番組関係者は、いわくつきの人形を取材する。VTRを確認すると、人形について説明するおばさんの背後に白いものがうつりこんでいた。それを見た者がつぎつぎに死んでゆく。──

ばたばたと人が死ぬ話。人形があちこちにでてくるのが気味悪い。メタっぽいオチだ。

この番組、交通事故死が多い。数えてないけど死因のトップは交通事故じゃないか?





"920813③ネチラタ事件 /世にも奇妙な物語"
https://t.co/vYCfE7Neju

「ネチラタ事件」見た。
──研究者である主人公(細川俊之)は日本語の乱れを気にしている。ある朝、目覚めると日本中で乱暴な言葉が飛び交っている。研究室で培養した菌のせいで、この世界は丁寧な言葉と乱暴な言葉が入れ替わったのだ。──

物語の筋はよわいが、江戸っ子みたいな言葉がいたるところで交わされるのがおもしろい。しらべたら星新一が原作で、落語も元ネタになっているらしい。

「なんなのォ!?」「右手の復讐」「城」は動画みつからず。





"920917③スローモーション /世にも奇妙な物語"
https://t.co/srtcBSfgjw

「スローモーション」見た。
──主人公(明石家さんま)は単調な毎日を苦にしてマンションから飛び降り自殺をする。するとスローモーションになり、階下の人々の生活が見える。今まで幸せそうに見えていた人々は、それぞれ問題を抱えながら暮らしていたとわかる。主人公は飛び降りを後悔する。──

飛び降りの動機がどうにも弱い。普通に働いてるようにしか見えない。鳥をカゴから逃がすところからすると、自分の不自由さが嫌になったのだろうか。
この回はなぜか「いいとも」のレギュラーが大勢でてくる。この話も清水ミチコやなんかが出てたことになってるけど、わからなかった。

トラブルカフェ、人間国宝、贈り物、髪、奇跡を呼ぶ男、つぐない、逆転、おやじ
以上は動画みつからず。
「人間国宝」「つぐない」「逆転」はおぼえてる。





"92冬④私の赤ちゃん /世にも奇妙な物語"
https://t.co/Vcok2o4x4c

「私の赤ちゃん」見た。
──主人公(萬田久子)が産んだはずの赤ちゃんが、どこにもいない。ショックで苦しい日々をすごす。赤ちゃんがいるものとして過ごす主人公。オルゴールを開ける存在、哺乳瓶を吸う存在があり、そこに赤ちゃんを感じている。──

よかったなとは思ったけど、音楽で感動させようとしているのが見えて、ちょっと感動うすれる。こういうときに男はなにもしないというか、出来ることもないのだなあ。

被害者の顔、サムライが斬る!、蟹缶、妄想特急、穴、は動画みつからず。
「穴」はおもしろかった記憶がある。
「ロンドンは作られていない」は以前見た。

あと一話で第三シリーズがおわり、1993年からはいよいよ特番だけになる。ここからは進むのが早くなるだろう。





"サブリミナル 世にも奇妙な物語"
https://t.co/PSF6FPFe47
「サブリミナル」見た。

──1997年の未来には日本の人口が3億人を超えて問題になっていた。高齢化にもかかわらず、政府は年金を倍にする政策を打ち出している。二人の記者(東幹久と森本レオ)は、老人の自殺の急増について調べている。頻繁にながれるガムのCMに秘密が隠されていた。──

録画して何度も見たからよく覚えている。二人の記者のキャラクターがいい。政府のやりかたが恐ろしい。よく鼻がきくやつらだ。
1997年がこのころは未来だったわけだ。実際には人口が増えずに高齢化していて、これはこれで苦しいことだ。
第3シリーズおわり。


■■


今回特におもしろかったものベスト10
1 食べ過ぎた男
2 言葉のない部屋
3 サブリミナル
4 すてきな休日
5 待ちぶせ
6 箱の中
7 DOOR
8 38分25秒
9 ハイ・ヌーン
10 見たら最期

ワースト2
1 似顔絵の女
2 常識酒場


以上です。んじゃまた。







▼▼▼



【こっちもおすすめ】
noteのほうでは、ブログでは読めない内容の記事をたくさんアップしています。




角川「短歌」2018年9月号の荻原裕幸さんの歌壇時評の感想すこし
https://t.co/CzRqDYixti

「短歌研究」2018年9月号・短歌研究新人賞のことを思うぞんぶんに書く【1】
https://t.co/9LDZrsWmr0

「短歌研究」2018年9月号・短歌研究新人賞のことを思うぞんぶんに書く【2】
https://t.co/lcoeLM1kt6

「短歌研究」2018年9月号・短歌研究新人賞のことを思うぞんぶんに書く【3】
https://t.co/f993MV2JHS



などなど、
500円ですべての記事(約100記事)が読めます。よろしければどうぞ。







このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote
mk7911 at 17:45|PermalinkComments(0)

2018年08月28日

《歌集読む 182》 嵯峨直樹『みずからの火』  ~シーツの上でまたたいている、ほか

CAM00911-1






嵯峨直樹さんの『みずからの火』を読んだ。2018年5月、第三歌集。角川書店。

嵯峨さんは「未来」会員。2004年に短歌研究新人賞受賞。
話したことはないけど、歌集の批評会で一度お会いしたことがある。

帯が二枚ついている。帯の短歌が一行の縦書きになっているのはひとつの特徴と言っていいでしょう。歌集の帯の短歌って、何行かにまたがったり横書きになったりするものだ。だけどここでは縦の一行書きになっている。

