角川短歌

2019年07月25日

角川短歌 2019年8月号の「新人賞受賞者競詠」に出てます!

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宣伝です。




角川短歌2019年8月号の「新人賞受賞者競詠」というページに出ています。作品5首と作歌信条を書いています。






立花開さん、山川築さん、オレ、川谷ふじのさんという顔ぶれになっています。




オレは「ボトラー」という題名の作品5首を出しています。ほかの方はあまり一つのことにこだわらないゆるやかな作品を出しているように見受けられましたが、オレはけっこうテーマで縛ったものを出しました。

「ボトラー」というのは、ペットボトルにおしっこをする人のことであります。そういう内容です。




「作歌信条」のほうは、何を書くかいろいろ迷ったのですが、枡野浩一さんのことを書きました。
なんだか、文章を書くスペースをいただくたびに枡野さんのことを書いているような気がしますが、テーマに正面から取り組もうとするとこうなるのです。





角川短歌からの初めての依頼で、うれしかったです。
論考はまともに書けませんが、またなにかあったらお願いします。








角川短歌8月号には「短歌おくすり手帳」という付録がついていてちょっと話題になっています。
オレは「おくすり手帳」というものを知らなかったです。めくってみましたが、使い方が思いつきません。






そのほかですと、睦月都さんの時評に注目しました。

アクセシビリティ。たぶん口に出して言ったことのない言葉です。

このブログ「存在しない何かへの憧れ」は、記事の数は多いけど、そんなに評論に役に立つようなことは書かれていません。オレの恣意的な部分が強く、抜粋ばかりなので、データに役立てるには不向きでありましょう。

ですがまあ、ここにしか書かれていないこともあるかもしれませんし、短歌をやっている人の何かのお役に立てればうれしいなとは思っています。



そういうわけで角川短歌8月号をよろしくお願いいたします。

んじゃまた。


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【こっちもおすすめ】

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依頼こなし日記 2019.5/27-6/3  ~ふたつの校正
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依頼こなし日記 2019.6/4-7/10  ~思考ロックとメッセージ
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2019年1月のオレの短歌とその余談  ~「おもらしクン」「大きなSNSの下で」ほか
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2019年2月のオレの短歌とその余談  ~文体そのものが行為になり得ている
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2019年3月のオレの短歌とその余談
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2019年07月10日

[総合誌読む 134] 角川「短歌」2019年4月号 ●特集・穂村弘

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総合誌読む 134


角川短歌2019年4月号。

穂村弘特集なので買った。





冬の日に顔をさらして眠りゐし父は丸太のやうな腕組み
/時田則雄「カムイミンタラ」

※「ラ」は小文字




ひとつめの特集は「穂村弘 世界の更新」。印つけたところを書き抜く。

インタビューでの穂村さんの発言から。
「歌のパターンとか、同じ言葉を使っている歌とか、一人の歌人の過去の歌とか、それらを知らなければどんなに鋭いロジックがあっても短歌の批評は書けないから。」

「穂村弘のかばんの中」しっかり見てしまった。他にも総合誌でそういうページがあるけど、見ちゃいけないものを見るようで、ちょっと悪いなーと思いながらも見てしまう。見ていいものしか出してないんだろうけど、それでも。


「眼鏡拭きは無くしやすいとエッセイに書いたところ、トークイベントで大量にプレゼントされた」に人気を感じる。

論考がいくつかある。江戸雪さんの「オリジナリティの強度とは」が特によかった。
「わがままについて」からの引用は読んだおぼえのない文章で、オレは「わがままについて」を読んでないかもしれない……。




お徳用ダブルクリップ22個ここのつ減って春立ちにけり
/さいとうなおこ「物差し」





二つ目の特集は「わたしが考える良い歌」。花山多佳子さんが「短歌が変質していくことへの危機感」について書いていた。
「自然が全く出てこない歌はざらで、出てきたとしても言葉として、観念、アイテムとしてである。意味だけの歌も多い。」
「全体には言葉、観念の世界への志向が強いように感じられる。言葉で人間や身体、物、などの存在を超越していくことに疑問がある。」


以前、「日々のクオリア」で花山周子さんに書いていただいたことを、長いこと気にしているんだけど、たぶん同じことを花山多佳子さんは書いているんだと思う。
https://t.co/xAgg9gTWSg

同じことなんだろうなと思いながら、オレにはどちらもちゃんとはわからないし、どうしていいかもわからない。
オレに書けることをオレなりに書いて、それを見て誰かがさびしくなったり疑問を感じたりしている。



まあ親子で死んで良かったねと煎餅齧りながらニュースに母は
/郡司和斗





「私は歌人のキャリアを信じない。すべての歌人が次の一首に向かう時、ゼロからの勝負だと思う。昨日までどんなにいい歌が作れても、今この瞬間に飛べなければ駄目だ。とても苦しいが、それが表現者だ。」
水原紫苑「次の一首のために」



