結社誌

2018年08月26日

〈結社誌読む 134〉 「未来」2018年7月号  ~真夜中の火焔列車、ほか

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「未来」2018年7月号。

そろそろやらないと二ヶ月おくれになってしまう。



ひとを待つあいだ見ていた駅まえの花壇にわすれられたスコップ/小林久美子
→わすれられたスコップを、自分のように見ていたんでしょうか。
なんか「ほんとに見てたっぽいな」と思って読んだ。「駅まえの」がじつは利いていて、これが駅で人を待っているのをあらわしているんじゃないか、と今かんがえた。



もうひとつの解き方があるというもっとうつくしいという解きかた/小林久美子



接吻のぷの丸だとか自慰のじの点々だとかを泥に埋めたし/佐藤羽美

→かわった目のつけどころだ。言ってることはなんとなくわかる。丸とか点が言葉の感じを変えてしまう。



悲鳴を上げながら過去へ過去へと倒れながら走ってゆく真夜中の火焔列車/青山みゆき
→57577じゃない作品ばかりの作者なんだが、ここではそれが内容にマッチしている。
すさまじいイメージだ。悲鳴とか、倒れながら走るというのは人間と重ね合わされているのか。エネルギッシュだが、過去になにを求めているのだろう。



ユーレイはいるんですか だしぬけにマツコ・デラックスは男に問へり/安川道子
→このように自分のタイミングでど真ん中へ切り込んでいけるのがマツコの魅力なのだろう。マツコもユーレイとかこわがるんだろうか。こわがるかも。



捨てられたような町のゴミ捨て場ここにもジャンプ縛られてあり/ゴウヒデキ
→ジャンプは日本全国で読まれている。見知らぬ土地でもジャンプはある。
縛られているところに注目しているのがいい。ジャンプという単語の意味を考え合わせてみるのもいいなあ。



貯水池に捨てた死体をもう一度引き上げてみたくなるような月/魚虎サチ
→なんと妖しい月だろう! そして、作中主体は過去に死体を捨てているのだ。これはドラマの予感。



やうやうに赤のうすれるさびしさよ蛸型遊具の蛸のあたまは/野田かおり
→「やうやうに」が枕草子みたいだし、あたまの赤さをさびしがるのは、鶴の頭をかなしんだ茂吉を思わせる。それでいてこれは現代の光景だ。



監視カメラつけよう誕生日おめでとう監視カメラつけよう/鼠宮ぽむ「微笑」
→これにちょっと似た歌、穂村さんにあるけどね。
A・Sは誰のイニシャルAsは砒素A・Sは誰のイニシャル/穂村弘

でもこっちはこっちでおもしろい。善意なのか悪意なのか、誰のための防犯なのか、おめでたいことが監視カメラにはさまれて薄気味わるくなっている。ある年齢になったら監視カメラの取り付けが義務づけられるとでもいうのか。



豚のことば牛のことばをおもいつつマッサージチェアにのびてゆく肉/佐藤真美



哭きゐる子笑ひゐる子に四月来ぬわれは漱石の「行人」読みて/千葉華


スタバなう 顔を上げたら店員がさっきとちがう人、五人とも/鷹山菜摘「さらばキャンパス」

→「スタバなう」の日常が、ふっと顔を上げると変化している。支障はないけど、がらりと変わっているのはしずかにこわい。



評のページからもいきましょう。
七首あるならば三首を読んでみておもしろくなければ次へいくようなやりかたで普段は読んでいる。それで見逃すおもしろい歌もあるが、そこを評のページは拾わせてくれる。



既視感がよぎる既視感。退院後のあけた引き出し夏の引き出し/みやざきひろ
→初句と二句でくりかえして、四句と結句でもくりかえしていて、こういう歌はなかなか見ない。
退院した夏に家の引き出しをあけたら既視感があった、ってところか。



拡大せる雀の貌のけわしさよわれら生物かく生きている/青雅



以上です。未来7月号おわり。


オレが「未来」に発表した歌はこちらにまとめています。
https://matome.naver.jp/m/odai/2145087691179204501



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2018年7月のオレの短歌とその余談
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もっと賞の話がしたい!/オレの企み
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2018年06月25日

〈結社誌読む 131〉 「未来」2018年5月号  ~人みたいな味する、ほか

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「未来」 2018年5月号。
これという特集のない、通常の号です。206ページ。結社誌なので、1ページで最大35首くらい入ってます。



新しいベビースターを
「人みたいな味する」
子が言い
わたしも同意す
/今橋愛

→ベビースターって今と昔で味ちがうのかな。キャラクターが変わったのは知っていたけど。最近食べてないな。
「子」も「わたし」も「人みたいな味」を知っている。「ベビー」が人の赤ちゃんに思えてくる。

「結社誌だから1ページで最大35首くらい入ってます」って書いたばっかりだけど、今橋さんは多行書きをつかって毎月1首か2首を発表している。とても珍しい。一行に書かれるのとは異なる間(ま)がある。

それからベビースターを食べてみたんだけど、人の味は感じなかったし、なんならオレの昔から知っている味だった。



夜半(やは)われの眼裏(まなうら)に目をひらきたるダイオウイカよこの頃は見ず/嶋稟太郎
→テレビに出てくる動物にも旬があり、よく出ていたはずが見かけなくなるものもいる。
「夜半」の「眼裏」が海の中のようだ。「目をひらきたる」もいい。閉じた目のなかで、別の目がひらく。



風は止んで真夜ブランコの板の上寡黙な雪が集まってきた/佐藤理江
→五月号の締切が二月である関係で、寒い歌がたくさんある。
「寡黙な雪」が一つのみどころだが「集まってきた」が雪のさびしさを思わせる。