カバーをはずしても真っ赤だ。約200ページで、1ページ1首。







水映すテレビの光あおあおとシーツの上でまたたいている/嵯峨直樹『みずからの火』
→夜の、灯りのついていない部屋のテレビを想像した。テレビにひかる水面がうつっていて、部屋のシーツを照らし出している。
見ている人が誰もいないような、うつろな印象を受けた。そもそもなんの番組なのかもわからない。真夜中にNHKが風景を映しながらクラシック流してたりするけど。

人の気配がうすくて、しずかで、暗くて、なのに官能的。というのがこの歌集の全体的な印象だったんだけど、これはそういう歌。



薄い影街に落としてこの夕べ鳥が水紋のように散らばる/嵯峨直樹『みずからの火』
→影もあるし動いてもいるんだけど、鳥に生命の感じがない。「水紋のように」の効果なのだろう。それっきりのしずかな水面を予感する。



もの事の過ぎ去るちから レシートが繁茂しっぱなし夜のキッチン/嵯峨直樹『みずからの火』



くらぐらと水落ちてゆく 側溝に赦されてあるような黒い水/嵯峨直樹『みずからの火』



しっとりと感情帯びて内がわへ腐りはじめる黄薔薇も家具も/嵯峨直樹『みずからの火』

→家具が腐るというのが印象的だ。「内がわへ」腐るとはなんだろう。野菜を切ったら中が腐れてたということがあるが、そんなふうなのか。いやもっと深い意味のありそうな「内がわ」だなあ。「感情帯びて」ってことは、感情によって腐るのか。

革命歌作詞家に凭りかかられてすこしづつ液化してゆくピアノ/塚本邦雄

を思い出す。これは「感情」がどんなものなのかはっきりしている。

いや、「黄薔薇も家具も」だから

海底に夜ごとしづかに溶けゐつつあらむ。航空母艦も火夫も/塚本邦雄

こっちか。
塚本邦雄を二首ひっぱりだしてみたけど、嵯峨さんの歌は腐らせる原因のものがはっきりしていない。「しっとりと感情帯びて」と、ごく抽象的に描かれている。
あとはやっぱり「内がわ」だよな。凭りかかられるのは、外側の力だから。



濃霧ひとりオリジン弁当に入りきてなすの辛みそ炒め弁当と言う/嵯峨直樹『みずからの火』
→という歌は、以前「未来」で読んだときにツイートしたことがある。この歌集の帯の五首にも選ばれていた。
二句以下の俗っぽさをおもしろがった記憶があるが、そこは逆で「濃霧ひとり」がいいのだろう。濃霧がみんなのみこんでしまう。



多摩川にこまやかな雪降りしきる景色は誰の永遠(とわ)の予感か/嵯峨直樹『みずからの火』



琥珀色の水滴の膜ふるわせて夜の市バスの窓のきらめき/嵯峨直樹『みずからの火』


歌集タイトルとはうらはらに、水を思わせる歌が多い。
そういうのも有りといえば有りか。これで水っぽいタイトルだったらどうだろう。



暗闇の結び目として球体の林檎数個がほどけずにある/嵯峨直樹『みずからの火』



冥界の側に開いてしまう百合飾られている真昼の小部屋/嵯峨直樹『みずからの火』

→冥界というのは暗くて果てしないもので「真昼の小部屋」はそれと対照的な場所なのだろう。
「側」といえばさっきは「内がわへ腐りはじめる黄薔薇」だった。いいですね、「側(がわ)」。



美しい橋はかの夏永遠に壊されている飛沫あげつつ/嵯峨直樹『みずからの火』



いいと思ったのはそういう歌でした。「体系」っていう言葉がよく出てくるんだけど、それはわからないんだよなあ。

この本おわり。
んじゃまた。




▼▼▼



【こっちもおすすめ】
noteのほうでは、ブログでは読めない内容の記事をたくさんアップしています。




角川「短歌」2018年9月号の荻原裕幸さんの歌壇時評の感想すこし
https://t.co/CzRqDYixti

2018年7月のオレの短歌とその余談
https://note.mu/mk7911/n/nb3e7945830c7

もっと賞の話がしたい!/オレの企み
https://note.mu/mk7911/n/nc2b1b8188836

「短歌研究」2018年9月号・短歌研究新人賞のことを思うぞんぶんに書く【1】
https://t.co/9LDZrsWmr0





などなど、
500円ですべての記事(約100記事)が読めます。よろしければどうぞ。







このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote
mk7911 at 09:33|PermalinkComments(0)

2018年08月14日

《歌集読む 181》 石原純『靉日』

740bd85e.jpg




筑摩書房の現代日本文學大系94「現代歌集」をひとつずつ順番に読むシリーズ六回目。石原純『靉日』。



明治44年から大正10年までの作品とのこと。抄録。
歌が二行書きだったり三行書きだったりして、句読点がついている。それについて歌集の前書きに、つぎのように書いてある。

「短歌を短冊に書くものと思つてゐた時代には、すべての文章に句読点もつけず、濁音点さへうたなかつたこともあつたのです。今日になつてまでそれを固守して、一度読んでも続きぐあひが判らず二三度読みかへさなくてはならないやうにしておくのは、寧ろ迂であると私は思ひます」