佐藤通雅さんの「可能なかぎりゼロに」と染野太朗さんの「読者という変化」は、選歌における迷いが書かれている。その真摯な態度に感銘をうけた。



ふた月ぶりの雨よ雨よと待ちいしが嘘泣きほどで止んでしまえり
/勝井かな子「転びかた」



隠し事をしてゐるのでせうくすぐれば炭酸となるあなたの体
/岸並千珠子「菜の花ざかり」



いつのまにか巻末の投稿欄が500回を突破している。40年以上やってるんだ。すごい。
この本おわり。

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2019年01月30日

[総合誌読む 129] 角川「短歌」2018年11月号  ●角川短歌賞発表

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総合誌読む(第129回)。



角川短歌2018年11月号。 https://t.co/EMFzejj9U5
発売されてすぐ電子版を買ったんだけど、読むまでに時間がかかった。
数首だけ引きます。



笑ひ声どつと立つなか甲高きひとつがありぬ棘のごときが/桑原正紀「ビリケンさんの笑み」




角川短歌賞の発表号でした。


小刻みに前後左右へ動きつつ会釈を繰り返すショベルカー/山川築「オン・ザ・ロード」
→たしかにそういう動きだなと思った。動きが頭のなかで再生された。



腕時計くるひ始むるまひるまにゆるく人だかりに分け入りつ/山川築「オン・ザ・ロード」
→時計が狂い始めるときなんてわからないものだが、それは確かにおとずれる。人々にまでその「くるひ」が伝染していきそうだ。



静かなるひかりの脈を見おろした四十五階展望室に/平井俊「蝶の標本」
→高いところから見てそのように見えるのは、夜に走る自動車のライトだろう。光っていて、脈のように動いている。
「静かなる」がいい。ほんとは静かなものではないわけだが、高さがそれを静かなものにしている。



ここだろう落ち込むのならスリッパのままで湯舟におさまってみる/山階基「コーポみさき」
→いい初句だ。「ここだろう」といきなり言われたら、次が気になる。
住み始めるときにしかしないであろう動作を切り取っている。「おさまってみる」。普通に読めるけどよくみると変わった表現だ。(前にもこういうことを書いた気がする)



あれは君だっただろうか 逆光のジャングルジムに座る人影/渡邊新月「冬を越えて」
→映像というか、影がくっきりと目に浮かんできてインパクトがあった。




連作でどうというのでなしに、一首単位で引いてみました。







中川佐和子さんの「短歌月評」でオレの歌にふれていただきました。川谷ふじのさんの作品と同時にふれていただいたんですが、オレの部分を抜粋します。


ルーレット回して給料決めましょう人生ゲームの子持ちフリーター  工藤吉生
(略)
第六十一回短歌研究新人賞受賞後第一作三十首より。工藤作品は「人狼・ぼくは」(略)のタイトル。工藤作品は、日常を受け入れながらも感じる違和感や憤りを強く押し出して言葉にのせている。



ありがとうございました。





この本おわり。




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一枚の年賀状を見て考えた
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2018年8月のオレの短歌とその余談/連作の歌のつなぎ方
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2019年01月15日

[総合誌読む 128] 角川「短歌」2018年10月号  時評・歌壇掲示板・角川歌壇に載った 

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角川「短歌」2018年10月号。


短歌総合誌の第128回目。短歌の本の感想はこれが通算650回目。



睦月さん竹中さんが作品を出していて、定綱さんが企画に出ている。その雑誌から出た新人っていうのは、やっぱりその雑誌によく出るものだよな。最近のオレはそういうところを気にしているんです。
でも石井さん小佐野さんが書評を書いてて、服部さん川野さんもいるわけで。

っていうことは、オレがいつ呼ばれても不思議じゃないってこと? ドキドキするなあ。
企画で連作に星をつけられたりするのかねえ。初の「オール ★☆☆☆☆」になったらどうしましょ。
まあそんなことはいいんです。




良かった歌。




楡の木にもたれて自転車置かれありそのあたりより夕闇の来る/栗木京子「移動図書館」



じわじわと滲(し)み出る言葉「彼女はその希望のうちに眠り込んでいった。」/香川ヒサ「それぞれの夏」



予言者は自分が予言した世界到来したら嬉しいだらうか/香川ヒサ「それぞれの夏」



眠り込んだ時間の分を巻き戻す映画に犬と冷蔵庫映る/竹中優子「複眼」

→部屋で映画を見ていたら眠ってしまったと。起きてそのぶんを巻き戻すと、まだ見てない映像がチャカチャカと映る。犬と冷蔵庫が目につく。眠っているあいだにこれらが映っていたのだろう。そしてこれからこれを見ることになる。

犬と冷蔵庫は直接は結びつかないし、これらが映画のなかで重要かどうかもわからない。
自分の知らない自分、の走馬灯を見るような歌。



子守唄くりかへしくちずさむごとくあなたも擁(だ)きしめる偏見を/川野芽生「火想(かそう)」



雲のひつじ数へつつ待つ今日の眠りいつしかひつじも雲に紛れて/石井照子「雲のひつじ」

→前の歌から、ほんとに雲を見ているわけではなくて目をとじて雲を想像しているのだとわかる。それでありながら、ひつじが形を失っていくところがいい。

ところで今回は眠りの歌ばっかりに印をつけてるんだよ。これは偶然。
一首一首を見てそれぞれ丸をつけているんだけど、あとでならべると、共通したものがあったりする。そのときの状態も影響しているかも。



とうさんは永くはないよ(鳥かしら)ほんとうの朝そうなるたぶん/岩尾淳子「ほんとうの朝」
→不吉なことを言っているのは鳥なのか、自分のなかの声なのか。「ほんとうの朝」という言い方が、ほんとうじゃない世界からの言葉のように響く。