途方もない旅だったのにふと消えるてのひらという悪意に雪は/野樹かずみ



釣具屋の真っ黒かった犬の目をおもうおまえが目を見開けば/山崎聡子「あたま」


雪の着地の歌が2首つづいて、目をひらく歌が2首目で、なかなかの片寄りっぷりを発揮している。
→「真っ黒かった」がよかった。普通に言う言葉でも短歌ではあんまり見かけないものがある。



午前二時湿った咳が窓ガラスを染める、消える ニトリひかってる/高田ほのか
→眠れなくて外を見ているときの感じがでている。ニトリってCMでしかほとんど知らないんだけど、夜中までやってるんですね。



知らされるまでは知りたくないことの頭部が舞台袖に見えてる/三輪晃「フロム・カサブランカ」



とうめいはここにもあそこにもあると指を差すけど嘘かもしれない/中込有美



住んでいる星を特定されぬよう月の写真は撮らないでおく/佐原みつる

→ネットで写真をアップすると場所が特定されて良くないと言われたりもする。これではなんにも撮れなくなってしまうが、そんな時代がやってきたりして。



温めた卵のように上着から返却の本取り出だす人/綾部未央
→おもしろい比喩。返却の本ってことは自分の本じゃないわけだ。カッコーの生態を思い出す。



雪道のぬかるみのごとコーヒーゼリーを混ぜて食(とう)ぶはひとりきりの午後/高島志保美



てぶくろを手袋のなかへ仕舞う夜の両のてぶくろ穏やかならむ/安川道子





くり抜いてもくり抜いてもカボチャ 怒らない人にログインしました

(サーカスは団長のみになりましたとさ)製造ならあります

傘を差さない方が頑張ってる感出るだろう???三十九度五分
/鼠宮ぽむ「高熱」

→合わせて読むと、「怒らない人」は仕事モードなのだろう。ログインすることでその場その場に適応した自分になる。
サーカスの団長からの製造業かー。厳しい。頑張ってる感のために体を壊すのは、やるせない。



サワークリームオニオン味のを手に取つて戻す おほかた判つてしまつて/志稲祐子



もう帰らうと言ふひとの無い夕ぐれの風吹くプラットホームに立てり/谷とも子



この駅はあまりに昏い少女期の手紙をみんな切符にしてる/原田美椰

→評のページから。
幻想的だ。少女期に手紙を書いたことのある人ばかりが乗る電車があるのだろう。



エレベーターの今ゐる階を押してしまふ秋霖に遠き木木は濡れつつ/深井ちか子
→密室でどこにも行けない上の句からの、飛躍が大きい。「秋霖」は秋の長雨だという。



以上です。


『未来』に載ったオレの短歌のまとめはこちら。
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んじゃまた。



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2018年02月04日

〈結社誌読む 114〉 「未来」2018年1月号  ~その後二年半の命、ほか

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「未来」2018年1月号。



赤ちやんが手を伸ばしくる魅力まだあるのだらうかこのわれにまだ/池田はるみ「ちから要るべし」



助手席に冬木のいろを愛でてゐし父ありてその後二年半の命/大辻隆弘「日の名残」

→生きているときのどんな場面が他人によってどう記憶されているか、わからないものだな。人が自分の人生を振りかえったとき、果たしてこういうところが回想されるだろうか。
「二年半」の、特に長くも短くもないところがいい。死の直前だと別の意味を帯びてくる。



しらじらと数珠つながりの自動車が真昼はるかな橋にきらめく/瑳峨直樹「美しい橋」
→「数珠つながり」から「きらめく」で、真珠のネックレスみたいなものをイメージした。
下の句のハ行の音の三つがひとつの効果になっている気がする。



消去法によりて投ずる一票の歌会は小(ち)さき政治とおもふ/松原未知子「芋虫」



子パンダはパンダに生まれ親だけがパンダなのだと気づくのでした/佐藤理江



憎しみをふにゃんふにゃんのグミにして舌で遊びぬバスが来るまで/佐藤羽美



ちっぼけな日傘の森であのひとのロングトーンにでくわしちまう/蒼井杏「ぜんぶうつむく、あるいはふたつかかえて」

→歌集に関してはあんまり良く言わなかった記憶があるけど、月詠でみると目にとまることが多い。タイトルいい。
日傘をつかったことないのであれなんだけど、森のなかにいるような感覚になるものなのかと想像した。「でくわしちまう」は魅了されてしまうのがくやしい、みたいに読んだ。



長針が4を指すたびその影も4を指すのを知らないでしょう/西村曜「カフェとレ」
→3や5でなく4なのは、「死」なのかなあ。長針はとくにゆっくりと動き、大きな単位の時を刻む。太い、ゆっくりうごく影。



カーテンが突然ふぉんとふくらんで巻き込んだのは古いオルゴール/ルイドリツコ
→この「ふぉん」はおもしろい。オルゴールもあるし、聴覚を刺激される。



ひかくてき明るい部屋にいることは今の不幸と関係はない/川村清之介
→その前のタクシーの歌とシャツの歌も気になる歌だった。
不幸みたいだけど部屋の明るさを冷静に把握していて、その関係を思っている。落ち着いているが、なんだか気になる落ち着き方だ。今後もたのしみに読みたい。



レジまでは担ぐよ君が灯のもとで生きてくための短い脚立/榊原紘
→地に足のついた生活と、美しさが一首のなかに共存している。
一首だけ見るとあたらしい生活がはじまりそうな歌だが、連作でみるとちがったところが見える。
「風邪ひかないで」「ときどきは捨てなね」「家族みたいな気でいたよ」といったあたりからじわりとそれを感じる。



山川の世界史Bが帝国を片っ端から滅ぼしてゆく/篠田くらげ
→こうしてみると歴史は破壊でできているようだ。次から次へとあたらしく成立させるのもまた歴史だが、そこを見ないことでおもしろくなっている。