歌を見る。



町はづれ家並(やなみ)ととのはず。
路のおもの凹(ひく)き窪みに
ぬかるみひかる。
/石原純『靉日』



城あとの山にひと懐(おも)ふつつましさ。
いま我がもちて町に降(お)りきし。
/石原純『靉日』



講壇に立ちて
もの虞(おそ)るるこころ湧けり。
おもてをあげてひとら聴きゐる。
/石原純『靉日』



毎日(まいにち)の雨量(うりやう)をしるす曲線の
漸(やや)にさがりて、
夏終(は)てにけり。
/石原純『靉日』

→これはいいなと思った。自然や人々の様子を見て季節の移り変わりを感じることはあるだろうけど、さがっていく曲線からこの結句がでてきたところが。



美(いつ)くしき
数式(すうしき)があまたならびたり。
その尊さになみだ滲みぬ。
/石原純『靉日』

→「美くしき」と言い「尊さ」と言い「なみだ滲みぬ」まで言う。歌としてはくどいところがあるけど、入れ込みようがあらわれている。

そういう歌をおもしろく読んでいると、自然の歌、旅行の歌になる。



牛乳をあたゝめて飲む
火鉢べに、
山の気しづかにながれいるかも。
/石原純『靉日』



汽車のなかの一区劃(しきり)なるわが室(へや)に、
徒(ただ)すわり居つつ、
ひろき野をゆく。
/石原純『靉日』




年譜によると、この歌集を出した大正11年にはまだアララギにいて、この2年後にアララギを去っている。それからはいくつもの雑誌を創刊し「新短歌」の活動をしている。

東北大学にいたんですね。原阿佐緒との関連で名前を聞く人だけど、今回はじめてまとまった量の歌を読んだ。この歌集おわり。



▼▼▼



【こっちもおすすめ】
noteのほうでは、ブログでは読めない内容の記事をたくさんアップしています。




2018年6月のオレの短歌とその余談
https://t.co/sCG5JNotFG

2018年7月のオレの短歌とその余談
https://note.mu/mk7911/n/nb3e7945830c7

もっと賞の話がしたい!/オレの企み
https://note.mu/mk7911/n/nc2b1b8188836

「新人賞 連絡」
https://t.co/ZTB10Ogssw

第57回短歌研究新人賞候補作「仙台に雪が降る」全30首
https://note.mu/mk7911/n/n58e5f4337568




などなど、
500円ですべての記事(約100記事)が読めます。よろしければどうぞ。







このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote
mk7911 at 20:43|PermalinkComments(0)

2018年08月11日

《歌集読む 180》 松井多絵子『厚着の王さま』  ~冬海の皺をうたいし女あり、ほか

IMG_20180806_225532





前回の松井多絵子さんの第一歌集『えくぼ』につづいて、今回は第二歌集『厚着の王さま』。2011年。短歌研究社。

「裸の王さま」の「裸」をひっくり返して「厚着」って言ってるんでしょう。このような「ひっくり返す」やり方のことは第一歌集『えくぼ』の感想のときに書いたけど、180度の回転じゃなくてもっと微妙なずらし方にオレは魅力を感じることが多いですね。



冬海の皺をうたいし女あり皺のなきまま夭折したり

海みれば祖国をおもう男あり我には異国をおもわせる海
/松井多絵子『厚着の王さま』

→という歌が39ページにならんでいました。中城ふみ子と寺山修司なのはあきらかですが、一度確認しておきましょう。

冬の皺よせゐる海よ今少し生きて己れの無惨を見むか/中城ふみ子
マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや/寺山修司


松井さんの一首目は「皺」を繰り返して海の皺を顔の皺にしています。二首目は「祖国」に「異国」で返していて、つまりこれがさっき書いた180度の回転です。
この作者なりのリスペクトがあっての歌なのでしょうが、あまりそれを感じさせない歌になっています。



終戦の年に生まれたいもうとはいま癌細胞と戦っている/松井多絵子『厚着の王さま』
→さっきの「皺」「国」と同様に、ここでは「戦」を繰り返しています。さっきの二首は「もしかしておちょくってる?? いやまさか」ととまどいながら読みましたが、癌という深刻な状況にあっても物の見方が変わりません。……ってことは、おちょくってないんです。

ん? 言い方おかしいですか。
つまり「皺」「国」「戦」のくりかえしみたいなのは「うまいこと言ってる」んですよ。うまいこと言ってる場合なのかと。で、どうやら、状況にかかわらずいつでもうまいこと言う人なんだろうなと。
この「うまいこと」っていうのは、歌の良さと常につながっているわけではなくて、邪魔になる場合もあります。



買ったけど使わなかったその杖をわれに渡して消えたいもうと/松井多絵子『厚着の王さま』
→物を通して哀しみがあらわれています。
さっきの「戦」のリフレインみたいなのが無いほうがずっといい。本当っぽい。



テレビには試合の前の選手たち皆が自分を信じているらし/松井多絵子『厚着の王さま』
→たしかにそういうふうに気持ちや集中力を高めている様子はありますね。よく観察しているし、下の句の言い回しから面白さがにじんでいます。



気がついたときは重症なんですとテレビの医師はわれを見て言う/松井多絵子『厚着の王さま』



いたような、いなかったようなひと卑弥呼、マンガの卑弥呼の眸は大きい/松井多絵子『厚着の王さま』

→直接本人をうつした絵も写真も残っていないのに、ある程度の外見がさだまっている歴史上の人物・架空の人物っていますね。漫画やなんかでイメージが固まっていくのかもしれません。
漫画の重要キャラだから目が小さく描かれることはない、ということもあるんでしょう。



以上です。この本おわり。




▼▼▼



【こっちもおすすめ】
noteのほうでは、ブログでは読めない内容の記事をたくさんアップしています。




2018年6月のオレの短歌とその余談
https://t.co/sCG5JNotFG

もっと賞の話がしたい!/オレの企み
https://note.mu/mk7911/n/nc2b1b8188836

「新人賞 連絡」
https://t.co/ZTB10Ogssw

もうひとりの中城  ~世にも奇妙な歌壇批判
https://note.mu/mk7911/n/n7bb586d45075

第57回短歌研究新人賞候補作「仙台に雪が降る」全30首
https://note.mu/mk7911/n/n58e5f4337568




などなど、
500円ですべての記事(約100記事)が読めます。よろしければどうぞ。







このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote
mk7911 at 07:00|PermalinkComments(0)