伝へたきことばもたずに濃緑(こみどり)のつやつやの葉のうらを覗けり/田口綾子「ながくながく」



一度だけ強く握り込む手放すと決めて遠くへ投げる力は
ひらひらと夢を逃してしばらくは煌めく粉の取れぬ手のひら
/飯坂友紀子「ひかる手のひら」

→なにをなくしたのか、喪失を描いた連作7首。握り込む歌はボールを、煌めく粉の歌は蝶を思わせる。

投稿欄「角川歌壇」で年間一位をとると作品七首を依頼されると、角川短歌年鑑に書いてあった。確かこの方が一位だったと記憶しているけど、だとするとこれがその作品ということになる。



で、その投稿欄の話ともすこし関係あるけど、荻原裕幸さんの歌壇時評で作品や「受賞のことば」に触れていただいた。時評でなにか言われると興奮する。
それはだいたいは良い興奮なんだけど、これからもそうなのかは分からない。

投稿は1年前くらいからちょっとずつ減らしてはいたのだった。それでも、ここでゼロになるのは大きな変化だった。こちらから行ってたのが、向こうから来るようになるということは、流れるプールが逆回りしはじめたのだ。

この角川「短歌」10月号では、時評に名前が出て、歌壇掲示板に名前が出て、角川歌壇に一首載ったので、三ヶ所出た。
歌壇掲示板なんてめったに出られる場所じゃない。

角川歌壇はこれが最後の投稿だった。特選で終えたのでよかったけど「さようなら」と短歌研究誌上で言った三ヶ月後にまだ居るというのはちょっと恥ずかしい。

元号を一つ戻して片足で三回蹴ってまたぐ自転車/工藤吉生
(江戸雪 選 特選)




この本おわり。



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依頼こなし日記 2018.12/24-12/29
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2018年8月のオレの短歌とその余談/連作の歌のつなぎ方
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2018年09月26日

角川「短歌」2018年10月号の荻原裕幸さんの歌壇時評への応答そのほか

角川「短歌」10月号が発売されました。


▽荻原裕幸さんの歌壇時評で、新人賞作品や受賞のことばに触れていただきました。
▽「角川歌壇」に江戸雪さんの特選で一首掲載されました。



時評でオレの短歌研究新人賞受賞のことばの「投稿欄のおかげて楽しくやってこれました。お世話になりました。そして、さようなら」が引いてある、その50ページあとの投稿欄に特選で歌が載りました。「さようなら」と言いながら居座っているみたいで、これは恥ずかしい~。
5月に出したハガキだから、この時点ではさようならしてなかったんですよ。

短歌総合誌のなかで特に角川が、締め切りから掲載までの期間が長いんです。4ヶ月って、3分の1年です。

これでほんとに短歌雑誌の投稿への投稿は打ち止め。おしまい。最後が特選なのはよかった。気持ちよく終わった。どんな歌かは雑誌を読んでください(有料マガジンにはあとで載せます)。



荻原さんの時評の話にもどります。
短歌研究新人賞の選考委員が減ってるという話題。
オレが初めて応募した2012年には、栗木さん米川さん加藤さん穂村さんに加えて、佐佐木幸綱さんがいて五人でした。二人と二人の綱引きに、腕力のありそうな一人が入っていくところを想像してみる。二人受賞の可能性は減るだろうなあ。ふるえる。



オレが受賞のことばに列記した投稿欄が「全体からすればごく一部なのだろうか」ということについて。主なところではほとんどを列記したんじゃないでしょうか。朝日新聞「朝日歌壇」が無いんだけど、それくらいでしょう。
そういえば「ムー」にも出さなかったし「オール読物」にも出してませんでした。
あと、一度しか投稿してない「笹短歌ドットコム」はスペースのつごうで書きませんでした。

これは「全体からすれば」の「全体」がなにを指すのか、にもよりますね。地域ごとの募集がそれぞれありますし、短歌以外の雑誌で短歌を募集してたりもするので、なかなか全体像がつかめません。見つけたものには手当たり次第ほぼすべて投稿できたと思います。




荻原さんは選考座談会で話題にならなかった歌を、注目した歌として三首引いてくださってました。うれしいです。

「作歌の活動スタイルの切替は難しいと思うけれど、決意表明の向こう側にあるものに期待したい」
といただきました。期待に応えられるように頑張ります。



荻原さんの時評へのリアクションはそれくらいです。








作品月評みたいなページも各誌チェックしてるんだけど、まだなんにもありません。

これからは「作品季評」にとりあげられるような可能性もあるのかなあ。巻頭作品や作品連載はまだまだ無いでしょう。
あんまり難しい依頼がきたらどうしよう、断れる自信もやりとげる自信もないし……という心配をしてます。

露出ということでは出るだけ出たような感じなので、短歌の雑誌でちょっとやそっと紹介されたくらいでは、たいした感激も驚きもないような気がして、ちょっとさびしいです。
出た出ない、載った載らないではなくて、中身の問題です。それが本来のありかたでしょう。テレビカメラの前で押し合いへし合いしながら、ピースしたり手を振ったりしてる段階から、見ているひとをどう楽しませようかという段階に入ったのです。

佳作で一首載っただけでもよろこんでニヤニヤしていた頃から比べると、ずいぶん遠くへきましたねえ。



今回はそんな感じです。
んじゃまた。



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【こっちもおすすめ】
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角川「短歌」2018年9月号の荻原裕幸さんの歌壇時評の感想すこし
https://t.co/CzRqDYixti