ジムノペディ一番を弾く妹よめくれはじめる不安の皮よ/安良田梨湖
→不安の皮ってなんだろう。梨の皮を連想するのは、作者名のせいか。
不安の皮がめくれると中身は安心なのか、それとも、不安の皮がめくれると不安の実があるのってことなのか。ジムノペディは安心する曲といえばそうだけど、それだけじゃない気がする。



気持など言葉にならぬ悲しみを幾たびも問う記者 背伸びして/新居千晶
→フムフムランド飛地から。
「気持など」はちょっとどうかなーと思いながらも、「背伸びして」が良くて印つけた。



割りばしを割るときひとつ魂が割れる音せり夕暮れが来て/三田村正彦



秋が好きですと書こうとしたもののスペルを忘れ春にしておく/鷹山菜摘「目覚めたら秋」



自転車を買ったんですよこの雨の合間に ゆけばゆくほどに雨/鷹山菜摘「目覚めたら秋」







評のページからも引いてみます

子供服用のハンガー大量に遺棄されてをり夜の公園/本多真弓
→以前、服を売るお店でいらなくなった大量の古いハンガーをもっていかないかと言われたことがある。そんなことがあったから、これを捨てたのはお店関係の人かと思った。でもそうとも限らないか。
公園なら子供がくるけど、ハンガーをほしがるのは子供じゃないからなあ。
あと、「遺棄」という言葉の選択が気味悪くしている。「死体遺棄」という言葉を聞き慣れているせいか。捨てるなら廃棄、投棄、ほかの言葉もある。



少しずつタオル湿らし何かしら物音のするひと日を過ごす/岩尾淳子
→タオルを少ししめらせる行為はあまり音を感じさせない。物音が歌から聞こえてこないところが、妙に気になる歌だ。



鼻だけを逆向きに描くおとうとの人間の絵が賞をもらった/竹中優子
→オレは、体の一部の形状が通常と異なる人のことを考えた。モデルがほんとにそういう顔なのか、を問題にするのは短歌の世界くらいのものなのか。美術だとどうか。
逆向きの鼻に与えられた賞は、ほかにどんな身体のねじまがりを望むんだろう。
……なんて書いて、思っていないことを書いたような気分になった。

うーん、絵っていうのは、色とかなにかバランスとかいろいろあって、総合的な評価で賞になるんだろうけど、この歌の書きかただと鼻しかないから、鼻への賞として読んでしまうんだよな。



1月号は未来賞発表号なんですが、それについては書かずに終わります。

オレの未来賞受賞に関しては、有料マガジンに書いてますので興味ある方はごらんください。

未来賞をいただいて、いま書きたいこと
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2017年12月16日

〈結社誌読む 112〉 「未来」2017年11月号  ~権威があればなんでもできる! ほか

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「未来」2017年11月号。

よかったなーっていう歌をご紹介しながらなんか言ったり言わなかったりするやつです。



いまだ目のあかぬ仔猫が鼻さきをひくめかし来て手にすがりたる/桑田靖之



冬の海のかがやきを背にほほゑみぬあのときを永遠と呼ぶなら/大辻隆弘「伊香保」



たはむれに母の遺影に髭を描きやがて真つ黒に塗り潰したり/高島裕「M氏の一日」

→描いたときは「たはむれ」だったものが、「やがて」そうではなくなったんでしょうね。それにしても真っ黒とはただごとではない。



黄昏は引きずるほどに長い耳持つ生き物としてわれに来る/服部真里子
→短歌にはこういうこともできますね。生き物じゃないものが生き物になる。長い耳とは夕空に横にながくのびている雲かなと思ったりもしました。



あのときの(権威ですか?!権威があればなんでもできる!1!2!簒!奪ーっ!)いのち/中島裕介
→こういうのはどうかなあと思いながらも、異様に高い完成度にやられた。作者の名前を見るとついつい「AIもこういうの作るのかなあ」と考えてしまう。ツイッターが改行すらただしく反映できないのが2017年の現状だ。

つまり、括弧のなかは権威をがむしゃらに求めていてグロテスクなくらいだけど、外側ではまったくちがう世界がひろがっていて単なる戯画にとどまらない。しかもそれも洒落になっている。手がこんでいる。



箸先にさうめんすくふしたたりはちひさな滝のかなしみならむ/杉森多佳子「パフェ」



ひざまずき落としたフォーク拾ってる あなたにもっと相応しい人がいて/鈴木美紀子「ひとひらの舌」



菓子パンの袋を開けたひし形の中から香る遠い月面/戸田響子「よもつへぐい」

→どこでもドア的に菓子パンと月がつながってるみたいな不思議さがある。月面の香りというのがまた不思議ポイント。
「ひし形」はよくとらえている。こうしたよく見覚えあるものが不思議を支えている。



秋山生糸さんの「その日その日」がおもしろかった。パンダって知らないことが多いなあ。パンダが白黒である理由とか、竹を主食にするようになった理由とかが特におもしろかった。



きらきらとサランラップに包まれて残りご飯が夜をこえてゆく/鈴木麦太朗
→ツイッターでつぶやいたときに一番反応が大きかったのはこの歌。
たしかにサランラップってきらきらしてるけど、言われるまでそんなふうに思ったことがなかったことに気づく。「夜をこえてゆく」にもロマンがある。こんなところにも詩があったのか。



「みらい・くりてぃーく・えせー」の古川順子さんの文章がよかった。もっとも、オレは岡崎京子も知らなければ岡崎裕美子さんの歌集も読んでないんだけど。でも一つのものの見方を教わった。