2018年08月10日

《歌集読む 179》 松井多絵子『えくぼ』  ~孤独とは砂漠のこと、ほか

IMG_20180803_012526





松井多絵子さんの歌集『えくぼ』を読んだ。「未来」の大島史洋さんの欄に所属している方。2008年の第一歌集。短歌研究社。

えくぼの「く」が小文字になっているのが特徴。この「く」がえくぼなのかな。




どうしたらいいのだろうというような砂丘斜面のわれの足あと/松井多絵子『えくぼ』



「孤独とは砂漠のことだと思います」サハラより日本へ葉書一枚/松井多絵子『えくぼ』

→砂漠で孤独を感じ、それがひとつの境地に達したのだろう。一枚の葉書が、人から人へと送られる。



明日の陽は西より昇ると書き出して書きさしのままの我の自由詩/松井多絵子『えくぼ』
→アニメの天才バカボンの歌詞みたいだ。センスのなさに好感をもった。今あるものを正反対にしたところで自由にはならない。自由に表現するむずかしさがあらわれている。この詩は完成しないだろう。



縄をもて自ら命を断ちし人いたであろうか縄文時代/松井多絵子『えくぼ』



子供らの蹴りあう球が中世の聖堂に当たり我に飛び来る/松井多絵子『えくぼ』

→これはおもしろいなあ。
未来ある者と、遠い過去と、自分。ひとつの球が時間のなかを動きまわっている。



閉店か、「ビューティ吉野」は幾度もわたしの髪と心を変えた/松井多絵子『えくぼ』
→閉店していてもおかしくなさそうな古めかしい名前がいい。営業してないけど、店をたたんだのかどうかは確定できない状態かな。
髪とともに心が変わったということで、そのときそのときの心も思い出されることだろう。



昼すぎのドラマの女も腰掛けて窓を流れる雨を見ている/松井多絵子『えくぼ』
→「も」ってことは、自分もそうしているのかな。ドラマとこちらが同じことをしているというのはおもしろい。こちらは演技ではないけれど。



表面を見つめていればその裏が見えると言いぬ職退きし父/松井多絵子『えくぼ』
→深い言葉だ。「見つめて」が大事なところなのだろう。結句からすると、これは「父」が仕事のなかで培ったものなのだろうか。






前半で出したものを後半で裏返すやり方の歌がだんだん増えてくる。
鍵括弧二つでできている歌が何度も出てくる。風変わりなようだが、これも要は最初に言ったことをつぎの人がひっくり返すというパターンの歌だ。

「○×の世界がイヤになってきた」「わたしの世界は△□」

「そのうちに何とかなるさ」「そのうちに冬が来てそして、いつまでも冬」


などの歌。中心がぼやけたまま「ひっくり返す」「逆手にとる」という方法ばかりが前にでている。こういうのは短所というか問題点として見ました。



中東は地球の癌だと言いしことありし男が胃癌になりぬ

勝ち組は応援しない私が優勝セールは初日の朝に

このパターンの歌がつづくといやになる。
ひどい発言をする男だとしても、胃癌をこういうふうに言われると抵抗感がある。

「世界」をくりかえし、「そのうちに」をくりかえし、「癌」をくりかえし、「勝」をくりかえしている。多用されるとよくない。飽きるし、理屈っぽい印象を受ける。



「作者の主観による機知で勝負しようとしているところがありますから、そこが読者にうまく納得されて共感を得れば成功作となり、逆に、作者の独り善がりでからまわりに終われば失敗作ということになる」
という大島史洋さんの跋文があるけど、これにつきる。
この本おわり。




▼▼▼



【こっちもおすすめ】
noteのほうでは、ブログでは読めない内容の記事をたくさんアップしています。




もっと賞の話がしたい!/オレの企み
https://note.mu/mk7911/n/nc2b1b8188836

「新人賞 連絡」
https://t.co/ZTB10Ogssw

もうひとりの中城  ~世にも奇妙な歌壇批判
https://note.mu/mk7911/n/n7bb586d45075

短歌連作とジェンガ
https://t.co/vssnyy5mrn

第57回短歌研究新人賞候補作「仙台に雪が降る」全30首
https://note.mu/mk7911/n/n58e5f4337568




などなど、
500円ですべての記事(約100記事)が読めます。よろしければどうぞ。







このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote
mk7911 at 08:48|PermalinkComments(0)

2018年08月01日

《歌集読む 177》 望月裕二郎『あそこ』  ~いちどわたしにあつまってくれ。ほか

IMG_20180728_213313




望月裕二郎『あそこ』を読みました。書肆侃侃房。新鋭短歌シリーズの一冊。第一歌集。2013年11月。



いちどわたしにあつまってくれ最近のわかものもふりそびれた雨も/望月裕二郎『あそこ』
→「最近のわかもの」って存在が曖昧なものだ。「世間」みたいに。「ふりそびれた雨」ってあるのかわかんないけど、渡しそびれた贈り物のことなんかを連想して、いとおしくかわいらしいと思う。
存在と非存在のはざまに呼びかけている。

「わたしにあつまって」どうしようというのだろう。植木等が「銭のないやつぁ俺んとこに来い、俺もないけど心配すんな」と歌っていたのを思い出す。それを思い出すと、さいきんのわかものもふりそびれた雨も「わたし」も、同じような(どちらかといえばショボクレた)性質のもののように思えてくる。