「短歌研究」2018年9月号・短歌研究新人賞のことを思うぞんぶんに書く【1】
https://t.co/9LDZrsWmr0

「短歌研究」2018年9月号・短歌研究新人賞のことを思うぞんぶんに書く【2】
https://t.co/lcoeLM1kt6

「短歌研究」2018年9月号・短歌研究新人賞のことを思うぞんぶんに書く【3】
https://t.co/f993MV2JHS



などなど、
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2018年07月11日

[総合誌読む 123] 角川「短歌」2018年6月号  ~引き算のうちはよくても、ほか

角川「短歌」2018年6月号。

久しぶりに総合誌をやります。ちょっと古いですけども。



干しぶだう口に含みて目をつむる子に味はひの時が流れる/澤村斉美「水菰刈る」

ああさうか私がナイフだつたのか果肉に深く入りて気づく/澤村斉美「水菰刈る」



同級生チノ・タケシ君イカダから運河に落ちて溺死せし夏
母子寮の三畳の部屋オカアサン泣きて棺(ひつぎ)のチノ君の死顔
ラジオから聞こえる歌に声合わせ「黒いはなびら、静かに散った」
/藤原龍一郎「昭和三十四年」

→ところどころカタカナで、チノタケシ君の正確な漢字のわからないところには、幼い思い出らしさがある。
「黒いはなびら」はこの頃か。水原弘の太い低い声に、少年が声を合わせて歌ったのだ。チノ君が「黒いはなびら」に重なる。



銀歯奥までみせて愛想わらひする包丁研ぎに包丁わたす/小池光「いまこそ厨歌」
→包丁研ぎに包丁をわたすのは普通のことなのに、なぜかちょっと不安になる。大きめの愛想笑いのせいだろうか。



わが捨てし檸檬の皮ののこりゐる夜の部屋に来てその香をかぎぬ/横山未来子「気泡」



おのずから胸に浮かびてとどまればしばし秘密のごとく母恋う/三枝浩樹



会った人が死んでしまうということをなんか思ったコンビニのレジ/永井祐「七首ある」

引き算のうちはよくてもかけ算とわり算でまずしくなっていく/永井祐「七首ある」

→格言とか予言とか、そういった雰囲気のある歌。行きすぎた知や技術が人をダメにすることってあるかもしれないけども。かけ算やわり算は扱える数字を簡単に大きくするからってことかなあ。
かけ算って小学2年とかで習うけど、もうそのあたりから人のまずしさが始まっている。



わかりやすい人と言われるルービックキューブ一面だけを揃えて/飯坂友紀子



丸つけた歌はそんな感じです。

なぜこの号を紙で買ったかというと、時評にオレのことが書かれていたからだけど、それについては有料記事で書きました。
note(ノート)
https://t.co/8GGzfoLUMG
この本おわり。






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【こっちもおすすめ】
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もうひとりの中城  ~世にも奇妙な歌壇批判
https://note.mu/mk7911/n/n7bb586d45075

短歌連作とジェンガ
https://t.co/vssnyy5mrn

速報です
https://t.co/nbzpaCZ3OP

2018年5月のオレの短歌とその余談
https://note.mu/mk7911/n/n75bf05a79de6

未来賞をいただいて、いま書きたいこと
https://note.mu/mk7911/n/n0b1f389aea2f

第57回短歌研究新人賞候補作「仙台に雪が降る」全30首
https://note.mu/mk7911/n/n58e5f4337568




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2018年04月28日

「短歌年鑑」を見て、短歌結社の会員数とその増減をまとめた 【2018】

三年ほど前、2014年にでた短歌研究の短歌年鑑「短歌研究年鑑2015」を使って、おもな結社の出詠者数をしらべたことがあります。

「短歌年鑑」を見て、短歌結社の会員数とその増減をまとめた : ▼存在しない何かへの憧れ http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52115890.html

500人以上いる結社、よく名前をきく結社+「かばん」の出詠者は次のとおりでした。

【500人以上の結社】
「からたち」800人
「しきなみ」5436人
「新アララギ」1100人 
「地中海」638人 
「潮音」1000人 
「歩道」1200人 
「水甕」1100人 

【よく名前をきく結社】
「かりん」815人 
「心の花」人数記載なし
「コスモス」2300人 
「短歌人」466人 
「塔」900人 
「まひる野」547人 
「未来」800人 

「かばん」46人 







それから三年たちました。今はどうなのか、2017年の11月にでた「短歌研究年鑑2018」を見てみました。それと、「角川短歌年鑑」も見てみました。短歌研究の年鑑と、角川短歌の年鑑では、出詠者に違いがでるのです。

短歌研究年鑑2015→短歌研究年鑑2018/角川短歌年鑑平成30年版、の三つの数字を照らしあわせてみましょう。
▼この三年間で結社の人数がどれくらい変化しているのかを見ます。
そして、
▼短歌研究年鑑と角川短歌年鑑でいかに数字がちがっているかを見ます。

【500人以上の結社】
「からたち」800→800/250
「しきなみ」5436→6109/5964
「新アララギ」1100→1100/1500
「地中海」638→523/600
「潮音」1000→1000/1000
「波濤」記載なし→記載なし/750
「歩道」1200→1050/1050
「水甕」1100→900/900