「くるしみはどこからくるの」だるそうに検索結果が表示される/目加田舞
→人にきけないことをやむにやまれずネットにきいて、しかしネットには求められるものが理解できないんだろうなあ。
画面表示の重さにぶさを「だるそう」ととらえたとこちょっとした新しさを感じた。



砂漠北極海遊園地1LDK行方不明候補地/目加田舞
→茂吉の「電信隊浄水池女子大学刑務所射撃場塹壕赤羽の鉄橋隅田川品川湾」を思いだしながら読んだ。飛行機に乗って見えたものを詠んだのだった。
それに対してこれはどうだろう。とても一望できるようなものではない。飛躍が大きい。
さっきの検索の歌の次にこの歌がある。合わせて考えると、世界のどこにも居場所がない、と言っているように思える。



目をこらすなおも目をこらすはるばるやって来た客人の靴下のあな/青山みゆき



Yシャツの中には何も着ていないような男が持ってくる梨/ルイドリツコ



空つぽの列車は過ぎてしばらくの後にしづかに開く遮断機/山川築



目のとれた人形に猫のよりそいてゴミステーション薄き日だまり/あさだまみ

→目がとれたから捨てられたのかなあ。猫は野良猫かなあ。日だまりまでが彼らによりそっているように感じた。



デバッグをせずに走って致命的エラーを起こすまでが青春/価格未定
→アクションゲームのデバッグならちょっと見たことある。キャラクターが壁にめりこんで動けなくなったり、地面があるはずの場所で落ちて死んだりするよね。
青春の無謀なところがよく出ている。



振り返す手よ生きていくことすべてまぶたの裏の消えない花火/岡本真帆
→いいなあ。別れであるとか、瞬間のうつくしいものの記憶のなかに「生きていくこと」がある。
そんな感じで終わります。



オレの出した歌はこちら。
レーズン岩  ~「未来」2017年12月号掲載
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バリウムを初めて飲んできたんだけど、その話をします
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2017年11月14日

〈結社誌読む 111〉 「未来」2017年10月号  ~ふはりふはりとうなづいてうなづいて、ほか

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「未来」2017年10月号


花たちが唱つてるなんて残酷な嘘だかれらは暗い、ぼくより/岡井隆「命令と合図」



見終えたるテレビのなかの風景が夢のごとくに薄れゆくなり/伊吹純



診察室のカーテン右から入るべきか否左かと昂りてゆく/桑田靖之



ふるさとの童謡低く唄いつつ容疑者吐かせる技欲しきかも/笹公人

→古いドラマだなあ。そうかあれは「技」なんだな。
取り調べ室のコントで「かーさんがーよなべーをしてー」って歌ってるのなら見たことある。



これは逃避ネットの沼から上がれない鳥の濡れたる羽が重たし/源陽子



裏切りと思えないほどひっそりと立ち去ってゆく 季節もひとも/野樹かずみ

→読んでるこちらもひっそりと立ち去りそうになるが、待てよ、と立ち止まる。季節が去るのは裏切りだったのかと。



おてもととしるされているわりばしのぱきっと がっかりさせたんだろうな/蒼井杏
→割り箸を二つに割るように、人の期待を割ってしまったのだろう。それはいいとして、「おてもと」は? ひらがな表記は? そこがどうも割りきれないんだけど、そこがこの歌の良いところだと見ている。



落ちてゆきながら埋もれたガラスの破片のような冷たさにしがみついてしまう

青く硬直したてのひらに隠れてぐちゃぐちゃになって泣いちゃ駄目ですか

誰も待っていないアパートの飲みかけの缶酎ハイをどうやって信じるんですか
/青山みゆき

→いつも大きく字余りしているというか57577にはなっていなくて、この人の詠草だけ字が窮屈そうになっている。
この三首は特に心が乱れていて、そのせいか字余りに違和感がなかった。定型の乱れが心の乱れとか言うつもりはないんだけども。
ガラスの破片にしがみついたら傷つく。硬直したてのひらは自身のものと読んだ。



救助せよ。生まれてきたくなかったと言う口にいま呑まれるイチゴ/西村曜「〈お誕生日会のお知らせ〉」



駆けつけしわれに気付かず妹は眠りていたり霊安室に

約束は新宿西口花屋前 待てど捜せど来ぬ妹よ
/花木洋子

→会ったら気づいてくれるんじゃないか、待てば来てくれるんじゃないか。死に実感が追いつかない。つらい一連だった。



前奏に遠い目してたら誰なんだ英語が歌う山下達郎(タツロウ)の曲/諸井敦子
→なんとなく「クリスマス・イヴ」なんじゃないかと思って読んだが、季節からすると違うんだろうな。
遠くなりかけたものが、歌い出しの英語で突如引き戻される。「誰なんだ」が良いし、「英語が歌う」は一つの工夫。この種のルビは苦手だが、これは気にならない。



拍手ナイフフォーク真鯛のポワレ拍手ナイフフォーク真鯛のポワレ/中山一朗
→結婚式の一連のなかの歌。式が進んでゆくなかで拍手があり、ナイフとフォークで洒落たものを食べる、と、また拍手することになって拍手して、またナイフフォークと格闘することになる。羅列と反復の歌だけど、よくわかる。



中学の絵が上手かった先輩のようでホームのBOSSの空き缶/竹中優子
→空き缶の絵を見ながら、中学の先輩のことを思い出している。たしかにあの絵って、「絵のうまい学生が描いたうまい絵」っぽさがある。「ホーム」はいろいろに読める言葉だけど、駅のホームと読んだ。



赤べこがふはりふはりとうなづいてうなづいて、ああ泣いても良いか/酒井真帆「ふるさとのふるさと」
→赤べこ、オレも持ってる。首が動く土産物だ。首の動きを「ふはりふはりとうなづいてうなづいて」とやさしくゆったりと表現している。肯定してくれているように見えて、泣きたくなったのかもしれないな。