しかしそんな読み方でいいんだろうか? あんまり遭遇しないタイプの歌なので、扱いに困る。



もう夢は耳でみるからはずかしいかたちの水をかけないでいて/望月裕二郎『あそこ』
→「耳でみる」にひとつポイントがあって、「はずかしいかたち」にまたポイントがある。「寝耳に水」という言葉があってこれにはポイントがある。なんといえばいいのか、言葉のもつちょっとした面白さを積み重ねている。

「ポイント」みたいなのがあるんだよね。工夫されたおもしろい言い回しについてくるポイントが。それを引っ張ってきて加工してポイントを重ねている。

変なことを試しに言うけど、レスリングっていう競技は、相手の背後をとったらポイント、投げてポイント、一回転させたらポイント、っていうふうに得点が重なりますよね。そういうふうに言葉とやりあっている、特に序盤の歌はそんなイメージです。



寝言は寝てからいうつもりだが(さようなら)土のなかってうるさいだろう/望月裕二郎『あそこ』
→「寝言は寝て言え」っていう言い回しがあって1ポイント。言われる前に自分で言って1ポイント。寝るが永眠みたいになってポイント。土のなかがうるさいのは、たくさんの死者の声がするからだ。そこをとらえてポイント。

罵りのようなからかいのような言葉をつかまえて遊んでいるうちに、死者の声にまで届いている。



おおきすぎてわたしの部屋に入らない栗がでてくるゆめにひとしい/望月裕二郎『あそこ』
→「部屋に入らない」ってことは、部屋にいれようとしている。冷蔵庫とかピアノとか、ああいう大きさの栗なんだろうか。「ゆめにひとしい」によって、それが比較できるものになってくる。比較できるほかのなにかが立ち上がってくる。

なんで栗なのだろう。まさか「びっくり」の栗?



満を持して吊革を握る僕たちが外から見れば電車であること

真剣に湯船につかる僕たちが外から見ればビルであること
/望月裕二郎『あそこ』

→歌集のなかのすこし離れた場所に置かれているふたつの歌。電車や湯船でそんなに思いつめてるかなあとフフッとなっているのもつかのま、「僕たち」が人として認識されない地点へつれていかれる。

「外」の一語が重い。「外から見れば」いくら真剣にしていようと、もっと大きな存在に覆い隠される。



立ったまま寝ることがあるそういえば鉛筆だった過去があるから/望月裕二郎『あそこ』
→「そういえば」っていうのはそんな過去がありそうな素振りだけど、あるはずがない。「でまかせ」の面白さ。その一方で、鉛筆としての生とか、鉛筆って立ったまま寝てるのかなという、そうした連想も浮かんでくる。



感想と具体例のない僕たちがコーラの蓋を閉めて眠る夜/望月裕二郎『あそこ』
→「感想と具体例のない」って言い回しが珍しくて、おっ、てなる。何を考えているかもわからず漠然としている僕たち、と言い換えると深刻になる。
コーラの蓋を閉めるのは、炭酸が抜けないようにするため。炭酸のようなものは内面にあり、それをなくさないよう、明日のため守っている。



誰もいないリビングでガムふくらませ甘く湿ったくちづけ 僕と/望月裕二郎『あそこ』
→「誰もいない」ので、自分とくちづけしたのだ。甘さはガムの甘さで、湿ってるのは元はといえば自分の唾液だ。ガムとともに妄想がふくらんだ。



山火事のように山染める夕焼けをめくって紙芝居が始まる/望月裕二郎『あそこ』





曇天の高架橋の下あやまって昨日を映してしまう水溜り

アマゾンの蝶が鱗粉ふり撒いて山手線のダイヤ乱れる/望月裕二郎『あそこ』

→人知れず時間はねじれていて、遠いなにかがこちらに影響を及ぼしている。神秘だなあ。



君は自宅の地下にピアノがあると云い僕はそれを弾きたいと思う/望月裕二郎『あそこ』
→言葉によって人と人はつながる。でも、このピアノはほんとに同じピアノなのか、それは不確かだ。
それか、地下にあるピアノというのは「君」の大切なものを意味していて、それがあると知るや否やそれに触れたくなるという、そういう「僕」の心のありかたを示しているのか。



『あそこ』という変なタイトルにした理由について、読みながら考えていたんだけど、これについて解説やあとがきに書いてあったことは、オレの考えていたことと近かった。

「あんまり遭遇しないタイプの歌で、扱いに困る」とはじめのほうに書いたけど、扱いに困るような短歌も悪くない。いい時間を過ごせた。

この本おわり。




▼▼▼



【こっちもおすすめ】
noteのほうでは、ブログでは読めない内容の記事をたくさんアップしています。




もっと賞の話がしたい!/オレの企み
https://note.mu/mk7911/n/nc2b1b8188836

「新人賞 連絡」
https://t.co/ZTB10Ogssw

もうひとりの中城  ~世にも奇妙な歌壇批判
https://note.mu/mk7911/n/n7bb586d45075

短歌連作とジェンガ
https://t.co/vssnyy5mrn

2018年5月のオレの短歌とその余談
https://note.mu/mk7911/n/n75bf05a79de6

第57回短歌研究新人賞候補作「仙台に雪が降る」全30首
https://note.mu/mk7911/n/n58e5f4337568




などなど、
500円ですべての記事(約100記事)が読めます。よろしければどうぞ。







このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote
mk7911 at 08:38|PermalinkComments(0)

2018年07月02日

{短歌の本読む 112} 「うたつかい」30号  ~色彩で話せるならば、ほか

Screenshot_2018-06-25-15-25-10-1





「うたつかい」30号を読みました。

「うたつかい」を知らない人に説明したいんだけど、URLを貼るのが一番正確なので貼ります。
https://t.co/KG7MPc7HEA https://t.co/4e2Ao21Goj