【よく名前を聞く結社】
「かりん」815→815/993
「心の花」記載なし→記載なし/800
「コスモス」2300→1800/1900
「短歌人」466→466/484
「塔」900→900/800
「まひる野」547→450/600
「未来」800→800/600

「かばん」46→91/130






みなさん、どんな感想をもたれましたか。見ていきましょう。

「からたち」は短歌研究年鑑と角川短歌年鑑の記載の差がもっとも大きい団体です。800人と250人ではえらい違いです。

「しきなみ」だけが人数を大幅に増やしています。聞くところによると、宗教みたいな何かをバックにしているらしいですが、よくわかりません。

「新アララギ」もだいぶちがいますね。短歌研究年鑑によれば三年前からずっと1100人で、角川短歌年鑑によれば三年前からずっと1500人です。

「地中海」「歩道」「水甕」「コスモス」はこの三年で人数を二割ほど減らしています。
ちなみに角川短歌年鑑によると三年前の「地中海」は750名ですから、750→600となります。
減ってる結社は、減り幅が同程度ですね。三年で二割。


「潮音」はずっと1000です。キリのいい数字のまま何年も変化しないということはあまり現実的ではありません。

「波濤」「心の花」は短歌研究年鑑には人数の記載がありません。角川短歌年鑑にだけ出詠者数が書かれています。
「心の花」は最新の年鑑では800人になっていますが、三年前の角川短歌年鑑では520人となっています。これを真に受けるなら、会員がだいぶ増加していることになります。

よく名前を聞く「塔」「未来」「短歌人」「かりん」は、これで見るかぎりは人数がさほど変化していません。
「塔」は会員が増えて1100人を超えたという情報が入っていますが、この「出詠者数」には反映されていません。

「まひる野」は短歌研究年鑑によれば三年で二割減ってますが、角川短歌年鑑によれば600名を維持しています。

「かりん」は短歌研究年鑑と角川短歌年鑑で人数に200人の違いがありますが、どちらもこの三年では人数が変化していません。200人の差が維持されたままです。

「かばん」が激増しているようですが、「46」が間違っている気がします。同じ三年前でも、角川短歌年鑑では130名になっています。角川短歌年鑑によれば、「かばん」は三年前からずっと130人なのです。








……。


つまり、年鑑で見る「出詠者数」というのは参考程度のものなのではないでしょうか。

三年前から人数が変わらない結社があります。また、数字がざっくりしてる結社とこまかい結社があります。調査がきめ細かくないのか、結社側の回答にばらつきがあるのでしょう。


増えていると思われる「未来」「塔」に変化が見られません。人を減らしている結社は、この三年で二割の人数が減っています。

「三年で二割減」というのが今回は気になりました。



以上です。
んじゃまた。


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2018年3月のオレの短歌とその余談【前編】ネットプリント、恋のうた、ほか
https://t.co/izWguvITzA

2018年3月のオレの短歌とその余談【後編】ポエクリ、うたの日、未来ほか
https://t.co/7ZSCtSM6qu

未来賞をいただいて、いま書きたいこと
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2018年04月27日

【歌壇ゲスばなし】「角川歌壇」入選取り消し作品を読む

【歌壇ゲスばなし】
歌壇のいろんなゲスい話をしていく記事です。特に定期的なシリーズというわけではありません。

「ゲス」と聞いて飛びついてしまいましたか? あらあら。お好きですねえ。
ゆっくりしていってくださいね。



今回は、雑誌である「角川 短歌」2018年5月号の「歌壇掲示板」に注目しました。

類似作品ということで、読者向けの投稿作品欄である「角川歌壇」の秀逸の作品が「入選取消」になっていました。それがこういう歌なんです。

ほのぼのとシャンプーの香を放ちつつ幾何学問題子らは解きをり

作者の名前は書かれていません。

元の歌はこれで間違いないでしょう。

シャンプーの香をほのぼのとたてながら微分積分子らは解きおり/俵万智『サラダ記念日』



これを見抜けないのかー。
それともオレが思うほどこの歌は有名じゃないのでしょうか。

誰が選んだんでしょう。
っていうか投稿したのは誰なんでしょう。オレの知ってる投稿者なのでしょうか? 
一首やったってことは、過去にも類似作品を投稿してるかもしれませんね。
で、しらべました。



過去の角川歌壇を見ました。
上記の「ほのぼのと~」の歌は、角川「短歌」4月号の「角川歌壇」におきまして、Sさんという選者が秀逸、Nさんという選者が佳作にしていました。四人中二人が選んでいるんです。

投稿者は福島のOさんという方で、知らない方。過去には原発に関する歌を投稿していらっしゃいます。何ヵ月ぶんかをさかのぼって探してみましたが、ほかに明白な類似作品は見られませんでした。



投稿者の名前も選者の名前も伏せました。取り消しになってるんですから、あんまり深追いしないほうがいいんですよ。それにしても、特選になっても何ももらえないような場所でそういうことするなんてねえ。







故意でない可能性もなくはない。
偶然の一致、意識してないけど似てしまった、ということもあるんじゃないでしょうか?