すっぽりと吾をはめこみ温かりし祖父のあぐらよ杳き樺太/香田小芽

彼の人のしづかなこゑを覚えおくそれ以上でもそれ以下でもなく/杉田加代子

鍵忘れチャイムならして吾を呼ぶ子は満月を背に立ちており/梶本かれん

評のページから最後に三首引いた。
この本おわり。


『未来』に載ったオレの短歌のまとめはこちら。
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さっそく角川短歌賞のことを書こうじゃないか、または、オレと新人賞の六年間
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2017年10月26日

〈結社誌読む 109〉 「未来」2017年9月号  ~四次元美人コンテスト、ほか

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「未来」2017年9月号。



いつよりかうるさき世とはなりにけり作中主体が二つも三つも/大島史洋

小池光さんには
いつしかに年とりをりてこまごまと詞書(ことばがき)つく歌のうるさうるさ
という歌があった。角川「短歌」2015年7月号。
大島さんと小池さん。初句が似てるし、うるさいという感じ方も同じだ。
でも、自分が年をとってうるさく感じるのか、世の中が変化してうるさくなっているのかでは、全然ちがう。



いつしかに朱雲(あけぐも)も消え子らも帰りただしづかなる夕空となる/桜井登世子



結論ということなのか唐突にまた跳びあがり噴水止まる/前川明人



ビルの後ろに落ちきるまでは夕日さえ赤々と希望をこぼしていたが/佐伯裕子



膝頭つきて詫びたる感触がよみがへりきて憤ろしも/大辻隆弘「雨後の庭」



第二回四次元美人コンテスト準優勝という兄の元カノ/笹公人

→一回目じゃないし、四次元美人ってどんな意味の美人なのかあやしいし、優勝したわけじゃないし、自分の彼女じゃないし、今の彼女でもない。ちょっとずつずれていて、自慢しにくそうだ。
美人コンテストって古い感じがするけど、未来になってもあるのだろうか。未来であってもすこし古さというか懐かしさがあるのが笹さんらしい。




麺つゆの黒く揺れゐるガラス器のおもつたよりも葱入れるひと/山木礼子



水玉のシャツ着た友が起きぬけになぜか縄文杉を見たがる/服部真里子

→「なぜか」を謎のままにしておくには、「水玉のシャツ」が気になるし「起きぬけ」なのも気になる。縄文杉に降る雨粒になった夢でも見ていたのかなあ。



われの名は智子と言えば老い母は智子という名の娘(こ)がいたと言う/村松智子



解けなかった宿題それももういいよってゆるしてくれるいつか死が来て/野樹かずみ



どのように「もし」と言ってもその「もし」が石油まみれの鳥であること/遠野真

→湾岸戦争のときに話題になった写真のことだろうね。



ここからは有料です、が「しあわせに暮らしました」の前の行にも/西村曜「坂/薔薇園/県道を行く」
→「ここからは有料です」はネットのサービスなのだとして読んでみる。有料だからといってお金を払うと「しあわせに暮らしました」しかない。悪意のようだ。

それかあるいは、有料老人ホームのことかな。

「note」っていうサービスがあって、あれは自分の書いたものを好きなところまで無料公開、好きなところから有料にできる。でもあれは、支払ったのに一行しか読めないようなことがないように「残り○○文字」って書いてある。



どれもこれも気に食わなけりゃdボタン押して今日からは君が大統領だ/三輪晃
→「大統領」に皮肉がある。dボタンってあれでしょ、テレビの視聴者投票の。それでテレビが思いのままにあやつれるかっていうと、んなこたぁない。ましてや世界は動かない。
文字数がはみだしていて、なんかそれもわがままだ。
テレビをあやつるどころか、テレビに組み込まれてしまっている。
dボタンは使ったことないけど、笑点の特定の回答者の座布団が取られるって話はよく聞く。



望むなら何にでもなる紙ねんど長方形のままでかたまる/中田美喜



生き方が変はるかも、と言はれしを思ひ出したり日暮れの壁に/野田かおり「雲路より」




評のページからも少し。

七階に見る白き雲ゆふぐれとなりて内部の灯れるごとし/大辻隆弘



「ぼっち飯」とは一人ぼっちの食事という別に哀しむことにあるまじ/森田猛

→それはそうだ! と納得したが、よく考えてみれば、ぼっち飯の人たちって哀しんでいるんだろうか? どうもすれ違いがあるようだ。スクールカーストってものが伝わっているだろうか。

穂村弘さんが時々引く
ハブられたイケてるやつがワンランク下の僕らと弁当食べる/うえたに
っていう歌があるけど、それはどのあたりの世代まで伝わるんだろうな。
ハブられてもワンランク下に降りられない者が一人ぼっちで食べるのだ。そしてそういう階級であると位置づけられ、学生時代がモヤモヤしたもので覆われるのだ。



もうきみに伝えることが残ってない いますぐここで虹を出したい/岡本真帆



利き腕でなければ折れてもいいような 雪のちらつく朝の論調/平岡ゆめ




というような歌がおもしろかったです。この本おわり。
んじゃまた。



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2017年09月30日

〈結社誌読む 105〉 「未来」2017年8月号  ~あたらしい臓器のように、ほか

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「未来」2017年8月号。



凍らせて忘れておりし豚足を持てば怪しき霧をまとえり/佐伯裕子



海岸に寄する無数のかずしれぬ波ことごとく助けてといふ/山田富士郎「転送」

→「無数の」「かずしれぬ」「ことごとく」は多少しつこさがあるが、寄せてかえして寄せてかえす波の終わらないところに関係しているのだと、とりあえずはとっておきたい。
初めは海で亡くなった人の声とうけとったが、そうじゃなくても成立するか。