三行でまとめると、

年に二回発行される
参加者の短歌を集めた
数十ページの本

と思ってもらえるといいのかなと思います。自由に参加して作品が発表できて、ツイッターにいるたくさんの人の短歌が読めます。




ロールパンナはメロンパンナのおねえちゃん自分で選ばない道ばかり/かつらいす「ハンカチと深爪」
→上の句はアンパンマンのエンディングの歌の一節で、珍しい箇所を切り取っている。
上の句と下の句はどういうつながりなのか。よくよく考えれば、自分の家族は自分で選べないということか。選べないまま、自然に似てしまう。

……と書いてから、ロールパンナはメロンパンナの希望によってつくられたのだと知った。後からつくられたけど「姉」であるという。
そうすると、読みはおのずから変わってくる。




月曜がまたやってくる僕たちはセレクトボタンを押し続けている/嫉妬林檎「待ち人」
→これも前半後半に飛躍があって、つながりを考えてみたくなる歌。
昔「スターソルジャー」というゲームにセレクトボタンを押しつづけるとレーザーが使えるようになる裏技があったけども。
でもたぶんレーザーとかそんなんじゃなくて、選べない現実をそれでもどうにか選ぼうとしているという、そういう歌なんだと読んだ。選び直したい気持ちの強さが「押し続け」るという動作にあらわれていると。



色彩で話せるならばいまはもう菫色、の、濃淡ばかり/穂崎円「ひとつだけ」
→すみれ色は一体どんな会話なのだろう。ほかの色がかつてはあって、なくなっていったのだろうね。
こういう、謎っぽい歌に今回は魅力を感じている。「、」もおもしろい。話すことの呼吸、間合いがある。



テーマ詠「文房具」から。

えーあしたー急だねと言い雲ひとつないスケジュールを睨んだりする/西村湯呑
→おもしろい入りかたをしている。「雲ひとつない」が空のようで、スケジュールを見るのが空を見ることに重なる。
気がのらない誘いを受けたというよりは、すぐOKしたいけど予定がガラガラだと思われたくなくて渋ってみせていると読んだ。



自己紹介から。
ばかやろう好きとか嫌いとかじゃなく必要なんだダブルクリップ/西村湯呑
→「ばかやろう」で始まって「ダブルクリップ」まで行けるのかと、その飛距離をおもしろく読んだ。
結句で成り立っている歌で、「お前のことが」みたいにすると、誰も近寄れない二人の世界になる。



ということで、「うたつかい」30号の感想はおわりです。





▼▼▼



【こっちもおすすめ】
noteのほうでは、ブログでは読めない内容の記事をたくさんアップしています。



短歌連作とジェンガ
https://t.co/vssnyy5mrn

速報です
https://t.co/nbzpaCZ3OP

2018年5月のオレの短歌とその余談
https://note.mu/mk7911/n/n75bf05a79de6

未来賞をいただいて、いま書きたいこと
https://note.mu/mk7911/n/n0b1f389aea2f

第57回短歌研究新人賞候補作「仙台に雪が降る」全30首
https://note.mu/mk7911/n/n58e5f4337568




などなど、
500円ですべての記事(約100記事)が読めます。よろしければどうぞ。










このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote
mk7911 at 21:37|PermalinkComments(0)

2018年06月28日

《歌集読む 175》 熊谷純『真夏のシアン』  ~星座の下へ駆け出してゆけ、ほか

IMG_20180623_075116









熊谷純『真夏のシアン』読みました。第一歌集。短歌研究社。2018年4月。190ページで1ページ3首。

熊谷さんは投稿欄でよく見かける方だ。略歴を見るとオレよりいくつか年上で、歌歴はだいたい同じくらい。
広島の方。三行の略歴の三行目が「近藤芳美賞」で、この方にとってはこれが大きいことなのだろう。

一行目、何年生まれ。
二行目、何年に短歌をつくりはじめる。
三行目、受賞。
というシンプルな略歴だけど、このスタイルで書いたらオレは「未来賞」が三行目にくるんだろう。
熊谷さんはほかにもたくさん入選しているはずで、それらを省いてのこの略歴。

同姓同名の男性を知っていて、性別が気になった。

投稿の入選作品をならべても良い歌集にならないと、よく言われる。それってここではどうなのかと思いながら読んだ。



語り部の口から死者の声を聞く水をください水をください/熊谷純『真夏のシアン』



友だちがゐないのなんて太陽がないやうなもの どうつてことない/熊谷純『真夏のシアン』

→最後にひっくり返して、大胆な歌になった。読み返すと、そんなに友達って大事かなあと思うけど。たしかに友達らしいものはあんまり出てこないかも。



雨のなか出かけなければこの傘は濡れもしないし乾きもしない/熊谷純『真夏のシアン』
ここまで三首、どれもリフレインがある。いいと思ったから引いたんだけど、全体的にリフレイン多めかもしれない。探すからさらに多く見えるんだけど、気になって探したくなるくらいにはあった。



窓外の景色を白く阻むのは指名手配のポスターの裏/熊谷純『真夏のシアン』
→コンビニで働いているというのがたびたび出てくる。そんななかでの観察だろう。
「白く阻む」で強い雪かと思っていると、そんなことはない。広島はあんまり降らなそうだしな。



悶々と終(つひ)の裁きを待つ君よ星座の下へ駆け出してゆけ/熊谷純『真夏のシアン』
→とても魅力的な下の句だ。
でも「終の裁き」ってなんだ。宗教的なことかと思ったが、そんな感じのしない歌集だ。
そういう、なんの話をしてるのかわかんない歌はけっこうある。それが強くなるとオレはちょっと乗れないですね。たとえば以下のような歌。