どうでしょう。もう一度ならべてみましょう。

ほのぼのとシャンプーの香を放ちつつ幾何学問題子らは解きをり

シャンプーの香をほのぼのとたてながら微分積分子らは解きおり/俵万智『サラダ記念日』


「ほのぼのと」と「シャンプーの香」が完全一致しています。順番は逆にしてありますね。

「たてながら」が「放ちつつ」になっています。「ながら」を「つつ」に変えてるわけです。シャンプーの香りを「たてる」「放つ」ならば「たてる」ほうがいいですね。「放つ」は悪臭にも使われます。

「微分積分」が「幾何学問題」になってます。どちらも数学ですね。「微分積分」の「ぶん」のリズムのよさが損なわれていますし、それに字余りになっています。

結句は「おり」が「をり」になっただけです。仮名づかいのちがいです。


なるほど、取り消されても仕方ないですね。こうして見ると俵さんの歌のつくりの見事さがよくわかります。

初句から結句まで、どの句も完全一致にだけはならないように操作してあるように見えます。
「たまたま似てしまった」グレーよりは、「盗作」のブラックに近いようにオレには思えますが、どんなものでしょう。



真似の仕方にもセンスがありますね。これは、どの部分も一致しないようにこまかく操作したわりには、
▽どの部分も元の歌より劣っていますし、
▽変化のさせかたに乏しい。
それで
▽秀逸どまりですし、
▽元の歌が有名すぎるせいでバレています。



ため息がでますね。
早く発見されて入選取り消しになったことが救いですね。健全だと思います。


「学ぶ」という言葉は「真似ぶ」からきているといわれるくらいで、(参考 http://learningpatterns.sfc.keio.ac.jp/LearningPattern_No8.html )真似をするのは学習のためには悪いことではありません。でも、こうしたことでは困りますね。




どうでしょう。これくらいのゲスさでよかったでしょうか。言葉づかいを丁寧にしてみました。

んじゃまた。




▼▼▼



【こっちもおすすめ】
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2018年3月のオレの短歌とその余談【前編】ネットプリント、恋のうた、ほか
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未来賞をいただいて、いま書きたいこと
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などなど、
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2017年12月01日

[総合誌読む 121] 角川「短歌」2017年11月号  ●第63回角川短歌賞発表

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角川「短歌」2017年11月号。角川短歌賞発表号。


はじめてKindleで短歌の総合誌を読んだ。書店の開店時間を待てなくて発売日の真夜中1時ごろに買った。



スマートフォン握つて眠るをとめ子の手よりすべりつその全世界/香川ヒサ「漠たる哀愁」
→手からスマートフォンがすべり落ちたんでしょう。眠っても握っているスマートフォンが彼女の全世界で、全世界が手離されるところに危うさがある。



おそなつの瀑布に近づきゆく蝶の危うかりしを夜更けて思う/三井修「天幕」

寝る前になにか思い出してる歌ってたまに見るんだけど、そういうのは好き。見つけると丸にしたくなる。
寝る前でもいいし夜中に目覚めて思ってるんでもいいんだけどさ。夜にもの思う歌。夜の部屋から遠いことを考えているとなおよい。







角川短歌賞

天文台の昼しづかなるをめぐりをりひとり幽体離脱のやうに/睦月都「十七月の娘たち」

壺とわれ並びて佇てる回廊に西陽入りきてふたつ影伸ぶ/睦月都「十七月の娘たち」

煙草吸ふひとに火を貸す 天国はいかなる場所か考へながら/睦月都「十七月の娘たち」


角川短歌賞の受賞作で目にとまったのはそういう歌でした。
幽体離脱の歌、なるほどなあと思った。ああいうところって、宇宙の模型があったり宇宙のなりたちが書いてあったりして、時間も空間も大きく日常から離れた感じになる。ああいう施設は静かな時はほんとうにしずかでこの世ならぬ雰囲気になる。幽体は宇宙まで行けるのかなあ。

壺の歌は自分が置き物と化していくような・逆に壺が生き物になってくるような不思議な歌。



そのほかの上位の作品についてはここに引かない。
選考委員が半分入れ替わったのに上位の顔ぶれが似たりよったりというのはなんかなあ。それがほんとの強さってことなんだろうけどなあ。新鮮味もほしい。下読みの人は入れ替わっているんだろうか?






日本語が乱れとる!「年末ジャンボミニ」それをお前は買うのかと父
生きているときにくれよとボヤいている父に供えるバラと連番/山田未来穂「古びた音」



口笛をうまく吹ける子吹けない子並んで風のしっぽをつかむ
笹舟は橋をくぐって次の橋あともう少し聞き役でいる/里見佳保「風のしっぽ」

→やさしくていいなと思った。口笛の歌は、口笛を吹くときの仕草が浮かんでくる。オレは吹けない子だったし今でもうまく吹けないなあ。
笹舟の歌は笹舟を長く見守っているのがわかる。話もよく聞いていて。やさしい。



わからないことが多いからビニール袋しいて子供をそこに寝かせた/山崎聡子「秋の子供」



貯金箱の機関車トーマスの顔面の影が濃くなる秋の夕映え/花山周子

→「貯金箱の機関車トーマス」という物の選びがいいなあと思った。ほんとにそこにありそう感が高い。「顔面の影」もいいじゃないですか。トーマスの顔の立体感が思い浮かんでくる。あの顔の影が濃くなるとちょっとこわい。