救世主待望するは病なり病なくしてわれわれはなく/山田富士郎「転送」



シャンソンのプロの日々など想像のほかにてあれば耳飾り見つ/中川佐和子「卒業タイル」

コルク栓をデッサンしてる彫刻家そういう時間はたいせつなはず/大滝和子

→シャンソンのプロだったり、彫刻家だったり。歌が遠くのものを引き寄せて見せてくれる。引き寄せてもよく見えないところもあるけれども。



望遠鏡どれも同じに傾いてビックカメラの天井を映す/岡崎裕美子
→「望遠鏡」から想像される、宇宙・星・神秘……みたいなものが二句以下で裏切られる。現実をつきつけられる。



あたらしい臓器のようにふるえだす真珠の色のスマートフォンは/中込有美
→スマホが体の一部みたいになるのはよくわかるが、「臓器」ときた。臓器って体の内部にあるもんだと思ってたから、おどろきもある。スマホのバイブが、命あるゆえの人体の動きと重なる。
臓器ってスマホみたいに震えるのかなあ。いや、あたらしい臓器だからほかの臓器とは震え方もちがうのか……。



若くして頭髪薄い先輩がふられたらしいのではげました/価格未定
→最後の五文字が空欄になって「ペケ×ポン」の穴埋め問題に出てきそう。
しょうもないが、よくできている。



この人がわたしを褒める心情のマヨネーズつく箸で混ぜる汁/竹中優子
→下の句に新鮮味がある。デリカシーがないおおざっぱな人なんだね。ほめられてもあまりうれしくないわけだ。

あんなにもやさしく触れたはずだった指のかたちに傷む白桃/しま・しましま
→こちらはこまやかな歌。しかしそれでも傷つけてしまう。
マヨネーズつく箸で汁を混ぜるような人がさわったらもっともっと傷めてしまうね。



引きずっているのか付いてくるのかが分からぬままに雨上がりゆく/平岡ゆめ



なるようにしかならぬと独りごち行けばすれ違いざま人はくさめす/福島照子





以上です。この本おわり。


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んじゃまた。



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2017年08月04日

〈結社誌読む 101〉 「未来」2017年6月号  ~時間旅行者の気分、ほか

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ひさしぶりに短歌をやっていきますよ。
「未来」2017年6月号。




塵芥屑(ごみくづ)の中の閃き、カントリーマアム個包装の切れ端/高島裕「旭将軍」



六日月ほどの太さと見上げたり月はいつでもきのふのつづき/田中槐「近づけば春」

→「六日月」に馴染みがなくて、三日月を頭のなかで三日分太らせてみた。
下の句は、昨日の続きとはいかないものを予感させる。



月光のところどころをつやめかせ轍のふかきひとところある/木下こう「かたすみ」



橋を渡る 孔雀を抱いて闇の濃いところと薄いところを渡る/服部真里子

→孔雀って色とりどりで、闇って黒だから、その対比が見えすぎるといえばそうなのかもしれない。でもオレはこれでいいと思う。孔雀を抱いて夜の橋を渡るというのが不思議な状況で、ここに惹かれる。



恐竜をぜったい助けないでという君のほんとうの悲しみ、おやすみ/岩尾淳子



死にたいな 頭が重くなる部屋で腹から出ない女を見てる/金尾釘男

→どんな部屋でどんな女かもよくわからないが、死にたくなるような嫌ーーなものが、閉塞感があった。



ふにゃふにゃと一応文句を言うようだ督促葉書は小雨を吸って/清水ゆん
→ハガキが雨でふにゃふにゃになることがある。督促を「文句」と言いかえたのが楽しい。

目を剝いて老女は閻魔大王に「つばめに軒を貸した。」と言えり/清水ゆん
→同じ文句でも、こっちは迫力がある。なにしろ目を いている。しかも相手が閻魔大王だというからすごい。生きてるときに良いことをしたんだから天国に行かせろということだな。



だれの真似かわからないけどコロッケの顔よく動く夜のめでたさ/小坂井大輔「さようなら昭和」
→「めでたさ」がとてもいい。回る傘の上をものが転がるようなのがおめでたい芸だけども、コロッケのものまねにもおめでたいものを見てる気にさせるようなところはあるかもしれない。
ああ、正月の「福笑い」に通じてるのかもしれないな。



リプレイでゴールを観るとき少しだけ味わう時間旅行者の気分/魚虎サチ「春の夜のカノン」
→笹欄らしい歌だなあ。「お、やってるね」という気分になる。
そう思ったことはないが言われるとそうかもしれないと思う、そんなゾーンだ。そんなゾーンへうまく蹴り込みたいものだ。



だとしてもなほ心臓は時といふ扉を叩きつづける拳/飯田彩乃



心臓のあたりにおいたてのひらをぎゆつとしたけど摑めなかつた/多田愛弓



傷のつくところの残つてゐる人を傷つけたりしか冬の手紙に/小野フェラー雅美





以上、「未来」六月号の歌でした。




『未来』に載ったオレの短歌のまとめはこちら。
http://matome.naver.jp/m/odai/2145087691179204501



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#2017上半期短歌大賞 50首 Togetterまとめ https://togetter.com/li/1126231
今年の上半期に読んだすべての短歌から50首選んでまとめました



2017年6月に発表した/掲載された短歌まとめ【25首】|mk7911|note(ノート)
https://note.mu/mk7911/n/n6a0753b5ac49





短歌パトロール日誌【5】6/14-7/17|mk7911|note(ノート)https://note.mu/mk7911/n/n648c9e855c73

2017年6月の出来事についてあれこれ言う【短歌編】|mk7911|note(ノート)
https://note.mu/mk7911/n/n2b8ea3aa7fd3