いつの日か生まれる死なない人のためばう大な夢を用意しておく
日常のあふるる駅にぎらぎらの非日常をふりかざしゆく






このくらい胸が欲しいと少女らがのぞきし雑誌あとで確かむ/熊谷純『真夏のシアン』



また明日を憂ふる我の目の前で畑の蝶はねぢれつつ舞ふ/熊谷純『真夏のシアン』

→結句がいい。
歌集の第一部で「わたし」だったけど第二部は「我」になった。「君」に「あなた」が混ざっていく。そういえばはじめのほうより文語が濃くなっている気もする。編年体の歌集。



住所氏名年齢職業の途中にて突然書けなくなるボールペン/熊谷純『真夏のシアン』



ひと切れのお好み焼きとあなたへのことばがのどですれ違ひたり/熊谷純『真夏のシアン』

→言葉と食べ物のすれ違いとは、すごい。ことばも「ひと切れ」ぶんくらいなのだろう。
広島だからお好み焼きなのか?



ごみ箱に集められたる空き缶のひとつひとつにわづかな残余/熊谷純『真夏のシアン』
→なんだか記憶に残った歌。好きとかじゃなくて「なんだか」。残余を合わせれば一杯ぶんになるかなと考えて、自分の発想がいやになってしまった。
お好み焼きとことばのすれ違いもだけど、見えないところを想像でとらえている。



寂しさをしばし忘れて並べをり新発売のシュークリームを/熊谷純『真夏のシアン』





下りゆく坂の途中の柿の木の辺りでなかばあきらめてをり

このまんまどこかへ消えてしまはむと思ふ間もなくたどりつくなり
/熊谷純『真夏のシアン』

終盤の、これら二首をふくむ「冬よりまぶし」という連作はまとまりがいい。年齢の含まれる一首目から始まって

独り身の我の鼓膜へ君はまた家庭の影をとろとろこぼす

といった歌も入れている。

邪悪な話だけど、作者……いやいや、作中主体の個人情報や置かれた状況を、短歌からうかがい知ることができた瞬間って満足感がある。そういう満足な連作。時系列もわかりやすい。



七年か八年くらいの歌をまとめた歌集とのことだが、ずっとコンビニにいるし「君」「あなた」との関係もあまり変化しない。歌集としては変化にとぼしく盛り上がらないが、オレもまさにそうだなーと思いながら読んだ。

投稿の入選作品を集めて歌集にするとウンタラって書いたけど、連作もうまくて、そういう欠点は感じなかった。
投稿欄で上位に選ばれるタイプの歌だなーと感じたけど、それはオレが投稿歌人だからかもしれない。

上位に選ばれそうな感じの歌、が好きなオレと嫌いなオレがいる。見事なもんだと思う面と、うるせえと思う面がある。だからこの歌集についても評価が半ばしている。



あとがきに、入選歌が八百首あまりになって歌集をつくってみたくなったということが書いてあったから、オレはどうなのかと思って数えた。結社以外で選のある場所に出た短歌を「入選歌」とすると、五百首弱だった。
この「八百首あまり」の入選が、2010年から短歌をはじめた人としてどんなに多いかってことですよ。オレだって考えられるあらゆる場所に投稿してたわけですけど、そのオレの1.5倍も入選してるんです。年に百首を入選させるのって、なかなか根気が要るし大変だと思いますよ。


以上です。
んじゃまた。


▼▼▼



【こっちもおすすめ】
noteのほうでは、ブログでは読めない内容の記事をたくさんアップしています。

2018年5月のオレの短歌とその余談
https://note.mu/mk7911/n/n75bf05a79de6

未来賞をいただいて、いま書きたいこと
https://note.mu/mk7911/n/n0b1f389aea2f

第57回短歌研究新人賞候補作「仙台に雪が降る」全30首
https://note.mu/mk7911/n/n58e5f4337568




などなど、
500円ですべての記事(約100記事)が読めます。よろしければどうぞ。










このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote
mk7911 at 22:14|PermalinkComments(0)

2018年06月22日

《歌集読む 173》 山川藍『いらっしゃい』  ~わからんけど笑わんよ、ほか

IMG_20180618_204825











山川藍さんの『いらっしゃい』を読みました。第一歌集。角川書店。2018年3月。
190ページで1ページ3首。



略歴を見ると、山川さんはオレと同じくらいの年の人だけど、短歌はオレより10年はやく始めている。
「まひる野」の方。入会してから10年で結社賞。

(こういうことはオレの場合は多いんです。オレは三十代で短歌をはじめた人なので、同じぐらいの年齢で歌歴が十年ちがったりすることがザラにある。一回り年下の人がオレの倍の歌歴ということがある)



リラックマ手帳に変える生きるんだやりたいことをやればいいんだ/山川藍『いらっしゃい』
→リラックスしてるのがリラックマなんだけど、手帳を変えるところに意気込みがあらわれて、三句以降も力が入っている。二回でてくる「だ」も強い。
力を抜いてやりたいようにやることの難しさがあらわれている。



関東の冗談なのか失礼なだけかわからんけど笑わんよ/山川藍『いらっしゃい』
→この心の閉ざし方がいいな。「笑わんよ」とか言う人は、絶対笑わないだろうなと思うよ。
失礼なだけなら笑うことないけど、ほかの地域の冗談なら合わせてあげる選択もありそうだが、合わせない。笑うのは一つの肯定というけども。
さっきは「んだ」を反復していたけどこちらは「わからん」「笑わん」で踏んでいる。