人に生まれて鉛筆削る秋の日の尖りてゆける鉛筆の先/花山周子
→「人に生まれて」がなにやら深遠だ。鉛筆を削る生き物はたしかに人だけだ。やってることが鉛筆を削って鉛筆をとがらせてるだけなので、変にそれ以上は深まらず、そこがいい。



お願いはコンビニ店員になりたい児七夕飾りの下にはにかむ/天野美奈子
→角川歌壇から。さっき「夜にもの思う歌」が好きだと書いたけど、七夕の願いごとの短歌も好きなんだよね。変な願いごとしてるのを見ると丸にしちゃう。
コンビニ店員だって立派な職業なんだけど、それを星に願ってる子を見ると、大人としては思うものがある。大人は子供と同じようにコンビニ店員を見ることはできない。



脚細き新体操の女の子リボンを高く投げてあやうし/黒木直行
→「題詠 帯を詠う」から。リボンでもよかったのかー。
高く投げたところで歌の時間は止まっている。実際には一瞬のあやうさが、歌のなかでずっと生きている。「脚細き」があやうさを強めている。









オレも今回は角川歌壇に歌を出してたんですよ。

三井ゆき選 佳作
うながされ選んだカード一枚と再会果たす手品師の前/工藤吉生

加藤治郎選 秀逸
ふわわわと恥ずべき過去はあらわれてオレに小さく首を振らせた/工藤吉生



どんなもんでしょうか。
今回は電子版で買ったので、次の角川歌壇への応募はがきがついておらず、投稿できません。来年はあまり雑誌にオレの短歌が載らない年になるかと思います。

んじゃまた。



▼▼▼



noteでは、ブログでは読めない内容の記事をたくさんアップしています。

「誰のために詠むのか」短歌投稿と選ばれるための歌 https://note.mu/mk7911/n/n58673caf4e12

第57回短歌研究新人賞候補作「仙台に雪が降る」全30首
https://t.co/2qhYBXq6hv

2017年10月のオレの短歌とその余談|mk7911|note(ノート)https://note.mu/mk7911/n/n19f14f84b358


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よろしくお願いいたします。



去年の角川短歌賞の予選通過作品 50首|note(ノート)
https://note.mu/mk7911/n/nd28a52e005c7
50首連作を200円で公開しています。


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2017年11月06日

【ネットプリント読む 6】 ネプリやnote等で発表された「角川短歌賞」応募作品を読みつくす

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角川短歌賞の応募作をnoteやネプリなどで公開した人が、調べた限りでは五名いらっしゃいます。それら五つの50首連作を読んだので、それぞれに感想を書いていきます。



ネットプリントやnote等で発表された「短歌研究新人賞」応募作品を読みつくす : ▼存在しない何かへの憧れ http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52198423.html
これの姉妹記事、ということになりましょうか。
この時点では読み尽くせていたんですが、この記事を出したあとからも応募作がアップされたので結局は読み尽くせなかったんです。


では始めます。






宇野なずきさんの角川短歌賞応募作品「不可逆の卵」
https://t.co/sUOqR4OUBk
からいってみましょう。



からあげも床に落ちたらごみ 何のために死んだのか分からない/宇野なずき「不可逆の卵」
→拾ってでも食うオレには必ずしも共感できる内容ではないが、言ってることはわかる。
「何のために死んだのか分からない」は重いフレーズだ。


空欄に入る言葉を答えなさい空欄なんてどこにあるんだ/宇野なずき「不可逆の卵」
→答えろと言われている一方で、答えようがない。どうすればいいのか、出口のない押し潰されそうな状況だ。


昼休みスマホとパンで忙しい他に空いてる席があるだろ/宇野なずき「不可逆の卵」
→孤独そうな主人公だが、近づいてくる者に対してはこのような態度だ。「昼休みスマホとパン」は他人事じゃないなあ。オレのことかと思った。


カップ麺ねぎ塩とんこつしょうゆ味何も出来ない人もいるのに/宇野なずき「不可逆の卵」
→カップ麺にいろんな味があることを、いろんなことができる器用な人であるかのようにうらやましく見るのだ。
この歌はツイッターでつぶやいたら特に反応が大きかった。


短歌研究新人賞の応募作のときに、意外といじけてるんだなあということを書いたと思うけど、この連作もそうだ。みじめさを言いつつ、うまいことも言っている。
序盤が弱くて「これなら短歌研究のやつのほうがよかった」と思いながら読んだが、途中からだんだん迫力が出てきた。






https://tmblr.co/ZFKg8m2RQc8Ih
「774」さんの角川短歌賞応募作品「告解室より」を読んだ。こういう作者名というのは、あんまり印象がよろしくないが、ともかく読みました。


コンビニのそうめんのほぐし水は雨心の弱った所にしみる/774「告解室より」
→ほぐし水に注目したところがいい。そうめんをほぐしているはずが、そうめんじゃなくて自分の心になっている。


宇宙船切り離すように思い出を捨てよ手狭な棺桶のため/774「告解室より」


新宿の証明写真機の中で眠るあいつを救えるだろうか/774「告解室より」

→途中からドレミの歌の歌詞がかわる。「青い空」から「虚無感」につなげるのはうまい接続。


肉体を手放しそっと風になるさよならここもいずれ群青/774「告解室より」


体言止めで終わる歌が多いような気がして数えたが、ざっと27首くらいだ。多いのかよくわからない数字が出た。
ところどころ面白かった。







三つ目。田村穂隆さんの角川短歌賞応募作品「銀河系のマリー」を読みました。
https://t.co/vADyNRdbej


なんかね、宇宙のことがいっぱい出てくるんですよ。どういう世界の話なのかよくわからない。背中から翼が生えてたりもする。あっ、でもそれは比喩かもしれない。
「21エモン」みたいな世界なんじゃないかと想像しながら読んだ。惑星同士が簡単に行き来できるようになっている未来。