2017年6月の出来事についてあれこれ言う【短歌以外編】|mk7911|note(ノート)https://note.mu/mk7911/n/n68525cac4bfd

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2017年05月04日

〈結社誌読む 96〉 『未来』2017年4月号  ~どこまで卑怯になれるだらうか、ほか

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「未来」2017年4月号を一ヶ月遅れでやりす。



老人は少年に説くゐるんだよ毒蛇を食ふ無毒の蛇が/山田富士郎「ルーペ」



ストーブの筒の内部に火はありて火に濯(あら)はるる国あるごとし/大辻隆弘「練色」



何もかも小さい母がかごさげて見え隠れせり百円ショップ/中川佐和子「極彩色の蝶」

→百円ショップは、一点あたりの価格は小さいが品揃えは豊富で、ごった煮の巨大な店だ。「かごさげて」は昔ながらの買い物スタイルで、新しい大きなものが古い小さいものを飲み込んでゆくような風景だ。



なにものになりたきわれかセーターのひとつ選べずユニクロを出る/久野はすみ「約束」
→百円ショップの次はユニクロだ。意図はないけど、丸つけた歌を順にたどると何かつながって見えるようなことがある。
ユニクロにはベーシックな衣類が揃っている。商品の多い店にいると自分がわからなくなって何も買わないことはオレにも経験がある。



おばさんでごめんねというほんとうはごめんとかないむしろ敬え/岡崎裕美子



生きものの感じをだして水槽にタカアシガニが動きはじめる/岩尾淳子

生きものの感じといえば、こんな歌がある。

泥濘に小休止するわが一隊すでに生きものの感じにあらず/宮柊二『山西省』

「生きものの感じをだして」で、生きものの感じをさせずに静止していたタカアシガニの様子が浮かび上がる。



死んだ姉のぶんまでわたしがんばると夢で言う行方不明の友が/野樹かずみ



この街はどう見えるだろう死者の目の高さにとどまる観覧車から/野樹かずみ

→「死者の目の高さ」がわりと具体的に言われている。とどまるってことは一番上のあたりだと思って読んだ。観覧車に死の匂いがまとわりつく。乗客と死者が重なる。



「ヤイわたし しつかりなさい」と言ひながらわたしのお腹にほつかいろ貼る/池田はるみ『正座』
→新年会報告のページから。
パッと見た感じ平凡なようで、見れば見るほど絶対こんなことしないし変だろという感想に変わった。まず「ヤイ」って言わないし、それを自分にはさらに言わない。でも言われてみれば、寒いときの体ってたしかにしっかりしてないなあ。納得。「ほつかいろ」の表記に味がある。



あたたかなカイロの中身は真っ黒でざらざらとした嫌な粉です/戸田響子「蓋つきマグカップの中の宇宙」
→また丸つけた歌どうしがつながった。カイロつながりだ。
池田さんのカイロは自分をしっかりさせているが、こちらの歌はカイロの嫌な部分を見つめている。



一円玉九個のお釣り受ける掌が白く泡立つ滝壺となる/安藤三從



覚めぎはの怠き身体にのこりをりむかし飼ひゐし猫の重さは/漆原涼



ラーメン屋に枯れ葉が紛れ込んでいてときどき踏みつけられては欠ける/森本直樹

→見たまんまでもあるし、そぐわない場所にいて虐げられる者の姿にも見える。「欠ける」がいい。パリパリになってる枯れ葉だな。



ストーブで焼く餅につく焦げ目見て集まるひとらみなすこし笑む/道券はな



七色にピエロのパンツが汚れてる さっきまで虹に腰かけてたから/伊勢崎おかめ

→虹に腰かけるなんて夢のようだが、パンツが汚れるくらいの夢のなさがある。そして、ピエロにはおしりの汚れたパンツが似合う。観客の笑いを誘うことだろう。
その前の歌の餅の焦げ目もそういう笑いをさそうのかも。



「おかえり」と箱から優しい声がするもう一枚のジョーカーの声/本条恵
今度はピエロで前の歌とつながった。
→トランプの一連で、ババ抜きの歌のながれでこの歌がある。ババ抜きで一枚だけ省かれたジョーカーを詠んでいる。「優しい声」がせつない。



二度寝しておけばザムザも虫でないものになれたのだろう 谷とか/蜂谷希一



ココナッツ味ベジタブルカレーならココベジだろう伝票を見る/山階基「初雪」

→長い名前の食べ物は、省略されて伝票に書かれる。略称にあたりをつけて伝票を見ている。中ほどに濁音が多いが、こんな言いづらいものが言いづらいままでいられるはずがない。
客ばっかりフルで言ってる可能性があるよな。
オレはこのあいだ「アマトリチャーナ・ビアンカ」ってパスタ食べた。略称考えながら帰ったけど、そうか伝票に書いてあったかもしれないな。

客側の世界からお店側の世界に触れようとする、その境目の歌だ。異世界ってほどでもないが、いろんな裏表が世界にはある。



全然知らない人です夕景にダンクシュートをどうしましょうか/山﨑修平
→夕方に見てたら知らない人がダンクシュート決めてたと。ふいに見事なものを見てとまどってる感じか。でも全然ちがう読み方もできそうだな。
「全然知らない人です」ではじまると誰が何をするのかどきどきする。



クリームがずるりと滑るパンケーキどこまで卑怯になれるだらうか/文月郁葉
→上の句と下の句がすごくフィットしている。なんでこんなにしっくりくるんだろうと考えた。
「ずるり」に「ずる」が含まれている。クリームやパンケーキの甘さやわらかさ。「滑る」であるべき場所じゃない場所に行こうとしている。







ここからは評のページから引く。
Eテレの数学講座おもしろくなるころ動く秋雨前線/佐久間佐紀
→「おもしろくなるころ」がよかった。おもしろさはその人のものだが、前線はもっと大きなものだ。