猫と猫寝ておりみだらなカレンダーめくれずにいた九月十月/山川藍『いらっしゃい』

そういうカレンダーならオレはもっている https://t.co/fzrpdSOclx
→「めくれずにいた」がよく読めない。
みだらなのが嫌で7月8月からめくれずにいたのか、みだらな9月10月からめくれずにいたのか、それとも11月12月がみだらで9月10月で止まっているのか、それが読めない。猫と猫が寝ていて「みだら」って思うかな。思うから言うんだろうけども。

だから、本来は取り上げなかった歌ですね。「そういうカレンダーなら持っている」を言いたくて引いた歌ですすみません。



じゅうぶんに生きた気もする雨の午後誰かの菓子を勝手に食べる/山川藍『いらっしゃい』
→誰の菓子なのかわかんないまま、確認もしないで食べる。さっきの「笑わんよ」は、二つの可能性のどちらかがわからないまま笑わないほうを選択した。わかんなくても実行していくところに引きつけられる。
「じゅうぶんに生きた」と「勝手に食べる」が両立する。



叫び声が台所からする兄だゴキブリ見たな 働きなさい/山川藍『いらっしゃい』
→短歌を読むときに、どこで切れてるかを時々気にするんです。「叫び声が台所からする」で切れてるでしょう。「兄だ」で切れて「ゴキブリ見たな」でも切れている。おもしろい切り方。

すこし前の歌に「無職なる兄」というのが出てきて、無職が枕詞みたいになっていた。こっちでも兄は無職という属性をもっていて、ゴキブリを見て叫ぶと「働きなさい」と言われ(思われ)る。兄が存在を示すと、無職であることも同時に浮き出てくる。

無職というと「ニート」なんだけど、ニートってたしか年齢が決まってるんだよね。この兄はニートと呼ばれる年齢を超えてしまっているのかもしれない。だから無職無職と言われる。

オレは妹がいて、つまり兄なんです。このダメそうな兄を気にしながら読みました。




「家族って猫とその他になってきた」無職の兄は幸せそうに

われわれは家族であった円陣を組み死んでいる猫にさわった
/山川藍『いらっしゃい』

→やはり兄に「無職の」がくっついている。なにをしているときでも彼は「無職」を背負わされているのだ。
「猫とその他」だった家族の、その猫が亡くなる。それでも「われわれは家族であった」。

火葬場へ向かう猫入りダンボール「糸こんにゃく」とあり声に出す/山川藍『いらっしゃい』






いらっしゃいませが言えずに泣いたことあるから人にやさしくしたい/山川藍『いらっしゃい』



筆箱のファスナーしまりきらぬこと特に問題なく放りこむ/山川藍『いらっしゃい』

→さっきの「笑わんよ」と「菓子を勝手に食べる」につながる、不充分なまま次へいくタイプの歌。なぜかこういうところに丸つけたくなるんだよなあ。
しまりきってなくても放りこむけど、しまりきってないことを覚えてはいる、くらいの距離。



四日ほどのち紙袋の折り目よりバニラ味カシューナッツを拾う/山川藍『いらっしゃい』
→放りこむ歌のつぎに、拾う歌に丸つけていた。
「紙袋の折り目」がいい。それを言うなら「バニラ味カシューナッツ」もこまかいけども。



去る人がひとりひとりに置いていくアドレスの無いやさしい手紙/山川藍『いらっしゃい』



行きのバスでハナクソ食べていた男性を誰かに話してから忘れたい/山川藍『いらっしゃい』



生協に入るとたまるポイントを入らないまま心にためる/山川藍『いらっしゃい』

→心の中でためたポイントは「たまったポイントが何円ぶんだから、そのポイントであれが買えたな」という心につながっていくのかな。



ドア開ける度によいしょと言ううちに輪ゴム取る時にもよいしょ出る/山川藍『いらっしゃい』
→こうやって年をとるのかなっていう予感がする。

年齢の歌もある。三十三からでてくる。オレも、初めて短歌に詠みこんだ自分の年齢は三十三なんですよ。同じですね。

十の位おんなじ人は皆同い年に思えてくる三十三/山川藍『いらっしゃい』





動物のように食べたが動物は腹いっぱいになったらやめる/山川藍『いらっしゃい』

→動物よりも劣っていることに気づいてしまった瞬間の歌。
食べる歌が多い。あとはお金の歌、動物にさわる歌。
食べる歌が多いと、つぎは何を食べているかに目がいくわけだが、お菓子が多い。



何かせねば何かせねばとつぎつぎとYahoo!知恵袋を開きゆく/山川藍『いらっしゃい』
→それで何かできるのか、心配になる。分からないせいで前に進めないことがあるけど、知恵袋の回答はばらつきがあるので。



来月の結婚式の余興だと思われウクレレ練ゆるされる/山川藍『いらっしゃい』
→「ウクレレ練」という言葉がおもしろい。意味のある言葉で「れ」が三つ続く言葉。この人のなかだけの言葉かもしれない。「○○練」というとちょっと厳しそうだけど、ウクレレだ。
余興で弾くものとしてゆるされたけど、余興で弾くわけじゃないし、勘違いを訂正するわけでもない。このままいく。



そんな感じです。おもしろいです。もっと丸をつけようとすればつけられるし、コメントもしたければできるだろう。
この本おわり。









▼▼▼



【こっちもおすすめ】
noteのほうでは、ブログでは読めない内容の記事をたくさんアップしています。

2018年5月のオレの短歌とその余談
https://note.mu/mk7911/n/n75bf05a79de6

未来賞をいただいて、いま書きたいこと
https://note.mu/mk7911/n/n0b1f389aea2f

第57回短歌研究新人賞候補作「仙台に雪が降る」全30首
https://note.mu/mk7911/n/n58e5f4337568




などなど、
500円ですべての記事(約100記事)が読めます。よろしければどうぞ。










このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote
mk7911 at 09:57|PermalinkComments(2)