未来の世界のことというと暗い想像もありそうだけど、これは明るい。明るくてひらけた未来。読みながら「5000年後のリア充」とメモした。

変なオノマトペに頼りすぎていないか、「超」「愛」の使い方はどうか、といった疑問はあるけど、若い人にはウケそう。「石井僚一短歌賞」ならばいいところまでいくだろうと思いなから読んだ。
一首単位で引ける歌はありません。






四つ目。鈴木四季さんの角川短歌賞応募作「紺という紺」を読みました。
https://t.co/lu35Yi0Egc


自販機のお茶を手渡す誰も彼も死なないように生きているなり/鈴木四季「紺という紺」

濡髪の友が聴くピアノソナタなり月光を聴くことと見ること/鈴木四季「紺という紺」

君が来て揃うのを待つロビーにて壁の天使に凝視されおり/鈴木四季「紺という紺」

という三首を引いてみた。


なんか全体的にすごく「塔」っぽいんですよ。「塔」っぽさでお腹いっぱいになる。
っていうとおおざっぱだからもう少し詳しく言うと、吉川宏志、松村正直、永田淳、そのあたりに近いんじゃないか。
京都の地名が出てきて、こまかい観察と発見を交えながら、うすーく官能をまぶしている。

特徴といえば、飛躍が大きいこと。わかるようなわからないような丁度いい感じ、よりは少しわからない側に投げている。それが奥深さや巧さに見える。

「客観写生使いけるかも」
「文体与えらるるごとくに」
「一人称はここにながして」
「君は動詞の人にあらざり」
みたいなのが続くと臭みを感じてしまう。

弟の歌ではじまり弟の歌でおわる。途中で「君」がでてくるけど、みんな弟のこととして、男同士のこととして読んでみた。







最後五つめに、有無谷六次元さんのネプリの角川短歌賞応募作品「悪食の徒」を読んだ。
https://t.co/qoneeeGCtl
この人のことは全然知らなかった。

応募作品のほかに「おまけ」があるが、これがおもしろい。クーポンのくだりが特にいい。
(※ネットプリントは期間が終了している)


十二月八億五日 晴れときどきテャヌェ ところにより強いンマュペメ/有無谷六次元「悪食の徒」
→ただむちゃくちゃな変なことを言ってるだけ、ふざけただけという感じがして、よい。


窓際の唾液を溜めた水槽は素手でつぶしたマリモの緑/有無谷六次元「悪食の徒」


ほかになにもいない「ふれあいコーナー」でふれあいましょうびしょびしょのわたしと/有無谷六次元「悪食の徒」

→水槽の歌はわけもわからず汚くて暴力的だし、ふれあいコーナーの歌はわけもわからず不気味だ。全体的にわけわからない者達の連作だ。



三首目
手をつなぎ共に産道くぐろうと双子はどちらも生きながらえずに
四十九首目
見たことのない赤子の髪を撫ぜながら一歩踏み出した先の奈落へ
/有無谷六次元「悪食の徒」

→こういう歌があると、頭をからっぽにしてメチャクチャを楽しむことなんてできなくなる。ほかのところでどんなにふざけても、こういう歌のせいで笑えなくなる。ふざけてるように見えて、ほんとは深刻な意味があるんじゃないかとか、そういうふうに見えてしまう。ふざけるならふざけきってほしかったかなと思いました。
あと、一首にいろいろ盛り込もうとしすぎている。

でも今回読んだ五作のなかでは一番おもしろかったし、期待を持った。



以上です。
短歌研究新人賞のときよりは、落選作をアップする人が少なかった。50首ということもあるかもしれないし、落選作をネットに公開することの是非が話題になったからかもしれない。

んじゃまた。



▼▼▼



■工藤吉生(くどうよしお)の短歌・自選50首 +プロフィール
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52107166.html

2017年7-9月の歌まとめ・20首
https://matome.naver.jp/m/odai/2150685074540729601




さっそく角川短歌賞のことを書こうじゃないか、または、オレと新人賞の六年間
https://note.mu/mk7911/n/n6b6c4aca0c22

第57回短歌研究新人賞候補作「仙台に雪が降る」全30首
https://t.co/2qhYBXq6hv

2017年9月のオレの短歌とその余談【前編】|mk7911|note(ノート)https://note.mu/mk7911/n/nd4b539b8b11c

2017年9月のオレの短歌とその余談【後編】|mk7911|note(ノート)https://note.mu/mk7911/n/n1f14c362a021

二件のいやがらせについて|mk7911|note(ノート)https://note.mu/mk7911/n/n73db516286bb


「工藤の有料マガジン」は500円ですべての記事(約100記事)が読めます。
よろしくお願いいたします。



去年の角川短歌賞の予選通過作品「ピンクの壁」50首|note(ノート)
https://note.mu/mk7911/n/nd28a52e005c7
一年経ったので、400円だったのを200円に値下げしました。よろしくお願いします。


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