やさしさがなにのたすけになるだろうめかくしをしてたつきりぎしに/島なおみ



キッチンの床につぶれたビール缶わたしもいつか猫を飼いたい/秋山生糸

→「なぜか納得させられる」という評に同感。つぶれたビール缶に人間の暮らしのわびしさがあり、猫にはそれをやわらげるものがあるのか、などと考えた。



パン競争用のあんぱん揺れている午後に男は聞いているふり/林みつえこ
→これもなぜか納得させられた歌だが、その理由はもっとわけわからない。あんぱんが揺れてるってことはこれから食われるところだろうが、男がパン食い競争を見るのに夢中だからそばの人の話を聞いてない、ってわけでもないだろう。「距離感」が気になる。



パレードの音はここには届かない痛いだろうな螺旋(らせん)階段/岡本真帆
→届かないパレードの音があって、今は痛くない螺旋階段がある。螺旋階段が痛いというのはなんだろう。転げ落ちるイメージか。回りながら転げ落ちると普通より痛いだろうか。
イメージが混ざりあって何か反応が起きている。

田丸さんや金尾さんの引いてくる歌は好みの歌が多い。金尾さんの、歌の良さのポイントを簡潔に書く書き方は見習いたい。こういうふうに書けるといいなあ。

長くなった。終わります。




『未来』に載ったオレの短歌のまとめはこちら。
http://matome.naver.jp/m/odai/2145087691179204501




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帰ってきた汚染歌人|mk7911|note(ノート)https://note.mu/mk7911/n/n3b3bdf5e932c

短歌パトロール日誌【2】4/20-4/23|mk7911|note(ノート)https://note.mu/mk7911/n/n7e733d2bc5cb

短歌パトロール日誌|mk7911|note(ノート)https://note.mu/mk7911/n/nba8232f28b92

短歌と公募と賞金のこと|mk7911|note(ノート)https://note.mu/mk7911/n/n47a017bcce69

2017年3月に発表した/掲載された短歌といただいた選評まとめ|mk7911|note(ノート)https://note.mu/mk7911/n/n1dba7a62c361

短歌に関するbotをつくった|mk7911|note(ノート)https://note.mu/mk7911/n/n7f59d9cbbfeb



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2017年04月09日

〈結社誌読む 95〉 「未来」2017年3月号  ~海というからだに、ほか

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「未来」2017年3月号。



サランラップ引き裂く音の小気味よしうっ憤晴らしに少し足らねど/前川明人



微妙に味がちがう気のして呑み込みぬ若き涙にあらぬ涙は/佐伯裕子



りんかくが動き続ける海というからだに足をさしいれており/錦見映理子

→常に波が寄せて返している海は、りんかくが動き続けていると言える。海を「からだ」としてとらえている。動き続けているから、海とは生きたからだだ。足をさしいれると、人の体と海のからだが触れあう。海との接触が生き生きとした特別なものになる。



親であること泥のよう足首を んで熱いシャワーで洗う/山崎聡子
→これも水と足の触れ合う歌だが、まったくちがう関わり方だ。親であることを汚れとして払い落とそうとしている。動作が生きている。


嘘泣きのあげく痺れた喉のまま眠る冷たい子供ベッドで/山崎聡子
→さっきは「足首を んで」がよかったが、こちらは「痺れた喉」がいい。動作や体感。



重いこと そしてたいてい青いこと セロハンテープの台であること/蒼井杏「アウェイ再考」
→オレがふだん使うセロハンテープの台も重くて青い。重いのは必要なことだ。軽いとテープを引いた時に台ごと動いてしまうから。
情報の出し方や口調のせいなのか、変に深みを感じる。終わってみればただのモノだが、そこにいたるまでに変わった道をたどる。「こと」は、その一枚向こうがわにあるなにかを感じさせる。



禁煙に挫折した真夜ながれくるFMからのバイオリンソロ/吉田考宏
→クラシック音楽だろうか。バイオリンの旋律がひとすじの煙のイメージと重なる。


まひるまの紅葉の道を踏んできてかすかに濡れている靴の底/森本直樹


これからはビールを水で割って飲むことにしようか負け組だから/酒井景二朗

→自分で自分を負け組とはなかなか言えないものだ。そしてそれにふさわしい行動をとる。きちんといじけている。良い自虐だと思う。



こうだっけマフラーの巻き方ってそのまま燃えてしまってマフラー/鼠宮ぽむ
→マフラーの巻き方をああでもないこうでもないとやるのはよくあることだ。そこへ唐突に「そのまま燃えてしまって」とくる。この急展開がいい。ほかの歌にも突然の飛躍が見られる。


明日はテストといふ子の腹が痛くなる平凡にして深刻なこと/三田村広隆



評のページから二つ引いて終わります。

かほをよせははの名よべばいのちあるははの髪よりははのにほひす/守中章子

大空を動かす赤き飛行船 うしろの雲は追ひつけないな/三田村正彦




以上です。


『未来』に載ったオレの短歌のまとめはこちら。
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2017年3月の出来事を振り返ってあれこれ言う【後編】|mk7911|note(ノート)https://note.mu/mk7911/n/nc83bca0ffcd2

2017年3月の出来事を振り返ってあれこれ言う【前編】|mk7911|note(ノート)https://note.mu/mk7911/n/n02d1ecfcd4aa

「やめたい」と書きたい|mk7911|note(ノート)https://note.mu/mk7911/n/na34b71807522

抜け出したいという話|mk7911|note(ノート)https://note.mu/mk7911/n/n3e29a2c9d9c3

成人病予防健診に行って、最悪だった話|mk7911|note(ノート)https://note.mu/mk7911/n/n825cec319cde

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